| 【発明の名称】 |
内燃機関 |
| 【発明者】 |
【氏名】角方 章彦
【氏名】岩切 保憲
【氏名】伊藤 輝行
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| 【要約】 |
【課題】改質された蒸発燃料を利用して、圧縮自己着火燃焼の安定化を図る。
【解決手段】燃料タンク18からの蒸発燃料を一時的に保持するキャニスタ28と、キャニスタ28からパージされる蒸発燃料を、EGRガスと混合することにより、圧縮自己着火燃焼に適した性状に改質する混合室(改質手段)30と、を有する。制御部(判定手段)26により圧縮自己着火燃焼を行うと判定された場合、改質された蒸発燃料を、第2分岐パージ通路38を通して機関の燃焼室12へ噴射供給する(供給手段)。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮自己着火燃焼を実現可能な内燃機関であって、燃料タンクからの蒸発燃料を一時的に保持するキャニスタと、このキャニスタからパージされる蒸発燃料を、圧縮自己着火燃焼に適した性状に改質する改質手段と、機関運転状態に基づいて圧縮自己着火燃焼を行うか否かを判定する判定手段と、上記圧縮自己着火燃焼を行うときに、上記改質手段により改質された蒸発燃料を、機関の吸気系又は燃焼室へ供給する供給手段と、を有することを特徴とする内燃機関。 【請求項2】 上記改質手段が、上記蒸発燃料とEGRガスとを混合する混合室を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。 【請求項3】 上記改質手段が、上記蒸発燃料を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。 【請求項4】 上記加熱手段が、上記蒸発燃料が通流する加熱ラインを有し、この加熱ラインが、排気管の内部またはその近傍に配置されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。 【請求項5】 上記供給手段が、上記改質された蒸発燃料が燃焼室内に直接噴射されるように、上記改質された蒸発燃料を燃料噴射弁の噴口付近に圧送する圧送手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関。 【請求項6】 上記改質された蒸発燃料の燃焼室内への噴射時期と、主燃料の燃焼室内への噴射時期と、がそれぞれ独立して設定可能であることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関。 【請求項7】 上記改質された蒸発燃料の燃焼室内への噴射時期を、圧縮上死点付近に設定することを特徴とする請求項5又は6に記載の内燃機関。 【請求項8】 上記改質された蒸発燃料の吸気系又は燃焼室への供給量を、機関負荷および機関回転数の少なくとも一方に基づいて調整する供給量調整手段を有し、機関負荷が低い又は機関回転数が高いほど、上記供給量を相対的に大きくすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関。 【請求項9】 上記改質された蒸発燃料の吸気系又は燃焼室への供給時期を、機関負荷および機関回転数の少なくとも一方に基づいて調整する供給時期調整手段を有し、機関負荷が低い又は機関回転数が高いほど、上記供給時期を相対的に進角させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関。 【請求項10】 上記蒸発燃料の濃度を検出する濃度検出手段を有し、上記蒸発燃料の濃度が一定値以下となった場合、他の自己着火促進手段を利用して圧縮自己着火燃焼を行うか、あるいは火花点火燃焼を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関。 【請求項11】 上記他の自己着火促進手段が、吸気の加圧、吸気の加熱、点火スパークによるエネルギーアシスト、バルブタイミング変更による内部EGR量の増大、及び複数回の分割燃料噴射の少なくとも一つを利用したものであることを特徴とする請求項10に記載の内燃機関。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮自己着火燃焼を実現可能な内燃機関に関する。 【0002】 【従来の技術】例えば特開平7−332141号公報には、圧縮自己着火燃焼を実現可能なガソリン内燃機関が開示されている。