トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 燃料噴射弁
【発明者】 【氏名】松井 宏次

【要約】 【課題】ノズルニードルの倒れを防止する。

【解決手段】複数の噴孔6を有するノズル本体3と、ノズル本体に挿入され、複数の噴孔を開閉するノズルニードル7と、ノズルニードルを開弁側に付勢する付勢手段と、付勢手段の付勢力に抗してノズルニードルに当接する押圧部材と、押圧部材を弁座側に付勢する閉弁手段と、閉弁手段の付勢力を必要に応じて解除する開弁手段とを有する燃料噴射弁1において、押圧部材とノズルニードルの当接面とを面接触とする。これによって、ノズルニードルのリフト時にノズルニードルにかかる燃料圧を面で受けることができるので、ノズルニードルの倒れを防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端に複数の噴孔が形成されたノズル本体と、該ノズル本体に挿入され、前記弁座に着座して複数の噴孔を開閉するノズルニードルと、該ノズルニードルを開弁側に付勢する付勢手段と、前記ノズルニードルに当接する押圧部材と、該押圧部材を前記付勢手段の付勢力に抗して前記弁座側に付勢する閉弁手段と、前記閉弁手段の付勢力を必要に応じて解除する開弁手段とを少なくとも有する燃料噴射弁において、前記押圧部材と前記ノズルニードルの当接面を面接触としたことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】 前記付勢手段は、前記ノズルニードルと前記ノズル本体の間に画成され、所定の圧力の燃料が収容されるコモンレールに蓄圧された高圧燃料が供給される圧力室からなり、前記閉弁手段は、前記ノズルニードルを閉弁側に付勢するスプリングと、前記押圧部材の他端側に画成され、前記コモンレールに蓄圧された高圧燃料が供給される背圧室とによって構成され、前記開弁手段は、所定の信号によって前記背圧室を低圧側に開放する電磁弁であることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射弁。
【請求項3】 前記押圧部材は、前記ノズルニードルと面接触である一端と、前記背圧室にさらされる他端とを有するバルブピストンであることを特徴とする請求項2記載の燃料噴射弁。
【請求項4】 前記押圧部材は、前記ノズルニードルと面接触である一端面及びバルブピストンの一端と接触する他端面を有するリフト調整部材と、該リフト調整部材の他端面と接触する一端面及び前記背圧室にさらされる他端面を有するバルブピストンとからなることを特徴とする請求項2記載の燃料噴射弁。
【請求項5】 前記リフト調整部材と前記バルブピストンとは点接触であることを特徴とする請求項4記載の燃料噴射弁。
【請求項6】 前記背圧室は、第1の径を有する第1のオリフィスを介してコモンレールと連通されると共に、前記第1の径よりも大きい第2の径を有すると共に前記電磁弁の弁体によって開閉される第2のオリフィスを介して低圧側と連通されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、内燃機関、特にディーゼルエンジン用の燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁であって、VCO(Valve Covered Orifice)型燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンは、熱効率に優れているため、地球温暖化やエネルギー問題に対して有効な機関として期待されているが、反面、NOXやPMの排出がガソリンエンジンに比べてはるかに多いことが問題となっている。こうしたディーゼルエンジンの有害排出物の低減技術は、近年各国で急速に進歩しており、その中でも、コモンレール噴射装置に対する期待は大きい。このコモンレール噴射装置は、事前に高圧化した燃料を蓄圧し、それを開放することで噴射を行うもので、運転に条件によらず高圧噴射を達成できるので、スモークとNOXの同時低減において大きな効果が期待されてきた。
【0003】また、特開平5−172015号公報に開示される燃料噴射ノズルにように、噴孔が弁体の先端に画成される燃料空間に開口する場合、ニードルが着座した後にも、燃料空間に残留した燃料が漏れることから、不完全燃料が生じてスモークやNOXの原因となることために、例えば、特開平11−336642号公報に開示されるようなVCO(VALVE COVERED OEIFICE)ノズルが開発された。このVCOは、ニードルの先端に形成された弁体が直接オリフィスを開閉するようにしたものである。
