| 【発明の名称】 |
燃料噴射弁装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】久保 賢明
【氏名】中尾 頼人
【氏名】榊田 明宏
【氏名】伊藤 泰之
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| 【要約】 |
【課題】アクチュエータとして形状記憶素子を備えた燃料噴射弁において、冷間始動時など燃料温度が低い状態での燃料噴射時に、燃料への放熱により形状記憶素子の作動特性が変動して噴射応答および噴射精度が低下する。
【解決手段】冷間始動時などの燃料温度が形状記憶素子6の変態温度に比較して低い場合に、コントローラ30から形状記憶素子に通電して加熱し、その周囲に導入した燃料の温度を形状記憶素子の変態点よりわずかに低い温度にまで上昇させておくことにより、形状記憶素子と燃料とのあいだの温度勾配を小さくしておく。これにより燃料噴射時の形状記憶素子の応答が改善され、燃料噴射量および噴射時期の制御性を向上させることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】燃料を加圧するアクチュエータとして形状記憶素子を備えた燃料噴射弁と、前記形状記憶素子への通電を制御する噴射制御手段とを有する燃料噴射弁装置において、前記形状記憶素子の周囲に導入した燃料の温度を燃料噴射前に予め定めた温度にまで上昇させておく予熱制御手段を設けた燃料噴射装置。 【請求項2】前記燃料の予熱制御は、弁体が変位しない限度内で形状記憶素子に通電することにより行う請求項1に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項3】前記予熱制御手段は、燃料の予熱を、燃料噴射制御の開始時期に対して可及的に近い時期に行うように構成されている請求項1に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項4】前記燃料噴射弁は、外部から燃料が導入される本体内に形状記憶素子が収装されると共に、形状記憶素子に連接したピストンにより収縮する圧力室と、この圧力室の内圧上昇に伴い開弁する針弁とを備え、前記ピストンが退避位置から圧縮方向に所定量Lxだけ変位したときに圧力室への燃料供給孔をピストンにより閉塞するように構成されている請求項1に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項5】前記燃料の予熱制御は、ピストンが圧力室の燃料供給孔を塞ぐまでの変位量Lxに達する限度内で形状記憶素子に通電することにより行うようにした請求項4に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項6】前記燃料の予熱制御は、燃料または形状記憶素子の温度を検出し、この検出温度が変位量Lxに相当する温度以下の所定の温度Tbに達するまで通電を行うようにした請求項5に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項7】前記燃料噴射弁は、ピストン変位が変位量Lxより所定量だけ大きい範囲内では、圧力室の圧力が噴射圧力に達しないように設定されている請求項4に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項8】前記予熱制御手段は、燃料噴射後に放熱による形状記憶素子の変位量低下が開始する温度Tdにおいて形状記憶素子への通電を停止するように構成されている請求項7に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項9】前記予熱制御手段は、機関回転数に応じて形状記憶素子への予熱通電の複数回に1回の割合で燃料を噴射するよう制御する請求項1または4に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項10】前記燃料噴射弁は、前記燃料供給孔よりも針弁側に位置する第2の燃料供給孔と、この第2の燃料供給孔を開閉する第2燃料供給孔開閉手段とを備える請求項4に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項11】前記第2燃料供給孔開閉手段は、圧力室内にて第2の燃料供給孔を開閉する弁体と、この弁体を開弁位置に付勢するばねと、このばねに抗して弁体を閉じ位置に変位させる形状記憶素子とを備える請求項10に記載の燃料噴射弁装置。 