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【発明の名称】 スタータ
【発明者】 【氏名】齋藤 幹男

【氏名】長田 正彦

【氏名】花井 正人

【要約】 【課題】アイドルストップ状態から迅速にエンジン始動ができ、アイドルストップ中には電力消費が低減されているスタータを提供すること。

【解決手段】本発明のスタータは、ピニオンをスプリング4を介して押し出す押出手段3と、押出手段3の押出プランジャ31を押出ソレノイド32に吸引された位置で保持するロック手段6とを有する。押出プランジャ31が吸引された状態でロック手段6のロックソレノイド62への通電を切り、ロックプランジャ61により押出プランジャ31を吸引された位置に保てば、電力消費なしで押出プランジャ31およびピニオン1を突出したプリセット状態に保つことができる。それゆえ、スタータモータによりピニオンが回転を始めると、ピニオンはエンジンのリングギヤに速やかに噛み合い、迅速にエンジンを始動できるうえに、プリセット状態ではアイドルストップ中でも電力消費が全くなくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】軸長方向に移動可能に軸支されたピニオンと、このピニオンを回転駆動するモータと、このピニオンをエンジンのリングギヤに向かって押し出す押出プランジャおよび押出ソレノイドをもつ押出手段と、このピニオンとこの押出プランジャとの間に介在しこのピニオンをこのリングギヤに向かって付勢するスプリングと、を有するスタータにおいて、前記押出ソレノイドによって吸引された前記押出プランジャに当接し、この押出プランジャを所定の位置に保持することによって、前記ピニオンを前記リングギヤに当接付勢ないし噛み合いさせたプリセット状態に保持することができるロック手段をさらに有することを特徴とする、スタータ。
【請求項2】前記ロック手段は、前記押出プランジャに対して直交する方向に移動可能なロックプランジャと、このロックプランジャを吸引するロックソレノイドと、このロックプランジャを復帰させるリターンスプリングとをもつ、請求項1記載のスタータ。
【請求項3】前記押出プランジャが移動中には前記ロックプランジャをこの押出プランジャから離しておくように、前記ロックソレノイドへの通電が制御される、請求項2記載のスタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンスタータの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】環境保護、資源保護および燃料節減の目的から、自動車等の車両が信号待ち等の一時停止時にはエンジンをいったん停止させるアイドルストップを励行することが、エコランと呼ばれて奨励されている。そして、運転者が操作しなくても、自動的にアイドルストップ状態にし、運転者が発進操作を行うと自動的にエンジンを始動する技術が開発されつつある。このようなエコラン技術において、スタータには、渋滞を防ぐためにアイドルストップ状態から遅滞なく速やかにエンジンをかけることができる迅速性と、頻繁にエンジンを始動するので高い耐久性とが求められる。
【0003】エンジン始動の迅速性を満足させるために最も容易に考えつく方法は、スタータのピニオンをエンジンのリングギヤに噛み合ったままの状態にしておくことであり、たとえば特開平8−26117号公報に開示されている。しかしながら、ピニオンとリングギヤとが常時噛み合っていたのでは、走行中に両ギヤの噛み合いによって騒音が生じるうえに、直径が小さく歯数が少ないピニオンの寿命が短くなってしまうという不都合が生じる。
【0004】そこで、特開平11−30139号公報には、アイドルストップ状態でスタータのソレノイドコイルに通電してピニオンをリングギヤに噛み合わせておき、エンジンの始動時にはすでに噛み合っているピニオンをモータで回転駆動する旨が記載されている。しかしながら、同公報には、アイドルストップ状態で「スタータのピニオン噛合い制御用ソレノイドに通電し、ピニオンをリングギヤに噛合わせ」るとの記載があるのみである。
