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【発明の名称】 燃料噴射装置および燃料噴射方法
【発明者】 【氏名】野村 斉

【要約】 【課題】本発明は、エンジン始動に必要な量の燃料を燃焼室に噴射することができ、有害な未燃焼成分や黒煙の発生を防止できる燃料噴射装置を得ることにある。

【解決手段】燃料噴射装置は、燃料を加圧するプランジャ20と、エンジン2の運転状況に応じてプランジャを回動させることで燃料噴射量を調節するラック40とを含むユニットインジェクタ1と;エンジンの運転状況に応じてラックを往復移動させるとともに、エンジン始動時においては目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が得られる噴射位置にラックを移動させて燃料噴射量を増大させる噴射量制御装置42と;エンジンの始動開始から目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回るまでの期間中にラックを噴射位置よりも燃料噴射量を減じる方向に強制的に移動させるコントロールバルブ51と;を備えていることを特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに同期して軸方向に駆動されるプランジャと、このプランジャによって加圧された燃料をエンジンの燃焼室に噴射する噴孔と、エンジンの運転状況に応じて往復移動され、上記プランジャを軸回り方向に回動させることで燃料噴射量を調節するラックと、を含むユニットインジェクタと;エンジンの運転状況に応じて駆動されるアクチュエータを含み、このアクチュエータからの動力伝達によって上記ラックを往復移動させるとともに、エンジン始動時に目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が得られる噴射位置に上記ラックを移動させて燃料噴射量を増大させる制御手段と;上記エンジンの始動開始から上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回るまでの期間中に、上記ラックを上記噴射位置よりも燃料噴射量を減じる方向に強制的に移動させて、燃料噴射量を増す方向へのラックの移動を制限する制限手段と;を備えていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】 請求項1の記載において、上記制御手段は、上記アクチュエータによって軸回り方向に回動されるコントロールシャフトと、このコントロールシャフトの動きを上記ラックに伝えるコントロールレバーとを有し、また、上記制限手段は、上記コントロールシャフトに係合してその回動を制限する係合位置と、上記コントロールシャフトから離脱する係合解除位置とに亙って移動可能な係合子を有するコントロールバルブを備え、このコントロールバルブの係合子は、上記エンジンの始動開始時に上記係合位置に保持されているとともに、上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時に、上記係合位置から係合解除位置に移動されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】 請求項2の記載において、上記コントロールシャフトは、その外周面に開口された係合溝を有し、上記コントロールバルブの係合子が係合位置に移動された状態においては、この係合子が上記係合溝の溝底に接していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】 請求項2又は請求項3の記載において、上記コントロールバルブは、上記エンジンの潤滑油の圧力を受ける弁体を有し、この弁体に上記係合子が連結されているとともに、上記弁体は、上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時点において、その時のエンジンの運転に伴う潤滑油の圧力上昇に応じて上記係合子を上記係合位置から上記係合解除位置に移動させることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項5】 請求項2又は請求項3の記載において、上記コントロールバルブは、上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時に、上記係合子を係合位置から係合解除位置に移動させる電磁弁であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】 