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【発明の名称】 ブラシシール装置
【発明者】 【氏名】榊 田 均

【氏名】三 上 誠

【氏名】南 波 聡

【氏名】平 野 俊 夫

【氏名】山 下 達 雄

【要約】 【課題】ブラシシールを構成する素線への流体中に含まれるオイルミストのような浮遊物の付着および滞留を防止し、シール性能を長期間に亙って良好に発揮できるようにしたブラシシール装置を提供する。

【解決手段】回転機械の回転軸10回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、回転軸10を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線2からなるブラシシール12をその外周部に向かって下がり勾配に傾斜するように回転軸10と機械のケーシング11の間に配置し、素線間に付着した浮遊物15を重力の作用により素線に沿って機内側に排出させるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを前記回転軸と機械のケーシングの間に配置するとともに、前記素線に付着した前記流体中に含まれる浮遊物の素線間での滞留を防止する滞留防止手段を設けたことを特徴とするブラシシール装置。
【請求項2】回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールをその外周部に向かって下がり勾配に傾斜するように前記回転軸と機械のケーシングの間に配置し、素線間に付着した浮遊物を重力の作用により素線に沿って機内側に排出させるようにしたことを特徴とするブラシシール装置。
【請求項3】前記ブラシシールを機内側に配置した保持板と機外側に配置した背板との間で保持し、ブラシシールの素線に沿って流れ落ちる浮遊物の排出を円滑にする傾斜面を前記保持板に形成したことを特徴とする請求項2に記載のブラシシール装置。
【請求項4】回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを前記回転軸と機械のケーシングの間に配置するとともに、回転軸が回転することにより生じる遠心力を利用して前記素線に付着した前記流体中に含まれる浮遊物を素線から強制的に排出する強制流を発生させる強制流発生手段を設けたことを特徴とするブラシシール装置。
【請求項5】前記強制流発生手段は、機内側においてブラシシールに近接した位置で前記回転軸に取り付けられた傘状の油切り部材からなることを特徴とする請求項4に記載のブラシシール装置。
【請求項6】前記傘状の油切り部材には、強制流の流れを強める強制流付勢手段が付加されるていることを特徴とする請求項5に記載のブラシシール装置。
【請求項7】前記強制流付勢手段は、前記傘状の油切り部材の表面の粗さを高めた粗目面またはディンプル状の凹凸面からなることを特徴とする請求項6に記載のブラシシール装置。
【請求項8】前記強制流付勢手段は、前記傘状の油切り部材の表面に放射状に形成した排出溝からなることを特徴とする請求項6に記載のブラシシール装置。
【請求項9】前記排出溝は、回転軸の回転方向とは逆側を指向して曲がるスパイラル状の排出溝であることを特徴とする請求項8に記載のブラシシール装置。
【請求項10】前記強制流発生手段は、ブラシシールの先端部と対向する位置で回転軸に形成された周回溝と、前記周回溝に通じる入口部を有し回転軸の回転方向とは逆方向に曲がるように回転軸の外周面に形成された排出溝とからなることを特徴とする請求項4に記載のブラシシール装置。
【請求項11】前記強制流発生手段は、回転軸の外周部においてブラシシールの先端部が接触する部分を起点に回転軸の回転方向とは逆側にその外周面を螺回するネジ溝からなることことを特徴とする請求項10に記載のブラシシール装置。
【請求項12】回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールをその外周部に向かって下がり勾配に傾斜するように前記回転軸と機械のケーシングの間に配置し、素線間に付着した浮遊物を重力の作用により素線に沿って機内側に排出させるとともに、前記回転軸が回転することにより生じる遠心力を利用して浮遊物を素線から強制的に排出する強制流を発生させる強制流発生手段を設けたことを特徴とするブラシシール装置。
【請求項13】前記素線から強制的に排出された浮遊物を受ける凹曲面を有するポケットをケーシングに設けたことを特徴とする請求項12に記載のブラシシール装置。
【請求項14】前記ブラシシールは、内周部に向かって下がり勾配に傾斜し、素線間に付着した浮遊物を前記強制流発生手段に導くようにしたことを特徴とする請求項12に記載のブラシシール装置。
【請求項15】回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを、素線密度が高密になっているシール部と、このシール部の機内側に配置され素線密度が疎になっている浮遊物捕獲部とから構成したことを特徴とするブラシシール装置。
【請求項16】前記浮遊物捕獲部を保持する保持板に浮遊物の排出を円滑にする傾斜面を設けたことを特徴とする請求項15に記載のブラシシール装置。
【請求項17】前記傾斜面にはさらに浮遊物の排出を促進する凸状の排出促進部を設けたことを特徴とする請求項16に記載のブラシシール装置。