【請求項12】前記第2燃料供給孔開閉手段の形状記憶素子は、その変態点が、圧力室を加圧する形状記憶素子よりも低く設定されている請求項11に記載の燃料噴射弁装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関等に用いられる燃料噴射弁に関し、特に形状記憶素子の伸縮により噴射制御を行う構成の燃料噴射弁装置の改良に関する。 【0002】 【従来の技術と解決すべき課題】形状記憶素子をアクチュエータとして作動する燃料噴射弁が提案されている(例えば本出願人による特願平11−358614号参照)。これは、先端に燃料噴射孔を有する弁本体に正または負の電圧を印加すると伸縮する形状記憶素子を収装し、この形状記憶素子の伸縮変位によって針弁を駆動する構成となっている。形状記憶素子はピエゾ素子の10倍以上の変位率を持ち、単体で増圧し燃料を噴射できることから、小型軽量かつ低コストの燃料噴射弁を実現することができる。 【0003】しかしながら、この種の燃料噴射弁においては、冷間始動時などの燃料温度が低い条件下で形状記憶素子を通電加熱した場合に、形状記憶素子を取り巻く燃料に熱が伝達し、その際の素子細線近傍の温度勾配が極めて大きくなる。また素子間隔のばらつきなども加わり、細線同志または細線内における温度のばらつきが生じ、形状記憶素子の変態点前後の微妙な温度を制御することが難しい。このため、噴射タイミングや噴射量を目標値通りに正確に制御することが困難であるという問題が生じる。本発明は、このような問題点を解消することを目的としている。 【0004】 【課題を解決するための手段】第1の発明は、燃料を加圧するアクチュエータとして形状記憶素子を備えた燃料噴射弁と、前記形状記憶素子への通電を制御する噴射制御手段とを有する燃料噴射弁装置において、前記形状記憶素子の周囲に導入した燃料の温度を燃料噴射前に予め定めた温度にまで上昇させておく予熱制御手段を設けた。 【0005】第2の発明は、前記第1の発明において、燃料の予熱制御を、弁体が変位しない限度内で形状記憶素子に通電することにより行うものとした。 【0006】第3の発明は、前記第1の発明の予熱制御手段を、燃料の予熱を、燃料噴射制御の開始時期に対して可及的に近い時期に行うように構成した。 【0007】第4の発明は、前記第1の発明の前記燃料噴射弁を、外部から燃料が導入される本体内に形状記憶素子が収装されると共に、形状記憶素子に連接したピストンにより収縮する圧力室と、この圧力室の内圧上昇に伴い開弁する針弁とを備え、前記ピストンが退避位置から圧縮方向に所定量Lxだけ変位したときに圧力室への燃料供給孔をピストンにより閉塞するように構成した。 【0008】第5の発明は、前記第4の発明において、燃料の予熱制御を、ピストンが圧力室の燃料供給孔を塞ぐまでの変位量Lxに達する限度内で形状記憶素子に通電することにより行うものとした。 【0009】第6の発明は、前記第5の発明において、燃料の予熱制御を、燃料または形状記憶素子の温度を検出し、この検出温度が変位量Lxに相当する温度以下の所定の温度Tbに達するまで通電を行うものとした。 【0010】第7の発明は、前記第4の発明の燃料噴射弁を、ピストン変位が変位量Lxより所定量だけ大きい範囲内では、圧力室の圧力が噴射圧力に達しないように設定したものとした。 【0011】第8の発明は、前記第7の発明の予熱制御手段を、燃料噴射後に放熱による形状記憶素子の変位量低下が開始する温度Tdにおいて形状記憶素子への通電を停止するように構成した。 【0012】第9の発明は、前記第1または第4の発明の予熱制御手段を、機関回転数に応じて形状記憶素子への予熱通電の複数回に1回の割合で燃料を噴射するよう制御するものとした。 【0013】第10の発明は、前記第4の発明の燃料噴射弁を、前記燃料供給孔よりも針弁側に位置する第2の燃料供給孔と、この第2の燃料供給孔を開閉する第2燃料供給孔開閉手段とを備えるものとした。 【0014】第11の発明は、前記第10の発明の第2燃料供給孔開閉手段は、圧力室内にて第2の燃料供給孔を開閉する弁体と、この弁体を開弁位置に付勢するばねと、このばねに抗して弁体を閉じ位置に変位させる形状記憶素子とを備えるものとした。 