トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 ユニットインジェクタ
【発明者】 【氏名】金子 高

【要約】 【課題】エンジンにおけるハンチングの発生を抑えるユニットインジェクタを提供すること。

【解決手段】機械式ユニットインジェクタにおいて、ラックの移動量に対するプランジャリードの高さの変化率を部分的に変化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】機械式ユニットインジェクタにおいて、ラックの移動量に対するプランジャリードの高さの変化率を部分的に変化させたことを特徴とするユニットインジェクタ。
【請求項2】電子制御式ユニットインジェクタにおいて、通電期間の変化率を部分的に変化させたことを特徴とするユニットインジェクタ。
【請求項3】機械式ユニットインジェクタにおいて、噴射量特性が急変するガバナアクチュエータの位置情報を基に、前記ガバナアクチュエータの位置の変化率を制御することを特徴とするユニットインジェクタ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のユニットインジェクタに関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関において良好な燃焼を達成するには、燃料を高圧でシリンダ内に噴射する事が有効である。このために燃料噴射ポンプと燃料噴射弁を一体化したものが、ユニットインジェクタと呼ばれている。
【0003】図9は、従来の機械式ユニットインジェクタの断面構造図である。このユニットインジェクタは、カム1の回転によりローラタペット21が押し上げられ、プッシュロッド22を介してロッカーアーム23を駆動する。ロッカーアーム23は、てこの動きで、プッシュロッド3、タペット4を介してプランジャ6をリフトさせる。カム1のリフトが減少するとタペット4に挿入したスプリング5によりプランジャ6はカム回転初期の状態に戻る。
【0004】このプランジャ6の上下の動きによって、ユニットインジェクタのプランジャ室7に供給された燃料が圧縮され、圧力がスプリングケージ9からディスタンスピース13を通り、ノズル15に伝達する。この噴射圧力が針弁14に伝わり、針弁スプリング11の力に打ち勝つと針弁14が開き、燃料がノズル15を介して図示しないエンジンのシリンダ内に噴射される。
【0005】燃料噴射量の制御は、バレル8に設けたフィードホール81とプランジャ6に切り欠いたリード61とを用いて、ラック17がピニオン16を介してプランジャ6を回転させる事で、プランジャ6がフィードホール81を塞ぐストロークが変化することにより行なわれる。
【0006】図10は、従来の電子制御式ユニットインジェクタの断面構造図とシステム構成図である。この電子制御式ユニットインジェクタは、上述した機械式ユニットインジェクタと同様に、カム1の回転によりローラタペット21が押し上げられ、プッシュロッド22を介してロッカーアーム23を駆動する。ロッカーアーム23は、てこの動きで、プッシュロッド3、タペット4を介してプランジャ6をリフトさせる。カム1のリフトが減少するとタペット4に挿入したスプリング5によりプランジャ6はカム回転初期の状態に戻る。
【0007】このプランジャ6の上下の動きによって、ユニットインジェクタのプランジャ室7に供給された燃料が圧縮され、圧力がスプリングケージ9からディスタンスピース13を通り、ノズル15に伝わる。針弁14に作用する噴射圧力が針弁スプリングの力11に打ち勝つと針弁14が開き、燃料がノズル15を介して図示しないエンジンのシリンダ内に噴射される。
【0008】燃料噴射量の制御は、電磁弁18により、ポペット弁25を開閉しプランジャ室7からの燃料の流れをON,OFFする事で行なっている。ポペット弁25を閉じている間はプランジャ室7が閉空間になるので、噴射圧力が上昇し、針弁14が針弁スプリング11の力に抗して開き、燃料を噴射する。また、ポペット弁25を開くと、プランジャ室7からポペット弁25を介して噴射圧力が開放されるので、針弁14が針弁スプリング11の力によって閉じ、燃料噴射が終了する。
【0009】電子制御式の場合、機械式のラックが電磁弁18の通電期間に相当する。この通電期間は、各種センサ信号に基づいて、ECU100により適正な噴射タイミングと噴射期間が計算されることで、ポペット弁開閉タイミング信号として電磁弁18に送られる。