【請求項18】前記シール部と、浮遊物捕獲部とを一定の間隔をおいて配置したことを特徴とする請求項15に記載のブラシシール装置。
【請求項19】前記浮遊物捕獲部を保持する保持板に機内側とシール部側のそれぞれ向かって傾斜する傾斜面を設けるとともに、浮遊物捕獲部とシール部との間には浮遊物の排出孔を配置したことを特徴とする請求項18に記載のブラシシール装置。
【請求項20】前記浮遊物捕獲部を密度を疎に結束した素線に代替して、浮遊物を捕獲する性質を有する捕獲板を用いることを特徴とする請求項15に記載のブラシシール装置。
【請求項21】回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを前記回転軸に取り付けるとともに、前記ブラシシールを素線の長さが所定のパターンで変化する素線から構成することを特徴とするブラシシール装置。
【請求項22】前記ブラシシールは、長短の2種類の素線からなり、長い方の素線が機械のケーシング側に形成され浮遊物を受ける受け面に素線に付着した浮遊物を導くようにしたことを特徴とする請求項21に記載のブラシシール装置。
【請求項23】前記ブラシシールは、その素線の先端が斜めに傾斜する面をなすように切り揃えられ、機械のケーシング側に素線先端の傾斜する面が接触しかつ略同じ傾斜の傾斜面を浮遊物を受ける受け面としたことを特徴とする請求項21に記載のブラシシール装置。
【請求項24】前記ブラシシールの機外側にさらに別のブラシシールを機械のケーシングに取り付けたことを特徴とする請求項21乃至23のいずれかの項に記載のブラシシール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラシシール装置に係り、例えば、水車発電機のような水力機械に使用され回転軸の軸受け部分等における作動流体の漏洩を防止するブラシシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】水力機械の回転軸に従来から使用されているブラシシールの一例を図23に示す。この図23において、参照符号10は機械の回転軸である。矢印で示すのが作動流体の流れである。ブラシシール1は、高圧側の機内から低圧側の機外に作動流体が漏出しないように回転軸10とケーシング11との隙間を気密にシールするものである。水車発電機のような水力機械では、回転軸10が高速で回転するので、ブラシシール1の素材としては、比較的細いワイヤあるいは樹脂系材料からなるできるだけ細い素線2の束を回転軸10の周方向に環状に配置し、その素線2の先端が、回転軸10の外周面に接触するかあるいは極めてごく狭い隙間をもつように多数の素線が植設された保持板5を介してケーシング11に取り付けている。ブラシシール1には、機械の高圧部から流れてくる高圧の作動流体が作用するため、シール前後での差圧が大きい。したがってシールブラシ1は、機内の高圧側から機外の低圧側に向かって倒れるように変形しようとする。素線2の先端と回転軸10の外周面との間の隙間が大きくなると、吹き抜けの状態になってシール機能が損なわれるので、ブラシシール1の素線2には、ある程度の剛性が付与されているとともに、低圧側に設けた背板6により支えることでブラシシール1の変形を防止している。ただし、ある程度素線2が低圧側に傾くようにしないと、素線2と回転軸10との間に生じる摩擦で、素線2あるいは回転軸10が磨耗し易くなり、長期間の使用に耐えなくなる。
【0003】図24に示すように、高圧側の作動流体は、ブラシシール1を構成する素線1の束の間を通り抜けようとするが、素線1の密度は、非常に密になっているので、作動流体と素線1との間には摩擦抵抗が発生し、流体の機外側への漏出を防止することができ、効率の良いシールを提供可能となっている。
【0004】図25には水車発電機の軸受部へのブラシシール1を適用した具体例を示す。この水車発電機は、発電機100と水車102とで軸系が構成されている。大型の水車発電機は、この図25に示すような縦型のものが多く、発電機の回転軸103は、スラスト軸受105を介して中間軸104により水車102と連結されており、スラスト軸受105は、水車発電機全体の荷重を支えている。
【0005】この水車発電機では、次のような目的でブラシシール1が用いられている。一般にスラスト軸受105は、油膜の動圧で荷重を受けるタイプのものが用いられており、このスラスト軸受105は、回転軸103の端部に取り付けられた回転板106と、静止板107との間に油槽108から潤滑油が供給され、動圧軸受としての機能を維持するようになっている。回転板106は高速で回転するため、油槽108に満たされた潤滑油109が回転板106によって撹拌されることにより、微小な粒子となって浮遊するオイルミストが発生する。発電機100内の空間110は、冷却空気の流れによって油槽108内の圧力よりも低圧になっていて、オイルミストが空気といっしょに矢印で示すように、発電機100内に流出しようとする。しかし、オイルミストは、異物が混入している場合などは発電機100の短絡事故の原因となったり、機外に流出して環境汚染を引き起こすので、ブラシシール1を回転軸103の回りに設けオイルミストが発電機100側に漏出するのを防止する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したように、ブラシシール1は、そのシール性が非常に良好であるがゆえに、オイルミストなどの浮遊物をも効率よくその密集した素線2の間に封じ込めてしまうという点が問題となる。
