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【発明の名称】 内燃機関の点火時期制御装置
【発明者】 【氏名】上田 克則

【氏名】浅倉 啓介

【氏名】片岡 徹夫

【氏名】松本 卓也

【氏名】佐藤 広信

【要約】 【課題】排ガス還流時においても適正な点火時期制御を行える内燃機関の点火時期制御装置を提供することにある。

【解決手段】内燃機関1のサージタンク(吸気路拡径部)12に排気を還流するEGR通路24と、同EGR通路に介装されるEGR弁23と、EGR弁の開度と機関運転状態とに基づき瞬時EGR率α2を導出する瞬時EGR率導出手段E1と、同瞬時EGR率と拡径部内EGR率(n)とに基づいて同拡径部内EGR率を更新する拡径部内EGR率導出手段E2と、基本点火時期θbを設定する基本点火時期設定手段E3と、更新される拡径部内EGR率(n)を記憶処理し、且つ、気筒(燃焼室3)内に流入する吸気に対応した記憶済みの拡径部内EGR率(n−7)に基づき基本点火時期を補正する点火時期補正手段E4とを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】内燃機関の吸気系に設けられた吸気路拡径部またはその上流側吸気系に排気の一部を還流するEGR通路と、同EGR通路に介装され機関運転状態に応じて作動が制御されるEGR弁と、上記EGR弁の最新の開度と機関運転状態とに基づき瞬時EGR率を導出する瞬時EGR率導出手段と、同瞬時EGR率と予め算出されている上記吸気路拡径部の拡径部内EGR率とに基づいて同拡径部内EGR率を更新する拡径部内EGR率導出手段と、機関運転状態に基づき基本点火時期を設定する基本点火時期設定手段と、順次更新される上記拡径部内EGR率を記憶し、気筒内に流入する吸気に対応した上記記憶済みの拡径部内EGR率に基づき上記基本点火時期を補正する点火時期補正手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の点火時期制御装置に関し、特に、排ガス還流装置を備える内燃機関において、燃焼室に供給されるEGRガス量の経時的変化を考慮して点火時期を適正化する内燃機関の点火時期制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】吸気中に所定量の排ガスを還流させて所定EGR率の混合気を燃焼させるようにした排ガス還流装置が知られており、同装置を用いた場合、燃焼室での混合気の燃焼が比較的遅くなり、NOxや酸化物の排出量が低下し排ガス改善を行える。しかも、通常、エンジンが所定のトルクを発するには吸気量を所定量絞るが、この際、絞り弁の下流側が負圧化してポンピングロスを招くのに対し、排ガス還流装置を用いた場合は、出力発生に関与しない不燃性の排ガスを新気中に供給することで、ポンピングロスを低減でき、燃費を改善できる。このような利点のある排ガス還流装置を用いた場合、混合気の燃焼が比較的遅くなることに対処すべくEGR率(=EGRガス/新気)の変化に応じて、点火時期を進める処理を行っている。
【0003】ところで、EGR弁を開閉調整してEGR率を変化させた場合,吸気系の蓄圧効果のため、直ちに燃焼室のEGR率がEGR弁の開度相当のEGR率に変化せず、特に、そのEGR率の遅れの状況はEGR弁より下流の吸気路構造に応じて変化した上でEGR弁開度相当のEGR率に収束する。このため、EGR弁開度相当のEGR率をそのまま各気筒のEGR率と見做し、そのEGR率に相当する点火時期を算出して、点火処理を行った場合、点火時期が実情にあわず、失火する可能性もある。そこでEGR弁開度を変化させた後における点火時期の経時的な補正が問題となる。
【0004】たとえば、特開平9−242654号公報に開示の技術では、運転状態によって設定される基本点火時期を目標EGR率に応じて補正するにあたり、EGR弁の開閉速度を考慮している。即ち、目標開度に対する実開度の比を用いて目標EGR率より実EGR率を算出し、しかも、基本燃料噴射量およびエンジン回転数相当のEGR率1%あたりの進角幅を求め、これに実EGR率を乗算して進角補正量を求め、これと基本点火時期とより最終的な点火時期を算出している。