【0010】図11は、上記電子制御式ユニットインジェクタにおけるECU100の制御手順を示すフローチャートである。まず、ステップS21で、エンジン停止スイッチがONにされるまで、ECU100は、ステップS22で、エンジンの回転数の検出を行ない、ステップS23で、電磁弁18の基本通電期間の算出、基本通電タイミングの算出を行ない、ステップS24で、吸気圧力、油圧、大気圧の検出、吸気温度、油温、燃温の検出、バッテリ電圧の検出、アクセル開度の検出を行なう。続いてECU100は、ステップS25で、通電タイミングの補正、ステップS26で、通電電流値の補正を行なう。
【0011】そしてECU100は、ステップS27で、エンジンの回転数がアクセル開度相当の回転数である場合、ステップS28で、気筒を判別し、ステップS29で、ポペット弁開閉タイミング信号を出力し、電磁弁18の通電を行なう。またステップS27で、エンジンの回転数がアクセル開度相当の回転数でない場合、ステップS30で、電磁弁18の通電期間の補正を行なった後、ステップS28で、気筒を判別する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ユニットインジェクタの場合、列型ポンプの様に吸い戻し機構を持たないため、微少噴射量を制御する事が困難になるという問題がある。
【0013】図12は、従来の機械式ユニットインジェクタのプランジャリードの展開図上に、噴射量特性との関係をグラフで示した図である。また図13は、従来の電子制御式ユニットインジェクタの噴射量特性をグラフで示した図である。
【0014】図12において、Bで示したグラフは、エンジン回転数がローアイドル回転数相当の時の噴射量とラックの関係を示し、Aで示したグラフは、エンジン回転数がハイアイドル回転数相当の時の噴射量とラックの関係を示す。点線Cは、ラックの展開図から求めた、静的吐出噴射量を示す。
【0015】理想的には、静的吐出噴射量と実際の噴射量は一致するが、現実には燃料の弾性や、プランジャクリアランスからの燃料漏れ、動的な圧力の発生により、図12に示すような傾向になる。すなわち、ローアイドル時とハイアイドル時のラック位置が異なるのは、カム回転速度が異なるので送油率が異なるためと、同じリードを用いていても、燃料がプランジャクリアランスから漏れる量が時間に依存することにより、カム回転速度の速いハイアイドルでは漏れ量が少なく、逆にローアイドルでは多くなるためである。
【0016】そのため、ハイアイドルでは、ローアイドルと同量の噴射量を噴射するためにより小さな有効ストローク範囲を使用する事になり、ローアイドルでは漏れ分により大きな有効ストローク範囲を利用する事になる。同一噴射量でも利用するラック位置が大きく異なる事と、噴射量の少ない領域でラックの移動量に対し噴射量の変化割合が大きくなる領域がある事が、エンジンのハンチングを発生しやすくし、対策を困難なものにしている。
【0017】本発明の目的は、エンジンにおけるハンチングの発生を抑えるユニットインジェクタを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し目的を達成するために、本発明のユニットインジェクタは以下の如く構成されている。
【0019】(1)本発明のユニットインジェクタは、機械式ユニットインジェクタにおいて、ラックの移動量に対するプランジャリードの高さの変化率を部分的に変化させている。
【0020】(2)本発明のユニットインジェクタは、電子制御式ユニットインジェクタにおいて、通電期間の変化率を部分的に変化させている。
【0021】(3)本発明のユニットインジェクタは、機械式ユニットインジェクタにおいて、噴射量特性が急変するガバナアクチュエータの位置情報を基に、前記ガバナアクチュエータの位置の変化率を制御する。
【0022】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態に係る機械式ユニットインジェクタのプランジャリード(3段階)の展開図上に、噴射量特性との関係をグラフで示した図である。本第1の実施の形態におけるプランジャリードは、図9に示したユニットインジェクタのプランジャ6に切り欠いたリード61として用いられる。
【0023】本実施の形態では、図1に示すように、プランジャのリード角度を噴射量の少ない領域で小さくし、3段階に変化させる。すなわち、噴射量の多い領域では、従来とほぼ同じリード角度θ1で良い。Bの領域ではローアイドルの噴射特性に合わせたリード傾きθ2、Cの領域ではハイアイドルの噴射特性に合わせたリード傾きθ3とする。すなわち、θ1>θ3≧θ2となるように設計すれば、θ2、θ3の領域では、ラック当りのストローク変化量が少なくなるため、燃料変化量も少なくなるので、従来見られたような、噴射量の急変が抑えられた緩やかな噴射特性が得られる。
