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【発明の名称】 油圧ポンプ
【発明者】 【氏名】小田 徹也

【氏名】山元 賢二

【要約】 【課題】油圧ポンプにおいて、小型で油圧変動によるノイズを追従性良く低減でき、しかも油にガスが混入するおそれがないこと。

【解決手段】本ギアポンプでは、ポンプ室70内に対となる駆動ギア5と従動ギア6とを配置し、両ギア5,6の回転によって吸込室71から吐出室72へ作動油を送り出す。吐出室72に連通するキャパシティ室20aを有するノイズダンパ筒20を設ける。ノイズダンパ筒20の周壁面30及び底壁面31に密着固定される周壁部33及び底壁部34を有する有底筒状のエラストマ部材32を設ける。エラストマ部材32が容積変化して油圧変動を吸収する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】吸込室および吐出室を有するポンプハウジングの吐出室に連通するノイズダンパ筒を備える油圧ポンプにおいて、前記ノイズダンパ筒の内壁に略沿う有底筒状のエラストマ部材が収容されていることを特徴とする油圧ポンプ。
【請求項2】前記エラストマ部材は前記ノイズダンパ筒の内壁面に密着固定されていることを特徴とする請求項1記載の油圧ポンプ。
【請求項3】前記エラストマ部材の内面に表面積を増加させるための起伏形状が与えられていることを特徴とする請求項1又は2記載の油圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ギアポンプその他の油圧ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来より、ギアポンプは、簡単な構造を有する小型軽量のポンプとして、自動車における動力舵取装置、自動変速装置等の他、種々の産業分野に用いられている。この種のギアポンプの構造としては、ハウジング内部の空洞に一対のサイドプレートを嵌め合わせてポンプ室を区画し、このポンプ室の内部に互いに噛み合う一対のギアを収容して、各ギアの支軸を各サイドプレートに形成した支持孔によって嵌合支持すると共に、前記ポンプ室の内部に両ギアの噛み合い位置を挟んで作動油を吸い込むための低圧室および作動油を吐出するための高圧室を形成したタイプのものが一般的である。
【0003】一方、近年、省エネを図る目的で、小型で高い吐出圧力を持つ高回転形のギアポンプが要望されているが、高速化により油圧ショックや脈動に起因するノイズが大きくなるおそれがある。この種の問題はギアポンプに限らず、トロコイドポンプその他の油圧ポンプにおいても存在する。そこで、従来より、アキュームレータが用いられている。アキュームレータは、ガス室と油圧室とを持ち、両室を仕切る隔壁にピストンや隔膜を設ける構造である。しかし、このアキュームレータでは、万一、故障が生じた場合、油圧室の油にガスが混入する。また、急速な油圧変化には追従できない。さらに、ガス室を設ける必要があり、構造が大型になる等の難点がある。
【0004】そこで、本発明の課題は、小型で油圧変動によるノイズを追従性良く低減でき、しかも油にガスが混入するおそれのない油圧ポンプを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、吸込室および吐出室を有するポンプハウジングの吐出室に連通するノイズダンパ筒を備える油圧ポンプにおいて、前記ノイズダンパ筒の内壁に略沿う有底筒状のエラストマ部材が収容されていることを特徴とするものである。
【0006】本構成では、油圧変動のショックや脈動をエラストマ部材の弾性による体積変化により吸収するので、追従性良く油圧変動を吸収することができる。また、従来のアキュームレータのようにガス室を設ける必要がなく、小型化を図ることができる。さらに、従来のアキュームレータのように油にガスが混入するおそれがない。特に、エラストマ部材をもともとあるノイズダンパ筒の内部に設けたので、構造が簡単であり、また、エラストマ部材をノイズダンパ筒の内壁に略沿う有底筒状としたので、従来からあるスペースを利用しながらも十分な受圧面積を確保できる。したがって、少しの油圧変動にもエラストマ部材の十分な量の容積変化を得ることができ、この点からも、油圧変動に対する追従性を非常に良くすることができ、油圧変動を確実に吸収することができる。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1において、前記エラストマ部材は前記ノイズダンパ筒の内壁面に密着固定されていることを特徴とするものである。