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【発明の名称】 燃料噴射装置
【発明者】 【氏名】葛山 裕史

【要約】 【課題】噴射開始時と停止時の噴射率を最適な状態とすることができ,かつ,比較的構造が簡単で信頼性が高い燃料噴射装置を提供すること。

【解決手段】圧力制御室50に導入した作動流体7の圧力とニードルスプリング51の付勢力とによりニードル弁22を付勢する閉弁手段5を有する。圧力制御室50にはポート61,62を有する作動流体入出路60を接続してあり,ポート61には作動流体に流動抵抗を付与する絞り部610を設けてある。ポート62は,増圧ピストン31の後退位置においてのみ作動流体排出路79と連通した状態となり,増圧ピストン31が所定量以上前進した場合のみ加圧室30と連通状態となり,かつ,後退位置から上記所定量前進した位置までの間はいずれとも連通しない閉塞状態となるよう構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料噴射口を設けたノズルチップと,該ノズルチップ内に進退可能に配設され上記燃料噴射口を開閉するニードル弁とよりなる弁体部と,ピストンスプリングにより後方に付勢された進退可能な増圧ピストンを,加圧室に導入された作動流体の圧力により上記ピストンスプリングの付勢力に抗して前進させて,増圧室内の燃料を増圧する増圧手段と,上記加圧室と作動流体供給源とを連通させる供給口と,上記加圧室と作動流体排出路とを連通させる排出口と,上記供給口及び上記排出口を開閉する増圧バルブと,上記供給口を閉塞すると共に上記排出口を開放する減圧位置に向けて上記増圧バルブを付勢するバルブスプリングと,上記供給口を開放すると共に上記排出口を閉塞する増圧位置に上記増圧バルブを移動させるソレノイドとよりなるバルブ制御手段と,増圧された燃料の圧力により上記燃料噴射口を開放する方向に上記ニードル弁を付勢する開弁手段と,圧力制御室に導入した作動流体の圧力とニードルスプリングの付勢力とにより上記燃料噴射口を閉塞する方向に上記ニードル弁を付勢する閉弁手段とを有し,上記圧力制御室には上記作動流体の導入及び排出を行うポートを有する作動流体入出路を接続してあり,該ポートには作動流体に流動抵抗を付与する絞り部を設けてあり,かつ,上記ポートは,上記増圧ピストンの後退位置においてのみ上記作動流体排出路と連通した状態となり,上記増圧ピストンが所定量以上前進した場合のみ上記加圧室と連通状態となり,かつ,上記後退位置から上記所定量前進した位置までの間はいずれとも連通しない閉塞状態となるよう構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】 請求項1において,上記ポートは,第1ポート及び第2ポートという2つのポートよりなり,少なくとも上記第1ポートに上記絞り部を設けてあり,かつ,上記第2ポートは,上記増圧ピストンの後退位置においてのみ上記作動流体排出路と直接連通した状態となり,上記第1ポートは,上記増圧ピストンが所定量以上前進した場合のみ上記加圧室と連通状態となるよう構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】 請求項1又は2において,上記開弁手段は,上記ニードル弁に大径部と小径部とこれらをつなぐ段差部とを設け,該段差部を囲う燃料溜部を上記ノズルチップに設け,該燃料溜部に供給した燃料の圧力により上記段差部を押圧して上記ニードル弁を後退させるよう構成することを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において,上記閉弁手段は,上記圧力制御室内に摺動可能に配設されると共に上記ニードル弁に当接するニードルピストンを有し,該ニードルピストンを上記圧力制御室内の作動流体及びニードルスプリングにより付勢するよう構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,上記増圧手段は,上記増圧ピストンから延設され上記増圧室に摺動可能に配設されたプランジャを有し,上記増圧ピストンの前進に伴ってプランジャを上記増圧室内において前進させることにより燃料を増圧するよう構