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【発明の名称】 多気筒エンジンの吸気通路構造
【発明者】 【氏名】市原 隆信

【氏名】永野 正美

【要約】 【課題】各気筒にほぼ均等に燃料が分配でき、気筒毎の空燃比のずれを防止することができる吸気通路構造を提供する。

【解決手段】少なくとも3方向以上に燃料を噴射可能な一本の燃料噴射弁5が装着された吸気集合部より下流で分岐し、少なくとも3以上の気筒にそれぞれ気筒毎に接続し、吸入空気と前記燃料との混合気を各気筒に供給する吸気通路1〜3の中で、両隣りに他の吸気通路がなく片側に他の吸気通路がある位置に配置される吸気通路間1,3に互いに前記混合気の流通が可能な連通管4を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも3方向以上に燃料を噴射可能な一本の燃料噴射弁が装着された吸気集合部より下流で分岐し、少なくとも3以上の気筒にそれぞれ気筒毎に接続し、吸入空気と前記燃料との混合気を前記各気筒に供給する構成の多気筒エンジンの吸気通路構造において、前記各気筒に接続される吸気通路の中で、両隣りに他の吸気通路がなく片側に他の吸気通路がある位置に配置される吸気通路間に互いに前記混合気の流通が可能な連通管を設けることを特徴とする多気筒エンジンの吸気通路構造。
【請求項2】少なくとも3方向以上に燃料を噴射可能な一本の燃料噴射弁が装着された吸気集合部より下流で分岐し、少なくとも3以上の気筒にそれぞれ気筒毎に接続し、吸入空気と前記燃料との混合気を前記各気筒に供給する構成の多気筒エンジンの吸気通路構造において、前記各吸気通路の形状を、前記各吸気通路の前記分岐する位置での吸気通路断面積が、前記各吸気通路の吸気ポート位置での吸気通路断面積より大きくなるように構成することを特徴とする多気筒エンジンの吸気通路構造。
【請求項3】請求項2において、前記分岐する位置での吸気通路断面積が、前記吸気ポート位置での吸気通路断面積に対し1.5倍以上となるように構成することを特徴とする多気筒エンジンの吸気通路構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多気筒内燃機関の吸気通路構造に係り、特に内燃機関の各気筒に向けて、一本の燃料噴射弁から燃料を供給する燃料供給装置を備えた内燃機関の吸気通路構造に関する。
【0002】
【従来の技術】多気筒内燃機関の燃料噴射方式としては、各気筒の吸気通路下流に、各気筒毎に設けられた燃料噴射弁により燃料を供給する方式と、吸気通路の集合部に設けられた一本の燃料噴射弁より各気筒の吸気通路に燃料を供給する方式が有り、このうち一本の燃料噴射弁により燃料を供給する方式は安価に燃料を供給する方式として採用されている。
【0003】これらにおける吸気通路の構造としては、例えば特開平10−274136号公報に開示されているように、各気筒に接続される吸気通路が一列に隣接するように配置される場合が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一本の燃料噴射弁より各気筒に燃料を噴射する方式において、各気筒の吸気通路に噴射された燃料のうち、全てが直ちに吸気ポートに達するのでなく、微細な燃料粒子が吸気通路内に浮遊している。
【0005】燃料噴射弁の下流で分岐した吸気通路内に存在する浮遊燃料のうち分岐部付近にあるものは、隣接する吸気通路の圧力が気筒の吸気動作により低下したときに生ずる空気流により、噴射された吸気通路から、上記隣接した吸気通路に向かって移動することになる。
【0006】従来の吸気通路構造では、例えば3気筒の4サイクル内燃機関においては、集合部より分岐した3つの吸気通路が、図11に示すように隣接している場合、外側に位置する吸気通路1、3については、それに接続される気筒が吸気行程となった時、吸気通路圧力の低下に伴う空気流の発生により隣接する中央の吸気通路2から外側の吸気通路に向かって浮遊燃料が移動する。
【0007】これに対して中央に位置する吸気通路2については、これに接続される気筒が吸気行程となったとき、隣接する両外側の吸気通路1、3から中央の吸気通路に向かって浮遊燃料が移動することになる。
【0008】図12は、従来の吸気通路構造における浮遊燃料の1サイクルの移動状態を示す。1サイクル中の各気筒の行程と吸気通路の圧力との関係を示し、また気筒間の浮遊燃料の移動方向を矢印で示している。外側吸気通路に接続される1気筒が吸気行程となった時、圧力低下による空気流により隣接した2気筒の吸気通路より浮遊燃料が1気筒に向かって流入する。ここで、距離の離れた3気筒からの浮遊燃料の移動量は非常に小さいのでここでは無視する。同様に外側吸気通路に接続される3気筒が吸気行程となった時、隣接した2気筒の吸気通路より浮遊燃料が3気筒に向かって流入する。