【0005】更に、特登録2914192号公報に開示の技術では、機関運転状態の変化に対応してEGR弁がEGR無しより所定のEGR率に変化した場合に、無しの場合の点火時期(基本点火時期)と有りの場合の点火時期との間を一次遅れフィルタを使って平滑化し、即ち、回転数、充填効率、吸気管容積、EGR弁開度に基づいてEGRガスの遅れ応答の時定数を算出し、この時定数が反映される移動平均式により点火時期を動かし、これにより、機関運転状態が変化しEGR率が変化した際にも、点火時期制御を的確に行えるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、EGR弁を通過後にサージタンクに流入したEGRガスと混合する吸気(混合気)は、これより各気筒に連結される吸気ブランチを経て各燃焼室に流入する。この場合、EGR弁が、即ちEGR率が変化しても、各気筒の燃焼室には以前のEGR率を保持する吸気ブランチの混合気が流入することより、例え、EGR弁が切り替わってもそのEGR弁開度相当の目標EGR率に達するには遅れを伴うという点を考慮する必要がある。しかも、その流動遅れの後にあって、EGR弁の有限の開弁速度により規制を受けたEGR率の混合気が順次流入してくる点を考慮しないと正しいEGR率の変化を考慮することはできない。
【0007】この点を考慮して、たとえば、特開平9−242654号公報の場合のような手法を用いた場合には、EGR弁の実開度を推定または検出して吸気管内のEGR率を求めることも考えられるが、特に、サージタンクを有する内燃機関においては、サージタンク内に滞留しているEGR混合気が存在し、これが過渡的な値をなますように作用するため、EGR弁の実開度に応じた実際のサージタンク内のEGR率とは異なってくるという問題があり、EGR弁の実開度に応じたEGR率を単純には適用できない問題がある。
【0008】更に、特登録2914192号公報の技術の場合、EGR弁開度に反比例して時定数を設定するのみ、即ち、遅れ応答を適正化しようとする技術思想でしかないので、過渡時のEGR率までは考慮されてはおらず、過渡状態での点火時期の適正化には改良の余地がある。このように、いずれの従来例も時定数や、近似式を用いてEGR率を修正しているが、吸気ブランチでの吸気の流動遅れを的確に考慮しておらず、改善が望まれている。本発明は、上述の課題に基づき、気筒内に流入する吸気のEGR率を用いて基本点火時期を補正し、排ガス還流時においても適正な点火時期制御を行える内燃機関の点火時期制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、内燃機関の吸気系に設けられた吸気路拡径部またはその上流側吸気系に排気の一部を還流するEGR通路と、同EGR通路に介装され機関運転状態に応じて作動が制御されるEGR弁と、上記EGR弁の最新の開度と機関運転状態とに基づき瞬時EGR率を導出する瞬時EGR率導出手段と、同瞬時EGR率と予め算出されている上記吸気路拡径部の拡径部内EGR率とに基づいて同拡径部内EGR率を更新する拡径部内EGR率導出手段と、機関運転状態に基づき基本点火時期を設定する基本点火時期設定手段と、順次更新される上記拡径部内EGR率を記憶処理し、気筒内に流入する吸気に対応した上記記憶済みの拡径部内EGR率に基づき上記基本点火時期を補正する点火時期補正手段とを備えている。瞬時EGR率と予め算出済の拡径部内EGR率とに基づいて拡径部内EGR率を順次更新するので、吸気路拡径部に滞留するEGRガスを含む混合気と新たに導入されるEGRガスとが混合された後の拡径部内EGR率を正確に求めることができ、順次更新される拡径部内EGR率を記憶しておくので、気筒に流入する吸気に対応した記憶済みの拡径部内EGR率を使用することで、気筒に流入する吸気のEGR率を正確に求めることができる。
【0010】このため、このEGR率に基づき基本点火時期を補正することによりEGR率の変化する過渡時の点火時期を適正に設定できる。本発明の好ましい形態として、上記吸気路拡径部はサージタンクであっても良い。この場合、特に、サージタンクに滞留するEGRガスを含む混合気と新たに導入されるEGRガスとが混合され、その混合気が吸気ブランチを通過後に気筒に流入する際のEGR率を正確に求めることができ、このEGR率に応じた進角補正をしてEGR率の変化する過渡時の点火時期を適正に設定できる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1には本発明の一実施形態としての内燃機関の点火時期制御装置を装備したエンジン1を示したこのエンジン1は4気筒(図2参照)の筒内噴射式エンジンであり、後述の排気ガス還流装置23を装備する。このエンジン1の各シリンダ2の上部とシリンダヘッド20とで囲まれる部分には燃焼室3が形成される。エンジン1のクランクシャフト4の一端には単位クランク角信号θc、基準信号θ及びこれらに基づくエンジン回転速度Ne情報を検出するクランク角センサ5が対設され、これは後述のエンジンコントロールユニット(以後単にECUと記す)6に検出信号を出力する。
