| 【発明の名称】 |
燃料噴射弁 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡辺 義正
【氏名】大前 和広
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| 【要約】 |
【課題】コモンレール式燃料噴射装置に使用した場合にも、燃料噴射初期の噴射率を低く設定することが可能な、簡易かつ小型の燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】燃料噴射弁のニードル105上部にニードルを閉弁方向に付勢する油圧を保持する制御室109を設ける。制御室は油圧リターン通路201、203を介してリーク室130に連通し、リーク室は制御弁300を介して低圧リーク通路107に接続される。制御弁300は、リーク室とリーク通路とを遮断する第1の位置と、油圧リターン通路203を閉鎖し、油圧リターン通路201のみをリーク室を介してリーク通路に連通させる第2の位置と、両方の油圧リターン通路をリーク室を介してリーク通路に連通させる第3の位置とをとる。第2の位置と第3の位置とを切り換えることにより、制御室の油圧低下速度を変化させ、ニードルのリフト速度を変化させることが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングと、該ハウジングに開口する燃料噴射孔と、該燃料噴射孔に接続される高圧燃料通路と前記燃料噴射孔を開閉するニードルと前記ハウジングの前記ニードルの前記燃料噴射孔とは反対の端部に形成された制御室と、前記高圧燃料通路と前記制御室とを接続し、制御室内にニードルを前記燃料噴射孔を閉鎖する方向に付勢する油圧を供給する油圧供給通路と、前記制御室をハウジング外の低圧部に接続し、制御室内の油圧を低下させることにより、前記ニードルを前記燃料噴射孔を開放する方向に移動させる少なくとも2つの油圧リターン通路と、前記油圧リターン通路を開閉する制御弁とを備え、前記制御弁は、前記油圧リターン通路の全部を閉鎖する第1の位置と、前記油圧リターン通路のうち少なくとも1つを閉鎖し、少なくとも1つを開放する第2の位置と、前記油圧リターン通路の全部を開放する第3の位置とをとることを特徴とする、燃料噴射弁。 【請求項2】 更に、前記油圧リターン通路の少なくとも1つは、前記制御弁と前記制御室との間に絞り部を有し、前記高圧燃料通路は更に、前記少なくとも1つの油圧リターン通路の前記絞り部と前記制御弁との間に接続されている、請求項1に記載の燃料噴射弁。 【請求項3】 ハウジングと、該ハウジングに開口する燃料噴射孔と、該燃料噴射孔に接続される高圧燃料通路と前記燃料噴射孔を開閉するニードルと前記ハウジングの前記ニードルの前記燃料噴射孔とは反対の端部に形成された制御室と、前記制御室と少なくとも2つの油圧リターン通路で接続されたリーク室と、前記リーク室と前記高圧燃料通路とを接続しリーク室内に高圧燃料を供給する油圧供給通路と、前記リーク室をハウジング外の低圧部に接続するリーク通路と、前記リーク室内に設けられ、前記リーク通路を開閉する弁体を有する制御弁と、を備え、前記制御弁は、前記弁体が前記リーク通路を閉鎖し、かつ全部の油圧リターン通路を開放する第1の位置と、前記弁体が前記リーク通路を開放し、かつ前記油圧リターン通路のうち少なくとも1つを閉鎖し、少なくとも1つを開放する第2の位置と、前記リーク通路と前記油圧リターン通路の全部とを開放する第3の位置とをとり、前記制御弁は、前記第1の位置をとることにより、前記油圧供給通路からリーク室内に流入する燃料油を、前記油圧リターン通路の全部を介して前記制御室に流入させ、前記制御室内の油圧を上昇させて前記ニードルを前記燃料噴射孔を閉鎖する方向に付勢し、前記第2または第3の位置をとることにより、前記油圧供給通路から前記リーク室に流入する燃料油を前記リーク通路を介して前記低圧部に排出し、同時に前記制御室内の燃料油を前記油圧リターン通路を介して前記リーク室内に流入させ、更に前記リーク通路から低圧部に排出し、制御室内の油圧を低下させて前記ニードルを前記燃料噴射孔を開放する方向に移動させることを特徴とする、燃料噴射弁。 【請求項4】 更に、前記高圧燃料通路と前記制御室とを接続する、絞り部を有する第2の油圧供給通路を備えた、請求項3に記載の燃料噴射弁。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は燃料噴射弁に関する。 【0002】 【従来の技術】蓄圧室(コモンレール)に高圧の燃料を貯留し、この蓄圧室から内燃機関の各気筒の燃料噴射弁に燃料を分配する、いわゆるコモンレール式燃料噴射装置が知られている。コモンレール式燃料噴射装置では、常にコモンレールに高圧の燃料を貯留しているため、機関の回転数にかかわらず燃料噴射圧を高く設定することができる。このため、従来の機関駆動式の燃料噴射ポンプ(いわゆるジャーク式燃料噴射ポンプ)に較べて、低回転時にも燃料噴射弁から噴射された燃料の微粒化が良好になり、機関の燃焼状態と排気性状とが向上する利点がある。 【0003】一方、ジャーク式燃料噴射ポンプでは、燃料噴射圧は燃料噴射初期には比較的低く、噴射後期には高くなる変動を繰り返す。一般に燃料噴射初期に噴射された燃料は燃焼室温度上昇に寄与する程度が高く、燃料噴射初期に噴射される燃料量が多いと燃焼温度の上昇によりNOX (窒素酸化物)の生成量が増大する問題がある。ジャーク式ポンプでは、上述したように燃料噴射初期の燃料噴射圧が低く、燃料噴射率も低くなるため燃料噴射初期に噴射される燃料は比較的少なくなっており、NOX の抑制の上では好ましい噴射特性を有している。 