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【発明の名称】 自動二輪車用内燃機関の始動装置
【発明者】 【氏名】河窪 寛之

【氏名】塩崎 英子

【要約】 【課題】自動二輪車用内燃機関の、始動用モータをクランクケース上、クランクシャフトにできるだけ近づけて配置して、クランクケースの小型化と構造の簡略化、内燃機関の軽量化等を図る。

【解決手段】クランクシャフト8を支承するクランクケースと、クランクケースに取り付けられ、クランクシャフト8を回転させる始動用モータ14と、クランクシャフト8と始動用モータ14との間に設けられる始動用動力伝達機構22とを備えてなる自動二輪車用内燃機関1の始動装置において、始動用モータ14をクランクケースに取り付ける固定ボルト17の軸線方向が、クランクシャフト8のジャーナル方向に指向するようにされている。クランクケースは、アッパクランクケースとロアクランクケースとに上下割りされ、始動用モータ14は、アッパクランクケースに取り付けられ、その取付けボス15に形成された取付け座面Bは、クランクケースの割面Aに対して傾斜させられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 クランクシャフトを支承するクランクケースと、前記クランクケースに取り付けられ、前記クランクシャフトを回転させる始動用モータと、前記クランクシャフトと前記始動用モータとの間に設けられる始動用動力伝達機構とを備えてなる自動二輪車用内燃機関の始動装置において、前記始動用モータを前記クランクケースに取り付ける固定ボルトの軸線方向が、前記クランクシャフトのジャーナル方向に指向するようにされたことを特徴とする自動二輪車用内燃機関の始動装置。
【請求項2】 前記クランクケースは、アッパクランクケースとロアクランクケースとに上下割りされ、前記始動用モータは、前記アッパクランクケースに取り付けられ、前記始動用モータを前記アッパクランクケースに取り付ける取付けボスに形成された取付け座面は、前記クランクケースの割面に対して傾斜するようにされたことを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用内燃機関の始動装置。
【請求項3】 前記クランクケースの一側に、前記始動用動力伝達機構を収容する室が設けられ、前記室の周囲を画成する囲壁は、前記始動用モータの取付け軸部を巡って後、前記クランクケースの割面に略直角に垂下する縦壁を有することを特徴とする請求項2記載の自動二輪車用内燃機関の始動装置。
【請求項4】 前記縦壁の略下方に、冷却水ポンプが設けられ、前記縦壁に沿って、冷却水配管が配設されたことを特徴とする請求項3記載の自動二輪車用内燃機関の始動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本願の発明は、自動二輪車用内燃機関の始動装置に関し、特に始動用モータの取付け構造を改良して、内燃機関の小型化、軽量化等を図った自動二輪車用内燃機関の始動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動二輪車用内燃機関のクランクケースに始動用モータが取り付けられる場合、始動用モータの取付けボスに形成される取付け座面は、クランクケースの上下割りの割面に対して垂直になるようにして取り付けられていた(特開平3−70869号公報、特開平10−238356号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このため、始動用モータは、シリンダブロックおよびクランクシャフトから離れて配置せざるを得ず、始動用モータとクランクシャフトとの間に設けられる始動用動力伝達機構およびクランクシャフトの軸端に取り付けられる交流発電機を収容する室を覆うカバーは、大型化せざるを得なかった。
【0004】また、室の周囲を画成する囲壁には、始動用モータの取付け軸部を巡って後、クランクケースの割面に対して傾斜して垂下する縦壁部が形成されるので、この縦壁は、オーバーハング(型抜きを妨げる方向に傾斜)して、クランクケースを鋳造により製作するに際して、1つの型構成によりこの部分を形成することができなかった。
【0005】さらに、内燃機関の下方に設けられる冷却水ポンプとシリンダブロックのウォータージャケットとの間をつなぐ冷却水配管は、始動用モータを避けて配設されるが、前記のとおり、始動用モータはシリンダブロックから離れて配置せざるを得なかったので、この冷却水配管の取り回しが長く、複雑となり勝ちであった。
