| 【発明の名称】 |
火花点火式成層燃焼内燃機関 |
| 【発明者】 |
【氏名】植田 貴宣
【氏名】奥村 猛
【氏名】古野 志健男
【氏名】井口 哲
【氏名】秋浜 一弘
【氏名】瀧 昌弘
【氏名】山崎 哲
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| 【要約】 |
【課題】予混合気の一部を自着火燃焼せしめる。
【解決手段】燃焼室5内に燃料噴射弁6と点火栓7を配置する。燃焼室5内に自着火可能な予混合気を成層化して形成することにより燃焼室5内における予混合気の濃度に空間分布をもたせる。燃焼室5内に形成された一部の予混合気を点火栓7により着火して火炎伝播燃焼を行わせた後に残りの予混合気を時間差をもって順次自着火燃焼せしめる。自着火燃焼せしめられる予混合気の割合が予め定められた下限値以上であってノッキング発生限界以下となるように点火時期を設定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃焼室内に点火栓を配置した火花点火式成層燃焼内燃機関において、燃焼室内に自着火可能な予混合気を成層化して形成することにより燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせ、燃焼室内に形成された一部の予混合気を点火栓により着火して火炎伝播燃焼を行わせた後に残りの予混合気を時間差をもって順次自着火燃焼せしめ、自着火燃焼せしめられる予混合気の割合が予め定められた下限値以上であってノッキング発生限界以下となるように点火時期を設定した火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項2】 燃焼室内に燃料噴射弁を配置し、燃料噴射弁から少くとも圧縮行程末期に低オクタン燃料を噴射することによって燃焼室内に自着火可能な予混合気を成層化して形成すると共に燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせるようにした請求項1に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項3】 上記下限値がほぼ20パーセントである請求項1に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項4】 火炎伝播燃焼が行われないときには自着火せず、火炎伝播燃焼が行われたときに火炎伝播燃焼による燃焼室内の圧力および温度上昇に誘起されて自着火燃焼が生ずる請求項1に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項5】 燃焼室内に供給される燃料のオクタン価を機関の運転状態に応じて変化させるようにした請求項1に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項6】 燃焼室内に燃料噴射弁を配置し、一部の予混合気を自着火燃焼させるべきときには燃料噴射弁から少くとも圧縮行程末期に低オクタン燃料を噴射することによって燃焼室内に自着火可能な予混合気を成層化して形成すると共に燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせ、予混合気を自着火燃焼させるべきでないときには燃料噴射弁から高オクタン燃料を噴射するようにした請求項5に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項7】 予混合気を自着火燃焼すべきでないときには燃料噴射弁から噴射された高オクタン燃料により均質予混合気を形成するようにした請求項6に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項8】 機関の運転領域を低負荷側の運転領域と高負荷側の運転領域に分割し、機関の運転状態が低負荷側の運転領域にあるときには一部の予混合気を自着火燃焼させるべきであると判断され、機関の運転状態が高負荷側の運転領域にあるときには予混合気を自着火燃焼させるべきでないと判断される請求項6に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項9】 機関の要求トルクが高くなるほど上記低オクタン燃料のオクタン価が高くされる請求項5に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項10】 低オクタン燃料と高オクタン燃料の混合割合を変化させることによって燃焼室内に供給される燃料のオクタン価を変化させるようにした請求項5に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項11】 車両上において一つの燃料から高オクタン価の燃料と低オクタン価の燃料を製造する製造手段を具備した請求項5に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項12】 燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせるのと同時に燃焼室内における予混合気のオクタン価にも空間分布をもたせるようにした請求項1に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項13】 燃焼室内に低オクタン燃料からなる均質予混合気を形成すると共に燃焼室内の点火栓周りに高オクタン燃料からなる予混合気を形成するようにした請求項12に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項14】 燃焼室内に第1の燃料噴射弁を配置すると共に吸入空気内に燃料を供給するための第2の燃料噴射弁を具備し、第2の燃料噴射弁から低オクタン燃料を噴射することにより燃焼室内に低オクタン燃料からなる均質予混合気を形成し、第1の燃料噴射弁から圧縮行程末期に噴射された高オクタン燃料によって点火栓周りに高オクタン燃料からなる予混合気を形成するようにした請求項13に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項15】 排気ガスを吸気通路内に再循環させるための排気ガス再循環装置を具備し、第2の燃料噴射弁から再循環すべき排気ガス中に低オクタン燃料を噴射するようにした請求項14に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項16】 一部の混合気を自着火燃焼させるべきときには燃焼室内に低オクタン燃料からなる均質予混合気を形成すると共に燃焼室内の点火栓周りに高オクタン燃料からなる予混合気を形成し、予混合気を自着火燃焼させるべきでないときには燃焼室内に高オクタン燃料からなる予混合気を形成するようにした請求項13に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。 