トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 コモンレール及びその強化処理方法
【発明者】 【氏名】松岡 主税

【氏名】柵木 清史

【氏名】丹羽 哲也

【氏名】平野 富保

【氏名】石川 鎮夫

【要約】 【課題】加圧燃料による内圧によって生じる引張応力を抑制して、レール穴に開口する分岐穴の穴周囲部におけるコモンレールの内圧疲労強度を高めることができるコモンレール及びその強化処理方法を提供する。

【解決手段】コモンレール1の中心部にはレール穴10が形成され、レール穴10を取り囲む筒壁部11にはレール穴10に開口する複数の分岐穴12が形成される。レール穴10の内周面の少なくとも分岐穴12の穴周囲部には、ショットピーニングを施して圧縮残留応力が付与される。ショットピーニングは、2本の管状ノズル17をコモンレール1の左右開口端からレール穴10に進入させ、その先端に設けた噴射口17aをレール穴10に開口し、左右両噴射口17a,17aからショット18を同時に噴射し、これをレール穴10の内周面全体に衝突させて施す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 中心部にレール穴が形成され、該レール穴を取り囲む筒壁部にレール穴に開口する複数の分岐穴が形成されたコモンレールにおいて、前記レール穴の内周面の少なくとも分岐穴の穴周囲部がショットピーニングされることにより圧縮残留応力が付与されていることを特徴とするコモンレール。
【請求項2】 中心部にレール穴が形成され、該レール穴を取り囲む筒壁部にレール穴に開口する複数の分岐穴が形成されたコモンレールにおいて、前記レール穴の内周面の少なくとも分岐穴の穴周囲部にショットピーニングを施して圧縮残留応力を付与することを特徴とするコモンレールの強化処理方法。
【請求項3】 前記ショットピーニングは、前記コモンレールの左右開口端に開口した噴射口から前記レール穴の内周面全体に施す請求項2記載のコモンレールの強化処理方法。
【請求項4】 前記ショットピーニングは、前記分岐穴に対峙して開口した噴射口から該分岐穴の穴周囲部に施す請求項2記載のコモンレールの強化処理方法。
【請求項5】 前記ショットピーニングは、前記分岐穴の近傍で前記レール穴に開口した噴射口から噴射されたショットを、該噴射口及び前記分岐穴の両方に斜めに対峙する反射面に衝突させて前記分岐穴へ反射させ、該反射したショットで前記分岐穴の穴周囲部に施す請求項2記載のコモンレールの強化処理方法。
【請求項6】 前記噴射口は前記コモンレールの一方開口端から前記レール穴に進入させたノズルの先端に設けられ、前記反射面は前記コモンレールの他方開口端から前記レール穴に進入させた反射スライド棒の先端に設けられた請求項6記載のコモンレールの強化処理方法。
【請求項7】 前記ショットピーニングは、40〜200ミクロンの微小ショットを100m/秒以上で噴射して施す請求項2、3、4、5又は6記載のコモンレールの強化処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのコモンレール式燃料噴射装置におけるコモンレール及びその強化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図10及び図11は従来のコモンレール式燃料噴射装置におけるコモンレール51を示し、中心部にレール長方向に延びるレール穴52が形成されている。レール穴52を取り囲む筒壁部53の複数箇所には、内側から外側へ順に、レール穴52に交差開口してレール長直角方向に延びる複数(図示例では4つ)の分岐穴54と、分岐穴54より内径の大きい連通穴55と、テーパー状のシール面56とが、各々連通するように形成されている。複数のシール面56には、各々インジェクタへ延びるインジェクションパイプ(図示略)の端部のシール面が密着するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のコモンレール51には、次のような問題があった。つまり、レール穴52及び分岐穴54の内壁には、図11に矢印で示すように、加圧燃料による内圧がかかる。レール穴52に開口する分岐穴54の穴周囲部57では両穴52,54の応力が合成されるため、他の部分よりも大きい引張応力が発生し、内圧の変動により疲労破壊しやすくなる。
【0004】本発明の目的は、上記課題を解決し、加圧燃料による内圧によって生じる引張応力を抑制して、レール穴に開口する分岐穴の穴周囲部におけるコモンレールの内圧疲労強度を高めることができるコモンレール及びその強化処理方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のコモンレールは、中心部にレール穴が形成され、該レール穴を取り囲む筒壁部にレール穴に開口する複数の分岐穴が形成されたコモンレールにおいて、レール穴の内周面の少なくとも分岐穴の穴周囲部がショットピーニングされることにより圧縮残留応力が付与されていることを特徴としている。
【0006】また、本発明のコモンレールの強化処理方法は、中心部にレール穴が形成され、該レール穴を取り囲む筒壁部にレール穴に開口する複数の分岐穴が形成されたコモンレールにおいて、レール穴の内周面の少なくとも分岐穴の穴周囲部にショットピーニングを施して圧縮残留応力を付与することを特徴としている。
【0007】ここで、ショットピーニングは、コモンレールの左右開口端に開口した噴射口からレール穴の内周面全体に施してもよいが、分岐穴に対峙して開口した噴射口から分岐穴の穴周囲部に施してもよい。