エンジンに同期して駆動されるプランジャにより燃料を加圧し、この加圧された燃料が所定の圧力に達した時に、上記エンジンの燃焼室に燃料を噴射するとともに、上記エンジンの始動時においては、目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が得られる噴射位置に移動されるラックを介して上記プランジャを軸回り方向に回動させることで燃料噴射量を増大させるようにした燃料噴射方法において、上記エンジンの始動開始時に上記ラックを上記噴射位置よりも燃料噴射量を減じる方向に強制的に移動させて、燃料噴射量を増す方向へのラックの移動を制限するとともに、上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時に、上記ラックの移動制限を解除するようにしたことを特徴とする燃料噴射方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン始動時に無駄な燃料の噴射を抑えるようにした燃料噴射装置および燃料噴射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンでは、燃焼室に吸入された空気を高い圧縮比で圧縮するとともに、この圧縮により高温・高圧となった空気中に燃料を噴射し、この燃料粒の自己着火により燃焼を行っている。このため、ディーゼルエンジンを円滑に運転するためには、刻々と変化するエンジンの運転状況に応じた最適な量の燃料を燃焼室に噴射する必要があり、特にエンジン始動時にあっては、始動性を高めるために燃料噴射量を増加させる必要がある。
【0003】ところで、ディーゼルエンジン用の燃料噴射装置として知られている機械式のユニットインジェクタは、燃料加圧機構と噴射ノズルとが気筒別に一体化されている。この種のユニットインジェクタは、フィードポンプで圧力調整された燃料が供給される加圧室を有し、この加圧室にプランジャが臨んでいる。プランジャは、エンジンのカム軸によって軸方向に駆動されるようになっており、このプランジャによって加圧された燃料の圧力が所定の値に達すると、ノズルニードルがリフトしてノズルボディの先端の噴孔を開き、この噴孔を通じて加圧された燃料がエンジンの燃焼室に噴射される。
【0004】また、機械式のユニットインジェクタは、燃料噴射量を制御するためのラックを装備している。ラックは、プランジャと一体に回動するピニオンと噛み合っている。このため、エンジンの運転状況に応じてラックを往復移動させると、プランジャが軸回り方向に回動し、このリードの外周面に切り欠かれたリードと加圧室に開口された燃料供給口との位置関係が変動する。この結果、プランジャによる燃料の加圧終了時期が変化し、このプランジャの回動角度と回動方向を選択することで、燃料噴射量がエンジンの運転状況に応じて調節されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このようなユニットインジェクタを有するディーゼルエンジンにおいて、エンジン始動時には、クランキングにより燃焼室内で燃焼が開始されてからエンジン回転数が安定するまで図5の(c)に示すように多少の時間Tを要する。この際、エンジン始動時の燃料噴射量を決定するための目標回転数と、実際のエンジン回転数との間にはかなりの開きがあり、目標回転数が実際のエンジン回転数を上回ることが多い。
【0006】すると、図5の(a)に示す期間Aにおいて、燃焼室に噴射される燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を上回ってしまい、図5の(b)の領域Rで示す部分の燃料が過剰となる。この過剰燃料は、エンジン始動に何ら寄与しないので、未燃焼成分となって大気中にそのまま放出されてしまい、燃料が無駄となるばかりか、大気汚染を招く原因となる。
【0007】しかも、燃焼室内の空気に対する燃料の割合が多くなり過ぎるので、酸素が不足気味となって不完全燃焼を起こし易くなる。このため、燃焼室にすすが発生し、エンジン始動時に黒煙を発するといった問題が生じてくる。