【請求項17】 予混合気を自着火燃焼させるべきでないときには燃焼室内に高オクタン燃料からなる均質予混合気を形成するようにした請求項16に記載の火花点火式成層燃焼内燃機関。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は火花点火式成層燃焼内燃機関に関する。 【0002】 【従来の技術】ディーゼル機関において燃料噴射を行うと一部の燃料はただちに蒸発して予混合気を形成し、残りの燃料は燃料液滴の形で燃焼室内に分散せしめられる。次いで予混合気が自着火せしめられ、これが熱源となって燃料液滴から蒸発する燃料が順次燃焼せしめられる。即ち、拡散燃焼が行われる。この場合、予混合気の割合が多くなると爆発的な燃焼が生ずるために燃焼温が急激に上昇し、斯くして多量のNOx が発生することになる。 【0003】そこで燃焼室内に燃焼圧センサと点火栓とを配置し、検出された燃焼圧から予混合気の割合を求め、予混合気の割合が最適値よりも多くなった場合には点火時期を早めて予混合気の生成量が過度に増大する前に点火栓により予混合気を着火せしめ、点火栓による着火時の予混合気の割合が最適値よりも少なくなった場合には点火時期を遅らせて予混合気の生成量が適度な量まで増大したときに予混合気を点火栓により着火せしめるようにしたディーゼル機関が公知である(実開平2−141648号公報参照)。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】一方、火花点火式内燃機関においても燃焼室内の圧力および温度が極度に高くなると自着火を生ずる。しかしながら火花点火式内燃機関において自着火を生じると予混合気全体が一気に燃焼するために燃焼室内の圧力および温度が急激に上昇し、その結果ノッキングが発生するばかりでなく多量のNOx が発生する。従って従来より火花点火式内燃機関ではできる限り自着火を生じないようにしており、点火栓による着火火炎によって混合気を燃焼せしめるようにしている。 【0005】ところで自着火を生じると上述の如くノッキングが発生し、多量のNOx が発生する。ところが自着火による燃焼は短かい時間で燃焼が完結し、従って自着火燃焼を生じさせると熱効率が向上する。従ってノッキングおよび多量のNOx を発生させることなく自着火燃焼を生じさせることができれば熱効率の高い実用性のある内燃機関を得ることができる。 【0006】ところで自着火燃焼が生じたときにノッキングおよび多量のNOx が発生するか否かは自着火燃焼せしめられる予混合気の量と燃焼時間に依存している。即ち、予混合気全体が一気に燃焼せしめられると前述したようにノッキングおよび多量のNOx が発生する。しかしながら予混合気全体ではなく一部の予混合気のみを自着火燃焼させ、しかも時間差をもって予混合気を少しずつ自着火燃焼させれば燃焼室内の圧力および温度はさほど高くならず、斯くしてノッキングおよび多量のNOx が発生することがなくなる。ただし、この場合自着火燃焼する予混合気量が少すぎると熱効率の向上は期待できず、従って自着火燃焼させるべき予混合気量には下限値が存在する。 【0007】即ち、ノッキングおよび多量のNOx の発生を阻止しつつ熱効率を向上させるには自着火燃焼する予混合気の割合を最適な範囲内に維持し、しかも時間差をもって予混合気が順次自着火燃焼を生ずるようにする必要がある。 【0008】 【課題を解決するための手段】そこで1番目の発明では、燃焼室内に点火栓を配置した火花点火式成層燃焼内燃機関において、燃焼室内に自着火可能な予混合気を成層化して形成することにより燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせ、燃焼室内に形成された一部の予混合気を点火栓により着火して火炎伝播燃焼を行わせた後に残りの予混合気を時間差をもって順次自着火燃焼せしめ、自着火燃焼せしめられる予混合気の割合が予め定められた下限値以上であってノッキング発生限界以下となるように点火時期を設定している。 【0009】2番目の発明では1番目の発明において、燃焼室内に燃料噴射弁を配置し、燃料噴射弁から少くとも圧縮行程末期に低オクタン燃料を噴射することによって燃焼室内に自着火可能な予混合気を成層化して形成すると共に燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせるようにしている。3番目の発明では1番目の発明において、上述の下限値がほぼ20パーセントである。 【0010】4番目の発明では1番目の発明において、火炎伝播燃焼が行われないときには自着火せず、火炎伝播燃焼が行われたときに火炎伝播燃焼による燃焼室内の圧力および温度上昇に誘起されて自着火燃焼が生ずる。5番目の発明では1番目の発明において、燃焼室内に供給される燃料のオクタン価を機関の運転状態に応じて変化させるようにしている。 【0011】6番目の発明では5番目の発明において、燃焼室内に燃料噴射弁を配置し、一部の予混合気を自着火燃焼させるべきときには燃料噴射弁から少くとも圧縮行程末期に低オクタン燃料を噴射することによって燃焼室内に自着火可能な予混合気を成層化して形成すると共に燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせ、予混合気を自着火燃焼させるべきでないときには燃料噴射弁から高オクタン燃料を噴射するようにしている。 