| 【発明の名称】 |
燃料噴射弁およびこれを搭載する内燃機関 |
| 【発明者】 |
【氏名】前川 典幸
【氏名】田辺 好之
【氏名】石川 享
【氏名】関根 篤
【氏名】門向 裕三
【氏名】山門 誠
【氏名】安部 元幸
【氏名】岡本 良雄
【氏名】土屋 雅弘
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| 【要約】 |
【課題】弁体やハウジング、案内隙間等の寸法精度を厳しく管理しなくても、燃料の粘性低下の影響を受けることなく、弁体バウンシングの少ない燃料噴射弁を実現する。
【解決手段】燃料噴射孔2と、前記燃料噴射孔の近傍に配設される弁座3と、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体4と、前記弁体を前記弁座に押付ける力を発生するスプリング12と、前記弁体を駆動する駆動手段とを備える燃料噴射弁において、前記弁体4と前記スプリング12との間に、前記弁体とは別の連動部材13を介在させばかりでなく、弁体4の上部にばね部17を設ける。これにより、弁体4と弁座3との衝突エネルギを吸収し、弁体4のバウンシングが低減される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記ばね部は、内径部に切り欠きの形成されたリング状部材を有する構造である燃料噴射弁。 【請求項2】 燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記ばね部は内径部に切り欠きの形成されたリング状部材を有し、前記内径部に前記連動部材の先端部が往復動可能に挿入された構造である燃料噴射弁。 【請求項3】 燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記ばね部は、前記連動部材の弁体側先端部の管壁の円周方向に、環状の薄肉部が形成された構造である燃料噴射弁。 【請求項4】 燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記ばね部は、前記連動部材の弁体側先端部が、前記弁体に線接触で当接する構造である燃料噴射弁。 【請求項5】 燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記ばね部は、前記弁体と前記連動部材の互いの対向面のうち、一方に環状の凸部を設けるとともに他方に凹部を設け、前記凸部と前記凹部とによって囲まれた燃料ダンパ室が形成される構造である燃料噴射弁。 【請求項6】 燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記連動部材と前記弁体の互いの対抗面のうち少なくともいずれか一方に、硬度を上げるための表面処理が施されてなる燃料噴射弁。 【請求項7】 請求項1ないし6のうちいずれかに記載の燃料噴射弁が搭載されてなる内燃機関。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は燃料噴射弁に係り、特に、内燃機関に搭載されて燃料供給量を制御するために好適な燃料噴射弁、およびこれを搭載した内燃機関に関する。 【0002】 【従来の技術】燃料噴射弁は、燃料噴射孔と、その近傍に配設される弁座と、弁座と対向する位置に、軸方向に摺動可能に支持された弁体と、スプリングとを備える。スプリングは、弁体を弁座方向へ押し付ける力を発生する。 【0003】スプリング力により弁座と弁体とが接触している状態では、燃料通路が閉じられるため、燃料噴射孔から燃料は噴射されない。電磁力や燃料圧力などを利用した駆動手段により、弁体が軸方向に摺動し、弁座から離れている状態になると、燃料通路が開かれるため、燃料噴射孔から燃料が噴射される。このように、燃料噴射弁では、弁体の位置を切り替えることによって、燃料供給量を制御する。 【0004】ここで、弁体の位置を切り替える際には、弁座と弁体との衝突や、弁座とは軸方向の反対側にあるストローク規制手段と弁体との衝突が起こる。この衝突時に弁体が跳ね返る挙動(以下ではバウンシングと記す)によって、燃料噴射量に微小なばらつきが生じる可能性があるため、バウンシングを低減することが望ましい。 【0005】ハウンシングを低減するための従来技術として、特開平8−189437号公報がある。これは、弁体と、弁体を支持するハウジングとの隙間に燃料絞り通路を形成し、弁体に粘性抵抗力を働かせることにより、弁体が弁座に衝突する速度を減少させ、バウンシングを低減しようとするものである。