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【発明の名称】 内燃機関の吸気装置
【発明者】 【氏名】新井 雅人

【氏名】古川 晃

【氏名】今井 動志

【要約】 【課題】粘着質を持ったデポジットの付着防止をしつつ、微小クリアランスを必要とする摺動部に樹脂コーティングできる簡素な構造の内燃機関の吸気装置を提供する。

【解決手段】弁体8と弁体8が回転しうる範囲に対向する弁ハウジング2の少なくともどちらか一方に、ポリアミドイミド50とシリコン60の混合剤Pで形成された樹脂Cで覆う。それにより、樹脂Cの膜厚tを10μm以下にすることができるので、クリアランス調整構造等を備える必要がなく、簡素な構造をとれる。しかも、樹脂Cの下層部C1にはポリアミドイミド50が密に、樹脂Cの上層部C2にはシリコン60が密に存在することで、摺動部表面2a近傍には接着性のよいポイアミドイミド50が付着し、かつ樹脂C表面を非粘着性のシリコン60で覆うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 吸入空気通路を形成するハウジングと、該ハウジング内に回転自在に配設された駆動軸と、該駆動軸に固定され、前記空気通路の開口面積を可変にする弁体を備えた吸気装置において、前記弁体、および前記弁体が回転しうる範囲に対向するハウジングの摺動部の少なくともいずれか一方の外周面は、シリコンとポリアミドイミドの混合剤で形成された樹脂で覆われていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】 前記混合剤は、予めエタノールとトルエンの溶剤に溶解されており、硬化させると、前記樹脂の上層部に前記シリコンを多く含み、下層部に前記ポリアミドイミドを多く含むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】 前記樹脂の表面は、粘着質の付着を防ぐ樹脂に覆われていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】 前記樹脂は、前記外周面の一部に付着しており、前記一部よりも他部を疎に付着し、或いは全く付着していないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関の吸気装置に関し、例えば、揺動制御弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の吸気装置において、吸気装置の回転部の相互間のクリアランスを小さくして、例えばポンプ効率を高める手段として、回転部の表面に樹脂コーティングすることが知られている(特公平5−20594号公報)。特公平5−20594号公報によれば、回転部の外周表面および回転部の両端にかけて連続して四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂をコーティングしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来構造では、コーティングする膜厚が0.2mmから1.0mmの範囲にあり、膜厚が厚く、しかも膜厚のばらつきが大きい。微小クリアランスに設定しようとすると、膜厚を考慮した回転部の構造設計、例えばクリアランスを調整できる組付構造にする必要がある。このため、樹脂コーティングして微小クリアランスを管理しようとすると、回転部は構造が複雑となる。
【0004】また、この樹脂は、剥離しやすいため、平面部だけに部分的にコーティングすることができない。
【0005】さらに近年、内燃機関にEGR、過給機が採用されるようになり、例えば内燃機関の運転を中止直後等には吸入装置に未燃ガスが逆流する。このとき、吸気装置の回転部、例えば揺動制御弁に未燃ガスに含まれる粘着質を持ったデポジットが付着すると弁クリアランスが縮小する。場合によっては弁ロックする可能性がある。