【0007】図26は、オイルミストなとの浮遊物が流体に含まれている場合のブラシシール1のシール作用についての説明図である。オイルミスト7を含んだ空気は、機内(図25に即していえば、油槽108内)の圧力が高いため、機外(発電機100側)に流出しようとして、ブラシシール1を構成する素線2にあたるが、上述したとおりに、細い素線2が非常に密に配置されているため、空気中に含まれるオイルミスト7の流出が妨げられ、結果として、素線2によって捕捉されてしまい、次第に粒径が成長してある程度大きな粒径の油滴8となって素線2に付着することになる。
【0008】さらに、油滴8の素線2への付着が進むと、図27に示すように、油滴8自体の粘性により、素線2同士をお互いに密着的に結束させてしまう現象を生じさせてしまう。こうなってしまうと、素線2と素線2の間の隙間が不均一になって、一部はほとんど隙間がないようになり、他の部分は、ある程度大きくなった空間が生じることになる。この空間ができると、オイルミストを含んだ空気は、素線2との間に摩擦抵抗が生じることなく、簡単に通り抜けてしまい、シール効果が極端に低下してしまう。
【0009】このような現象は、一般に、ブラシシールを取り付けてから、ある程度の期間が経過し、潤滑油が加熱あるいは劣化により酸化されることにより粘性が増加し、有機酸や不溶性のスラッジが生成されることにより、発生することが多くなる。
【0010】また、図28に示されるように、素線2に付着した油滴8は、回転軸10との摩擦によつて生じる摩擦熱にさらされて高温になり、酸化・スラッジの生成が促進される。そして、素線2の先端に付着した油滴にあっては、固形物に変成し、回転軸10の表面に損傷を与えたり、発熱により回転軸10が曲がって振動発生の原因になることもある。
【0011】そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、ブラシシールを構成する素線への流体中に含まれるオイルミストのような浮遊物の付着および滞留を防止し、シール性能を長期間に亙って良好に発揮できるようにしたブラシシール装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、本発明は、回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを前記回転軸と機械のケーシングの間に配置するとともに、前記素線に付着した前記流体中に含まれる浮遊物の素線間での滞留を防止する滞留防止手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】本発明によれば、ブラシシールのシール性能を十分発揮させるために、オイルミストなどの浮遊物が素線に付着し、これが油滴となって素線の滞留付着するのを効果的に防止するので、従来のように、素線の間隔が滞留付着する油滴によって広がりシール特性を低下させたり、素線先端に付着した油滴が摩擦熱で高温となり、酸化・スラッジの生成が促進され、固形物に変成し、回転軸に損傷を与えたり、回転軸を曲げ振動が発生するのを未然に防止することができる。
【0014】本発明は、その滞留防止する手段の態様の違いからいくつかの発明を含む。そのうち、第1の発明は、請求項2に記載したように、回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールをその外周部に向かって下がり勾配に傾斜するように前記回転軸と機械のケーシングの間に配置し、素線間に付着した浮遊物を重力の作用により素線に沿って機内側に排出させるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】この発明によれば、ブラシシールを重力方向に傾かせることにより、ブラシシールを構成する素線に付着する浮遊物は、重力の作用を受けて素線に沿って落下させて排出することができる。
【0016】また、第2の発明は、請求項4に記載したように、回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを前記回転軸と機械のケーシングの間に配置するとともに、回転軸が回転することにより生じる遠心力を利用して前記素線に付着した前記流体中に含まれる浮遊物を素線から強制的に排出する強制流を発生させる強制流発生手段を設けたことを特徴とするものである。
【0017】この発明によれば、回転軸が回転する際の遠心力により強制流が浮遊物を素線から強制的に排出させるので、機械の組立構造の制約からブラシシールを重力方向に傾かせて取り付けることができない場合でも、効果的に浮遊物の付着滞留を防止することができる。
【0018】また、第3の発明は、請求項15に記載したように、回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを、素線密度が高密になっているシール部と、このシール部の機内側に配置され素線密度が疎になっている浮遊物捕獲部とから構成したことを特徴とするものである。
【0019】この発明によれば、浮遊物のオイルミストが高粘度の油からなるような場合に、第1の発明、第2の発明では、付着する油滴を排除できない可能があるが、素線の密度を粗にすることで素線間隔を広げたブラシシール部を別途設けることで、粘性の高い油滴を捕獲しておくので、その下流にある本来のシール機能を発揮するブラシシールには、油滴等の付着滞留を防止することができる。
