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【発明の名称】 ガス濃度センサの故障診断システム
【発明者】 【氏名】佐藤 美邦

【氏名】石川 秀樹

【氏名】伴野 圭吾

【氏名】石田 昇

【要約】 【課題】エンジン1のパージラインに設置されたガス濃度センサが故障した場合にこれを検出するガス濃度センサの故障診断システムを提供する。

【解決手段】本発明の故障診断システムでは、ECU22が、空燃比の変動に伴って変化する酸素センサ8のパージ開始からの収束時間を測定し、これをエンジン1の負荷に基づいて決定される目標収束時間Tspと比較する。そして、当該収束時間Tが目標収束時間Tspよりも短ければ、ガス濃度センサ21は正常と判定し、一方、当該収束時間Tが目標収束時間Tsp(=2.0秒)よりも長ければ、ガス濃度センサ21は故障していると判定する。このため、ガス濃度センサ21自体が自己の故障を判断できない場合においても、システムとしてその故障診断を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 キャニスタに吸着された蒸発燃料を、所定の条件でパージガスとして内燃機関の吸気管へ供給するためのパージガス供給経路に設けられ、該パージガス供給経路を介して前記吸気管に供給される前記パージガス中の蒸発燃料の濃度を検出するガス濃度センサを備え、該ガス濃度センサからの検出信号に基づき前記内燃機関への燃料供給量を補正することにより、燃料混合気の空燃比を目標空燃比に制御する空燃比制御装置に適用され、前記ガス濃度センサの故障の有無を診断するための故障診断システムであって、前記空燃比の変動に伴って変化する前記内燃機関の所定の状態量を検出する、前記ガス濃度センサとは異なる状態検出手段と、該状態検出手段により検出された状態量を、前記内燃機関の負荷に基づいて決定される該状態量の基準値と比較することにより、前記ガス濃度センサが故障しているか否かを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とするガス濃度センサの故障診断システム。
【請求項2】 前記パージガス供給経路が予め定める条件にて開放又は閉塞されることにより、前記パージガスのパージが開始又は中断され、前記判定手段は、該パージの開始時又は中断時に前記故障判定を実行することを特徴とする請求項1記載のガス濃度センサの故障診断システム。
【請求項3】 前記状態検出手段は、前記燃料の燃焼後の空燃比を測定するために前記内燃機関の排気管に設置された酸素センサであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス濃度センサの故障診断システム。
【請求項4】 前記判定手段は、前記内燃機関の負荷に基づいて、前記酸素センサが測定した空燃比が目標空燃比に収束するまでの目標収束時間を決定する一方で、前記酸素センサが測定した空燃比が前記パージ開始時又は中断時から前記目標空燃比に収束するまでの実際の収束時間を算出し、該実際の収束時間が前記目標収束時間以内である場合に、前記ガス濃度センサは正常であると判定し、一方、該実際の収束時間が前記目標収束時間よりも長い場合に、前記ガス濃度センサは故障していると判定することを特徴とする請求項3記載のガス濃度センサの故障診断システム。
【請求項5】 前記判定手段は、前記内燃機関の負荷に基づいて、前記酸素センサが測定した空燃比の理論空燃比からのずれの許容値を決定する一方で、前記酸素センサが測定した空燃比が前記パージ開始時又は中断時から目標空燃比に収束するまでの間における、該酸素センサが実際に測定した空燃比の前記理論空燃比からのずれのピーク値を算出し、該ピーク値が前記許容値以下である場合に、前記ガス濃度センサは正常であると判定し、一方、該ピーク値が前記許容値よりも大きい場合に、前記ガス濃度センサは故障していると判定することを特徴とする請求項3記載のガス濃度センサの故障診断システム。
【請求項6】 前記判定手段は、前記内燃機関の負荷が小さい領域にある時点で、前記故障判定を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガス濃度センサの故障診断システム。