【0004】ところが、コモンレール式燃料噴射装置では燃料噴射圧は噴射期間を通じてほぼ一定になるため、燃料の噴射率もほぼ一定になる。このため、燃料噴射期間初期の燃料噴射量が比較的大きくなってしまい、NOX の生成を抑制することが困難な問題がある。このため、コモンレール燃料噴射装置のように一定の燃料噴射圧力においてもジャーク式燃料噴射ポンプと同様な噴射特性を得られる燃料噴射弁が種々提案されている。 【0005】例えば、この種の燃料噴射弁としては特開平5−71438号公報に記載されたものがある。同公報の燃料噴射弁は、ニードルを燃料噴射孔を閉鎖する方向に付勢する油圧を保持する背圧室(制御室)に電磁三方弁を設け、高圧油圧通路と背圧室とを連通する位置に上記三方弁を切り換えることにより、燃料噴射弁の閉弁状態を維持している。燃料噴射時には、上記三方弁を、背圧室が低圧部に連通する位置に切り換えて背圧室内の油圧を低圧部に逃がすことによりニードルを燃料噴射孔を開放する位置に移動させる。また、同公報の燃料噴射弁は、上記三方弁に加えて、三方弁と低圧部とを連通する通路上に制御弁を備えており、この制御弁は上記通路を通って低圧部に流れる燃料油の流れを遮断する第1の位置と、背圧室内の燃料油の一部を低圧部に逃がす第2の位置と、背圧室内の燃料油を完全に低圧部に逃がす第3の位置をとることが可能となっている。 【0006】同公報の燃料噴射弁は、燃料噴射時には上記三方弁を背圧室と低圧部とが連通する位置に切り換えるとともに、上記制御弁をまず第2の位置に切り換え、その後第3の位置に切り換えるようにして燃料噴射弁からの燃料噴射率を制御する。すなわち、燃料噴射時には、まず制御弁が第2の位置に切り換えられることにより背圧室内の燃料油の一部が低圧部に排出され、背圧室内の圧力が少し低下する。このため、ニードルが少し上昇し燃料噴射孔がわずかに開口する。次に制御弁が第3の位置に切り換えられると、背圧室内の燃料油が低圧部に完全に逃げるようになり、ニードルは大きく上昇し燃料噴射孔は大きく開口する。これにより、燃料噴射開始初期には燃料噴射孔から噴射される燃料量が少なく、後期に大きくなる噴射特性が得られる。すなわち、同公報の燃料噴射弁によれば、コモンレール燃料噴射装置に使用した場合にも、ジャーク式燃料噴射装置と同様に燃料噴射初期に噴射率が小さく、後期に大きくなる燃料噴射特性を得ることが可能となる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上記特開平5−71438号公報の燃料噴射弁では、燃料噴射初期に噴射率が小さく、後期に大きくなる燃料噴射特性を得るために、電磁三方弁と制御弁との2つの弁が必要になり、噴射弁の構造が大型かつ複雑になる問題がある。また、同公報の燃料噴射弁では、電磁三方弁と制御弁との2つの弁を同時に動作させる必要上それぞれの弁に個別の電源が必要となるのみならず、それぞれの弁の動作タイミングを精密に管理する複雑な制御が必要となる問題がある。 【0008】また、ディーゼル機関では主燃料噴射に先立って、パイロット燃料噴射を行う場合があり、機関の運転状態によっては、パイロット燃料噴射と主燃料噴射とで燃料噴射特性を変える必要が生じる場合がある。しかし、上記公報の燃料噴射弁では燃料噴射初期に噴射率が小さく後期に大きくなる燃料噴射特性は得られるものの、燃料噴射特性を一旦設定すると変更することはできず、機関の運転状態に応じてパイロット燃料噴射と主燃料噴射の燃料噴射特性を変更することができない。 【0009】本発明は上記問題に鑑み、簡易かつ小型の構造で、例えばコモンレール燃料噴射装置に使用したような場合にも機関運転状態に応じて所望の燃料噴射特性を得ることが可能な燃料噴射弁を提供することを目的としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明によれば、ハウジングと、該ハウジングに開口する燃料噴射孔と、該燃料噴射孔に接続される高圧燃料通路と前記燃料噴射孔を開閉するニードルと前記ハウジングの前記ニードルの前記燃料噴射孔とは反対の端部に形成された制御室と、前記高圧燃料通路と前記制御室とを接続し、制御室内にニードルを前記燃料噴射孔を閉鎖する方向に付勢する油圧を供給する油圧供給通路と、前記制御室をハウジング外の低圧部に接続し、制御室内の油圧を低下させることにより、前記ニードルを前記燃料噴射孔を開放する方向に移動させる少なくとも2つの油圧リターン通路と、前記油圧リターン通路を開閉する制御弁とを備え、前記制御弁は、前記油圧リターン通路の全部を閉鎖する第1の位置と、前記油圧リターン通路のうち少なくとも1つを閉鎖し、少なくとも1つを開放する第2の位置と、前記油圧リターン通路の全部を開放する第3の位置とをとることを特徴とする、燃料噴射弁が提供される。 【0011】すなわち、請求項1の発明ではニードルを閉弁方向に付勢する油圧を保持する制御室は油圧供給通路により常時高圧燃料通路に接続されている。また、制御室と低圧部とを連通する複数の油圧リターン通路が設けられており、これらの油圧リターン通路を開閉する制御弁が1つのみ設けられている。制御弁は第1から第3の位置をとることができ、この制御弁の位置を切り換えることにより燃料噴射及び燃料噴射特性が制御される。すなわち、制御弁が第1の位置をとると、油圧リターン通路の全部が閉鎖されるため、高圧燃料通路に接続された制御室内の油圧は高い圧力に保持され、ニードルが閉弁位置(燃料噴射孔を閉鎖する位置)に保持され、燃料噴射は停止される。また、制御弁が第2の位置をとると複数の油圧リターン通路の一部が閉鎖され、一部が開放されるため、制御室内の燃料油は開放されたリターン通路のみを通って低圧部に流出する。