| 【発明の名称】 |
燃料噴射弁 |
| 【発明者】 |
【氏名】猪頭 敏彦
【氏名】松本 修一
【氏名】楢原 義広
【氏名】近藤 利雄
【氏名】黒柳 正利
|
| 【要約】 |
【課題】燃料噴射弁のノズルニードルを作動させる制御室の油圧降下速度を遅くし、上昇速度を速くして、ノズルニードルの緩やかな開弁と、迅速な閉弁を両立させる。
【解決手段】噴孔13を開閉するノズルニードル2に閉弁力を与える制御室3を、ドレーン通路17または高圧通路15に選択的に導通させる3方弁4を設け、3方弁4の弁室42と制御室3を、メインオリフィス61を介して連通させる一方、高圧通路15と制御室3を、3方弁4を介さずに常時連通させるサブオリフィス62を設ける。ピエゾアクチュエータ5で弁体41を駆動させると、サブオリフィス62から流入する高圧燃料によって、制御室3の油圧は、開弁時には緩やかに降下し、閉弁時には速やかに高圧となって、ノズルニードル2のリフト特性が改善される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 噴孔を開閉するノズルニードルに閉弁方向の圧力を与える制御室と、弁体のシート位置に応じて上記制御室を低圧通路または高圧通路に選択的に導通させて上記制御室の圧力を増減する3方弁を備え、上記3方弁によって上記制御室の圧力を減ずることにより上記ノズルニードルを開弁させる燃料噴射弁において、上記3方弁が、上記弁体が配設される弁室に、上記低圧通路および上記高圧通路にそれぞれ連通し上記弁体にて開閉される低圧ポートおよび高圧ポートを設けてなり、上記弁室と上記制御室とをメインオリフィスを介して連通させる一方、上記制御室と上記高圧通路とを上記3方弁を介さずに常時連通させるサブオリフィスを設けたことを特徴とする燃料噴射弁。 【請求項2】 上記サブオリフィスの径と上記メインオリフィスの径の比(サブオリフィス径/メインオリフィス径)を0.6〜1.2の範囲とした請求項1記載の燃料噴射弁。 【請求項3】 上記ノズルニードルを閉弁方向に付勢するスプリングを収容し上記高圧通路から高圧が導入されるスプリング室内に、上記ノズルニードルのヘッド部を配置して、該ヘッド部内に上記制御室を設け、上記制御室と上記3方弁を上記スプリング室を介さずに連通させる連通路を設けて、この連連路に上記メインオリフィスを形成するとともに、上記制御室と上記スプリング室を上記ヘッド部内に形成した上記サブオリフィスを介して連通させた請求項1または2記載の燃料噴射弁。 【請求項4】 上記ノズルニードルの上端部を上記制御室内に配置して、上記ノズルニードルの上端面に対向する上記制御室内壁に上記ノズルニードルのリフト量を規制するノズルニードルストッパを設けた請求項1または2記載の燃料噴射弁。 【請求項5】 上記ノズルニードルストッパのストッパ面に、上記弁室と上記制御室とを連通し途中に上記メインオリフィスを有する通路を開口させた請求項4記載の燃料噴射弁。 【請求項6】 上記通路の上記制御室への開口端部に上記メインオリフィスを形成した請求項5記載の燃料噴射弁。 【請求項7】 上記制御室と上記3方弁の弁室の間に、上記メインオリフィスが形成されるブロック状の流路形成部材を配置し、該流路形成部材を貫通して上記高圧通路を設けるとともに、上記サブオリフィスを含む流路および上記3方弁の高圧ポートを含む流路を設けて、上記流路形成部材内でこれら流路と上記高圧通路を連通路を介してそれぞれ接続し、かつ、これら流路と上記連通路および上記高圧通路と上記連通路とのなす角度をいずれも略直角ないしそれ以上の角度とした請求項1または2記載の燃料噴射弁。 【請求項8】 上記連通路が、上記流路形成部材の端面に形成した溝、または上記流路形成部材内に水平方向に形成した孔からなる請求項7記載の燃料噴射弁。 【請求項9】 上記流路形成部材の対向する端面にそれぞれ溝を形成して、その一方を、上記サブオリフィスを含む流路と上記高圧通路とを接続する連通路となすとともに、他方を、上記3方弁の高圧ポートを含む流路と上記高圧通路とを接続する連通路となし、かつこれら2つの連通路を上記高圧通路を挟んで互いに反対方向へ延びるように形成する請求項8記載の燃料噴射弁。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のコモンレール燃料噴射システム等に好適に使用される燃料噴射弁に関する。 【0002】 【従来の技術】内燃機関に燃料を噴射するシステムに、高圧供給ポンプから圧送される高圧燃料をコモンレールに蓄圧し、所定のタイミングで各気筒に噴射するコモンレール燃料噴射システムがあり、噴射時期や噴射量の制御性に優れる利点がある。