簡単に説明すると、吸気ポートに燃料を噴射するエンジンにおいて、圧縮比を高めることによって、圧縮上死点付近の筒内(燃焼室内)の温度・圧力を高め、圧縮自己着火燃焼を実現するようになっている。このような圧縮自己着火式のガソリン内燃機関では、火花点火式のガソリン内燃機関を上回る希薄燃焼限界と低燃費とを図ることができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように圧縮自己着火燃焼を実現するために圧縮比を高めた場合、圧縮比を高めた分だけノッキング発生限界である点火進角限界が遅角してしまう。このため、例えば理論空燃比近傍の混合気で火花点火燃焼を行う全負荷運転時に、通常の圧縮比の火花点火ガソリンエンジンに比して、大幅にトルクが低下するという問題点があった。 【0004】一方、特開平11−72039号公報や特開平11−72038号公報には、1サイクル中に複数回の燃料噴射を行う圧縮着火式内燃機関が開示されている。つまり、圧縮行程中盤での少量の燃料噴射により圧縮上死点までに酸化を促進し、低負荷時の燃焼安定限界を拡大している。 【0005】しかしながら、ガソリンのようなセタン価の低い燃料では、圧縮比を大幅に高めるか、吸気を加圧、加熱するような手段を講じない限り、燃料の改質・反応が十分に進まず、圧縮自己着火燃焼を安定的に行うためには更なる改良が望まれる。 【0006】特に、機関低負荷時には空気過剰率が大きいため、予反応が起こり難くなり、また機関高回転時には、予反応開始から圧縮上死点までの実時間が短縮されて十分な予反応が行われないために、自己着火燃焼が不安定となり易い。このようなことから、自己着火燃焼を行い得る運転領域が制限されてしまい、十分な燃費向上等を図ることができない。 【0007】ところで、特開平9−96256号公報に示されている火花点火式の多気筒内燃機関では、排気行程にある気筒の残留ガス(EGRガス)を取り出し、この高温なEGRガスを、そのときに吸気行程にある気筒の燃料噴射弁の噴口付近へ噴射することにより、燃料の気化・微粒化(予反応)を促進する技術が開示されている。 【0008】この公報の技術を、仮に圧縮自己着火燃焼の着火促進のために用いたとしても、EGRガスと燃料との混合時間が短時間であるため、噴射する燃料に対して十分な熱エネルギーを付与することができない。つまり、燃料を反応性の高い活性種に安定して改質することができず、圧縮自己着火燃焼を安定して実現することは難しい。 【0009】本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ガソリンのように反応性の比較的低い燃料を用いた場合でも、安定して圧縮自己着火燃焼を実現できる新規な内燃機関を提供することを一つの目的としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】ガソリンを燃料とする内燃機関では、燃料タンク内の温度が約80〜90℃と比較的高いため、全ガソリン燃料の中でも沸点が低い低沸点成分は蒸発して蒸発燃料(エバポガス)となる。言い換えると、燃料タンク内で低沸点成分が蒸発燃料として分離された状態となる。 【0011】図6は、全ガソリン燃料のオクタン価に対する各沸点成分のオクタン価の比を示している。同図に示すように、90℃以下の低沸点成分(蒸発燃料)のオクタン価は、燃料全体のオクタン価に対して1〜2割程度低いオクタン価となっている。従って、低沸点成分である蒸発燃料は、ガソリン燃料全体に比して比較的反応性が高い傾向にある。そのため、蒸発燃料は、比較的少ないエネルギーの付与で、圧縮自己着火燃焼に適した性状、つまり反応性の高い活性種へと改質させることができる。 【0012】本発明は、圧縮自己着火燃焼を安定的に実現するために、改質された蒸発燃料を有効に利用することを一つの特徴としており、これによって、自己着火促進のために2回以上の分割噴射や内部EGR量の増加等による筒内雰囲気温度の上昇等を必ずしも行う必要がなくなる。つまり、自己着火促進のために分割噴射を行う場合、例えば、主たる燃焼が開始するよりも前、より具体的には圧縮行程前半または内部EGRを利用するためにバルブオーバーラップ期間中に1回目の噴射を行い、膨張行程から排気行程にかけて2回目以降の噴射を行うことになるが、この場合、1回目の燃料噴射による燃費悪化(燃費向上代の目減り)を避けるのが難しい。また、上記のように内部EGRの増加により筒内雰囲気温度を上昇させて圧縮自己着火を促進する場合、吸入される空気量が筒内温度上昇により制限され、負荷範囲が制限されるとともに、冷却損失が増大し、燃費悪化(燃費向上代の目減り)が懸念される。 