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項において,上記増圧室と燃料供給源との間の燃料供給路には,逆止弁を設けてあることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項において,上記作動流体には,上記燃料を用いることを特徴とする燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は,燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来技術】燃料噴射装置としては,予め所定圧力まで増圧しておいた燃料を噴射するタイプの蓄圧式と,噴射時に燃料を増圧するタイプの増圧式とが提案されている。後述するごとく,蓄圧式は,図8に示すように,予め燃料を増圧してあるので,開弁直後に噴射率が急激に立ち上がり,また,閉弁時には増圧燃料の圧力を利用できるので,急激に噴射率が低くなる。一方,増圧式は,図9に示すごとく,噴射時に増圧するので,開弁直後の噴射率の立ち上がりが緩やかとなり,また,閉弁時においては増圧燃料の圧力が利用できずバネ力のみにより閉弁を行うので,噴射率の低下も緩やかとなる。
【0003】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の蓄圧式と増圧式の燃料噴射装置は,いずれも排気ガスを最適な状態にできない等の問題がある。具体的には,エンジンの特性上,1回の燃料噴射初期には,低い噴射率とした方が高い噴射率の場合よりもNOxや燃焼騒音,振動の発生を抑制することができる。これに対し,上記蓄圧式は,噴射開始時の噴射率が急激に高くなりすぎる。また,1回の燃料噴射の終わりには,急激に噴射率を低くした方が,緩やかに低くする場合よりも未燃燃料やパティキュレートの発生を抑制することができる。これに対し,上記増圧式は噴射停止時の噴射率の低下が遅すぎる。
【0004】この様に,従来の蓄圧式,増圧式は,噴射開始時あるいは停止時のいずれかにおいて問題があった。そこで,噴射開始時には増圧式のように緩やかな噴射率が増加し,噴射停止時には蓄圧式のように急激に噴射率が低下するという特性を有する燃料噴射装置の開発が望まれていた。
【0005】一方,特開平10−103185号公報には,2つのソレノイドを用いて,2つのバルブ,即ち,燃料増圧を制御するためのバルブと,ニードル弁の開閉時に付与する圧力を制御するためのバルブを制御するよう構成された燃料噴射装置が示されている。この燃料噴射装置は,上記のニードル弁開閉時に付与する圧力を変化させることにより,噴射開始時と停止時の噴射率を調整することができる。しかしながら,この場合には,上記のごとく2つのソレノイドと2つのバルブが必要となり,構成が複雑で部品点数が多く,大型化およびコスト高を招くという問題がある。
【0006】また,特開平10−110658号公報には,1つのソレノイドを用いて2つのバルブを作動させ,一方のバルブにより,ニードル弁の開閉時に付与する圧力を変化させるよう構成された燃料噴射装置が示されている。この場合には,ソレノイドの数を1つに減少させることができるが,構造および機構が非常に複雑で,作動の信頼性が低下するという問題がある。
【0007】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,噴射開始時と停止時の噴射率を最適な状態とすることができ,かつ,比較的構造が簡単で信頼性が高い燃料噴射装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,燃料噴射口を設けたノズルチップと,該ノズルチップ内に進退可能に配設され上記燃料噴射口を開閉するニードル弁とよりなる弁体部と,ピストンスプリングにより後方に付勢された進退可能な増圧ピストンを,加圧室に導入された作動流体の圧力により上記ピストンスプリングの付勢力に抗して前進させて,増圧室内の燃料を増圧する増圧手段と,上記加圧室と作動流体供給源とを連通させる供給口と,上記加圧室と作動流体排出路とを連通させる排出口と,上記供給口及び上記排出口を開閉する増圧バルブと,上記供給口を閉塞すると共に上記排出口を開放する減圧位置に向けて上記増圧