【0020】さらに、第4の発明は、請求項21に記載したように、回転機械の回転軸回りからの流体の漏洩を素線のブラシ状の集合体により防止するブラシシール装置において、前記回転軸を周方向に囲繞するように所定の密度で環状に結束した素線からなるブラシシールを前記回転軸に取り付けるとともに、前記ブラシシールを素線の長さが所定のパターンで変化する素線から構成することを特徴とするものである。
【0021】この発明によれば、素線の長さが所定のパターンをもっているブラシシールが機械の回転軸に対して取り付けられるようになっており、回転軸が回転することにより発生する大きな遠心力を直接的に作用させてブラシシールに付着した油滴を飛散させ、滞留を防止するもので、前述した第1乃至第3の発明よりも油滴の排出効果は、直接的かつ強力である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明によるブラシシール装置の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本発明に係るブラシシール装置では、素線に付着したオイルミストが大きくなった油滴などの異物の滞留を防止する手段について大きく分けて4種類の類型の発明がある。第1の滞留防止手段は、重力の作用を利用して異物の滞留を防止するもので、第2の滞留防止手段は、回転軸が回転することにより生じる遠心力を利用して強制流を発生させることで油滴を強制的に排除し、滞留を未然に防止するもの、第3の滞留防止手段は、ブラシシールの一部に油滴捕獲手段を設けることで油滴の滞留を防止するもの、第4の滞留防止手段は、ブラシシール自体を回転させることで遠心力によって油滴を強制的に排除し、滞留を未然に防止するようにしたものである。以下、それぞれの発明について水力機械の回転軸回りからオイルミストの漏出を防止するために取り付けられるブラシシールとして構成した実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0023】第1実施形態図1および図2は、ブラシシールに付着するオイルミストが油滴となって滞留するのを防止する手段として、ブラシシールを構成する素線に付着した油滴を重力の作用により、素線をつたわらせて機内に速やかに落とし、素線への油滴の滞留を防止するようにした発明の実施形態を示す図である。この第1実施形態は、縦型の水力機械等に効果的に適用できるものである。
【0024】図1において、参照符号10は、本発明を縦型の水力機械に適用した例として、水車発電機の回転軸を示している。この回転軸10は、その軸方向を鉛直方向とする姿勢で機械に取り付けられおり、下側が高圧側の機内であり、上側が低圧側の機外を示している。多数の素線2が回転軸10を周回するように密に束ねてなるブラシシール12は、水平面に対して傾斜し、かつ互いに平行に機械のケーシングに取り付けられた保持板13と背板14により挟持されている。この第1実施形態のブラシシール12は、回転軸10に接触する内周部側よりも外周部側が下に位置する下がり勾配で傾斜する姿勢で、それぞれ保持板13と背板14により、支持されている。背板14は、ブラシシール12の傾いた姿勢を保持し、高圧側と低圧側の差圧によりブラシシール12が変形しないように支えている。保持板13は、素線2をケーシング11に対して固定する本来の機能に加えて、後述するように油滴の流れを円滑に案内できるように、素線2の長さに対して短い寸法を有している。
【0025】次に、以上のように構成されるブラシシールの10の作用について説明する。
【0026】図1において、矢印aは、流体の流れを示す。この例では、空気である。潤滑油の油槽から発生したオイルミストは、流体の流れに乗って低圧側の機外に流出しようとするが、ブラシシール12のところで抵抗を受けるので、機外に出ないようにシールされる。
【0027】この間、流体とともに運ばれてきたオイルミストは、ブラシシール12を形成する素線2に捕捉され、時間の経過とともに集合してある程度大きな粒径の油滴15となる。油滴15は、微細なオイルミストとは違って、粒径が大きく重力によって素線2を伝わって流れ落ちるだけの質量を有しているため、ブラシシール12の素線2のすき間である程度の粒径に成長した油滴15は、傾いている素線2に沿って下方すなわち、外周側に向かって流れ落ち、図1に矢印bで示すように、さらに保持板13に導かれて落下し、機内に戻されることになる。
【0028】このように本実施形態によれば、保持板13、背板14を介して、ブラシシール12を傾いた姿勢で取り付けることによって、流体に含まれるオイルミストがブラシシール12の素線2に付着しても、ある程度の粒径の油滴15になると、重力により自ずから流れ落ちるので滞留を防ぐことが可能である。したがって、ブラシシール12の素線2間での油滴15の停滞により、素線2の集束によって生じるシール効果の低下をふせぎ、また、素線2の先端に生成した油滴の酸化・スラッジの生成固形物による回転軸の損傷を未然に防止することができる。
【0029】次に、図2は、図1に示した第1実施形態によるブラシシールの他の変形例を示す図である。この図2のブラシシール12では、保持板16には、下り勾配の傾斜面16aがブラシシール12の下側面と連続するように形成されている。ブラシシール12のその他の構成要素は、図1と同一である。
