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【発明の名称】 多連式ピストンポンプ
【発明者】 【氏名】森 聡

【要約】 【課題】多連式ピストンポンプにおいてサージングを防止する構造を提供する。

【解決手段】ピストンポンプにおいて、バルブプレート20に吐出ポートを回転軸Oを中心とする円周方向について開始側吐出ポート21と中間吐出ポート22,23および終了側吐出ポート24に分割するランド部42,43を形成し、ランド部42,43に容積室7の作動油圧を逃がすオリフィス(絞り通路)51〜54を開口させるものとした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】シリンダブロックにその回転軸と平行に配設した複数のシリンダと、前記各シリンダにそれぞれの容積室を画成する複数のピストンと、前記シリンダブロックの回転に伴って前記各シリンダの容積室を拡縮するように前記ピストンを往復動させる斜板と、前記シリンダブロックを摺接させるバルブプレートと、前記バルブプレートに開口する吸込ポートおよび吐出ポートとを備え、前記シリンダブロックの回転に伴って前記各容積室を前記吸込ポートまたは前記吐出ポートに連通させるピストンポンプにおいて、前記バルブプレートに前記吐出ポートを回転軸を中心とする円周方向について分割するランド部を形成し、前記ランド部に前記容積室の作動油圧を逃がす絞り通路を開口させたことを特徴とする多連式ピストンポンプ。
【請求項2】前記吐出ポートを回転軸を中心とする異なった半径上に位置する内外の吐出ポートに分割し、前記シリンダブロックにその回転に伴って前記内外の吐出ポートを各容積室に連通させる内側シリンダポートおよび外側シリンダポートを形成し、前記バルブプレートに前記シリンダブロックの回転に伴って前記内側シリンダポートと前記外側シリンダポートの両方に連通する前記絞り通路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の多連式ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピストンポンプの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば作業機械や建設機械等には、油圧源として複数の独立した吐出通路を備える多連式ピストンポンプが搭載され、1つの多連式ピストンポンプによって複数の油圧機器を駆動するようになっている。
【0003】従来の多連式ピストンポンプとして、例えば図7に示すように3本の吐出通路71,72,73を備えるものがあった。
【0004】これについて説明すると、バルブプレート60には1つの吸込ポート64と3つの吐出ポート61,62,63が開口している。吐出ポート63は吐出ポート61,62に対して回転軸を中心とする円周方向について分割される。吐出ポート61,62は回転軸を中心とする半径方向について分割される。
【0005】シリンダブロックの回転に伴って各シリンダとピストン間の容積室が順に吐出ポート63に連通した後、吐出ポート61と吐出ポート62の交互に連通し、各吐出ポート61,62,63から吐出される作動油が各吐出通路71,72,73をそれぞれ通って3つの油圧機器へと導かれる。各吐出通路71,72,73では互いに独立した作動油の流れが生じ、作動油の流量や圧力を個別に設定できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の多連式ピストンポンプにあっては、シリンダブロックの回転に伴って各容積室が吐出ポート63から吐出ポート61または吐出ポート62へと連通する過程でバルブプレート60によって遮断されると、各容積室にサージ圧力が発生する可能性があり、騒音等の原因になる。
【0007】これを防止するため、図7に示すピストンポンプにあっては、各吐出ポート61,62の一端にノッチ61a,62aがそれぞれ形成され、ノッチ61a,62aを介して容積室の圧力を逃がすようになっている。
【0008】しかしながら、バルブプレート60にノッチ61a,62aが形成される場合、各吐出ポート61,62,63の配置に制約を受け、作動油の流量や圧力の設定範囲が狭まる。
【0009】本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、多連式ピストンポンプにおいてサージングを防止する構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、シリンダブロックにその回転軸と平行に配設した複数のシリンダと、各シリンダにそれぞれの容積室を画成する複数のピストンと、シリンダブロックの回転に伴って各シリンダの容積室を拡縮するようにピストンを往復動させる斜板と、シリンダブロックを摺接させるバルブプレートと、バルブプレートに開口する吸込ポートおよび吐出ポートと、シリンダブロックの回転に伴って各シリンダの容積室を吸込ポートまたは吐出ポートに連通させるシリンダポートとを備えるピストンポンプに適用する。
