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【発明の名称】 燃料噴射ノズルおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】依田 稔之

【要約】 【課題】噴孔出口に向って流体の摩擦損失を低減することができ、高流速の燃料を噴射することが可能な噴孔収束形状を備えた燃料噴射ノズルを提供することにある。

【解決手段】噴孔入口411の径dIと噴孔出口413の径dOおよび内壁を形成する噴孔通路412からなる噴孔41が、本発明の実施形態を包括する数式1(r=a×LX+b)および条件(x>1、かつa>0かつb<0)を満足する流れ方向軸に収束する収束曲面により噴孔形状を形成することで、燃料流速を噴孔入口411から前記噴孔出口413に向って漸次増加させ、噴孔出口413近傍直前にて増大させることにより流体の摩擦損失を低減することができるので、高流速の燃料を噴射することが可能な噴孔収束形状を備えた燃料噴射ノズルを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端に当接部を有するバルブニードルと、前記バルブニードルを軸方向に往復摺動可能に嵌合する案内孔、前記当接部と接触可能な弁座部を備えたノズルボディとを備え、前記弁座部またはその下流側に内外を連通する噴孔が、前記噴孔の噴孔入口から噴孔出口に向って、噴孔面積が小さくなるよう形成された燃料噴射ノズルであって、前記噴孔入口から前記噴孔出口に向って噴孔内壁における流体摩擦損失を低減する噴孔を備えたことを特徴とする燃料噴射ノズル。
【請求項2】 前記噴孔内壁における流体摩擦損失を低減する噴孔は、前記噴孔出口近傍直前にて前記噴孔面積が絞られる収束曲面を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射ノズル。
【請求項3】 前記収束曲面は、流れ方向軸に向って、次式の関係を満足するよう設定され、数式1 r = a × LX + b前記数式1の次数関数において、次数xおよび、定数a、bの関係が下記条件1を満足すること。
条件1 x>1、かつa>0 かつ b<0ここで、前記数式1は、前記案内孔の第1の軸線と前記噴孔の第2の軸線との交点を原点とする次数関数で説明される関係式であって、前記原点から前記噴孔出口に向う任意の距離をLとし、また前記距離Lに位置する前記第2の軸線に垂直な略円筒な円の半径をrとする。前記半径rの前記噴孔面積を有する噴孔により、前記噴孔入口から前記噴孔出口に向って、燃料流速が漸次増加して前記噴孔出口近傍直前にて増大することが達成させることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射ノズル。
【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料噴射ノズルであって、前記噴孔入口部に面取りを形成された噴孔を備えていることを特徴とする燃料噴射ノズル。
【請求項5】 先端に当接部を有するバルブニードルと、前記バルブニードルを軸方向に往復摺動可能に嵌合する案内孔と、前記当接部と接触可能な弁座部と、前記弁座部またはその下流側に内外を連通する複数の噴孔を備えた燃料噴射ノズルであって、前記噴孔の少なくとも1つが、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の前記噴孔の特徴を有する噴孔を備えていることを特徴とする燃料噴射ノズル。
【請求項6】 請求項3に記載の燃料噴射ノズルの製造方法であって、前記数式1の前記x、a、bの関係をもとにして、電極に印加する電圧、電圧の周波数、電極送り速度の調整により前記噴孔内壁を有する噴孔を形成する放電加工、或いは、レーザの集光位置を制御することにより前記噴孔内壁を形成するレーザ除去加工により前記噴孔内壁を加工することを特徴とする燃料噴射ノズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の燃料噴射ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の内燃機関の燃料噴射ノズルは、ノズルボディの弁座部にニードルの当接部が接触と離間を繰り返すことにより弁閉動作と弁開動作を行い、弁開時にノズルボディの噴孔から燃料を噴射する。ディーゼル機関においては、機関の排出する排出ガスによる大気汚染対策上、排ガス中の黒煙、ハイドロカーボンを代表とするパティキュレートを低減することが要求される。