コモンレール燃料噴射システムの燃料噴射弁としては、例えば、米国特許第5819710号等に開示されるように、噴孔を開閉するノズルニードルの閉弁力を制御室の油圧によって与え、該制御室の油圧を3方弁によって制御する燃料噴射弁が知られている。油圧制御用の3方弁は、ピエゾアクチュエータによって駆動される弁体を有し、該弁体のシート位置に応じて制御室が低圧通路または高圧通路に選択的に導通する。弁体を駆動して低圧通路を開放し高圧通路を閉鎖すると、制御室と低圧通路が導通することによって制御室の油圧が低下し、ノズルニードルが開弁して燃料が噴射される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の燃料噴射弁は、通常、3方弁と制御室との間にオリフィスを設けて、このオリフィスによって、ノズルニードルの開弁速度、閉弁速度を調整している。しかしながら、開弁時および閉弁時に同一のオリフィスを介して燃料が流通するため、制御室の油圧の降下速度と上昇速度を独立に制御することができない。すなわち、燃料噴射弁の噴射特性は、制御室の油圧の降下速度を小さくしてノズルニードルを緩やかに開弁し、かつ油圧の上昇速度を大きくして閉弁を迅速に行うのがよいが、上記従来の燃料噴射弁では、オリフィスを大きくすれば、油圧の降下時、上昇時のいずれの速度も大きくなり、逆に、オリフィスを小さくすれば、油圧の降下時、上昇時のいずれの速度も小さくなる。このため、緩やかな開弁と、迅速な閉弁という両方の要求に応えることのできる燃料噴射弁が望まれている。 【0004】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、制御室圧力の降下速度を小さくし、かつ上昇速度を大きくして、ノズルニードルの緩やかな開弁と、迅速な閉弁の両方を実現できる燃料噴射弁を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の燃料噴射弁は、噴孔を開閉するノズルニードルに閉弁方向の圧力を与える制御室と、弁体のシート位置に応じて上記制御室を低圧通路または高圧通路に選択的に導通させて上記制御室の圧力を増減する3方弁を備えており、上記3方弁によって上記制御室の圧力を減ずると、上記ノズルニードルが開弁する。そして、上記3方弁を、上記弁体が配設される弁室に、上記低圧通路および上記高圧通路にそれぞれ連通する低圧ポートおよび高圧ポートを設けて、これらポートを上記弁体によって開閉する構成とし、上記弁室を、上記制御室とメインオリフィスを介して連通させるとともに、上記制御室を、上記高圧通路と上記3方弁を介さずに常時連通させるサブオリフィスを設けている。 【0006】開弁時、上記弁体を駆動して上記弁室の低圧ポートを開放し高圧ポートを閉鎖すると、上記弁室の圧力が低下し、これと上記メインオリフィスを介して連通する上記制御室内の圧力も低下する。ここで、本発明では、上記制御室を上記サブオリフィスを介して上記高圧通路と連通させ、上記制御室に常時高圧が導入されるようにしたので、上記制御室の圧力降下速度は小さくなり、上記ノズルニードルの開弁が緩やかになされる。一方、閉弁時に、上記弁体を駆動して上記弁室の高圧ポートを開放し低圧ポートを閉鎖すると、上記弁室および上記メインオリフィスを介して上記制御室内に高圧が導入される。同時に、上記制御室内には、上記サブオリフィスを介して上記高圧通路から直接高圧が導入されるので、これら両オリフィスの作用で、上記制御室内の圧力上昇速度が大きくなり、上記ノズルニードルを直ちに閉弁させる。従って、ノズルニードルの緩やかな開弁と迅速な閉弁の両方を実現して、燃料噴射特性を大きく改善することができる。 【0007】請求項2の構成では、上記サブオリフィスの径と上記メインオリフィスの径の比(サブオリフィス径/メインオリフィス径)を0.6〜1.2の範囲とする。 【0008】上記メインオリフィスの径に対して上記サブオリフィスの径が小さいと、閉弁時の上記制御室の圧力上昇速度が十分大きくならず、また、上記サブオリフィスの径が大きいと、上記ノズルニードルの最小開弁圧が高くなってしまう。これらの両方を満足させるには、(サブオリフィス径/メインオリフィス径)を0.6〜1.2の範囲とするのがよく、シャープな閉弁特性と、低い最小開弁圧を両立させることができる。 【0009】請求項3の構成では、上記ノズルニードルを閉弁方向に付勢するスプリング部材を収容し上記高圧通路から高圧が導入されるスプリング室内に、上記ノズルニードルのヘッド部を配置して、該ヘッド部内に上記制御室を設ける。