【0015】第12の発明は、前記第11の発明において、第2燃料供給孔開閉手段の形状記憶素子の変態点を、圧力室を加圧する形状記憶素子よりも低く設定した。 【0016】 【作用・効果】上記第1の発明以下の各発明において、冷間始動時などの燃料温度が形状記憶素子の変態温度に比較して低い場合に、予熱手段により形状記憶素子の周囲に導入した燃料の温度を燃料噴射前に予め定めた温度、例えば形状記憶素子の変態点よりわずかに低い温度にまで上昇させておくことにより、形状記憶素子と燃料とのあいだの温度勾配を小さくすることができる。これにより燃料噴射時の素子の応答が改善され、燃料噴射量および噴射時期の制御性を向上させることができる。 【0017】前記予熱制御において形状記憶素子に付与する電流量は、例えば第2の発明に示したように弁体が変位しない限度内で行うことにより大きな加熱効果が得られる。 【0018】また、このような予熱制御は、第3の発明の発明として示したように、燃料噴射制御の開始時期に対して可及的に近い時期に行うようにすれば、燃料の冷却による損失を抑えて予熱の効果を保持したまま精度の高い燃料噴射制御に移行できる。 【0019】このような予熱制御が適用可能な燃料噴射弁の具体的な構成としては、例えば第4の発明に示したように、形状記憶素子に連接したピストンにより収縮する圧力室と、この圧力室の内圧上昇に伴い開弁する針弁とを備え、前記ピストンが退避位置から圧縮方向に所定量Lxだけ変位したときに圧力室への燃料供給孔をピストンにより閉塞するように構成したものとすることができる。 【0020】このような燃料噴射弁の構成においては、ピストンが退避位置から変位して燃料供給孔を閉塞する位置に達し、その位置からさらにピストンが変位すると圧力室の内圧が急上昇して燃料噴射が可能な状態となる。そこで、第5の発明として示したように、ピストンが圧力室の燃料供給孔を塞ぐまでの変位量Lxに達する限度内で形状記憶素子に通電するように予熱制御を行うことにより、燃料噴射を行うことなく形状記憶素子を充分に加熱して速やかに予熱を完了させることができる。なお、この予熱制御を行うとき、第6の発明として示したように、燃料または形状記憶素子の温度を検出し、この検出温度が変位量Lxに相当する温度以下の所定の温度Tbに達するまで通電を行うものとすれば、正確に形状記憶素子または燃料の温度管理を行うことができる。 【0021】前記第4の発明の燃料噴射弁は、第7の発明として示したように、ピストン変位が変位量Lxより所定量だけ大きい範囲内では、圧力室の圧力が噴射圧力に達しないように、つまり前記範囲を超えたときに初めて噴射が開始されるように、例えば針弁のばね荷重等により設定することができる。この場合、第8の発明として示したように、燃料噴射後に放熱による形状記憶素子の変位量低下が開始する温度において形状記憶素子への通電を停止するように構成することができる。形状記憶素子の変位特性には若干のヒステリシスがあるので、通電終了後しばらくしてから素子の冷却により変位は小さくなり圧力は低下をはじめる。この間のピークとなる圧力は噴射圧力に対して低いので燃料噴射は行なわれない。そこで、このようにして燃料圧力が噴射圧力付近に達するがすぐに変位が小さくなるように制御するのであり、これにより噴射までの応答期間を最小にして燃料噴射弁の噴射応答性をより改善することができる。 【0022】前記第1または第4の発明において、第9の発明として示したように、機関回転数に応じて形状記憶素子への予熱通電の複数回に1回の割合で燃料を噴射するよう制御するものとすれば、冷間時に予熱制御を行いながら機関に燃料を噴射供給して運転を行わせることができる。 【0023】第10の発明によれば、前記第4の発明の燃料噴射弁において、その燃料供給孔よりも針弁側に位置する第2の燃料供給孔と、この第2の燃料供給孔を開閉する第2燃料供給孔開閉手段とを備えるものとすることができる。この第2燃料供給孔開閉手段の具体的構成としては、例えば第11の発明として示したように、圧力室内にて第2の燃料供給孔を開閉する弁体と、この弁体を開弁位置に付勢するばねと、このばねに抗して弁体を閉じ位置に変位させる形状記憶素子とを備えるものとする。