【0005】それゆえ、同公報の記載によれば、アイドルストップの間はずっとソレノイドに通電しているわけである。すると、同公報の技術では、アイドルストップ中に大切な電力を無用に消費するという不都合と、アイドルストップ中にソレノイドが過熱しやすくなるという不都合とは、避けがたいものと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、スタータの耐久性と走行時の静粛性とを満足させながら、アイドルストップ状態から迅速にエンジンを始動することができ、さらにアイドルストップ中には電力消費が低減されているスタータを提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。
【0008】(第1手段)本発明の第1手段は、請求項1記載のスタータである。すなわち、本手段のスタータは、ピニオンをリングギヤに向かって押し出す押出手段と、ピニオンと押出手段との間に介在してピニオンをリングギヤに向かって付勢するスプリングとを有する。そればかりではなく、本手段のスタータは、押出手段の押出プランジャを所定の位置で保持することによって、ピニオンをリングギヤに当接付勢ないし噛み合いさせたプリセット状態に保持することができるロック手段をさらに有する。
【0009】本手段では、アイドルストップ中には、ロック手段の作用により、ピニオンはリングギヤに当接付勢ないし噛み合わされたプリセット状態に維持される。すると、押出ソレノイドに通電されていなくても、ピニオンはプリセット状態に保たれるので、アイドルストップの間ずっとプリセット状態にしていても、押出ソレノイドでの電力消費はなくなる。
【0010】しかる後、エンジンの始動を行い、モータによってピニオンが回動し出すと、プリセット状態でピニオンがすでにリングギヤに噛み合っていれば、すぐさまにリングギヤも回転駆動され、エンジンが始動される。あるいは、プリセット状態でピニオンがリングギヤの端面に当接して付勢された状態であれば、ピニオンがワンピッチ(一歯分)も回転しないうちに、ピニオンがリングギヤに噛み合うようになり、ピニオンがスプリングにより押し進められる。その結果、ピニオンとリングギヤとは十分に深く噛み合うに至るので、遅滞なくピニオンによりリングギヤも回転駆動されてエンジンが始動される。
【0011】エンジンが始動してしまえば、ロック手段は解除され、リターンスプリングなどの作用によってピニオンおよび押出プランジャは原位置に復帰する。
【0012】以上の過程において、アイドルストップ状態では瞬時にピニオンをリングギヤに当接させる必要はなく、ピニオンはゆっくりとリングギヤに向かって押し出されてプリセット状態になる。それゆえ、ピニオンをプリセット状態にするに当たって、ピニオンがリングギヤに激しく衝突してピニオンの端面が変形してしまったり、大きな衝撃や騒音を生じることがない。それゆえ、ピニオンの耐久性が向上する。
【0013】また、プリセット状態からエンジン始動を行えば、ピニオンがリングギヤに速やかに噛み合ってほとんど衝撃がないので、始動時の衝撃騒音が低減されるとともに、スタータにかかる衝撃も低減されやはりスタータの耐久性が向上する。そして、プリセット状態ではピニオンがリングギヤに噛み合っているか当接付勢されているかのいずれかの状態にあるので、アイドルストップから遅滞なく迅速にエンジンを始動することができる。
【0014】さらに、エンジンの自立回転中はリングギヤからピニオンは外れており、両者は噛み合っていない。それゆえ、走行中にピニオンとリングギヤとの間で噛み合い騒音が発生することはなく、走行時の静粛性が向上するとともに、ピニオンの寿命も延びる。
【0015】そればかりではなく、いったんピニオンが押出手段によって押し出されてしまい、ロック手段が作用したならば、ピニオンはロック手段によってプリセット状態に保たれる。それゆえ、アイドルストップ中にずっと押出ソレノイドに通電し続ける必要がなくなり、押出ソレノイドでの消費電流がほとんどなくなるとともに、押出ソレノイドの過熱も防止される。
【0016】したがって、本手段のスタータによれば、スタータの耐久性と走行時の静粛性とを満足させながら、アイドルストップ状態から迅速にエンジンを始動することができるという効果がある。そればかりではなく、いったんプリセット状態に入ってしまえば、アイドルストップ中に押出ソレノイドの電力消費はなくて済み、押出ソレノイドの過熱も防止されるという効果がある。
【0017】(第2手段)本発明の第2手段は、請求項2記載のスタータである。すなわち、前述の第1手段において、ロック手段は、押出プランジャに対して直交する方向に移動可能なロックプランジャと、ロックプランジャを吸引するロックソレノイドと、ロックプランジャを復帰させるリターンスプリングとをもつ。
