トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F03 液体用機械または機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 ケーソン長さ短縮型振り子式波力発電装置
【発明者】 【氏名】渡部 富治

【要約】 【課題】エネルギー取得効率の高い振り子式波力発電装置において、波長が長くエネルギー密度も高い海外の沿岸への設置に適する、高効率を維持しながらケーソン長さ増大を抑制し、発電コストを下げ、荒天時の安全性を高めた改良型の波力発電装置を得ることである。

【解決手段】ケーソン1内に定常波を形成し、定常波の節に振り子2を取り付けた振り子式波力発電装置において、振り子の後側の固定壁4までの水室3の水深を浅くすることで定常波の節が発生する位置を固定壁側に移動させ、この後側の水室幅を広げた寸法形状とした。また、荒天時の過大入力に備え、振り子振れ角が過大入力警戒域を超えた時、振り子の両脇から水漏れによるスピル流発生を促進する位置に、水室幅を広げる境界線を置いた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーソンによって構成する水室内に、沖合いから海岸に向かって進行する進行波と、頑丈な固定壁にぶつかって沖合いに向かい後退する後退波との干渉により定常波を発生させると共に、この定常波の節に相当する位置に波と共振する振り子を配置した振り子式波力発電装置において、ケーソンに設けた水室の水深を、振り子取り付け位置から後壁となる前記固定壁に向かい滑らかに浅くすることにより、定常波の節の発生位置を後壁側に移動させたことを特徴とするケーソン長さ短縮型振り子式波力発電装置【請求項2】 ケーソンに設けた水室の幅を、振り子取り付け位置から後壁に向かって滑らかに広げることにより、水室の水深が浅くなることで振り子の後壁側に生ずる水位上昇を減殺し振り子の波との共振条件変動を抑える水室寸法を有する請求項1に記載のケーソン長さ短縮型振り子式波力発電装置【請求項3】前記の水室の幅を広げる位置は、振り子振れ角が定格域を超え過大入力警戒域に達した時、振り子板の両脇から積極的に水漏れするスピル流発生を促す配置としたことを特徴とする請求項1若しくは2に記載のケーソン長さ短縮型振り子式波力発電装置
【発明の詳細な説明】【発明の属する技術分野】
【0001】本発明は、海洋の波浪エネルギーを機械力に変換し発電する装置の技術分野に属し、とりわけケーソン内部に進行波と後退波の干渉による定常波を作り出すことで、性格の異なる位置エネルギーと運動エネルギーに二分された波浪エネルギーを取り出しやすい単一形態に変換した上で、運動エネルギーの吸収に適した定常波節部分に振り子を設けた波力発電装置の改良に関する。ただし、この装置で得られる動力は全部電力に変換されなくとも、海水淡水化装置や養殖漁業、深層水汲み上げ用等のポンプ動力用に直接利用することもでき、発電用にのみ用途を限定するものではない。
【0002】
【従来の技術】従来の波力発電装置は、性格の異なる位置エネルギーと運動エネルギーに二分された波浪エネルギーの吸収にあたり、一方のエネルギー吸収のみに焦点を当てた装置が多く、両方のエネルギー吸収を狙っていても、中途半端な装置が殆どを占めていた。その中で、本発明者は室蘭工大式ペンデュラ波力発電装置の計画と実地テストに、深く関わり合ってきた。その技術の核心部分は、日本国特許第2539742号及び特開平7−119608号により開示してきた。この新しい技術は、波浪の波動としての性質をうまく利用し、ケーソン内に進行波と、頑丈な固定壁にぶつかって沖合いに後退する後退波との干渉波による定常波を実現させることにより、位置エネルギーを零とし運動エネルギーを倍加させた定常波の節部分で、波に共振する振り子を使用し、世界一の60%以上という一次エネルギー変換効率を達成してきた。しかし、振り子の取り付け位置から波のぶつかる固定壁面までの距離は、波の波長の1/4という比較的長い長さとなり、ケーソン建造費用が総コストの7〜8割を占めてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする第一の課題は、高い変換効率の振り子式波力発電装置の効率を低下させることなく、装置全体のコストを低下させることである。