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術では、弁体とハウジングとの隙間の寸法がわずかに変化すると、弁体に働く粘性抵抗力が大きく変化する。よって、弁体やハウジングの加工寸法のばらつきがある場合や、案内隙間の範囲で弁体の中心軸がハウジングの中心軸からずれた場合などには、十分な粘性抵抗力が得られなくなる。 【0007】したがって、安定したバウンシング低減効果を得ようとすれば、弁体やハウジング、案内隙間などの寸法精度を厳しく管理する必要があるという問題があった。また、燃料温度の上昇により、燃料の粘性が低下する場合にも、十分な粘性抵抗力が得られなくなる問題があった。 【0008】本発明の課題は、上記問題を解決し、弁体やハウジング、案内隙間などの寸法精度を厳しく管理することなく、燃料の粘性が低下した場合にも、効果の安定したバウンシング低減効果を得ることである。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、燃料噴射孔の近傍に配設される弁座と、前記弁座との接離により燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁体をばね部を介して前記弁座に押付ける連動部材とを備え、前記ばね部は、内径部に切り欠きの形成されたリング状部材を有する構造である。 【0010】また、前記リング状部材の内径部に、前記連動部材の先端部が往復動可能に挿入された構造でもよいし、また、前記ばね部は、前記連動部材の弁体側先端部管壁の円周方向に、環状の薄肉部が形成された構造でもよい。また、前記ばね部は、前記連動部材の弁体側先端部が、前記弁体に線接触で当接する構造にもできる。 【0011】また、前記ばね部は、前記弁体と前記連動部材の互いの対向面のうち、一方に環状の凸部を設けるとともに他方に凹部を設け、前記凸部と前記凹部とによって囲まれた燃料ダンパ室が形成される構造でもよいし、また、前記連動部材と前記弁体の互いの対抗面のうち少なくともいずれか一方に、硬度を上げるための表面処理を施してもよい。 【0012】本発明によれば、簡単構造のばね部によって、弁体と弁座との衝突エネルギや、弁体とストッパとの衝突エネルギが吸収され、弁体バウンシングを低減でき、精密な噴射量制御が可能となる作用効果がある。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の燃料噴射弁の一実施形態を表す。 【0014】ノズル1には燃料噴射孔2、弁座3が設けられている。弁体4は、可動鉄心5、ロッド6、ボール7を結合してなり、ロッド6の軸方向に摺動可能なように支持される。ロッド6のショルダー部8に対向する位置には、ストローク規制手段としてのストッパ9が設けられる。 【0015】弁体4は、ボール7と弁座3とが接触する下端位置から、ショルダー部8とストッパ9とが接触する上端位置までの範囲を摺動することができる。弁体4が上端位置にあるときにも、可動鉄心5と内側鉄心10との間には、空隙を設けるようにする。燃料は、燃料供給口16より供給され、燃料噴射孔2に導かれる。 【0016】内側鉄心10内にはスプリングアジャスタ11が固定される。スプリングアジャスタ11の下端部を固定端として、スプリング12が圧縮状態で設けられる。スプリング12と、弁体4の間には、軸方向に摺動可能な連動部材13が設けられている。 【0017】スプリング力は、連動部材13を介して、弁体4に伝達され、弁体4は弁座3に押し付けられる。この状態では、燃料通路が閉じられるため、燃料噴射孔2からの燃料噴射は行われない。 【0018】内側鉄心10と外側鉄心14に囲まれた空間にはコイル15が設けられる。コイル15に電流を流すと、内側鉄心10、可動鉄心5、外側鉄心14が磁気回路を構成し、可動鉄心5は内側鉄心10に電磁力によって吸引され、弁体4は上端位置に移動する。この状態では、弁体4と弁座3の間に隙間ができるため、燃料通路が開かれ、燃料噴射孔2から燃料が噴射される。 【0019】燃料噴射弁の働きは、上記のように、弁体4の往復動する位置を切り替えることによって、弁体4のボール7と弁座3とからなる燃料通路が開閉され、これによって燃料供給量が制御されることである。 【0020】ここで、弁体4の位置を切り替える際には、弁体4と弁座3との衝突や、弁体4とストッパ9との衝突が起こる。この衝突時に起こる弁体4のバウンシングによって、燃料噴射量の微小なばらつきが生じる可能性があるため、バウンシングを低減することが望ましい。 