トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 燃料噴射ポンプ
【発明者】 【氏名】森 克巳

【要約】 【課題】カムシャフトが打音を発生することを防止し、部材の摩耗を低減する燃料噴射ポンプを提供する。

【解決手段】はす歯ギア23はカムシャフト20の端部に取り付けられており、カムシャフト20とともに回転する。エンジンのクランクシャフトからはす歯ギア23が受ける駆動力によりカムシャフト20は矢印B方向に付勢される。円板部22は、カム21に対し、はす歯ギア23がカムシャフト20を付勢する方向の前方にカムシャフト20と一体に形成されており、ワッシャ25に係止される。円板部22はジャーナル15で軸受けされているカムシャフト20の被軸受部20aと同軸に形成されており、カム21よりも大径である。円板部22とワッシャ25との摺動面積は大きく、円板部22とワッシャ25とが摺動する摺動面の領域は同一である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カムシャフトと、前記カムシャフトとともに回転するカムと、前記カムを収容し、燃料加圧室を有するハウジングと、前記カムにより駆動され、往復移動することより前記燃料加圧室に吸入した燃料を加圧し圧送する可動部材と、一方の軸方向に前記カムシャフトを付勢する付勢手段と、前記カムシャフトが前記一方の軸方向に移動することを規制する係止部材と、を備える燃料噴射ポンプであって、前記カムとは異なる前記カムシャフトの軸方向位置に、前記カムシャフトが軸受けされる被軸受部と同軸に配設されている円板部を備え、前記係止部材は、前記円板部を係止することにより前記一方の軸方向への前記カムシャフトの移動を規制することを特徴とする燃料噴射ポンプ。
【請求項2】 前記付勢手段は前記カムシャフトとともに同軸で回転するはす歯ギアであり、前記はす歯が受ける駆動力により前記カムシャフトは回転することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項3】 前記カムに対し、前記付勢手段の付勢方向前方に前記円板部を配設していることを特徴とする請求項1または2記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項4】 前記ハウジングと別部材であり前記ハウジングに結合している第1の結合部材と、前記第1の結合部材と別部材であり前記第1の結合部材に結合している第2の結合部材とを備え、前記円板部は前記第1の結合部材と前記第2の結合部材とが形成する間隙に収容され、前記円板部は前記付勢手段の付勢力により両結合部材の一方に係止されることを特徴とする請求項1、2または3記載の燃料噴射ポンプ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)用の燃料噴射ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】燃料噴射ポンプのカムシャフトはエンジンのクランクシャフトからベルトやギア等により駆動力を伝達される。カムシャフトに取り付けられているカムが可動部材を駆動し可動部材が往復移動することにより、燃料噴射ポンプは燃料加圧室に吸入した燃料を加圧し圧送する。
【0003】燃料噴射ポンプのカムシャフトが回転しているとき、カムシャフトが軸方向に移動し、例えば燃料噴射ポンプのハウジングと衝突し打音を発生することがある。この打音の発生を防止するため、カムシャフトを一方の軸方向に付勢する付勢手段を燃料噴射ポンプに備え、カムシャフトが軸方向に移動することを防止することが考えられる。
【0004】駆動力の小さい小型のエンジンでは、ベルト等でカムシャフトに駆動力を伝達することは可能である。大型のエンジンは駆動力が大きいので、クランクシャフトからカムシャフトが駆動力を受ける場合、ギアで受けることが一般的である。ギアで駆動力を受ける場合、カムが可動部材を駆動するときに発生するバックラッシュを小さくし、カムに伝達される駆動力を平坦化するため、はす歯ギアで駆動力を受けることが望ましい。はす歯ギアで駆動力を受けると、カムシャフトが一方の軸方向に付勢されるので、はす歯が付勢手段を兼ねることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エンジンの大きさに関わらずカムシャフトが一方の軸方向に付勢され、カムが係止部材に係止されることによりカムシャフトの移動を規制する構成では、カムシャフトの回転によりカムが係止部材と摺動する。カムと係止部材との摺動面積、特にカム山の低い部分の摺動面積は小さいので、カムおよび摺動部材の摺動面に加わる面圧が大きくなる。さらに、カムと摺動する係止部材の摺動面の領域はカム山の高低により変化する。したがって、両部材が摩耗しやすくなり、部材寿命が短くなるという問題がある。