【請求項7】 前記ガス濃度センサは、前記配管を流れる前記パージガスを流入出させる流入孔及び流出孔を有する測定室を備え、該測定室に前記パージガスを流入させた状態で、該測定室内にて発信された超音波の伝搬時間を計測することにより、前記パージガス中の蒸発燃料の濃度を検出するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガス濃度センサの故障診断システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のパージラインに設置されたガス濃度センサの故障を診断するシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、高揮発性の燃料(例えばガソリン等)を利用するエンジンへの燃料の供給経路には、その燃料タンクからフューエルポンプにより汲み上げた燃料を、燃料配管を介してインジェクタへ送る供給経路の他に、燃料タンク内にて発生する蒸発燃料をキャニスタで一時的に吸着し、このキャニスタに溜まった燃料をパージして、パージガスとして吸気管へ送る供給経路がある。そして、このようなエンジンでは、インジェクタからの噴射燃料にパージガス中に含まれる蒸発燃料を混合した混合燃料をシリンダ内で燃焼させている。このように、燃料タンクで発生した蒸発燃料を燃焼させることにより、その大気への蒸散が防止されると共に、燃料タンクの燃料が無駄なく消費されている。
【0003】ところで、エンジンの燃焼制御においては、空燃比が理論空燃比からずれてしまうと、触媒のCO,HC,NOxの浄化能力が激減することがある。そして、このことは排出ガス中のCO、HC、NOx等の増加につながり、環境を悪化させるという問題が生じる。このため、当該燃焼制御においては、上記混合燃料と吸入空気との混合ガスが最も効率よく燃焼できるように、これらの比(空燃比)を理論空燃比に近づけるような制御が行われている。このため、上記のようなエンジンのパージラインには、通常、パージガス中の蒸発燃料の濃度を高精度で測定するガス濃度センサが設置されており、このガス濃度センサの検出値に基づいて上記インジェクタからの液体燃料の供給量等を燃焼前に調整することにより、所望の空燃比に近づける制御が行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなガス濃度センサが、例えば経年劣化等により故障して実際のパージガス中の蒸発燃料の濃度と異なる濃度の信号を出力した場合には、上記インジェクタからの液体燃料の供給が適切に行われず、空燃比を理論空燃比に近づけることが困難となり、目標の空燃比に到るまでに相当の時間がかかってしまう。このことは、上記排出ガス中のCO、HC、NOx等を増加させ、上述した環境悪化の問題を生じさせることになるため、従前にその対策をとる必要がある。
【0005】また、近年では、米国カリフォルニア州における環境保護法による規制、すなわち自動車の排気規制におけるOBD(On board diagnosis)においても、ガス濃度センサ、触媒装置、制御センサ等の劣化を適宜診断することにより、上記環境問題に対応することが義務づけられている。
【0006】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、内燃機関のパージラインに設置されたガス濃度センサが故障した場合に、これを検出するガス濃度センサの故障診断システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び効果】上記課題に鑑み、請求項1に記載のガス濃度センサの故障診断システム(以下、単に「故障診断システム」ともいう)は、燃料タンク内の液体燃料を燃料配管を介して吸気管に供給する燃料供給経路の他に、燃料タンク内にて発生する蒸発燃料をキャニスタにて一時的に吸着し、このキャニスタに溜まった燃料を所定の条件でパージしてパージガスとして吸気管へ供給するパージガス供給経路を備えた内燃機関の空燃比制御装置に適用される。すなわち、この空燃比制御装置は、定常時においては、燃料供給経路から吸気管に供給される液体燃料の供給量と、吸気管内への吸入空気量とを制御することにより、これらの空燃比を調整するのであるが、パージガス供給経路から吸気管にパージガスが供給された際には、キャニスタと吸気管とを接続する配管に設置されたガス濃度センサを用いて、パージガス供給経路から吸気管に供給されるパージガス中の蒸発燃料の濃度を検出し、この濃度に基づいて、燃料供給経路から吸気管に供給される液体燃料の供給量を補正する。これにより、パージ時における空燃比を調整するものである。
