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【発明の名称】 エンジンのEGR装置
【発明者】 【氏名】岡田 誠二

【要約】 【課題】本発明は、吸気温の上昇を抑え高EGR運転が行えるエンジンのEGR装置を提供する。

【解決手段】本発明のEGR装置は、水冷式エンジン1に取付けてある冷却水温を制御するサーモスタット10のケース11に、EGR通路26の一部をなすガス路27を形成することによって、EGRガス(排気ガス)を、サーモスタット10のケース11内を流れるエンジンの冷却水で冷却してから、エンジン1の吸気路6へ導入させるようにして、エンジン1の吸気効率を高めると共にEGR量の増大を図れるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水冷式エンジンから排出された排気ガスの一部をEGR通路を通じて前記エンジンの吸気側へ導入させるエンジンのEGR装置であって、前記水冷式エンジンに取付けてある冷却水温を制御するサーモスタットのケースに、前記EGR通路の一部をなすガス路を形成したことを特徴とするエンジンのEGR装置。
【請求項2】 前部に冷却水温を制御するサーモスタットが収められたケースが取付けられ、気筒を挟むシリンダヘッドの一側に吸気路を有し他側に排気路に有する縦置きのエンジンと、前記エンジンの前方に配設されたインタークーラーと、前記エンジンの排気ガスのエネルギーにより過給された吸気を前記インタークーラーを通じて前記吸気路へ供給するターボ過給機と、前記排気路から分かれ、排気ガスの一部を前記サーモスタットのケースに形成されたガス路を通じて前記エンジンの吸気路へ導くEGR通路とを有し、前記EGR通路の出口側が、前記エンジンの他側からエンジンの前方を通して前記エンジンの一側へ導かれて前記吸気路の上流側の地点に接続されることを特徴とするエンジンのEGR装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンから排出された排気ガスの一部を吸気へ還流させるエンジンのEGR装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車に搭載される多気筒の水冷式エンジンは、NOの低減のために、排気ガスの一部を吸入側へ導入して、燃焼を緩慢にし燃焼温度を下げることが行われている。
【0003】EGR装置は、この排気ガスの一部を吸入側へ還流させる装置をいい、通常、同装置には、気筒列を挟むシリンダヘッドの一側に有る排気路、例えば排気マニホールドの一部と、それとは反対側に有る吸気路、例えば吸気マニホールドに取付けたEGRバルブとの間を、ロッカーカバーおよびシリンダヘッドの上側、具体的にはエンジン全長方向中央の上側を跨るように配設されたEGR通路で接続した構造が用いられ、EGRバルブを通じて、EGRガスを吸気側へ導入させることが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、EGRバルブから吸気路へ導入される排気ガスは高温であるため、単位体積当たりのガス濃度が減少してしまい、所望のEGR量が導入できないと共に、排気ガスの熱で吸気温が上昇して、吸気効率が低下しやすい問題がある。
【0005】またインタークーラーが前方に配設され、ターボ過給機でインタークーラーを通じて過給吸気を吸気路へ導く縦置きのエンジンは、ロッカーカバーおよびシリンだヘッドの上側を通過するEGR通路の地点の影響を受けて、EGRバルブの取付位置が吸気マニホールドの下流側に強いられやすい。このため、排気ガスは吸気マニホールドの下流から導入される傾向となる。ところが、排気ガスは、吸気マニホールドの下流側から導入される程、吸気と混合が良好に行えなくなるので、EGRガス濃度が異なる吸気がエンジンの各気筒へ導かれやすくなる問題がある。しかも、EGR通路がロッカーカバーの上側を跨る構造は、ロッカーカバーを外して行うエンジンのメンテナンスや修理の作業がしにくい上、EGR通路の形成するパイプ長さをかなり必要とするので、エンジン周りが複雑になりやすい問題もあった。
【0006】本発明は上記事情に着目してなされたもので、第1の目的とするところは、EGRガスを冷却して体積を減少させることにより実質的なEGR量の増大を図ると共に、吸気効率の低下を抑えたEGR運転が行えるエンジンのEGR装置を提供することにある。