【0008】また、ショットピーニングは、分岐穴の近傍でレール穴に開口した噴射口から噴射されたショットを、噴射口及び分岐穴の両方に斜めに対峙する反射面に衝突させて分岐穴へ反射させ、該反射したショットで分岐穴の穴周囲部に施してもよい。この場合、噴射口はコモンレールの一方開口端からレール穴に進入させたノズルの先端に設けられ、反射面はコモンレールの他方開口端からレール穴に進入させた反射スライド棒の先端に設けられることが好ましい。反射スライド棒は、コモンレールと同等以上の硬度を有すれば特定の材質に限定されず、例えば、硬質金属やセラミックスを例示できる。
【0009】ショットピーニングに使用するショットとしては特に限定されないが、ガラスビーズショットやスチールショットを例示できる。ショットの大きさ及び噴射速度は特に限定されないが、40〜200ミクロンの微小ショットを100m/秒以上で噴射するWPC処理(Wide Peaning Cleaning)(株式会社不二機販及び株式会社不二製作所の登録商標)を採用することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した実施形態例について、図1〜図5を参照して説明する。図3はディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の概略を示し、コモンレール1の側部には、燃料ポンプ2を接続するためのパイプ3と、インジェクタ4を接続するためのインジェクションパイプ5(カラー、ユニオン等がアッシー化されている)とが接続され、コモンレール1の端部には、リリーフバルブ6と圧力センサ7とが接続される。燃料ポンプ2とインジェクタ4は電子制御装置8により制御される。
【0011】まず、図1及び図2は第一実施形態を示し、金属製のコモンレール1の中心部にはレール長方向に延びるレール穴10が形成され、レール穴10を取り囲む筒壁部11の複数箇所には、内側から外側へ順に、レール穴10に交差開口してレール長直角方向に延びる複数(図示例では4つ)の分岐穴12と、分岐穴12より内径の大きい連通穴13と、テーパー状のシール面14とが、各々連通するように形成されている。複数のシール面14には、各々インジェクションパイプ5の端部の凸球面状のシール面(図示略)が密着するようになっている。
【0012】コモンレール1の左右端面には、各々レール穴10より内径の大きい取付穴15がレール穴10と同軸状に連通するように設けられ、取付穴15の内周面開口部には雌ネジ部16が形成されている。そして、図1における左側の取付穴15には圧力センサ7が、右側の取付穴15にはリリーフバルブ6が、それぞれ接続される。
【0013】レール穴10の内周面には、ショットピーニングが施されている。本実施形態では、40〜200ミクロンの微小ショットを被加工面に100m/秒以上で噴射するWPC処理(Wide Peaning Cleaning)を採用した。具体的には、図1に示すように、2本の管状ノズル17をコモンレール1の左右開口端から取付穴15を介してレール穴10に進入させ、その先端に設けた噴射口17aをレール穴10に開口した。そして、左右両噴射口17a,17aからショット18を同時に噴射し、これをレール穴10の内周面全体に衝突させた。ショット18としては、ガラスビーズショットを使用した。図2の網掛け部位は、ショット18の衝突によって微細な凹凸が形成された影響部19を示す。影響部19は、分岐穴12の穴周囲部20を含むレール穴10の内周面全体に亘り、かかる部位に圧縮残留応力が付与される。
【0014】本実施形態のコモンレール1によれば、レール穴10の内周面全体にショットピーニングを施して圧縮残留応力を付与しているので、加圧燃料による内圧によって生じる引張応力を抑制して、レール穴10に開口する分岐穴12の穴周囲部20におけるコモンレール1の内圧疲労強度を高めることができる。また、ショットピーニングによって穴周囲部20のバリを除去し、円弧状にR面取りすることもできる。
【0015】次に、図4及び図5は、第二実施形態を示し、ショットピーニングに使用するノズルの形状が異なる点においてのみ第一実施形態と相違する。本実施形態の管状ノズル22は、先端が閉じており、周壁の先端壁寄りに噴射口22aが貫設されている。本実施形態では、2本のノズル22をコモンレール1の左右開口端から取付穴15を介してレール穴10に進入させ(一部図示略)、噴射口22aを分岐穴12に対峙して開口させた。そして、噴射口22aからショット18を噴射し、これを分岐穴12の穴周囲部20に衝突させた。また、ノズル22をレール穴10内でレール長方向に進退自在に移動させることにより、全ての分岐穴12の穴周囲部20にショットピーニングを施した(図示略)。図5の網掛け部位は、衝突によって微細な凹凸が形成された影響部23を示す。影響部23は、分岐穴12の穴周囲部20に形成されており、かかる部位に圧縮残留応力が付与される。本実施形態によっても、第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0016】次に、図6及び図7(a)は、第三実施形態を示し、分岐穴12の数を6つとし、一方のノズル17に代えて、反射スライド棒30を使用した点においてのみ第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態の4つの分岐穴12に加え、該4つの分岐穴12のうちのレール長方向中央部に位置する2つの分岐穴12と対峙する筒壁部11の二ヶ所にさらに2つの分岐穴12を設けた。