【0006】本願の発明は、従来の自動二輪車用内燃機関の始動装置が有する前記のような問題点を解決して、始動用モータをクランクシャフトにできるだけ近づけて配置できるようにして、始動用動力伝達機構および交流発電機を収容する室を覆うカバーを小型化し、クランクケースの構造を簡単化して、内燃機関を軽量化するとともに、その製造を容易化し、さらに、冷却水配管の取り回しを容易化した自動二輪車用内燃機関の始動装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および効果】本願の発明は、前記のような課題を解決した自動二輪車用内燃機関の始動装置に係り、その請求項1に記載された発明は、クランクシャフトを支承するクランクケースと、前記クランクケースに取り付けられ、前記クランクシャフトを回転させる始動用モータと、前記クランクシャフトと前記始動用モータとの間に設けられる始動用動力伝達機構とを備えてなる自動二輪車用内燃機関の始動装置において、前記始動用モータを前記クランクケースに取り付ける固定ボルトの軸線方向が、前記クランクシャフトのジャーナル方向に指向するようにされたことを特徴とする自動二輪車用内燃機関の始動装置である。
【0008】請求項1に記載された発明は、前記のように構成されているので、始動用モータを、シリンダブロックがクランクケースに連なる部分のクランクケースの湾曲面上に、クランクシャフトに最も接近させて配置することができるようになり、また、始動用モータの取付けボスも、さほど大きく突出させなくて済むような形状にすることができる。これにより、始動用動力伝達機構および交流発電機を収容する室を覆うカバーを小型化して、クランクケースの構造を簡単化し、内燃機関を軽量化することができる。
【0009】また、請求項2記載のように請求項1記載の発明を構成することにより、クランクケースは、アッパクランクケースとロアクランクケースとに上下割りされ、始動用モータは、アッパクランクケースに取り付けられ、始動用モータをアッパクランクケースに取り付ける取付けボスに形成される取付け座面は、クランクケースの割面に対して傾斜するようにされる。
【0010】この結果、取付けボスが複数本クランクシャフトと角度をなして並設される場合において、いずれの取付けボスにおいても、取付けボスに必要な軸方向長さをクランクケースの外側において十分に確保することができるので、取付けボスのクランクケース内側への突出を抑制することができる。これにより、始動用モータを極力クランクシャフトに近づけることが可能になり、始動用動力伝達機構および交流発電機を収容する室を覆うカバーをさらに小型化して、内燃機関をさらに軽量化することができる。
【0011】また、請求項3記載のように請求項1記載の発明を構成することにより、クランクケースの一側に、始動用動力伝達機構を収容する室が設けられ、該室の周囲を画成する囲壁は、始動用モータの取付け軸部を巡って後、クランクケースの割面に略直角に垂下する縦壁を有するようにされる。
【0012】この結果、室の周囲囲壁の一部をなす縦壁は、オーバーハング(型抜きを妨げる方向に傾斜)しないので、クランクケースを鋳造により製作するに際して、1つの型構成によりこの部分を形成することができ、製作が容易になる。
【0013】さらに、請求項4記載のように請求項3記載発明を構成することにより、縦壁の略下方に、冷却水ポンプが設けられ、該縦壁に沿って、冷却水配管が配設される。
【0014】この結果、オーバーハングしない縦壁に沿って、冷却水ポンプとシリンダブロックのウォータージャケットとの間を結ぶ冷却水配管をスムースに配設することができ、冷却水配管の取り回しが容易になる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図1ないし図3に図示される本願の請求項1ないし請求項4に記載された発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態における始動装置が適用された自動二輪車用内燃機関の左側面図であって、一部をカバーを取り除いて示す図、図2は、同自動二輪車用内燃機関の左側断面図であって、一部を側面視して示す図、図3は、シリンダブロックを含むユニットケースの平面図である。
【0016】図1および図2において、本実施形態における始動装置が適用された自動二輪車用内燃機関1は、火花点火・水冷式の4サイクル4気筒内燃機関であって、その出力は、変速機2を介して図示されない後輪に伝達される。
【0017】内燃機関1と変速機2とは一体化されて、1つのまとまったユニットをなしている。そして、このようにして構成されたパワーユニット0が、車体のメインフレームとダウンフレームとにより囲まれる空間内に配置され、これらに結着されて支持されている。
【0018】パワーユニット0のユニットケース3は、クランクケースと変速機2のケースとが一体化されて構成されている。また、このユニットケース3は、水平な割面Aにより上下に2分割されて形成されたアッパユニットケース3u とロアユニットケース3l とがボルト連結により一体化されて構成されている。したがって、クランクケースも、割面Aにより、アッパクランクケースとロアランクケースとに2分割されて、これらが一体化されて構成されている。