【0012】各シリンダ2の上側内壁面には吸気弁V1に開放可能に閉鎖された吸気ポート9および排気弁V2に開放可能に閉鎖された排気ポート10が形成される。しかもこれら両弁と干渉しない位置の内でのほぼ中央位置には点火プラグ7が、側端位置には燃料噴射用のインジェクタ8が配備される。インジェクタ8はインジェクタ駆動回路34を介して後述のECU6に接続され、同ECU6の噴射信号に応じて燃料噴射を行うように構成される。
【0013】燃焼室3に接続された吸気ポート9には、インテークマニホールド(吸気ブランチを含む)11、各気筒の吸気ブランチが接続されると共に吸気路拡径部を成すサージタンク12、サージタンク12に続く延長管13及びエアクリーナ14がこの順で接続される。エアクリーナ14内には、吸気量Qa情報を得るエアフローセンサ15と、吸気温度Ta情報を出力する吸気温センサ16及び大気圧Pa情報を出力する大気圧センサ17が装着され、これら各情報はECU6に出力される。さらに、延長管13内にはスロットル弁18が配備され、同弁のスロットル開度θs情報がスロットル開度センサ19によりECU6に出力される。またエンジン1の水温Tw情報を検出する水温センサ21が配備され、その検出信号はECU6に出力されている。排気ポート10にはエキゾーストマニホールド22および図示しない排気管やマフラーが接続される。
【0014】エンジン1の吸気路r1と排気路r2との間には排気ガス還流装置23が配備される。この排気ガス還流装置23は排気路r2側のエキゾーストマニホールド22と吸気路r1側のサージタンク12を結ぶ排気ガス還流路(以下、単にEGR通路と記す)24を備え、EGR通路24の途中にEGR弁25を備える。EGR弁25はサージタンク12と一部が一体化した弁ハウジング26を備え、その内部にEGR通路24を確保した弁座28設け、同弁座28を弁部材29で開閉できるように形成している。弁部材29は弁ハウジング26の上部に支持されたステッパモータ30に弁軸31を介して連結される。ステッパモータ30は後述のECU6にモータ駆動回路32を介して連結され、同モータ駆動回路32に制御信号(ステップ数)を出力するECU6はその制御信号(ステップ数)に応じて現在の弁部材29の開度(EGR実開度)を判定するように構成されている。
【0015】点火プラグ7は点火ユニット33に接続され、点火ユニット33は、ECU6に接続されて、ECU6により点火プラグ7の点火作動が制御される。ECU6はエンジン1の燃料噴射量制御、スロットル弁駆動制御等の周知の制御処理に加え、点火制御処理およびEGR制御処理を行う。EGR制御処理において、ECU6はあらかじめ設定されたEGR域マップme(図5参照)を用い、全運転域でのEGR率を設定しておく。なお、ここでは吸気路拡径部であるサージタンクに流入する新気量に対してのEGRガスの流入量をEGR率(=EGRガス量/新気量)と設定する。
【0016】このEGR域マップmeは、エンジンの運転域が、中速中負荷域A1側での運転時にあると多量のEGRガスを供給する高EGR率q1が確保されるべく設定される。即ち、この領域では、弁部材29を弁リフト方向である上側に移動させる高EGR率(高ステップ数)が領域中央D1ほど大きくなるように設定される。更に、エンジンの運転域が、高速高負荷域A2側に移行すると、ECU6はEGRガスの流動を低減すべく設定される。即ち、この領域では、弁部材29を閉鎖方向である下側に移動させる低EGR率(低ステップ数)が設定され、領域外周側D2ではEGR率がゼロに設定されている。