【0018】本手段では、ロック手段は、ロックソレノイドに通電していない状態でリターンスプリングの作用によりロックプランジャを復帰させることができる。それゆえ、ロックプランジャが復帰した状態でロックプランジャが押出プランジャに当接し、押出プランジャを所定のプリセット状態に保つ構成とすることができる。このような構成によれば、いったんプリセット状態に入ってしまえば、ロックソレノイドにも通電する必要がなくなり、スタータは全く電力を消費することがなくなる。
【0019】したがって、本手段のスタータによれば、前述の第1手段の効果に加えて、アイドルストップ中の消費電力がよりいっそう低減されるという効果がある。
【0020】(第3手段)本発明の第3手段は、請求項3記載のスタータである。すなわち、本手段のスタータは、前述の第2手段において、押出プランジャが移動中にはロックプランジャをこの押出プランジャから離しておくように、ロックソレノイドへの通電が制御されることを特徴とする。
【0021】より詳しく説明すると、アイドルストップ状態に入るときに押出プランジャは吸引され、アイドルストップ状態を脱してエンジン始動をしてしまったら押出プランジャは原位置に復帰する。このように、押出プランジャが吸引されたり復帰したりして移動する際に、もしも押出プランジャにロックプランジャが当接ないし摺接した状態にあったならば、両者の当接面はいずれ変形してしまい摺接面は摩滅してしまうであろう。
【0022】そこで本手段では、押出プランジャが移動中にはロックプランジャを後退させて押出プランジャから離してしまい、両者が互いに接触しないようにしている。すると、押出プランジャが移動中には両プランジャは互いに摺接も当接もしないので、両者の当接面および摺接面が摩耗変形してしまうことはなくなる。その結果、スタータのうち両プランジャはアイドルストップ状態に入るたびに使用されて使用頻度が高いが、両プランジャの耐久性が向上する。
【0023】したがって、本手段のスタータによれば、前述の第2手段の効果に加えて、両プランジャの耐久性が向上し、ひいてはスタータの耐久性も向上するという効果がある。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明のスタータの実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。
【0025】[実施例1]
(実施例1の構成)本発明の実施例1としてのスタータは、図1に示すように、R(リダクション)型のスタータである。すなわち、本実施例のスタータは、軸長方向に移動可能に軸支されたピニオン1と、ピニオン1を回転駆動するモータ2と、ピニオン1に同軸に配設された押出手段3と、後述のスプリング4(図2参照)と、ロック手段6とを有する。これらの主要構成要素は、一体的に組み立てられたフレーム10内の所定の位置に収容されている。すなわち、フレーム10のうち、モータフレーム12はモータ2を収容しており、サブフレーム11は押出手段3およびロック手段6などを収容している。ここで、モータ2の回転駆動力は、互いに連接して噛み合うギヤ21,22,23を順に介して、ピニオン1を駆動するワンウェイクラッチ(図略)に伝達される。
【0026】図2に示すように、サブフレーム11は、押出手段3、スプリング4、クラッチシャフト5およびロック手段6を収容している。
【0027】押出手段3は、ピニオン1をエンジンのリングギヤR(図1参照)に向かって押し出す押出プランジャ31と、押出プランジャ31を吸引する押出ソレノイド32とをもつ。すなわち、押出手段3は、押出ソレノイド32に通電されると、磁気吸引力により押出プランジャ31を吸引してピニオン1の方向(前方)に移動させる。そして、スプリング4およびクラッチシャフト5などを介して、ピニオン1をリングギヤRに向かって突出させる作用(図1参照)をもつ。
【0028】また、スプリング4は、押出プランジャ31の内部にクラッチシャフト5と直列に配設されているコイルスプリングである。スプリング4は、ピニオン1と押出プランジャ31との間に介在し、プリセット状態ではクラッチシャフト5を介してピニオン1をリングギヤRに向かって付勢する作用をもつ。