【0003】このパティキュレートを低減するためには、燃料噴射ノズルから噴射された噴霧の微粒化が有効であることが知られている。燃料噴霧の微粒化を促進するには、燃料噴射ノズルに導かれる燃料の圧力を噴射ポンプにより高めておき、その高められた高圧燃料を燃料噴射ノズルに設けられた多数の小さな噴孔へ燃料を供給することが重要で、しかもその燃料に与えられた高エネルギーを噴孔出口まで導き、流体損失を少なくし噴孔出口から高流速の燃料(流量大)を噴射することがさらに重要となる。この課題を達成させるための手段として、ノズルボディの噴孔の形状に着目し、噴孔入口から噴孔出口に向って噴孔面積を小さくした噴孔を有する燃料噴射ノズルが提案されている(例えば、特開平2−67458号公報、特開平6−81750号公報等)。
【0004】特開平2−67458号公報の実施形態によると、噴孔が均一に収束するテーパ形状を備えた燃料噴射ノズルである。
【0005】また、特開平6−81750号公報の実施形態によると、噴孔を二分し、噴孔出口側の一方をコーティング技術よりテーパ形状に形成することを特徴とする燃料噴射ノズルである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来構造では、いずれも噴孔内を流れる流体の流体損失を最小限に抑える噴孔を備えた燃料噴射ノズルを提供するものではない。
【0007】ここで、流体損失を最小限に抑えるというのは、噴孔内を流れる流体の摩擦損失を低減するということである。具体的に言い換えると、摩擦損失は流体に面する噴孔壁面近傍で発生するので、噴孔壁面が具備すべき特徴としては、流れ方向に沿って滑らかな曲面でかつ流路断面が均一な円環状に形成されることがまず最低条件にある。さらに噴孔を流れ方向に収束させる噴孔形状を噴孔壁面によって如何に形成するかが重要である。
【0008】そこで、上記の観点から特開平6−81750号公報について精査すると、この公報によれば、コーティング技術により噴孔を形成しようとするその背景は、上述で既に説明したように燃料噴霧の微粒化を促進するには噴射ポンプにより高圧化された燃料を多数の小さな噴孔へ供給することが重要でありその噴孔は小さければ小さい程よいのだが、噴孔を限りなく小さくすると、切削加工或いは浸食加工(これには、例えば放電加工やレーザー加工も含まれる)を用いて加工するのに限界があり、これらの加工以外で噴孔面積を縮小する方法が望まれているとある。つまり、放電加工やレーザー加工ができない程の小径の噴孔を加工する場合に行う次善の策がコーティング技術であるという。
【0009】さらに、特開平6−81750号公報の実施形態では、まず製造技術的にコーテング厚さを均一に制御することは困難である。さらに、コーテーングを施した被着部と非被着部との境目には、段差或いは隆起部を生じることが予想される。
【0010】このことから、上述で説明した噴孔壁面が具備すべき特徴と照らしてみると、まず、段差或いは隆起部が生じる点で、流れ方向に沿って滑らかな曲面を形成することが製造上難しい。また、コーテイング厚さを均一に制御できないため、例えば設計狙い通りの収束形状を意図的に形成することも困難であると予想される。
【0011】本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、したがってその目的は、噴孔出口に向って流体の摩擦損失を低減することができ、高流速の燃料を噴射することが可能な噴孔収束形状を備えた燃料噴射ノズルを提供すること、またその燃料噴射ノズルを製造する有利な方法を提供することにある。
【0012】また、本発明の別の目的は、ディーゼル機関に搭載されピストン内に形成された燃焼室に対向する複数の噴孔を有する燃料噴射ノズルにおいて、燃焼室の噴霧分配を制御したい場合や、燃焼室形状による制約から噴孔ごとに異なる噴霧到達距離を設定したい場合に、従来技術のように燃料噴霧の微粒化性能を損なう(例えば噴霧到達距離を伸ばすため噴孔を大きくする)ことなく、噴霧到達距離と微粒化性能とを両立した燃料噴射ノズルを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1から請求項4のうち、少なくともいずれかの一項に記載の技術手段を採用することにより所望の燃料噴射ノズルを提供し、請求項6によりその燃料噴射ノズルを製造する有利な方法を提供する。また、別の目的を達成するために、請求項5による技術手段を用いる。
【0014】請求項1ないし請求項2によれば、噴孔内壁における流体摩擦損失を低減する噴孔、ないし噴孔入口から前記噴孔出口に向って燃料流速が漸次増加して前記噴孔出口近傍直前にて増大するように所定の次数関数の式に従って形成されている噴孔を設けるので、例えば設計狙い通りの収束曲面の形状を意図的に形成することも可能である。