【0017】次に、ECU6は点火制御処理において、図4に示すように、瞬時EGR率導出手段E1と拡径部内EGR率導出手段E2と、基本点火時期設定手段E3と、点火時期補正手段E4との各機能を発揮すべく制御作動する。ここで瞬時EGR率導出手段E1はEGR弁25の最新の開度(EGR実開度)と最新の機関運転状態である、エンジン回転速度Neおよび新気量(吸入空気量Qa/Ne)EVとに基づき瞬時EGR率(EGR弁のメカニカルな変位途中の開度を考慮したもので、図6の符号m線を参照)を下記の(1)式のように導出する。ここで、定常EGR開度heは弁部材29が所定のEGR率を確保する際、定常状態に達した場合の開度を示す。
【0018】
瞬時EGR率=定常EGR率×EGR実開度/定常EGR開度・・・・(1)
なお、上述の図6はEGR弁開度の経時変化特性を説明する線図で、符号t1はEGR弁開度の変化時点を示し、2点鎖線Uは静的EGR弁開度変化を示す。拡径部内EGR率導出手段E2は瞬時EGR率と予め算出されているサージタンク(吸気路拡径部)12の拡径部内EGR率とに基づいて同拡径部内EGR率を(2)式のように算出し、エンジンの1行程毎に更新を繰り返す。なお、符号CはEGR時定数であり、重み平均を採る上での取り込み定数で、たとえば、0、3に設定され、これにより瞬時EGR率のなまし処理がなされ、図6の符号n線を得ることとなる。
【0019】
C×拡径部内EGR率(n)+(1−C)×瞬時EGR率・・・・(2)
基本点火時期設定手段E3は機関運転状態であるエンジン回転速度Neおよび新気量(吸入空気量Qa/Ne)EVとに基づき基本点火時期θbを設定する。ここでは予め、エンジン回転速度Neおよび新気量(吸入空気量Qa/Ne)EV相当の基本点火時期θbを基本点火時期マップm6で設定しておくる。
【0020】点火時期補正手段E4は、順次更新される拡径部内EGR率を記憶処理し、かつ、記憶された拡径部内EGR率の吸気が気筒内に流入するタイミングで対応する記憶値を使用する。この場合、サージタンク(吸気路拡径部)12の拡径部内EGR率(n)を、エンジンの1行程毎に順次記憶処理する。即ち、次ぎの第2行程時には第1行程時の拡径部内EGR率(n)の値を拡径部内EGR率(n−1)の記憶エリアに押し出し入替えし、同様に8行程分(拡径部内EGR率(n−7)まで)の各記憶エリアの値を順次記憶処理し、各値を順送りで更新できるように構成する。なお、ここで、8行程分を記憶処理したのは、次の理由による。
【0021】即ち、図3,4に示すように、このエンジン1のサージタンク12と各気筒の燃焼室3との間の吸気ブランチ(インテークマニホールドの枝部)11の容量はここではシリンダ容積の2倍に設定されており、2回の吸気行程の後にサージタンク12の混合気が燃焼室3に流入すると見做される。このため、サージタンク12で新気とEGRガスとが混合された後に、その混合気である吸気は8行程後に吸気ブランチ11を通過して燃焼室3に流入することになることから、ここでは8行程分の値(拡径部内EGR率(n−7)までを記憶処理しておく。これら8行程分の記憶値のうちの最も古い値、すなわち拡径部内EGR率(n−7)は、次に気筒内に流入する吸気の正確なEGR率であり、この値は後述の(5)、(6)式で、吸気ブランチ内より燃焼室に供給される新気a1の量EV’の算出に利用される。
【0022】次に、新気a1の量EV’の算出式の説明をしておく。ここでは新気に対してのEGRガスの流入量をEGR率(=EGRガス量/新気量)とすることより、この式は(3)式に書き替えできる。
1+EGR率=(新気量+EGRガス量)/新気量・・・・(3)
これは、更に(4)式に変換される。
【0023】
(新気量+EGRガス量)=新気量×(1+EGR率)・・・・(4)
この式の左辺(新気量+EGRガス量)は、容積一定のマニホールド(サージタンクや吸気ブランチ)の密度(∝内部圧力)に概略比例する値と見做せ、この点より、右辺の、新気量×(1+EGR率)も同様の値に見做される。
【0024】ここで、サージタンク12内の混合気は8行程後に各吸気ブランチを通過して各燃焼室3に流入すると仮定し、更に、今回、燃焼室3に流入する混合気の密度(∝内部圧力)である、EV’(ブランチ新気量)×(1+EGR率(n−7))と、今回、サージタンク12に流入した混合気a1の密度(∝内部圧力)である、EV(サージタンク新気量)×(1+EGR率(n))は等しいとして、(5)式を得るとする。
EV’×(1+EGR率(n−7))=EV×(1+EGR率(n))・・・・(5)
この(5)式は、(6)式に変換でき、吸気ブランチ内より燃焼室に供給される新気a1の量EV’を算出可能となる。
【0025】