本構成では、請求項1記載の発明と同様の作用効果を奏する。加えて、エラストマ部材がノイズダンパ筒の内壁面に密着固定されているので、エラストマ部材が組立時のエア抜き作業の障害となることがない。請求項3記載の発明は、請求項1又は2において前記エラストマ部材の内面に表面積を増加させるための起伏形状が与えられていることを特徴とするものである。本構成では、請求項1又は2記載の発明の作用効果と同様の作用効果を奏する。加えて、受圧面積をさらに広くすることにより、油圧変動に対する追従性をさらに良くし、油圧変動をより確実に吸収することができる。起伏形状としては、例えばひだ形状やいぼ形状を示すことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る油圧ポンプの縦断側面図であり、図2は別角度からの断面図であり、図3は図2のIII −III 線に沿う断面図であり、図4は図2のIV−IV線に沿う断面図である。図1〜図4に示す油圧ポンプAは電動のギアポンプからなる。主に図2を参照して、本油圧ポンプAは、駆動軸1(モータ軸)を有する電動モータ2と、ドライブジョイント3を介して前記駆動軸1と連動する被駆動軸4(ポンプ軸)と、この被駆動軸4を介して駆動される駆動ギア5と、この駆動ギア5に噛み合う従動ギア6と、これら駆動及び従動ギア5,6の噛み合いにより形成される吸込室71,吐出室72(図3参照)を有するポンプハウジング7と、このポンプハウジング7を両側から支持する第1及び第2ハウジング支持体8,9と、第1ハウジング支持体8と組み合わされた状態で第2ハウジング支持体9及びポンプハウジング7の外側を覆う有底円筒状のタンクハウジング10とを備えている。
【0009】図1を参照して、ポンプハウジング7の筒壁部7bに形成された被嵌め込み部93に、有底のノイズダンパ筒20が嵌め込み固定されている。このノイズダンパ筒20は、前記吐出室72に連通し且つ吐出室72よりも大容積のキャパシティ室20aを有している。本実施の形態の特徴とするところは、ノイズダンパ筒20の内壁である、周壁面31および底壁面32に沿う有底筒状のゴム等のエラストマ部材32を、ライニング(内張り)により固定し、脈動その他の油圧変動を簡単な構造にて効果的に抑制する点にある。
【0010】キャパシティ室20aは有底筒状のエラストマ部材32により実質的に区画される。エラストマ部材32は独立気泡フォーム構造を有することが、容積変化を大きくできる点で好ましい。エラストマ部材32をライニングするには、例えば焼き付けや接着を用いれば良い。図1,図2および図3を参照して、ポンプハウジング7は、駆動ギア5及び従動ギア6を収容し、互いに連通する長円形のギア室としてのポンプ室70を有する筒状のボディ7aと、前記ポンプ室70の両側開放部を閉鎖する一対のサイドプレート7b,7cとを備えている。ポンプハウジング7は、これらサイドプレート7b,7cに穿設された2組の軸受孔11,12に、前記被駆動軸4及び該被駆動軸4と平行な従動軸51を介して駆動ギア5及び従動ギア6を交互に噛み合わせて回転自在に支持し、この噛み合い位置を挟んだ両側に前記吸込室71及び吐出室72を形成して、吸込室71に吸込まれた作動油を前記駆動及び従動ギア5,6の歯間に受け入れ、ポンプ室70の内周面との間に封止して吐出室72に送り出すポンプ作用をなすように構成されている。図1において、49,50は各サイドプレート7b,7cと、対応する支持体9,8の板壁9a,8aとの間を密封するシール部材である。
【0011】ボディ部7aの一箇所には、前記ポンプ室70に開口する吸込口73が、反対側には軸長方向に貫通する第2吐出油路74が、さらに一方のサイドプレート7bには、前記吐出室72に開口する吐出口を有する第1吐出油路75がそれぞれ設けられている。吸込口先であるタンクハウジング10に連通する第1吸込管29と、吸込口73を形成するL字形の第2吸込管27の間は、後記する低圧室の内周面に沿って上向きに延びるゴム製の消音管80が接続されて、前記駆動及び従動ギア5,6の1組の噛み合い歯部間に封止された圧油が吸込室71に戻されるときに生ずる音を消すことができるようにしている。上記の第1吸込管29、消音管80および第2吸込管27により吸込油路35が形成されている。