【0006】本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その第1の目的は、微小クリアランスを必要とする摺動部に樹脂コーティングできる簡素な構造の内燃機関の吸気装置を提供することにある。また、第2の目的は、粘着質を持ったデポジットが付着することを防止できる樹脂コーティングを有する内燃機関の吸気装置を提供することにある。さらに、第3の目的は、少ない付着量で剥離しない樹脂コーティングを有する摺動表面を備えた内燃機関の吸気装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1によると、吸気装置の摺動部の表面、例えば弁体と弁体が回転しうる範囲に対向する弁ハウジングの少なくともどちらか一方に、シリコンとポリアミドイミドの混合剤で形成された樹脂で覆うことで、樹脂膜厚を10μm以下にすることができ、例えば50〜100μm程度の摺動クリアランスを有する摺動部であれば、クリアランス調整構造を備えなくともよい。このため、薄膜の樹脂を形成できるシリコンとポリアミドイミドの混合剤で形成された樹脂で覆うので、吸気装置は、簡素な構造を提供できる。
【0008】本発明の請求項2によると、相溶性の悪いポリアミドイミドとシリコンは、予めエタノールとトルエンを溶剤とする混合溶液と組合せて、完全溶解できる。しかも、溶解したシリコン分子とポリアミドイミド分子とが金属表面で引き合うファンデルワース力が、ポリアミドイミド分子の方が大きいので、硬化過程において摺動表面近傍、すなわち樹脂の下層部は、ポリアミドイミド分子が密に存在し、シリコン分子が疎に存在しうる。また、樹脂の上層部はポリアミドイミド分子が疎に存在し、シリコン分子が密に存在しうる。このため、金属接着性に優れるポリアミドイミド分子が摺動表面近傍に密に集まり、摺動表面の面荒さに起因する凹凸部に浸透し硬化できるので、樹脂は、摺動表面と接着性が良く、剥離しにくい。
【0009】なお、ポリアミドイミドとシリコンを完全溶解させる溶剤として、揮発性溶剤のエタノールとトルエンを用いるので、常温硬化できる。このため、焼成等の特殊な処理が不要であるので、製造工程が簡素な混合剤にて実現できる。
【0010】本発明の請求項3によれば、前述のように、硬化過程で樹脂の上層部にはシリコンが密に集まることから、樹脂表面近傍にはポイアミドイミド分子が疎に、或いは全く存在しなくなるので、粘着質の物質、例えば未燃ガスに含まれるデポジットに対して、非粘着性のシリコンで樹脂表面を覆うことができる。
【0011】本発明の請求項4によると、シリコンとポリアミドイミドの混合剤で形成され、金属表面との接着性のよい樹脂で摺動部の外周面を覆うことができるので、樹脂をコーティングする箇所は摺動部の外周面の全部ではなく、例えば、エンジンから逆流してくる未燃ガスに含まれるデポジットに対して、外周面の部分をなす開口している摺動部側のみに樹脂コーティングでき、しかも剥離しにくい。このため、部分的に外周面に樹脂コーティングできるので、コーティングする樹脂量を低減できる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の内燃機関の吸気装置において、揺動制御弁を備えた吸気装置に具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0013】図1は、内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ)の吸入装置の一部で、本発明の実施形態の揺動制御弁を備えた絞り弁装置の概略を示す構成図である。図1に示すように、絞り弁装置は、補助空気装置である後述するアイドリング空気制御弁(以下、ISCVと呼ぶ)1とスロットルバルブ100とからなる。このISCVは、後述する弁体8を揺動させて空気流量を制御する揺動制御弁をなす。
【0014】まず、スロットルバルブ100の構造について以下説明する。スロットルバルブ100は、スロットルボディ101内にメイン通路102が形成され、その途中にメイン通路102の開口面積を調節する回動自在な絞り弁103が設けられている。絞り弁103は、スロットルボディ101に回動可能に支持される弁軸105と、この弁軸105と共に回動しメイン通路102を流れる吸入空気を調量する弁体106とから構成されている。弁軸105は、図示しないアクセルペダルの踏込みにより図示しない駆動レバーを介して回動される。なお、図1に示す状態は絞り弁103が全閉状態である。
【0015】スロットルバルブ100は、車両への搭載状態において、空気上流側がエアフィルタ200を備えた図示しない吸気ダクトに気密に接合され、また空気下流側が図示しないインテークマニホルドを有するエンジン300と気密に連通している。絞り弁103の上流側のスロットルボディ101内にはバイパス通路3(ISC通路と呼ぶ)が開口し、絞り弁103を迂回して後述するISCV1の絞り弁20により、吸入空気は調量され絞り弁103の下流側のスロットルボディ101内へ導出される。吸入空気は、矢印Aからα、βの順に矢印方向に流れる。
