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【発明の名称】 冷媒圧縮機
【発明者】 【氏名】太田 道夫

【氏名】斎藤 治助

【要約】 【課題】比較的小型の冷凍装置に使用される往復動式の圧縮機構部を有する冷媒圧縮機において、片持の軸受で支持されているクランク軸の軸受部は、従来の螺旋状の油溝からの給油では耐磨耗性を得るための油膜形成が不充分である。

【解決手段】螺旋状の油溝に連通し、クランク軸の反回転方向に終端を有する第二の油溝を設けることによって軸受部の油膜形成を助長し、HFC系の冷媒を使用しても耐磨耗性の高い冷媒圧縮機を供給することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉容器内に片持の軸受を有する往復動式の圧縮機構部と電動機とを備え、遠心力により吸い上げた潤滑油をクランク軸のジャーナル部に給油し、軸受で支持されたジャーナル部の外周面には螺旋状の第一の油溝を有する往復動式の冷媒圧縮機において、前記第一の油溝に連通し、反回転方向に終端を有する第二の油溝をジャーナル部の外周面に設けたことを特徴とする冷媒圧縮機。
【請求項2】 前記第二の油溝は、前記第一の油溝の偏芯部側端部に連通し、ジャーナル部の外周面の円周方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷媒圧縮機。
【請求項3】 前記第二の油溝の終端は、ジャーナル部の外周面でクランク軸の偏芯方向から反回転方向に60度〜120度の範囲内に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷媒圧縮機。
【請求項4】 密閉容器内に片持の軸受を有する往復動式の圧縮機構部と電動機とを備え、遠心力により吸い上げた潤滑油をクランク軸のジャーナル部に給油し、軸受で支持されたジャーナル部の外周面には螺旋状の第一の油溝と、前記外周面の中央寄りに貯油の機能を有する細径部とを設けた往復動式の冷媒圧縮機において、前記細径部から偏芯部側のジャーナル端部に向って、前記第一の油溝と略平行した終端を有する第二の油溝を設けたことを特徴とする冷媒圧縮機。
【請求項5】 前記第二の油溝の終端は、ジャーナル部の外周面でクランク軸の偏芯方向から反回転方向に60度〜120度の範囲内に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の冷媒圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫やショーケース等の比較的小型の冷凍装置に使用される往復動式の圧縮機構部を有する冷媒圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、比較的小型の冷凍装置に使用される往復動式の圧縮機構部を有する冷媒圧縮機は、図4の断面図に示すように、密閉容器5内に単相電源あるいはインバータ電源を使用する電動機7を下側に配置し、クランク軸15を介して上側に配置された圧縮機構部4を駆動するものが知られていた。
【0003】これらの冷媒圧縮機は一般的に回転方向が一定で、片持の軸受8とこの軸受で支持されるクランク軸15のジャーナル部9とで軸受部10を構成している。また、密閉容器5内の底部には潤滑油6を貯留しており、クランク軸15の下端部16から遠心力により吸い上げた潤滑油6は、クランク軸15の内径部11を通り、ジャーナル部9の下端側に設けた内径部11から外径へ貫通する給油孔12を介して軸受部10の下端側に供給している。
【0004】さらに、軸受部10の下端側に供給された潤滑油6は、ジャーナル部9の外周面に設けられた粘性ポンプとしての機能を有する螺旋状の第一の油溝17を通り、上端側に設けたジャーナル部9の外径と、偏芯部13へ通じる内径方向へ貫通する給油孔18を介して圧縮機構部4へ給油している。なお、ジャーナル部9の外周面の中央寄りには貯油の機能を有する非摺動面となる細径部19も設けられている。
【0005】ジャーナル部9の外周面に設けられている第一の油溝17の位置は、圧縮機構部4の圧縮開始から圧縮終了までの期間ピストン14に加わる圧縮ガスの圧力が、図5に示すように駆動するクランク軸15の偏芯部13に作用して発生する負荷により、クランク軸15を支持する軸受8とジャーナル部9で構成される軸受部10に加わるの負荷位置を避けている。