【0008】そして、当該故障診断システムでは、内燃機関を制御するためにその所定の状態量を検出する検出手段(上記ガス濃度センサを除く)の内、空燃比の変動に伴ってその状態量が変化する状態検出手段が、その所定の状態量を検出し、判定手段が、この状態検出手段により検出された状態量を、内燃機関の負荷に基づいて決定される当該状態量の基準値と比較することにより、ガス濃度センサが故障しているか否かを判定する。
【0009】ここでいう状態検出手段とは、例えば上記ガス濃度センサとは異なる他のセンサ群等を意味する。すなわち、本故障診断システムでは、当該ガス濃度センサが正常であれば一定の態様で出力を行うであろう他のセンサ群等が、この本来の出力状態とは異なった出力状態を示した場合に、その原因がガス濃度センサの故障にあると判定するものである。ただし、この他のセンサ群の出力状態は、一般に内燃機関の負荷の状態によりその出力状態(例えば定常状態になるまでの収束時間等)は変動するものであるため、常に一定の基準値をもってその状態を判定することはできない。このため、上記のように、内燃機関の負荷状態により参照する基準値を決定(変更)してその判定を行うように構成しているのである。
【0010】このような故障診断システムによれば、ガス濃度センサ自体が自己の故障を判断できない場合においても、その周囲に設置された他のセンサ群等の出力により、その故障診断を行うことができる。そして、当該故障診断システムによってガス濃度センサが故障と診断された場合には、直ちにガス濃度センサを取り替える等の措置をとることができ、環境問題にも柔軟に対応することができる。
【0011】ただし、上記状態検出手段として他のセンサ群の内の一つを選択した場合に、当該一つのセンサが故障したときには故障診断に支障を来すことになる。このため、他のセンサ群の内、複数のセンサを上記状態検出手段として設定するようにしてもよい。
【0012】また、当該故障診断システムによる故障診断は、例えば状態検出手段による検出状態を、判定手段により逐次判定する設定することもできる。このように構成すれば、ガス濃度センサが故障した時点で空燃比のバランスが崩れるため、状態検出手段により検出される状態量も瞬間的に大きく変化する。従って、この状態量の変化を検出することにより、ガス濃度センサの故障を判定することもできる。
【0013】しかし、通常、パージは逐次行われるものではなく、パージガス供給経路が予め定める条件にて開放又は閉塞されることにより、パージが開始又は中断されるものであり、例えば内燃機関の始動時等に定期的に行われるものである。このため、上述のように判定を逐次行うように設定するのは効率的ではないと考えることもできる。
【0014】そこで、請求項2に記載のように、上記判定手段が、このパージの開始時又は中断時に故障判定を実行するように構成してもよい。通常、このようなパージの開始時又は中断時には、状態検出手段の検出状態が一定の態様で変化する傾向があるため、このようなパージの開始時又は中断時の状態量を故障判定の基準値とするのが好ましいからである。
【0015】すなわち、この場合、ガス濃度センサが正常に機能している場合において状態検出手段がパージ開始時に示す状態量、又は、ガス濃度センサが正常に機能している場合において状態検出手段がパージ中断時に示す状態量に基づいて、ガス濃度センサが正常であると判断できるこれら状態量の許容値を予め設定する。尚、この許容値は、内燃機関の負荷に応じて設定される。そして、判定手段が、実際のパージ開始時又は中断時の負荷状態に応じてそのときの状態量の許容値を決定し、実際に状態検出手段が検出した状態量と比較する。そして、この状態量が当該許容値内にないと判断された場合にガス濃度センサが故障していると判定するのである。
【0016】また、状態検出手段としての上述した他のセンサ群の具体例としては、例えば、内燃機関のトルクを検出するためのセンサ群が考えられる。内燃機関のトルクは空燃比の変動の影響を受けやすいからである。そして、このトルクを検出するためのセンサとしては、車両を例にとると、例えばエンジン回転数センサ、車速センサ、吸入空気量センサ、スロットルセンサ等が考えられる。或いは、空燃比が理論空燃比から遠ざかることによる不完全燃焼(ノッキング)を検出するノックセンサでもよい。さらに、空燃比の変動により燃焼後の排気ガスがその影響を受けやすいという観点からは、排気ガスの温度を検出する排気温センサ、或いは燃焼後の排気ガスの濃度を検出するために排気管に設けられたガス濃度センサ等を採用することもできる。