【0011】そして、バルブプレートに吐出ポートを回転軸を中心とする円周方向について分割するランド部を形成し、ランド部に容積室の作動油圧を逃がす絞り通路を開口させるものとした。
【0012】第2の発明は、第1の発明において、吐出ポートを回転軸を中心とする異なった半径上に位置する内外の吐出ポートに分割し、シリンダブロックにその回転に伴って内外の吐出ポートを各容積室に連通させる内側シリンダポートおよび外側シリンダポートを形成し、バルブプレートにシリンダブロックの回転に伴って内側シリンダポートと外側シリンダポートの両方に連通する絞り通路を形成するものとした。
【0013】
【発明の作用および効果】第1の発明において、シリンダブロックの回転に伴って各シリンダポートがランド部に対峙することによって各吐出ポート間の連通が遮断される。このとき、ランド部に開口する絞り通路は、各シリンダポートをポンプケース室を介してタンク側に連通させる。これにより、吐出行程において、各容積室がランド部によって完全に閉塞されることがなく、各容積室にサージ圧力が発生することを防止し、ポンプから発生する騒音の低減がはかれる。
【0014】第2の発明において、バルブプレートに形成される絞り通路の個数が半減し、バルブプレートの製作コストを低減できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】図1に示すように、回転斜板式のピストンポンプ10は、ポンプケース1とポートブロック2とにより形成される内部空間にシリンダブロック3および斜板4が収装される。
【0017】シリンダブロック3はシャフト5を介して回転駆動される。シャフト5は、その一端がポートブロック2にベアリング12を介して支持され、その途中がポンプケース1にベアリング11を介して支持される。シャフト5はポンプケース1から外部へ突出されるその一端に図示しない動力源から回転が伝達される。
【0018】シリンダブロック3には10個のシリンダ6がその回転軸O(図3、図4参照)と平行に、かつその回転軸Oを中心とする略同一円周上に一定の間隔を持って並んで配置される。
【0019】各シリンダ6にはピストン8がそれぞれ挿入され、両者の間に容積室7が画成される。各ピストン8の一端側はシリンダブロック3から突出され、斜板4に接するシュー9を介して支持される。シリンダブロック3が回転すると、各ピストン8は斜板4との間で往復動し、シリンダ6の容積室7を拡縮させる。すなわち、シリンダブロック3がバルブプレート20に対して図3に矢印で示す方向に回転するのに伴って、ピストン8によって容積室7を拡張する吸込行程と容積室7を収縮する吐出行程が繰り返される。
【0020】図4に示すように、シリンダブロック3の端面には各容積室7に連通するシリンダポート13,14が開口する。シリンダポート13,14は、中心軸Oを中心として円弧状に湾曲した長円形の開口断面を有する。
【0021】ポンプケース1とポートブロック2の間にはシリンダブロック3の端面を摺接させるバルブプレート20が介装される。バルブプレート20には吸込ポート25と吐出ポート21〜24がそれぞれ開口し、シリンダブロック3の回転に伴って各シリンダポート13,14が連通することによって各容積室7に対する作動油の吸込と吐出が制御される。
【0022】図2に示すように、バルブプレート20には各容積室7に連通する1つの吸込ポート25が開口し、ポートブロック2には吸込ポート25に接続する1本の吸込通路35が形成される。シリンダブロック3の回転に伴い図示しないタンクからの作動油が図示しない配管と吸込通路35および吸込ポート25を通ってシリンダポート13から各容積室7に供給される。
【0023】多連式のピストンポンプ10のポートブロック2には、3本の吐出通路30,32,33が形成され、各容積室7から吐出する加圧作動油が各吐出通路30,32,33を通り、図示しない配管を介して3つの油圧機器へとそれぞれ導かれる。
【0024】バルブプレート20には開始側吐出ポート21と中間吐出ポート22,23および終了側吐出ポート24が回転軸Oを中心とする円周方向について分割して形成され、開始側吐出ポート21と終了側吐出ポート24の間に中間吐出ポート22,23を挟むように配置される。
【0025】Y字形をした合流吐出通路30は開始側吐出ポート21に接続する分岐部31と、終了側吐出ポート24に接続する分岐部34を有する。各容積室7から開始側吐出ポート21と終了側吐出ポート24へと吐出される作動油は合流吐出通路30を通って合流した後、図示しない配管を介して第一の油圧機器へと導かれる。