【0013】ところで、ガソリンを燃料とする火花点火式内燃機関では、燃料タンクからの蒸発燃料が大気中へ放出されることを防ぐために、蒸発燃料を一時的に吸着するキャニスタが従来より好適に用いられる。また、キャニスタから吸気系へ供給される蒸発燃料によって空燃比が変動し、運転性を悪化させることを防ぐために、従来より様々な方策が提案されている。これに対し、本発明では、このような燃料タンクからの蒸発燃料を圧縮自己着火燃焼における着火促進のために有効に活用することにより、上述したような方策を適宜に省略することが可能となる。 【0014】また、改質された蒸発燃料を燃焼室内(筒内)に直接供給する場合、その供給時期を制御することで、自己着火の着火時期制御を行うことが可能になる。すなわち、改質された蒸発燃料は非常に反応性が高い物質を多量に含むため、圧縮上死点近傍の高温・高圧雰囲気下にある燃焼室内へ供給された場合、すみやかに着火に至る。この蒸発燃料の着火により周辺の主燃料へ良好に熱エネルギーが伝達されて、主燃料が蒸発燃料の着火を機に燃焼することになる。 【0015】圧縮自己着火燃焼においては、燃料濃度(空燃比),温度,及び圧力が着火性に対する重要なパラメータとなる。例えば、同じエンジン構成では、燃料濃度が濃い場合すなわち機関負荷が高い場合と、燃料濃度が薄い低負荷の場合とでは、着火性及び圧縮上死点付近での着火時期が異なることになる。燃料濃度が高い場合、燃料濃度が薄い場合に比べ、着火時期が相対的に早まり、ピストンによる圧縮と燃焼による圧力上昇とがほぼ同時期に進行し、図5(a)に示すような急激な圧力上昇によって激しい燃焼騒音を伴う燃焼となるおそれがある。したがって、負荷が高い場合には、着火時期を圧縮上死点以降となるよう制御する必要がある。しかしながら、図5(c)に示すように、燃料濃度が低い場合(低負荷時)に、上記の高負荷時と同様に着火時期を圧縮上死点よりも遅角化させていると、燃焼による圧力上昇時にはピストンが下降することになり、十分な圧力上昇・熱発生が起こらず、安定した燃焼が行えなくなること(失火等)が懸念される。 【0016】したがって、反応性の高い改質された蒸発燃料の供給時期を調整することによって、着火開始時期を適宜に制御して、高負荷時や低負荷時にかかわらず、図5(b)に示すような適切な圧力波形が得られる設定とすることにより、幅広い運転領域で安定した圧縮自己着火燃焼を実現し、燃費・排気性の更なる向上を図ることができる。 【0017】すなわち、請求項1に係る発明は、圧縮自己着火燃焼を実現可能な内燃機関であって、燃料タンクからの蒸発燃料を一時的に保持するキャニスタと、このキャニスタからパージされる蒸発燃料を、圧縮自己着火燃焼に適した性状に改質する改質手段と、機関運転状態に基づいて圧縮自己着火燃焼を行うか否かを判定する判定手段と、上記圧縮自己着火燃焼を行うときに、上記改質手段により改質された蒸発燃料を、機関の吸気系又は燃焼室へ供給する供給手段と、を有することを特徴としている。 【0018】また、請求項2に係る発明は、上記改質手段が、上記蒸発燃料とEGRガスとを混合する混合室を有することを特徴としている。 【0019】請求項3に係る発明は、上記改質手段が、上記蒸発燃料を加熱する加熱手段を有することを特徴としている。 【0020】請求項4に係る発明は、上記加熱手段が、上記蒸発燃料が通流する加熱ラインを有し、この加熱ラインが、排気管の内部またはその近傍に配置されることを特徴としている。 【0021】請求項5に係る発明は、上記供給手段が、上記改質された蒸発燃料が燃焼室内に直接噴射されるように、上記改質された蒸発燃料を燃料噴射弁の噴口付近に圧送する圧送手段を有することを特徴としている。 【0022】請求項6に係る発明は、上記改質された蒸発燃料の燃焼室内への噴射時期と、主燃料の燃焼室内への噴射時期と、がそれぞれ独立して設定可能であることを特徴としている。 【0023】請求項7に係る発明は、上記改質された蒸発燃料の燃焼室内への噴射時期を、圧縮上死点付近に設定することを特徴としている。 【0024】請求項8に係る発明は、上記改質された蒸発燃料の吸気系又は燃焼室への供給量を、機関負荷および機関回転数の少なくとも一方に基づいて調整する供給量調整手段を有し、機関負荷が低い又は機関回転数が高いほど、上記供給量を相対的に大きくすることを特徴としている。 