【0021】そこで、本発明では、スプリング12と弁体4との間に、軸方向に摺動可能な連動部材13を設けるだけではなく、弁体4と連動部材13との間に、ばね部17を設ける。ばね部17のA−A’断面形状は、図1に示すように、内径部に切り欠きをもつリング状とする。 【0022】ここで、図2〜3を用いて、連動部材13およびばね部17のはたらきにより、閉弁動作時において、弁体4のバウンシングが低減されるメカニズムの一例を説明する。 【0023】図2は、燃料噴射弁のうち、弁座3、弁体4、ストッパ9、スプリング12、連動部材13のみを取り出し、開弁保持状態から閉弁保持状態に遷移する過程を、図中(a)〜(e)の順に示したものである。 【0024】(a)「開弁保持状態」では、弁体4が電磁力によって上端位置で保持されている。 (b)「弁体移動」では、電磁力が遮断され、スプリング12の力によって、弁体4と連動部材13とが、弁座3方向に移動する。 【0025】(c)「弁体−弁座衝突」は、弁体4と弁座3が衝突した瞬間を示している。 (d)「衝突直後」は、衝突による衝撃によって、連動部材13が上方に跳ね上がる様子を示す。 (e)閉弁保持では、連動部材13は、再び弁体4に接触する状態に戻る。 【0026】図3はこの様子を、(A)従来の弁体の変位波形と、(B)本発明の連動部材13と弁体4の変位波形とを比較して示している。連動部材13とばね部17とよりなる副振動系の固有振動数を、衝突による衝撃力の振動数に一致または近い値に設定しておく。 【0027】たとえば、連動部材の質量は、0.3〜1.5(g)、ばね部のばね定数は、100〜1000(kgf/mm)程度が好適であるが、これに限定するものではない。これにより、副振動系が動吸振器として働く。すなわち、衝撃力により、連動部材13のみが大きく跳ね上がり、弁体4のバウンシングが低減される。 【0028】図4は、閉弁直後の噴霧の様子を、従来のもの(A)と、本発明のもの(B)とについて比較して示している。図3の(A)従来波形では、閉弁後もバウンシングがあるため、図4(A)のように、閉弁後も二次的、三次的な噴射が行われ、これらが噴射量の微小なばらつきの原因となる可能性があった。 【0029】一方、図3の(B)のように、閉弁後のバウンシングが小さいか、全く無い場合には、図4(B)のように、閉弁後は、燃料が噴射されないため、精密な噴射量制御が可能となる。 【0030】次に、本発明におけるばね部17の切り欠きによる応力低減効果を説明する。ばね部17は、その外周部付近が支持され、曲げ変形によって、内径部付近が軸方向に変位するようにして、ばねとして働くようにしている。スプリング12の発生する力や、連動部材13の慣性力などにより、ばね部17の内径部付近には、2〜10(kgf)程度の荷重がかかる。 【0031】ばね部17の内径部付近に切り欠きが無い場合、上記荷重により、内径部付近の応力が非常に高くなり、耐久性の確保が困難となる。応力を下げるために肉厚を厚くすると、ばね部17のばね定数が高く成り過ぎて、バウンシング低減効果がなくなる。 【0032】そこで、本実施形態のばね部では、内径部付近に切り欠きを設けた。切り欠きを設けると、ばね部17の内径部に働く応力が緩和される。よって、肉厚を薄くして、適切なばね定数を設定しつつ、応力が低く耐久性のあるばね部を実現し、バウンシングを低減することが可能となる。 【0033】ここで、ばね部17の三点支持によるばね定数安定効果について言及する。本実施形態では、ばね部17の切り欠きは3ヶ所としている。仮に、4ヶ所の切り欠きを設けた場合、連動部材13とばね部17とは4ヶ所で接触させることが必要となる。 【0034】1ヶ所でも接触していなければ、ばね定数はその分だけ設定値より低くなり、バウンシング低減効果が不安定となるからである。4ヶ所で接触させるためには、ばね部17の平面度を厳しく管理することが必要となり、製造コストが上昇する。 【0035】一方、2ヶ所の切り欠きを設けた場合、連動部材13とばね部17とは2ヶ所で接触する。この場合、連動部材13の支持状態が安定しないため、連動部材13が倒れやすく、擦動部の摩耗などが問題となる。 【0036】本実施形態では、ばね部17の切り欠きは3ヶ所であるから、連動部材13とばね部17との接触部も3ヶ所となる。これにより、ばね部17の平面度に若干ばらつきがあっても、連動部材13とばね部17とは必ず3ヶ所で接触し、常に設計値通りのばね定数が得られる。 【0037】よって、ばね部17の平面度を厳しく管理することなく、低コストで、安定したバウンシング低減効果が得られるようになる。