【0017】ただし、上記エンジン回転数センサ、車速センサ、吸入空気量センサ、スロットルセンサ等は、内燃機関(エンジン)の負荷を検出するものでもあり、一方、本システムはこの内燃機関の負荷をパラメータとして状態量の基準値を決定するものである。このため、状態量の基準値として内燃機関の負荷をも検出するセンサを採用したのでは、基準値と実測値との相関をとることが困難な場合もある。また、上記排気温センサ等は、パージ時の比較的短い時間においてその出力値が大きく変動するものではないため、その検出が困難であるとも考えられる。そこで、本故障診断システムに採用する状態検出手段としては、排気ガスのガス濃度を検出するガス濃度センサが最も好ましいと考えられる。当該ガス濃度センサによる出力値は、空燃比の影響に敏感に反応するため、その変化を検出するのが比較的容易だからである。
【0018】そして、この内燃機関の排気管に設けられるガス濃度センサには、HCセンサ、NOxセンサ等種々考えられるが、その中でも請求項3に記載の酸素センサ(O2センサ)を採用することが有効である。酸素センサは、通常あらゆる形態の内燃機関に常備されているため、そのまま利用できる。
【0019】そして、この場合の判定手段の具体的判定方法としては、請求項4に記載のように、まず、内燃機関の負荷に基づいて、酸素センサが測定した空燃比が目標空燃比に収束するまでの目標収束時間を決定する。この目標収束時間の起算点は、上述したパージ開始時又は中断時とすることができる。そして、その一方で、酸素センサが測定した空燃比がパージ開始時又は中断時から目標空燃比に収束するまでの実際の収束時間を算出し、この実際の収束時間が目標収束時間以内である場合に、ガス濃度センサは正常であると判定し、逆に、この実際の収束時間が目標収束時間よりも長い場合に、ガス濃度センサは故障していると判定するようにしてもよい。
【0020】すなわち、パージ開始時を例に説明すると、通常パージが開始されると、吸気管には燃料供給経路からの液体燃料に加え、パージガス供給経路からの蒸発燃料が供給されるため、瞬間的に空燃比がリッチ側に変動するが、その後、パージガス供給経路に設置されたガス濃度センサの検出値に基づいて燃料供給経路からの液体燃料の供給量が調整されることにより、空燃比が理論空燃比に近い目標空燃比に徐々に近づくことになる。従って、酸素センサが測定した空燃比がパージ開始から目標空燃比に収束するまでの時間は、内燃機関の負荷の状態が同じ条件ではほぼ一定の時間になる。このため、多少の誤差を考慮してこれより少し大きく目標収束時間を設定すれば、正常なガス濃度センサを使用した場合には、その実際の収束時間が当該目標収束時間内におさまることになる。逆に、ガス濃度センサが故障していれば、実際の収束時間はこの目標収束時間を超えることになると想定される。本故障診断システムはこれを利用してガス濃度センサの故障診断を行うものである。
【0021】或いは、このように収束時間により判断するのではなく、請求項5に記載のように、空燃比の変動の大きさにより故障診断を行うようにしてもよい。すなわち、内燃機関の負荷に基づいて、酸素センサが測定した空燃比の理論空燃比からのずれの許容値を決定する一方で、酸素センサが測定した空燃比がパージ開始時又は中断時から目標空燃比に収束するまでの間における、この酸素センサが実際に測定した空燃比の理論空燃比からのずれのピーク値を算出し、このピーク値が許容値以下である場合に、ガス濃度センサは正常であると判定し、一方、このピーク値が前記許容値よりも大きい場合に、ガス濃度センサは故障していると判定するようにしてもよい。これは、上述した収束時間と同様の考え方に基づくものであり、ガス濃度センサが故障している場合には、正常な場合よりもその空燃比の変動幅が大きくなる点に着目したものである。
【0022】また、上述のように、判定手段は内燃機関の負荷に応じて上記目標収束時間或いは理論空燃比からのずれの許容値を決定するのであるが、この内燃機関の負荷が大きい場合には相対的に収束時間が短くなり、これらの検出自体が困難となることがある。そこで、請求項6に記載のように、判定手段は、内燃機関の負荷が小さい領域にある時点で故障判定を行うようにするのが好ましい。
【0023】だだし、請求項5に記載のように、空燃比の理論空燃比からのずれの許容値を用いて故障診断を行う場合には、実測値のピーク値は内燃機関の負荷が大きく目標空燃比までの収束時間が短くなったとしても比較的容易に検出することができるため、請求項4に記載のように収束時間を用いて故障診断を行う場合ほど内燃機関の負荷の影響を受けることはないと考えられる。