【0024】このように、ハイアイドルとローアイドルで、それぞれに適したリード角度を選定する3段階のリードを設計すれば、従来の問題を解決できる。リードの角度を低噴射領域で小さくしたので、ラック当り有効ストロークの変化量は少なくなる。有効ストロークに応じて燃料噴射量が決まるので、ラック当り噴射量の変化割合が少なくなり、緩やかな噴射量特性が得られる。
【0025】さらに、図1ではθ3>θ2としたので、ハイアイドル時のラック位置とローアイドル時のラック位置を、後述する図2に示すようにθ3=θ2とするよりも、近付いた位置に設計する事ができる。この工夫によって、少ないラック移動量で、噴射量をハイアイドルから定格点まで制御できる。または、ラック移動量はそのままで、最大噴射量を多くするリード設計が可能になる。
【0026】図2は、機械式ユニットインジェクタのプランジャリード(2段階)の展開図上に、噴射量特性との関係をグラフで示した図である。図2に示すように、図1に対してθ2=θ3としても基本的な改善効果を得る事ができる。
【0027】図2に示すようにリード角度を2段階に変化させても、図1と同様の効果は得られるが、ハイアイドルで噴射量が変化するラック位置と、ローアイドルで噴射量が変化するラック位置とが離れているため、ハイアイドルからローアイドルまで全域を同一の小さいリード角度でカバーするとなると、ラックのストロークの大部分を小さなリード角度で設計しなければならない。これは、最大噴射量を減少する事につながり、エンジン本来の目的を果さなくなりかねない。そこで図1では、θ1>θ3≧θ2となるように設計している。ここでθ3=θ2である場合、図2の2段リードと同様になる。
【0028】以上のように本第1の実施の形態によれば、機械式ユニットインジェクタにおいて、ラックの移動量に対するプランジャリードの高さの変化率を部分的に変化させている。すなわち、ハイアイドル時に用いるリード部分のリード角度をθ3、ローアイドル時に用いるリード部分のリード角度をθ2、定格点で用いるリード部分のリード角度をθ1とし、θ2≦θ3<θ1の関係で設計している。これにより、内燃機関(エンジン)のハンチングの発生が抑えられる。
【0029】本第1の実施の形態では、展開図上で直線となるリードを3段階に分割して説明を容易としているが、必ずしも直線である必要はない。直線から直線へと移行する際に緩やかな曲線でつないだり、多項式で表示されるような曲線状であっても問題はない。すなわち、ラックの移動量に対するプランジャリードの高さの変化率が部分的に変化することを特徴としている。
【0030】(第2の実施の形態)図3は、本発明の第2の実施の形態に係る電子制御式ユニットインジェクタの断面構造図とシステム構成を示す図であり、図4は、この電子制御式ユニットインジェクタの噴射量特性をグラフで示した図である。図3において図10と同一な部分には同符号を付してある。
【0031】図13に示したように、従来の電子制御式ユニットインジェクタは、機械式ユニットインジェクタと同様の特性を示している。そこで本第2の実施の形態では、図3に示すように、一度試験によって、噴射量特性が急変する通電期間を調べておき、その情報を持ったデータベース103をECU(electronic controlunit)100のCPU101と接続する。
【0032】図4に示すように、通常問題のない範囲(噴射量の大きな領域)での外乱に対する通電期間の変化量をZとすると、急変領域でエンジンを制御する際は、その変化量をZ/N(N>1)として、同じ外乱でも低噴射領域では通電期間の変化量を少なくする。Nの値は急変する通電期間と同様にデータベース103に入力しておき、エンジン回転数に応じてNを決め、エンジン負荷、アクセル開度に応じた通電期間に応じて変化量を決めて制御するよう、ECU100にプログラムを組んでおく。
【0033】図5は、CPU101の制御ブロック図である。CPU101は、各種センサからのTDC、クランク角度、各部圧力、各部温度等の信号を入力し、駆動UI選定と運転モード判定を行なう。CPU101は、運転モード判定を行なった後、データベース103の判別データ、基本開弁時間、タイミングデータ等を基に、駆動タイミング設定と駆動時間設定を行なう。その後CPU101は、データベース103の補正データ、加減速データ、デッドタイム、バッテリー電圧等を基に、駆動タイミング補正と駆動時間補正を行なう。そしてCPU101は、インジェクタ駆動パルスを発生する。
【0034】図6は、上記電子制御式ユニットインジェクタにおけるECU100の制御手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1で、エンジン停止スイッチがONにされるまで、ECU100は、ステップS2で、エンジンの回転数の検出を行ない、ステップS3で、電磁弁18の基本通電期間の算出、基本通電タイミングの算出を行ない、ステップS4で、吸気圧力、油圧、大気圧の検出、吸気温度、油温、燃温の検出、バッテリ電圧の検出、アクセル開度の検出を行なう。続いてECU100は、ステップS5で、通電タイミングの補正、ステップS6で、通電電流値の補正を行なう。