【0030】この図2に示したブラシシール12によれば、図1のブラシシールと同様に、素線2で捕捉されたオイルミストが集まり油滴15となると、自重により、素線2の傾斜に沿って流れ落ちるが、矢印bで示すように、油滴15の流れは、保持板16の傾斜面16aをつたわって円滑に導かれるので、油滴15の付着停滞をより効果的に防止できる。
【0031】第2実施形態次に、本発明の第2の実施形態によるオイルシールについて、図3乃至図10を参照しながら説明する。この第2実施例は、ブラシシールに付着する油滴の滞留を防止する手段として、油滴を遠心力を利用して外部に強制的に排出する強制流を発生する手段を回転軸に設けたもので、第1実施形態と同様に、縦型の水車発電機等の水力機械に効果的に適用できる。
【0032】図3において、参照符号20がブラシシールを示している。この第2実施形態では、ブラシシール20を形成する素線2は、保持板21と背板22とで挟持されて機械のケーシング11に対して水平に支持されている。回転軸10には、強制流発生手段として円錐曲面をもった傘状を呈する油切り23が取り付けられている。この油切り23の取付位置は、機内側でブラシシール20に可及的に接近した位置が好ましい。
【0033】図4は、回転軸10に取り付けた傘状の油切り23が発揮する油滴排出作用を示す図である。ブラシシール20の素線2にはオイルミストが付着し、やがて油滴15となるが、回転軸10とともに油切り23が高速で回転しているために、油切り23の表面24では、流れる流体と表面24の間に生じる流体摩擦に起因して、強制流れが発生する。この強制流れは、油切り23が高速が回転しているため、矢印cで示すように、遠心力に大きく影響されて油切り23の半径方向外周側に向かう渦の流れとなる。
【0034】ブラシシール20は、このような表面に強制渦流の生じた油切り23の近接しているために、ブラシシール20を形成する素線2に付着している油滴15に及び、図4に示すように、渦流に乗って油切り23まで排出される。そして、油切り23の表面まで排出されると、油滴15は遠心力で飛ばされ、機内に落下して戻る。
【0035】本実施形態によれば、流体に含まれる オイルミストがブラシシール20の素線2に付いて油滴となっても、遠心力により油切り23の表面に発生した渦流により、油滴は強制的に油切り23に排出されるので滞留を防ぐことが可能である。したがって、ブラシシール20の素線2間での油滴の停滞により、素線2の集束によって生じるシール効果の低下をふせぎ、また、素線2の先端に生成した油滴の酸化・スラッジの生成固形物による回転軸の損傷を未然に防止することができる。
【0036】次に、図5は、図4のブラシシールにおける強制流発生手段についての他の実施例を示す図である。この第2の実施例では、傘状の油切23の外形は、図4と同様であるが、その円錐曲面をなす表面25は平滑ではなく、あえて粗い微少な凹凸が無数に形成されている粗目面に加工されている。このような粗目面となった表面は、機械的な表面加工によって、あるいはディンプルを付加することによって形成される。
【0037】この図5の実施例によれは、油切り23の表面25の無数の微笑な凹凸が、流体との摩擦力を極力増大せしめるため、それによって油切り23の表面25に沿って生じる矢印cで示す強制渦流を強め、前述した油滴排出効果をより高めることができる。
【0038】次に、図6は、ブラシシールにおける強制流発生手段を構成する傘状の油切りについての第3の実施例を示す図で、この第3実施例に係る油切り23では、その表面に放射状に延びる複数の排出溝26が形成されている。また、この油切り23の付け根の部分には、回転軸10の外周部に周回する溝27が形成されている。排出溝26と周回溝27とは連通するようになっている。周回溝27の位置は、図6に示すように、ブラシシール20の最下部の素線に可及的に近接していることが好ましい。
【0039】このような図6の傘状油切り23によれば、排出溝26は、単に、ブラシシール20から強制渦流cの作用で排出された油滴15の排出を導くのはもちろんであるが、排出溝26は、表面24を回転方向とは直角に延びる凹凸を形成するため、流体と油切りの表面24との間の摩擦力を非常に大きくし、強制渦流cの流れを強くする作用をも発揮する。さらには、周回溝27と排出溝26は、回転軸10の回転に伴い粘性ポンプ類似のポンプ作用を発揮し得る。したがって、ブラシシール20から周回溝27に導出された油滴15を、図6に矢印で示すように、より効果的に排出させることが可能となる。
【0040】このような油切り24に加工した排出溝26は、図6では、放射状に直線的に延びる溝として構成されているが、図7に示されるように、回転軸10の回転方向に対して逆側に曲がるスパイラル状の排出溝28としてもよい。これによれば、遠心力が排出溝28にある油滴により強く作用するので、粘性ポンプ作用をより強めることができる。
【0041】以上、図3乃至図7は、回転軸10に設けた油滴傘状の油切りを油滴強制排出させる強制流を発生する手段とした例を示したが、図8に示すのは、回転軸に形成したねじれ溝を強制流発生手段として適用した実施の形態である。図8において、回転軸10には、ブラシシール20の幅よりも広い溝30が回転軸10を周回するように形成されており、この溝30が形成されることよって回転軸10には機外側と機内側との両側に段部31a、31bが形成されている。そのうち、機内側の段部31aには複数の排出溝32の入口が一定の間隔で形成されている。