【0008】本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、エンジン始動に必要な量の燃料を燃焼室に噴射することができ、有害な未燃焼成分や黒煙の発生を防止できる燃料噴射装置および燃料噴射方法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る燃料噴射装置は、エンジンに同期して軸方向に駆動されるプランジャと、このプランジャによって加圧された燃料をエンジンの燃焼室に噴射する噴孔と、エンジンの運転状況に応じて往復移動され、上記プランジャを軸回り方向に回動させることで燃料噴射量を調節するラックと、を含むユニットインジェクタと;エンジンの運転状況に応じて駆動されるアクチュエータを含み、このアクチュエータからの動力伝達によって上記ラックを往復移動させるとともに、エンジン始動時に目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が得られる噴射位置に上記ラックを移動させて燃料噴射量を増大させる制御手段と;上記エンジンの始動開始から上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回るまでの期間中に、上記ラックを上記噴射位置よりも燃料噴射量を減じる方向に強制的に移動させて、燃料噴射量を増す方向へのラックの移動を制限する制限手段と;を備えていることを特徴としている。
【0010】また、上記目的を達成するため、本発明に係る燃料噴射方法は、エンジンに同期して駆動されるプランジャにより燃料を加圧し、この加圧された燃料が所定の圧力に達した時に、上記エンジンの燃焼室に燃料を噴射するとともに、上記エンジン始動時においては、目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が得られる噴射位置に移動されるラックを介して上記プランジャを軸回り方向に回動させることで燃料噴射量を増大させる方法を前提とし、上記エンジンの始動開始時に上記ラックを上記噴射位置よりも燃料噴射量を減じる方向に強制的に移動させて、燃料噴射量を増す方向へのラックの移動を制限するとともに、上記目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時に、上記ラックの移動制限を解除するようにしたことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図5にもとづいて説明する。
【0012】図1は、舶用機械等に用いられるディーゼルエンジンの燃料噴射システムを開示している。この燃料噴射システムは、機械式のユニットインジェクタ1を備えている。ユニットインジェクタ1は、ディーゼルエンジン2のシリンダヘッド3(図2に示す)に取り付けられている。シリンダヘッド3は、ピストン4の頂部と協働して燃焼室5を構成しており、この燃焼室5にユニットインジェクタ1を通じて燃料が噴射されるようになっている。
【0013】図2の(A)に示すように、ユニットインジェクタ1は、インジェクタボディ7と、このインジェクタボディ7の一端にリテーニングボディ8を介して同軸状に連結されたプランジャバレル9およびスプリングケージ10と、このスプリングケージ10の一端にリテーニングナット11を介して連結されたディスタンスピース12およびノズルボディ13とを備えている。
【0014】インジェクタボディ7は、中空円筒状のガイド部14を有している。このガイド部14は、プランジャバレル9とは反対側に向けて突出されている。プランジャバレル9の内部には、シリンダ15と加圧室16とが形成されている。加圧室16は、シリンダ15の底に連なっており、この加圧室16の周壁に燃料供給口17と燃料逃し口18とが開口されている。これら燃料供給口17および燃料逃し口18は、加圧室16の径方向に互いに向かい合っている。燃料供給口17は、図示しないフィードポンプに連なっているとともに、燃料逃し口18は、図示しない燃料タンクに連なっている。
【0015】プランジャバレル9のシリンダ15には、プランジャ20が軸方向に摺動可能に嵌合されている。プランジャ20の頭部20aの端面は、加圧室16に臨んでいる。プランジャ20の加圧室16とは反対側の端部は、プランジャバレル9を貫通してインジェクタボディ7の内部に導かれており、この端部の外周上にコントロールピニオン21が固定されている。
【0016】プランジャ20の端部には、タペット22が連結されている。タペット22は、シリンダボディ7のガイド部14に摺動可能に支持されているとともに、ガイド部14の外方に突出されている。このタペット22は、プランジャスプリング23を介してプランジャ20を加圧室16から引き出す方向に付勢している。