【0029】一方、ロック手段6は、押出プランジャ31に対して直交する方向に移動可能なロックプランジャ61と、ロックプランジャ61を吸引するロックソレノイド62と、ロックプランジャ61を復帰させるリターンスプリング63とをもつ。すなわち、ロックソレノイド62に通電されると、ロックプランジャ61はロックソレノイド62に吸引されて後退し、押出プランジャ31から離れる。逆にロックソレノイド62への通電が遮断されると、リターンスプリング63の付勢力でロックプランジャ61が復帰し、ロックプランジャ61は先端部が押出プランジャ31に当接するに至る。
【0030】ロック手段6は、図3に示すように、押出ソレノイド32によって吸引された押出プランジャ31に当接し、押出プランジャ31を所定の位置に保持することによって、ピニオン1をプリセット状態に保つことができる。ここで、プリセット状態とは、ピニオン1をリングギヤRに当接付勢ないし噛み合いさせた状態を指すものとする。すなわち、押出プランジャ31の肩部に形成された当接面311に、ロックプランジャ61の先端部側面にピニオン1へ向かって形成された当接面611が当接し、スプリング4等に付勢されて後退しようとする押出プランジャ31を前進位置に保持する。その結果、スプリング4等に付勢されたピニオン1は、プリセット状態に保持されるに至る。
【0031】なお、押出プランジャ31が移動中にはロックプランジャ61を押出プランジャ31から離しておくように、ロックソレノイド32への通電が制御される。
【0032】(実施例1の作用)本実施例のスタータは、以上のように構成されているので、以下のような作用をもつ。本実施例の作用については、図4のタイミングチャートを参照しながら、時間を追って説明することにする。
【0033】先ず、搭載車両が走行中などでエンジンが回転中には、再び図2に示すように、スプリング4等の付勢作用により、押出手段3の押出プランジャ31は一杯に後退した位置にある。また、ロック手段6のロックプランジャ61もやや後退した位置にあって、リターンスプリング63の付勢力により、その先端を押出プランジャ31の大径部312の外周面に軽く当接させている。この状態では、押出手段3の押出ソレノイド32にもロック手段6のロックソレノイド62にも通電されておらず、もちろんモータ2にも通電されていないので、本実施例のスタータではジュール熱による発熱は全くない。
【0034】次に、搭載車両が信号待ちなどで停止し、エコラン制御によってエンジンが停止してアイドルストップ状態に入ると、再び図4に示すように、エコラン信号のパルスがオフ側に発生する。すると(図2参照)、ロック手段6のロックソレノイド62に通電されてロックプランジャ61が吸引され、ロックプランジャ61は後退して押出プランジャ31の外周面から離れる。続いて押出手段3の押出ソレノイド32に通電され、押出プランジャ31が吸引されて最前方にまで前進する。この際、押出ソレノイド32に通電される電流の大きさは適正に制限されており、押出プランジャ31の前進速度が比較的小さいので、ピニオン1が比較的ゆっくりとリングギヤRに当接するようになっている。
【0035】そして、図3に示すように、押出プランジャ31が前進して停止すると、ロックソレノイド62への通電が停止され、ロックプランジャ61がリターンスプリング63の付勢作用で突出してくる。そして、ロックプランジャ61の先端部が押出プランジャ31の小径部313の外周面に当接して、ロックプランジャ61は停止する。続いて押出ソレノイド32への通電も停止され、押出プランジャ31はスプリング4等の付勢作用で後退しようとする。しかし、ロックプランジャ61の当接面611が、押出プランジャ31の肩部の当接面311の一部に当接して、押出プランジャ31の後退を妨げるので、押出プランジャ31は前進した位置に留まる。それゆえ、押出プランジャ31によってスプリング4等を介して押し出されるピニオン1は、リングギヤRに当接して押圧付勢されているかまたはリングギヤRに噛み合っている状態(プリセット状態)に保たれる。
【0036】こうしてアイドルストップ状態に入って再びエンジンを始動する時を待つのであるが、このアイドルストップ状態では、前述のように押出ソレノイド32にもロックソレノイド62にも通電されていない。もちろん、モータ2にも通電されていないので、アイドルストップ状態でプリセット状態に入ってしまえば、本実施例のスタータでの電力消費は全くなくなり、押出ソレノイド32等の各コイルが過熱焼損する恐れも全くなくなる。