前記第2の燃料供給孔を開閉手段により開いた状態としておくことにより、ピストンが第1の燃料供給孔を閉ざす位置よりもさらに変位した状態においても圧力室の圧力の上昇を抑えることができるので、それだけピストンを駆動する形状記憶素子への通電量を大きくして燃料の温度上昇をより速やかに行い、予熱を早期に完了させることができる。予熱完了後は第2の燃料供給孔を閉ざすことにより通常の燃料噴射が可能な状態となる。 【0024】前記第11の発明において、第12の発明として示したように、第2燃料供給孔開閉手段の形状記憶素子の変態点を、圧力室を加圧する形状記憶素子よりも低く設定することにより、前記形状記憶素子を通電加熱する制御を行わなくとも予熱終了時に自動的に第2の燃料供給孔を閉ざすことができ、これにより弁体駆動用の形状記憶素子を通電加熱するための手段が不要となるので装置構成の簡略化を図ることができる。 【0025】 【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を適用可能な燃料噴射弁として自己昇圧型のユニットインジェクタの概略構成例を示している。図において、円筒状の本体1の先端噴孔部には外開き形式の針弁2が設けられており、針弁2はばね3により閉じ方向に付勢されている。本体1の他端部には円筒状のアクチュエータ保持部12が嵌装され、ボルト13により固定されている。この保持部12は、燃料昇圧用のアクチュエータとして作動する円筒状に形成された形状記憶素子6を保持している。 【0026】形状記憶素子6の先端部(針弁側)は固定リング11を介して保持部12および本体1に固定されており、後端部にはプッシュロッド10の基端が固定されている。プッシュロッド10の先端にはピストン9が固定されている。ピストン9は本体1内にて軸方向に摺動可能に嵌合しており、その前面側には針弁2との間に圧力室26を、背面側には保持部12との間に燃料室27をそれぞれ画成している。 【0027】形状記憶素子6の両端部にはそれぞれ正または負の電荷を印加できる電極7,8が取り付けられており、この電極に電圧をかけることにより形状記憶素子6の素子温度は自己発熱により急速に上昇し、素子温度が形状記憶素子6に固有の変態点を超えると形状記憶素子6は収縮する。これに伴い、プッシュロッド10を介してピストン9が針弁側に移動する。 【0028】形状記憶素子6の周囲(燃料室27)には本体1に設けられた燃料入口4および燃料出口5に接続する燃料系統28を介して常に燃料が導入されており、この燃料はさらにピストン9を迂回するように形成された燃料供給通路14を介してピストン9前面の圧力室26に導入される。燃料供給通路14の入口部14aは燃料室27に面して開口し、出口部である燃料供給孔14bは圧力室26においてピストン9が退避位置からある変位量Lxだけ右方すなわち針弁側に変位するとピストン9によって塞がれる位置に開口している(図2参照)。 【0029】燃料系統28には電磁バルブ25が介装されており、このバルブ28を開閉することで燃料室27への燃料の循環を制御可能としている。また、30は機関回転速度などの各種状態信号に基づいて前記形状記憶素子6への通電と電磁バルブ28の開閉を制御するコントローラであり、本発明の噴射制御手段および予熱制御手段の機能を備えている。 【0030】コントローラ30による形状記憶素子6への通電によりピストン9が変位して燃料供給孔14bが塞がれ、そこからさらにピストン9が変位すると圧力室26内の圧力は急速に高くなる。この圧力上昇に伴い、ばね3に抗して針弁2が開くと圧力室26内の燃料が外部に噴射される。通電を停止すると周囲の燃料への放熱により形状記憶素子6の温度が速やかに低下して変位が戻り、針弁2は再び弁本体1に着座して燃料噴射は終了する。 【0031】より詳細には、冷間始動時などの低温条件下では、燃料は形状記憶素子6の変態点に比べてずっと低い温度となっている。そこで、形状記憶素子6に通電を行い変態の始まる温度Taに達するまで電流を流し、さらに通電を行ない形状記憶素子6を加熱することにより形状記憶素子6は変位を開始する。これによりピストン9が針弁側に移動するが、燃料供給孔14bが塞がれるまでの変位量Lxの間はピストン9が移動しても燃料供給通路14を通り圧力室26から燃料室27へと燃料が移動できるため圧力室26内に圧力上昇は起こらない。 【0032】そこで、図3に示したように、形状記憶素子6の変位がLx以下になるような加熱温度Tbを指定しておくことにより、すなわち温度Tbに達するまで通電および加熱をすることにより、形状記憶素子6の変位はLx以下となり燃料は噴射されない。