第二の課題は、日本沿岸における波長の凡そ2倍程度の波長で、エネルギー密度も大きい波が得られる海外の低開発国等での、振り子式波力発電装置実用化の気運高まりにも応えられるような、荒天時の安全性を高めケーソン寸法増大を抑えた振り子式波力発電装置を得ることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するために発明者が考えたのは、定常波の節が発生する位置を固定壁である後壁側に移動させ、従って振り子の取り付け位置も後壁側に移動させる工夫である。ケーソン内部の水室水深は、従来の技術では一定としてきた。しかし水深と波の波長との間には、水深が浅くなると波長も短くなるという関係がある。この関係を利用し、水室の水深を振り子取り付け位置から後壁に向かって滑らかに浅くすることにより、定常波の節発生位置を後壁側に移動させることができると考えた。この効果は実験により確かめることができたが、振り子の後壁側水面に現れる水位上昇も相当な高さとなって、振り子の波との共振条件にもかなり影響を与える。振り子の調整だけで共振条件を満足させることができなくなると、装置の高効率を保てなくなり、なんらかの補正手段が必要となってくる。振り子の後壁側水面の過度な水位上昇を緩和する手段として、振り子の取り付け位置から後壁に至るまでの、ケーソンに設けた水室の幅を滑らかに広げ適度な寸法とすることで、振り子が波に共振するよう復元モーメントを調整可能とした。この結果、波がぶつかる後壁の幅も広がり、荒天時のケーソンの後壁部の安全性が高まるばかりでなく、水室の幅が広がる位置を、振り子が定格出力の揺動角を超えて過大入力警戒角度まで振れた時、振り子の両脇から積極的に水漏れを促しスピル流を発生させる位置とすることで、振り子に連動している機械系統に過大波力が及び難い構造としている。
【0005】
【作用】上記のように、振り子取り付け位置から後壁に向かって、滑らかに水深を浅くしてケーソン長さを短縮した振り子式波力発電装置に進行波が押し寄せると、板状の振り子は後壁の方に揺れるが、この振れ角にほぼ比例する体積の海水が後壁の方に移動する。この移動する海水も進行波からエネルギーを受け取り、これを後壁の方に伝える波を形成するが、水室内の水深の減少により、元の進行波よりも波長の短い波となる。水室内で水深が深い断面と浅い断面とで比較すると、この間でエネルギーの授受がなければ、エネルギー保存の法則が当てはまることになるが、この両断面においてエネルギーの伝達に関わる水分子の量は異なっている。即ち、同一のエネルギーを伝達しているのに水深の浅い断面の水分子は少ない量であり、エネルギー密度を高めていることは当然の現象である。波の形態でエネルギー密度を高める方法は、振動数を高めることであり、それはとりもなおさず波長が短くなることでもある。定常波の節が現れる位置は、後壁からの距離が波長の1/4に相当する位置であり、ここに振り子を取り付ける波力発電装置のケーソンは、波長の短縮による分だけその長さが短くなっている。
【0006】ケーソンの内部に設けられる水室の水深が、振り子取り付け位置から後壁に向かって滑らかに浅くなっていると、振り子の後壁に向かう揺動の後に、水深の浅い水室の水位はかなり上昇する。水深が一定であった従来の水室でも、この水位の上昇が現れて、これによる静水圧が板状の振り子の全面に及び、振り子を沖に向かって揺り戻すばね作用を果たしていると考えられる。振り子は波と共振することが発電効率を最大にするポイントであった。従来の振り子を水深が浅くなった水室に設置すると、従来の水室で波と共振するように調整された振り子は、より早くより大きなばね作用力を受けることになり、波との共振条件を見直さなければならなくなる。このため振り子自身の設計変更で対処し難い場合に備え、前記水室内の水位上昇を緩和すべく、振り子取り付け位置から後壁に向かって水室の幅を広げている。この結果、ケーソン内の水室寸法の適度な選択が、振り子の波との共振条件の調整を容易にさせているので、波力発電装置の高効率運転を常に維持しやすくしている。尤も、波力発電装置の効率を高める上では、もうひとつ負荷とのマッチングを図ることも重要であるが、インピーダンスマッチングの調整作業は、多くの他の装置でも行われている作業で、特に波力発電装置に特有の詳細な部分は、本発明の理解の助けにはならず、説明を省略することにした。