【0012】7番目の発明では6番目の発明において、予混合気を自着火燃焼すべきでないときには燃料噴射弁から噴射された高オクタン燃料により均質予混合気を形成するようにしている。8番目の発明では6番目の発明において、機関の運転領域を低負荷側の運転領域と高負荷側の運転領域に分割し、機関の運転状態が低負荷側の運転領域にあるときには一部の予混合気を自着火燃焼させるべきであると判断され、機関の運転状態が高負荷側の運転領域にあるときには予混合気を自着火燃焼させるべきでないと判断される。 【0013】9番目の発明では5番目の発明において、機関の要求トルクが高くなるほど低オクタン燃料のオクタン価が高くされる。10番目の発明では5番目の発明において、低オクタン燃料と高オクタン燃料の混合割合を変化させることによって燃焼室内に供給される燃料のオクタン価を変化させるようにしている。 【0014】11番目の発明では5番目の発明において、車両上において一つの燃料から高オクタン価の燃料と低オクタン価の燃料を製造する製造手段を具備している。12番目の発明では1番目の発明において、燃焼室内における予混合気の濃度に空間分布をもたせるのと同時に燃焼室内における予混合気のオクタン価にも空間分布をもたせるようにしている。 【0015】13番目の発明では12番目の発明において、燃焼室内に低オクタン燃料からなる均質予混合気を形成すると共に燃焼室内の点火栓周りに高オクタン燃料からなる予混合気を形成するようにしている。14番目の発明では13番目の発明において、燃焼室内に第1の燃料噴射弁を配置すると共に吸入空気内に燃料を供給するための第2の燃料噴射弁を具備し、第2の燃料噴射弁から低オクタン燃料を噴射することにより燃焼室内に低オクタン燃料からなる均質予混合気を形成し、第1の燃料噴射弁から圧縮行程末期に噴射された高オクタン燃料によって点火栓周りに高オクタン燃料からなる予混合気を形成するようにしている。 【0016】15番目の発明では14番目の発明において、排気ガスを吸気通路内に再循環させるための排気ガス再循環装置を具備し、第2の燃料噴射弁から再循環すべき排気ガス中に低オクタン燃料を噴射するようにしている。16番目の発明では13番目の発明において、一部の混合気を自着火燃焼させるべきときには燃焼室内に低オクタン燃料からなる均質予混合気を形成すると共に燃焼室内の点火栓周りに高オクタン燃料からなる予混合気を形成し、予混合気を自着火燃焼させるべきでないときには燃焼室内に高オクタン燃料からなる予混合気を形成するようにしている。 【0017】17番目の発明では16番目の発明において、予混合気を自着火燃焼させるべきでないときには燃焼室内に高オクタン燃料からなる均質予混合気を形成するようにしている。 【0018】 【発明の実施の形態】図1および図2は本発明を成層燃焼内燃機関に適用した場合を示している。図1を参照すると、機関本体1は4つの気筒を具備しており、図2はこれら気筒の側面断面図を示している。図2を参照すると、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6はシリンダヘッド3の内壁面周縁部に配置された燃料噴射弁、7はシリンダヘッド3の内壁面中央部に配置された点火栓、8は吸気弁、9は吸気ポート、10は排気弁、11は排気ポートを夫々示す。 【0019】図1および図2を参照すると、吸気ポート9は対応する吸気枝管12を介してサージタンク13に連結され、サージタンク13は吸気ダクト14およびエアフローメータ15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ダクト14内にはステップモータ17により駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート11は排気マニホルド19を介して排気管20に連結される。また、排気マニホルド19とサージタンク13とは排気ガス再循環(以下EGRと称す)通路21を介して互いに連結され、EGR通路21内には電気制御式EGR制御弁22が配置される。 【0020】各燃料噴射弁6は夫々対応する燃料供給制御弁23に連結され、各燃料供給制御弁23は夫々一対の燃料リザーバ、いわゆるコモンレール24,25に連結される。コモンレール24内へは燃料タンク26内の低オクタン燃料が電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ27を介して供給され、コモンレール24内に供給された低オクタン燃料が各燃料供給制御弁23に供給される。コモンレール24にはコモンレール24内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ28が取付けられ、燃料圧センサ28の出力信号に基づいてコモンレール24内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ27の吐出量が制御される。 【0021】一方、コモンレール25内へは燃料タンク29内の高オクタン燃料が電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ30を介して供給され、コモンレール25内に供給された高オクタン燃料が各燃料供給制御弁23に供給される。コモンレール25にはコモンレール25内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ31が取付けられ、燃料圧センサ31の出力信号に基づいてコモンレール25内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ30の吐出量が制御される。 【0022】各燃料供給制御弁23は低オクタン燃料又は高オクタン燃料のいずれか一方を選択的に対応する燃料噴射弁6に供給する機能、および低オクタン燃料と高オクタン燃料を要求混合割合に従い混合して混合された燃料を対応する燃料噴射弁6に供給する機能を有している。