【0004】しかしながら、このVCOノズルでは、低リフト時のニードルの倒れが原因で、噴霧のばらつきが発生する。特にコモンレール噴射装置では、図8(a)に示すようにNOX抑制のために初期の噴射率を抑制するような特性を得るためには、図8(b)で示すように、通常のジャーク式ポンプの場合と比べて初期の上昇速度を遅くする必要がある。これは、コモンレール噴射装置では、図8(c)で示すように、通常ニードルによって閉塞された噴孔近傍まで高圧の燃料が供給されていることから、ジャーク式ポンプの場合のように急激にリフトさせると初期噴射量が増大してしまうからである。
【0005】したがって、コモンレール噴射装置では、常にレール圧と等しい圧力がニードルにかかっていることから、噴射開始と同時にニードルを倒そうとする力も最大となり、またニードル倒れの影響が噴霧に顕著に現れる低リフトの状態がジャーク式ポンプの場合と比べて長い期間続くため、ニードル倒れがジャーク式ポンプの場合と比べて生じやすいと共に、噴霧のばらつきも顕著に現れる。このメカニズムは、図9に示されるように、ニードル100が偏った場合には、燃料供給通路の一方の側PAが他方の側PBに比べて狭くなるため、高圧燃料がPA側に偏って流れる。このため、PA側に位置する噴孔101Aから噴射される燃料は多く、PB側に位置する噴孔101Bから噴射される燃料は少なくなり、さらに側部に位置する噴孔101Cでは噴孔の上下で流れる方向がことなるため、強い旋回流が発生する。この旋回流は、到達距離の短い噴霧を形成する原因となることが推定されている。
【0006】このため、特開平11−336642号公報では、ノズルニードルを付勢するスプリングが収納されるスプリング室を介して前記ノズルニードルの周囲に形成された燃料供給通路に高圧燃料を供給するようにして、ノズルニードルの倒れを防止するようにしたものである。
【0007】しかしながら、この引例で開示されるように、ノズルニードルと当接するピストンの先端面を凸面状として点接触する構造では、図10で示すようにノズルニードル100とピストン102が軸ずれしてピストン102とノズルニードル100との当接点Pが中心からずれた場合、ノズルニードル100を開弁方向に付勢する圧力Pfによる合力方向とピストンに生じる抗力Pdとによってノズルニードル100に回転モーメントMが発生することから、ノズルニードル100が倒れる傾向にあり、上述した不具合が発生するという問題点が生じる。
【0008】
【発明が解決しようする課題】したがって、この発明は、ノズルニードルの倒れを防止する構造を有する燃料噴射弁を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】よって、この発明は、先端に複数の噴孔が形成されたノズル本体と、該ノズル本体に挿入され、前記弁座に着座して複数の噴孔を開閉するノズルニードルと、該ノズルニードルを開弁側に付勢する付勢手段と、前記ノズルニードルに当接する押圧部材と、該押圧部材を前記付勢手段の付勢力に抗して前記弁座側に付勢する閉弁手段と、前記閉弁手段の付勢力を必要に応じて解除する開弁手段とを少なくとも有する燃料噴射弁において、前記押圧部材と前記ノズルニードルの当接面を面接触としたことにある。また、前記当接面は、お互いに平面状に形成されることが最も好ましいが、曲面同士による面接触であっても良いものである。
【0010】これによって、ノズルニードルのリフト時にノズルニードルにかかる燃料圧を当接部材の面で受けることができるので、ノズルニードルの倒れを防止することができるため、上記課題を達成できるものである。
【0011】また、前記付勢手段は、前記ノズルニードルと前記ノズル本体の間に画成され、所定の圧力の燃料が収容されるコモンレールに蓄圧された高圧燃料が供給される圧力室からなり、前記閉弁手段は、前記ノズルニードルを閉弁側に付勢するスプリングと、前記押圧部材の他端側に画成され、前記コモンレールに蓄圧された高圧燃料が供給される背圧室とによって構成され、前記開弁手段は、所定の信号によって前記背圧室を低圧側に開放する電磁弁であることが望ましい。これによって、コモンレールに用いられる構成を有する燃料噴射弁において、ノズルニードルの倒れを防止することができるものである。
【0012】また、前記押圧部材は、前記ノズルニードルと面接触である一端と、前記背圧室にさらされる他端とを有するバルブピストンであることが望ましい。
【0013】また、前記押圧部材は、前記ノズルニードルと面接触である一端面及びバルブピストンの一端と接触する他端面を有するリフト調整部材と、該リフト調整部材の他端面と接触する一端面及び前記背圧室にさらされる他端面を有するバルブピストンとからなるものであっても良い。さらに、前記リフト調整部材と前記バルブピストンとは点接触であっても良い。これによって、バルブピストンのノズルニードルの間にリフト調整部材が用いられた燃料噴射弁においても、同様の効果を奏することができ、またリフト調整部材とバルブピストンとを点接触とすることによってバルブピストンが傾いた場合にも、その傾きがノズルニードルに伝達されないので、ノズルニードルの直立性を確保することができるものである。