【0024】尚、本故障診断システムは、パージガス供給経路に設置されるガス濃度センサであれば、その形態は特に問わないが、例えば請求項7に記載のように、配管を流れるパージガスを流入出させる流入孔及び流出孔を有する測定室を備え、この測定室にパージガスを流入させた状態で、測定室内における超音波の伝搬時間を計測することにより、パージガス中の蒸発燃料の濃度を検出するタイプのガス濃度センサに適用することが可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
[第1実施例]本実施例は、本発明の故障診断システムを、車両エンジンのパージガス供給経路に設置されたガス濃度センサの故障を診断するものとして構成したものであり、図1はそのシステム構成図である。
【0026】図1に示すように、本実施例のエンジン1の吸気管2には、その上流側より、吸入空気量を調節するスロットルバルブ3、及び燃料を噴射するインジェクタ6が配置され、一方、エンジン1の排気管7には、その上流側より、排ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ(全領域空燃比センサ)8、及び排ガスを浄化する3元触媒9が配置されている。
【0027】そして、エンジン1に燃料を供給する経路として、ガソリンタンク11から液体燃料(ガソリン)を供給する燃料供給経路と、ガソリンタンク11にて揮発した蒸発燃料(ガス)を供給するパージガス供給経路とが備えられている。この燃料供給経路は、ガソリンタンク11から第1供給路12、燃料ポンプ15を介してインジェクタ6に到る経路であり、燃料ポンプ15によりガソリンタンク11から汲み上げられた液体燃料は、第1供給路12を通ってインジェクタ6に供給され、インジェクタ6から吸気管2内に噴射供給される。
【0028】一方、パージガス供給経路は、ガソリンタンク11から第2供給路13を介してキャニスタ14に接続され、さらにキャニスタ14から第3供給路16、パージバルブ17を介して、吸気管2(スロットルバルブ3の下流側)に到る経路である。このパージガス供給経路におけるキャニスタ14と吸気管2とを結ぶ配管系(以下、「パージライン」ともいう)には、蒸発燃料のガス濃度を検出するガス濃度センサ21が接続されている。そして、ガソリンタンク11において蒸発した燃料は、一旦キャニスタ14にて吸着され、その後このキャニスタ14に適宜外気が導入されて、そのパージが行われる。このとき発生した蒸発燃料(パージガス)は、パージバルブ17にてその流量が調節され、吸気管2に供給される。
【0029】図2は、本実施例の故障診断システムの電気的構成を示すブロック図である。本故障診断システムは、パージガスの供給量の制御や空燃比制御等を行う電子制御装置(以下、「ECU」という)22を中心に構成される。このECU22は、図示しないが、各種機器の制御を行うCPU、各種プログラム等を記憶したROM、演算過程の数値等が書き込まれるRAM、アナログ入力信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ、各種信号の入出力を行う入出力インタフェース(I/O)、タイマ、及びこれらを接続するバスから構成されている。後述するフローチャートに示す処理は、上記ROMに予め記憶された制御プログラムに基づいて実行される。
【0030】そして、ECU22には、上記ガス濃度センサ21及び酸素センサ8等のガスセンサ23、エンジン回転数センサ24、車速センサ25、スロットルバルブ3のバルブ開度を検出するスロットルセンサ26、吸気管2に導入される吸入空気量を検出する吸入空気量センサ27等が接続され、これらセンサ等からの出力信号がECU22に入力される。
【0031】そして、ECU22は、これら各センサ等からの情報をもとに、所定の制御プログラムに従った演算処理を行い、図示しない駆動回路を介して、インジェクタ6に対する燃料噴射量制御信号、点火装置に対する点火時期制御信号、スロットルバルブ3に対するスロットル開度制御信号、パージバルブ17に対するバルブ開度制御信号等を出力する。尚、ECU22は、ガス濃度センサ21に対しても、そのオン・オフ等の制御信号を出力する。
【0032】次に、ガス濃度センサ21の構造について説明する。ガス濃度センサ21は、圧電素子を利用して超音波を発生する超音波式のガス濃度センサであり、この圧電素子には、超音波の送受信が可能な超音波送受信素子(素子ASSY)が用いられる。