また、連動部材13は三点支持されるので、支持状態は安定しており、連動部材13の倒れが少なく擦動部の摩耗を防止することができるようになる。 【0038】尚、ばね部17を低コストで成形するには、プレス加工が好適である。この場合、ばね部17の平面度を厳しく管理することは困難であるが、切り欠きが3ヶ所であれば、厳しい平面度管理そのものが不要であり、プレス加工を適用することができるようになる。 【0039】また、本実施形態では、連動部材をばね部材によって案内するようにした。すなわち、ばね部17の内径に、連動部材13の下端部をはめ合わせるようにする。これにより、連動部材13はばね部17に案内されるため、両者の相対位置ずれが起こりにくい。よって、ばね部17のばね定数が安定し、バウンシング低減効果も安定するようになる。 【0040】以上のように、図2と図3を用いて説明したバウンシング低減メカニズムは、燃料の絞り通路を設けるなどして、燃料の粘性抵抗力を用いるものではなく、衝撃エネルギを連動部材の運動によって吸収するものである。 【0041】このため、燃料の絞り通路などを設けるために、部品寸法を厳しく管理する必要がない。また、燃料温度の上昇などにより、燃料の粘性が低下した場合にも、安定したバウンシング低減効果が得られる。 【0042】なお、連動部材13の下端面の形状は、図1に示すように、面取りなどを施し、ばね部17と接触する部分を小さくしておくことが好ましい。これにより、ばね部17の荷重がかかる部分が一定に保たれるため、ばね力が安定する。 【0043】また、連動部材13の外周部と、内側鉄心10の内周部と、可動鉄心5の内周部とのうちの何れか一つ以上には、焼き入れ、窒化、メッキなどの表面処理を行い、摺動摩耗を防止することが望ましい。ただし、これに限定されるものではない。 【0044】また、連動部材13とばね部17の突合せ面の少なくとも一方にも、同様に、焼き入れ、窒化、メッキなどの表面処理を行い、衝突摩耗を防止することが望ましいが、これに限定されるものではない。 【0045】図2および図3で示したバウンシング低減メカニズムは一例であり、スプリング荷重や、燃料通路、磁気回路、ストッパなどの形状によっては、異なるメカニズムでバウンシングが低減されることがある。 【0046】たとえば、開弁保持状態から電磁力が遮断されると、弁体4が、連動部材13から分離して、両者間にわずかな隙間がある状態で、弁体4が弁座3に衝突することがある。また、弁体4が弁座3から跳ね返ろうとしたときに、連動部材13が、わずかに遅れて、弁体4に衝突するため、バウンシングが低減されることがある。 【0047】なお、連動部材13とばね部17とよりなる副振動系の固有振動数は、必ずしも衝撃力の振動数に近い値を設定する必要はない。弁体4のバウンシングが低減されれば、いかなる値を設定してもよい。 【0048】また、連動部材13と内側鉄心10との摩擦力を、バウンシング低減のためのダンピング力として利用してもよい。この場合も、燃料の粘性を利用しないため、燃料の粘性が低下しても、安定したバウンシング低減効果が得られる。この場合、ばね部17は、相乗効果を高める働きをする。 【0049】また、燃料の粘性低下をあまり考慮する必要がない場合には、連動部材13の外周と内側鉄心10とに挟まれた、燃料の粘性抵抗力をバウンシング低減に利用してもよい。連動部材13は、燃料通路の空間を利用して、比較的に軸方向に長くすることができるため、大きく、安定した燃料の粘性抵抗力を得ることができる。この場合も同様に、ばね部17は相乗効果を高める作用がある。 【0050】次に、図5および図6を用いて、開弁動作時において、弁体4のバウンシングが低減されるメカニズムの一例を説明する。図5は、燃料噴射弁のうち、弁座3、弁体4、ストッパ9、スプリング12、連動部材13のみを取り出し、閉弁保持状態から開弁保持状態に遷移する過程を、図中(a)〜(e)の順に示したものである。 【0051】(a)「閉弁保持状態」では、スプリング12の力によって、弁体4が弁座3に押し付けられている。 (b)「弁体移動」では、電磁力がはたらき、弁体4と連動部材13とが、上方に移動する。 (c)「弁体−ストッパ衝突」は、上方に移動した弁体4とストッパ9とが衝突する。 【0052】(d)「衝突直後」は、連動部材13が慣性により上方に跳ね上がり、弁体4と連動部材13とが一時的に分離するため、弁体4を跳ね返す方向に働くスプリング力がなくなるので、バウンシングが低減される。 (e)開弁保持では、連動部材13は再び弁体4に接触する状態に戻る。 【0053】図6は、図5で示したメカニズムなどによって、バウンシングが低減される様子を、横軸に時間をとり、縦軸に弁体の変位をとって示したグラフである。