【0042】図9は、前記排出溝32を拡大して示す図である。排出溝32は、段部31aに入口32aが開口し、溝終端の出口32bに向かって回転軸10の外周面を回転方向に対して逆側にスパイラル状に傾斜して延びるように加工されている。機内の流体には、必ず粘性があるため、回転軸10が高速回転することによって、スパイラル状の排出溝32には、粘性ポンプ作用が発生する。
【0043】他方、ブラシシール20は、その素線2の先端部が周回溝30に臨むように配置されており、粘性ポンプ作用により発生する強制流fは、慣性効果も加わって素線2の一部まで影響し、素線2に付着した油滴15を強制的に吸い出すように作用するので、油滴15は滞留することなく強制流fの流れにのって素線間から排出され、周回溝30を介して排出溝32から導出され、機内側に戻されることになる。
【0044】次に、図10は、図9と同じく粘性ポンプ作用により強制流fを起こさせ、ブラシシール20に付着した油滴15を強制的に排出するようにしたものであるが、図9の場合と異なり、回転軸10の外周面に螺旋状に周回するネジ溝34を形成した例である。このネジ溝34は、図9のスパイラル溝32のような勢いのある強制流を発生させるほど粘性ポンプ作用は大きくないが、ブラシシール20を構成する素線2の先端部と回転軸10との間にある油滴15を回転軸10の回転とともにネジ溝34に沿って機内に導出するだけの粘性ポンプ作用を発揮することは可能である。
【0045】ブラシシール20の素線2の先端部に付着した油滴15は、高速回転する回転軸10との摩擦熱により高温となり、酸化・スラッジの生成が促進されて固形物に変化し、これが回転軸10に損傷を与えたり、発熱により回転軸10を曲げ振動発生の原因になり易い。しかしながら、少なくとも素線2の先端部に付着した油滴だけは、前記のように、ネジ軸34から導出されるため、油滴15の酸化・スラッジの生成を未然に防止することができる。
【0046】第3実施形態次に、本発明によるブラシシールの第3の実施形態として、第1実施形態における斜めにブラシシールを保持し素線に付着したオイルミストを油滴として重力の効果が排出する構造と、第2の実施形態における強制流発生手段としての傘状の油切りとを組み合わせてなるブラシシールの実施形態について、図11、図12を参照して説明する。
【0047】図11において、ブラシシール12は、図1と同様に回転軸10に接触する内周部側がよりも外周部側が下に位置する下がり勾配で傾斜する姿勢で、保持板13と背板14により挟まれて支持されている。保持板13には、下がり勾配の傾斜面13aが形成されている。そして、保持板13の下端面に連続するように、ケーシング11には、排出された油滴を凹曲面で受ける凹部または溝からなるポケット36が形成されている。一方、回転軸10には、図3に示したのと同様の円錐曲面をもった傘状を呈する油切り23が取り付けられている。この油切り23の取付位置は、機内側でブラシシール12に可及的に接近し、かつポケット36の位置と対応する位置が好ましい。
【0048】流体に含まれるオイルミストなどの微小浮遊物は、ブラシシール12を構成している素線2によって捕捉され、次第に、オイルミストよりも粒径の大きな油滴15となって素線2と素線2の間に滞留しようとする。しかしながら、第1実施形態において説明したように、油滴15は重力の作用を受けてブラシシール12の外周側に向かって移動し、さらに、保持板13の傾斜面13aに沿って流れ落ちて機内に戻される。
【0049】また、回転軸10が回転することにより、油切り23の表面24と流体の間には、摩擦力と遠心力が働き、強制渦流cが発生する。この強制渦流cにより、素線2の間にある油滴15は、油切り23の表面23に排出され、この表面23を伝わって遠心力により外周方向に飛ばさる。飛ばされた油滴15は、ポケット36に衝突するが、凹曲面に加工されていることから、衝突の際に新たなオイルミストが発生しないようなっている。これにより、ポケット36には、油滴15の溜まり流れとなってケーシング11の内面を機内側に流れ落ちて戻っていく。
【0050】このように第3実施形態によれば、重力による油滴排出作用と、遠心力により発生した強制渦流による強制的な油滴排出作用との複合作用により、ブラシシールの素線間に滞留しようとする油滴を非常に効率良く排除することが可能であるので、より効果的に油滴の滞留によるシール性能の低下を防止することができる。
【0051】図12は、この第4実施形態の他の実施例を示すもので、ブラシシール12は、外周部から内周部に向かって下り勾配に傾き、しかも、素線2の先端は、油切り23の表面に接触するように保持板13、背板14を介してケーシング11に取り付けられている。
【0052】この図12の実施例では、素線2で捕捉されたオイルミストが油滴15になると、重力の効果によって、低い方の内周部にへ向かって移動してゆくが、油切り23の表面24で発生している強制渦流cの影響を受けて表面24の外周側に押しやられ、さらに遠心力で飛ばされることになる。このようにして、重力による油滴排出作用と遠心力による強制的な油滴排出作用の複合作用により、ブラシシールの素線間での油滴の付着滞留を効果的に防止することができる。