【0016】次に、本発明の実施形態である揺動制御弁を具体化したISCV1の構造について以下説明する。図2は、本実施形態の揺動制御弁の断面図であり、図3は、図2中のIII−III断面よりみた弁体と弁ハウジングの摺動部を拡大した断面図である。図4は、コーティングする樹脂の膜厚制御を示すグラフである。図5は、樹脂をコーティングした摺動部表面を示すモデル図である。吸入空気量を制御する揺動制御弁であるISCV1において、弁ハウジング2は、アルミニウム合金のダイカストもしくはPBT、ナイロン等の合成樹脂で成形されている。この弁ハウジンング2内に上述のISC通路3の一部を形成する流体通路4が形成されている。また、弁ハウジング2内には、軸受6が固定されており、この軸受6により弁軸7が回動自在に支持されている。また、弁軸7には弁体8が固定され、弁軸7とともに回動する。したがって、弁座を形成する弁ハウジング2とこの回動自在の弁体8とで絞り9が形成され、この弁体8の回動により、ISC通路3の流路開口面積を可変制御する絞り弁20を形成している。また、絞り9の流路断面形状は、略矩形の形状を成している。なお、図1に示すように絞り弁20は、弁ハウジング2と弁体8と弁体8を駆動するモータMとから構成され、そのモータMはロータリソレノイド以外に、ステッピングモータもしくはDCモータ、或いはリニアソレノイド等でもよい。
【0017】以下、本発明の実施形態に適用したロータリソレノイドにて説明する。弁軸7の端部には、ロータリソレノイド式アクチュエータ(図示せず)が配設されて、弁軸7はロータリソレノイドの駆動軸でもある。ロータリソレノイドは、図1に示すアクセルセンサ41、回転数センサ42および温度センサ43等のセンサより各種の信号が入力されているコンピュータ40からの電気信号が入力されて、デューティ比制御により弁軸7の回転位置を制御することにより弁軸7と一体で回動する弁体8を制御可能とする。
【0018】ここで、本発明の実施形態の揺動して空気流量を制御する弁体8と弁ハウジング2との間に形成される摺動部の特徴について以下説明する。
【0019】まず、前述のように絞り弁20がISC通路3の流路開口面積を可変制御するので、弁ハウジング2は、揺動する弁体8と相互に摺動する摺動部2aを設けている(図2参照)。この摺動部2aと弁体8との間に形成される隙間(以下、摺動クリアランスと呼ぶ)γ(図3参照)が大きいと、弁体8を全閉側に揺動したとき、摺動クリアランスγに相当する開口面積分の空気流量がエンジンに供給されてしまうので、摺動クリアランスは微小に管理されている。
【0020】本実施形態では、摺動クリアランスγをなす弁体8の摺動部表面8aと、弁体8が揺動、つまり回転しうる範囲に対向する弁ハウジング2の摺動部表面2aのすくなくともどちらか一方を、エンジンから逆流する未燃ガスに含まれるデポジットの付着を防止させるため、コーティング技術により樹脂Cで覆う(図3参照)。以下、実施形態では、弁ハウジング2の摺動部表面2aに樹脂Cを覆う場合で説明する。
【0021】本実施形態に用いる樹脂の構造の特徴を以下説明する。摺動部表面2aを覆う樹脂は、ポリアミドイミド50とシリコン60の混合剤Pで形成されている。
【0022】この混合剤Pで形成される樹脂Cは、後述のコーティングで説明する常温硬化により、アルミダイカストで形成された弁ハウジング2の摺動部表面2aの近傍、すなわち樹脂Cの下層部C1には、ポリアミドイミド分子50aが密に存在し、シリコン分子60aが疎に存在する。また、樹脂Cの上層部C2には、ポリアミドイミド分子50aが疎に存在し、シリコン分子60aが密に存在する。
【0023】また、後述のコーティングで説明する混合剤Pを完全溶解させるために用いる揮発性溶剤のエタノール70とトルエン80の希釈液濃度を変えて樹脂Cの膜厚tを制御することで、膜厚tを10μm以下にできる。摺動部表面2aを覆う樹脂Cの膜厚tは、摺動クリアランスを調整する構造を採用せずに簡素な構造にするには、膜厚tの生成ばらつきが小さいほどよい。本実施形態では、膜厚tを1μmとし、0.5μmから1.0μmの範囲に設定することも可能である。なお、膜厚tの制御については後述する。なお、エタノール70とトルエン80とは、揮発性溶剤であるため、樹脂が硬化する過程において、混合剤Pを溶解した希釈液中から気化して、例えば大気へ消散する(図5参照)。