【0007】本発明では、ケーソン内部の水室の幅を、振り子の取り付け位置から後壁に向かって広げているが、この水室の幅を広げる位置を、振り子が定格運転の振れ角を超えて過大入力警戒振れ角となる位置としているので、荒天時には振り子の振れ角が過大入力警戒振れ角を超えると、振り子の両脇から水漏れとなるスピル流が発生する。スピル流となる海水は振り子に圧力を及ぼさずに後壁側の水室水位を上昇させる。この結果、過大な進行波の圧力に対抗する水圧が振り子の反対面に生じ、過大入力を緩和する作用を果たす。更に、水室幅の拡大は、波がぶつかる後壁の面積が増大することなので、過大入力を分散する作用があり、後壁となるケーソンの強度を相対的に高める結果となる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明を詳述するにあたり、従来の振り子式波力発電装置におけるケーソン内部の断面図や、波長、波周期と水深の関係を示す線図、定常波そのものの説明のための線図等を参照しながら、本発明との関連を説明する。振り子式波力発電装置の本格的な実用化のための大型プラントは、残念ながらまだ建設されていないが、そのイメージ図は末尾の参考文献を参照されたい。実証のためのテストプラントは、室蘭工大式ペンデュラ波力発電装置として、長年の実績がある。そこでの一次エネルギー変換効率が、60%以上になるという世界最高の実績を示した装置の基本原理は、図1のケーソン断面図により説明する。図1において、1で示すケーソンの内部には水室3が形成されており、水室の右端は海面に向かって開放されており、左端は波がぶつかる固定壁の後壁4となっている。水室3の右端から流入する進行波は左方向へと進み、後壁4にぶつかって反射波となり右方向へ引き返す。この左方向へ進む進行波と右方向へ進む反射波である後退波とは互いに干渉する結果、定常波がケーソン1の内部に形成される。ここで波浪のエネルギーを機械力に変換し、それを発電エネルギーにするための振り子2は、後壁4からの距離が波長の1/4に相当するdだけ離れた位置に取り付けられる。振り子2はポンプ5の回転軸を兼ねている揺動軸6に固定されており、波力を効率良くポンプ5の仕事に変えることができる。ここにおいて水粒子の上下方向運動成分からなる位置エネルギーと、水平方向運動成分からなる運動エネルギーは、定常波というケーソン内部の振動の腹と節になる特異点において、互いのエネルギーを交換し合い、腹では位置エネルギー、節では運動エネルギーに特化している。後壁4は腹であり、ここからdだけ離れた振り子2の取り付け位置は節である。従って、後壁4では水粒子は上下動のみを繰り返し、振り子板附近では水粒子は水平往復運動をくりかえす。その中間位置では両者が混合した斜めの往復運動が観察される。この中で、振り子2は水粒子の水平往復運動によるエネルギーだけの吸収に特化した機構なので、定常波をケーソン内に形成し、振り子により波浪エネルギーを吸収する本発明の基本着想の合理性が理解されよう。
【0009】一般的な理解力を有する人達に対して、定常波がなぜ生まれ、波長の1/4に相当する位置になぜ節が生ずるかという基本点に関し、判りやすい説明は少なかった。そこで数式を一切用いずに12枚の時系列線図によって、この点を判りやすく説明することを試みた。図2は、360°回転する速度ベクトルを有する波が、30°ずつ回転した時の12枚の線図であり、沖の方からケーソン内の固定壁に向かう進行波を実線の曲線で表し、固定壁でぶつかり沖の方に反射する後退波を破線で表している。波面の小さな矢印は速度ベクトルの30°毎の方向を表し、固定壁での衝突で、速度ベクトルは水平方向成分の向きだけを反転させている。この■から▲12▼に至る12枚の線図は、全体で波の周期を12等分し反時計回りに順次周期をずらせて並べた時系列図であり、進行波と、固定壁で反射した後退波が夫々左方向と右方向とに移動していく様子を表しているので、アナログ的な感覚で順次に比較していくことができる。▲12▼の次は■となり、反時計回りでエンドレスに繋がっている。ここで、進行波と後退波の干渉によって生ずる定常波は、実線と破線の曲線を単純に足して求めることができる。水位変化を表す縦軸上で静水面を0位置にとれば、12枚の線図から絶えず水位が0となる特異点が存在することに気が付く。それは壁面からの距離が波長の1/4となる点であり、ここでは二つの波の水位はプラスとマイナスに別れ、絶対値が等しいから、足せば常に0となる。壁面では反対にプラスマイナスの符号は同じで、絶対値が等しいから、水位はいつも倍加している。即ち、壁面が腹となり、そこから波長の1/4だけ離れた位置が節になっている。節では、二つの波の速度ベクトルを加えると、静水面上の矢標で示すように、運動エネルギーが倍加され、向きと大きさを周期的に変えている。ここでは、波面上の総ての速度ベクトルを記載すると煩わしくなるので、■と■の線図を中心に記載した。