このため、常時高圧燃料通路に接続されている状態でも、制御室内の油圧は比較的小さな値だけ低下し、ニードルは開弁方向に比較的小さな速度で移動するため、噴射率は比較的低い速度で上昇し、全体として低い噴射率で燃料噴射が行われる。一方、制御弁が第3の位置をとると、油圧リターン通路の全部が開放され、比較的多量の燃料油が制御室から低圧部に流出する。このため、高圧燃料通路に接続された状態でも制御室内の油圧は比較的大きな値だけ低下し、ニードルは開弁方向に比較的大きな速度で移動する。これにより、噴射率は直ちに上昇し、全体として噴射率が比較的大きい燃料噴射が行なわれる。本発明では、上記のように1つの制御弁のみを用いて燃料噴射時の噴射率を変更することができるため、燃料噴射弁の構造が小型かつ簡易になるとともに、燃料噴射時に制御弁を上記第2の位置と第3の位置との間で切り換えることにより燃料噴射率を自由に変更することが可能となる。 【0012】請求項2に記載の発明によれば、更に、前記油圧リターン通路の少なくとも1つは、前記制御弁と前記制御室との間に絞り部を有し、前記高圧燃料通路は更に、前記少なくとも1つの油圧リターン通路の前記絞り部と前記制御弁との間に接続されている、請求項1に記載の燃料噴射弁が提供される。すなわち、請求項2の発明では更に油圧リターン通路の少なくとも1つは絞り部を有し、高圧燃料通路がこの油圧リターン通路に接続されている。このため、この油圧リターン通路が制御弁により閉鎖されると、高圧燃料が閉鎖されたリターン通路から絞りを介して制御室に流入するようになる。従って、例えば燃料噴射が終了時に全部の油圧リターン通路が閉鎖された場合には、制御室には油圧供給通路に加えて上記油圧リターン通路からも燃料が流入するようになり、制御室の圧力回復(上昇)速度が増大する。このため、本発明では請求項1に加えて、更に燃料噴射時のニードル閉弁速度が増大し、燃料噴射時のいわゆる燃料の切れが良好になるため燃料噴射量が正確に制御されるようになる。 【0013】請求項3に記載の発明によればハウジングと、該ハウジングに開口する燃料噴射孔と、該燃料噴射孔に接続される高圧燃料通路と前記燃料噴射孔を開閉するニードルと前記ハウジングの前記ニードルの前記燃料噴射孔とは反対の端部に形成された制御室と、前記制御室と少なくとも2つの油圧リターン通路で接続されたリーク室と、前記リーク室と前記高圧燃料通路とを接続しリーク室内に高圧燃料を供給する油圧供給通路と、前記リーク室をハウジング外の低圧部に接続するリーク通路と、前記リーク室内に設けられ、前記リーク通路を開閉する弁体を有する制御弁と、を備え、前記制御弁は、前記弁体が前記リーク通路を閉鎖し、かつ全部の油圧リターン通路を開放する第1の位置と、前記弁体が前記リーク通路を開放し、かつ前記油圧リターン通路のうち少なくとも1つを閉鎖し、少なくとも1つを開放する第2の位置と、前記リーク通路と前記油圧リターン通路の全部とを開放する第3の位置とをとり、前記制御弁は、前記第1の位置をとることにより、前記油圧供給通路からリーク室内に流入する燃料油を、前記油圧リターン通路の全部を介して前記制御室に流入させ、前記制御室内の油圧を上昇させて前記ニードルを前記燃料噴射孔を閉鎖する方向に付勢し、前記第2または第3の位置をとることにより、前記油圧供給通路から前記リーク室に流入する燃料油を前記リーク通路を介して前記低圧部に排出し、同時に前記制御室内の燃料油を前記油圧リターン通路を介して前記リーク室内に流入させ、更に前記リーク通路から低圧部に排出し、制御室内の油圧を低下させて前記ニードルを前記燃料噴射孔を開放する方向に移動させることを特徴とする、燃料噴射弁が提供される。 【0014】すなわち請求項3の発明では、油圧リターン通路はリーク通路に接続されたリーク室に連通しており、制御弁はリーク通路を開閉することにより制御室からリーク室を通じてリーク通路に流れる燃料油を制御している。また、油圧供給通路は、直接制御室には接続されておらず、リーク室に燃料油を供給している。請求項1の発明のように、高圧燃料通路と制御室とが直接燃料供給通路を介して接続されていると、油圧リターン通路が開放されてリーク通路に連通したときにも制御室には燃料供給通路から燃料が流入する。このため、例えば制御弁が第2の位置にあり一部の油圧リターン通路のみがリーク通路に連通したような場合にも制御室内の油圧を低下させるためには、油圧供給通路を絞り制御室内に流入する油量を低減する必要がある。ところが、油圧供給通路を絞った場合には、高圧燃料通路内の燃料圧力が高い場合には問題ないものの、燃料圧力が低下すると燃料噴射弁閉弁時に制御室内に流入する油量が不足し、制御室内の油圧上昇が遅くなってしまい、ニードルの閉弁が遅れる問題が生じる場合がある。 【0015】本発明では、油圧供給通路は制御室ではなくリーク室に接続されている。このため、制御弁が開弁すると油圧供給通路からリーク室に流入する燃料は制御室に流入することなく、直ちにリーク通路に排出される。このため、一部の油圧リターン通路のみが開放された場合にも制御室内の油圧が確実に低下し、ニードルが開弁する。また、制御弁がリーク通路を閉鎖すると、油圧供給通路からリーク室内に流入した燃料油は、全部の油圧リターン通路を通って制御室に流入するようになる。このため、燃料圧力が低い場合にも制御室の油圧は速い速度で上昇し、ニードルが確実に閉弁するようになる。 【0016】請求項4に記載の発明では、更に、前記高圧燃料通路と前記制御室とを接続する、絞り部を有する第2の油圧供給通路を備えた、請求項3に記載の燃料噴射弁が提供される。すなわち、請求項4の発明では、リーク室と高圧燃料通路とを接続する油圧供給通路に加えて、制御室と高圧燃料通路とを接続する第2の油圧供給通路が設けられている。