【0025】請求項9に係る発明は、上記改質された蒸発燃料の吸気系又は燃焼室への供給時期を、機関負荷および機関回転数の少なくとも一方に基づいて調整する供給時期調整手段を有し、機関負荷が低い又は機関回転数が高いほど、上記供給時期を相対的に進角させることを特徴としている。 【0026】請求項10に係る発明は、上記蒸発燃料の濃度を検出する濃度検出手段を有し、上記蒸発燃料の濃度が一定値以下となった場合、他の自己着火促進手段を利用して圧縮自己着火燃焼を行うか、あるいは火花点火燃焼を行うことを特徴としている。 【0027】請求項11に係る発明は、上記他の自己着火促進手段が、吸気の加圧、吸気の加熱、点火スパークによるエネルギーアシスト、バルブタイミング変更による内部EGR量の増大、及び複数回の分割燃料噴射の少なくとも一つを利用したものであることを特徴としている。 【0028】 【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、圧縮自己着火燃焼に適した性状に改質された蒸発燃料を利用して、圧縮自己着火燃焼を安定して引き起こすことが可能になり、燃費性及び排気浄化性の向上を図ることができる。また、機関高負荷時等で火花点火燃焼を行う場合には、改質された蒸発燃料を供給しないことで、ノッキングを抑制し、高い出力を得ることが可能になる。 【0029】請求項2に係る発明によれば、蒸発燃料が、高温のEGRガスと混合されることにより適宜に加熱されて、圧縮自己着火燃焼に適した性状に改質される。この改質された蒸発燃料が圧縮自己着火燃焼における着火源となり、機関低負荷時や機関高回転時のように自己着火が起こり難い運転状態においても、安定した自己着火燃焼を行うことができる。 【0030】請求項3に係る発明によれば、加熱手段による蒸発燃料の加熱度合によって、改質の度合を適宜に調節することも可能になり、圧縮自己着火を安定的に引き起こすための活性種を更に確実に得ることができる。 【0031】請求項4に係る発明によれば、加熱ラインで蒸発燃料が加熱されることにより、この蒸発燃料を良好に改質することができるため、蒸発燃料を改質するための特別な機構等を用いることなく、簡素な構造で活性種を得ることが可能になる。 【0032】請求項5に係る発明によれば、改質された蒸発燃料を主燃料と同じように燃焼室(筒内)へ投入できるため、活性種としての改質された蒸発燃料が主燃料の着火に効果的に寄与し、また、燃料噴霧の気化・微粒化も同時に図れるため、安定した燃焼を行える上、未燃HCやすすなどの排出も抑制することができる。 【0033】特に、請求項2,5の双方に係る発明によれば、主燃料の周辺にEGRガスを供給することができ、燃焼温度の低減が効果的に行えるため、少ないEGR量でNOxを大幅に低減することができる。 【0034】請求項6に係る発明によれば、主燃料の噴射時期によらず、改質された蒸発燃料の供給時期つまり着火時期を調整することが可能となり、運転状態に応じて燃焼時期や燃焼速度を制御できるようになる。したがって、圧縮上死点付近のどのタイミングで着火させるかを意図的に制御可能になり、圧縮上死点付近での急激な圧力上昇による燃焼騒音によって規定される高負荷限界と、圧縮上死点付近での熱発生不足に起因する燃焼の不安定化(失火等)により規定される圧縮上死点付近での低負荷限界と、を緩和して、圧縮自己着火燃焼を行い得る運転領域を拡大することができる。 【0035】特に、請求項7に係る発明のように、改質された蒸発燃料の供給時期を圧縮上死点付近に設定し、つまり圧縮上死点の前後で運転条件に応じた最適な供給時期を選択することで、燃焼時期や燃焼速度を更に精度良く制御でき、圧縮自己着火燃焼を幅広い運転領域で更に安定して行うことができる。 【0036】請求項8に係る発明によれば、機関低負荷時や機関高回転時のように自己着火が起こり難い運転状態においても、十分な予反応が生じ、安定した自己着火燃焼を行うことができる。 【0037】請求項9に係る発明によれば、機関低負荷時や機関高回転時のように自己着火が起こり難い運転状態においても、圧縮上死点までの期間に十分な予反応が生じ、安定した自己着火燃焼を行うことができる。 【0038】請求項10に係る発明によれば、蒸発燃料の濃度が一定値以下の場合、つまり蒸発燃料の供給量が必要量を下回るような場合に、他の自己着火促進手段を作動させて自己着火燃焼を行うか、火花点火燃焼を行うようにしたため、圧縮自己着火燃焼が不安定となることで燃焼安定性が損なわれることを確実に防止することができる。 