電子制御ユニット40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)42、RAM(ランダムアクセスメモリ)43、CPU(マイクロプロセッサ)44、入力ポート45および出力ポート46を具備する。エアフローメータ15は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、この出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。排気管20には空燃比センサ32が取付けられ、この空燃比センサ32の出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。更に入力ポート45には各燃料圧センサ28,31の出力信号が夫々対応するAD変換器47を介して入力される。 【0023】また、アクセルペダル50にはアクセルペダル50の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ51が接続され、負荷センサ51の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、入力ポート45にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ52が接続される。一方、出力ポート46は対応する駆動回路48を介して燃料噴射弁6、点火栓7、スロットル弁制御用ステップモータ17、EGR制御弁22、燃料供給制御弁23および燃料ポンプ27,30に接続される。 【0024】図3は燃料噴射量Q1,Q2,Q(=Q1 +Q2 )、噴射開始時期θS1,θS2、噴射完了時期θE1,θE2および燃焼室5内における平均空燃比A/Fを示している。なお、図3において横軸Lは要求トルクを示している。図3からわかるように要求トルクLがL1 よりも低いときには圧縮行程末期のθS2からθE2の間において燃料噴射Q2が行われる。このときには平均空燃比A/Fはかなりリーンとなっている。要求トルクLがL1 とL2 の間のときには吸気行程初期のθS1からθE1の間において第1回目の燃料噴射Q1が行われ、次いで圧縮行程末期のθS2からθE2の間において第2回目の燃料噴射Q2が行われる。このときにも空燃比A/Fはリーンとなっている。要求トルクLがL2 よりも大きいときには吸気行程初期のθS1からθE1の間において燃料噴射Q1が行われる。このときには要求トルクLが低い領域では平均空燃比A/Fがリーンとされており、要求トルクLが高くなると平均空燃比A/Fが理論空燃比とされ、要求トルクLが更に高くなると平均空燃比A/Fがリッチとされる。 【0025】図2は要求トルクLがL1 (図3)よりも小さいとき、即ち圧縮行程末期においてのみ燃料噴射Q2が行われる場合を示している。図2に示されるようにピストン4の頂面上にはキャビティ4aが形成されており、要求トルクLがL1 よりも低いときには燃料噴射弁6からキャビティ4aの底壁面に向けて圧縮行程末期に燃料が噴射される。この燃料はキャビティ4aの周壁面により案内されて点火栓7に向かい、それによって点火栓7の周りに予混合気Gが形成される。次いでこの予混合気Gは点火栓7により着火せしめられる。即ち、このときには成層燃焼が行われる。 【0026】一方、前述したように要求トルクLがL1 とL2 との間にあるときには二回に分けて燃料噴射が行われる。この場合、吸気行程初期に行われる第1回目の燃料噴射Q1によって燃焼室5内に稀薄混合気が形成される。次いで圧縮行程末期に行われる第2回目の燃料噴射Q2によって点火栓7周りに最適な濃度の予混合気が形成される。この予混合気が点火栓7により着火せしめられ、この着火火炎によって稀薄混合気が燃焼せしめられる。従ってこのときにも成層燃焼が行われる。 【0027】一方、要求トルクLがL2 よりも大きいときには図3に示されるように燃焼室5内にはリーン又は理論空燃比又はリッチ空燃比の均質混合気が形成され、この均質混合気が点火栓7により着火せしめられる。即ちこのときには均質燃焼が行われる。なお、成層燃焼が行われる運転領域および均質燃焼が行われる運転領域は要求トルクLのみにより定まるのではなく、実際には図4に示されるように要求トルクLと機関回転数Nにより定まる。 【0028】次に本発明による自着火燃焼方法について説明する。本発明による第1実施例では成層燃焼が行われる運転領域のときに燃料噴射弁6から低オクタン燃料が噴射され、このとき燃焼室5内に形成された一部の予混合気が点火栓7により着火せしめられて火炎伝播燃焼が行われ、次いで残りの予混合気が自着火燃焼せしめられるように燃料噴射時期および点火時期が設定される。 【0029】なお、本発明において低オクタン燃料というのはJIS K 2202の規定によるレギュラーガソリン(2号)のオクタン価の下限値89よりも低いオクタン価の燃料を示しており、本発明において高オクタン燃料というのはJIS K2202の規定によるオクタン価89以上の燃料であって、例えばプレミアムガソリン(1号)およびレギュラーガソリン(2号)を示している。また、以下に述べる本発明による実施例において低オクタン燃料と言うときは特別に言及しない限りオクタン価が50以下の燃料を意味している。 【0030】図5(A)は本発明による方法によって自着火燃焼が行われているときの熱発生率dQ/dθを示している。なお、図5(A)においてIgは点火時期を示している。図5(A)に示されるようにIgにおいて点火栓7による点火が行われると圧縮上死点TDC付近までは熱発生率dQ/dθが比較的ゆるやかに上昇し、この間は点火栓7により着火された低オクタン燃料からなる予混合気が火炎伝播燃焼している。次いで圧縮上死点TDC付近に達すると熱発生率dQ/dθが急速に上昇した後に急速に下降し、この間は低オクタン燃料からなる予混合気が自着火燃焼している。即ち、熱発生率dQ/dθが急速に上昇しはじめたときが火炎伝播燃焼から自着火燃焼への移行時である。 