【0053】第4実施形態次に、本発明の第4の実施形態によるブラシシールについて、図13乃至図18を参照しながら説明する。これまでに説明した実施形態は、ブラシシールの素線間での油滴の滞留を防止する手段として、ブラシシールの本体とは別に油滴の排出を促進する手段を付加した例であるが、この第4実施形態は、ブラシシールに付着する油滴の滞留を防止する手段として、ブラシシールの素線密度を二段階に調整し、密度が粗である部分に油滴を捕獲する機能を本来のシール機能に替えて付加し、これにより、あらかじめ十分に油滴を捕獲した上で、素線密度の密な部分で本来のシール機能を発揮させようとする実施の形態である。この第4実施形態は、水平な回転軸を有する横型の水力機械に好適に適用される。
【0054】図13において、このブラシシール50は、これまでの素線の密度が均一となっているブラシシールとは異なり、ブラシシール50の本来のシール機能を担っている素線の密度が密になっているシール部51と、素線の密度が粗になっているオイルミスト捕獲部52とからなっている。図13に示すように、シール部51は、低圧の機外側に配置され、オイルミスト捕獲部52は高圧の機内側に配置されている。この実施形態では、シール部51とオイルミスト捕獲部52は、隣接するように保持板21に植設されている。
【0055】オイルミスト捕獲部52を形成する素線2それ自体は、シール部51と同じものが用いられるが、シール機能は低く、素線間隔を広くすることでオイルミストのみを捕捉する機能を有している。すなわち、ブラシシール50を用いてシールする流体は気体が多いが、通常のブラシシールの素線間隔に較べてオイルミストなどの浮遊物の粒径は非常に大きい。そこで、オイルミスト捕獲部52では、シール性に優先させて素線間隔をオイルミストを捕獲するのに十分な限度においてあえて広くし、流体が本来のシール機能をもたせたシール部51にたどりつく前にオイルミストを捕捉しているので、シール部51ではオイルミストの付着してできた油滴15の滞留などという問題が生ぜず、安定したシール機能を維持することが可能となる。
【0056】このオイルミスト捕獲部52については、図14、図15に他の実施例を挙げてさらに説明する。図14に示すのは、保持板53の端面に機内側に向かって下り勾配の傾斜面53aを設けた例で、オイルミスト捕獲部52で捕獲された油滴15の排出性を高めるようにしたものである。シール部51およびオイルミスト捕獲部52の素線間隔は、図13と同様である。
【0057】オイルミスト捕獲部52では、素線2を疎に配列したが故に、捕獲されたオイルミストが油滴15になっても、素線2からの表面張力が働きにくいという性質がある。したがって、油滴15は表面張力で付着することなく、重力によって素線2を伝わって保持板53の傾斜面53aに落ち、さらに、この傾斜面53aに沿って流れおちて機内に戻されることになる。
【0058】図15に示す他の実施例は、ブラシシール50の保持板53の傾斜面53aから一層円滑に油滴15が導出されるように、その傾斜面53aの傾斜方向にそって油滴導出促進部として、一定間隔で複数の凸条が配列された形態の排出歯54を設けた例である。図16は、図15を機内側から排出歯54を拡大して示す図である。このような排出歯54を設けることによって、オイルミスト捕獲部52で捕獲された油滴は、素線2を伝わり落ちた後、排出歯54にそって円滑に導出される。
【0059】これまで図13乃至図16に挙げた実施例は、素線2の間隔が密なシール部51と、素線2の間隔が疎なオイルミスト捕獲部52とが隣接している構成のブラシシール50であるが、これらの実施形態では、オイルミスト捕獲部52で油滴15が捕獲されても、機内の流体の圧力に押されて、シール部51の方へ移動し、そのシール機能を阻害する可能性がある。
【0060】図17に示す実施例は、この点を改善するものであって、素線2の間隔が密なシール部51と、素線2の間隔の疎なオイルミスト捕獲部52との間にスペーサ55を介在させることで所定の間隔をあけ、保持板21と背板22とで取り付けられるようにしたブラシシール50である。
【0061】このように素線2の間隔の密なシール部51と素線2の間隔の疎なオイルミスト捕獲部52とをスペーサ55を介して間隔を明けて配置することによって、オイルミスト捕獲部52で捕獲された油滴15が流体の圧力を受けてもシール部51へ移動することを確実に防止できるので、シール部51は油滴に阻害されることなく、シール性能を維持し、信頼性を高めることが可能となる。
【0062】この図17の実施例のバリエーションとしては、図14に示したブラシシール50と同様にオイルミスト捕獲部52で捕獲された油滴の排出性を高めることをねらって保持板21に替えて図14の傾斜面53aを有する保持板53を設けるようにしてもよい。その場合、図18に示すように、好ましくは、スペーサ55を介してシール部51とオイルミスト捕獲部52に間隔をあけてあることを利用して、保持板56には、オイルミスト捕獲部52から両側に向かって傾斜する斜面56a、56bを設けるようにすれば、なお一層円滑良好に、油滴15を斜面56a、56bに沿って、流れ落とすことができる。なお、斜面56a、56bのうち、機外側の斜面56aが終端する位置には、流れ落ちた油滴15を機内に排出するための排出穴57が設けられている。