【0039】請求項11に係る発明によれば、蒸発燃料の濃度が低いような場合であっても、自己着火促進手段により圧縮自己着火燃焼を実現することが可能で、更に幅広い運転領域において圧縮自己着火燃焼による燃費性及び排気浄化性の向上を図ることができる。 【0040】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の全体構成を示している。各気筒のピストン10の上部には燃焼室12が画成され、この燃焼室12には吸気通路(吸気系)14及び排気通路(排気系)16が接続されている。燃焼室12の略中央付近には、燃料噴射弁22および点火プラグ24が配設されている。つまり、この内燃機関は、燃料タンク18より燃料通路20を介して燃料噴射弁22へ供給される燃料が、燃焼室12へ直接的に噴射される筒内直噴式の構成となっている。また、制御部(ECU)26の制御により、点火プラグ24の着火により火炎が伝播する形態の火花点火燃焼と、火花点火により火炎が伝播する形態ではない圧縮自己着火燃焼と、を機関運転状態に応じて切り換えて行うようになっている。なお、圧縮自己着火燃焼とは、燃焼室内の混合気が多点でほぼ一斉に着火する多点着火燃焼と言い換えることもできる。 【0041】そして、この内燃機関は、燃料タンク18の蒸発燃料を一時的に保持(吸着)するキャニスタ28と、このキャニスタ28からパージされる蒸発燃料を、圧縮自己着火燃焼に適した性状に改質する改質手段としての混合室30と、を有しており、判定手段としての制御部26により圧縮自己着火燃焼を行う運転状態にあると判定された場合には、改質された蒸発燃料を、燃焼室12(又は吸気通路14)へ供給するようになっている(供給手段)。つまり、この供給手段は、改質された蒸発燃料が燃焼室12内に直接噴射されるように、改質された蒸発燃料を燃料噴射弁22の噴口付近に圧送する圧送器(圧送手段)32を備えている。 【0042】ここで、キャニスタ28からパージされる蒸発燃料が通流するパージ通路34は、混合室30の下流側で、吸気通路14のコレクタ部14aに接続する第1分岐パージ通路36と、燃焼室12へ接続する第2分岐パージ通路38とに分岐されている。パージ通路34における圧送器32の上流側には、蒸発燃料(又はHC)の濃度を検出する濃度検出センサ(濃度検出手段)40と、このパージ通路34の流量を検出する流量検出センサ42とが配設されている。また、第1分岐パージ通路36には、パージ流量を調整する公知のパージコントロールバルブ44が設けられている。更に、第2分岐パージ通路38には上記の圧送器32が配置されており、この圧送器32は、第2分岐パージ通路38のパージ流量を調整する機能も兼ね備えている。 【0043】なお、図の符号32’に示すように、圧送器を例えばキャニスタ28の上流側に配置しても良く、この場合、第2分岐パージ通路38にパージ流量調整弁を別途設ける必要がある。 【0044】上記の混合室30には、排気通路16からEGR通路46を通してEGRガスが供給されるようになっており、このEGR通路46には、EGRガスの流量を調節する公知のEGRバルブ48が配設されている。 【0045】上記の制御部26は、周知のCPU及びメモリ等を備えたエンジンコントロールユニットであって、上記の濃度検出センサ40及び流量検出センサ42の他、スロットルバルブ50の開度を検出するスロットルセンサ52,排気通路16内のO2濃度を検出する排気O2センサ54,冷却水温を検出する水温センサ56,作動油温を検出する油温センサ58,アクセル開度センサ60,及びクランク角センサ62等の機関運転状態を検出する各種センサが接続されている。これらセンサからの検出信号等に基づいて、制御部26は、燃料噴射弁22を駆動する噴射弁駆動ユニット64へ制御信号を出力し、主燃料の燃料噴射時期及び燃料供給量を制御するとともに、点火プラグ24へ制御信号を出力して点火時期を制御する。また、上記のパージコントロールバルブ44,圧送器32及びEGRバルブ48のそれぞれに制御信号を出力して、各通路36,38,46の流量を調節する。 【0046】図2は、燃料噴射弁22の要部を示す断面対応図である。この燃料噴射弁22には、上記の第2分岐パージ通路38の一部を構成する補助パージ通路38aが形成されており、この補助パージ通路38aは、ソレノイド22bで駆動される針弁22cによって開閉される主燃料の噴口22aに開口,連通している。従って、補助パージ通路38a(38)を通流する蒸発燃料は、主燃料の噴口22aに供給され、主燃料と同じように燃焼室12へ直接的に噴射,供給される。 【0047】次に、本実施例に係る制御及び作用について説明する。 