そして、上記制御室と上記3方弁を上記スプリング室を介さずに連通させる連通路を設けて、この連通路に上記メインオリフィスを形成するとともに、上記制御室と上記スプリング室を上記ヘッド部内に形成した上記サブオリフィスを介して連通させる。 【0010】この構成では、上記制御室を上記ノズルニードルのヘッド部に内蔵しており、上記制御室が小さくできるので制御性がよい。また、上記連通路は、例えば、上記ヘッド部と上記3方弁を管状部材で連結することによって容易に形成され、、上記メインオリフィスの形成も容易である。さらに、上記サブオリフィスを上記ヘッド部内に形成したので構成が簡単で、加工が容易である。 【0011】請求項4の構成では、上記ノズルニードルの上端部を上記制御室内に配置して、上記ノズルニードルの上端面に対向する上記制御室内壁に上記ノズルニードルのリフト量を規制するノズルニードルストッパを設ける。 【0012】上記構成において、開弁時、上記ノズルニードルがリフトして上記ノズルニードルストッパに当接すると、それ以上のリフトが規制される。上記ノズルニードルストッパがない構成では、リフト量が必要以上に大きくなって、閉弁時に上記ノズルニードルの移動量が大きくなり、閉弁に時間がかかるおそれがあるが、上記ノズルニードルストッパを設けることで、これを防止し、閉弁応答性を向上させることが可能となる。 【0013】請求項5では、上記請求項4の構成に加えて、上記ノズルニードルストッパのストッパ面に、上記弁室と上記制御室とを連通し途中に上記メインオリフィスを有する通路を開口させる。 【0014】上記構成では、上記ノズルニードルが上記ストッパ面に当接した時に、上記通路が上記ノズルニードルの上端面によって閉鎖される。すなわち、閉弁時に、上記3方弁を経て上記通路へ流入する高圧燃料の圧力が、上記ノズルニードルの上端面に加わることになり、この圧力によって、当接面間に油圧が回り込まなくても、上記ノズルニードルの閉弁動作を遅延なく開始することができる。 【0015】請求項6では、上記請求項5の構成において、上記弁室と上記制御室を連通する上記通路の上記制御室への開口端部に、上記メインオリフィスを形成する。 【0016】閉弁応答性を向上させるには、上記ノズルニードルと上記ノズルニードルストッパの接触面積が小さい方がよい。上記メインオリフィスを上記制御室への開口端部に形成すると、上記ノズルニードルストッパの大きさを小さくできるので、上記ノズルニードルと当接する上記ストッパ面を小さくしやすく、接触面積を小さくすることができる。 【0017】請求項7の構成では、上記制御室と上記3方弁の弁室の間に、上記メインオリフィスが形成されるブロック状の流路形成部材を配置し、該流路形成部材を貫通して上記高圧通路を設ける。また、上記サブオリフィスを含む流路および上記3方弁の高圧ポートを含む流路を設けて、上記流路形成部材内でこれら流路と上記高圧通路を連通路を介してそれぞれ接続し、かつ、これら流路と上記連通路および上記高圧通路と上記連通路とのなす角度をいずれも略直角ないしそれ以上の角度とする。 【0018】上記サブオリフィスを含む流路、上記3方弁の高圧ポートを含む流路を、上記流路形成部材に設けた連通路を介して上記高圧通路に接続すると、各流路の接続部を略直角ないしそれ以上の角度となるように構成することができる。これにより、各流路の接続部に鋭角な部位が生じて高圧燃料の圧力で破損するといった不具合を防止することができる。しかも、これら流路を、上記メインオリフィスが形成される単一の流路形成部材内に形成したので、部品点数が増加することがなくコストの増加を防止することができる。 【0019】具体的には、請求項8のように、上記連通路を、上記流路形成部材の端面に形成した溝、または上記流路形成部材内に水平方向に形成した孔で構成すると、各流路を略直角以上の角度で接続できる。 【0020】請求項9の構成では、上記流路形成部材の対向する端面にそれぞれ溝を形成して、その一方を、上記サブオリフィスを含む流路と上記高圧通路とを接続する連通路とし、他方を、上記3方弁の高圧ポートを含む流路と上記高圧通路とを接続する連通路とする。この時、この2つの連通路を上記高圧通路を挟んで互いに反対方向へ延びるように形成すると、上記サブオリフィスを含む流路と上記3方弁の高圧ポートを含む流路の形成が容易になり、互いに干渉することなく、かつ上記角度条件を満足するように形成できる。 【0021】 【発明の実施の形態】図1に、本発明の一実施の形態における燃料噴射弁1の概略構成を示す。燃料噴射弁1は、例えばコモンレール燃料噴射システムにおいて、コモンレールに蓄圧された高圧燃料をエンジンの各気筒に噴射するために用いられる。