【0010】図3は、水深が5m、3m、1mと変化した時の、波長と周期の変化を示す線図である。縦軸は波長λをメートルの単位で示し、横軸は波周期Tを秒単位で示している。この関係は本発明を構成するうえで最も重要な点であるが、水深が浅くなれば波長も短くなることを容易に理解できよう。
【0011】
【実施例】図4、図5、図6に示した本発明の実施例は、ケーソン1の長さが短縮された振り子式波力発電装置である。このような発明が生まれたのは、海外における振り子式波力発電装置の実用化の気運の高まりが契機となった。20世紀は、ひたすら資源とエネルギーを浪費し、地球温暖化を招き、人類の未来を危惧せざるを得ない間違った発展を遂げた。その反省のもとに、21世紀は持続可能な循環型社会を築くことが強く求められている。その一環として、クリーンな自然エネルギーを利用する波力発電装置も注目されつつある。別けても、エネルギー密度の高い波浪が得やすい発展途上国では、将来の電力需要の増大を波力発電装置で大部分賄おうと考えたとしても、おかしくはない。ところが、インド洋沿岸の一例では、日本沿岸の50m以下の波長に比較し、倍に近い80〜100mの波長の波が押し寄せる。従来の振り子式波力発電装置では、波長の1/4以上のケーソン長さが必要であり、このままでは総コストの7〜8割を占めるケーソン建造費を更に大きく押し上げ、経済性という側面から致命的な弱点を抱えることになりかねない。加えて、波長の長い波はエネルギーも大きいことから、荒天時の安全対策、即ち、過大な波力から装置を守る対策も充実させる必要が高まった。更に、発電単価を下げる上で、可能な限りエレルギー密度の高い海面を選んで波力発電装置を設置することも効果的である。そこで本発明は、前記の図3に示した水深と波長の関係に着目し、ケーソン内部の水深を浅くすることで、振り子から後壁に向かう波の波長を短くし、ケーソン長さの短縮を図ることに主眼を置いた。
【0011】図4は本発明のケーソン長さ短縮型波力発電装置の一実施例の縦断面図であり、図5はその実施例の平面図である。図中に二点鎖線で示したのは、従来型のケーソンと振り子の位置である。図4で示すように、ケーソン1内部で振り子2の後壁4側の水室3は、水深が徐々に浅くなっている。同時に図5で示すように、水室3の幅も、水深が浅くなるにつれてBからBへと広がっている。これら水深や幅寸法の変化は、エネルギーロスを招くことがないように、滑らかに変化させている。これらの図で、従来装置における振り子取り付け位置から後壁4までの距離に相当する水室長:dと、本発明実施例の水室長:dとで具体的にどの程度の差が出るかを求めてみる。この時、波力発電装置を設置する海面として、水深:hが5m、波浪周期:Tが12秒である場合を想定すると、その波の波長:λは図3より82mとなる。従来の水室長:dは、波長の1/4であるから20.5mとなる。これに対し本発明の水室長:dは、波長に0.15を乗じた長さになる。即ち、およそ12.3mと見積もることができる。ケーソン1の固定壁厚さを除く全長は、これらの長さに振り子取り付け位置からケーソンの開放端までの張り出し長さの3.5mを加えたものとなり、24.0mと15.8mの差となる。その差はおよそ8.2mである。比率で示すと、ケーソン内の水室全長24mに対し、34%の短縮になる。
【0012】図5に示すように、実施例の水室幅Bは従来の水室幅Bに対して広がっているが、このために振り子2の波との共振条件の設定が、水室の水深がhと浅くなっていても容易になっていることを先に述べてきた。次に図6に示す振り子の揺動状態でのモーメントの関係式から、この点を説明してみたい。このため、図6に示した水室3の水位上昇をΔhとし、振り子のモーメントを考える。図6において、振り子の固有周期Tは数式 数1で示される。
【0013】
【数1】

【0014】ここでI:付加水を含む振り子2の機械系の軸6を中心とする慣性モーメントK:振り子2の機械系の復元モーメント係数ただしKはKとKの和であり、これらは次の様に定義する。
:振り子2の重心の平衡位置からのずれによる復元力による係数K:水室内水位上昇Δhの水圧力による係数復元モーメント係数Kは上記二つの作用力に基ずくのであるが、一般にこの二つの作用力の比較において、K≪K の関係にある。重心の復元力よりも水圧力の影響が遥かに大きい。振り子2の揺動に伴って生ずる水粒子の移動は、水室3の水位上昇Δhとなって現れる。振れ角θが小さいとして、細かな誤差を無視する時、水位上昇Δhは数式数2で表現できる。
【0015】
【数2】