【0033】具体的には、図3に示すように、ガス濃度センサ21は、駆動・演算用回路31と、蒸発燃料を含むガスが導入される測定室32と、測定室32内で対向する2箇所の端部の一方に設けられた超音波送受信素子(以下単に超音波素子とも記す)33と、測定室32内にて超音波を反射させるため、超音波素子33が設けられた端部に対向する他方の端部に所定の距離だけ離れて設けられた反射面34と、吸入空気が流入・流出する流入孔36及び流出孔37(図中には、入口36,出口37とも記す)とから成る。
【0034】また、図4に示すように、超音波素子33は、圧電素子38と、圧電素子38の測定室32側の端面に接着された整合層39と、圧電素子38からのセンサ出力を取り出すよう圧電素子38より引き出された出力取り出しリード41と、圧電素子38、整合層39及び出力取り出しリード41の圧電素子38側の端部をモールド材42にて内部で固定する素子ケース43とから成る。なお、整合層39の測定室32側の端面は、素子ケース43の測定室32側の端面とほぼ一致するよう配置されている。また、前記整合層39及び素子ケース43の測定室32側の端面には、耐油性及び耐熱性に優れた樹脂薄膜が接着されている。
【0035】次に、ガス濃度センサ21の駆動・演算用回路31の構成を説明する。図5のブロック図に示すように、ガス濃度センサ21の駆動及び演算には、CPU(マイコン)51を用いる。超音波の送信及び受信は、送受信切り換えスイッチ(SW)52a,52bを用いて切り換える。
【0036】そして、送信時には、ドライバーを用いて超音波素子33へ電圧を印加し、超音波の送信を行なう。一方、受信時には、超音波素子33にて得られた受信波形は、アンプ(増幅AMP)53で所定の増幅が施され、コンパレータ54を通して整形された波形の信号は、CPU51内部に導入される。CPU51では、タイマを用いて伝播時間を測定し、この測定結果をマップに参照して濃度に換算し、その濃度を例えば図示しない表示装置等に出力する。
【0037】次に、本実施例のガス濃度センサの故障診断方法について説明する。本実施例の故障診断システムでは、ガス濃度センサ21の故障診断を、パージ開始時における酸素センサ8の出力状態を検出することにより行う。すなわち、本故障診断システムでは、酸素センサ8の出力状態が、ガス濃度センサ21が正常であるときとは異なった出力状態を示した場合に、その原因がガス濃度センサ21の故障であると判定するものである。
【0038】つまり、図6に示すように、エンジン1のアイドリング時においてパージが開始されると、吸気管2にはインジェクタ6からの液体燃料に加え、パージラインを介して蒸発燃料が供給される。このため、酸素センサ8が検出する空燃比は、瞬間的にリッチ側に変動するが、その後、パージラインに設置されたガス濃度センサ21の検出値に基づいてインジェクタ6からの液体燃料の供給量が調整されることにより、理論空燃比に近い目標空燃比に徐々に近づくことになる。本実施例ではこの目標空燃比λを理論空燃比から±3%の範囲(つまり、λ=1±0.03)に設定している。
【0039】そして、同図に実線で示すように、ガス濃度センサ21が正常である場合には、酸素センサ8が測定した空燃比がパージ開始から目標空燃比に収束するまでの時間T(以下、「収束時間T」ともいう)は、エンジン1の負荷の状態が同じ条件ではほぼ一定時間になる。同図ではアイドリング時の負荷における実験結果が示されており、収束時間Tは0.5秒となっている。
【0040】ところが、同図に点線で示すように、ガス濃度センサ21が故障している場合には、収束時間Tは大幅に長くなる。同図では、ガス濃度センサ21が故障し、その出力値がゼロとなっている場合の例が示されており、このときの収束時間Tは2.5秒となっている。すなわち、このようにガス濃度センサ21が故障しているため、実際には吸気管2に特定濃度のパージガスが供給されているにもかかわらず、ガス濃度センサ21の出力値はゼロを示す。それにもかかわらず、ECU22側ではこれを正規の出力値と認識し、この出力値に基づいてインジェクタ6からの燃料を調整するため、インジェクタ6からは燃料が過剰に供給され、パージ開始直後に空燃比が理論空燃比から大きくリッチ側にずれる。しかも、この状態で空燃比制御を継続するため、その後に目標空燃比に近づけることが困難となる。このような理由から収束時間Tが長くなるものと考えられる。