図1において、バルブハウジング11は、下端部内にシリンダ12を設けてノズルニードル2を摺動自在に収容しており、ノズルニードル2は先端部がバルブハウジング11先端部の噴孔13に当接してこれを閉鎖している。 【0022】シリンダ12上端部には、ノズルニードル2に閉弁方向の圧力を与える制御室3が形成してあり、該制御室3内の油圧が増減するのに伴ってノズルニードル2がシリンダ12内を上下動するようになしてある。また、制御室3内にはノズルニードル2を閉弁方向に付勢するスプリング14が配設されている。ノズルニードル2は、下半部をやや小径としてシリンダ12との間に環状空間を形成し、この環状空間を高圧通路15に連通する燃料溜まり16となしている。 【0023】バルブハウジング11の中間部内には、制御室3内の圧力を増減する3方弁4が設けられている。3方弁4は、上端部に低圧ポートとしてのドレーンポート43を、下端部に高圧ポート44を有する弁室42と、弁室42内に配設されてドレーンポート43または高圧ポート44を開閉するボール状の弁体41を有している。ドレーンポート43は低圧通路たるドレーン通路17を介して図示しないシステムの低圧部に連通し、高圧ポート44は高圧通路15を介して外部の高圧燃料源(例えばコモンレール)に連通している。 【0024】弁体41は、バルブハウジング11の上端部内に収容されるピエゾアクチュエータ5によって駆動される。ピエゾアクチュエータ5は電圧の印加により伸縮する圧電体51と、その下端面に当接してシリンダ54内を摺動するピエゾピストン52を備え、ピエゾピストン52の下端面中央部から下方に延びるロッド53が、高圧ポート44内を通過して弁体41に当接している。そして、圧電体51の伸縮に伴ってピエゾピストン52が上下動すると、これと一体のロッド53が上下動し、これに伴い、弁体41が、ドレーンポート43に至るテーパ状のシート面43aまたは高圧ポート44に至るテーパ状のシート面44aに当接して、これらポート43、44を選択的に閉鎖する。なお、ピエゾピストン52下方のシリンダ54内には、皿バネ55が配設されて、ピエゾピストン52を介して圧電体51を上方(収縮方向)に付勢している。また、圧電体51の上端面には、電圧印加用のリード線56が接続されている。 【0025】制御室3の上端面と弁室42の側部の間には、メインオリフィス61が設けられ、このメインオリフィス61によって、制御室3は弁室42と常時連通している。すなわち、制御室3は、弁体41のシート位置に応じて、ドレーン通路17または高圧通路15に選択的に導通し、ノズルニードル2に作用する油圧力を増減する。 【0026】一方、制御室3は、側面に開口するサブオリフィス62によって、高圧通路15と常時連通しており、高圧通路15から継続的に高圧燃料を導入するようになしてある。本発明では、このサブオリフィス62の作用で、ノズルニードル2に加わる制御室3の油圧の降下速度を小さくし、上昇速度を大きくすることができる。好ましくは、サブオリフィス62の径をメインオリフィス61の径と同程度ないしそれ以下に設定するのがよく、これについては後述する。 【0027】上記構成の燃料噴射弁の作動を図2のタイムチャートを用いて説明する。図1に示す状態では、3方弁4の弁体41が上方のシート面43aに当接してドレーンポート43を閉鎖し、高圧ポート44を開放している。制御室3は、メインオリフィス61およびサブオリフィス62を介して高圧通路15と導通しており、ノズルニードル2は、制御室3内の油圧力とスプリング14の付勢力を受けて、噴孔13を閉鎖している。 【0028】この状態から、ノズルニードル2を開弁させる時には、ピエゾアクチュエータ5の圧電体51にリード線56を介して電圧を印加し(図2のa点)、圧電体51を皿バネ55のバネ力に抗して伸長させる。すると、ピエゾピストン52のロッド53が、ドレーンポート43に至る上方のシート面43aに当接していた弁体41を押し下げてドレーンポート43を開放し、次いで、弁体41を下方のシート面44aに当接させて高圧ポート44を閉鎖する。これにより、制御室3が低圧通路17に導通し、メインオリフィス61および弁室42を経て燃料が流出することにより、制御室3の油圧が降下する。 【0029】ここで、本発明では、制御室3がサブオリフィス62を介して高圧通路15と常に導通しているため、サブオリフィス62から流入する高圧燃料によって、図示するように、制御室3の油圧降下は緩やかになる。そして、ノズルニードル2に上向きに作用する燃料溜まり16の油圧力が、ノズルニードル2に下向きに作用する制御室3の油圧力とスプリング14の付勢力の総和を上回ると、ノズルニードル2がリフトを開始するが、このリフト量の変化も緩やかになり、初期噴射率が低くできる。 