バルブを付勢するバルブスプリングと,上記供給口を開放すると共に上記排出口を閉塞する増圧位置に上記増圧バルブを移動させるソレノイドとよりなるバルブ制御手段と,増圧された燃料の圧力により上記燃料噴射口を開放する方向に上記ニードル弁を付勢する開弁手段と,圧力制御室に導入した作動流体の圧力とニードルスプリングの付勢力とにより上記燃料噴射口を閉塞する方向に上記ニードル弁を付勢する閉弁手段とを有し,上記圧力制御室には上記作動流体の導入及び排出を行うポートを有する作動流体入出路を接続してあり,該ポートには作動流体に流動抵抗を付与する絞り部を設けてあり,かつ,上記ポートは,上記増圧ピストンの後退位置においてのみ上記作動流体排出路と連通した状態となり,上記増圧ピストンが所定量以上前進した場合のみ上記加圧室と連通状態となり,かつ,上記後退位置から上記所定量前進した位置までの間はいずれとも連通しない閉塞状態となるよう構成されていることを特徴とする燃料噴射装置にある。
【0009】次に,本発明の作用効果につき説明する。上記燃料噴射装置において,燃料を噴射する際には,まず,上記バルブ制御手段のソレノイドにより上記増圧バルブを増圧位置に移動させる。これにより,排出口が閉塞されると共に上記供給口が開放され,増圧手段の加圧室と作動流体供給源とが連通状態となる。これにより,加圧室に作動流体が流入し,加圧室の圧力が上昇する。この加圧室の圧力上昇によって,上記増圧ピストンが徐々に前進し,増圧室内の燃料が徐々に増圧される。この燃料の増圧に伴って,上記開弁手段において上記ニードル弁を開弁方向に付勢する開弁力が徐々に増す。
【0010】一方,上記増圧ピストンの前進開始前においては,上記圧力制御室につながる上記作動流体入出路のポートは,作動流体排出路と連通した状態にある。そのため,増圧開始前の圧力制御室は低圧状態にあり,上記ニードル弁を閉弁方向に付勢する閉弁力は上記ニードルスプリングの付勢力のみにより維持されている。
【0011】また,増圧開始後においては,上記増圧ピストンが所定量進むまで上記ポートが閉塞されるので,上記圧力制御室内は低圧状態に維持される。そのため,上記燃料の増圧により得られる開弁付勢力が上記ニードルスプリングの付勢力に勝った時点でニードル弁が開弁方向に移動し,燃料噴射口が開いて燃料噴射が開始される。
【0012】そして,上記増圧ピストンのさらなる前進に伴って,燃料の増圧がさらに進み,噴射される燃料の噴射率もそれに伴って上昇する。増圧ピストンの前進が所定量以上となった時点で,上記圧力制御室における上記ポートは,上記加圧室に連通される。そのため,圧力制御室には,上記加圧室から,ポートの絞り部,作動流体入出路を通って作動流体が導入される。これにより圧力制御室の圧力は高められ高圧状態となる。
【0013】次に,燃料噴射を停止する際には,上記バルブ制御手段のソレノイドの作動を停止する。これにより,上記増圧バルブがバルブスプリングの付勢力により減圧位置に復帰する。これにより上記供給口が閉塞されると共に上記排出口が開放された状態となる。そのため,上記加圧室が作動流体排出路と連通され,急激に減圧状態に変化する。
【0014】加圧室の減圧により,上記増圧ピストンの前進が止まり,後退に転じる。これにより,燃料が減圧され,上記開弁手段における開弁力が小さくなる。一方,上記加圧室の減圧により,上記圧力制御室内の高圧状態の作動流体は上記ポートを介して排出されていく。しかしながら,上記ポートには絞り部が設けられているので,作動流体の排出は非常に遅い流速に抑制される。それ故,上記圧力制御室内は,上記増圧を停止した直後においては,十分に高い圧力に維持される。
【0015】そのため,上記燃料の圧力が減圧されて開弁力が小さくなった瞬間に,上記圧力制御室の高圧力とニードルスプリングの付勢力とを合わせた大きな閉弁力がニードル弁に付与される。そのため,ニードル弁は急激に閉弁方向に移動し,燃料噴射口は極めて短時間で閉塞される。それ故,燃料の噴射率は急激に低下する。
【0016】このように,本発明の燃料噴射装置における燃料噴射開始時においては,上記のごとく,増圧式の特徴を有効に発揮して,比較的緩やかな噴射率上昇を実現することができる。