【0017】タペット22は、ロッカアーム25を介してディーゼルエンジン2に組み込まれた燃料噴射用カム(図示せず)に連携されている。このため、燃料噴射用カムによってロッカアーム25が揺動されると、このロッカアーム25の揺動運動がタペット22を介してプランジャ20に伝わり、これによりプランジャ20が軸方向に駆動される。
【0018】図2の(B)に示すように、ノズルボディ13は、その先端に小径な円頂部26を有している。円頂部26は、燃焼室5に突出されているとともに、この燃焼室5に開口された複数の噴孔27を有している。
【0019】ノズルボディ13の内部には、ガイド孔28が同軸状に形成されている。ガイド孔28は、円頂部26に隣接された一端に燃料溜り室29を有している。この燃料溜り室29は、サック部30を介して噴孔27に連なっているとともに、燃料通路31を介して加圧室16に連なっている。
【0020】ガイド孔28には、ノズルニードル32が軸方向に摺動可能に嵌合されている。ノズルニードル32の先端は、燃料溜り室29を貫通しており、このノズルニードル32の先端にサック部30を開閉するシール部33が形成されている。このため、ノズルニードル32は、サック部30を塞ぐ閉じ位置と、サック部30を開放する開き位置とに亙って往復動可能にノズルボディ13に支持されており、常にプレッシャスプリング34を介して閉じ位置に保持されている。
【0021】プランジャ20の頭部20aの外周面には、らせん状のリード36と、プランジャ20の軸方向に延びる縦溝37とが形成されている。リード36の下縁36aは、燃料供給口17から燃料戻し口18の方向に進むに従い上向きに傾斜されている。また、縦溝37は、リード36に連なるとともに、加圧室16に臨む頭部20aの端面に開口されている。
【0022】図3の(a)〜(d)は、プランジャ20の作動による燃料の吸入から圧送に至る過程を連続的に示すもので、この図3とユニットインジェクタ1の全体を示す図2の(A)とでは、プランジャ20の向きが上下逆向きとなっている。
【0023】図3の(a)に示す燃料の吸入行程では、プランジャ20がシリンダ15から引き出す方向に移動される。プランジャ20が上死点に達すると、プランジャ20の頭部20aが燃料供給口17から外れるので、フィードポンプから送られる燃料がそのフィード圧とプランジャ20の吸入作用により加圧室16に流入する。
【0024】図3の(b)に示すように、プランジャ20が上死点から押し下げられていくと、このプランジャ20の頭部20aによって燃料供給口17および燃料戻し口18が閉じられ、プランジャ20の下降に従って加圧室16内の燃料の圧力が上昇する。この圧力上昇に追従して燃料溜り室29内の燃料圧力が急激に上昇し、この燃料の圧力がノズルニードル32のシール部33に作用する。
【0025】これにより、ノズルニードル32は、シール部33をサック部30から離脱させようとする方向の力を受ける。この力がプレッシャスプリング34のばね力に打ち勝つと、ノズルニードル32が閉じ位置から開き位置に押し上げられ、サック部30から離脱する。これにより、燃料溜り室29内の加圧された燃料が噴孔27を通じて燃焼室5に噴射される。
【0026】加圧室16に臨む頭部20aの端面とリード36とは、縦溝37を介して通じているので、図3の(c)に示すように、プランジャ20の降下に伴ってリード36の下縁36aが燃料戻し口18にかかると、加圧室16内の加圧された燃料が縦溝37からリード36を通じて燃料戻し口18に流出する。このため、加圧室16や燃料溜り室29内の燃料圧力が急激に低下し、ノズルニードル32がプレッシャスプリング34によって開き位置から閉じ位置に押し戻される。よって、サック部30が閉じられ、噴孔27からの燃料噴射が終了する。
【0027】したがって、プランジャ20が燃料供給口17を閉じて燃料の圧送を開始してから燃料の圧送を終了するまでのプランジャ20の有効ストロークは、燃料供給口17の開口下縁からリード36の下縁36aが燃料戻し口18にかかるまでのプランジャ20の軸方向に沿う寸法によって定められ、この有効ストロークは、プランジャ20を軸回り方向に回動させることで変化する。
【0028】図3の例においては、プランジャ20を時計回り方向(右向き)に回動させる程、リード36の下縁36aが燃料戻し口18から遠ざかるので、プランジャ20の有効ストロークが増大し、燃料の噴射量が増大する。逆に図3の(d)に示すようにプランジャ20を反時計回り方向(左向き)に回動させると、リード36の下縁36aが燃料戻し口18に近づくので、プランジャ20の有効ストロークが少なくなり、燃料の噴射量が減少する。