【0016】ここでθ:振り子2の振れ角、 A:水室内水面の表面積水位上昇Δhに支配される復元モーメントMは数式 数3で表せるので、復元モーメントMは水位上昇Δhに比例する。
【0017】
【数3】

【0018】従って、復元モーメント係数Kは表面積Aに反比例する。このことは、水室3の幅が広がると、水位上昇Δh の水圧力の影響が、水室内水面の表面積Aに反比例して減殺されることを示すもので、水室幅Bを適当に選び、共振条件を満足する復元モーメント係数Kを容易に得ることができることを示している。
【0019】本発明の目的の一つは、エネルギー密度の高い波浪を対象とする波力発電装置の安全性を高めることであった。荒天時を想定した安全性の向上について、更に図6について説明する。発明者の経験では、片振幅である振り子の振れ角θは、およそ±60度以内に制限するのが良い。このためには、適当なストッパー等が必要である。定格運転では適度な振れ角θは±30度程度である。そこに嵐になって強大な波力が働く時、振り子の振れ角θは容易に60度を超え、発電装置を破壊する危険が生ずる。図6は、定格以上の強い波で振り子2が時計回り方向に揺動している状態を示す。振り子2には左向きの水圧pが働き、振り子2を左側に向かって押している。水室内部には前述の水位上昇Δhが生じておりこれによって加圧された圧力Δpが振り子2を右側に押し、復元モーメントを発生している。この時振り子2と交差する垂直な縦線10は、ここから左に向かい水室幅の増大が始まる位置にある。図示の状態では振り子2の先端部が縦線10の左側にあり、そのために振り子2の下部には水室両側壁との間に、開口部11が開いた状態にある。従って、水圧pは開口部11を経て左の水室に及び、その圧力で開口部11を通過する水流を生じている。この結果圧力Δpを更に押し上げている。即ち、開口部11が開くことによって左向きの水圧pは、ここからの漏れによるスピル流を生じて低下し、進行波の大きな圧力に対抗し振り子2を右方向へ押している水圧Δpは、流入による追加が生じている。図示の位置よりさらに振り子2が左に振れたとしても、振り子2を右向きに押す力がさらに大きくなることは容易に理解できよう。この後にΔp>pとなって振り子2が図示位置で反時計回り方向に揺り戻す時は、開口部11からの漏れは右向きに流れ、圧力Δpによる振り子駆動モーメントも減少させる。このように、振り子2の振れ角θが一定値以上になると、開口部11からの水漏れを生じ、振り子2の両脇からの相当量のスピル流となり、その結果、振り子2への過大入力を低減させる。ここで振り子の揺動角度の限界範囲は、縦線10の位置をどこに設定するかによって決定される。例えば、θ>30°の範囲で水漏れを起こさせるようにすることも簡単にできる。このように本発明の水室には、過大入力警戒域を超えた振り子の揺動に対してダンパー作用が付加されるので、実用的見地から大変に効果がある。
【0020】
【発明の効果】ケーソン長さを短縮し水室幅を広げた本発明の波力発電装置によれば、装置全体の建造費用の7〜8割を占めるケーソン自体を、効率を低下することなく合理的に小型化することが可能となり、振り子式波力発電装置の総コストと発電単価の切り下げに大きな効果を発揮する。ケーソン製作費が全体コストの75%を占めるとした時、その25%が削減可能とすれば、波力発電施設全体では建造費用の18%相当分が削減できると見積もられる。加えて、ケーソン内部の水室幅を広げており、荒天時の波浪エネルギー分散によりケーソン強度を相対的に高めているだけでなく、水室幅を広げる位置を、振り子の振れ角度が過大入力警戒域に達する位置に選択することで、振り子の揺動角が大きくなり過ぎないように抑圧される効果を持たせることができた。従って、波力のエネルギー密度が高い海外の沿岸に設置する装置に対しても、波長の長い波浪に対応してケーソン長さを過大に長くすることを抑え、コスト上昇を避けながら荒天時に波力発電装置を過大な波浪エネルギーから守るための、安全対策を充実させることができた。参考文献 日本機械学会誌 Vol.102 No.973 P720 飯島、渡部”振り子式波力発電装置「ペンデュラ」”
【出願人】 【識別番号】599000382
【氏名又は名称】渡部 富治
【出願日】 平成12年3月24日(2000.3.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−271735(P2001−271735A)
【公開日】 平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願番号】 特願2000−128632(P2000−128632)