【0017】また,上記のごとく,燃料の噴射を停止する際には,これに先立って,上記圧力制御室の圧力を燃料噴射中に高めておくことができ,しかも,作動流体の増圧を停止した直後においても,上記絞り部の存在によって圧力制御室内を高圧に維持することできる。そのため,上記燃料の噴射停止時には,ニードルスプリングの付勢力に加えて圧力制御室内の高い圧力を上記ニードル弁に付与することができる。それ故,上記のごとく,燃料の噴射停止時には,極めて高速に燃料噴射口を閉塞することができ,急激な噴射率の低下を実現することができる。
【0018】また,本発明では,上記増圧手段,バルブ制御手段,開弁手段,閉弁手段を組み合わせることにより,1つのソレノイドで1つのバルブ(増圧バルブ)を制御するだけで,燃料噴射制御を行うことができる。それ故,構造,機構を簡単にすると共に信頼性を高めることができる。
【0019】次に,請求項2の発明のように,上記ポートは,第1ポート及び第2ポートという2つのポートよりなり,少なくとも上記第1ポートに上記絞り部を設けてあり,かつ,上記第2ポートは,上記増圧ピストンの後退位置においてのみ上記作動流体排出路と直接連通した状態となり,上記第1ポートは,上記増圧ピストンが所定量以上前進した場合のみ上記加圧室と連通状態となるよう構成することが好ましい。
【0020】上記絞り部を備えたポートとしては,種々の構成をとることができる。そのなかでも,ポートを上記のごとく上記第1ポートおよび第2ポートという2つのポートにより構成した場合には,構造を簡単にすることができる。なお,上記絞り部は上記第1ポートだけでなく第2ポートにも設けても良い。
【0021】また,請求項3の発明のように,上記開弁手段は,上記ニードル弁に大径部と小径部とこれらをつなぐ段差部とを設け,該段差部を囲う燃料溜部を上記ノズルチップに設け,該燃料溜部に供給した燃料の圧力により上記段差部を押圧して上記ニードル弁を後退させるよう構成することが好ましい。この場合には,上記増圧した燃料の圧力を容易にニードル弁に伝達することができる。
【0022】また,請求項4の発明のように,上記閉弁手段は,上記圧力制御室内に摺動可能に配設されると共に上記ニードル弁に当接するニードルピストンを有し,該ニードルピストンを上記圧力制御室内の作動流体及びニードルスプリングにより付勢するよう構成されていることが好ましい。この場合には,上記ニードルピストンの存在により,圧力制御室内の油密性を維持しつつニードル弁を付勢する機構を容易に実現することができる。
【0023】また,請求項5の発明のように,上記増圧手段は,上記増圧ピストンから延設され上記増圧室に摺動可能に配設されたプランジャを有し,上記増圧ピストンの前進に伴ってプランジャを上記増圧室内において前進させることにより燃料を増圧するよう構成されていることが好ましい。この場合には,上記増圧ピストンとプランジャとを組み合わせることによって,各部品の構造を簡単にすることができ,その作製精度を向上させることができる。
【0024】また,請求項6の発明のように,上記増圧室と燃料供給源との間の燃料供給路には,逆止弁を設けてあることが好ましい。この場合には,増圧した燃料の燃料供給源への逆流を容易に防止することができる。
【0025】また,請求項7の発明のように,上記作動流体には,上記燃料を用いることが好ましい。この場合には,作動流体として燃料を兼用することにより,流体回路を単純化することができ,燃料噴射装置の周囲の構造を簡単にすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態例にかかる,ディーゼルエンジン用の燃料噴射装置につき,図1〜図5を用いて説明する。本例の燃料噴射装置1は,図1に示すごとく,燃料噴射口210を設けたノズルチップ21と,該ノズルチップ21内に進退可能に配設され上記燃料噴射口210を開閉するニードル弁22とよりなる弁体部2を有する。弁体部2には,増圧された燃料8の圧力により燃料噴射口210を開放する方向にニードル弁22を付勢する開弁手段25を設けた。
【0027】開弁手段25は,ニードル弁22に大径部221と小径部223とこれらをつなぐ段差部222とを設け,段差部222を囲う燃料溜部212をノズルチップ21に設け,該燃料溜部212に供給した燃料8の圧力により段差部222を押圧してニードル弁21を後退させるよう構成した。また,燃料溜部212は,燃料供給路85,86,87により後述する増圧室35と連通させてある。