【0030】次に、ノズルニードル2を閉弁させる時には、ピエゾアクチュエータ5の圧電体51に印加する電圧を低下させる(図2のb点)。これに伴い、圧電体51が収縮して、ピエゾピストン52が皿バネ55のバネ力によって上昇し、弁体41に高圧ポート44の上向きの油圧力が作用する。そして、弁体41が下方のシート面44aから離れて高圧ポート44を開放し、さらに、上方のシート面43aに当接してドレーンポート43を閉鎖する。これにより、制御室3が弁室42を介して高圧通路15に導通し、メインオリフィス61を経て流入する高圧燃料により、制御室3内の油圧が上昇する。 【0031】本発明では、制御室3がサブオリフィス62を介して高圧通路15と常に導通しているため、制御室3には、メインオリフィス61とサブオリフィス62の両方から高圧燃料が流入することになる。従って、図示するように、制御室3の油圧が急上昇し、制御室3の油圧力とスプリング14の付勢力の総和が燃料溜まり16の油圧力を上回るとノズルニードル2が急降下する。これにより、ノズルニードル2を速やかに閉弁させて、燃料噴射を停止することができる。 【0032】図3に開弁、閉弁時のサブオリフィス62の効果を示す。メインオリフィス61のみでサブオリフィス62を設けない場合、メインオリフィス61径と、制御室3の油圧の降下速度および上昇速度の関係は、図3(a)のようになる。この場合、油圧の降下速度と上昇速度は同じで、開弁速度すなわち降下速度を遅くするためにメインオリフィス61径を小さくすると、閉弁速度すなわち上昇速度が目標値を下回り、逆に、上昇速度を速くするためにメインオリフィス61径を大きくすると、降下速度が目標値より大きくなってしまう。 【0033】これに対し、サブオリフィス62を設けた場合には、図3(b)のように、油圧の降下速度曲線が図の右方にシフトし、上昇速度曲線は図の左方にシフトする。従って、サブオリフィス62がない場合に比べて、油圧降下速度は遅く、油圧上昇速度は速くなり、例えば、メインオリフィス61径Rにおいて、油圧降下速度はA、油圧上昇速度はBとそれぞれ目標範囲内となり、同一のメインオリフィス61径で両方の目標値を満足させることができる。 【0034】次に、サブオリフィス62径とメインオリフィス61径の比について検討する。図4(a)のように、メインオリフィス61径に対しサブオリフィス62径が大きくなると、最小開弁圧が高くなり、ノズルニードル2をリフトさせるために高圧が必要となる。一般的な構成の燃料噴射弁において、望ましい最小開弁圧(目標値)は、例えば、20MPa以下であり、これを越えないようにするには、(サブオリフィス62径/メインオリフィス61径)を1.2以下とするのがよい。一方、サブオリフィス62径が小さくなると、図4(b)のように、閉弁時の噴射率の降下速度が小さくなり、閉弁を迅速に行うことができなくなる。所望の閉弁速度を得るための噴射率の降下速度(目標値)は、例えば、1000mm3 /ms2 以上であり、これを満足させるのは、(サブオリフィス62径/メインオリフィス61径)を0.6以上とするのがよい。 【0035】図5に本発明の第2の実施の形態を示す。上記第1の実施の形態では、ノズルニードル2の上方に設けた制御室3がスプリング14を収容するスプリング室を兼ねているが、本実施の形態では、制御室3をノズルニードル2の内部にスプリング室18と独立に設けている。すなわち、バルブハウジング11内には、ノズルニードル2が摺動するシリンダ12の上方に、これより大径のスプリング室18が設けられ、ここにノズルニードル2の大径のヘッド部21を配設して、このヘッド部21内に小容量の制御室3を設けている。ヘッド部21上方のスプリング室18内には、スプリング14が配設されてノズルニードル2を下方に付勢しており、また、スプリング室18の上面には高圧通路15が接続されて、3方弁4を介さずに高圧燃料が導入されるようにしてある。 【0036】制御室3は、ノズルニードル2の上方に同軸的に延びる連通管71によって、3方弁4と連通している。連通管71は、一端が、3方弁4の弁室42側部に設けたポート73に接続しており、他端は、ヘッド部21内に形成されるメインオリフィス61を介して制御室3の上面に接続している。メインオリフィス61は、連通管71内径より小径としてあり、制御室3上に設置されるリング状部材によって形成される。このメインオリフィス61と連通管71内の通路とで制御室3と3方弁4を連通する連通路を構成している。 