この後、燃料温度が依然としてTaより低い場合さらに同じサイクルを繰り返ことにより、燃料温度を短時間で上昇させることができる。なお、図3においてLmaxはピストン9の最大変位量である。 【0033】冷間始動時などの燃料温度が低い条件下で形状記憶素子6を通電加熱したとき、予熱を行わない場合には形状記憶素子6を取り巻く燃料に熱が伝達して、図4のa図に示したように、形状記憶素子6の素子細線6a〜6c近傍の温度勾配が極めて大きくなること、および素子各素子細線間の間隔がばらついていることなどに原因して、燃料噴射時期および燃料噴射量に制御誤差が生じる。これに対して、予熱制御により燃料温度を変態点に近づけることにより、図4のb図に示したように素子細線6a〜6cと燃料との間の温度勾配が減少し、これにより形状記憶素子6の全体が温度変化に対して均一かつ速やかに反応して変位するようになるため、燃料噴射制御の精度が大きく向上する。 【0034】また、冷間始動時においても比較的短い時間で燃料の加熱を行なえるため燃料の気化が促進し、燃料微粒化の効果も得られる。これにより冷間時における内燃機関の排出HC量をも低減することができる。また、始動直後から高回転運転を行なうといった、応答性を必要とする場合には、温度Taより変態温度までわずかにだけ温度上昇させることになり、変態をさせるために制御する電流が小さくてすむことから、コントローラ30の回路構成を簡略化してコスト低減が可能となる。 【0035】コントローラ30によって行われる上記予熱制御の動作内容を表す流れ図を図5に示す。なお、この予熱制御では、制御開始の際に、燃料への放熱による熱損失を最小限にするために燃料出口5に接続したバルブ25を閉じて燃料の循環を停止し、予熱制御を終了した後にバルブ25を開いて燃料室27への燃料循環を再開させるようにしている。以下、図5のステップ(以下「S」で表す)を順を追って説明する。 S11:燃料室27の燃料温度Tを検出する。燃料温度は燃料室27に温度センサを設けて直接的に検出するほか、形状記憶素子6の抵抗値から算出することもできる。 S12:検出した燃料温度Tを開始判定温度Taと比較する。T≧Taのときは予熱は不要であるのでS17以下の終了処理に移行する。T<TaのときはS13以下の予熱処理に移行する。 S13:電磁バルブ25を閉じて燃料室27への燃料の循環を停止する。 S14:形状記憶素子6への通電を開始する。 S15:燃料温度Tを予熱判定温度Tbと比較する。T≧TbのときはS16にて形状記憶素子6への通電を終了し、S11に戻る。T<Tbのときは通電を継続する。 S17:バルブ25を開き、燃料室27への燃料の循環を再開させる。 【0036】図6〜図8に本発明の第2の実施形態を示す。適用する燃料噴射弁の構造は図1と同様である。ただし、この実施形態では、図6または図7に示したように、形状記憶素子6の温度がTd、ピストン9の変位量がLxに達した状態では燃料は噴射されず、ばね3の荷重等により針弁2に設定した特性に基づいてそのとき以上の噴射圧力となったときに燃料を噴射する設定となっている。ここでは、形状記憶素子6の温度がTd以上であって噴射圧力に達する以前の所定の温度Te(図7参照)となったときに通電を中止する。形状記憶素子の変位特性には若干のヒステリシスがあるので、通電終了後しばらくしてから素子の冷却により変位は小さくなり圧力は低下をはじめる。ピークとなる圧力は噴射圧力に対して低いので燃料噴射は行なわれない。このようにして燃料圧力が噴射圧力付近に達するがすぐに変位が小さくなるように制御するのであり、これにより噴射までの応答期間を実質的にゼロに近づけることができる。 【0037】図8はこのような制御の内容を表す流れ図である。処理内容としては予熱開始後の燃料温度の判定基準が異なる点(S25)を除いて図5と同様である。 S21:燃料室27の燃料温度Tを検出する。 S22:検出した燃料温度Tを開始判定温度Taと比較する。T≧Taのときは予熱は不要であるのでS27以下の終了処理に移行する。T<TaのときはS23以下の予熱処理に移行する。 S23:電磁バルブ25を閉じて燃料室27への燃料の循環を停止する。 S24:形状記憶素子6への通電を開始する。 S25:燃料温度Tを予熱判定温度Teと比較する。