【0041】そこで、本実施例では目標収束時間Tspなるものを予め設定し、同図に示したアイドリング時でのその上限値を2.0秒に設定している。すなわち、アイドリング時においては、酸素センサ8の出力状態を参照することにより、パージ開始時から目標空燃比に到るまでの収束時間Tが目標収束時間Tsp(=2.0秒)よりも短ければ、ガス濃度センサ21は正常であると判定する。一方、当該収束時間Tが目標収束時間Tsp(=2.0秒)よりも長ければ、ガス濃度センサ21は故障していると判定するのである。尚、空燃比の実測値は同図にも示すように変動する。このため、本実施例における収束時間Tは、当該実測値が目標空燃比領域に所定時間(例えば0.1秒)以上滞在したときをもって決定されるものとする。
【0042】ただし、空燃比制御による目標空燃比までの収束時間は、一般にエンジン1の負荷の状態により変化する。つまり、負荷が大きい状態では収束時間が短くなり、逆に負荷が小さいと収束時間は長くなる。このため、酸素センサ8の出力状態もエンジン1の負荷の状態により変化するため、目標収束時間Tspは、エンジン1の負荷に応じて設定する必要がある。
【0043】このため、本実施例では、図10に示すように、エンジン1の負荷状態をパラメータとして目標収束時間Tspが設定された判定マップに基づき、ガス濃度センサ21の故障診断が行われる。同図では、負荷をパラメータとして右下がり曲線状の目標収束時間Tspが設定されている。従って、各負荷状態において、収束時間Tがこの目標収束時間Tspよりも大きくなった場合にガス濃度センサ21が故障していると判定される(図中斜線領域)。尚、同図からも分かるように、エンジン1の負荷が大きい場合には相対的に目標収束時間Tspが短くなる。そしてさらに、空燃比の実測値は変動するため、実際の収束時間Tと目標収束時間Tspとの比較自体が困難となる。従って、本実施例で示したアイドリング時等のように、エンジン1の負荷が小さい領域にある時点で故障診断を行うことが好ましい。
【0044】次に、ECU22によって実行される故障診断処理について、図7に示すフローチャートに沿って説明する。同図に示すように、ECU22からの指令によりパージが開始されると(S1110)、まず、酸素センサ8の出力に基づいてパージ開始から上述した目標空燃比までの収束時間Tが測定される(S120)。そしてその一方で、エンジン1の負荷状態に基づいて図10に示した判定マップを参照し、このときの目標収束時間Tspが決定される(S130)。そして、これら収束時間Tと目標収束時間Tspとを比較し(S140)、収束時間Tが目標収束時間Tspよりも長いと判断されると、ガス濃度センサ21は故障していると判定する(S150)。一方、S140において、収束時間Tが目標収束時間Tspよりも短いと判断されると、ガス濃度センサ21は正常であると判定する(S160)。
【0045】以上のように、本実施例の故障診断システムでは、ECU22が、空燃比の変動に伴って変化する酸素センサ8のパージ開始からの収束時間Tを検出し、これをエンジン1の負荷に基づいて決定される目標収束時間Tspと比較することにより、ガス濃度センサ21が故障しているか否かを判定する。
【0046】このため、ガス濃度センサ21自体が自己の故障を判断できない場合においても、システムとしてその故障診断を行うことができる。そして、当該故障診断システムによってガス濃度センサが故障と診断された場合には、直ちにガス濃度センサを取り替える等の処置をとることができる。
[第2実施例]次に、第2実施例について説明する。本実施例の故障診断システムは、図8に示すように、空燃比の変動の大きさに着目して故障診断を行う点で第1実施例の故障診断システムと異なり、その他の構成については第1実施例の故障診断システムとほぼ同様である。従って、第1実施例と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0047】上記第1実施例でも述べたように、エンジン1のアイドリング時におけるパージ開始からの酸素センサ8の出力状態は、通常パージが開始されると瞬間的にリッチ側に変動する。そして、ガス濃度センサ21が故障している場合(点線)のこの変動の大きさは、ガス濃度センサ21が正常である場合(実線)の変動の大きさよりも大きくなる。同図にはアイドリング時の負荷状態における実験結果が示されており、パージ開始時から空燃比が目標空燃比に収束するまでの間における、酸素センサ8が検出した空燃比の理論空燃比からのずれのピーク値Δλは、ガス濃度センサ21が正常である場合に7.5%、ガス濃度センサ21が故障してその出力値がゼロとなっている場合に13.0%となっている。