【0029】このような燃料噴射量の調節は、コントロールラック40を介してプランジャ20を軸回り方向に回動させることで行われる。コントロールラック40は、ユニットインジェクタ1と直交する方向に沿って水平に延びており、ユニットインジェクタ1のインジェクタボディ7にスライド可能に支持されている。このコントロールラック40は、インジェクタボディ7の内部においてコントロールピニオン21と噛み合っている。
【0030】そのため、ディーゼルエンジン2の運転状況に応じてコントロールラック40をスライドさせることで、プランジャ20が軸回り方向に所望の角度回動し、燃焼室5に対する燃料の噴射量が増減調節される。
【0031】図1に示すように、コントロールラック40は、制御手段としての噴射量制御装置42に結合されている。噴射量制御装置42は、シリンダヘッド3上のロッカケース41(図4に示す)に支持されている。この噴射量制御装置42は、駆動源としてのアクチュエータ43と、このアクチュエータ43の動きをコントロールラック40に伝えるリンク式の伝達機構44とを備えている。
【0032】アクチュエータ43は、図示しない電磁石によって軸回り方向に駆動される出力軸45を有し、この出力軸45は、ディーゼルエンジン2の運転状況に応じてその回動角度および回動方向が制御されるようになっている。
【0033】伝達機構44は、コントロールシャフト46、コントロールレバー47、第1のリンクレバー48a、第2のリンクレバー48bおよび中継ロッド49を備えている。コントロールシャフト46は、円形の断面形状を有する丸棒にて構成され、ロッカケース41に軸回り方向に回動可能に支持されている。コントロールレバー47は、コントロールシャフト46に結合され、このシャフト46と一体に回動するようになっている。コントロールレバー47は、コントロールシャフト46から下向きに延びる延出部47aを有し、この延出部47aの先端がコントロールラック40に連結されている。
【0034】第1のリンクレバー48aは、アクチュエータ43の出力軸45に結合されて、この出力軸45により回動操作される。第2のリンクレバー48bは、コントロールシャフト46の一端に結合されて、このシャフト45と一体に回動するようになっている。
【0035】中継ロッド49は、第1および第2のリンクレバー48a,48bの間に亙って掛け渡されており、この中継ロッド49を介して第1のリンクレバー48aの動きが第2のリンクレバー48bに伝えられる。
【0036】このため、ディーゼルエンジン2の運転状況に応じてアクチュエータ43の出力軸45が駆動されると、この出力軸45の動きが第1のリンクレバー48aから中継ロッド49および第2のリンクレバー48bを介してコントロールシャフト46に伝えられ、このコントロールシャフト46が軸回り方向に所定の角度回動される。
【0037】このシャフト46の動きは、コントロールレバー47を介してコントロールラック40に伝えられ、このコントロールラック40がインジェクタボディ7に押し込まれる方向又はインジェクタボディ7から引き出される方向にスライドされる。本実施の形態では、コントロールシャフト46が右回りに回動された時に、燃料噴射量が増大し、左回りに回動された時に燃料噴射量が減少するようになっている。
【0038】ディーゼルエンジン2が停止している状態では、コントロールラック40は、コントロールシャフト46を介してインジェクタボディ7に向けて最も押し込まれた停止位置にスライドされており、この時、プランジャ20の有効ストロークは最も小さくなっている。ディーゼルエンジン2の運転中においては、その時に必要とする燃料を過不足なく噴射し得る位置にコントロールラック40がスライドされ、最大燃料噴射量を要求されるような高負荷運転状態では、コントロールラック40は、インジェクタボディ7から最も引き出された最大噴射位置にスライドされる。
【0039】また、ディーゼルエンジン2の始動時にあっては、始動性を高めるため燃料噴射量を増加させる必要がある。このため、アクチュエータ43は、エンジン始動時の燃料噴射量を決定するための目標回転数に基づいてコントロールシャフト46を駆動し、このコントロールシャフト46によってコントロールラック40が上記最大噴射位置に向けてスライドされる。
【0040】図1に示すように、コントロールシャフト46の第2のリンクレバー48bとは反対側の端部には、制限手段としての油圧式のコントロールバルブ51が設置されている。コントロールバルブ51は、ディーゼルエンジン2を始動する際に、コントロールラック40を上記最大噴射位置よりも燃料噴射量を減じる始動位置に強制的に移動させるためのものである。このコントロールバルブ51は、取り付け座52を介してロッカケース41に支持されている。