【0006】また、カムシャフトが一方の軸方向に付勢されカムが係止部材に係止された状態においても、反動でカムシャフトが他方の軸方向に移動することを極力防止するため、カムの反係止部材側に形成される間隙は極力小さいことが望ましい。しかし、カムを収容するハウジングとカムとの間で間隙を最適に調整することは困難である。本発明の目的は、カムシャフトが打音を発生することを防止し、部材の摩耗を低減する燃料噴射ポンプを提供することにある。本発明の他の目的は、円板部を収容する間隙の調整が容易な燃料噴射ポンプを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1または3記載の燃料噴射ポンプによると、カムシャフトはカムと異なる軸方向位置に円板部を有し、一方の軸方向にカムシャフトを付勢する付勢手段の付勢力により円板部が係止部材に係止される。円板部が係止部材に係止されるので、カムが他部材と摺動することを防止できる。円板部を大径にすることにより円板部と係止部材との摺動面積をカムよりも大きくすることができるので、円板部と係止部材との摺動面に加わる面圧が低下する。さらに、円板部はカムシャフトに同軸に配設されているので、円板部および係止部材の摺動面の領域が同じである。したがって、円板部および係止部材の摩耗を低減し、部材寿命を延ばすことができる。
【0008】本発明の請求項2記載の燃料噴射ポンプによると、カムシャフトとともに同軸で回転するはす歯ギアがカムシャフトを回転する駆動力を受ける。はす歯で駆動力を受けることにより、カムが可動部材を駆動する際に発生するバックラッシュが小さくなり、可動部材に加わる駆動力が平坦化される。さらに、カムシャフトを付勢する付勢手段をはす歯が兼ねるので、付勢手段を新たに設ける必要がなく、部品点数が減少する。
【0009】円板部を収容する間隙の軸方向の幅が狭いと、円板部が軸方向両側で挟持され摺動するので、部材の摩耗が激しくなる。また、円板部を収容する間隙の軸方向の幅が広いと、付勢手段の付勢力に抗してカムシャフトが他方の軸方向に移動し、打音が発生するおそれがある。そこで本発明の請求項4記載の燃料噴射ポンプによると、ハウジングと別部材である第1の結合部材と第2の結合部材との間に軸方向に形成される間隙に円板部を収容している。したがって、ハウジングに組み付ける前の状態で、両結合部材とカムとにより間隙を容易に調整することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例を図に基づいて説明する。
(第1実施例)本発明の第1実施例によるディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプを図1および図2に示す。図1に示すように、燃料噴射ポンプ10のポンプハウジングは、ハウジング本体11とシリンダヘッド12、13とを有する。ハウジング本体11はアルミ製である。シリンダヘッド12、13は鉄製であり、可動部材としてのプランジャ30を往復移動自在に支持している。シリンダヘッド12、13の内周面と、逆止弁35の逆止弁部材36の端面と、プランジャ30の端面とにより燃料加圧室50が形成されている。
【0011】軸受カバー14は、ボルト29でハウジング本体11に固定されており、カムシャフト20の軸受けであるジャーナル15を収容している。軸受カバー14とカムシャフト20との間はオイルシール16によりシールされている。カムシャフト20はハウジング本体11および軸受カバー14に回転可能に収容されている。図2に示すように、断面円形状のカム21はカムシャフト20に対し偏心しており、カムシャフト20と一体に形成されている。カムシャフト20を挟んで径方向の180°反対側にプランジャ30がそれぞれ配置されている。シュー18は外形が四角形状に形成されており、シュー18とカム21との間にシュー18およびカム21と摺動自在にブッシュ19が介在している。プランジャ30と対向するシュー18の外周面とプランジャヘッド30aの端面とは平面状に形成され互いに接触している。
【0012】図1に示すように円板部22は、カム21に対し、はす歯ギア23がカムシャフト20を付勢する方向の前方にカムシャフト20と一体に形成されている。円板部22はジャーナル15で軸受けされているカムシャフト20の被軸受部20aと同軸に形成されており、カム21よりも大径である。円板部22と軸受カバー14との間にはワッシャ25が配設されている。軸受カバー14の円板部22側端部およびワッシャ25は係止部材を構成している。また、カム21の反円板部側のハウジング11にワッシャ26が配設されている。ワッシャ25、26は高硬度かつ低摩擦の材質で形成されている。
【0013】はす歯ギア23はカムシャフト20の端部に取り付けられており、カムシャフト20とともに回転する。はす歯ギア23は図示しないギア列によりエンジンのクランクシャフトから駆動力を受ける。はす歯ギア23は図1の矢印A方向に回転する。はす歯ギア23が矢印A方向に駆動力を受けることにより、カムシャフト20は図1の矢印B方向に付勢される。
【0014】プランジャ30は、カムシャフト20の回転にともないシュー18を介しカム21により往復駆動され、燃料流入通路51から逆止弁35を通り燃料加圧室50に吸入した燃料を加圧する。逆止弁35は燃料加圧室50から燃料流入通路51に燃料が逆流することを防止する。
【0015】スプリング31はシュー18側にプランジャ30を付勢している。シュー18およびプランジャ30のそれぞれの接触面が平面状に形成されているので、シュー18とプランジャ30との面圧が低下する。さらに、カム21の回転にともないシュー18はカム21と摺動しながら自転することなく公転する。
【0016】シリンダヘッド12、13にそれぞれ配管接続用の接続部材41、42が接続されている。シリンダヘッド12、13および接続部材41、42により燃料吐出通路52が形成されている。燃料吐出通路52の途中に逆止弁部材38を有する逆止弁37が構成されている。逆止弁37は燃料吐出通路52から燃料加圧室50に燃料が逆流することを防止する。各燃料加圧室50で加圧された燃料は、接続部材41、42から燃料配管を介し図示しないコモンレールに供給される。