【0006】この負荷位置は、軸受部の要部断面及びジャーナル部の展開を示した図6に模して現している(ジャーナル部9の偏芯部13側の負荷20及び下端部16側の負荷21)位置であり、この反対側(軸の回転方向で約180度)となる位置に第一の油溝17を設けていた。
【0007】ここで、給油孔12から螺旋状の第一の油溝17に供給された潤滑油6は、一部が細径部19を循環して再び油溝17に入り、その後給油孔18に流入する過程で、軸受部10の隙間に入り潤滑を行っている。
【0008】ところで、従来の冷凍装置では作動冷媒としてCFC(クロロフルオロカーボン)系あるいはHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)系の冷媒が使用されてきたが、これらの冷媒はオゾン層破壊物質として全廃されることになり、これに代わってオゾン層破壊係数ゼロのHFC(ハイドロフルオロカーボン)系の代替冷媒に移行してきている。
【0009】ここで、従来の冷媒では含まれる塩素により、冷凍装置に使用している冷媒圧縮機の圧縮機構部の摺動面に塩化物皮膜を形成して潤滑性を良好にしていたが、代替冷媒は塩素を含まないためこのような効果が期待できない。さらに、代替冷媒は従来の冷媒より圧力が高いため圧縮機構部への負荷が増加するので、圧縮機構部を構成している軸受部であるクランク軸のジャーナル部と軸受は従来のものより一層耐磨耗性が求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、HFC系の代替冷媒を使用する比較的小型の冷凍装置では、これに使用される往復動式の圧縮機構部を有する冷媒圧縮機において、片持の軸受で支持されているクランク軸のジャーナル部と軸受で構成された軸受部は、従来の螺旋状の油溝からの給油では耐磨耗性を得るための油膜形成が不充分であるという課題がある。
【0011】本発明は、この軸受部の油膜形成を改善した冷媒圧縮機を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、密閉容器内に片持の軸受を有する往復動式の圧縮機構部と電動機とを備え、遠心力により吸い上げた潤滑油をクランク軸のジャーナル部に給油し、軸受で支持されたジャーナル部の外周面には螺旋状の第一の油溝を有する往復動式の冷媒圧縮機において、前記第一の油溝に連通し、反回転方向に終端を有する第二の油溝を設けたことによって、軸受部の油膜形成を助長するものである。
【0013】請求項2にかかる発明は、前記第二の油溝は、前記第一の油溝の偏芯部側端部に連通し、クランク軸の円周方向に設けたことによって、容易に軸受部の油膜形成を助長するものである。
【0014】請求項3にかかる発明は、前記第二の油溝の終端は、ジャーナル部の外周面でクランク軸の偏芯方向から反回転方向に60度〜120度の範囲内に設けたことによって、軸受部で最大負荷が加わる位置の油膜形成を助長するものである。
【0015】請求項4にかかる発明は、密閉容器内に片持の軸受を有する往復動式の圧縮機構部と電動機とを備え、遠心力により吸い上げた潤滑油をクランク軸のジャーナル部に給油し、軸受で支持されたジャーナル部の外周面には螺旋状の第一の油溝と、前記外周面の中央寄りに貯油の機能を有する細径部とを設けた往復動式の冷媒圧縮機において、前記細径部から偏芯部側のジャーナル端部に向って、前記第一の油溝と略平行した終端を有する第二の油溝を設けたことによって、容易に軸受部の油膜形成を助長するものである。
【0016】請求項5にかかる発明は、前記第二の油溝の終端は、ジャーナル部の外周面でクランク軸の偏芯方向から反回転方向に60度〜120度の範囲内に設けたことによって、軸受部で最大負荷が加わる位置の油膜形成を助長するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、従来と同一構成に関しては同一符号を用いる。
【0018】図1は、本発明の軸受部の要部断面及びジャーナル部の展開を示した図である。図中17は従来と同様の螺旋形状の第一の油溝であり、この溝に連通して反回転方向に終端25,26を有する第二の油溝27,28を設けることによって、給油孔12から油溝17に供給された潤滑油は、一部が油溝28へ供給され、さらに一部は細径部19を循環して再び油溝17に入り、その後給油孔18に流入するものと、一部は油溝27に供給される。
【0019】これらの供給過程で潤滑油は、ジャーナル部9の外周面と軸受8とで構成された軸受部10の隙間に入り潤滑を行っているが、本発明では軸受部10の負荷が大きくなる位置の近くまで油溝27,28により給油することで、摺動部の油膜形成が助長されて、HFC系の冷媒を使用しても耐磨耗性の高い冷媒圧縮機を供給できる。
