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【発明の名称】 圧縮機および冷凍機
【発明者】 【氏名】平塚 善勝

【要約】 【課題】運転時におけるピストン部材とシリンダ部材との非接触を確保する。

【解決手段】断面円筒状の圧縮機ケーシング1の一方の端板部材1aの中央部を貫通する状態でピストン部材2が固定されているとともに、ピストン部材2に対して非接触状態で往復動できるようにシリンダ部材3の両端部がばね部材4を介して圧縮機ケーシング1の内面所定位置に支持されており、ピストン部材2の外周面がテーパ面2aに形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮機本体(1)(1a)の所定位置にピストン部材(2)を設けているとともに、駆動源(5)(6)(7)により往復動されるシリンダ部材(3)を設けており、しかも、シリンダ部材(3)をピストン部材(2)に対して非接触状態で往復動させるべくシリンダ部材(3)の両端部をばね部材(4)により支持させているとともに、ピストン部材(2)の外表面を半径が徐々に変化するテーパ面(2a)に形成していることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】 前記ばね部材(4)はフレクチャばね(4)である請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】 前記テーパ面は、シリンダ部材(3)の抜け方向の端部の半径が小さくなるように設定されたものである請求項1または請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】 請求項1から請求項3の何れかの圧縮機をスターリング型の冷凍機の圧縮源として採用することを特徴とする冷凍機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は圧縮機および冷凍機に関し、さらに詳細にいえば、ピストン部材とシリンダ部材とを相対的に往復動させるようにしたリニア駆動の圧縮機およびこの圧縮機を圧縮源として採用する冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、スターリング型の冷凍機の圧縮源としてリニア駆動の圧縮機が採用されている。そして、このリニア駆動の圧縮機においては、冷凍機の信頼性を向上させるために、オックスフォード型の軸受けを使用することが一般的である。
【0003】この場合には、ピストン部材とシリンダ部材とを非接触状態に保持したままで相対的往復動を行わせることができ、この結果、ピストン部材とシリンダ部材との摩耗を未然に防止して性能劣化を避けることができる。
【0004】この場合には、ピストン部材とシリンダ部材との非接触状態を確保するために、圧縮機の組立時に、3次元測定機を用いて組み立て状態を確認し、または治具を用いて組立精度を確保するなどの対処が従来から行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の構成の圧縮機においては、あくまでも非動作状態におけるピストン部材とシリンダ部材との非接触状態が確認されているだけであるから、運転状態においてピストン部材とシリンダ部材とが非接触であることまでは保証されていない。ここで、ピストン部材とシリンダ部材とのクリアランスを大きくすれば、運転状態における非接触状態を確保することができるが、ピストン部材とシリンダ部材との間に気密保持が不十分になり、十分な性能を発揮させることができなくなってしまう。したがって、ピストン部材とシリンダ部材とのクリアランスを可能な限り小さくするとともに、この状態において非接触状態を確保することが要求されることになる。
【0006】そして、このようにクリアランスを小さく設定した場合には、非動作状態におけるピストン部材とシリンダ部材との非接触が確保されていたとしても、往復動に伴う支持ばねの変形などに起因するぶれによって、ピストン部材とシリンダ部材とが接触し、摩耗が発生して性能劣化を招いてしまう可能性があり、しかもこのような状態か否かを簡単には判定することができないので、運転状態においてピストン部材とシリンダ部材とが接触する圧縮機を採用してしまい、この結果、圧縮機の信頼性が低下してしまうという不都合がある。