T≧TeのときはS26にて形状記憶素子6への通電を終了し、S21に戻る。T<Teのときは通電を継続する。 S27:バルブ25を開き、燃料室27への燃料の循環を再開させる。 【0038】図9には予熱制御に関する第3の実施形態の制御内容を示す。この実施形態では暖機完了前の負荷運転に対応するために、予熱の過程で燃料噴射を行うようにしたものである。この処理では機関回転数を入力条件とし、形状記憶素子6の駆動周波数を整数倍iに設定する。最初にj=1としておき、サイクル毎にjに1ずつ足してゆき、j=iとなった条件にて燃料を噴射するまで通電を行い、それ以外では噴射しないように、つまり既述の実施形態のように予熱のみを行なう。燃料温度がTaに達したら、本予熱制御を解除し、通常の燃料噴射制御に移行する。なお、通常の燃料噴射制御においても、バルブ25を用いて燃料入口4および燃料出口5の流量を制御することにより、形状記憶素子6内の温度TをTaになるように制御するようにしてもよく、その場合、噴射する周波数の割に燃料噴射量が多いとき、つまり高回転高負荷時には燃料の温度は冷えてゆくので、この予熱制御を用いて燃料温度TをTaに維持することができる。 S301:機関回転数を検出し、噴射周波数nを算出する。 S302:形状記憶素子6への予熱通電の周波数を、噴射周波数nに所定の整数mを乗じて整数倍iに設定する。 S303:噴射判定カウンタ値jを1に初期化する。 S304:カウンタ値jがiに達したか否か判定する。j=iとなったときはS305にて燃料噴射を行い、S33に戻りカウンタ値jを初期化する。 S306:燃料室27の燃料温度Tを検出する。 S307:検出した燃料温度Tを開始判定温度Taと比較する。T≧Taのときは予熱は不要であるのでS313以下の終了処理に移行する。T<TaのときはS38以下の予熱処理に移行する。 S308:電磁バルブ25を閉じて燃料室27への燃料の循環を停止する。 S309:形状記憶素子6への予熱通電を開始する。 S310:燃料温度Tを予熱判定温度Teと比較する。T≧TeのときはS311にて形状記憶素子6への通電を終了する。T<Teのときは通電を継続する。ここでの予熱判定温度Teの意味は第2の実施形態(図8)と同様である。 S312:カウンタ値に1を加算し、S34に戻る。 S313:バルブ25を開き、燃料室27への燃料の循環を再開させる。 【0039】図10〜図13には本発明の第4の実施形態を示す。図10〜図12はこの実施形態に適用する燃料噴射弁の要部構造、図13はその予熱制御の内容を表す流れ図である。図10〜図12において図示しない部分の構成は図1と同様である。 【0040】この実施形態では燃料供給通路14を途中で分岐し、ピストン9が最大に変位してもピストン9によっては閉塞されない位置に第2の燃料供給孔16を開口させている。また、この燃料供給孔16と重複しうる位置に、前記第2燃料供給孔16の開閉手段として、連通孔22を開口させた環状の弁体20を圧縮室26の内面に対して摺動自由に設けると共に、この弁体20をばね19を介して非通電時(図10の状態)には前記第2の燃料供給孔16と連通孔22とが連通する位置に付勢している。ばね19の背面に介装した固定リング18と弁体20との間には、図12にも示したように、弁体駆動用の形状記憶素子17が設けられている。形状記憶素子17は、その電極23、24を介して通電加熱する収縮し、これにより弁体20を針弁2方向に若干量移動させ、そのとき燃料供給孔16は弁体20の外周面にて閉塞される(図11の状態)。なお、図において21は燃料供給孔16と連通孔22との間のシールを図るためのOリングである。 【0041】本実施形態の燃料噴射弁では、第2の燃料供給孔16が閉ざされている状態ではピストン9が第1のの燃料供給孔14bを閉ざす位置よりも変位したときに圧力室26の圧力が上昇して噴射が行われる。これに対して、第2の燃料供給孔16が開いている状態では、ピストン9が最大限に変位しても圧力室26の燃料は燃料供給通路14を介して燃料室27へと移動することから、圧力室26の圧力は上昇せず噴射は行われない。そこで、図13に示した予熱制御では、低温時には第2燃料供給孔16を開いた状態で形状記憶素子6に充分に電流を供給し、これにより燃料温度を速やかに上昇させ、予熱完了の後に第2の形状記憶素子17に電流を供給して第2燃料供給孔16を閉ざすことにより燃料噴射をできるようにしている。