【0041】図4に示すように、取り付け座52は、ロッカケース41にボルト53を介して固定されている。この取り付け座52は、コントロールシャフト46が軸回り方向に回動可能に嵌合された軸受孔54と、この軸受孔54の上端に連なるねじ孔55とを有している。ねじ孔55は、取り付け座52の上面に開口されている。
【0042】コントロールシャフト46における軸受孔54に嵌合された部分には、係合溝56が形成されている。係合溝56は、コントロールシャフト46の外周面に略半周に亙って開口されている。この係合溝56の溝底56aは、コントロールシャフト46の径方向に延びる直線状をなしている。
【0043】コントロールバルブ51は、バルブボディ57と、このバルブボディ57の上端部にねじ込まれたバルブキャップ58とを備えている。バルブボディ57は、その下端部に雄ねじ部59を有し、この雄ねじ部59が取り付け座52のねじ孔55にねじ込まれている。
【0044】バルブボディ57の内部には、シリンダ61と、このシリンダ61の底に連なるオイル貯溜室62とが形成されている。シリンダ61には、ピストン形の弁体63が上下動可能に収容されている。弁体63は、オイル貯溜室62に面する受圧壁63aを有し、この受圧壁63aの中央部に係合子としてのロッド65がねじ込まれている。
【0045】ロッド65は、オイル貯溜室62および雄ねじ部59を貫通しており、このロッド65の下端が上記コントロールシャフト46の係合溝56と向かい合っている。ロッド56の上部は、シリンダ61およびバルブキャップ58を貫通してコントロールバルブ51の外方に導出されており、このロッド56の導出部分に調整ナット66がねじ込まれている。
【0046】そのため、ロッド56は、コントロールシャフト46の係合溝56内に進出する係合位置と、この係合溝56の上方に離脱する係合解除位置とに亙って昇降動可能にバルブボディ57に支持されている。
【0047】弁体63の受圧壁63aとバルブキャップ58との間には、リターンスプリング67が介在されている。リターンスプリング67は、弁体63を常に下向きに押圧している。この押圧により、ロッド65が係合位置に移動されて、このロッド65の下端がコントロールシャフト46の係合溝56内に入り込んでいる。
【0048】図4に示すように、バルブボディ57の下端部には、ジョイントリング68が取り付けられている。ジョイントリング68は、オイル溝69と、このオイル溝69に連なる接続口70とを有している。オイル溝69は、バルブボディ57に接するジョイントリング67の内周面に周方向に連続して形成されている。このオイル溝69は、バルブボディ57に開けた連通口71を介してオイル貯溜室62に連なっている。また、接続口70は、ジョイントリング68の外周面に開口されており、この接続口70にオイル配管72の下流端が接続されている。
【0049】オイル配管72の上流端は、ロッカケース41のオイル通路(図示せず)を介してオイルポンプ74に連なっている。オイルポンプ74は、ディーゼルエンジン2のクランク軸(図示せず)によって駆動されるようになっており、このオイルポンプ74により加圧された潤滑油がオイル通路に供給される。
【0050】このため、オイルポンプ74によって加圧された潤滑油の一部は、オイル配管72からオイル溝69および連通口71を介してオイル貯溜室62に導かれ、このオイル貯溜室62の圧力が急激に上昇する。この結果、弁体63の受圧壁63aに潤滑油の圧力が作用し、この弁体63がリターンスプリング67に抗して押し上げられるようになっている。
【0051】次に、上記燃料噴射システムの作動について説明する。
【0052】ディーゼルエンジン2の運転中においては、そのクランク軸からの動力伝達によってオイルポンプ74が駆動されるので、このオイルポンプ74によって加圧された潤滑油の一部がオイル通路からオイル配管72を経てコントロールバルブ51のオイル貯溜室62に供給される。
【0053】このため、エンジン運転中は、オイル貯溜室62が高圧に保たれて潤滑油の圧力がリタースプリング67の付勢力に打ち勝つような設定となっており、この弁体63に連結されたロッド65が係合解除位置に保持されている。
【0054】よって、ロッド65がコントロールシャフト46の自由な回動を妨げることはなく、このコントロールシャフト46は、その時のエンジン運転状況に応じた最適な燃料噴射量が得られる噴射位置にコントロールラック40を駆動する。