【0026】外側中間吐出ポート23と内側中間吐出ポート22は、中心軸Oを中心として円弧状に湾曲した長円形の開口断面を有し、回転軸Oを中心とする半径方向について互いに分割して形成される。
【0027】図4に示すように、シリンダブロック3の端面には容積室7を内側中間吐出ポート22に連通する内側シリンダポート13と、外側中間吐出ポート23に連通する外側シリンダポート14がそれぞれ開口している。内側シリンダポート13は、内側中間吐出ポート22と略同一円周上に形成され、外側シリンダポート14は外側中間吐出ポート23と略同一円周上に形成される。
【0028】内側中間吐出ポート22に吐出通路32が接続する。容積室7で圧縮され内側シリンダポート13から内側中間吐出ポート22へと吐出される作動油は、吐出通路32と図示しない配管をそれぞれ通って第二の油圧機器へと導かれる。
【0029】外側中間吐出ポート23に吐出通路33が接続する。容積室7で圧縮され外側シリンダポート14から外側中間吐出ポート23へと吐出される作動油は、吐出通路33と図示しない配管をそれぞれ通って第三の油圧機器へと導かれる。
【0030】各シリンダポート13,14が開口する角度範囲θ1a,θ1bは、各シリンダ13,14間の角度より小さく設定する。すなわち、シリンダ6の個数をN(=10)とすると、次の(1)、(2)式が満たされるように設定される。
0<θ1a<(360°/N) …(1)
0<θ1b<(360°/N) …(2)
図3に示すように、バルブプレート20は各ポート21〜25の間に拡がる4つのランド部41〜44を有する。
【0031】開始側吐出ポート21と中間吐出ポート22,23の間に挟まれるランド部42が拡がる角度範囲θ2aをシリンダポート13,14が開口する角度範囲θ1a,θ1bより大きく形成する。同様に、中間吐出ポート22,23と終了側吐出ポート24の間に挟まれるランド部43が拡がる角度範囲θ2bをシリンダポート13,14が開口する角度範囲θ1a,θ1bより大きく形成する。すなわち、次の(3)〜(6)の式が満たされるように設定される。
θ2a≧θ1a …(3)
θ2b≧θ1a …(4)
θ2a≧θ1b …(5)
θ2b≧θ1b …(6)
これにより、シリンダブロック3の回転に伴ってシリンダポート13,14が開始側吐出ポート21から中間吐出ポート22,23へと向かう過程でランド部42に対峙して遮断され、各ポート21,22,23間の密封がはかれる。同様に、シリンダブロック3の回転に伴ってシリンダポート13,14が中間吐出ポート22,23から開始側吐出ポート21へと向かう過程でランド部43に対峙して遮断され、各ポート22,23,24間の密封がはかれる。
【0032】そして本発明の要旨とするところであるが、ランド部42,43に開口して各容積室7の作動油圧を逃がす絞り通路として、バルブプレート20にはランド部42,43に開口するオリフィス51〜54を形成する。各オリフィス51〜54はポンプケース室29を介してタンク側に連通し、各容積室7にサージ圧力が発生しないようにする。
【0033】オリフィス51は開始側吐出ポート21と中間吐出ポート22の間で、内側シリンダポート13と略同一円周上に配置される。
【0034】オリフィス52は開始側吐出ポート21と中間吐出ポート23の間で、外側シリンダポート14と略同一円周上に配置される。
【0035】オリフィス53は中間吐出ポート22と終了側吐出ポート24の間で、内側シリンダポート13と略同一円周上に配置される。
【0036】オリフィス54は中間吐出ポート23と終了側吐出ポート24の間で、外側シリンダポート14と略同一円周上に配置される。
【0037】オリフィス51,52は開始側吐出ポート21と中間吐出ポート22,23の間に挟まれるランド部42を二等分する線C1上に配置される。
【0038】オリフィス53,54は中間吐出ポート22,23と終了側吐出ポート24の間に挟まれるランド部43を二等分する線C2上に配置される。
【0039】バルブプレート20には吸込ポート25の一端にノッチ25aが形成される。ノッチ25aを介して容積室7の圧力勾配が滑らかになり、吸込通路35の圧力脈動が緩和される。
【0040】斜板4はポンプケース1に図示しない支持軸を介して傾転可能に取り付けられる。斜板4の傾転角度を変えることにより、各ピストン8のストロークが変化してシャフト5の1回転当たりの押しのけ容積が変化する。
【0041】斜板4とポンプケース1の間にはスプリング15が介装され、斜板4はスプリング15によってその傾転角度を最大とする方向に付勢される。