【0020】図2は、本発明の第2の実施形態であるジャーナル部の展開を示した図である。本発明の冷媒圧縮機ではクランク軸を片持の軸受で支持しており、圧縮機構部のピストンに作用する圧縮ガスの圧力が、駆動するクランク軸の偏芯部に作用して発生する軸受部の負荷は、クランク軸の偏芯部側が大きく(図示した軸受負荷20に相当)下端側はその1/2以下(図示した軸受負荷21に相当)と小さい。
【0021】さらに、軸受部の負荷はその両端が最大となることから、ジャーナル部9の外周面に設けた螺旋状の第一の油溝17の偏芯部側端部に連通し、反回転方向の円周方向に終端25を有する第二の油溝27を軸受部のクランク軸の偏芯部側に設けることによって、軸受部の最大負荷位置の近くまで給油可能となり、最大負荷位置の油膜形成が助長されて、HFC系の冷媒を使用しても耐磨耗性の高い冷媒圧縮機を供給できる。
【0022】図3は、本発明の第3の実施形態であるジャーナル部の展開を示した図である。本発明ではジャーナル部9の偏芯部側最大負荷位置の近くへの給油を、細径部19に連通させた第一の油溝17と略平行した終端25を有する第二の油溝27を設けることによって、ジャーナル部9の偏芯部側最大負荷位置の強度低下を少なくすることが可能で、しかも最大負荷位置の油膜形成を助長することが可能となる。
【0023】なお、ジャーナル部の円周方向の最大負荷(図示した軸受負荷20に相当)位置は、クランク軸の偏芯方向から反回転方向で略120度〜180度であることから、油溝27の終端25の位置は同様に偏芯方向から反回転方向で60度〜120度であることが望ましく、これにより最大負荷を受ける軸受部の油膜形成が確保でき、磨耗防止と摺動抵抗低減が可能となり、延いては冷媒圧縮機の効率向上が可能となる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明によれば、密閉容器内に片持の軸受を有する往復動式の圧縮機構部と電動機とを備え、遠心力により吸い上げた潤滑油をクランク軸のジャーナル部に給油し、軸受で支持されたジャーナル部の外周面には螺旋状の第一の油溝を有する往復動式の冷媒圧縮機において、前記第一の油溝に連通し、反回転方向に終端を有する第二の油溝を設けたことによって軸受部の油膜形成が助長され、HFC系の冷媒を使用しても耐磨耗性の高い冷媒圧縮機を供給することが可能になる。
【0025】請求項2の発明によれば、前記第二の油溝は、前記第一の油溝の偏芯部側端部に連通し、クランク軸の円周方向に設けたことによって、最大負荷側の軸受部の油膜形成が助長され、HFC系の冷媒を使用しても耐磨耗性の高い冷媒圧縮機を供給することが可能になる。
【0026】請求項3の発明によれば、前記第二の油溝の終端は、ジャーナル部の外周面でクランク軸の偏芯方向から反回転方向に60度〜120度の範囲内に設けたことによって、軸受最大負荷部の油膜形成が助長され磨耗防止と摺動抵抗低減が可能になる。
【0027】請求項4の発明によれば、密閉容器内に片持の軸受を有する往復動式の圧縮機構部と電動機とを備え、遠心力により吸い上げた潤滑油をクランク軸のジャーナル部に給油し、軸受で支持されたジャーナル部の外周面には螺旋状の第一の油溝と、前記細径部から偏芯部側のジャーナル端部に向って、前記第一の油溝と略平行した終端を有する第二の油溝を設けたことによって、ジャーナル部の偏芯部側最大負荷位置の強度低下を少なくすることが可能で、しかも最大負荷側の軸受部の油膜形成が助長され、HFC系の冷媒を使用しても耐磨耗性の高い冷媒圧縮機を供給することが可能になる。
【0028】請求項5の発明によれば、前記第二の油溝の終端は、ジャーナル部の外周面でクランク軸の偏芯方向から反回転方向に60度〜120度の範囲内に設けたことによって、軸受最大負荷部の油膜形成が助長され、磨耗防止と摺動抵抗低減が可能になる。
【出願人】 【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
【出願日】 平成11年12月27日(1999.12.27)
【代理人】 【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
【公開番号】 特開2001−182656(P2001−182656A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−369931