【0015】請求項3によれば、噴孔内壁における流体摩擦損失を低減する噴孔の収束形状を、単に噴孔をテーパ形状にする以上に、流体の摩擦損失を低減する効果が得られるので、より高流速の燃料を噴射が可能となる。
【0016】請求項4によれば、さらに、噴孔入口部に面取りを設けるので、燃料の噴射がさらにより高流速となる。
【0017】請求項5によれば、従来技術のように燃料噴霧の微粒化性能を損なう(例えば噴霧到達距離を伸ばすため噴孔を大きくする)ことなく、噴霧到達距離と微粒化性能とを両立することが可能となる。
【0018】請求項6によれば、所望の燃料噴射ノズルの製造を、放電加工或いはレーザー除去加工により達成できる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0020】(第1の実施形態)本発明の第1実施形態を図1および図2に示す。図1は、本実施形態の燃料噴射ノズル10の先端部分の断面図である。なお、この燃料噴射ノズル10のその他の部分は、周知の構造であるので図示および説明を省略する。図1に示すように、燃料噴射ノズル10は、ノズルボディ11と、このノズルボディ11の内部に軸方向に往復摺動可能なバルブニードル31とからなる。
【0021】ノズルボディ11は、有底の中空円筒状で、内部に案内孔12、弁座部13、噴射孔(以下、噴孔と呼ぶ)41、サック部15が形成される。案内孔12は、ノズルボディ11の内部に軸方向に延びており、一方の端部がノズルボディ11の開口端(図示せず)に接続しており、他方の端部側が弁座部13に接続している。案内孔12の内壁は、ノズルボディ11の開口端から有底側の弁座部13の近傍まで略同一内径に形成されている。
【0022】弁座部13は、円錐台面を有し、大径側の一端が案内孔12に連続し、小径側の他端側がサック部15に接続している。この弁座部13にバルブニードル31の当接部36が当接可能である。当接部36は理論的には円の形状である。サック部15は、ノズルボディ11の先端側に袋状に小空間の容積をもって形成されるサックホールである。サックホールの開口側は弁座部13の小径側に連続する。
【0023】噴孔41は、図1に示すように、ノズルボディ11の先端部にノズルボディ11の内外を連通する通路に形成される。この噴孔41は、噴孔入口411、噴孔通路412および噴孔出口413からなる。噴孔入口411の位置は、弁座部13に当接するバルブニードル31の当接部36との接触部よりもサックホール15側に形成される。噴孔通路412は噴孔入口411から入った燃料流を案内し、噴孔出口413に導く。噴孔出口413の中心軸は燃料を噴射する所望の方向に一致する。噴孔通路412の内径は噴孔入口411から噴孔出口413に向って噴孔面積が小さくなるように形成されている。
【0024】バルブニードル31の上端側の大径円柱部(図示せず)は、外径が同一径で、クリアランスを介して案内孔12に遊嵌合し、軸方向に往復動することが可能である。小径円柱部34の外径は、案内孔12の内径よりも小さい。小径円柱部34と案内孔12の内壁との隙間が燃料通路になる。
【0025】円錐台部35は、一方の端部が小径円柱部34に連続しており、他方の端部が円状の当接部分36を介して円錐部37に連続する。円錐台部35と円錐部37との接続部分は円であり、この円の部分が弁閉時の接触部となる。円錐部37は、弁座部13の傾斜角よりも大きな傾斜角となっている。これは弁閉時の当接部36と弁座部13との接触を可能にし油密を確保するためである。円錐部37の先端は、弁閉時、サック部15に対面する位置となる。
【0026】ここで、本発明の実施形態の特徴である噴孔41の形状について、以下説明する。上述のように、噴孔通路412の内径は噴孔入口411から噴孔出口413に向って噴孔面積が小さくなるように形成されている。さらに本実施形態では、噴孔41の内壁412aにおける流体摩擦損失を低減できるように、噴孔出口413に向って、燃料流速が漸次増加して噴孔出口413近傍直前にて増大する噴孔41の形状を以下の次数関係式が成り立つ流れ方向軸の曲線を有する収束曲面にて定義する。
【0027】数式1r = a × LX + bここで図2に示すように、rは後述の距離Lの位置での噴孔通路413の半径を示す。またLは、ノズルボディ11の軸線ZZと噴孔41の軸線LLとの交点を図2に示す原点Oとするとき、原点Oから噴孔出口413に向った任意の距離をLとする。
【0028】xは次数、a、bは定数であり、内壁412aにおける流体摩擦損を低減するのに優れた効果を上げる条件(後述の作動、効果で説明する)である下記条件1を満足する。