【0012】吐出油路36は、サイドプレート7bに穿設された前記第1吐出油路75、第1連通孔91、キャパシティ室20a、第2連通孔92、ポンプハウジング7のボディ7aに形成された第2吐出油路74、および第1ハウジング支持体8に形成され連結口37で開口するL字状の第3吐出油路81を含む。上記の連結口37は外部の吐出先、例えばパワーステアリング装置に連結される連結口である。ポンプハウジング7を支持する第1ハウジング支持体8は、前記電動モータ2のモータハウジングに着脱可能に取り付けられ、さらに第2ハウジング支持体9は、図3に示すように前記ボディ部7aの外面に沿って配置される4本の固定ボルト40を介して前記第1ハウジング支持体8の板壁部8aに着脱可能に取り付けられ、この第2ハウジング支持体9の取り付けにより前記ポンプハウジング7を挟着固定するようにしている。
【0013】第2ハウジング支持体9は、前記第1吐出油路75に連通する第1連通孔91及び該第1連通孔91と平行状に穿設された第2連通孔92を有し、ポンプハウジング7の軸長方向一端に対接する板壁部9aと、該板壁部9aの外周部に連設された筒壁部9bとを備え、該筒壁部9bの開放端側内周に、後述する嵌め込み固定部23がねじ嵌合される被嵌め込み部93を設け、この被嵌め込み部93の雌ねじに、第1吐出油路75を介して前記吐出室72に連通し、前記吐出室72よりも大容積のキャパシティ室20aを有する有底のノイズダンパ筒20を着脱可能に取り付けている。
【0014】筒壁部9bは、ノイズダンパ筒20の開放端から底にかけて挿嵌される長さを有し、該筒壁部9bの板壁部9a側内周面と前記ノイズダンパ筒20の開放部外周面との間にシール体13を介在させて圧油の洩れを防止している。また、前記筒壁部9bの開放端側外周面には、二つの回転止め突起94,94を180度の位相差で一体に突設している。ノイズダンパ筒20は、筒部21の底22近くを嵌め込み固定部23とし、該嵌め込み固定部23の外周面には、前記雌ねじに螺合する雄ねじを設け、該雄ねじ部の雌ねじ部への螺着により、第2ハウジング支持固体9に着脱可能に取り付けている。
【0015】ノイズダンパ筒20の底22の外周には、複数個の係合用凹部24・・を周方向に等間隔で設け、この係合用凹部24・・に工具を係合させ、さらに前記第2ハウジング仕切板体9の回転止め突起94に工具を係合させた状態でノイズダンパ筒20を回すことにより、第2ハウジング支持体9を共回りさせることなくノイズダンパ筒20を取り付けることができるようにしている。ノイズダンパ筒20の底22の内面は、図1に示すように外周部から径方向中央にかけて連続して内側に湾曲する曲面形状とし、圧油の作用点を分散させ、高圧の圧油に耐えられるようにしている。
【0016】第1ハウジング支持体8は、前記第2吐出油路74に連通する略L字形の第3吐出油路81と、該第3吐出油路81に開口するリリーフ油路82と、該リリーフ油路82に装着するリリーフ弁14を介して前記リリーフ油路82に連通する環状の油戻し路83と、前記被駆動軸4が挿通される挿通穴84とを備え、該挿通穴84にオイルシール15を設けている。油戻し路83は、前記タンクハウジング10内に画成される低圧室16と連通し、リリーフされた作動油を低圧室16に戻すことができるようになっている。
【0017】リリーフ弁14は、リリーフ通路82を閉じる弁体14aと、該弁体14aを付勢する弁ばね14bと、これら弁体14a及び弁ばね14bを保持する弁ハウジング14cとを備えたカートリッジタイプであり、リリーフ通路82を着脱自在に挿嵌保持され、前記第3吐出油路81の過圧時、前記弁体14aが開くようにしている。また、弁ハウジング14cは、前記第2ハウジング支持体9の板壁部9aに当接して抜け止めされている。
【0018】タンクハウジング10は、その開口部鍔縁10aに突き当てられたクランプ環17及び該クランプ環17を軸長方向に貫通する4本の固定ボルト40・・を介して第1ハウジング支持体8の一側面に着脱可能に取り付けられている。タンクハウジング10の内側は、作動油を収納する油タンクとして利用される。このタンクハウジング10内に円形の仕切板18を挿嵌固定し、該仕切板18と第1ハウジング支持体8との間に、前記ポンプハウジング7、第2ハウジング支持体9及びノイズダンパ筒20を囲繞する低圧室16を、仕切板18と底部10bとの間にリターン室19をそれぞれ画成している。このリターン室19には、サブタンク(図示せず)に貯蔵されている作動油が自重により落下供給され、さらにこのリターン室19から3つの油戻し穴18aを経て低圧室16に満杯になるまで供給される。
【0019】仕切板18の径方向下側には、前記油戻し穴18aが穿設され、リターン室19の油戻し穴18aから低圧室16に減圧して戻すようにしている。さらに前記第2ハウジング支持体9の板壁部9aには、前記吐出室72に開口る弁孔95が設けられ、該弁孔95に弁体及び該弁体を付勢する弁ばねを有するチェック弁41を設け、油圧作動機器の一方側作動室に圧油が供給されている状態で前記電動モータ2が故障なとにより停止した場合、圧油が供給されている高圧側油圧路の作動油の一部を吐出室72からチェック弁41を経てノイズダンパ筒20内へ返戻することができるようにしている。