【0028】また,燃料噴射装置1は,図1に示すごとく,増圧手段3を有する。増圧手段3は,ピストンスプリング32により後方に付勢された進退可能な増圧ピストン31を,加圧室30に導入された作動流体7の圧力により上記ピストンスプリング32の付勢力に抗して前進させて,増圧室35内の燃料8を増圧するよう構成されている。
【0029】また増圧手段3は,増圧ピストン31から延設され増圧室35に摺動可能に配設されたプランジャ33を有する。このプランジャ33を増圧ピストン31の前進に伴って増圧室35内において前進させることにより燃料8を増圧するよう構成されている。
【0030】増圧室35は,燃料供給路85,逆止弁84,燃料供給路83,82を介して燃料供給源81に接続されていると共に,上記のごとく,燃料供給路85,86,87を介して上記燃料溜部212に連通している。上記逆止弁84は,増圧室35内の圧力が燃料供給源より高くなった際に閉止されるよう構成されている。
【0031】また,燃料噴射装置1は,図1に示すごとく,上記加圧室30と作動流体供給源71とを連通させる供給口41と,加圧室30と作動流体排出路79とを連通させる排出口42と,供給口41及び排出口42を開閉する増圧バルブ43とを有する。上記供給口41は,作動流体供給源71に連通した作動流体流路72と加圧室30に連通した作動流体流路73との間に位置し,増圧バルブ43の鍔部431と弁座433との当接状態の変化により開閉するよう構成されている。また上記排出口42は,作動流体流路78を介して作動流体排出路79と連通する作動流体流路77と上記作動流体流路73との間に位置し,増圧バルブ43の鍔部432と弁座434との当接状態の変化により開閉するよう構成されている。
【0032】増圧バルブ43は,供給口41を閉塞すると共に排出口42を開放する減圧位置(図1に示す状態)と,供給口41を開放すると共に排出口42を閉塞する増圧位置(図2に示す状態)との間を移動可能に配設されている。この増圧バルブ43を制御するバルブ制御手段4は,上記増圧バルブ43を上記減圧位置に向けて付勢するバルブスプリング44と,上記増圧位置に増圧バルブ43を移動させるソレノイド45とよりなる。
【0033】また,燃料噴射装置1は,図1に示すごとく,圧力制御室50に導入した作動流体7の圧力とニードルスプリング51の付勢力とにより燃料噴射口210を閉塞する方向にニードル弁22を付勢する閉弁手段5を有する。閉弁手段5は,上記圧力制御室50内に摺動可能に配設されると共にニードル弁22に当接するニードルピストン52を有し,該ニードルピストン52を圧力制御室50内の作動流体7及びニードルスプリング51により付勢するよう構成されている。
【0034】上記圧力制御室50には作動流体7の導入及び排出を行う第1ポート61及び第2ポート62を有する作動流体入出路60を接続してある。第1ポート61には作動流体7に流動抵抗を付与する絞り部610を設けてある。本例の絞り部610は,第1ポート61全体を作動流体入出路60よりも細径化することにより構成してある。なお,絞り部610は,例えば,第1ポート61と作動流体入出路60との間に介在させる等の種々の構造に変更することが可能である。
【0035】図5に示すごとく,上記第2ポート62は,増圧ピストン31の後退位置においてのみ上記作動流体排出路と直接連通した状態となり,上記第1ポート61は,増圧ピストン31が所定量以上前進した場合のみ上記加圧室と連通状態となるよう構成されている。
【0036】即ち,図5(a)に示すごとく,増圧ピストン31が後退している状態においては,第1ポート61は増圧ピストン31の側面により閉塞され,一方,第2ポート62は,増圧ピストン31の下端において半開状態に維持される。これにより,第2ポートは,増圧ピストン31が摺動する摺動室37内に連通する。摺動室37は,図示しない作動流体流路によって作動流体排出路79に連通している。従って,増圧ピストン31が後退位置にあるときには,作動流体入出路60は,第2ポート62を介して作動流体排出路79に連通した状態となる。