【0055】一方、ディーゼルエンジン2が停止している状態において、燃料噴射量を調節するためのコントロールラック40は、コントロールシャフト46によって停止位置にスライドされている。この時、コントロールシャフト46は、図4に示すように、その係合溝56の溝底56aを上向きにした姿勢に保持されており、この溝底56aがコントロールバルブ51のロッド65と向かい合っている。
【0056】また、潤滑油を圧送するオイルポンプ74は、クランク軸によって駆動されることなく停止状態を保っているので、コントロールバルブ51のオイル貯溜室62の圧力が消失し、弁体63がリターンスプリング67によって押し下げられている。このため、ロッド65が係合位置に移動し、このロッド65の下端がコントロールシャフト46の係合溝56内に入り込んでいる。
【0057】エンジン始動に伴ってクランキングが開始されると、噴射量制御装置42のアクチュエータ43が駆動される。これにより、コントロールシャフト46が右回りに回動され、コントロールラック40を燃料噴射量が最大となる最大噴射位置に向けてスライドさせる。
【0058】この際、コントロールシャフト46の係合溝56内には、コントロールバルブ51のロッド65の下端が進出しているので、コントロールシャフト46が右方向に回動されるにつれて、このロッド65の下端と係合溝56の溝底56aとの位置関係が相対的に変化し、図4に二点鎖線で示すように、コントロールラック40が最大噴射位置に達する以前に係合溝56の溝底56aがロッド65に突き当たる。これにより、コントロールシャフト51の回動が制限され、コントロールラック40は最大噴射位置よりも手前の始動位置に保持される。
【0059】したがって、コントロールラック40は、最大噴射位置に達する以前に燃料噴射量を増大させる方向へのスライドが制限され、見掛け上、最大噴射位置よりも燃料噴射量を減じる方向に強制的に移動されることになる。
【0060】この結果、ディーゼルエンジン2の始動過程における実際のエンジン回転数が、エンジン始動に必要な燃料噴射量を確保するために予め決められた目標回転数よりも低い場合に、最大噴射量が得られる最大噴射位置までコントロールラック40が引き出されずに済むことになる。よって、図5の(b)に一点鎖線で示すように、エンジン始動時に燃焼室5に噴射される燃料噴射量が制限され、実際の始動に必要な量の燃料が燃焼室5に噴射される。
【0061】このことから、エンジン始動時の過剰な燃料噴射が抑制されるので、未燃焼の燃料成分が大気中に放出されることはなく、その分、燃料の無駄使いを抑えて燃費の向上に貢献するとともに、低公害化を図ることができる。
【0062】それとともに、エンジン始動時において、燃焼室5内に噴射された燃料を無駄なく燃焼に利用できるので、不完全燃焼に伴うすすの発生が抑えられ、エンジン始動時の黒煙の発生を防止することができる。
【0063】ディーゼルエンジン2の始動に伴い、コントロールバルブ51のオイル貯溜室52に加圧された潤滑油が供給されると、このオイル貯溜室52内の油圧が上昇する。そのため、目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時に、ロッド65が係合位置から係合解除位置に押し上げられるように予め調整ナット66のねじ込み量を調整しておけば、このロッド65がコントロールシャフト46の自由な回動を妨げることはない。よって、コントロールシャフト46は、その時のエンジン運転状況に応じた最適な燃料噴射量が得られる噴射位置にコントロールラック40を駆動する。
【0064】また、上記構成によれば、オイルポンプ74から圧送される潤滑油の圧力を利用して、エンジン始動時の燃料噴射量を増やす方向へのコントロールシャフト46の動きを制限するようにしたので、エンジンの運転状況を検知する専用の補機類が不要となる。この結果、コントロールシャフト46の動きを制限する構成を採用したにも拘わらず、大掛かりな装置を付加する必要はなく、燃料噴射システムの全体の構成をシンプルなものとすることができる。
【0065】なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、図6に本発明の第2の実施の形態を示す。