EV’=EV×(1+EGR率(n))/(1+EGR率(n−7))・・・・(6)
ここで、たとえば、今回のEGR率がゼロ%とし、8回前のEGR率が10%としてこれらの値を(6)式に代入すると、今回、吸気ブランチ内より燃焼室に供給される新気a1の量EV’はEV’=100×(1+0)/(1+0、1)≒90%となり、EGRガスは略10%と算出可能となる。
【0026】更に、点火時期補正手段E4は、サージタンク(吸気路拡径部)12の吸気が気筒内に流入するタイミングを判定してその判定に適応する記憶済みの拡径部内EGR率、即ち、8行程前の値(拡径部内EGR率(n−7))に基づき、EGR過渡時の点火進角δθを求め、この値に基づき基本点火時期θbを補正する。
【0027】この場合、前述の(6)式により求められる吸気ブランチ内より燃焼室に供給される新気a1の量EV’とエンジン回転速度Neとより、EGRしない時の進角値である進角W/O値をマップm4より読み取り、EGRする時の進角値である進角W/値をマップm5より読み取り、更に,定常EGR率をマップm2よりそれぞれ読み取り、これら各値と8行程前の拡径部内EGR率(拡径部内EGR率(n−7))の値を、下記の(7)式に代入してEGR過渡時における点火進角δθ値を算出する。これにより吸気ブランチ11内より燃焼室12に供給される最新の新気a1の量EV’に適応した瞬時EGR率相当の点火進角δθを得る。
【0028】
点火進角δθ=進角W/O+(進角W/−進角W/O)×(拡径部内EGR率(n−7))/(定常EGR率)・・・・(7)
次に、点火時期補正手段E4は最新の点火進角δθと基本点火時期マップm6で求めた基本点火時期θbとより(8)式に沿って今回の補正済み点火時期θb’を算出する。
θb+δθ=θb’・・・・・(8)
この後、点火制御手段E5は、補正済み点火時期θb’に従い点火ユニット33を介して点火処理を実行する。
【0029】次に、本実施形態のエンジンの点火制御装置の作動を図4の制御ブロック図、図7の点火制御ルーチン等を用いて説明する。図示しないメインスイッチのキーオンによりECU6は図示しないメインルーチンでの制御に入り、このメインルーチンの途中でインジェクタの噴射処理,点火制御処理およびEGR制御処理等を実行する。図示しないインジェクタの噴射量算出ルーチンでは、吸入空気量Qa/Neを算出し、同吸入空気量Qa/Neより基本燃料パルス幅Tfを算出し、メインルーチン側より取り込んだ現空燃比A/F相当の補正係数KAF、吸気温Ta及び大気圧Paに応じた補正係数KDT等により目標インジェクタ駆動時間を算出するという周知の制御を行うこととなる。
【0030】EGR制御処理に達すると、ここではエンジン運転情報である水温Tw情報、エンジン回転速度Neおよび新気量EV(吸入空気量Qa/Ne)を取り込む。ここで水温Twが所定のEGR温度値を上回ると以下のEGR率制御に進み、EGR域にないと、EGR制御処理を中止する。EGR率制御に進むと、ここでは、EGR域マップme(図5参照)を用い、現在のエンジンの運転域が、中速中負荷域A1から高速高負荷域A2のいずれの位置にあるかを判定する。その上でこの運転域に応じたEGR弁開度を読み取り、同値相当のステップ数と現在のステップ数の差を排除するだけステッパモータ30を駆動するよう同モータに出力して駆動し、今回のEGR弁開度を確保する。
【0031】図7に示すように、点火制御処理に達すると、まず、ステップs1でEGR弁25の最新の開度(EGR実開度θ1)と、エンジン回転速度Neおよび新気量EV(吸入空気量Qa/Ne)を取り込む。その上で、ステップs2で、定常EGR開度heをマップm1から、定常EGR率α1をマップm2からそれぞれ読み取り、次いで、ステップs3で、これら各値を、(1)式に代入し、今回のサージタンクに流入する吸気の瞬時EGR率α2を算出する。
【0032】ステップs4では、予め算出記憶しておいたサージタンク12の拡径部内EGR率(n)を読み出す。ここで、予め算出しておいた拡径部内EGR率(n)の初期値は適宜設定しておくこととなる。更に、ステップs5では、エンジン回転速度Neおよび新気量EV(吸入空気量Qa/Ne)を取り込み、EGR時定数Cをマップm3より読み取る。続くステップs6ではステップs3〜s5で求めた各値を、(2)式に代入し、瞬時EGR率α2のなまし処理がなされ、今回の拡径部内EGR率(n)を更新する。