連動部材13をもたない従来の燃料噴射弁では、図6(A)のように、ストロークエンドで、弁体4の大きなバウンシングがみられる。一方、連動部材13をもつ本発明の燃料噴射弁では、図6(B)のように、弁体4のバウンシングが低減されるか、バウンシングを全くなくすことができる。 【0054】図6において、電磁力を遮断し、弁体が開弁位置から閉弁位置に向って動き始める時間をTpと呼ぶことにする。少量の燃料を噴射したいときには、Tpを短縮していくことになる。従来構造の場合、弁体が開弁位置付近でバウンシングしている最中に、弁体が動き始めることになる。 【0055】図6(A)の、Tp=t1の場合のように、弁体が負の速度を持っているときに、電磁力を遮断すれば、図6中、イに示すような弁変位波形となる。弁体は電磁力を遮断する以前に、すでに負の速度を持っているため、閉弁位置に到達するまでの時間は短い。 【0056】一方、図6(A)の、Tp=t2の場合のように、弁体が正の速度を持っているときに、電磁力を遮断すれば、図6中、ロに示すような弁変位波形となる。弁体の速度を正から負に反転させる時間分だけ、閉弁位置に到達するまでに多くの時間を要する。 【0057】バウンシングはいつも同じようには起こらずに、周期や振幅が変化する。よって同じ時間に電磁力を遮断しても、そのときに弁体がもっている速度は各動作毎に異なる。これにより、閉弁する時間がばらつき、噴射量に微小なばらつきを生じる可能性があった。 【0058】本発明によれば、図6(B)のように、バウンシングは小さいか、全く無いため、弁体はいつも開弁位置で止まっている状態から、閉弁位置に向って動き始める。よって、閉弁する時間は一定となり、同一のTpに対しては噴射量が一定となり、精密な噴射量制御が可能となる。 【0059】以上のように、本発明によれば、燃料噴射弁の弁体4やノズル1などの部品加工精度を厳しくすることなく、弁体4のバウンシングを低減することができ、燃料噴射量を精密に制御できるようになる。 【0060】図7は、本発明におけるばね部17の他の実施形態を示す図である。図7では、ばね部17を弁体4の一部として形成している。その他の構成は図1のものと同様である。ばね部17を弁体4の一部として形成しているので、副振動系のばねを別に用意する必要がない。したがって、部品点数が少なく、低コストでバウンシング低減効果を得ることができる。 【0061】次に、図8を用いて、本発明におけるばね部17の他の実施形態について説明する。本例は、連動部材13の先端部を小径化して剛性を下げ、ばね効果を持たせるものである。可動鉄心5にばね部を加工することにより、可動鉄心5に加工ひずみが残り、磁気特性が劣化することを防止したい場合には、図8のように、連動部材13の先端部をばね部として利用することができる。 【0062】次に、図9を用いて、本発明のばね部17の他の実施形態について説明する。図に示すように、本例では、連動部材13にくびれ部をばね部17とする。図8のものに比較して、連動部材13と弁体4との突合せ面の面積を大きくし、面圧を下げることにより、衝突磨耗を防止しつつ、連動部材13にばね効果を持たせることができる。 【0063】次に、図10を用いて、本発明におけるばね部17の他の実施形態について説明する。本例のばね部17は、支持部18を支持点として、変形部19が曲げ変形することにより、ばねとして働く。 【0064】図8および図9で示した部材の軸方向の圧縮変形を利用したばねで、弱いばね定数を設定しようとする場合には、部材の肉厚が薄くなり過ぎて強度が確保しにくい場合がある。図10の例では、変形部19の曲げ変形を利用するので、肉厚を確保しつつ、比較的に弱いばね定数を設定することができる。 【0065】次に、図11を用いて、本発明におけるばね部17の他の実施形態について説明する。本例は図10の変形例であるが、図に示すように、弁体4に環状凸部20を設け、連動部材13の下端部外周に環状凸部を設けることにより端面に凹部21を形成し、両者の間に燃料ダンパ室22が形成されるようにした。 【0066】燃料噴射弁の動作中には、連動部材13が、弁体4から離れて跳ね上がり、再び弁体4に衝突することにより、弁体4のバウンシングが起こることがある。本例では、連動部材13の弁体4への再衝突時に、燃料ダンパ室22に閉じ込められた燃料が絞り通路23を通過しようとするため、粘性抵抗力を働かせることができる。よって、連動部材13の再衝突による、弁体4のバウンシングを防止することができるようになる。 【0067】次に、図12を用いて、本発明におけるばね部17の他の実施形態について説明する。