【0037】ノズルニードル2のヘッド部21には、また、制御室3の側面に開口するサブオリフィス62とこれに続く通路72が形成してある。通路72の他端はスプリング室18に開口し、従って、通路72およびサブオリフィス62および通路72を介して、制御室3と高圧燃料が導入されるスプリング室18とが常に導通している。スプリング室18と燃料溜まり16とは、ノズルニードル2の摺動部とシリンダ12の間の微小間隙を介して連通しており、高圧通路15内の高圧燃料は、スプリング室18からノズルニードル2周りの微小間隙を経て燃料溜まり16に供給される。3方弁4やピエゾアクチュエータ5、その他の構成は、上記第1の実施の形態と同様である。 【0038】本実施の形態の構成によっても、サブオリフィス62を設けることにより、制御室3の油圧の降下速度を遅くして、ノズルニードル2を緩やかに開弁させ、かつ上昇速度を速くして、ノズルニードル2を直ちに閉弁させる、同様の効果が得られる。また、上記第1の実施の形態では、制御室3がスプリング室を兼ねるため、制御室3をスプリング14を配設可能な大きさとする必要があるが、スプリング室18と独立に設けた上記構成では、制御室3が小さくできるので制御性が向上する。また、ノズルニードル2のヘッド部21内にメインオリフィス61、サブオリフィス62を形成したことにより、これらオリフィスの加工が容易になる。さらに、スプリング室18が燃料溜まり16への燃料供給路の一部をなしており、噴孔13の近傍に燃料を蓄圧するアキュムレータとしての機能を有するスプリング室18を有することにより、噴射燃料の圧力降下を小さくできる等の効果がある。 【0039】図6に本発明の第3の実施の形態を示す。本実施の形態では、ノズルニードル2の閉弁応答性を向上させるため、ノズルニードル2のリフト量を規制するためのノズルリフトストッパ8を設ける。すなわち、図6において、バルブハウジング11内には、制御室3と3方弁4の間に流路形成部材81、82が配設され、制御室3は、これら流路形成部材81、82内に形成したメインオリフィス流路74、サブオリフィス流路75を介して、3方弁4または高圧流路15と連通している。制御室3と3方弁4を連通するメインオリフィス流路74は、3方弁4の弁室42への開口端部を小径としてメインオリフィス61となしており、一方、制御室3と高圧流路15を連通するサブオリフィス流路75は、高圧流路15から3方弁4へ至る分岐路15aへの開口端部に小径のサブオリフィス62を有している。また、分岐路15aから上方に延びる流路76が高圧ポート44に接続している。 【0040】ノズルリフトストッパ8は、制御室3の上端面を構成する流路形成部材82の下端面中央に設けられ、ノズルニードル2の上端面に対向位置してそのリフト量を所定以下に規制している。図は、制御室3の圧力が低下し、ノズルニードル2フルリフトしてノズルリフトストッパ8のストッパ面(下端面)に当接した状態を示している。ノズルリフトストッパ8外周には、スプリング14の上端を支持するリング状凹部が設けられ、このリング状凹部に、メインオリフィス流路74、サブオリフィス流路75の下端が開口している。その他の構成は上記第1の実施の形態と同様である。 【0041】ノズルリフトストッパのない上記第1の実施の形態の構成では、3方弁4の駆動時間を長くした場合、噴孔13が開放されて所定の噴射率に達してからも燃料溜まり16の油圧力でノズルニードル2が上昇を続ける。このため、3方弁4の駆動をオフしてノズルニードル2が下降を開始して閉弁するまでに時間がかかってしまい、閉弁応答性に影響する。これに対し、ノズルリフトストッパ8を設けた本実施の形態の構成では、ノズルニードル2の上端面がノズルリフトストッパ8のストッパ面に当接すると、それ以上のリフトが規制されるので、閉弁時の移動量が小さくなり、閉弁応答性が向上する効果がある。 【0042】ただし、この構成では、開弁時、ノズルニードル2がノズルリフトストッパ8に押圧されるので、両者の接触面積が小さすぎると、面圧が大きくなってこれら部材が塑性変形を起こすおそれがある。一方、これを避けるために接触面積を大きくすると、閉弁時、メインオリフィス流路74、サブオリフィス流路75から制御室3に高圧燃料が流入しても、両者の間に高圧燃料が回り込むのに時間がかかり、ノズルニードル2の閉弁動作の開始が遅くなる。そこで、面圧が部材に塑性変形が生じるレベル以下で、かつノズルニードル2の閉弁動作に支障が生じないように接触面積を設定することが望ましい。 【0043】図7に本発明の第4の実施の形態を示す。