【0020】駆動ギア5を支える被駆動軸(ポンプ軸)は、第1ハウジング支持体8の挿通孔84を貫通して電動モータ2側に突出し、第1ハウジング支持体8の他側面に固定支持された電動モータ2の駆動軸1(モータ軸)に同軸的に突き合わせてあり、該駆動軸1と前記被駆動軸4とが、前記ドライブシャフト3によって連結されている。以上の如く取り付けられたドライブジョイント3は、電動ポンプにポンプ動作を行わせるべく、駆動源たる電動モータ2の回転を駆動軸1を介して被駆動軸4に伝える動作をなす。電動ポンプは、電動モータ2の駆動により、駆動軸1(セータ軸)、被駆動軸4(ポンプ軸)を経て駆動ギア5及び従動ギア6が回転し、これら駆動及び従動ギア5,6の回転に伴い低圧室16の作動油が、吸込油路35の消音管80および第2吸込管27から吸込室71に吸い込まれ、さらに各歯部間の空間とギア室内周面とにより画成される各油室が吐出室72に開放される都度、圧油が発生し、この圧油が第1吐出油路75及び第1連通路91を経て、ノイズダンパ筒20内に供給される。
【0021】このノイズダンパ筒20は、そのキャパシティ室20aが吐出室72よりも大容積になっているので、圧油の脈動が小さくなる。特に、油圧変動のショックや脈動をエラストマ部材32の弾性による体積変化により吸収するので、追従性良く油圧変動を吸収することができる。また、従来のアキュームレータのようにガス室を設ける必要がなく、小型化を図ることができる。さらに、従来のアキュームレータのように油にガスが混入するおそれがない。
【0022】特に、エラストマ部材32をもともとあるノイズダンパ筒20の内部に設けたので、構造が簡単であり、また、エラストマ部材32をノイズダンパ筒20の内壁に略沿う有底筒状としたので、従来からあるスペースを利用しながらも十分な受圧面積を確保できる。したがって、少しの油圧変動にもエラストマ部材32の十分な量の容積変化を得ることができ、この点からも、油圧変動に対する追従性を非常に良くすることができ、油圧変動を確実に吸収することができる。
【0023】さらに、有底筒状のエラストマ部材32をライニングによりノイズダンパ筒20の内壁に密着させてあるので、エラストマ部材32が組立時のエア抜き作業の障害となることがない。このようにノイズダンパ筒20を設けて圧油の脈動を小さくするから、脈動による被駆動軸4の振動を小さくすることができる。ノイズダンパ筒20内の圧油は、第2連通孔92、第2及び第3吐出油路74,81を経て油圧作動機器の一方側作動室に供給される。油圧作動機器の他方側作動室に連通する返油管42からリターン室19に戻された作動油は仕切板18の油戻し孔18aから減圧して低圧室16に戻される。
【0024】次いで、図5は本発明の他の実施の形態を示している。図5を参照して、本実施の形態が図1の実施の形態と異なるのは、本実施の形態のエラストマ部材32Aはノイズダンパ筒20の内壁面である周壁面30および底壁面31に密着固定されておらず、エラストマ部材32Aの外面とこれに対向するノイズダンパ筒20の内壁面との間に若干の隙間が設けられていることである。この隙間は密閉されておらず、油が充満している。また、エラストマ部材32Aの内面には、表面積を増加させるための起伏形状として蛇腹部38が設けられている。
【0025】本実施の形態では、図1と同様の作用効果を奏する。加えて、蛇腹部38によって受圧面積をさらに広くすることにより、油圧変動に対する追従性をさらに良くし、油圧変動をより確実に吸収することができる。起伏形状としては、例えばいぼ形状やひだ形状であっても良い。なお、エラストマ部材32Aを内外に貫通する小孔を設けておいても良い。なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明をトロコイドポンプ等の他の公知の油圧ポンプに適用することができる。その他、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年12月24日(1999.12.24)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−182648(P2001−182648A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−367641