連動部材13の下端部を曲面とし、弁体4の連動部材13との突合せ面は平面とする。これにより、連動部材13と弁体4とのヘルツ接触によるばね効果を得ることができる。 【0068】図12の例では、連動部材13と弁体4とが線接触するため、面接触させる場合に比較して、両者が周方向について均一に接触しやすいため、ばね力が変動しにくく、安定したバウンシング低減効果を得ることができるようになる。 【0069】次に、図13を用いて、本発明におけるばね部17の他の実施形態について説明する。本例は、連動部材13の下端部を尖らせると共に、可動鉄心5とロッド部6との間に、リング状のばね部17を設ける。リング状のばね部17は、組み立て前に、単品加工ができるため、厚さ等の寸法管理が行いやすい。よって、ばね特性を管理しやすい利点がある。 【0070】次に、図14を用いて、本発明におけるばね部17の他の実施形態について説明する。連動部材13の軸方向の摺動案内を兼ねるように、可動鉄心5とは別体のばね部17を設ける。可動鉄心5の内周の耐磨耗性を考慮することなく、磁気特性を優先させて可動鉄心5の材料を選定することが可能となる。 【0071】なお、図13および図14で示したばね部は、金属性であることが望ましいが、耐久性が確保できれば樹脂を用いてもよい。樹脂は、比較的弱いばね定数設定が必要な場合に有利である。 【0072】図15を用いて、本発明になる燃料噴射弁を搭載した内燃機関の一実施形態について説明する。図15は、図1〜図14で説明した燃料噴射弁のいずれかを用いて構成した内燃機関の模式図である。 【0073】内燃機関100は、ピストン101、シリンダ102、吸気弁103、排気弁104、点火プラグ105、燃料噴射弁106を備える。ピストン101の往復動に合わせて、吸気弁103の開閉が行われ、シリンダ102内に、空気が導入される。 【0074】図示しないタンク、ポンプなどの燃料供給系から、燃料噴射弁106に燃料が供給される。エンジンコントロールユニットおよび燃料噴射弁駆動回路の働きにより、燃料噴射弁106に電流が供給され、内燃機関の運転状態に適合する燃料噴射が行われる。点火プラグ105により、混合気が着火・燃焼される。燃焼後の空気は、排気弁104の開放により、排出される。 【0075】このように、図1〜図14で説明した燃料噴射弁を用いて内燃機関を構成すると、燃料供給量を精密に制御することが可能となるため、燃費・出力・排気特性に優れた内燃機関を得ることができるようになる。 【0076】尚、図1では、弁体4を軸方向に駆動する手段として、電磁力を使うものを示したが、別の駆動手段を用いても、本発明の効果が損なわれるものではない。たとえば、燃料圧力を利用して、弁体4の上下に圧力差を作り、弁体4を軸方向に駆動する手段を用いた場合にも、本発明を適用することができる。 【0077】また、図1では、弁体4の軸方向の可動範囲は、ストッパ9によって決められているが、ストッパ9の代わりに、内側鉄心10の下端面によって弁体4の可動範囲を制約した場合にも、本発明の効果が得られることはいうまでもない。 【0078】 【発明の効果】上述のとおり本発明によれば、弁体と弁座との間に介在させるばね部を工夫し創案することにより、燃料噴射弁を構成する部品の寸法精度を厳しくすることなく、すなわち、コスト上昇を招くことなく、弁体と弁座との衝突エネルギや、弁体とストッパとの衝突エネルギを吸収し、弁体バウンシングを低減できる。これにより、精密な噴射量制御が可能な燃料噴射弁を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所 【識別番号】000232999 【氏名又は名称】株式会社日立カーエンジニアリング
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| 【出願日】 |
平成12年2月2日(2000.2.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066979 【弁理士】 【氏名又は名称】鵜沼 辰之
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| 【公開番号】 |
特開2001−214835(P2001−214835A) |
| 【公開日】 |
平成13年8月10日(2001.8.10) |
| 【出願番号】 |
特願2000−24667(P2000−24667) |
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