【0019】アッパユニットケース3u の図1および図2において左端には、シリンダブロック4が鋳造による一体成形により設けられている。シリンダブロック4のシリンダ孔5の軸線は、車両前方斜め上に指向している。これに対して、ユニットケース3の変速機ケース部分は、車両後方略水平方向に指向して延設されている。
【0020】内燃機関1の作動により、ピストン6がシリンダ孔5内を往復運動すると、この往復運動は、コンロッド7を介してクランクケースに支承されたクランクシャフト8の回転運動に変換され、図示されないベルト伝動機構を介して変速機2のメインシャフト9に入力される。クランクシャフト8は、そのジャーナル部がアッパクランクケースとロアランクケースの各合わせ面に形成された半円弧状凹部に軸受けされて、支持されている。
【0021】変速機2において、メインシャフト9への入力は、メインシャフト9とカウンタシャフト10とにそれぞれ嵌着された歯車群のうちの所定の歯車同志の噛合を介して所定の減速比に変速されて、カウンタシャフト10に嵌着されたドライブスプロケット11から出力され、このドライブスプロケット11と図示されない後輪の車軸に嵌着されたドリブンスプロケットとの間に懸架されたチェーン(図示されず)を介して後輪に伝達される。12はシフトドラム、13はシフトフォークである。
【0022】次に、内燃機関1の始動系について説明する。始動用モータ14は、図2および図3に図示されるように、その一方端に突設された2本の支持腕16が、シリンダブロック4の直ぐ後方のアッパクランクケース(アッパユニットケース3u のクランクケース側部分)の円弧状上面に突設された2本の取付けボス15に固定ボルト17により締着されることにより、その一方端が固定されている。
【0023】2本の取付けボス15は、アッパクランクケースの円弧状上面にクランクシャフト8と直交する方向に並んで設けられており、その始動用モータ14の取付け座面Bは、クランクケースの割面(ユニットケース3の割面)Aに対して傾斜している。また、固定ボルト17の軸線方向は、クランクシャフト8のジャーナル方向(軸受部方向)に指向している。
【0024】始動用モータ14の他方端には、始動用モータ14の外径より小径のボス部18が突設されており、このボス部18が、クランクケースの一側を画成する側壁19(図1参照)に形成された円孔20に密に嵌合することにより、始動用モータ14の他方端が固定されている。このボス部18は、円孔20と嵌合する軸部(取付け軸部)をなしている。
【0025】このようにして、始動用モータ14は、その一方端に突設された支持腕16が取付けボス15に固定ボルト17により締着され、その他方端に突設されたボス部18が側壁19に形成された円孔20に密に嵌合することにより、両端が支持されて固定されている。
【0026】側壁19は、クランクケースの一側に設けられて、クランク室を画成するとともに、その始動用モータ14側の部分が、始動用モータ14のボス部18を覆うように拡張されていて、全体的に見て、図1および図2に図示されるように、正面視中央部が膨れ、両端が窄まって伸び、貝殻を側面視したような平面形状をなしている。そして、このような平面形状の側壁19の周縁に沿って、囲壁21が直立して突設されている。
【0027】この囲壁21により周囲を画成され、側壁19を底壁とする空間(室)C内には、クランクシャフト8と始動用モータ14との間に設けられる始動用動力伝達機構22(図1参照)と、図示されないACG(交流発電機)とが収容される。
【0028】始動用動力伝達機構22は、図1に図示されるように、始動用モータ14のボス部(取付け軸部)18から突出するモータ回転軸に嵌着された始動用ドライブギヤ23と、始動用ドライブギヤ23と噛み合うアイドラー大ギヤ24と、アイドラー大ギヤ24と同軸のアイドラー小ギヤ25と、クランクシャフト8に嵌着されてアイドラー小ギヤ25と噛み合う始動用ドリブンギヤ26とからなっている。
【0029】したがって、いま、始動用モータ14が回転すると、その出力は、これらのギヤの噛合を介して順次伝達されて、クランクシャフト8が回転し、内燃機関1が始動する。
【0030】室Cの周囲を画成する囲壁21は、始動用モータ14の取付け軸部(ボス部)18を図1において左方から右方に巡って後、クランクケースの割面Aに略直角に垂下する縦壁21a を有している。そして、この縦壁21a の下方やや後方寄りに、冷却水ポンプ27が設けられている。
【0031】この冷却水ポンプ27は、詳細には図示されないオイルポンプ28(図3参照)とともに、メインシャフト9によりチェーン伝動機構を介して駆動される。冷却水ポンプ27とオイルポンプ28とは、駆動軸を共通にし、オイルポンプ28を内側に、冷却水ポンプ27を外側にして、重ねられるようにして配設されている。
【0032】冷却水ポンプ27は、図示されないラジエータを出た冷却水を配管29を介して吸入し、加圧して、配管30を介してシリンダブロック4に形成された冷却水供給口31からウォータージャケット38に供給する(図1、図3参照)。