【0029】条件1x>1、かつa>0かつb<0なお、数式1におけるa、bの値は、噴孔入口411の径dIと噴孔出口413の径dOを決めるためのパラメータ変数であり、前述の関係式1または関係式2の条件内で任意に設定することが可能である。
【0030】次に、作動および効果を説明する。図1に示すように、ノズルボディ11の弁座部13からニードルバルブ31の当接部36が離間しているとき、弁開状態となる。弁開状態では、弁座部13と円錐部37との間にクリアランス46が形成される。クリアランス46側から供給される燃料は、噴射孔入口411に入り、噴射孔通路412、噴射孔出口413を経て矢印A方向に噴射される。
【0031】図1に示す弁開状態から弁閉状態に移行するとき、弁座部13に対しニードルバルブ31が図1で下降し、当接部36が弁座部13に接触すると、燃料流が遮断される。
【0032】したがって、図示しない燃料噴射ポンプからノズルボディ11の燃料供給孔に入った燃料は、図示しないコイルバネによるバルブニードル31の押付荷重と受圧面積から設定される開弁圧に到達すると、図1に示すように、ニードルバルブ31は燃料圧力に抗して上昇し、弁座部13から当接部36が離間し、噴射孔41から燃料を噴射する。燃料は、燃料通路46を通り、噴射孔入口411、噴射孔通路412ならびに噴射孔出口413を通り矢印A方向に噴射される。また、噴射ポンプからの燃料圧送が終了すると、燃料圧力が降下し設定された閉弁圧に達すると、バルブニードル31の当接部36が弁座部13に当接し、燃料通路を閉じ、燃料噴射を終了する。
【0033】次に、本実施形態の特徴である噴孔41の形状にすることで得られる作用と効果を以下、図3〜図5の説明図を参照して説明する。
【0034】図3は、噴孔形状による噴孔出口から噴射される燃料の流速を比較するために用いる、燃料噴射ノズルの流体損失の大小を比較する流量係数μの説明図である。なお、μ0のイは、後述の比較例1を示し(dI/dO=1、かつx=0)、図3中の実線ロは、後述の比較例2を示し、一点鎖線のハ、および破線のニは、本発明の実施形態の2例を示す。
【0035】また、図4、図5は、噴孔出口413の径dOは同じで、かつ弁座13周辺の燃料が噴孔入口411に浸入するとき発生するときの流体損失(流体力学で言うところの、広いところから狭い通路に流入するに発生する縮流)もなく、噴孔入口411直後の流速は同じとする前提として、異なる噴孔形状の燃料噴射ノズルを比較した説明図である。なお、実線のイは、比較例1を示し、破線のロは、比較例2を示し、一点鎖線のハ、および点線のニは、本発明の実施形態の2例を示す。
【0036】図4に示すように、実線で図示のイは、噴孔入口411、噴孔出口413、および噴孔通路412の径が同じである直噴孔(以下、比較例1と呼ぶ)を示し、破線で図示のロは、噴孔入口411から噴孔出口413に向って均一に収束するテーパ状の噴孔(以下、比較例2と呼ぶ)を示し、一点鎖線で図示のハ、および点線で図示のニは、上述の関係式を満足する次数xが異なる数式1により計算された本発明の実施形態の2例である。
【0037】ここで、内壁における摩擦損失を表す式は以下、数式2のように表される数式2h = λ × (l/d) × (V2/2g)
なお、λは管摩擦係数、lは噴孔長、dは噴孔径、Vは流速、およびgは重力加速度である。
【0038】このため、図4の形状から算出した、距離Lに対応して変化する、流速Vを示す図5では、距離Lを細かい区間に区分けすれば、区間内では、略流速一定と考えれるので、数式2を数式3とすれば、図4に示す異なる噴孔形状の噴孔形状毎の内壁における摩擦損失を算出することが可能である。
【0039】数式3Σh = Σ( λ × (l/d) × (V2/2g) )
したがって、図5の流速を示す説明図より、まず比較例1である直噴孔(実線で示す)に比べて、噴孔入口411から噴孔出口413に向って収束する噴孔形状(比較例2および本発明の実施形態)の方が一見してΣhが小さくなることが判るので、比較例2および本発明の実施形態の噴孔形状は、内壁における摩擦損失を低減することができる。さらに、均一収束するテーパ状の比較例2と本発明の実施形態の流速を比較すると、噴孔入口411側の比較的遅い流速部分では、比較例2は、実施形態より流速が小さいものの、噴孔出口側に近い側の区間の流速が極めて早くなる部分で、本発明の実施形態より流速が大きくなってしまっている。上述の数式3よりΣhがΣV2に比例することから、流速の遅い区間での差より流速早い区間で差により摩擦損失の総量(Σh)が優位となるので、比較例2に比して本発明の実施形態の方が摩擦損失の総量(Σh)が低減できることが判る。