【0024】このため、アルミ材の摺動部表面2a近傍には、金属との接着性のよいポリアミドイミド50が密に付着する。また、粘着質の物質、例えばデポジットに対して、非粘着性のシリコンで樹脂Cの表面を覆うことができる。
【0025】次に、本実施形態に用いる樹脂Cのコーティングの特徴を以下説明する。本発明のコーティング樹脂Cは、相溶性の悪いポリアミドイミド50とシリコン60を希釈して完全溶解させる手段と、希釈された混合剤Pの濃度を制御することで膜厚tのばらつきを小さくする手段と、常温硬化させる手段とで構成される。
【0026】まず、相溶性の悪いポリアミドイミド50とシリコン60を完全溶解させる手段として、エタノール70とトルエン80の溶剤Lで希釈して完全溶解させる。
【0027】本実施形態では、混合剤Pの比率は、ポリアミドイミド50を72〜98%好ましくは85%、シリコンン60を2〜28%好ましくは15%の配合比率とし、また、溶剤Lの体積濃度比率は、エタノール70を30〜70%好ましくは50%、トルエン80を30〜70%好ましくは50%とすることで完全溶解することが望ましい。
【0028】次に、膜厚tのばらつきを小さくする手段として、希釈された混合剤Pの濃度を図4のように制御するのが望ましい。
【0029】図4は、混合剤Pを溶剤Lに溶解して調合する希釈液に占める混合剤Pの濃度比率ppと膜厚tとの関係を示すグラフである。図4に示すように濃度ppを25%以下に設定すれば、膜厚tは10μm以下とすることができる。
【0030】また、濃度ppを10%以上では、濃度ppに比例して膜厚tが増加するが、、濃度ppを10%未満では、希釈されて濃度ppが低下しても膜厚tは若干低下するだけで略同じ膜厚tとなる。このため、濃度ppを10%未満で所定濃度範囲に調合すれば、膜厚tを薄くでき、しかも生成する膜厚tのばらつきを低減することができる。
【0031】さらに、常温硬化させる手段としては、完全溶解させるために用いる溶剤Lとして揮発性溶剤のエタノール70とトルエン80を用いることで、以下の樹脂生成の過程で硬化するので、溶剤Lが揮発すれば、常温硬化して所望の樹脂コーティングができる。
【0032】相溶性の悪いポリイミドイミド50とシリコン60は、予めエタノール70とトルエン80を溶剤Lとする混合溶液と組合せて希釈すれば、完全溶解できる。しかも、摺動部2aを形成するアルミニウムの金属表面に引き合うファンデルワース力が、シリコン分子60aに比べてポリアミドイミド分子50aの方が大きいので、硬化過程において摺動表面2a近傍、すなわち樹脂Cの下層部C1は、ポリアミドイミド分子50aが密に存在し、シリコン分子60aが疎に存在しうる。また、樹脂Cの上層部C2はポリアミドイミド分子50aが疎に存在し、シリコン分子60aが密に存在しうる。
【0033】このため、金属接着性に優れるポリアミドイミド分子50aが摺動表面2a近傍に密に集まり、摺動表面2aの面荒さに起因する凹凸部に浸透し硬化できるので、樹脂Cは、摺動表面2aと接着性の良く、剥離しにくい。
【0034】さらに、樹脂Cの表面は、シリコン分子60aが密に存在できるので、粘着質の物質、例えばデポジットに対して、非粘着性のシリコンで樹脂Cの表面を覆うことができる。
【0035】(変形例)摺動部表面2aにコーティングさせて樹脂Cを付着させる変形例について、以下図6を参照して説明する。図6は、弁体と弁ハウジングの摺動部を拡大した断面図である。絞り9の弁ハウジング2の開口形状が、図6図示のように弁軸方向に幅Wを狭くして長方形形状をなしており、同一の開口面積を得るのに弁体8の揺動量を大きくさせる構造にしたものである。
【0036】樹脂Cが覆う表面は、摺動部表面2aの一部である図中にハッチングした範囲に限定することができる。このとき、本実施形態の樹脂は、アルミ材の摺動部表面2a近傍には、金属との接着性のよいポリアミドイミド50が密に付着しているので、剥離しにくい。このため、部分的に外周面に樹脂コーティングできるので、コーティングする樹脂量を低減できる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成12年3月24日(2000.3.24)
【代理人】 【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦 (外1名)
【公開番号】 特開2001−271727(P2001−271727A)
【公開日】 平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願番号】 特願2000−84775(P2000−84775)