【0014】さらに、前記背圧室は、第1の径を有する第1のオリフィスを介してコモンレールと連通されると共に、前記第1の径よりも大きい第2の径を有すると共に前記電磁弁の弁体によって開閉される第2のオリフィスを介して低圧側と連通されることが望ましいものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面により説明する。
【0016】図1に示される燃料噴射弁1は、高圧の燃料が蓄圧される図示しないコモンレールに接続され、内燃機関、特にディーゼルエンジンの各々の気筒に装着されるもので、本体2、本体2の先端に装着されるノズル本体3及び電磁弁部4とによって構成される。
【0017】前記ノズル本体3は、図2にも示されるように、ノズルナット4によって前記本体2に装着固定され、その先端部3Aは円錐状に形成され、その円錐側面に複数の噴孔6が形成される。また、ノズル本体3には、ノズルニードル7が挿入され、ノズルニードル7の先端には円錐台に弁体部7Aが形成され、前記ノズル本体3の先端部3Aの内部に形成された弁座3Bの当接して前記噴孔6を内部から閉鎖するようになっている。また、前記ノズルニードル7の周囲であって、前記ノズル本体3との間に形成された所定のクリアランスによって燃料供給通路8が構成され、この燃料供給通路8の一端は、前記ノズルニードル7の略中央周縁に形成された圧力室9と連通する。
【0018】前記圧力室9は、ノズル本体3に形成された燃料供給孔10と、前記本体2に形成された燃料供給孔11を介して、図示しないコモンレールからの配管が接続される取付部材14の通路13と連通する横孔12と連通し、前記コモンレールからの高圧燃料が供給される。
【0019】前記本体2は、軸方向に延出する貫通孔15が形成され、内部にバルブピストン16が挿入される。また、前記貫通孔15の一端にはバルブ本体17が装着され、前記バルブピストン16の一端が挿入される。さらに前記貫通孔15の他端にはスプリング収納室18が形成され、ノズルスプリング19が配されると共に、前記バルブピストン16と前記ノズルニードル7との間に介在されるリフト調整部材20が装着される。このリフト調整部材20は、図3に示すように、ばね受け面20E及び前記ノズルニードル7と当接するノズルニードル側当接面20Cを有するばね受け部20Aと、バルブピストン16の他端面16Aと当接するバルブピストン側当接面20Dを有するピストン当接部20Bとによって構成され、前記ノズルスプリング19の付勢力を前記ノズルニードル7に伝達する。
【0020】また、前記バルブ本体17には、前記バルブピストン16の一端が面する背圧室21が画成される。この背圧室21は、第1のオリフィス22を介して前記横孔12と連通し、コモンレールからの高圧燃料が供給される。また、この背圧室21は、第1のオリフィス22よりも径の大きい第2のオリフィス23、アーマチュア24が収納されるアーマチュア室24、及び燃料油排出路25を介して燃料噴射系の低圧側と連通されるものである。尚、29は逆流防止用のボール弁である。
【0021】また、前記第2のオリフィス23は、バルブボール26によって開閉可能であり、このバルブボール26は前記アーマチュア24を介してバルブスプリング27によって前記第2のオリフィス23を閉じる方向に付勢されており、電磁弁部4を構成する電磁コイル28に外部信号が入力されることによって前記アーマチュア24が前記バルブスプリング27に抗して誘引され、前記第2のオリフィス23を開放するものである。
【0022】以上の構成により、前記圧力室9と前記背圧室21には、コモンレールからの高圧燃料が供給されて充満していることから、バルブニードル7、バルブピストン16及びリフト調整部材20に係る圧力はバランスしており、バルブニードル7にはバルブスプリング19による付勢力のみがかかるために、バルブニードル7は弁座3Bに着座して噴孔6は閉鎖され、噴射待機状態となる。この時に電磁弁部4に外部信号が入力されると、アーマチュア24が誘引されて、バルブボール29が第2のオリフィス23を開放する。このとき第1のオリフィス22よりも第2のオリフィス23の径が大きいことから、第1のオリフィス22から背圧室21に流入する燃料量よりも低圧側に排出される燃料量が多いため前記背圧室21の圧力は徐々に低下する。