【0007】具体的には、宇宙用の冷凍機に要求される動作寿命は5万時間であるから圧縮機の動作寿命も5万時間以上でなければならない。しかし、ピストン部材に摺動材を使用した固体潤滑式のスターリング冷凍機用圧縮機の動作寿命は現段階で数千時間程度である。これは、摺動材、シリンダ部材の摩耗によるシール性能の低下に伴う冷凍性能の低下が原因である(図3参照)。同様に、運転状態においてピストン部材とシリンダ部材とが接触する圧縮機の動作寿命も数千時間程度にまで短くなってしまう。
【0008】
【発明の目的】この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ピストン部材とシリンダ部材とを非接触状態で相対的に往復動作させる状態を確実に確保することができる圧縮機およびこのような圧縮機を圧縮源として採用する冷凍機を提供することを目的としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】請求項1の圧縮機は、圧縮機本体の所定位置にピストン部材を設けているとともに、駆動源により往復動されるシリンダ部材を設けており、しかも、シリンダ部材をピストン部材に対して非接触状態で往復動させるべくシリンダ部材の両端部をばね部材により支持させているとともに、ピストン部材の外表面を半径が徐々に変化するテーパ面に形成しているものである。
【0010】請求項2の圧縮機は、前記ばね部材としてフレクチャばねを採用するものである。
【0011】請求項3の圧縮機は、前記テーパ面がシリンダ部材の抜け方向の端部の半径が小さくなるように設定されたものである。
【0012】請求項4の冷凍機は、請求項1から請求項3の何れかの圧縮機をスターリング型の冷凍機の圧縮源として採用するものである。
【0013】
【作用】請求項1の圧縮機であれば、圧縮機本体の所定位置にピストン部材を設けているとともに、駆動源により往復動されるシリンダ部材を設けており、しかも、シリンダ部材をピストン部材に対して非接触状態で往復動させるべくシリンダ部材の両端部をばね部材により支持させているとともに、ピストン部材の外表面を半径が徐々に変化するテーパ面に形成しているのであるから、ピストン部材に対してシリンダ部材を非接触状態で往復動させて流体の吸入、圧縮、吐出を行わせることができる。そして、ピストン部材の外表面をテーパ面に形成したことに起因して、クエット流れが形成され、このクエット流れがガスベアリングとして機能するので、ピストン部材とシリンダ部材との非接触状態を確実に確保することができる。したがって、非接触状態で往復動させることに起因して、ピストン部材、シリンダ部材の摩耗を未然に防止し、性能劣化を未然に防止することができる。請求項2の圧縮機は、前記ばね部材としてフレクチャばねを採用するのであるから、他のばね部材を採用する場合と比較してピストン部材のぶれを大幅に低減することができるほか、請求項1と同様の作用を達成することができる。
【0014】請求項3の圧縮機であれば、前記テーパ面がシリンダ部材の抜け方向の端部の半径が小さくなるように設定されているのであるから、テーパ面を逆向きに形成する場合と比較して、ピストン部材とシリンダ部材との運転状態における接触をより確実に防止することができるほか、請求項1または請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0015】請求項4の冷凍機であれば、請求項1から請求項3の何れかの圧縮機をスターリング型の冷凍機の圧縮源として採用するのであるから、圧縮源として採用される圧縮機の運転状態において非接触状態を確保することができ、ひいては冷凍機全体としての信頼性を高めることができるとともに、冷凍効率をも高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、この発明の圧縮機および冷凍機の実施の態様を詳細に説明する。
【0017】図1はこの発明の圧縮機の一実施態様を示す縦断面図である。
【0018】この圧縮機は、断面円筒状の圧縮機ケーシング1の一方の端板部材1aの中央部を貫通する状態でピストン部材2が固定されているとともに、ピストン部材2に対して非接触状態で往復動できるようにシリンダ部材3の両端部がばね部材4を介して圧縮機ケーシング1の内面所定位置に支持されている。そして、シリンダ部材3を包囲するように永久磁石5および磁路形成部材6を設け、この磁路形成部材6の所定位置に形成したエアギャップに進退自在に設けたコイル部材7とシリンダ部材3の所定位置とを連結部材8によって連結している。なお、圧縮機ケーシング1の内面所定位置に支持連結部材9を設けて、前記ばね部材4および磁路形成部材6を支持している。また、前記永久磁石5、磁路形成部材6およびコイル部材7でリニアモータを構成している。さらに、前記ばね部材4としては従来公知の種々のばね部材を採用することが可能であるが、SUS、BrCuなどからなる弾性板部材に対して渦巻き状の複数本のスリットを形成してなるばね部材(フレクチャばね、図2参照)を採用することが好ましく、往復動に伴うシリンダ部材3のぶれを大幅に抑制することができる。さらにまた、前記ピストン部材2とシリンダ部材3とで圧縮室を形成しているとともに、ピストン部材2を軸方向に貫通する貫通孔2bによって圧縮室と外部配管(図示せず)とを連通している。なお、流体の吸入、圧縮、吐出を行わせるための弁部材は図示を省略している。