【0033】ステップs7では、ステップs4で読み出した前回の拡径部内EGR率(n)を1行程前の拡径部内EGR率(n−1)の記憶エリアに順送りして、7行程前の拡径部内EGR率(n−7)までのすべての値を順次更新して記憶処理する。そして今まで記憶処理していた拡径部内EGR率(n−7)、すなわち、8行程前のサージタンク12内のEGR率を今回の吸気行程で気筒内に流入する吸気のEGR率と見做す(判定する)。
【0034】次に、ステップs8では今回の拡径部内EGR率(n)と8行程前の拡径部内EGR率(n−7)とを(6)式に代入し、今回、吸気ブランチ内より燃焼室に供給される新気a1の量EV’を算出する。次いで、ステップs9ではエンジン回転速度Neを取り込み、その上で、EGRしない時の進角値である進角W/O値をマップm4より、EGRする時の進角値である進角値をマップm5よりそれぞれ読み取る。更に,定常EGR率α1をマップm2より読み取り、これら各値を、(7)式に代入してEGR過渡時における点火進角δθ値を算出する。ステップs10では、エンジン回転速度Neおよび新気量(吸入空気量Qa/Ne)EVを取り込み、同値に応じた基本点火時期θbをマップm6に基づき算出する。
【0035】更に、ステップs11では最新の点火進角δθおよび基本点火時期θbとに応じた補正済み点火時期θb’を(8)式に沿って演算し、同値を点火ユニット33に出力し、今回の制御周期での処理を終了する。この後、点火ユニット33は、補正済み点火時期θb’に従って点火プラグ7をスパークさせ、EGR過渡時における適正な点火進角済の点火処理を行える。
【0036】このように、サージタンク12に滞留するEGRガスを含む混合気と新たに導入されるEGRガスとが混合された後の拡径部内EGR率を正確に求めると共に、燃焼室3に流入する吸気のEGR率の判定にあたり、吸気ブランチの容量との関係で8行程前の拡径部内EGR率(n−7)を燃焼室に流入する吸気の拡径部内EGR率として求めた。このため、実際に燃焼室3に流入する吸気のEGR率を正確に求めることができ、このEGR率に応じた点火進角δθ値により基本点火時期θbを進角補正するので、EGR通路付きの内燃機関の点火時期を制御するにあたり、EGR弁切り換え過渡時の点火時期を適正に制御できる。
【0037】図1の内燃機関の点火時期制御装置では吸気路拡径部としてサージタンク12を説明したが、これに限定されるものではなく、ここでの吸気路拡径部は流入する新気とEGRガスの混合を可能とする比較的大容量部で有ればよい。図1の内燃機関の点火時期制御装置では、燃焼室3に流入する吸気のEGR率の判定にあたり、8行程前の拡径部内EGR率(n−7)をその判定に適応する拡径部内EGR率として求めたが、この値はサージタンク12と燃焼室3の間の吸気路容量により変化するもので、その他の吸気ブランチを採用すればその場合に適応する行程数だけ前の拡径部内EGR率を採用すれば良く、この場合も同様の作用効果が得られる。また、気筒内に流入する吸気と記憶済み拡径部内EGR率との対応は行程数に限らずクランク角を使用して対応させるようにしても良い。
【0038】図1の内燃機関の点火時期制御装置では、サージタンク12にEGR通路24が排気の一部を還流していたが、場合によりEGR通路24が排気の一部をサージタンク12の上流側に還流させるように構成することもでき、この場合も同様の作用効果が得られる。
【0039】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明は、吸気路拡径部に滞留するEGRガスを含む混合気と新たに導入されるEGRガスとが混合され、その混合気が気筒に流入する際のEGR率を正確に求めることができ、このEGR率に応じた進角補正をしてEGR率の変化する、即ち、EGR弁切り換え過渡時の点火時期を適正に設定できる。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成12年3月10日(2000.3.10)
【代理人】 【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨 (外1名)
【公開番号】 特開2001−254659(P2001−254659A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−66238(P2000−66238)