【0042】斜板4とポンプケース1の間にはスプリング15に抗して斜板4を動かす油圧シリンダ16が介装される。油圧シリンダ16はポンプケース1に形成されたシリンダ17と、シリンダ17に摺動可能に挿入されるピストン18とを備え、両者の間に画成される油室19にはポートブロック2に形成される図示しない油通路を介して作動油圧が導かれる。油圧シリンダ16は作動油圧が上昇するのにしたがってピストン18がシリンダ17から突出して斜板4の傾転角度を減少させ、シャフト5の1回転当たりのポンプ押しのけ容積が減少する。
【0043】以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0044】シリンダブロック3の1回転につき、各ピストン8がシリンダ6を1往復動する。シリンダ6の容積室7が拡張する吸込行程では、作動油をバルブプレート20の吸込ポート25からシリンダポート13,14を通して容積室7に吸い込む。シリンダ6の容積室7が収縮する吐出行程では、作動油を容積室7からシリンダポート13,14を通してバルブプレート20の各吐出ポート21〜24へと順に吐出する。これにより、各吐出通路30,32,33では互いに独立した作動油の流れが生じ、作動油の流量や圧力を個別に設定できる。
【0045】開始側吐出ポート21と終了側吐出ポート24は回転軸Oを中心とする円周方向について互いに離れて開口しているため、開始側吐出ポート21と終了側吐出ポート24には常に異なる容積室7が連通し、合流吐出通路30には複数の容積室7からの作動油が絶えず吐出されるため、合流吐出通路30から吐出される作動油の圧力脈動を小さく抑えられる。
【0046】吐出行程の中間区間Bにおいて1つの容積室7から吐出される作動油流量の変動幅は、開始区間Aまたは終了区間Cに比べて小さいため、吐出行程の中間区間Bにおいて各容積室7に連通する吐出通路32,33の圧力脈動を小さく抑えられる。
【0047】このように、各吐出通路30,32,33における作動油の流量変化を小さく抑えられるため、各吐出通路30,32,33の圧力脈動が小さく抑えられ、これらの作動油圧が導かれる油圧配管および油圧機器の振動が抑えられ、騒音の低減がはかられる。
【0048】そして本発明の要旨とするところであるが、ランド部42,43に開口するオリフィス51〜54が各容積室7の作動油圧をポンプケース室29を介してタンク側に逃がすことにより、各容積室7にサージ圧力が発生しない。
【0049】すなわち、シリンダブロック3の回転に伴って各シリンダポート14がランド部42,43に対峙することによって各吐出ポート21〜24間の連通を遮断する。このとき、ランド部42,43に開口するオリフィス51〜54は、各シリンダポート14をポンプケース室29を介してタンク側に連通させる。これにより、吐出行程において、各容積室7がランド部42,43によって完全に閉塞されることがなく、各容積室7の圧力勾配を滑らかにし、各容積室7にサージ圧力が発生することを防止し、ポンプから発生する騒音の低減がはかれる。
【0050】次に図5、図6に示す他の実施の形態を説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0051】ランド部42,43には単一のオリフィス55,56をそれぞれ開口させ、各オリフィス55,56を各シリンダポート13,14の両方に連通させる位置に形成する。
【0052】図5に示すように内側シリンダポート13がランド部42,43を通過する際、各内側シリンダポート13が各オリフィス55,56にそれぞれ連通し、各容積室7の作動油圧をポンプケース室29を介してタンク側に逃がし、各容積室7にサージ圧力が発生することを防止する。
【0053】図6に示すように外側シリンダポート14がランド部42,43を通過する際、各内側シリンダポート13が各オリフィス55,56にそれぞれ連通し、各容積室7の作動油圧をポンプケース室29を介してタンク側に逃がし、各容積室7にサージ圧力が発生することを防止する。
【0054】この場合、バルブプレート20に形成されるオリフィス55,56の個数が前記図2に示す実施の形態に比べて半減し、バルブプレート20の製作コストを低減できる。
【0055】他の実施の形態として、ランド部に開口する絞り通路を吐出通路に連通させて、各容積室の圧力を逃がす構成してもよい。
【0056】本発明は斜板式ピストンポンプに限らず、斜軸式ピストンポンプにも適用できる。また、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【出願人】 【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
【出願日】 平成12年1月19日(2000.1.19)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−200782(P2001−200782A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−10504(P2000−10504)