【0037】アイドルストップの後、搭載車両を発進させるには、エンジンを再び始動する必要がある。この際には、再び図4に示すように先ず押出ソレノイド32に通電して、すでに前進位置に保持されている押出プランジャ31を、ストッパに当接するまで前進させておく(図3参照)。これと同時に、モータ2にも通電しピニオン1を回転駆動させる。すると、多くの場合にはリングギヤRに当接したままになっているピニオン1の歯が、モータ2への通電からやや遅れてリングギヤRの歯に比較的ゆっくりと噛み合い、エンジンが本実施例のスタータによってクランキングされ始める。
【0038】そして、エンジンの回転が所定の回転数(200〜300rpm程度)にまで上がってきたら、ロックソレノイド62にも通電され、ロックプランジャ61は吸引されて押出プランジャ31から引き離される。しかる後、エンジンの回転が始動判定回転数(500rpm程度)にまで上がってきて、エンジンが自立運転を始めたならば、エコラン信号のパルスが正方向へ発生する。エコラン信号をきっかけにして、モータ2への通電が停止されるとともに、押出プランジャ31への通電も停止される。
【0039】すると、スプリング4等の付勢作用で押出プランジャ31が後退位置に復帰し、ピニオン1も後退位置に復帰する。この際、前述のようにロックプランジャ61は押出プランジャ31から引き離されているので、両者31,61は摺接することがない。それゆえ、両者31,61の当接面311,611も互いに離れているので、両当接面311,611が摩滅することも防止されている。
【0040】前述のようにエンジンが始動し、押出ソレノイド32への通電が停止されて押出プランジャ31がすっかり後退してしまったら、やや遅れてロックソレノイド62への通電も停止される。すると、リターンスプリング63の付勢力で再びロックプランジャ61が突出し、再び図2に示すように、ロックプランジャ61は先端部を押出プランジャ31の大径部312の外周面に当接させて停止する。この状態でも、モータ2に通電されていないのはもちろんのこと、押出ソレノイド32にもロックソレノイド62にも通電されていないので、電力が無駄に消費されることがない。
【0041】なお、アイドルストップ状態を終えてエンジンを始動する際に、押出ソレノイド32に通電しないままにしておいても、ロックプランジャ61との当接によって押出プランジャ31はプリセット状態に保たれている。それゆえ、前述とほぼ同様のエンジン始動作用が得られるが、押出プランジャ31とロックプランジャ61とが互いの当接面311,611で摺接するので、だんだん当接面311,611が摩耗変形するので、あまり好ましくない。
【0042】以上の作用をまとめると、アイドルストップ中には、ロック手段6の作用により、ピニオン1はリングギヤRに当接付勢ないし噛み合わされたプリセット状態に維持される。すると、押出ソレノイド32にもロックソレノイド62にも通電されていなくても、ピニオン1はプリセット状態に保たれるので、アイドルストップの間ずっとピニオン1をプリセット状態にしていても、本実施例のスタータでの電力消費は全くない。
【0043】しかる後、エンジンの始動を行い、モータ2によってピニオン1が回転し出すと、プリセット状態でピニオン1がすでにリングギヤRに噛み合っていれば、すぐさまにリングギヤRも回転駆動され、エンジンが始動される。あるいは、プリセット状態でピニオン1がリングギヤRの端面に当接して押圧付勢された状態であれば、ピニオン1がワンピッチ(一歯分)も回動しないうちに、ピニオン1がリングギヤRに噛み合うようになり、ピニオン1がスプリング4等により押し進められる。その結果、ピニオン1とリングギヤRとは十分に深く噛み合うに至るので、遅滞なくピニオン1によりリングギヤRも回転駆動されてエンジンが始動される。
【0044】エンジンが始動してしまえば、ロック手段6は解除され、図示しないリターンスプリングなどの作用によって、ピニオン1および押出プランジャ31は原位置に復帰する。
【0045】(実施例1の効果)以上の過程において、アイドルストップ状態では瞬時にピニオン1をリングギヤRに当接させる必要がないので、前述のように、ピニオン1は比較的ゆっくりとリングギヤRに向かって押し出されてプリセット状態になる。それゆえ、ピニオン1をプリセット状態にするに当たって、ピニオン1がリングギヤRに激しく衝突して、ピニオン1の端面が長期間の運用のうちには変形してしまったり、大きな衝撃や騒音を生じてしまったりすることがない。それゆえ、ピニオン1の耐久性が向上する。