【0031】従って以下、図5(B)において点火時Igから熱発生率dQ/dθが急速に上昇しはじめる時点Ctまでに燃焼せしめられた予混合気の質量割合を火炎伝播燃焼割合と称し、Ct以後において自着火燃焼せしめられる予混合気の質量割合を自着火燃焼割合と称す。図6において実線は一部の予混合気を火炎伝播燃焼せしめた後に残りの予混合気を自着火燃焼せしめた場合の熱発生率dQ/dθの変化を示しており、図6において破線は全予混合気を火炎伝播燃焼せしめた場合を示している。図6に示されるように一部の予混合気を自着火燃焼せしめると全予混合気を火炎伝播燃焼せしめた場合に比べて圧縮上死点TDC後に熱発生率dQ/dθが急速に低下し、燃焼が急速に完結する。 【0032】火炎が伝播するには時間を要し、予混合気が稀薄になればなるほど火炎の伝播速度は遅くなる。従って全予混合気を火炎伝播燃焼せしめた場合には図6において破線で示されるように特に予混合気が稀薄な場合には燃焼期間が長くなる。燃焼期間が長くなると機関出力が低下するために燃料消費量が増大するばかりでなく、特に燃焼後期における燃焼が不安定となるためにトルク変動が発生する。また、燃焼室5内の周辺部へ分散した燃料へは稀薄すぎて火炎が伝播しないために多量の未燃HCが発生し、このことはまた燃料消費量を一層増大させ、燃料消費率を悪化させることを意味している。 【0033】しかしながら図6において実線で示されるように燃焼が急速に完結すると機関出力が向上するために燃料消費量が低減し、更に燃焼が安定するためにトルク変動量が極めて小さくなる。また、予混合気は稀薄であったとしても自着火燃焼が生じ、自己着火燃焼が生じなければ燃焼後期において燃焼せしめられるはずの予混合気が自着火燃焼が生じれば極めて短時間に燃焼せしめられるので未燃HCの発生量は極めて少なくなる。このように自着火燃焼を生じさせると機関出力が増大すると共に燃料消費量が低減し、即ち熱効率が向上し、更にトルク変動が低減すると共に未燃HCの発生量が極めて少くなるという大きな利点を有する。 【0034】このように自着火燃焼は大きな利点を有しているが激しい自着火燃焼を生じさせると図7(A)に示されるように熱発生率dQ/dθのピークが大きくなってノッキング発生限界を越えてしまい、斯くしてノッキングが発生することになる。従って自着火燃焼を生じさせるにしても熱発生率dQ/dθのピークがノッキング発生限度を越えないようにしなければならない。この場合、熱発生率dQ/dθのピークがノッキング発生限界を越えるか否かは予混合気の自着火燃焼割合と予混合気の成層度合の双方によって決まり、特に予混合気の成層度合による影響が極めて大きい。 【0035】即ち、燃料分子が加熱せしめられると水酸ラジカル等のラジカルが徐々に生成され、これらラジカルの量が一定量を越えると自着火が生じる。従って発生するラジカルの量が多ければただちに自着火を生じ、発生するラジカルの量が少ければ自着火を生ずるまでに時間を要する。このようにラジカルの発生量に応じて自着火の発生に時間差を生じ、従って以下燃料分子の熱分解が開始されてから自着火が生じるまでの時間を自着火遅れ時間と称する。 【0036】図8(A)は燃焼室5内の種々の温度800℃、1000℃、1200℃に対する自着火遅れ時間τと予混合気の当量比ψとの関係の概略図を示しており、図8(B)は噴射燃料の種々のオクタン価0,50,100に対する自着火遅れ時間τと予混合気の当量比ψとの関係の概略図を示している。図8(A),(B)から当量比ψが1.0のとき、即ち空気と燃料との比が理論空燃比になっているときに自着火遅れ時間τは最も短かくなり、当量比ψが小さくなっても、即ち空気過剰となっても、当量比ψが大きくなっても、即ち燃料過剰となっても自着火遅れ時間τが長くなる。即ち、空気過剰になると過剰な空気を温めるために余分な熱が使用され、燃料過剰になると過剰な燃料を温めるために余分な熱が使用され、従って当量比ψが1.0から離れれば離れるほど自着火遅れ時間τは長くなる。 【0037】一方、燃料分子周りの温度が高ければ高いほど多量のラジカルが発生する。従って図8(A)に示されるように燃焼室5内の温度が高くなるほど自着火遅れ時間τは短かくなる。また、燃料のオクタン価RONが小さくなればなるほど多量のラジカルが発生するようになる。従って燃料のオクタン価RONが小さくなるほど自着火遅れ時間τは短かくなる。 【0038】さて、燃焼室5内に均質な予混合気が形成されると予混合気はどの部分においても当量比ψは全て等しくなり、従って予混合気はどの部分においても自着火遅れ時間τが全て等しくなる。ところが予混合気のどの部分においても自着火遅れ時間τが全て等しくなると燃焼室5内の圧力および温度が上昇したときに全予混合気が一気に自着火せしめられる。しかしながら全予混合気が一気に自着火燃焼せしめられると予混合気量が極めて少量の場合は別として燃焼室5内の圧力は急激に上昇し、斯くしてノッキングを発生することになる。 【0039】これに対して本発明において成層燃焼が行われているときには図9に示されるように点火栓7の周りに可燃混合気Gが形成され、図9に示される例では燃焼室5内における予混合気の濃度Dは図9の曲線Dで示されるように燃焼室5の中心部において最も高くなり、燃焼室5の周辺部に向けて次第に低下する。即ち、予混合気の濃度Dに空間分布が生じることになる。この場合、点火栓7の周りにほぼ当量比ψが1の予混合気が形成されているとすると燃焼室5の周辺部に向けて予混合気の当量比ψが次第に小さくなる。 【0040】このように予混合気の当量比ψが次第に小さくなると図8(A),(B)からわかるように着火遅れ時間τが次第に長くなる。従って燃焼室5の中央部の予混合気が自着火すると次に時間差をもってその周囲の予混合気が自着火し、斯くして燃焼室5の中心部から周辺部に向けて予混合気が時間差をもって順次自着火する。このように予混合気が時間差をもって順次自着火すると燃焼室5内の圧力上昇が緩慢となるためにノッキングが発生しずらくなる。即ち、自着火燃焼を生じさせてノッキングが発生しないようにするためには予混合気を成層化することが必須の要件となる。