【0033】配管30は、冷却水ポンプ27との接続部から縦壁21a に沿って上方に伸び、始動用モータ14の直ぐ後方において直角に折曲されて、始動用モータ14に沿い、始動用モータ14と変速機2のケースの湾曲した頂部との間を4気筒シリンダ列の略中央位置まで伸び、次いで、前方に折曲されて、冷却水供給口31に接続される。したがって、配管30の取り回しは容易である。
【0034】図3において、変速機2のケースの湾曲した頂部のうち左方に突出したケース部分32は、ドライブスプロケット11を覆う。このケース部分32には、図3において左方から、ドライブスプロケット11を側面から覆うカバー(図示されず)が固着される。図1により良く図示されるように、このカバーおよびケース部分32と縦壁21a および始動用モータ14との間には、上下方向に伸びる空間Dが形成される。配管30は、この空間D内を通過するようにして配置されている。
【0035】なお、図1および図2において、33はオイルフィルタ、34はオイルクーラ、35はシリンダブロック4の前部および変速機2の後部に設けられるエンジンハンガ用支持孔、37はメインシャフト9に嵌着されて常時回転するギヤの回転速度を検出する速度センサ、36は図示されないリヤフォークを枢支するための支持孔である。
【0036】本実施形態は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。クランクシャフト8を支承するクランクケースと、クランクケースに取り付けられ、クランクシャフト8を回転させる始動用モータ14と、クランクシャフト8と始動用モータ14との間に設けられる始動用動力伝達機構22とを備えてなる自動二輪車用内燃機関1の始動装置において、始動用モータ14をクランクケースに取り付ける固定ボルト17の軸線方向が、クランクシャフト8のジャーナル方向に指向するようにされている。
【0037】この結果、始動用モータ14を、シリンダブロック4がクランクケースに連なる部分のクランクケースの湾曲面上に、クランクシャフト8に最も接近させて配置することができるようになり、また、始動用モータ14の取付けボス15も、さほど大きく突出させなくて済むような形状にすることができる。これにより、始動用動力伝達機構22および交流発電機を収容する室Cを覆うカバーを小型化して、クランクケースの構造を簡単化し、内燃機関1を軽量化することができる。
【0038】また、クランクケースは、ユニットケース3がアッパユニットケース3u とロアユニットケース3l とに上下割りされたことにより、アッパクランクケースとロアクランクケースとに上下割りされ、始動用モータ14は、アッパクランクケースに取り付けられ、始動用モータ14をアッパクランクケースに取り付ける取付けボス15に形成される取付け座面Bは、クランクケースの割面(ユニットケース3の割面)Aに対して傾斜するようにされている。
【0039】この結果、取付けボス15が複数本(本実施形態では2本)クランクシャフト8と角度(本実施形態では直角)をなして並設される場合において、いずれの取付けボス15においても、取付けボス15に必要な軸方向長さをクランクケースの外側において十分に確保することができるので、取付けボス15のクランクケース内側への突出を抑制することができる。これにより、始動用モータ14を極力クランクシャフト8に近づけることが可能になり、始動用動力伝達機構22および交流発電機を収容する室Cを覆うカバーをさらに小型化して、内燃機関1をさらに軽量化することができる。
【0040】また、クランクケースの一側に、始動用動力伝達機構22を収容する室Cが設けられ、該室Cの周囲を画成する囲壁21は、始動用モータ14の取付け軸部(ボス部)18を巡って後、クランクケースの割面Aに略直角に垂下する縦壁21a を有するようにされているので、室Cの周囲囲壁21の一部をなす縦壁21a は、オーバーハングしないので、クランクケースを鋳造により製作するに際して、1つの型構成によりこの部分を形成することができ、製作が容易になる。
【0041】さらに、縦壁21a の略下方に、冷却水ポンプ27が設けられ、該縦壁21a に沿って、冷却水配管30が配設されているので、オーバーハングしない縦壁21a に沿って、冷却水ポンプ27とシリンダブロック4のウォータージャケット38との間を結ぶ冷却水配管30をスムースに配設することができ、冷却水配管30の取り回しが容易になる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年10月13日(1999.10.13)
【代理人】 【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望 (外2名)
【公開番号】 特開2001−115933(P2001−115933A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−291579