【0046】また、プリセット状態からエンジン始動を行えば、ピニオン1がリングギヤRに速やかに噛み合ってほとんど衝撃がない。それゆえ、始動時の衝撃騒音が低減されるとともに、本実施例のスタータにかかる衝撃も低減され、やはり本実施例ではスタータの耐久性が向上する。そして、プリセット状態では、前述の定義のように、ピニオン1がリングギヤRに噛み合っているか当接付勢されているかのいずれかの状態にあるので、アイドルストップ状態から遅滞なく迅速にエンジンを始動することができる。
【0047】さらに、エンジンの自立回転中はリングギヤRからピニオン1が外れており、両者は互いに噛み合っていない。それゆえ、搭載車両の走行中にピニオン1とリングギヤRとの間で噛み合い騒音が発生することはなく、走行時の静粛性が向上するとともに、ピニオン1の寿命も延びる。
【0048】そればかりではなく、いったんピニオン1が押出手段3によって押し出されてしまい、ロック手段6が作用したならば、ピニオン1はロック手段6によってプリセット状態に保たれる。それゆえ、アイドルストップ中にずっと押出ソレノイド32に通電し続ける必要がなくなり、プリセット状態では押出ソレノイド32等での消費電力が全くなくなるとともに、押出ソレノイド32等の過熱も防止される。
【0049】以上詳述したように、本実施例のスタータによれば、ピニオン1を含むスタータの耐久性と走行時の静粛性とを満足させながら、アイドルストップ状態から迅速にエンジンを始動することができるという効果がある。そればかりではなく、いったんプリセット状態に入ってしまえば、アイドルストップ中に押出ソレノイド32等での電力消費はなくて済み、押出ソレノイド32等の過熱も防止されるという効果がある。
【0050】(実施例1の変形態様1)本実施例の変形態様1として、ノック式ボールペンの芯出し機構と同様の構成をもつロック手段をもったスタータの実施が可能である。ここでいう芯出し機構とは、一度目のノックでボールペンの芯が突出した位置で固定され、しかる後、二度目のノックでボールペンの芯が引っ込んだ位置に復帰する作用をもつ機構のことである。
【0051】本変形態様では、一度押出プランジャ31が吸引されると、ロック手段(図略)によって押出プランジャはほぼその位置を保って保持されるので、ピニオン1はプリセット状態に保たれる。エンジン始動にあたっては、再度押出プランジャ31が吸引されるので、ピニオン1とリングギヤRとの噛み合いは十分に深くされながら、ロック手段のロックが外れる。そして、エンジンが始動して押出ソレノイド32への通電が停止されると、ピニオン1および押出プランジャ31はスプリング4等の作用によって原位置に復帰し、ピニオン1はリングギヤRから離れる。
【0052】本変形態様では、実施例1とは異なり、ロックプランジャ61およびロックソレノイド62が必要とされないので、構成がより簡素になるうえに電力を消費することもなく、ロック手段の作用が得られる。したがって、本変形態様のスタータによれば、実施例1のスタータと同様の効果がえられるばかりではなく、より簡素かつ安価に製造することができるので、コストダウン、消費電力のさらなる節減、信頼性の向上などの効果が得られる。
【0053】(実施例1のその他の変形態様)本発明は、前述の実施例1やその変形態様1のようなR(リダクション)式のスタータだけではなく、ドライブレバーを介してピニオンを押し出す電磁押し込み式のスタータにも適用可能である。そればかりではなく、本発明は、その他の形式のうちピニオン突出式のスタータの多くにも適用可能である。これらの場合には、各スタータの形式の応じて、実施例1またはその変形態様1と同様の作用効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成12年6月15日(2000.6.15)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開2001−355552(P2001−355552A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−180305(P2000−180305)