【0017】次に、燃料噴射ポンプ10の作動について説明する。カムシャフト20の回転に伴いカム21が回転し、カム21の回転に伴いシュー18が自転することなく公転する。このシュー18の公転に伴いシュー18およびプランジャ30に形成されている平面状の接触面同士が摺動することによりプランジャ30が往復移動する。
【0018】シュー18の公転に伴い上死点にあるプランジャ30が下降すると、フィードポンプ60からの吐出燃料が図示しない調量弁によって調整され、その調整された燃料が燃料流入通路51から逆止弁35を経て燃料加圧室50に流入する。下死点に達したプランジャ30が再び上死点に向けて上昇すると逆止弁35が閉じ、燃料加圧室50の燃料圧力が上昇する。燃料加圧室50の燃料圧力が逆止弁37の下流側の燃料圧力よりも上昇すると各逆止弁37が交互に開弁する。接続部材41、42から燃料配管を通りコモンレールに供給された燃料はコモンレールで畜圧され一定圧に保持される。そして、コモンレールから図示しないインジェクタに高圧燃料が供給される。
【0019】はす歯ギア23がエンジンのクランクシャフトから駆動力を受け矢印A方向に回転することにより、カムシャフト20は矢印B方向に付勢される。カム21がワッシャ25に係止される構成に比べ、カム21よりも大径の円板部22がワッシャ25に係止されるので、円板部22とワッシャ25との摺動面積が大きくなる。さらに、円板部22はジャーナル15で軸受けされているカムシャフト20の被軸受部20aと同軸に形成されているので、円板部22とワッシャ25とが同じ摺動面の領域で摺動する。したがって、摺動による円板部22の摩耗を低減することができる。第1実施例では、カム21に対し、はす歯ギア23から受ける付勢力の付勢方向前方に円板部22を配置したが、付勢方向後方に円板部23を配置してもよい。また、カム21の軸方向両側に円板部を配置してもよい。
【0020】(第2実施例)本発明の第2実施例による燃料噴射ポンプを図3に示す。第1実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。第1の結合部材である軸受カバー80はハウジング本体11にボルト29で結合されている。第2の結合部材であるスクリュウ81は軸受カバー80にねじ結合している。スクリュウ81はカムシャフト70を軸受けするジャーナル82を収容している。カム21に対し、円板部71は、はす歯ギア23から受ける付勢力の付勢方向前方に離隔してカムシャフト70と一体に形成されている。円板部71は、軸受カバー80とスクリュウ81との間に軸方向に形成される間隙100に収容されている。円板部71を挟んで、ワッシャ83はスクリュウ81側に取り付けられ、ワッシャ84は軸受カバー80側に取り付けられている。はす歯ギア23から受ける付勢力により円板部71はワッシャ83に係止されている。スクリュウ81の円板部71側端部およびワッシャ83は係止部材を構成している。
【0021】軸受カバー80およびスクリュウ81がハウジング本体11と別部材であるから、ハウジング本体11とシリンダヘッド12、13とを組み付けた構造体にカムシャフト20を組み付ける前に、軸受カバー80とスクリュウ81との間に形成される間隙100の軸方向の幅を、広すぎず、かつ狭すぎないように最適に調整することが容易である。したがって、クランクシャフトから受ける駆動力の反動によりはす歯ギア23の付勢方向と反対方向にカムシャフト20が移動しても、打音が小さくなる。また、円板部71がワッシャ83、84の両方と摺動しないので、円板部71の摩耗を低減できる。
【0022】ハウジング本体11と別部材である軸受カバー80とスクリュウ81とが形成する間隙100に円板部71を収容することにより間隙100の調整を容易にするという効果は、燃料噴射ポンプのカムシャフトをいずれの軸方向に付勢する場合においても有効である。
【0023】以上説明した本発明の実施の形態を示す上記複数の実施例では、はすギア歯23から受ける付勢力により、カム21ではなくカム21と異なる軸方向位置に配置した円板部がワッシャに係止される。円板部とワッシャとが摺動する面積をカム21とワッシャとが摺動する場合よりも大きくすることができるので、摺動面に加わる面圧が小さくなる。さらに、円板部はカムシャフト20の被軸受部20aと同軸に配設されているので、円板部とワッシャとが同じ領域で摺動する。したがって、円板部の摩耗を低減できるので、部材寿命が延びる。
【0024】本発明では、はす歯でエンジンの駆動力をカムシャフトに伝達したが、エンジンの駆動力の大きさにより、ベルト等でカムシャフトに駆動力を伝達することも可能である。この場合、カムシャフトを一方に付勢する付勢手段、例えばスプリング等を配設する必要がある。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【代理人】 【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
【公開番号】 特開2001−227426(P2001−227426A)
【公開日】 平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願番号】 特願2000−40959(P2000−40959)