このため、ニードル閉弁時にはリーク室側から油圧リターン通路を介して制御室に流入する燃料油に加えて、燃料油が高圧燃料通路から第2の油圧供給通路を介して直接制御室に流入するようになるため、燃料圧力が低い場合にも更に確実にニードルを閉弁させることが可能となる。また、第2の油圧供給通路には絞り部が設けられており、第2の油圧供給通路を通って制御室に流入する燃料油の流量は比較的低くなっいる。このため、燃料圧力が高い場合にもニードルの開弁には影響が生じない。 【0017】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の燃料噴射弁を自動車用ディーゼル機関のコモンレール式燃料噴射装置に適用した場合の実施形態の概略構成を示す図である。図1において、1は内燃機関(本実施形態では#1から#4の4つの気筒を備えた4気筒4サイクルディーゼル機関が使用される)、10aから10d は機関1の#1から#4の各気筒内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を示している。燃料噴射弁10aから10dは、それぞれ高圧燃料配管11aから11dを介して共通の蓄圧室(コモンレール)3に接続されている。コモンレール3は、高圧燃料噴射ポンプ5から供給される加圧燃料を貯留し、貯留した高圧燃料を高圧燃料配管11aから11dを介して各燃料噴射弁10aから10d に分配する機能を有する。 【0018】本実施形態では、高圧燃料噴射ポンプ5は、例えば吐出量調節機構を有するプランジャ形式のポンプとされ、図示しない燃料タンクから供給される燃料を所定の圧力に昇圧しコモンレール3に供給する。ポンプ5からコモンレール3への燃料圧送量は、コモンレール3圧力が目標圧力になるようにECU20によりフィードバック制御される。このため、コモンレール3燃料圧力(すなわち各燃料噴射弁の燃料噴射圧力)は機関低回転時にも高い圧力に設定することができる。また、各燃料噴射弁10aから10dが開弁すると、コモンレール3から高圧燃料が各燃料噴射弁を通じて各気筒に噴射されるが、コモンレール3の容積は1回の燃料噴射量に較べてはるかに大きいため、各燃料噴射弁10の燃料噴射期間中、コモンレール3燃料圧力(すなわち燃料噴射圧力)はほぼ一定に維持される。 【0019】図1に20で示すのは、機関の制御を行う電子制御ユニット(ECU)である。ECU20は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、マイクロプロセッサ(CPU)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成されている。ECU20は、本実施形態では、燃料ポンプ5の吐出量を制御してコモンレール3圧力を機関運転条件に応じて定まる目標値に制御する燃料圧制御を行っている他、燃料噴射弁10aから10dの開弁時期、時間等の開弁動作を制御してメイン燃料噴射の噴射時期及び噴射量を制御する燃料噴射制御等の機関の基本制御を行う。 【0020】これらの制御を行なうために、本実施形態ではコモンレール3にはコモンレール内燃料圧力を検出する燃料圧センサ27が設けられている他、機関1のアクセルペダル(図示せず)近傍にはアクセル開度(運転者のアクセルペダル踏み込み量)を検出するアクセル開度センサ21が設けられている。また、図1に23で示すのは機関1のカム軸の回転位相を検出するカム角センサ、25で示すのはクランク軸の回転位相を検出するクランク角センサである。カム角センサ23は、機関1のカム軸近傍に配置され、クランク回転角度に換算して720度毎に基準パルスを出力する。また、クランク角センサ25は、機関1 のクランク軸近傍に配置され所定クランク回転角毎(例えば15度毎)にクランク角パルスを発生する。 【0021】ECU20は、クランク各センサ25から入力するクランク回転角パルス信号の周波数から機関回転数を算出し、アクセル開度センサ21から入力するアクセル開度信号と、機関回転数とに基づいて燃料噴射弁10aから10dの燃料噴射時期と燃料噴射量とを算出する。なお、本実施形態では、燃料噴射弁からの燃料噴射時期と燃料噴射量との算出方法は、公知のいずれの方法をも使用することができる。 【0022】次に、本実施形態の燃料噴射弁10(燃料噴射弁10aから10dは同一の構造であるため、以下の説明では、参照符号10で総称する)の構造について説明する。図2は、本実施形態の燃料噴射弁10の縦断面図である。図1において、101はほぼ円筒形状の燃料噴射弁ハウジング、103はハウジング1先端に設けられた燃料噴射孔、105はニードル弁体を示す。 【0023】図2に123で示すのは、前述の高圧燃料配管11aから11dを介してコモンレール3(図1)に接続された高圧燃料通路である。高圧燃料通路123は、ニードル105のニードルガイド部105a下部周囲に形成された油圧室107に接続されている。燃料噴射弁の閉弁時には、ニードル弁体105の先端部は、燃料噴射孔103周囲のノズルシート部と当接して燃料噴射孔103を閉塞している。この状態では、ニードル弁体105の、ノズルガイド部105aの断面積からノズルシート部の面積(105c)を差し引いた環状面積に相当する受圧面積には油圧室107下部の燃料油圧が作用しており、ニードル弁体105を燃料噴射孔103を開放する方向(開弁方向、すなわち図2上方向)に付勢している。 【0024】また、ニードル弁体105の燃料噴射孔103とは反対側の端部周囲にはハウジング内に制御室109が形成されている。制御室109は、後述するように高圧燃料通路123に接続されており、制御室109内の油圧はニードル弁体端部(コマンドピストン部)105bに対して、ニードル弁体が燃料噴射孔を閉鎖する方向(閉弁方向、すなわち図1下方向)に押圧している。