【0019】前記ピストン部材2は、その外周面を基部側が大径、先部側が小径となるテーパ面2aに形成している。なお、このテーパ面2aは、例えば、ピストン部材2の基部におけるシリンダ部材3とのクリアランスが10〜15μm、ピストン部材2の先部におけるシリンダ部材3とのクリアランスが20μmとなるように設定されている。
【0020】上記の構成の圧縮機の作用は次のとおりである。
【0021】コイル部材7に対して供給する電流の方向を制御することにより、コイル部材7を往動、もしくは復動させ、コイル部材7と共にシリンダ部材3を往動、もしくは復動させることができる。したがって、シリンダ部材3を往復動させることにより、流体の吸入、圧縮、吐出を行わせることができる。
【0022】また、シリンダ部材3の両端部がばね部材4によって支持されているので、シリンダ部材3の往復動に拘わらず、ピストン部材2との摺動を防止し、圧縮機の信頼性を高めることができると思われる。
【0023】しかし、ばね部材4としてフレクチャばねを採用した場合であっても、ストロークしたところ(変形したところ)で径方向の剛性が弱くなり、シリンダ部材3などの自重の影響を受けて、非変形状態の中心位置に対して変形状態の中心位置がずれてしまう可能性がある。そして、中心位置がずれてしまうと、ピストン部材2とシリンダ部材3とが接触してしまい、運転に伴って摩耗が発生することになる。しかし、ピストン部材2の外周面をテーパ面に形成しているので、クエット流れ(平行な2つの平面の間に流体を満たし、一方の平面壁がその面の方向に一定速度で運動しているとき、2平面壁の間に生じるせん断流れ)によるガスベアリングの作用によって上記中心位置のずれを自動的に修正し、ピストン部材2とシリンダ部材3との非接触状態を確実に保持し続けることができる。
【0024】この結果、組立時におけるピストン部材2とシリンダ部材3とのクリアランスを中心位置のずれを考慮して大きくしなくても、両者の接触を確実に阻止することができ、ひいてはクリアランスを小さくして十分な圧縮効率を達成することができる。
【0025】また、図1の実施態様の圧縮機をスターリング型の冷凍機の圧縮源として採用することが可能であり、この場合には、圧縮源の信頼性を高めることによって冷凍機全体としての信頼性を高めることができるとともに、冷凍効率を高めることができる(摩耗量/シールクリアランスに対応する冷凍能力低下率を示す図3を参照)。
【0026】
【発明の効果】請求項1の発明は、ピストン部材の外表面をテーパ面に形成したことに起因して、クエット流れが形成され、このクエット流れがガスベアリングとして機能するので、ピストン部材とシリンダ部材との非接触状態を確実に確保することができ、ひいては、ピストン部材、シリンダ部材の摩耗を未然に防止し、性能劣化を未然に防止することができるという特有の効果を奏する。
【0027】請求項2の発明は、他のばね部材を採用する場合と比較してピストン部材のぶれを大幅に低減することができるほか、請求項1と同様の効果を奏する。
【0028】請求項3の発明は、テーパ面を逆向きに形成する場合と比較して、ピストン部材とシリンダ部材との運転状態における接触をより確実に防止することができるほか、請求項1または請求項2と同様の効果を奏する。
【0029】請求項4の発明は、圧縮源として採用される圧縮機の運転状態において非接触状態を確保することができ、ひいては冷凍機全体としての信頼性を高めることができるとともに、冷凍効率をも高めることができるという特有の効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【出願日】 平成11年11月11日(1999.11.11)
【代理人】 【識別番号】100087804
【弁理士】
【氏名又は名称】津川 友士
【公開番号】 特開2001−132637(P2001−132637A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−321192