【0066】この第2の実施の形態は、主にエンジン始動時のコントロールシャフト46の回動を制限するための構成が上記第1の実施の形態と相違しており、それ以外のユニットインジェクタ1および噴射量制御装置42の基本的な構成は、第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】図6に示すように、ロッカケース41上の取り付け座52には、電磁式のコントロールバルブ80が取り付けられている。コントロールバルブ80は、取り付け座52の上面に支持されたバルブボディ81を有し、このバルブボディ81の内部にロッド82と、このロッド82を駆動する電磁ソレノイド83とが収容されている。
【0068】ロッド82は、その下端部がコントロールシャフト46の係合溝56内に進出する係合位置と、係合溝56の上方に離脱する係合解除位置とに亙って昇降動可能にバルブボディ81に支持されており、常に図示しないスプリングにより係合位置に付勢されている。
【0069】電磁ソレノイド83は、コネクタ84およびリード線85を介してエンジンコントローラ86に接続されている。エンジンコントローラ86は、ディーゼルエンジン2の始動開始に伴い、目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時に、燃料噴射量制限解除信号を電磁ソレノイド83に送出するようになっており、この燃料噴射量制限解除信号により電磁ソレノイド83が励磁される。
【0070】電磁ソレノイド83が励磁されると、この電磁ソレノイド83にロッド82のアーマチュア(図示せず)が吸引され、ロッド82が係合位置から係合解除位置に移動される。これにより、ロッド82の下端部がコントロールシャフト46の係合溝56から離脱し、ロッド82によるコントロールシャフト46ひいてはコントロールラック40の移動制限が解除される。
【0071】このような構成によれば、ディーゼルエンジン2の始動開始時においては、コントロールシャフト46の係合溝56内にコントロールバルブ80のロッド82の下端が進出しているので、コントロールシャフト46が燃料噴射量を増す右方向に回動されるにつれて、このロッド82の下端と係合溝56の溝底56aとの位置関係が相対的に変化する。そして、コントロールラック40が最大噴射位置に達する以前に係合溝56の溝底56aがロッド82に突き当たり、これにより、燃料噴射量を増す方向へのコントロールシャフト46の回動が制限される。
【0072】このため、ディーゼルエンジン2の始動過程における実際のエンジン回転数が、エンジン始動に必要な燃料噴射量を確保するために予め決められた目標回転数よりも低い場合に、最大噴射量が得られる最大噴射位置までコントロールラック40が引き出されずに済む。
【0073】よって、上記第1の実施の形態と同様に、エンジン始動時に燃焼室5に噴射される燃料噴射量が制限され、実際の始動に必要な量の燃料のみが燃焼室5に噴射されるので、黒煙や有害成分の発生原因となる過剰な燃料噴射を防止することができる。
【0074】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、エンジンの始動過程における実際のエンジン回転数が、エンジン始動に必要な燃料噴射量を確保するために予め決められた目標回転数よりも低い場合に、最大噴射量が得られる最大噴射位置までラックが移動されずに済むので、エンジン始動時に燃焼室に噴射される燃料噴射量が制限され、実際の始動に必要な量の燃料が燃焼室に噴射される。このため、未燃焼の燃料成分が大気中に放出されることはなく、燃料の無駄使いを抑えて燃費の向上に貢献するとともに、低公害化を図ることができる。
【0075】しかも、エンジン始動時においては、燃焼室内に噴射された燃料を無駄なく燃焼に利用できるので、不完全燃焼に伴うすすの発生が抑えられ、エンジン始動時の黒煙の発生を防止することができる。
【0076】また、目標回転数に基づいて決められた燃料噴射量が始動に必要な燃料噴射量を下回った時にラックの移動制限が解除されるので、それ以降、ラックはエンジン運転状況に応じた燃料を過不足なく噴射し得る位置に移動されることになり、安定した燃料供給が可能となるといった利点がある。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年6月14日(2000.6.14)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
【公開番号】 特開2001−355541(P2001−355541A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−178766(P2000−178766)