また、制御室109内には、ニードル105を閉弁方向に押圧付勢するスプリング111が配置されている。制御室109内と油圧室107内の圧力が等しい場合にはニードル弁体105はスプリング111により閉弁位置に移動、保持されるとともに、燃料噴射孔103を通じてニードル弁体105に作用する気筒内燃焼圧力によりニードル弁体105が開弁方向に移動し、誤噴射が生じることを防止している。 【0025】また、ハウジング101内には、制御室109と後述する油圧リターン通路201、203を介して接続されるリーク室130が設けられている。リーク室130は、リーク通路117を介して燃料噴射弁外部の低圧部(例えば燃料タンク)に接続されている。また、図2に300で示すのは、リーク室130とリーク通路117との連通を遮断する制御弁である。 【0026】制御弁300は油圧伝達部301を介してピエゾアクチュエータ303に接続されている。ピエゾアクチュエータ303は、油圧伝達部301に臨むピストン305を備えている。いま、ピエゾアクチュエータ303に電圧を印加すると、ピストン305は印加電圧に応じた量だけ変位する。このピストン305の変位は油圧伝達部301内の燃料油を介して制御弁300上部に伝えられる。すなわち、制御弁300は、ピストン305の変位にピストン305と制御弁300上部との断面積の比をを乗じた変位量だけ変位する。これにより、ピエゾアクチュエータ303に電圧を印加すると、制御弁300は図2下方に上記電圧に応じた量だけ変位し、リーク室130とリーク通路117とを連通させる。 【0027】図3は、図2の制御室109とリーク室130との近傍の拡大断面図である。図3に示すように、制御室109とリーク室130とは、それぞれ絞り部201a、203aを有する油圧リターン通路201、203により接続されている。また、高圧燃料通路123と制御室109とは、絞り部209a、油圧供給通路207、209を介して接続されている。図3に示すように、油圧リターン通路203は、制御弁300の直下に開口しており制御弁300がリーク室130下面に当接するまで変位すると(制御弁300がフルリフト位置になると)油圧リターン通路203は閉鎖される。これに対して、油圧リターン通路201は常にリーク室130と制御室109との連通を維持する位置に開口している。 【0028】本実施形態の燃料噴射弁では、ピエゾアクチュエータ303に電圧を印加することにより、制御弁300を変位させ、油圧リターン通路201と203とをリーク室130を介してリーク通路117に連通させることにより燃料噴射動作を行う。前述したように、ピエゾアクチュエータ303は印加する電圧に応じて変位量が変化するため、制御弁300の変位量(リフト)をピエゾアクチュエータ303に印加する電圧を調節することにより極めて応答性良く変化させることができる。そこで、本実施形態では、制御弁300の位置を、リーク室130とリーク通路117との連通を遮断する位置(閉弁位置)と、リーク室130底面に当接するまで変位して油圧リターン通路203とリーク室130との連通を遮断する位置(フルリフト位置)、及び閉弁位置とフルリフト位置との中間位置まで変位して、油圧リターン通路203とリーク室130とを連通させる位置(中間リフト位置)との3つの位置に切り換えることにより燃料噴射弁の動作を制御している。 【0029】以下、図3から図5を用いて、制御弁のそれぞれの位置における燃料噴射弁10の動作について説明する。 ■ 閉弁位置(図3) 制御弁300が閉弁位置にある場合、リーク室130とリーク通路117との連通は遮断される。一方、制御室109は油圧供給通路207、209を介して高圧燃料通路123と連通しているため制御室109内の燃料圧力は高圧燃料通路123内圧力と同じ値に保持される。このため、ニードル弁体105はスプリング111と制御室109内の油圧により、燃料噴射孔103に向けて押圧され、燃料噴射孔103を閉鎖する。このため、制御弁閉弁位置では燃料噴射は生じない。 ■ 中間リフト位置(図4) 制御弁300が中間リフト位置に変位すると、リーク室130とリーク通路とが連通する。また、この位置では油圧リターン通路201と203との両方が油圧リーク室130と制御室109とを連通する。このため、制御室109内の燃料油は油圧リターン通路201と203との両方を通ってリーク室130からリーク通路117に流出する。このため、この状態では油圧供給通路209から制御室109に流入する燃料油があっても制御室109内の圧力は比較的急激に低下する。制御室109内の油圧が低下し、ニードル105に作用する制御室109内の油圧による力とスプリング111の付勢力が、ニードルが油圧室107下部の油圧により受ける力より小さくなると、ニードル105は開弁方向に変位し燃料噴射孔103から油圧室107内の高圧燃料油が噴射される。制御弁300の中間リフト時では、制御室303内の燃料圧が比較的急激に低下するため、ニードル105の開弁方向への変位速度も大きくなる。燃料噴射時の噴射率は、ニードル105の変位(ニードルリフト)が大きいほど大きくなるため、制御弁300の中間リフト位置では噴射率の上昇速度が大きくなる。 ■ フルリフト位置(図5) 図5に示すように、制御弁がフルリフト位置にある時には、油圧リターン通路203は制御弁300により閉鎖され、リーク室130と制御室109とは油圧リターン通路201のみにより連通する。このため、制御室109内の燃料油は油圧リターン通路201のみを通ってリーク通路117に流出するようになり、制御室109内の油圧低下速度は小さくなる。このため、制御弁のフルリフト位置ではニードルは比較的低い速度で上昇し、燃料噴射率の上昇速度は小さくなる。 