【0007】また第2の目的とするところは、全長を短く抑えたEGR通路で、エンジン上部での脱着作業性を高め、さらには吸気温度の上昇を抑えつつ、均一なEGRガス濃度の吸気を各気筒へ供給可能としたエンジンのEGR装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成するために請求項1に記載のエンジンのEGR装置は、水冷式エンジンに取付けてある冷却水温を制御するサーモスタットのケースに、EGR通路の一部をなすガス路を形成したことにある。
【0009】これにより、EGRガス(排気ガス)は、サーモスタットのケース内を流れるエンジンの冷却水で冷却されてから、エンジンの吸気路へ導入されるようになるから、EGR量が増大されると共にエンジンの吸気効率が高められる。
【0010】上記第2の目的を達成するために請求項2に記載のエンジンのEGR装置は、前部に冷却水温を制御するサーモスタットが収められたケースが取付けられ、さらに排気ガスのエネルギーで過給された吸気を前方のインタークーラーを通じて吸気路へ供給可能としたターボ過給機式の縦置きエンジンを前提として、該エンジンの一側に有る排気路から分かれて排気ガスの一部をサーモスタットのケースに形成したガス路を通じてエンジンの他側に有る吸気路へ導くEGR通路を形成し、このEGR通路の出口側を、エンジンの他側からエンジンの前方を通じエンジンの一側へ導き吸気路の上流側の地点に接続する構造とした。
【0011】これにより、請求項1で述べたようにEGRガス(排気ガス)はエンジンの冷却水で冷却されて吸気路へ導入される。しかも、EGR通路の出口側は、エンジンの上側でなく、インタークーラーの有るエンジン前方を通じて、エンジンの排気路から反対側の吸気路へ回り込んで、インタークーラーに近い吸気路の部分に接続される。
【0012】それ故、EGRガスと吸気との混合は、吸気路の全長を有効に活用して十分に行われ、均一なEGRガス濃度の吸気がエンジンの各気筒に供給される。しかも、EGR通路の出口は、インタークーラー(エンジンの前方側)に向かって延びるように配管されている吸気路の上流部分、すなわちインタークーラーに近い地点に接続されるから、最短の経路ですみ、エンジン周辺が簡素化される。そのうえ、EGR通路は、エンジンの上側を開放させるようエンジン前方に配設されるので、ロッカーカバー、シリンダヘッドといったエンジン上部の部品の脱着が行いやすくなり、エンジンに対して優れた脱着作業性をもたらす。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図1ないし図3に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0014】図1は、エンジン、例えばトラックに搭載されるターボ過給機を用いた縦置き水冷式ディーゼルエンジン(車体前後方向に沿ってレイアウトされるエンジン)の前部側の平面図、図2は同図1中のA〜A線から見たエンジン上部側の側面図をそれぞれ示し、図中1は、前方に冷却ファン1aおよびラジエーター1bが配設されたディーゼルエンジンのエンジン本体、20は同エンジン本体1に取付けられたターボ過給機(詳細図示なし)を示している。
【0015】エンジン本体1は、複数の気筒2がエンジン前後方向に収められたクランクケース3(図2だけ一部図示)と、このクランクケース3の上部に取付けた、吸・排気弁や同弁を駆動するカムシャフトといった動弁系、インジェクタ(いずれも図示しない)などの機器が収められたシリンダヘッド4と、このシリンダヘッド4の上部に取付けたロッカーケース(図示しない)、このロッカケースの開口を塞ぐロッカカバー5とを有している。そして、吸・排気弁,インジェクタ,気筒2内を往復動するピストン(図示しない)により、各気筒2内で、吸気、圧縮、爆発、排気の各行程を繰り返して動力を出力するようにしてある。また気筒2列を挟むシリンダヘッド4の一側には、各気筒2へ吸気を導く吸気路、例えばインレットパイプ6が接続された吸気マニホールド7が取付けられている。反対側の他側には各気筒2の燃焼ガスを排出する排気路、例えば排気マニホールド8が取付けてある。なお、インレットパイプ6はエンジン前方へ延びるように形成してある。