【0063】次に、図19に示す実施例は、この第4実施形態で共通する素線間隔を疎に配列したオイルミスト捕獲部52に代替して、機能の点で同様の油滴捕獲機能を有する材料、例えば、金属あるいは剛性の高い材料からなり、網目の大きさが油滴を十分捕獲できる程度の適当なメッシュ板を油滴捕獲板58として、ブラシシール50とはスペーサ55を介して所定の間隔をおくようにして保持板21に取り付けたものである。特に、図示はしないが、油滴捕獲板58をブラシシール50の機内側に取り付けて、図13の実施例のようにブラシシール50に隣接させるようにしてもよい。
【0064】このようにオイルミスト捕獲部52として、油滴を捕獲する性質がある材料を利用することで、在来のブラシシールをそのままま転用して、油滴の付着滞留によるシール性能の低下を防止することができる。
【0065】第5実施形態次に、本発明の第5の実施形態によるブラシシールについて、図20乃至図22を参照しながら説明する。
【0066】これまで挙げた第1乃至第4実施形態によるブラシシールは、機械のハウジングに対して保持板と背板を介して取り付けられた形式のブラシシールであるが、第5の実施形態では、素線の長さが所定のパターンをもっているブラシシールが機械の回転軸に対して取り付けられるようになっており、回転軸が回転することにより発生する大きな遠心力を直接的に作用させてブラシシールに付着した油滴を飛散させ、滞留を防止するもので、前述した第1乃至第4実施形態よりも油滴の排出効果は、直接的かつ強力である。この第5実施形態によるブラシシールは、縦型の水力機械の回転軸に好適に適用される。
【0067】図20に示されるように、回転軸10には、ブラシシール60の取り付けのための取付円盤61が固定されており、この取付円盤61には、背板62と保持板63との間で挟持するようにしてブラシシール60が取り付けられている。ブラシシール60は、2種類の異なる長さの素線から構成されている。この場合、機外側に短い素線61aが配置され、その先端がハウジング11の内周面に接触する程度の長さを有し、シール性を確保している。これに対して、長さの長い方の素線61bは、ケーシング11に形成されたR加工により拡径する段部からなるキャッチャー64まで届くだけの長さを有している。
【0068】この図20の実施形態によれば、回転軸10といっしょにブラシシール60が回転すると、ブラシシール60の素線61a、61b中に捕捉されたオイルミストが大きくなった油滴15は、大きな遠心力を受けて半径方向外側に飛び散ろうとする。したがって、油滴15は長い方の素線61bの間を抜けて、キャッチャー64に衝突して、ブラシシール60中に付着滞留することなく機内に戻される。キャッチャー64は、遠心力で飛ばされた油滴15を受けて衝突の際に新たなオイルミストの発生を防ぐと同時に、油滴15を円滑に機内に戻す役割を果たす。なお、このキャッチャー64は、図11に示したような排出溝36の形態であってもよい。
【0069】このようにブラシシール60を回転軸10に取り付けた場合、遠心力による油滴の付着滞留防止効果をいっそう高めるために、図21に示されるように、ブラシシール60の素線65の先端が下側に向かって下がり勾配に傾斜する先端面66になるように切り揃えるとともに、その先端面66が接触するケーシング11の内面に同じ傾斜をもって傾斜面67をキャッチャーとして形成するようにしてもよい。
【0070】この図21の実施例によれば、ブラシシール60の素線65に捕捉されたオイルミストが油滴となっても、ブラシシール60中に滞留ことなく遠心力によって飛ばされ易いように斜めに素線66の先端を切り揃えた構造となっているので、図20のブラシシールの形態に較べてより一層と油滴の排出効果を向上させることができ、さらに、油滴がケーシング11の傾斜面67に衝突すると、衝突面が傾斜しているために下方すなわち機内側に向かう速度に変換されて高速で機内に戻される。
【0071】次に、図22に示す実施例は、ケーシング側に取り付ける形式の従来型の第1のブラシシール20を機外側に配置するとともに、図21に示したのと同様の第2のブラシシール60を機内側に配置して組み合わせ、ブラシシールを二段構成とした実施例である。
【0072】この図22の実施形態によれば、オイルミストを含んだ流体は、まず、第2のブラシシール60を通過しようとするが、このとき、オイルミストは油滴15として素線65に捕捉され、前述したように、遠心力で半径方向外方に飛ばされ、キャッチャーを構成する傾斜面67に衝突して機内に戻される。したがって、流体からはオイルミストがほとんど除去されるために、第1のブラシシール20では、油滴によるシール性能の低下等の弊害は生ぜず、長期間に亙るシール機能維持と信頼性を確保することができる。
【0073】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ブラシシールを構成する素線への流体中に含まれるオイルミストのような浮遊物の付着および滞留を防止し、シール性能を長期間に亙って良好に発揮させ、長期信頼性のあるブラシシール装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成11年12月24日(1999.12.24)
【代理人】 【識別番号】100064285
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外3名)
【公開番号】 特開2001−182646(P2001−182646A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−368507