【0030】上記中間リフト位置(図4)またはフルリフト位置(図5)から制御弁300が閉弁位置(図3)に復帰すると、制御室109からリーク通路117への燃料油の流出は停止し、制御室109内圧力は油圧供給通路207、209から流入する高圧燃料油により上昇する。このため、ニードル105を閉弁方向に付勢する力が大きくなり、ニードル105は燃料噴射孔103を閉鎖する位置に復帰し、燃料噴射が停止する。 【0031】制御弁中間リフト位置とフルリフト位置及び閉弁位置におけるニードル105の変位速度(リフト速度)は、油圧リターン通路201、203及び油圧供給通路209の絞り201a、203a及び209aの大きさを調節することにより予め適切な値に設定することができる。なお、制御弁300を閉弁位置(図3)に復帰してから実際にニードル105が燃料噴射孔103を閉鎖して燃料噴射が停止するまでの時間が長いと、燃料噴射量制御の精度が低下する。このため、制御弁300が閉弁位置に復帰後には制御室303内の油圧をできるだけ早く上昇させることが好ましい。油圧供給通路209の絞り209aを大きく設定すれば、制御室109に流入する燃料油流量が増大するため制御弁300復帰後燃料噴射停止までの時間を短くすることは一応可能である。しかし、制御室109に流入する燃料油流量を一律に増大させたのでは、燃料噴射開始時の制御室109内の油圧低下速度も一律に小さくなってしまい、燃料噴射時のニードルリフト速度が小さくなる問題がある。 【0032】図6は、上記問題を解決し、燃料噴射時のニードルリフト速度に大きな影響を与えることなく、制御弁300閉弁後の燃料噴射停止までの時間を短縮するようにした燃料噴射弁の実施形態を示している。図6の実施形態では、油圧供給通路207と油圧リターン通路203の絞りより制御弁300側の部分とを接続する第2の油圧供給通路211及び絞り211aとが設けられている点のみが、図3の実施形態と相違している。 【0033】油圧供給通路211と絞り211aとを設けたことにより、油圧リターン通路203内には常時高圧燃料通路123から燃料が流入するようになる。しかし、制御弁300が中間リフト位置にあるときには、第2の油圧供給通路211から油圧リターン通路203に流入した高圧燃料油は、絞り203aにより制御室109側に流入することが抑制され、その大部分がリーク室130からリーク通路117に流出する。このため、ニードル105のリフト速度を大きく設定したい中間リフト位置においては、図3の実施形態と比較してニードル105のリフト速度はほとんど低下しない。 【0034】一方、制御弁300がフルリフト時、または閉弁位置にある場合には第2の油圧供給通路211から油圧リターン通路203に流入した燃料油は、絞り203aを通過して制御室109に流入するようになる。このため、ニードル105のリフト速度を小さく設定したいフルリフト時では、図3の実施形態と比較して更にニードルリフトを小さく設定できるとともに、制御弁300閉弁後は制御室109内の圧力上昇速度が大きくなり、制御弁300閉弁から実際の燃料噴射停止までの時間が短縮される。すなわち、図6の実施形態では、一層燃料噴射量制御の精度を向上させることが可能となる。 【0035】なお、図6の実施形態では第2の油圧供給通路211を油圧リターン通路203に接続しているが、図7に示すように第2の油圧通路211を直接リーク室130に接続するようにすれば、油圧供給通路211及び絞り211aの機械加工が容易になる。上述のように、図3から図7の実施形態の燃料噴射弁では制御弁300のみで燃料噴射特性の変更が可能となり、燃料噴射弁内に他の制御弁を設ける必要がない。このため、燃料噴射弁の構造が小型、かつ簡易になるとともに制御弁の駆動制御操作が簡略化され、更に単一の電源で1つの燃料噴射弁を駆動することが可能となる。 【0036】次に、図3または図6、図7の燃料噴射弁を用いた実際のニードルリフト速度制御について説明する。上述したように、上記実施形態の燃料噴射弁10では、ピエゾアクチュエータ303に印加する電圧を変化させることにより、図3から図5の各位置の間を任意に切り換えることができる。また、ピエゾアクチュエータ303の応答速度は極めて早いため、燃料噴射期間中に制御弁300位置を切り換えることが可能である。このため、図3、図6または図7の燃料噴射弁を用いることにより、ニードルリフト速度制御の自由度が大幅に向上し、以下に図8から図12を用いて説明するように機関運転状態に応じて燃料噴射特性を制御することが可能となる。 (1)図7は、パイロット燃料噴射と主燃料噴射とが比較的近接した場合の、燃料噴射特性制御の実施形態を説明する図であり、図8横軸は時間を、縦軸は燃料噴射率を、それぞれ表している。 【0037】本実施形態では、パイロット燃料噴射と主燃料噴射との時期が比較的近接している場合には、■パイロット燃料噴射時には制御弁300を中間リフト位置に保持して、ニードル105リフト速度を速くし、■主燃料噴射時には制御弁300をフルリフト位置に保持してニードル105リフト速度を比較的遅くする、制御を行う。これにより、パイロット燃料噴射開始時には、燃料噴射孔103での実際の燃料圧(実噴射圧力)が急激に上昇するようになり、少量のパイロット噴射燃料を高速度で噴射することが可能となる。高速で噴射されたパイロット噴射燃料は貫徹力が大きいため、少量であっても燃焼室外周部付近まで到達してから燃焼するようになる。従って、主噴射時に噴射された燃料は、燃焼室外周部付近にパイロット噴射により形成された燃焼ガスに到達した部分から燃焼を開始するようになり、主噴射燃料は燃焼室外周部から中心部に向けて燃焼するようになる。これにより、主噴射燃料の燃焼温度は比較的低くなり、NOX の生成が抑制される。 