ノズルリフトストッパ8を設けた上記第3の実施の形態の構成において、設計の自由度をより大きくするため、本実施の形態では、制御室3と3方弁4を連通するメインオリフィス流路74を、ノズルリフトストッパ8内に形成する。すなわち、メインオリフィス流路74を制御室3の外周部に接続する代わりに、ノズルリフトストッパ8内を経てその下端面(ストッパ面)中央に開口させ、さらに、メインオリフィス61を3方弁4側の端部でなく、制御室3への開口端部に形成する。また、ノズルリフトストッパ8を、下方へ向けて縮径するテーパ状に形成して、ストッパ面となる下端面の外径dが、これに当接するノズルニードル2の上端面の径よりも小さくなるようにする。 【0044】本実施の形態において、開弁時、ノズルニードル2の上端面がノズルリフトストッパ8に当接すると、ストッパ面に開口するメインオリフィス61が閉鎖される。次いで、閉弁時、3方弁4からメインオリフィス流路74に高圧燃料が流入すると、この圧力が、メインオリフィス61に面するノズルニードル2の上端面中央部(メインオリフィス61径aに対応する部分)に作用し、また、ストッパ面より外側のノズルニードル2の上端面外周部(ストッパ面の外径bより外側の部分)には、サブオリフィス62から制御室3に流入する高圧燃料の圧力が作用する。よって、これらの油圧力により、接触面に油圧が回り込まなくても、ノズルニードル2を容易に閉弁動作させることができる。 【0045】この構成を採用する場合には、ノズルリフトストッパ8のストッパ面とノズルニードル2の上端面の面積の設定が重要となる。上記第3の実施の形態の構成では、ノズルニードル2がリフトストッパ8に当接した時、メインオリフィス61とサブオリフィス62が連通しているため、制御室3の圧力は、これらオリフィス61、62の径によって決まる安定圧力:Ps(<Pc:コモンレール圧)に落ち着く。この時、ノズルニードル2の上端面には、この安定圧力Psが作用しており、面圧を低減させる効果がある。一方、本実施の形態の構成では、ノズルニードル2のフルリフト時、メインオリフィス61が閉鎖されるために、制御室3に面するノズルニードル2の上端面外周部には高圧(コモンレール圧:Pc)が作用し、ノズルニードル2の上端面中央部にはメインオリフィス流路74内の低圧(ドレーン圧)が作用する。 【0046】従って、ノズルリフトストッパ8に作用する力を低減するには、ストッパ面を小さくして、高圧が作用するノズルニードル2の上端面外周部の面積を大きくするのがよい。面圧を上記第3の実施の形態より低減するには、ノズルニードル2上端面の総面積Saと外周部の面積Sout の比、Sout /Saが、Ps/Pcよりも大きくなるようにする。本実施の形態では、小径のメインオリフィス61を制御室3への開口端部に設けているので、ノズルリフトストッパ8の径、すなわち、ストッパ面を小さくしやすく、面圧を低減する効果が得やすい。 【0047】ノズルニードル2とノズルリフトストッパ8の接触面積(ストッパ面の外径bとメインオリフィス61径aで決まるリング状の部分の面積)については、面圧を低減するには、できるだけ大きくする方がよいが、3方弁4の駆動をオフした時に、確実に遅れなくノズルニードル2の閉弁動作を開始させることが望ましく、この観点からは、接触面積が小さい方がよい。よって、必要な特性に応じて、ノズルニードル2、ノズルリフトストッパ8の形状や大きさを適宜設定すればよい。 【0048】また、上記第3の実施の形態の構成では、サブオリフィス62にて制御室3が高圧通路15と常時連通しているので、開弁時(3方弁4のドレーンポート43が開放されている)に、サブオリフィス62から制御室3、メインオリフィス流路74、メインオリフィス61を経由して高圧燃料がリークする不具合があるが、本実施の形態では、ノズルニードル2の上端面によってメインオリフィス流路74が閉鎖されるので、サブオリフィス62からメインオリフィス61側へ高圧燃料がリークすることがなくなる。 【0049】なお、本実施の形態では、メインオリフィス61を制御室3への開口端部に設けたが、必ずしもその必要はない。ただし、メインオリフィス61を、メインオリフィス流路74の他の部位に設けた場合には、制御室3への開口端部の径がメインオリフィス61径より小さくならないようにして、噴射特性(メインオリフィス61とサブオリフィス62で決まる)に影響しないようにする必要がある。 【0050】ところで、上記第3、4の実施の形態では、制御室3と3方弁4の間に、複数の流路形成部材81、82を配設している。これは、高圧流路15からサブオリフィス流路75を介してサブオリフィス62へ、あるいは流路76を介して高圧ポート44へそれぞれ高圧燃料を供給する際に、高圧のサブオリフィス流路75、76と高圧流路15との接続部に鋭角な部分が生じないようにするためである。