【0037】また,図5(b)に示すごとく,増圧ピストン31が後退位置から前進すると,その側面によって,第1ポート61と第2ポート62の両方を閉塞した状態となる。また,図5(c)に示すごとく,増圧ピストン31が所定量以上前進した場合には,第2ポート62は増圧ピストン31の側面によって閉塞したままであるが,第1ポート61は加圧室30に連通した状態となる。この状態においては,加圧室30の状態,即ち加圧室が作動流体供給源71あるいは作動流体排出路79のいずれに連通しているかという状態に連動した状態となる。
【0038】また,図1に示すごとく,燃料噴射装置1は,上述した各部を有するボディ101〜104と,これら及び弁体部2を囲うケース105と,ソレノイド45を囲うケース106とを有する。
【0039】次に,本例の燃料噴射装置1の作用効果につき説明する。上記燃料噴射装置1において,燃料を噴射する際には,図2に示すごとく,バルブ制御手段4のソレノイドにより増圧バルブ43を増圧位置に移動させる。これにより,排出口42が閉塞されると共に供給口41が開放され,増圧手段3の加圧室30と作動流体供給源71とが連通状態となる。これにより,加圧室30に作動流体7が流入し,加圧室30の圧力が上昇する。
【0040】図2に示すごとく,加圧室30の圧力上昇によって,増圧ピストン31及びプランジャ33が徐々に前進し,予め備蓄された増圧室35内の燃料8が徐々に増圧される。この燃料8の増圧により逆止弁84は閉止され,燃料供給路85,86,87を通って燃料溜部212に燃料8が供給される。そして,燃料溜部212内の圧力が上昇し,開弁手段25の開弁力,即ちニードル弁22の段部222への押圧力が増す。
【0041】一方,増圧ピストンの前進開始前においては,図5(a)に示すごとく,圧力制御室50につながる作動流体入出路60の第2ポート62は動流体排出路79と連通した状態にある。そのため,増圧開始前の圧力制御室50は低圧状態にあり,ニードル弁22を閉弁方向に付勢する閉弁付勢力はニードルスプリング51の付勢力のみにより維持されている。
【0042】また,増圧開始後においては,図5(b)に示すごとく,増圧ピストン31が所定量進むまで第1ポート61及び第2ポート62が閉塞されるので,圧力制御室50内は低圧状態に維持される。そのため,図2に示すごとく,上記燃料8の圧力によって段部222を押圧する開弁付勢力がニードルスプリング51の付勢力に勝った時点で,ニードル弁22が開弁方向に移動し,燃料噴射口210が開いて燃料8の噴射が開始される。
【0043】そして,増圧ピストン31のさらなる前進に伴って,燃料の増圧がさらに進み,噴射される燃料の噴射率もそれに伴って上昇する。図3,図5(c)に示すごとく,増圧ピストン31の前進が所定量以上となった時点で,圧力制御室50につながる第1ポート61は,加圧室30に連通される。そのため,圧力制御室50には,加圧室30から,第1ポート61(絞り部610),作動流体入出路60を通って作動流体7が導入される。これにより圧力制御室50内の圧力は高められ高圧状態となる。
【0044】次に,燃料噴射を停止する際には,図4に示すごとく,バルブ制御手段4のソレノイド45の作動を停止する。これにより,増圧バルブ43がバルブスプリング44の付勢力により減圧位置に復帰する。そして供給口41が閉塞されると共に排出口42が開放された状態となる。そのため,加圧室30が作動流体排出路79と連通し,急激に減圧状態に変化する。
【0045】加圧室30の減圧により,増圧ピストン31及びプランジャ33の前進が止まり,後退に転じる。これにより,燃料8が減圧され,開弁手段25における燃料溜部212内の圧力が下がり開弁力が小さくなる。
【0046】一方,加圧室30の減圧により,圧力制御室50内の高圧状態の作動流体7は第1ポート61を介して排出されていく。しかしながら,ポート61には絞り部610が設けられているので,作動流体7の排出は非常に遅い流速に抑制される。それ故,圧力制御室50内は,増圧を停止した直後においては,十分に高い圧力に維持される。
【0047】そのため,上記のごとく燃料8の圧力が減圧されて開弁力が小さくなった瞬間に,圧力制御室50の高圧力とニードルスプリング52の付勢力とを合わせた大きな閉弁力がニードル弁22に付与される。そのため,ニードル弁22は急激に閉弁方向に移動し,燃料噴射口210は極めて短時間で閉塞される。それ故,燃料8の噴射率は急激に低下する。