【0023】これによって、圧力室9の圧力が背圧室21の圧力よりも上回るために、バルブニードル7、リフト調整部材20及びバルブピストン16は背圧室側にリフトされて噴孔6が開放され、圧力室9から燃料供給路8を介して燃料油が気筒内に噴射される。このとき、第2のオリフィス23によって背圧室21の圧力はゆっくりと下がることから、バルブニードル7のリフトは、図8(b)で示すように燃料噴射初期において緩やかな上昇となる。また、燃料噴射の停止要求に伴って外部信号が停止した場合には、バルブボール26が第2のオリフィス23を閉鎖するので、背圧室21の圧力は上昇していき、バルブピストン16及びリフト調整部材20を介してバルブニードル7が着座側に付勢されて弁体部7Aが噴孔6を閉鎖し、燃料噴射が終了する。
【0024】以上の構成の本願発明の実施の形態に係る燃料噴射弁1において、図3及び図4に示すように、バルブピストン16の他端面16Aとリフト調整部材20のバルブピストン側当接面20Dとは、お互いに面接触するように平面に形成される。同様に、前記リフト調整部材20のノズルニードル側当接面20Cと前記ノズルニードル7の一端面7Bとは、お互いに面接触するように平面に形成される。
【0025】図5に示すように、ノズルニードル7の開弁動作において、ノズルニードル7が当接保持されるものがバルブピストン16である場合(リフト調整部材20が用いられない場合)、ノズルニードル7に噴孔6側からかかる圧力Pfの合力にによってバルブピストン16に働く抗力Pdは、2つの部材の当接面が面接触してることから、前記圧力Pfの合力に対して回転モーメントが生じないように働くため、ノズルニードル7の傾きを防止できるものである。同様に、リフト調整部材20がノズルニードル7に当接する場合にも、リフト調整部材20と前記ノズルニードル7とが面接触していることから、リフト調整部材20がずれてノズルニードル7に当接してもノズルニードル7に回転モーメントが生じないので、ノズルニードル7の傾斜を防止できる。また、第1の実施の形態では、バルブピストン16とリフト調整部材20との当接部分16A,20D及びリフト調整部材20とノズルニードル7との当接部分20C,7Bが面接触しているので、リフト調整部材20及びノズルニードル7が傾斜することを防止できる。
【0026】また、図6で示す実施の形態は、バルブピストン16及びリフト調整部材20の当接部分において、バルブピストン16側の当接面を円弧状面16A’として、バルブピストン16の当接面16A’と前記リフト調整部材20側の当接面20Dとを点接触とした実施の形態を示すものである。また、図7で示す実施の形態は、バルブピストン16及びリフト調整部材20の当接部分において、リフト調整部材20側の当接面を円弧状面20D’として、バルブピストン16の当接面16Aと前記リフト調整部材20側の当接面20D’とを点接触とした実施の形態を示すものである。このようにした場合でも、前記リフト調整部材20と前記ノズルニードル7との当接面が面接触であれば、ノズルニードル7の倒れを防止できると共に、バルブピストン16の傾斜を点接触部分にて吸収することができるものである。尚、図6及び図7で示される第2及び第3の実施の形態において、前述した第1の実施の形態と同一の個所及び同様の効果を奏する個所には同一の符号の付してその説明を省略する。
【0027】また、以上の実施の形態において、バルブピストン16、リフト制限部材20及びノズルニードル7との間の当接部分において、面接触が要望される部分を平面状に形成することで面接触するように形成したが、例えば、一方の面を凸形状とし、他方の面を凹形状として面接触としても同様の効果が得られることが推定される。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、噴孔を開閉するノズルニードルと、このノズルニードルの一端が当接するバルブピストン若しくはリフト制限部材との間を面接触としたことによってノズルニードルの傾きを防止できるので、コモンレール式噴射装置における噴射開始時の噴射のばらつきが防止でき、これによって運転条件によらずに高圧噴射が可能なコモンレール式噴射装置の特長を全領域にわたって発揮することができると共に、スモーク及びNOXを低減できるものである。
【出願人】 【識別番号】000003333
【氏名又は名称】株式会社ボッシュオートモーティブシステム
【出願日】 平成12年3月24日(2000.3.24)
【代理人】 【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保 (外1名)
【公開番号】 特開2001−271719(P2001−271719A)
【公開日】 平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願番号】 特願2000−83094(P2000−83094)