この場合、成層化の度合、即ち燃焼室5内に分散した予混合気間の濃度差が大きくなるほどノッキングは生じずらくなる。 【0041】なお、この場合重要なことは予混合気の濃度Dに空間分布を持たせることであり、従って予混合気の濃度Dに空間分布が生じる限り点火栓7周りにおける予混合気の濃度Dを最も高くする必要がなく、また最も濃度Dの高い予混合気の当量比ψを1とする必要もない。一方、予混合気の濃度差を大きくしても自着火燃焼せしめられる予混合気の絶対量が多くなるとノッキングを生じやすくなる。従って前述したように熱発生率dQ/dθが図7(A)に示されるようにノッキング発生限界を越えるか否かは予混合気の自着火燃焼割合と予混合気の成層度合の双方によって決定されることになる。 【0042】一方、自着火燃焼割合を少くすると図7(B)に示されるように圧縮上死点TDC後において熱発生率dQ/dθがゆっくりと低下するようになる。即ち、燃焼期間が長くなる。燃焼期間が長くなると全予混合気を火炎伝播燃焼させたときと同様に熱効率が低下し、トルク変動が大きくなり、多量の未燃HCが発生するようになる。この場合、熱効率を向上し、トルク変動を小さくしかつ未燃HCの発生量を少なくするには少くとも予混合気の自着火燃焼割合をほぼ20パーセント以上にする必要があることが実験により確かめられている。 【0043】従って本発明では予混合気の自着火燃焼割合がほぼ20パーセント以上でありかつノッキングが発生しない範囲内に制御される。この場合、火炎伝播燃焼が増大すれば自着火燃焼割合が減少し、火炎伝播燃焼割合は点火時期Ig(図5(A))を早めるほど大きくなる。従って自着火燃焼割合は点火時期Igによって制御することができる。 【0044】一方、熱効率の点からみると自着火燃焼は圧縮上死点TDC付近、具体的に言うと圧縮上死点前BTDC 5°程度から圧縮上死点後ATDC 5°程度の間において開始させることが好ましい。斯くして本発明による実施例では自着火燃焼がほぼBTDC 5°とほぼATDC 5°の間で開始し、かつ自着火燃焼割合がほぼ20パーセント以上でかつノッキングが生じない自着火燃焼割合となるように点火時期Igが設定される。この点火時期Igは要求トルクおよび機関回転数に応じて変化し、本発明による実施例ではこの点火時期Igの最適値は予め実験により求められる。 【0045】なお、自着火燃焼によって熱効率が向上し、トルク変動が小さくなり、かつ未燃HCの発生量が低減するのは自着火燃焼させることによって燃焼が急速に完結するからであり、自着火燃焼せしめられる予混合気の絶対量にほとんど依存していない。従って自着火燃焼割合はそれほど大きくする必要がなく、例えば要求トルクおよび機関回転数に関係なく予混合気の自着火燃焼割合を20パーセントから30パーセント程度の間に維持することもできる。 【0046】また、高オクタン燃料を用いると同一温度、同一圧力下では自着火しずらいので本発明では自着火燃焼すべきときには低オクタン燃料が使用される。低オクタン燃料を使用した場合に機関の圧縮比等の差異によって点火しなくても自着火を生ずる型式の機関もあり、点火しなければ自着火を生じない型式の機関も存在する。点火しなければ自着火を生じない型式の機関では火炎伝播燃焼による燃焼室5内の圧力および温度上昇に誘起されて自着火燃焼が生ずる。いずれの型式の機関を用いることができるが本発明による実施例では点火しなければ自着火を生じない型式の機関が用いられている。 【0047】ノッキングが発生することなく自着火燃焼を生じさせるためには前述したように予混合気を成層化する必要がある。従って要求トルクおよび機関回転数にかかわらずに成層燃焼を行うことのできる機関を用いた場合には全運転領域に亘って火炎伝播燃焼後に自着火燃焼を生じさせることができる。本発明による実施例では図3および図4に示されるように要求トルクLおよび機関回転数Nが高い領域では均質燃焼が行われており、均質燃料が行われるときに低オクタン燃料を用いるとノッキングが発生する。従って本発明による実施例では均質燃焼が行われる運転領域では高オクタン燃料が使用され、このときには火炎伝播燃焼のみが行われる。 【0048】図10は第1実施例の運転制御ルーチンを示している。図10を参照するとまず初めにステップ100において圧縮行程末期に一回燃料噴射を行う成層運転領域であるか否かが判別される。圧縮行程末期に一回燃料噴射を行う成層運転領域であるときにはステップ101に進んで低オクタン燃料が燃料噴射弁6に供給されるように燃料供給制御弁23が切換えられる。次いでステップ102では噴射量Q2が算出され、次いでステップ103では噴射開始時期θS2が算出される。次いでステップ104では噴射量Q2、噴射開始時期θS2および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE2が算出される。次いでステップ105では点火時期Igが算出される。 【0049】一方、ステップ100において圧縮行程末期に一回燃料噴射を行う成層運転領域でないと判別されたときにはステップ106に進んで吸気行程初期と圧縮行程末期の二回に分けて燃料噴射を行う成層運転領域であるか否かが判別される。吸気行程初期と圧縮行程末期の二回に分けて燃料噴射を行う成層運転領域であるときにはステップ107に進んで低オクタン燃料が燃料噴射弁6に供給されるように燃料供給制御弁23が切換えられる。 【0050】次いでステップ108では吸気行程噴射量Q1が算出される。吸気行程噴射の噴射開始時期θS1は図3に示されるように吸気上死点付近に固定されており、従ってステップ109では噴射量Q1、噴射開始時期θS1および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE1が算出される。次いでステップ110では圧縮行程噴射量Q2が算出され、次いでステップ111では噴射開始時期θS2が算出される。次いでステップ112では噴射量Q2、噴射開始時期θS2および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE2が算出される。次いでステップ113では点火時期Igが算出される。