【0009】その後、中央に位置する吸気通路に接続される2気筒が吸気行程となると隣接した1気筒および3気筒の吸気通路から2気筒に向かって浮遊燃料が流入する。ここで、外側の吸気通路と中央の吸気通路では隣接する吸気通路の数が異なるので、中央の吸気通路に両外側の吸気通路から流入する浮遊燃料の量と、外側の吸気通路に中央の吸気通路から流入する浮遊燃料の量とは一致しない。
【0010】これにより、図13に示すように、中央に位置する吸気通路に接続される気筒の空燃比と、外側に位置する吸気通路に接続される気筒の空燃比とはずれを生じる。このような空燃比の気筒間差は、排出ガス物質を増大させることになる。
【0011】このように、従来の吸気通路構造では、各気筒に入る燃料量は均一とならず気筒毎に空燃比のずれを生じ、排出ガス物質が増大してしまうという問題があった。
【0012】本発明の目的は、各気筒にほぼ均等に燃料が分配でき、気筒毎の空燃比のずれを防止することができる吸気通路構造を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明における多気筒エンジンの吸気通路構造の特徴とするところは、吸入空気と前記燃料との混合気を各気筒に供給する吸気通路の中で、両隣りに他の吸気通路がなく片側に他の吸気通路がある位置に配置される吸気通路間に互いに前記混合気の流通が可能な連通管を設けることにある。
【0014】また、各吸気通路の形状を、各吸気通路の分岐する位置での吸気通路断面積が、各吸気通路の吸気ポート位置での吸気通路断面積より大きくなるように構成することにある。
【0015】具体的には本発明は次に掲げる吸気通路構造を提供する。本発明は、少なくとも3方向以上に燃料を噴射可能な一本の燃料噴射弁が装着された吸気集合部より下流で分岐し、少なくとも3以上の気筒にそれぞれ気筒毎に接続し、吸入空気と前記燃料との混合気を前記各気筒に供給する構成の多気筒エンジンの吸気通路構造において、前記各気筒に接続される吸気通路の中で、両隣りに他の吸気通路がなく片側に他の吸気通路がある位置に配置される吸気通路間に互いに前記混合気の流通が可能な連通管を設けることを特徴とする多気筒エンジンの吸気通路構造を提供する。
【0016】また、本発明は、少なくとも3方向以上に燃料を噴射可能な一本の燃料噴射弁が装着された吸気集合部より下流で分岐し、少なくとも3以上の気筒にそれぞれ気筒毎に接続し、吸入空気と前記燃料との混合気を前記各気筒に供給する構成の多気筒エンジンの吸気通路構造において、前記各吸気通路の形状を、前記各吸気通路の前記分岐する位置での吸気通路断面積が、前記各吸気通路の吸気ポート位置での吸気通路断面積より大きくなるように構成することを特徴とする多気筒エンジンの吸気通路構造を提供する。
【0017】好ましくは、前記分岐する位置での吸気通路断面積が、前記吸気ポート位置での吸気通路断面積に対し1.5倍以上となるように構成する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例に係わる吸気通路構造を、図を用いて説明する。
【0019】図1は、本発明の第1の実施の形態例に係わる吸気通路構造を示す。1〜3は、各気筒に接続される吸気通路であり、燃料噴射弁5の下流に位置する吸気集合部より分岐した3つの吸気通路が隣接して設置されている。4は、両外側に位置する吸気通路1,3との間に設置される連通管であり、互いに吸入空気の流通が可能となるようにしている。
【0020】図2に、本吸気通路構造における浮遊燃料の1サイクルの移動状態を示す。連通管を通して1気筒から3気筒に移動する、或いは3気筒から1気筒に移動する浮遊燃料を、1気筒、3気筒の行程図と共に示した。外側吸気通路1に接続される1気筒が吸気行程となった時、隣接した2気筒の吸気通路、および3気筒の吸気通路と接続される連通管4より浮遊燃料が1気筒に向かって流入する。
【0021】同様に外側吸気通路3に接続される3気筒が吸気行程となった時、隣接した2気筒の吸気通路、および1気筒の吸気通路と接続される連通管より浮遊燃料が3気筒に向かって流入する。その後、中央に位置する吸気通路2に接続される2気筒が吸気行程となると隣接した1気筒および3気筒の吸気通路から2気筒に向かって浮遊燃料が流入する。
【0022】ここで、隣接する吸気通路から流入する浮遊燃料の量と、連通管4を通して流入する浮遊燃料の量を等しくすれば、各気筒で浮遊燃料の流入量を均一にすることができ、空燃比の気筒間差を低減することが可能となる。
【0023】ここで、連通管4の長さは、隣接する吸気通路との距離よりも長くなり、よって連通管4の通気抵抗は、隣接する吸気通路との通気抵抗に対し大きくなるが、隣接する吸気通路から流入する浮遊燃料の量と、連通管4を通して流入する浮遊燃料の量とを等しくすることができる。以下、その理由を、図3を用いて説明する。
【0024】図3に吸気通路の圧力分布を示す。吸気行程でない吸気通路ではほぼ一定の圧力となるが、吸気行程となったときの吸気通路圧力は吸気ポートに近くなるにしたがって低下する。吸気通路の分岐部では吸気行程となった吸気通路の圧力と吸気行程でない吸気通路の圧力差ΔP1により空気流が生じ、隣接した吸気管から吸気行程となった吸気管に向かって浮遊燃料が流入する。