【0048】そこで、本実施例では空燃比の目標空燃比からのずれの許容値Δλspなるものを予め設定している。同図に示した例では、アイドリング時でのその値を10.0%に設定している。すなわち、アイドリング時においては、酸素センサ8の出力状態を検出することにより、パージ開始時から目標空燃比に到るまでの空燃比の理論空燃比からのずれのピーク値Δλが、許容値Δλsp(=10.0%)より小さければ、ガス濃度センサ21は正常と判定する。一方、当該ピーク値Δλが許容値Δλspよりも大きければ、ガス濃度センサ21は故障していると判定するのである。尚、このピーク値Δλの検出は、ECU22に設けられたいわゆるピークホールド回路(図示せず)により行われる。
【0049】ただし、一般に空燃比の変動の大きさも、エンジン1の負荷の状態により変化する。つまり、負荷が大きい状態では空燃比も早く収束する傾向にあるため、その変動の大きさも小さくなる。逆に、負荷が小さいとこの変動の大きさは大きくなる。このため、許容値Δλspもエンジン1の負荷に応じて設定する必要がある。
【0050】このため、本実施例では、図11に示すように、エンジン1の負荷状態に応じて許容値Δλspが設定された判定マップに基づいてガス濃度センサ21の故障診断が行われる。同図では、負荷をパラメータとして右下がり曲線状の許容値Δλspが設定されている。従って、各負荷状態において、空燃比の理論空燃比からのずれのピーク値Δλがこの許容値Δλspよりも大きくなった場合に、ガス濃度センサ21が故障していると判定される(図中斜線領域)。
【0051】次に、ECU22によって実行される故障診断処理について、図9に示すフローチャートに沿って説明する。同図に示すように、ECU22からの指令によりパージが開始されると(S1210)、まず、酸素センサ8の出力に基づいてパージ開始から上述した目標空燃比までの空燃比の理論空燃比からのずれのピーク値Δλが検出される(S220)。そしてその一方で、エンジン1の負荷状態に基づいて図11に示した判定マップ参照して許容値Δλspが決定される(S230)。そして、これらピーク値Δλと許容値Δλspとを比較し(S240)、ピーク値Δλが許容値Δλspよりも大きいと判断されると、ガス濃度センサ21は故障していると判定される(S250)。一方、S240において、ピーク値Δλが許容値Δλspよりも小さいと判断されると、ガス濃度センサ21は正常であると判定される(S260)。
【0052】以上のように、本実施例の故障診断システムでは、ECU22が、空燃比の変動に伴って変化する酸素センサ8のパージ開始からの空燃比の理論空燃比からのずれのピーク値Δλを検出し、これをエンジン1の負荷に基づいて決定される許容値Δλspと比較することにより、ガス濃度センサ21が故障しているか否かを判定する。このピーク値Δλは、エンジン1の負荷が大きく目標空燃比までの収束時間が短くなったとしても比較的容易に検出することができるため、上記第1実施例ほどエンジン1の負荷の影響を受けることがない点に特に利点を有する。
【0053】尚、上記各実施例において、酸素センサ8が状態検出手段に該当し、ECU22が判定手段に該当する。そして、ECU22が実行する処理の内、図7及び図9のフローチャートに示した処理が判定手段としての処理に該当する。以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0054】例えば、上記各実施例のガス濃度センサにおいては、パージの開始時においてガス濃度センサの故障診断を実行する構成としたが、パージの中断時に故障判定を実行するように構成してもよい。また、上記実施例では、状態検出手段として酸素センサ8を採用したが、この他にも、エンジンにHCセンサやNOxセンサ等その他のガス濃度センサが設置されている場合には、これらのガス濃度センサの出力値に基づいて故障診断を行う構成とすることもできる。
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成12年6月12日(2000.6.12)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉 (外1名)
【公開番号】 特開2001−355521(P2001−355521A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−175123(P2000−175123)