一方、ステップ106において吸気行程初期と圧縮行程末期の二回に分けて燃料噴射を行う成層運転領域でないと判断されたときにはステップ114に進んで高オクタン燃料が燃料噴射弁6に供給されるように燃料供給制御弁23が切換えられる。次いでステップ115では吸気行程噴射量Q1が算出される。吸気行程噴射の噴射開始時期θS1は図3に示されるように吸気上死点付近に固定されており、従ってステップ116では噴射量Q1、噴射開始時期θS1および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE1が算出される。次いでステップ117では点火時期Igが算出される。 【0051】図11および図12に第2実施例を示す。この実施例では図11に示されるように成層燃焼が行われる運転領域ときには要求トルクLおよび機関回転数Nに応じて低オクタン燃料のオクタン価RONが変化せしめられる。なお、図11においてRON=0,RON=25,RON=50,RON=75の各曲線は夫々オクタン価が0,25,50,75を示しており、各曲線間のオクタン価は比例配分により定められる。従って要求トルクLが高くなるほどオクタン価RONが高くなることがわかる。 【0052】要求トルクLが高くなるほど燃焼室5内の温度が高くなるので自着火しやすくなり、ノッキングを発生しやすくなる。そこでこの実施例では要求トルクLが高くなるにつれて低オクタン燃料のオクタン価RONを高くすることによって要求トルクLが高くなってもノッキングが発生しないようにしている。なお、この実施では低オクタン燃料と高オクタン燃料の混合割合を燃料供給制御弁23により制御することによって燃料噴射弁6に供給される燃料のオクタン価RONが目標オクタン価となるように制御される。 【0053】図12は第2実施例の運転制御ルーチンを示している。図12を参照するとまず初めにステップ200において圧縮行程末期に一回燃料噴射を行う成層運転領域であるか否かが判別される。圧縮行程末期に一回燃料噴射を行う成層運転領域であるときにはステップ201に進んで燃料噴射弁6に供給される低オクタン燃料のオクタン価RONが目標オクタン価となるように低オクタン燃料と高オクタン燃料の混合割合が燃料供給制御弁23によって制御される。 【0054】次いでステップ202では噴射量Q2が算出され、次いでステップ203では噴射開始時期θS2が算出される。次いでステップ204では噴射量Q2、噴射開始時期θS2および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE2が算出される。次いでステップ205では点火時期Igが算出される。一方、ステップ200において圧縮行程末期に一回燃料噴射を行う成層運転領域でないと判別されたときにはステップ206に進んで吸気行程初期と圧縮行程末期の二回に分けて燃料噴射を行う成層運転領域であるか否かが判別される。吸気行程初期と圧縮行程末期の二回に分けて燃料噴射を行う成層運転領域であるときにはステップ207に進んで燃料噴射弁6に供給される低オクタン燃料のオクタン価RONが目標オクタン価となるように低オクタン燃料と高オクタン燃料の混合割合が燃料供給制御弁23によって制御される。 【0055】次いでステップ208では吸気行程噴射量Q1が算出される。吸気行程噴射の噴射開始時期θS1は図3に示されるように吸気上死点付近に固定されており、従ってステップ209では噴射量Q1、噴射開始時期θS1および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE1が算出される。次いでステップ210では圧縮行程噴射量Q2が算出され、次いでステップ211では噴射開始時期θS2が算出される。次いでステップ212では噴射量Q2、噴射開始時期θS2および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE2が算出される。次いでステップ213では点火時期Igが算出される。 【0056】一方、ステップ206において吸気行程初期と圧縮行程末期の二回に分けて燃料噴射を行う成層運転領域でないと判断されたときにはステップ214に進んで高オクタン燃料が燃料噴射弁6に供給されるように燃料供給制御弁23が切換えられる。次いでステップ215では吸気行程噴射量Q1が算出される。吸気行程噴射の噴射開始時期θS1は図3に示されるように吸気上死点付近に固定されており、従ってステップ216では噴射量Q1、噴射開始時期θS1および機関回転数Nに基づいて噴射完了時期θE1が算出される。次いでステップ217では点火時期Igが算出される。 【0057】ところで図1に示される実施例では低オクタン燃料が予め燃料タンク26内に蓄えられており、高オクタン燃料が予め燃料タンク29内に蓄えられている。しかしながら車両上において一つの燃料、例えばガソリン、又は軽油、又は灯油から高オクタン燃料と低オクタン燃料を製造する製造手段を設けることができる。この製造手段としては改質によって高オクタン燃料から低オクタン燃料を製造する製造装置、又は改質によって低オクタン燃料から高オクタン燃料を製造する製造装置、又は蒸留によって高オクタン燃料と低オクタン燃料を製造する製造装置を用いることができる。図13に示す第3実施例では燃料タンク26内の低オクタン燃料を高オクタン燃料に改質するための燃料改質装置33が設けられており、生成された高オクタン燃料が燃料タンク29に供給される。 【0058】図14から図18に第4実施例を示す。図14および図15に示されるようにこの実施例では燃料噴射弁6に加え、各気筒の吸気ポート9内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁34が各吸気枝管12に夫々配置される。燃料噴射弁6はコモンレール25に連結されており、従って燃料噴射弁6からは燃焼室5内に向けて高オクタン燃料が噴射される。一方、燃料噴射弁34はコモンレール24に連結されており、従って燃料噴射弁34からは吸気ポート9内に向けて低オクタン燃料が噴射される。 