【0048】圧縮自己着火燃焼は、火花点火燃焼に対し、空気過剰率が大きい場合でも燃焼が可能であり、燃費性能及び排気性能の向上を図ることができる。しかしながら、燃料としてのガソリンは、ディーゼル機関における軽油に対し、オクタン価が高く自己着火を引き起こし難いため、これまでは、圧縮比を高めるか、吸気温度を高めるなど、圧縮行程後半における筒内状況を高温又は高圧にしないかぎり、圧縮自己着火を安定的に起こすことが困難であった。一方で、ガソリンを燃料とするガソリン機関は、ディーゼル機関に比して、火花点火燃焼による高出力運転が可能である。したがって、図3(a)の運転領域マップに示すように、運転条件に応じて圧縮自己着火燃焼と火花点火燃焼とを切り替えることで、圧縮自己着火燃焼による燃費の向上及び排気の清浄化と、火花点火燃焼による出力の向上と、を高いレベルで両立することが可能となる。 【0049】ここで、圧縮自己着火を安定的に引き起こすには、燃料を高い反応性を有する成分に改質することが有効であり、この実施例では、オクタン価が低く、比較的少ないエネルギー付与で改質可能な燃料タンク内の蒸発燃料を利用している。 【0050】すなわち、上記のキャニスタ28は、停車中および運転中に燃料タンク18内で発生した蒸発燃料を吸着する。機関運転中にキャニスタ28からパージされた蒸発燃料は、上述したように改質性に優れており、かつ、混合室30内で高温のEGRガスと混合されることにより、少なくとも一部がアルデヒド等の圧縮自己着火燃焼に適した性状の活性種に改質された状態で、混合室30内に貯蔵される。このように一旦アルデヒド等の活性種に改質された蒸発燃料は、仮に機関停止等により混合室30内の温度が下がった場合でも、改質前の性状に再び戻ることはなく、再始動後には速やかに着火源として利用することができる。 【0051】そして、圧縮自己着火燃焼を行うときには、所定のタイミングで(EGRガスと混合されること等により)改質された蒸発燃料を、第2分岐パージ通路38(38a)を通して燃焼室12内に噴出する。この改質された蒸発燃料の噴射時期は、着火時期に応じた適切な時期に制御され、好ましくは圧縮上死点付近に設定される。なお、圧縮上死点付近では筒内圧力が高いため、圧送器32によって蒸発燃料の噴出圧を筒内圧力以上に設定する必要がある。このように活性種を含む蒸発燃料を、所定の時期に燃焼室12内へ供給することにより、運転条件に応じた最適な時期に筒内で圧縮自己着火燃焼を安定的に引き起こすことが可能になる。 【0052】図5の圧力波形の模式図を用いて説明すると、例えば運転者の意志で負荷が高くなって燃料噴射量が増加するような場合、図5(a)のような圧力波形に近づくことで急激な圧力上昇が生じることのないように、蒸発燃料の噴射時期を相対的に遅角化し、着火時期を遅らせる。このように機関負荷が高い場合には、燃料噴射量が多いために、上死点後に主燃焼が開始されても、燃焼は急速に進行して失火に至るようなことはない。その上、ピストン10の下降中に主燃焼が引き起こされることとなり、急激な圧力上昇にはいたらず、マイルド(おだやか)な燃焼が行える。 【0053】一方、負荷が低くなる場合、仮に同様な燃焼開始時期であっても燃焼速度が低下するため、図5(c)に示すように、十分な圧力上昇・熱発生が得られないままピストン10が下降し、失火に至ることが考えれる。したがって、圧力が十分に高い圧縮上死点付近で主たる燃焼を行なう必要があり、着火開始時期を負荷が高い場合に比べて早める必要がある。したがって、図3(c)に示すように、機関負荷が低いほど、着火開始時期を早めるために、蒸発燃料の噴射時期を相対的に進角化する。 【0054】このようにして、負荷によらず図5(b)に示すような理想的な圧力波形が得られるように、蒸発燃料の噴射時期を制御することで、幅広い運転領域で圧縮自己着火燃焼を安定的に行うことができ、更なる燃費性能及び排気浄化性能の向上を図ることができる。 【0055】また、蒸発燃料の着火時期(噴射時期)は、このような機関負荷のみならず、機関回転数の変化に対しても同様に制御される。すなわち、蒸発燃料の反応・燃焼速度(時間)は、クランク角度に関わらず略一定であるのに対し、ピストン運動(圧縮・膨張)速度はクランク角度(機関回転数)に比例して変化する。このため、仮に機関回転数が低い場合と高い場合とで蒸発燃料の着火時期(噴射時期)を圧縮上死点前の同一時期に設定していると、低回転時では蒸発燃料が十分に反応・燃焼されつつピストン(10)の圧縮により燃焼が加速されるのに対し、高回転時では十分な熱発生が起こる以前に上死点を通過してピストンが下降してしまうことになり、燃焼が十分に行われない虞がある。