【0025】これに対し、連通管4は分岐部の下流位置に設けられるので、連通管4の位置においては吸気行程となった吸気通路の圧力と吸気行程でない吸気通路の圧力差(連通管4の入口と出口の圧力差)ΔP2は、分岐部の圧力差ΔP1に対し大きくなる。
【0026】これにより、連通管の通気抵抗が、隣接する吸気通路の通気抵抗に対し大きくなっても、連通管4には隣接する吸気通路から流入する空気流と等しい量の空気流を発生させることができ、したがって連通管を通して流入する浮遊燃料の量を、隣接する吸気通路から流入する浮遊燃料の量と等しくすることが可能となる。
【0027】このように、本吸気通路構造では、隣接していない両外側吸気通路の間でも浮遊燃料の移動が可能となるので、全ての気筒について、吸気行程で他の気筒の吸気通路から流入する浮遊燃料の量を等しくすることができる。よって、連通管4の最適位置を決める場合には、連通管4の位置を分岐部から徐々に下流側にずらしてき、空燃比の気筒間差が最小となる位置とすればよい。
【0028】図4に、本吸気通路構造による空燃比の気筒間差測定結果を示す。連通管の無い場合に比べて、空燃比の気筒間差を低減することができる。
【0029】図5は、本吸気通路構造を4気筒の内燃機関に適用した例である。4つの隣接した吸気通路のうち、両外側の吸気通路の間に連通管4を設ける。
【0030】また、図6に、4気筒の内燃機関の吸気通路に連通管を設けた場合の浮遊燃料の移動状態を示す。ここで、隣接する吸気通路から流入する浮遊燃料の量と、連通管を通して流入する浮遊燃料の量を等しくすれば、3気筒の例と同様に各気筒で浮遊燃料の流入量を均一にすることができ、空燃比の気筒間差を低減することが可能となる。
【0031】図7は、図6の比較例として、両外側の吸気通路の間に連通管を設けない4気筒の内燃機関について浮遊燃料の移動状態を示したものである。内側に位置する2、3気筒の吸気通路が吸気行程となったときは両隣の2つの吸気通路から浮遊燃料が流入する。これに対し、両外側に位置する1、4気筒の吸気通路が吸気行程となったときは、連通管が設けられていないため、隣接する1つの吸気通路からのみ浮遊燃料が流入する。
【0032】したがって、外側の吸気通路と内側の吸気通路では隣接する吸気通路の数が異なるので、内側に位置する吸気通路に流入する浮遊燃料の量は、外側に位置する吸気通路に流入する浮遊燃料の量とは一致せず、空燃比の気筒間差を生じる。
【0033】図8は、本発明の第2の実施の形態例に係わる吸気通路構造を示す。図8に示すように、吸気通路6の分岐位置における吸気通路断面積を、内燃機関の吸気ポート位置における吸気通路断面積に対し大きくするように構成する。本吸気通路構造における、浮遊燃料の状態について、図9を用いて説明する。
【0034】図9は、本吸気通路の側面図であり、従来の吸気通路形状と併せて示している。浮遊燃料は噴射方向の中心軸に沿って多く存在し、中心軸から離れるにしたがって減少する。よって、従来の吸気通路に対し、分岐部の通路断面積を拡大した本第2の実施の形態例の吸気通路では分岐部付近の浮遊燃料の平均濃度を小さくすることができる。
【0035】一方、吸気行程となった吸気通路に、隣接する吸気通路から流入する空気の体積は、従来の吸気通路とほぼ同一である。よって、分岐部の浮遊燃料濃度が減少した分、吸気行程となった吸気通路に、隣接する吸気通路から流入する浮遊燃料の量を、従来の吸気通路に対し少なくすることができる。
【0036】これにより、図10に示すように、通路面積比(分岐位置における吸気通路断面積/吸気ポート位置における吸気通路断面積)Rを大きくするにしたがって空燃比の気筒間差を低減することができる。供試エンジンの例では、通路面積比Rが1.5倍以上で空燃比の気筒間差を低減することができる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、両外側吸気通路との間に互いに吸入空気の流通が可能な連通管を設けることにより、各気筒について、他の吸気通路から流入する浮遊燃料の量をほぼ等しくできるので、空燃比の気筒間差を低減でき、排出ガス物質を低減することができる。
【0038】また、分岐位置の各吸気通路断面積を、吸気ポート位置の各吸気通路断面積より大きくなるように構成することにより、各気筒について、他の吸気通路から流入する浮遊燃料の量を少なくすることができるので、空燃比の気筒間差を低減することができ、排出ガス物質を低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100074631
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 幸彦 (外1名)
【公開番号】 特開2001−182643(P2001−182643A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−364473