【0017】反射スライド棒30は、硬質金属によって断面半円形に形成されており、水平上面32と半円周面33とを備えた支柱部31と、支柱部31の先端でその水平上面32側が高さ方向斜めに切り欠かれてなる反射部34とを備えている。反射部34の上面は、支柱部31の水平上面32に対して鈍角に傾斜して連続する斜面となっており、該斜面が半月形の反射面35を構成している。
【0018】本実施形態では、1本のノズル17をコモンレール1の一方開口端(図6では左開口端)から取付穴15を介してレール穴10に進入させ、分岐穴12近傍で噴射口17aをレール穴10に開口するとともに、反射スライド棒30を他方開口端(同図では右開口端)から取付穴15を介してレール穴10に進入させ、反射面35を噴射口17a及び分岐穴12の両方に斜めに対峙させた。そして、噴射口17aからショット18を噴射し、これを分岐穴12の穴周囲部20に衝突させるとともに、反射スライド棒30の反射面35に衝突させて分岐穴12へ反射させ、噴射口17aから直接噴射されたショット18と、反射したショット18とで、分岐穴12の穴周囲部20にショットピーニングを施した。
【0019】また、ノズル17及び反射スライド棒30をレール穴10内でレール長方向に進退自在に移動させるとともに、反射スライド棒30を回転させて反射面35を方向違いの分岐穴12に対峙させることにより、全ての分岐穴12の穴周囲部20(図2(b)を援用する)にショットピーニングを施した。本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、ショット18が分岐穴12の穴周囲部20に効果的に照射され、圧縮残留応力値が高まるという効果が得られる。
【0020】なお、図7(b)は反射スライド棒30の変更例を示し、円柱状の支柱部31と、支柱部31の先端でその上側が高さ方向斜めに切り欠かれてなる反射部34とを備えている。反射部34の上面は、前記切り欠きによって形成された斜面となっており、該斜面が楕円形の反射面35を構成している。本変更例によっても、第三実施形態と同様の効果が得られる。
【0021】次に、図8及び図9(a)は、第四実施形態を示し、反射スライド棒の形状が異なる点においてのみ第三実施形態と相違する。本実施形態の反射スライド棒40は、硬質金属によって断面円形に形成されており、円周面42を備えた円柱状の支柱部41と、支柱部41の先端に連続する円錐状の反射部43とを備えている。反射部43の周面は支柱部41の円周面42に連続する凸テーパー面となっており、該テーパー面が反射面44を構成している。
【0022】本実施形態では、1本のノズル17をコモンレール1の一方開口端(図8では左開口端)から取付穴15を介してレール穴10に進入させ(一部図示略)、分岐穴12近傍で噴射口17aをレール穴10に開口するとともに、反射スライド棒40を他方開口端(同図では右開口端)から取付穴15を介してレール穴10に進入させ(一部図示略)、反射面44を噴射口17a及び分岐穴12の両方に斜めに対峙させた。そして、噴射口17aからショット18を噴射し、これを分岐穴12の穴周囲部20(図2(b)を援用する)に衝突させるとともに、反射スライド棒40の反射面44に衝突させて分岐穴12へ反射させ、噴射口17aから直接噴射されたショット18と、反射したショット18とで、分岐穴12の穴周囲部20にショットピーニングを施した。
【0023】また、ノズル17及び反射スライド棒40をレール穴10内でレール長方向に進退自在に移動させることにより、全ての分岐穴12の穴周囲部20にショットピーニングを施した。本実施形態によれば、第三実施形態と同様の効果に加え、レール長方向中央部に位置する2組4つの分岐穴12のように、方向違いの分岐穴12の穴周囲部20に一度にショットピーニングを施すことができる。
【0024】なお、図9(b)は反射スライド棒40の変更例を示し、円柱状の支柱部41と、支柱部41の先端でその上下両側が高さ方向斜めに切り欠かれてなる反射部43とを備えている。反射部43の上下両面は、前記切り欠きによって形成された斜面となっており、該斜面が方向違いの2つの反射面44を構成している。本変更例によっても、第四実施形態と同様の効果が得られる。
【0025】なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)第一実施形態において、ノズル17を、レール長方向に進退自在に移動させながらショット18を噴射すること。
(2)第一実施形態において、ショット18は、左右両噴射口17a,17aから同時にではなく、一方ずつ順に噴射してもよい。
(3)第二実施形態において、噴射口22aは、ノズル22の周壁のノズル長方向並列に、分岐穴12に対応する複数箇所に設けられても良い。
【0026】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のコモンレール及びその強化処理方法によれば、加圧燃料による内圧によって生じる引張応力を抑制して、レール穴に開口する分岐穴の穴周囲部におけるコモンレールの内圧疲労強度を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
【出願日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【代理人】 【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
【公開番号】 特開2001−200773(P2001−200773A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−155887(P2000−155887)