ただし予熱のために形状記憶素子6に連続的に大きな電流を供給すると素子が破損するおそれがあるため、周期的な通電により冷却のための時間を設けるようにしている。 【0042】なお、弁体20またはその駆動手段としては他の形式のものを採用することもできるが、この実施形態のように第2の燃料供給孔16の開閉を形状記憶素子17により行う構成とすることによりその制御を第1の形状記憶素子6と共通のコントローラで行うことができ、それだけ構成の単純化と低コスト化を図ることができる。 S41:燃料室27の燃料温度Tを検出する。 S42:検出した燃料温度Tを開始判定温度Taと比較する。T≧Taのときは予熱は不要であるのでS47以下の終了処理に移行する。T<TaのときはS43以下の予熱処理に移行する。 S43:電磁バルブ25を閉じて燃料室27への燃料の循環を停止する。 S44:弁体20を開き位置に保持して第2の燃料供給孔16を開状態とする(形状記憶素子17には非通電)。 S45:形状記憶素子6にピストン9の最大変位に相当する電流を所定時間供給して加熱する。 S46:通電を終了し、形状記憶素子6に若干の冷却時間を与えた後S41に戻る。 S47:第2の形状記憶素子17に通電して弁体20を閉じ位置に変位させ、第2の燃料供給孔16を閉ざす。 S48:バルブ25を開き、燃料室27への燃料の循環を再開させる。 【0043】なお、この実施形態では、燃料噴射および予熱のための第1の形状記憶素子6と弁体20を駆動するための第2の形状記憶素子17として、それぞれ図14に示すように変態温度の異なる2つの形状記憶素子を適用することにより、燃料供給孔16の開閉制御を燃料温度に応じて自動的に制御することも可能である。すなわち形状記憶素子6に図中SMA1の特性を有するものと適用し、これに対して形状記憶素子17には変態点の低いSMA2を適用することにより、燃料温度がTaに達した後に自動的に弁体20を閉じ位置に駆動して燃料噴射を可能とする制御を行うことができる。 【0044】図15に本発明の予熱制御に関する第5の実施形態を示す。これは前記第4の実施形態による予熱制御の間に、第3の実施形態と同様に燃料噴射を行いうるようにしたものである。 S501:機関回転数を検出し、噴射周波数nを算出する。 S502:形状記憶素子6への予熱通電の周波数を、噴射周波数nに所定の整数mを乗じて整数倍iに設定する。 S503:噴射判定カウンタ値jを1に初期化する。 S504:カウンタ値jがiに達したか否か判定する。j=iとなったときはS505にて第2燃料供給孔16を閉じ、形状記憶素子6に噴射用の信号電流を供給して燃料噴射を行い、S503に戻りカウンタ値jを初期化する。 S506:燃料室27の燃料温度Tを検出する。 S507:検出した燃料温度Tを開始判定温度Taと比較する。T≧Taのときは予熱は不要であるのでS43以下の終了処理に移行する。T<TaのときはS38以下の予熱処理に移行する。 S508:電磁バルブ25を閉じて燃料室27への燃料の循環を停止する。 S509:弁体20を開き位置に保持して第2の燃料供給孔16を開状態とする(形状記憶素子17には非通電)。 S510:形状記憶素子6にピストン9の最大変位に相当する電流を所定時間供給して加熱する。 S511:通電を終了し、形状記憶素子6に若干の冷却時間を与える。 S512:カウンタ値に1を加算し、S504に戻る。 S513:第2の形状記憶素子17に通電して弁体20を閉じ位置に変位させ、第2の燃料供給孔16を閉ざす。 S514:バルブ25を開き、燃料室27への燃料の循環を再開させる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月16日(2000.6.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075513 【弁理士】 【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−355537(P2001−355537A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−181266(P2000−181266) |
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