【0059】図16に示されるようにこの実施例においても要求トルクLがL0 よりも低いときには成層燃焼が行われ、要求トルクLがL0 よりも高くなると均質燃焼が行われる。なお、実際に成層燃焼が行われる運転領域と均質燃焼が行われる運転領域は図17に示されるように要求トルクLばかりでなく機関回転数Nの関数でもある。 【0060】図16に示されるように成層燃焼が行われる運転領域では低オクタン燃料が燃料噴射弁34から噴射量QPだけ吸気ポート9内に向けて噴射され、高オクタン燃料が燃料噴射弁6から燃焼室5内に向けて圧縮行程末期に噴射量Q2だけ噴射される。従って燃料噴射弁6から高オクタン燃料が噴射される前に燃焼室5内はほぼ均質な低オクタン燃料の予混合気によって満たされており、燃料噴射弁6から高オクタン燃料が噴射されると点火栓7の周りに高オクタン燃料からなる予混合気Gが形成される。 【0061】従ってこの実施例においても成層燃焼が行われているときには燃焼室5内における予混合気の濃度Dは図15の曲線Dで示されるように燃焼室5の中心部において最も高くなり、燃焼室5の周辺部に向けて次第に低下する。即ち、予混合気の濃度Dに空間分布が生じることになる。この場合、点火栓7の周りにほぼ当量比ψが1の予混合気が形成されているとすると燃焼室5の周辺部に向けて予混合気の当量比ψが次第に小さくなる。なお、この実施例においても点火栓7周りの予混合気の当量比ψは1でなくてもよい。 【0062】この実施例ではまず初めに点火栓7によって主に高オクタン燃料からなる予混合気Gが着火せしめられ、主に高オクタン燃料が火炎伝播燃焼せしめられる。高オクタン燃料が火炎伝播燃焼せしめられると予混合気G周りの低オクタン燃料周りの圧力および温度が上昇し、斯くして低オクタン燃料が自着火燃焼せしめられる。 【0063】ところがこの実施例では上述したように燃焼室5の周辺部に向けて予混合気の当量比ψが次第に小さくなり、このように予混合気の当量比ψが次第に小さくなると図8(A),(B)からわかるように着火遅れ時間τが次第に長くなる。従って予混合気が自着火すると次に時間差をもってその周囲の予混合気が自着火し、斯くして燃焼室5の周辺部に向けて予混合気が時間差をもって順次自着火する。このように予混合気が時間差をもって順次自着火すると燃焼室5内の圧力上昇が緩慢となるためにノッキングが発生しずらくなる。 【0064】更に高オクタン燃料と低オクタン燃料とが混合せしめられると混合した燃料のオクタン価は高オクタン燃料と低オクタン燃料との混合割合に応じたオクタン価となる。従って、図15に示されるように点火栓7の周りでは高オクタン燃料の濃度が高いためにオクタン価RONが高くなっており、燃焼室5の周辺部に向かうに従って高オクタン燃料の濃度が低くなっていくためにオクタン価RONが次第に小さくなる。即ち、燃焼室5の周辺部の方が燃焼室5の中央部よりもオクタン価が低く、自着火しやすくなっている。この実施例では低オクタン燃料の噴射量QPを制御することによって燃焼室5の周辺部に集まっている低オクタン燃料の量を制御することができ、斯くして自着火燃焼割合を容易に制御することができる。 【0065】一方、図16に示されるように均質燃焼の行われる運転領域では燃料噴射弁6から燃焼室5内に向けて吸気行程初期に高オクタン燃料が噴射され、高オクタン燃料からなる均質混合気が点火栓7によって火炎伝播燃焼せしめられる。この場合には高オクタン燃料のみによる耐ノック性の高い運転が行われる。図18は第4実施例の運転制御ルーチンを示している。 【0066】図18を参照するとまず初めにステップ300において成層燃焼を行う運転領域であるか否かが判別される。成層燃焼を行う運転領域であるときにはステップ301に進んで燃料噴射弁34から噴射すべき低オクタン燃料の噴射量QPが算出される。次いでステップ302では燃料噴射弁6から噴射すべき高オクタン燃料の噴射量Q2が算出され、次いでステップ303では高オクタン燃料の噴射開始時期θS2が算出される。次いでステップ304では噴射量Q2、噴射開始時期θS2および機関回転数Nに基づいて高オクタン燃料の噴射完了時期θE2が算出される。次いでステップ305では点火時期Igが算出される。 【0067】一方、ステップ300において成層燃焼を行う運転領域でないと判別されたときにはステップ306に進んで燃料噴射弁6から噴射すべき高オクタン燃料の吸気行程噴射量Q1が算出される。吸気行程噴射の噴射開始時期θS1は図16に示されるように吸気上死点付近に固定されており、従ってステップ307では噴射量Q1、噴射開始時期θS1および機関回転数Nに基づいて高オクタン燃料の噴射完了時期θE1が算出される。次いでステップ308では点火時期Igが算出される。 【0068】図19に第5実施例を示す。この実施例では成層燃焼すべき運転状態のときに吸気ポート9から燃焼室5内に供給される低オクタン燃料の気化を促進するために燃料噴射弁34から低オクタン燃料がEGR通路21内に向けて噴射される。 【0069】 【発明の効果】予混合気の一部を自着火燃焼せしめることによって熱効率を向上し、トルク変動を低減し、未燃HCの発生量を低減することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社 【識別番号】000003609 【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
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| 【出願日】 |
平成12年3月8日(2000.3.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−254660(P2001−254660A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月21日(2001.9.21) |
| 【出願番号】 |
特願2000−68667(P2000−68667) |
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