【0048】その後,上記増圧ピストン31及びプランジャ33はピストンスプリング32の付勢力により後退位置に復帰する。また,増圧室35には,圧力バランスの関係から逆止弁84が開いて燃料供給源81から燃料供給路82,83,85を通って燃料が備蓄される。また,圧力制御室50内の高圧状態は,図3,図5(c)に示すごとく,増圧ピストン31の後退途中の第1ポート61が開放されているときには第1ポート61(絞り610)から徐々に作動流体7が排出され,図1,図5(a)に示すごとく,増圧ピストン31が後退位置に復帰完了した後は第2ポート62から作動流体7が排出され,低圧状態に戻る。
【0049】このように,本発明の燃料噴射装置における燃料噴射開始時においては,上記のごとく,増圧式の特徴を有効に発揮して,比較的緩やかな噴射率上昇を実現することができる。
【0050】また,燃料の噴射を停止する際には,これに先立って,圧力制御室50の圧力を燃料噴射中に高めておくことができ,しかも,作動流体7の増圧を停止した直後においても,上記絞り部610の存在によって圧力制御室50内を高圧に維持することできる。そのため,燃料8の噴射停止時には,上記のごとく,ニードルスプリング51の付勢力に加えて圧力制御室50内の高い圧力をニードル弁22に付与することができる。それ故,上記のごとく,燃料8の噴射停止時には,極めて高速に燃料噴射口210を閉塞することができ,急激な噴射率の低下を実現することができる。
【0051】また,本例の燃料噴射装置1では,上記増圧手段3,バルブ制御手段4,開弁手段25,閉弁手段5を組み合わせることにより,1つのソレノイド45で1つのバルブ(増圧バルブ43)を制御するだけで,燃料噴射制御を行うことができる。それ故,構造,機構を簡単にすると共に信頼性を高めることができる。
【0052】実施形態例2本例は,実施形態例1の燃料噴射装置1におけるポート61,62及び絞り部610の構成を変更した例である。即ち,図6に示すごとく,本例においては,長穴状のポート63を設け,このポート63と作動流体入出路60との間に絞り部630を設けた。ポート630は,増圧ピストン31が後退位置にあるときにはその下端635側のみが摺動室37に開放され,増圧ピストン31が所定距離以上前進した場合には,上端側634が圧力室30に開放されるよう構成されている。その他は実施形態例1と同様である。この場合にも実施形態例1と同様の作用効果が得られる。
【0053】実施形態例3本例では,実施形態例1の燃料噴射装置1を用い,燃料の噴射及びその停止を行って,その間の噴射率の変化を測定した。また,比較のために,蓄圧式の燃料噴射装置と増圧式の燃料噴射装置とを準備し,同様な測定を行った。図7〜図9に測定結果を示す。図7には,実施形態例1の燃料噴射装置1の結果を実線E1で示した。図8には,蓄圧式の燃料噴射装置の結果を実線C1で示した。図9には,増圧式の燃料噴射装置の結果を実線C2で示した。またこれらの図は,横軸に時間,縦軸に噴射率をとったものである。
【0054】図7〜図9より知られるごとく,本発明品である燃料噴射装置1は,蓄圧式と増圧式の長所を併せ持った優れた特性を有していることがわかる。即ち,図7に示すごとく,燃料の噴射開始時には,増圧式(図9)と同様に噴射率の増加が比較的緩やかとなり,燃料の停止時には,蓄圧式(図8)と同様に噴射率の低下を急激にすることができた。
【0055】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,噴射開始時と停止時の噴射率を最適な状態とすることができ,かつ,比較的構造が簡単で信頼性が高い燃料噴射装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成12年2月3日(2000.2.3)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰 (外1名)
【公開番号】 特開2001−214830(P2001−214830A)
【公開日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【出願番号】 特願2000−26454(P2000−26454)