【0035】そしてECU100は、ステップS7で、エンジンの回転数がアクセル開度相当の回転数である場合、ステップS8で、気筒を判別し、ステップS9で、ポペット弁開閉タイミング信号を出力し、電磁弁18の通電を行なう。またステップS7で、エンジンの回転数がアクセル開度相当の回転数でない場合、ステップS10で、基本通電期間が噴射量の急変領域であれば、ステップS11で、補正量をZ/N(N>1)とし、ステップS10で、基本通電期間が噴射量の急変領域でなければ、ステップS12で、補正量をZとする。その後、ステップS8で、気筒を判別する。
【0036】以上のように本第2の実施の形態によれば、外乱に対する通電期間の変化率(変化割合)をデータベースの情報に応じてECUで部分的に制御することで、外乱当りの噴射量の変化割合を少なくする。これにより、エンジンのハンチングが抑えられる。
【0037】(第3の実施の形態)図7は、本発明の第3の実施の形態に係る機械式ユニットインジェクタの断面構造図とシステム構成図であり、図8は、この機械式ユニットインジェクタの噴射量特性をグラフで示した図である。図7において、図9と同一な部分には同符号を付してある。
【0038】本第3の実施の形態では、図7に示すように、機械式ユニットインジェクタのラックを制御するガバナアクチュエータを、電子制御式ユニットインジェクタのデータベースと同様のデータベース103を利用して電気的に制御する。プランジャに切り欠いたリードが、図12に示したような一直線のリードであっても、一度試験によって、噴射量特性が急変するラック位置とガバナアクチュエータ位置の関係、及びエンジン回転数の関係を調べておき、その情報を持ったデータベース103をECU100のCPU101と接続し、ガバナアクチュエータを制御する。
【0039】図8に示すように、通常問題のない範囲(噴射量の大きな領域)での外乱に対するラック位置の変化量をZとすると、急変領域でエンジンを制御する際は、その変化量をZ/N(N>1)として、同じ外乱でも低噴射領域ではラック位置の変化量を少なくする。Nの値は急変するラック位置と同様にデータベース103に入力しておき、エンジン回転数に応じてNを決め、エンジン負荷、アクセル開度に応じたラック位置に応じて変化量を決めて制御する。ガバナアクチュエータを電気的に制御すれば、噴射量の少ない領域の外乱に対するラック変化量が少なくなるので、外乱に対する噴射量の変化量が少なくなる。
【0040】以上のように本第3の実施の形態によれば、従来の機械式ユニットインジェクタを制御するガバナアクチュエータに送る情報に、噴射量が急変するガバナアクチュエータ位置すなわちラック位置の情報を持たせ、噴射量急変領域でのラック移動割合を少なくなる様に変化させている。すなわち、外乱に対するガバナアクチュエータ位置(ラック位置)の変化率(変化割合)を、データベースの情報に応じてECUで制御することで、外乱に対する噴射量の変化割合が少なくなり、緩やかな噴射量特性が得られる。これにより、エンジンのハンチングの発生が抑えられる。
【0041】なお、本発明は上記各実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施できる。
【0042】
【発明の効果】本発明のユニットインジェクタによれば、ローアイドル、ハイアイドル等の噴射特性に合わせてラックの移動量に対するプランジャリードの高さの変化率を変化させることで、エンジンにおけるハンチングの発生を抑えることができる。
【0043】本発明のユニットインジェクタによれば、外乱に対する通電期間の変化率を部分的に制御することで、外乱当りの噴射量の変化割合を少なくすることができ、エンジンにおけるハンチングの発生を抑えることができる。
【0044】本発明のユニットインジェクタによれば、外乱に対するガバナアクチュエータ位置の変化率を制御することで、外乱に対する噴射量の変化割合が少なくなり、緩やかな噴射量特性が得られ、エンジンにおけるハンチングの発生を抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
【公開番号】 特開2001−227433(P2001−227433A)
【公開日】 平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願番号】 特願2000−41565(P2000−41565)