この構成のように、複数の流路形成部材81、82の衝合部に高圧流路15と直交する分岐路15aを設けると、この分岐路15aにサブオリフィス流路75、76をいずれも直角以上の角度で接続することができ、鋭角部が高圧を受けて亀裂等を生じるのを防止できる。ただし、複数の流路形成部材81、82が必要であり、部品点数が増えて、コスト高となりやすい。そこで、図8に本発明の第5の実施の形態として、流路形成部材を複数用いずに同様の効果を得るための構成を示す。 【0051】図8(a)のように、本実施の形態の基本構成は、上記図6の第3の実施の形態と同じであり、複数の流路形成部材81、82に代えて、図8(b)、(c)に示す、円盤ブロック状の流路形成部材83を設けた点で異なっている。流路形成部材83は、上端面83aが3方弁4の弁室42の、下端面83bが制御室3の室壁を構成しており、これら弁室42と制御室3を連通するメインオリフィスメインオリフィス流路74が、流路形成部材83の略中央部からややずれた位置を上下方向に貫通して設けてある。メインオリフィス流路74の下端部は小径のメインオリフィス61としてある。流路形成部材83の外周部には、これを上下方向に貫通する大径の流路が設けられて、高圧流路15の一部をなしている。 【0052】流路形成部材83の上端面83a外周部には、短円弧状の座グリ溝84が設けられて、その一端側に高圧流路15が、他端側にサブオリフィス流路75が開口している。サブオリフィス流路75は、流路形成部材83の下端面83b略中央部へ向けて斜め下方に延び、制御室3に連通している。サブオリフィス流路75の下端開口端部には、小径のサブオリフィス62が形成してある。一方、流路形成部材83の下端面83b外周部には、短円弧状の座グリ溝85が設けられて、その一端側に高圧流路15が、他端側に流路76が開口している。流路76は、流路形成部材83の上端面略83a中央部へ向けて斜め上方に延び、流路形成部材83上端面に開口する高圧ポート44に接続している。座グリ溝84、85は、サブオリフィス流路75と高圧流路15、流路76と高圧流路15をそれぞれ連通する連通路となる。これら座グリ溝84、85は、高圧流路15の形成位置から互いに逆方向に延びており、サブオリフィス流路75と流路76が近接しないようになっている。なお、座グリ溝84、85は流路形成部材83の外周部に形成されるので、中央部の制御室3や弁室42の形成に支障はない。 【0053】上記構成によれば、サブオリフィス流路75と流路76をそれぞれ連通路となる座グリ溝84、85を介して高圧流路15を接続したので、これらサブオリフィス流路75、流路76、高圧流路15と座グリ溝84、85とのなす角度を、いずれも略直角ないしそれ以上の角度とすることができる。例えば、座グリ溝84、85を設けずにサブオリフィス流路75、流路76と高圧流路15を直接接続すると、接続部に高圧に弱い鋭角の部位が生じるが、上記構成では、座グリ溝84、85と高圧流路15の接続部は略直角、サブオリフィス流路75および流路76との接続部は鈍角となるので、高圧に強い構造とすることができる。しかも、流路形成部材83は単一ブロックからなるので、部品点数の削減によるコスト低減が可能である。 【0054】なお、上記第5の実施の形態では、流路形成部材83の上下端面に座グリ溝84、85を設けて連通路としたが、図9に第6の実施の形態として示すように、流路形成部材83内に連通路となる孔86を設けることもできる。孔86は流路形成部材83の上下方向の中間位置において、外周面から中心へ向けて水平方向に形成されており、中心側の端部から斜め上方に流路76が、下方にサブオリフィス流路75が形成してある。孔86の外周側の端部はめくら栓87で閉鎖される。このような構成でも、各流路の接続部に鋭角部を形成せず、かつ流路形成部材を単一ブロックとすることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004260 【氏名又は名称】株式会社デンソー
|
| 【出願日】 |
平成12年7月31日(2000.7.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067596 【弁理士】 【氏名又は名称】伊藤 求馬
|
| 【公開番号】 |
特開2001−355534(P2001−355534A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−230299(P2000−230299) |
|