したがって、圧縮自己着火燃焼領域を拡大するためには、機関負荷と同様、機関回転数に応じて着火時期(噴射時期)を最適に制御する必要がある。具体的には、図3(b)にも示すように、機関回転数が高いほど蒸発燃料の噴射時期を相対的に進角し、機関回転数が低いほど蒸発燃料の噴射時期を相対的に遅角化する。 【0056】加えて、機関負荷・回転数に応じて、着火源として投入する蒸発燃料の量を増減することも、確実に着火を引き起こす上では重要になる。すなわち、機関負荷が低い場合や機関回転数が高い場合、改質された蒸発燃料の噴射量を多くすることで、燃焼初期の熱発生量を増やして、確実に主たる燃料を着火させることができる。一方、機関負荷が高く燃料濃度が相対的に濃い場合や、機関回転数が低く反応時間が十分にある場合は、少ない着火源でも着火を引き起こせるため、着火源としての改質された蒸発燃料の供給量(エバポ噴射量)を少なくできる。これにより、発生量が限られている蒸発燃料を着火源として有効に利用することができる。つまり、図3(b),(c)に示すように、機関負荷が低い又は機関回転数が高いほど、蒸発燃料の噴射量、言い換えると全噴射量に対する蒸発燃料の供給量の割合を相対的に大きくする。 【0057】蒸発燃料の噴射時期・噴射量は、混合室30の下流側に設けられた圧送器32によって調整可能である。すなわち、制御部26による圧送器32のON/OFF制御及びその作動期間の制御(デューティー制御)によって、蒸発燃料の噴射時期と噴射期間(噴射量)を最適に調整することができ、これらの制御部26や圧送器32が、上記の請求項における供給量調整手段及び供給時期調整手段に対応している。 【0058】図4は、制御部26による制御の流れを示すフローチャートである。 【0059】まず、S(ステップ)10では、アクセル開度センサ60に基づくエンジン負荷及びクランク角センサ62に基づくエンジン回転数を読み込み、図3(a)の運転領域マップを参照して、現在の運転状態が圧縮自己着火燃焼領域にあるか否かを判定する。 【0060】火花点火燃焼領域にあると判定された場合、S11へ進み、圧送器32をOFFとして、改質された蒸発燃料の供給(エバポパージ)を行わない。つまり、火花点火燃焼を行う。この間も、必要に応じて混合室30にEGRガスを供給して、蒸発燃料の改質を行う。EGRガスの供給量は、EGRバルブ48の開度で調整され、エバポパージ中断期間が必要以上に長くなった場合にはEGR供給を停止する。 【0061】S10で圧縮自己着火燃焼領域にあると判定されると、S12へ進み、上記のエンジン負荷、エンジン回転数及び水温センサ56,油温センサ58で読み込まれる油温,水温等に基づいて、改質された蒸発燃料の供給(エバポパージ)が可能であるかを判定する。NOの場合にはS11へ進み、圧送器32をOFFとしてエバポパージを行わない(火花点火燃焼)。YESの場合にはS13へ進み、濃度検出センサ40(及び流量検出センサ42)の検出信号等に基づいて、パージ通路34中の蒸発燃料の濃度(HC濃度)を検出する。HC濃度が一定値以下の場合、S14からS11へ進み、改質された蒸発燃料の噴射,供給を行わず、蒸発燃料が十分に充填・改質されるまで、火花点火燃焼を行う。 【0062】S14でエバポパージを行うと判断した場合、S15,S16へ進み、機関運転状態・HC濃度等に基づいて蒸発燃料の供給量(エバポ供給量)及び供給時期(エバポ供給時期)を算出,設定する。S17,S18では、主燃料の噴射量・噴射時期を算出,設定する。そして、このような設定に基づいて、噴射弁駆動ユニット64や圧送器32等を駆動制御する。 【0063】主燃料の噴射時期は、蒸発燃料の噴射時期とは基本的に独立して制御される。つまり、燃費・排気性能を維持するためには、NOx,HC量に影響が大きい筒内混合気分布を機関運転状態に応じて最適化する必要があり、この筒内混合気分布は、主として主燃料の噴射時期で制御し、これとは独立して、着火性の制御は、主として蒸発燃料の噴射時期及び噴射量で制御する。 【0064】より詳しくは、負荷の上昇に応じて主燃料の噴射量を増加させたときに、この主燃料の噴射時期の設定を変えずにいると、濃い混合気の領域が増大し、NOxが大量に生成されることになってしまう。また、負荷が低い場合、つまり主燃料の噴射量が少ない場合には、薄い混合気の領域が増大し、シリンダ壁付近に残るリーン混合気が未燃HCとして排出される恐れがある。