【0016】またエンジン本体1の前部、例えばシリンダヘッド4の前部には、例えば2個のサーモスタット10が取付けられている。サーモスタット10は、冷却水が流れるケース、例えばアルミ材から形成された箱形状の上下2分割式のケース11内に収めて、1部品に構成してある。このケース11の一側面がシリンヘッド4の前面と密接するように取付けてある。ケース11は、上部に外部排出口12を備え、シリンダヘッド4と密接する側面にシリンダヘッド4の内部に形成してあるウォータジャケットの出口(いずれも図示しない)と連通する入口13を備え、下部にクランクケース3の前部に取付けてあるエンジン軸力駆動式のウォータポンプ14(図2だけに図示)のバイパス路と連通するバイパス口(図示しない)を備えて構成してある。そして、ケース11の外部排出口12が、ラジエーターホース(図示しない)を介して、上記ラジエーター1bの入口(図示しない)に接続してある。これで、サーモスタット10が行う冷却水温に応じたバイパス口あるいは外部排出口12の切換動作(出口制御)により、ウォータジャケット内の冷却水が高温のときは、ラジエーター1bを冷却水が通過する流れに変え、冷却水が低温のときはウォータポンプのバイパス路を通過する流れ(ラジエーター1bを通らない流れ)に変えるようにしてある。
【0017】ターボ過給機20は、排気マニホールド8の出口に取付けられている。同ターボ過給機20は、排気マニホールド8から排出される排気ガスのエネルギーにより回転するタービン(図示しない)とこれと同軸につながるコンプレッサー21(図示しない)とを有している。吸気管22aの入口は、エアクリーナー(図示しない)に接続され、コンプレッサーハウジングの出口パイプ22は、エンジン前方、すなわち冷却ファン1aの前方に配設された例えば空冷式のインタークーラー23の入口に接続されている。なお、23aはそのコンプレッサーハウジングの出口パイプ22とインタークーラー23の入口とをむすぶ入口配管を示す。またインタークーラー23の出口は、出口配管23bを介して、インタクーラー23へ向かって延びているインレットパイプ6の入口6aに接続してあり、ターボ過給機20で過給された吸気をインタークーラー23で冷却してからディーゼルエンジンの吸気側へ供給させるようにしてある。
【0018】またエンジン本体1には、排気路、例えば排気マニホールド8内に排出された排気ガスをEGRガスとして、エンジン本体1の吸気側のマニホールドに還流するEGR装置25が取付けられている。
【0019】そして、このEGR装置25に、吸気効率を高める工夫、パイプ長さが少なくてすむ工夫、ロッカカバー5などエンジン上部の部品の脱着性を高める工夫、均一なEGRガス濃度の吸気を各気筒2へ供給する工夫を施した構造が採用されている。
【0020】すなわち、同構造には、冷却水が流れるサーモスタット10のケース11を利用した最も短い長さのEGR通路26で、気筒2列を挟む排気側から吸気側への配管を実現しながら、できるだけ吸気路の上流側でEGRガスを導入させる構造が用いてある。
【0021】同構造について説明すれば、サーモスタット10のケース11には、図3(a),(b)にも示されるようにエンジン本体1の幅方向に沿って延びる例えばほぼ逆L字形のガス路27が一体に形成されている。そして、エンジン本体1の排気側へ向くガス路27の端部に形成されているフランジ部27aは、排気マニホールド7の集合部の下部から分かれてエンジン前方へ延びているEGR路、すなわちEGRパイプ29の端部に接続されている。またエンジン本体1の吸気側へ向くガス路27の端部に形成されているフランジ部27bは、EGR路、すなわち吸気路側へ延びるEGRパイプ30を介して,インレットパイプ6の最も上流側に取付けてあるEGRバルブ31に接続されている。これらEGRパイプ29、ケース11のガス路27、EGRパイプ30によって、エンジンの排気マニーホールド8から分かれてから、エンジン本体1の前方を回り込んで、インレットパイプ6の上流側で接続される構造のEGR通路26を構成している。つまり、ケース11がEGR通路26の一部をなす構造にしてある。
【0022】こうしたEGR装置25は、エンジン運転中、所望とする開度でEGRバルブ31が動作すると、図1中の二点鎖線で示されるように排気マニホールド8内に排出された排気ガスの一部がEGRガスとして、EGRパイプ29から導出されて、エンジン前部に装着されているサーモスタット10のケース11にあるガス路27へ向かう。