【0038】また、主燃料噴射では比較的ニードルリフト速度が遅いため主燃料噴射開始時の燃料噴射率は比較的低くなる。このため燃料噴射時期を進角させても燃焼状態の悪化が生じず、燃料噴射を比較的早い時期に終了することができるようになり、燃焼室温度が低下する膨張行程での燃料噴射によるスモーク増大を抑制することが可能となる。 (2)図9は噴射特性制御の第2の実施形態を説明する図8と同様な図である。 【0039】本実施形態では、第1の実施形態(図8)と同様、■パイロット燃料噴射時には制御弁300を中間リフト位置に保持して、ニードル105リフト速度を速くし、■主燃料噴射開始後噴射期間前半では制御弁300をフルリフト位置に保持してニードル105リフト速度を比較的遅くする。しかし、■噴射時期後半では制御弁300をフルリフト位置(図5)から中間リフト位置(図4)に切り換える。これにより、ジャーク式ポンプと同様に燃料噴射後期の噴射率が上昇し第1の実施形態より更に燃料噴射終了時期が早まるため、更にスモークの発生が抑制される。 (3)図10は、燃料噴射特性制御の第3の実施形態を説明する図8と同様な図である。本実施形態では、比較的早い時期にパイロット燃料噴射を行う早期パイロット燃料噴射が行われる場合を示している。この場合、パイロット燃料噴射は気筒の圧縮行程の比較的早い時期に行われるため、パイロット燃料噴射時には燃焼内の圧力と温度とが充分に上昇していない。また、ピストンも上死点から離れた位置にあるため、噴射された燃料は液体のまま燃焼壁面に到達して壁面に付着しやすくなり、燃料による潤滑油の希釈やピストンリングの潤滑悪化が生じる場合がある。このため、本実施形態では、早期パイロット燃料噴射時には、制御弁300をフルリフト位置(図5)に制御し、ニードル105リフト速度を遅くするようにしている。これにより、実燃料噴射圧力の上昇速度が遅くなり噴射された燃料は貫徹力の小さい噴霧を形成するようになる。このため、燃料が液状のまま気筒壁面に到達しにくくなり、燃料の壁面付着が防止される。 (4)図11は、燃料噴射特性制御の第4の実施形態を説明する図8と同様な図である。本実施形態では、主燃料噴射量の後に再度燃料を噴射するポスト燃料噴射が行われる。ポスト燃料噴射は、主燃料噴射量が多量になった場合に燃料の不完全燃焼による排気スモークが発生することを防止するために行われる。この場合、ポスト燃料噴射は膨張行程に行われることになり、燃焼室温度、圧力が低下し、ピストン位置が上死点から離れた位置で行われる。このため、早期パイロット燃料噴射の場合と同様に噴射燃料の燃焼室壁面付着が生じやすくなる。そこで、本実施形態では、早期パイロット燃料噴射(図10)の場合と同様に、ポスト燃料噴射時には制御弁300をフルリフト位置(図5)に制御して、貫徹力の低い燃料噴霧を形成することにより燃料の壁面付着を防止するようにしている。 (5)図12は、燃料噴射特性制御の第5の実施形態を説明する図8と同様な図である。 【0040】本実施形態では、主燃料噴射の際に、■主燃料噴射開始時に一旦制御弁300を中間リフト位置に保持し、■ニードルがリフトを開始した時に制御弁300をフルリフト位置に切り換える。燃料噴射特性制御の第1と第2の実施形態(図8、図9)では、燃料噴射開始時には制御弁300をフルリフト位置に保持し、噴射開始時に燃料噴射率が比較的低い状態が生じるようにしていた。ところが、図3から図5で説明したように、制御弁のフルリフト位置では燃料油が油圧リターン通路201(図4)のみを通ってリークするため、制御室109の油圧低下速度は小さくなる。このため、燃料噴射指令(ピエゾアクチュエータ303への電圧印加開始)から制御室109の圧力が低下してニードル105が実際にリフトを開始するまで(すなわち実際に燃料噴射孔からの燃料噴射が開始されるまで)の遅れ時間が長くなる。燃料噴射指令から実際の燃料噴射開始までの遅れ時間が大きくなると、燃料噴射時期、燃料噴射量の目標値からのずれが大きくなり、燃料噴射の制御精度が低下する問題がある。 【0041】そこで、本実施形態では、この遅れ時間を短縮するために燃料噴射時にまず制御弁300を中間リフト位置(図4)に保持し、制御室109の圧力を比較的急激に低下させるようにしている。これにより、燃料噴射指令後に実際に燃料噴射が開始されるまで(すなわちニードル105がリフトを開始するまで)の遅れ時間が大幅に短縮されるようになる。また、ニードル105がリフトを開始して実際の燃料噴射が開始された後は、制御弁300はフルリフト位置(図5)に切り換えられる。これにより、ニードル105が一旦リフトを開始した後はニードルのリフト速度は小さくなり、燃料噴射後の燃料噴射率の上昇は抑制され、燃料噴射初期に比較的低い燃料噴射率を維持することが可能となる。 【0042】なお、制御弁300を中間リフト位置に保持した場合の、燃料噴射指令後ニードル105がリフトを開始するまでの時間は、例えば制御室109内の燃料圧力(コモンレール3圧力)に応じて変化する。このため、本実施形態では予め各コモンレール圧力において、制御弁300を中間リフト位置に保持して燃料噴射操作を行い、ニードル105が実際にリフトを開始するまでの時間を計測し、コモンレール圧力をパラメータとして用いた1次元マップの形でECU20のROMに格納してある。 【0043】燃料噴射の際には、ECU20はコモンレール圧力から上記マップを用いてニードルリフトの遅れ時間を算出するとともに、燃料噴射開始から上記遅れ時間の間制御弁300を中間リフト位置に保持し、遅れ時間が経過した時点で制御弁300をフルリフト位置に切り換える。これにより、燃料噴射の遅れ時間の極めて少ない精度の高い燃料噴射制御が可能となる。 