したがって、機関負荷・回転数に応じて主燃料の噴射時期を最適化する必要があり、その制御は、着火時期を制御する蒸発燃料の噴射時期とは独立に制御されるべきである。 【0065】好ましくは、パージ通路34内のエバポガスの空燃比がリーンとなり、すなわち、キャニスタ28や混合室30内の蒸発燃料を使い果たしたような場合、速やかに火花点火燃焼に切り替えるように設定する(図4のS14→S11に相当)。 【0066】なお、圧縮自己着火燃焼を行っており、かつ、ポンピングロスを低減するためにスロットルバルブ50を全開としているような状態で、キャニスタ28から効果的に蒸発燃料をパージするために、キャニスタ28と燃料タンク18との間に、蒸発燃料を吸気側(下流側)に加圧,圧送する圧送手段としての圧送器32’を、(上記の圧送器32と併用して)設けることも有効である。 【0067】更に、キャニスタ28のサイズを大きくすれば、吸着できる蒸発燃料を増やすことができるものの、車両レイアウト上の制約等によりむやみに大きくすることはできない。そこで、エンジン油水温が低いエンジン始動時等の、筒内温度が低く圧縮自己着火燃焼を起こし難い場合に限って、改質された蒸発燃料を筒内に供給して、この蒸発燃料を効果的に利用することにより、キャニスタ28のサイズを過度に大きくすることなく、安定した自己着火燃焼を実現できる。 【0068】なお、パージ通路34の一部(例えば混合室30)を、排気通路16の内部又は近傍に配置される加熱ライン(加熱手段)とすることにより、この加熱ラインの内部を通過する蒸発燃料が効果的に加熱され、改質を更に促進することができる。 【0069】また、EGRガス温度が低い機関始動時等においても改質された蒸発燃料を速やかに着火源として活用するために、混合室30やパージ通路34の一部を電熱ヒータ等の加熱手段により積極的に加熱することも有効である。 【0070】更に、改質された蒸発燃料(の濃度)が一定値を下回るような場合でも、他の自己着火促進手段を利用して、圧縮自己着火燃焼を行い得るようにしても良く、この場合、圧縮自己着火燃焼が可能な運転領域が拡大され、更なる燃費性及び排気浄化性の向上を図ることができる。 【0071】上記他の自己着火促進手段としては、公知のバルブタイミング変更機構を利用して、吸気弁と排気弁の重合開弁時期(バルブオーバーラップ)を設ける等により、内部EGR量を増加して、着火前の筒内雰囲気温度を上昇させることや、あるいは燃料噴射を2回以上に分けて行い、上記の重合開弁期間等に少量の燃料噴射を行うことで、着火を促進すること等が挙げられる。更に、吸気の過給や加熱により着火前の筒内雰囲気温度を増大させるのも有効である。また、火花点火用の点火プラグ周辺に火花点火で可燃の混合気を生成し、圧縮自己着火時にエネルギーアシストとしての点火プラグを作動させて自己着火時期を制御することで、自己着火領域を拡大することも有効である。しかしながら、これら他の自己着火促進手段を、上記の改質された蒸発燃料の供給がない状態で利用すると、筒内温度増大による冷却損失増大で燃費が十分に向上しなかったり、濃い混合気隗からのNOxやすすの生成が懸念されるため、部分的に利用することが望ましい。 【0072】好ましくは、筒内への改質された蒸発燃料の供給量は、燃費の悪化やトータル空燃比の変動による運転性の悪化等を招くことのないように、筒内での予反応を良好に促進させ得る範囲で、主燃焼の噴射量に対して十分に少なく設定される。 【0073】なお、本実施例では筒内直噴式の内燃機関について図示説明したが、吸気ポート噴射式の内燃機関に本発明を適用し、圧縮自己着火燃焼時に改質された蒸発燃料を筒内に噴射することによって、本実施例と同様な効果が得られることは言うまでもない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月13日(2000.6.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100062199 【弁理士】 【氏名又は名称】志賀 富士弥 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−355523(P2001−355523A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−176296(P2000−176296) |
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