【0023】このとき、サーモスタット10のケース11は、熱伝導性の有る部材、すなわちアルミ材から形成されているから、同ガス路27は、EGRクーラー的な役割を果たし、エンジンの冷却水で、ガス路27を通過するEGRガスを冷却していく。このEGRガスが、EGRパイプ30を通じて、EGRバルブ31からインレットパイプ6内に導かれる。
【0024】つまり、EGRガスは、インレットパイプ6を流れる吸気と混合しながら、吸気マニホールド7から各気筒2へ供給される。
【0025】このとき、インレットパイプ6へ導入されるEGRガスは、サーモスタット10のケース11を流れるエンジンの冷却水で冷却されているから、EGRガスの体積を減少できると共に吸気温の上昇を抑えることができるようになり、結果的にEGR量を増大することができる。
【0026】これにより、ディーゼルエンジンは、高EGR量、高い吸気効率で吸気が行われる運転ができる。
【0027】また、サーモスタット10のケース11をEGR通路26の一部としてエンジン本体1の前方を通してEGR通路26を配管させる構造と、エンジン本体1の前方にインタークーラー23の有るターボ過給式の水冷エンジンとが組合うことにより、EGR通路26の出口は、最短の経路で、インレットパイプ6の上流部分、すなわちインタークーラー23に近い入口6a近くの吸気路部分に接続でき、吸気路の全長を有効に活用、すなわちインレットパイプ6および吸気マニホールド7の集合部7aを十分に活用して、各気筒2に至るまでにEGRガスと吸気とを十分に混合させることができる。これにより、エンジン本体1の各気筒2へ均一なEGRガス濃度の吸気を供給できる。しかも、EGR通路26は、最短の経路ですむので、エンジン周辺が簡素化できる。そのうえ、EGR通路26は、エンジン本体1の上側を開放させるようエンジン前方に配設されるので、ロッカーカバー5、シリンダヘッド4といったエンジン上部の部品の脱着が行いやすく、エンジン本体1に対して優れた脱着作業性をもたらすことができる。
【0028】なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、2つのサーモスタットを収めるケースにガス路を形成したが、これに限らず、1つのサーモスタットや2以上のサーモスタットを収めるケースにガス路を形成するようにしても構わない。また例えば実施形態では、ディーゼルエンジンに適用したが、それ以外のエンジンに適用してもよい。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、EGRガスは、サーモスタットのケース内を流れるエンジンの冷却水で冷却されてから、吸気路へ導入されるようになるので、EGRガスの体積を減少することができると共にEGRガスがもたらす吸気温の上昇を抑えることができ、EGR量の増大および吸気効率を高めたエンジンのEGR運転ができる。
【0030】請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加え、EGR通路の出口側は、エンジン前方を通じ、最短の経路で、エンジンの排気路から反対側の吸気路へ回り込んで、インタークーラーに近い吸気路の部分に接続できるので、吸気路の全長を有効に活用して、各気筒に至るまでに、EGRガスと吸気とを十分に混合させることができ、エンジンの各気筒へ均一なEGRガス濃度の吸気を供給できる。しかも、EGR通路は、最短の経路なので、エンジン周辺が簡素化できる。そのうえ、EGR通路は、エンジンの上側を開放させるようエンジン前方に配設されるので、ロッカーカバー、シリンダヘッドといったエンジン上部の部品の脱着が行いやすくなり、エンジンに優れた脱着作業性をもたせといった効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成12年1月17日(2000.1.17)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外3名)
【公開番号】 特開2001−200762(P2001−200762A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−8124(P2000−8124)