【0044】なお、本実施形態では上記のようにニードルのリフト開始までの時間を実際の計測結果に基づく数値マップから求めている、例えば燃料噴射弁にニードルのリフト量を検出するニードルリフトセンサ、またはニードルがリフトを開始したことを検出するニードルリフト時期センサを設け、実際にニードルがリフトを開始したことが検出されたときに、制御弁の中間リフト位置からフルリフト位置への切り換えを行えば更に正確な燃料噴射制御が可能となる。 【0045】図13及び図14は、本発明の燃料噴射弁の構成の図3から図7とは別の実施形態を説明する図である。前述の図3の実施形態では、油圧供給通路209は制御室109に接続されていたのに対して、図13の実施形態では油圧供給通路209はリーク室130に接続されている点が図3の実施形態と相違している。図3の実施形態のように、油圧供給通路209が制御室109に直接接続された構成では、制御弁300が開弁して制御室109内の燃料油が油圧リターン通路201、203の両方もしくは油圧リターン通路201からリーク通路117に流出している間も、油圧供給通路209から制御室109内に高圧燃料通路123内の燃料が流入し続ける。このため、特にコモンレール3の燃料圧力(すなわち高圧燃料通路123内の燃料圧力)が高いような場合には比較的大きな流量で油圧供給通路209から制御室109内に燃料が流入する。この場合、特に制御弁300がフルリフト位置にあるような場合には、制御室109からリーク通路117に逃がすことができる燃料油の流量より油圧供給通路209から制御室109に流入する燃料油流量を小さくしなければ燃料噴射弁が開弁することはできない。このため、図3の実施形態では、油圧供給通路209には絞り部209aを設け、制御室109への燃料油の流入を制限している。ところが、燃料圧が高い場合に合わせて絞り部209aの径を設定すると、燃料圧が下がった場合には油圧供給通路209から制御室109内に流入する燃料油流量が低下してしまい、制御弁300の閉弁時に制御室109の圧力上昇が遅くなり、ニードル弁105の閉弁が遅れるようになり、燃料噴射制御の精度が低下する問題が生じる場合がある。 【0046】図13の実施形態では、油圧供給通路209をリーク室130に接続することにより、この問題を解決している。すなわち、図13の実施形態では、燃料噴射弁開弁時(制御弁300が中間リフト位置またはフルリフト位置にあるとき)には、油圧供給通路209からリーク室130に流入した燃料は、制御室109に流入することなく、直接リーク通路117から低圧部に排出される。このため、油圧供給通路209から流入する燃料油により燃料噴射弁の開弁操作が影響を受けることが防止されるようになる。一方、燃料噴射弁閉弁時(制御弁300が閉弁位置にあるとき)には、油圧供給通路209からリーク室130に流入した燃料油は、2つの油圧リターン通路201、203を通って制御室130に流入するようになる。このため、制御弁300が閉弁すると燃料油圧力が低い場合でも、制御室109内の油圧は短時間で上昇し燃料圧力が低い場合にも燃料噴射制御の精度低下が生じることが防止される。なお、この場合油圧供給通路209の径は、任意に決定することができるが、通路209の径が過度に小さくなると、燃料噴射弁の閉弁速度が低下し、過度に大きいと燃料噴射弁開弁時にリーク通路117に排出される高圧燃料の量が増大し燃料ポンプの損失が大きくなる。このため、油圧供給通路209の径は機関の運転全領域にわたって最適になるように実験等により決定することが好ましい。 【0047】図14は、図13の実施形態の変形例を示す。本実施形態では、図13と同様にリーク室130に接続される油圧供給通路209に加えて、制御室109と高圧燃料通路123とを直接接続する第2の油圧供給通路213が設けられている。第2の油圧供給通路213には、絞り部213aが設けられており、通路213を通って制御室109に流入する燃料の流量が小さくなるようにされている。 【0048】本実施形態では、制御弁300が中間リフトまたはフルリフト位置にあり、油圧リターン通路201、203を通って制御室109から燃料油が流出している状態でも制御室109には第2の油圧供給通路213から燃料油が流入する。このため、絞り部213aの径は燃料圧力が高いときでも制御室109の圧力が確実に低下するように小さな値に設定されている。本実施形態では、制御弁300閉弁時には油圧供給通路209からリーク室130と油圧リターン通路201、203を経由して流入する燃料油に加えて、更に制御室109には第2の油圧供給通路213から燃料油が流入するようになるため、制御室109の圧力上昇が速くなり、燃料噴射弁の閉弁遅れが更に短縮されるようになる。 【0049】 【発明の効果】各請求項に記載の発明によれば、燃料噴射弁の構造が簡易かつ小型となり、しかも、コモンレール燃料噴射装置に使用した場合にも機関運転状態に応じて所望の燃料噴射特性を得ることが可能となるという共通の効果を奏する。なお、図13、図14の構成の燃料噴射弁を用いた場合にも、図8から図12の燃料噴射制御を行うことができることはいうまでもない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月15日(2000.6.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−355533(P2001−355533A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−184584(P2000−184584) |
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