【0040】そのことを裏付けるため、比較例1、比較例2および本発明の実施形態の噴孔を有する燃料噴射ノズルで流量係数μを調査した。流量係数μと流体損失の関係は、流体損失が小さい程、流量係数μは大きくなる。このため、流量係数μが大きい程、噴孔入口の流速が同じならば、噴孔出口の流速は早くなる。
【0041】図3に示す通り、流量係数μの値の大小関係は、本発明の実施形態 > 比較例2 > 比較例1 となり、本発明の実施形態となる噴孔を有する燃料噴射ノズルが、流体損失の低減に優れ、より高流速の燃料を噴射することが可能である。ちなみに、dI/dOが同一で比較例2に比して、最大1.3倍の流速が得られる。
【0042】なお、比較例1は、噴孔入口411の径dIと噴孔出口413の径dOとの比率であるdI/dOがdI/dO=1の点上のμ0で表される。また、図5では、縮流がないという前提で説明したが、噴孔入口411側が噴孔出口413の径dOより大きくない直噴孔では、縮流による流体損失も加わるので流量係数μの値が、0.5程になるのである。
【0043】したがって、本発明の実施形態により、噴孔出口に向って流体の摩擦損失を低減することができ、高流速の燃料を噴射することが可能な噴孔収束形状を備えた燃料噴射ノズルを提供するまた、本発明の実施形態で説明の、弁座13部に噴孔を形成するVCO型の燃料噴射ノズルに対して、図6に示すサック付燃料噴射ノズルでも同様の作用、効果を得ることができる。
【0044】また、ノズルボディ11の先端に形成されるサックホール(サック部)15と噴射孔41の燃料溜り部の容積を低減することが機関の排ガス中のハイドロカーボン量を低減することは周知である。これは、機関の燃焼室において燃焼が終了した後、燃料溜り部(容積部)に残った燃料が燃焼室の高温にさらされて膨張し、後だれとして噴孔41から燃焼室に排出され、ハイドロカーボンとして排ガス中に排出されやすいからである。したがって、燃料噴射ノズルの内部の無駄空間容積部を極力小さくすることが重要となる。また、サック容積を極力低減させた公知の技術としては、噴孔入口の開口位置がノズルボディの内部のサックホールでなく弁座部に配置されている構造のバルブカバードオリフィス(VCO)型燃料噴射ノズルが周知である。
【0045】このため、さらに本発明の実施形態は、噴孔の無駄容積を抑制するのに、以下の理由により好適である。図3に示すように、比較例2(x=1)では、dI/dOの比率をdI/dO=1.5付近まで増加させないと流量係数μが最大にならない。これに対して、本発明の実施形態では、例えばxの値が大きくなるに従い、流量係数μが最大となるdI/dOが小さくできる。したがって、本発明の実施形態を包括する数式1(r=a×LX+b)および条件(条件1を満足するx、a、b)を満足する流れ方向に収束する噴孔形状は、同一の流量係数μを得ようとするとき、他のいずれの従来技術よりも、dI/dO値を小さく選べるので、無駄容積を最小にすることができる(但し、比較例2の流量係数μが最大となるdI/dO=1.5以下の範囲に限る)。
【0046】(第2の実施形態)第2の実施形態の構造について、以下図7を参照して説明する。第1の実施形態との構造の違いは、噴孔141の噴孔入口411部に面取り411aを形成したこである。
【0047】上述にて、比較例1の直噴孔では、縮流による流体損失が大きいと説明したが、縮流のできる原因は狭い通路に周囲を取り囲む流体が流入するとき流体の流れ方向も曲げられるためである。本発明の実施形態では、燃料入口部であるの噴孔入口411部に面取りを設けるので、噴孔入口411の噴孔通路412も曲り半径が大きくできる。このため、弁座13周辺の燃料の噴孔入口411への進入する方向が、図7の矢印Aような緩やかな曲りを持つ進入方向となり、進入方向を曲げられたときに発生する流体力学的曲り損失も低減できる。
【0048】なお、面取り形状は、R面取りのような曲線で繋ぐ面取り形状或いは、45度面取りであるC面取り形状であってもよい。例えば、放電加工により面取りを形成する。
【0049】また、本発明の実施形態で説明の弁座13部に噴孔を形成するVCO型の燃料噴射ノズルに対して、図8に示すサック付燃料噴射ノズルでも同様の作用、効果を得ることができる。
【0050】(第3の実施形態)第3の実施形態の構造について、以下図9〜図11の変形例を参照して説明する。図9に示すように本発明の実施形態の噴孔の配置図では、A群を第1の実施形態の噴孔41とし、その他の噴孔541を従来の直噴孔形状と組合せた燃料噴射ノズルである。
【0051】本発明の実施形態の好適な燃料噴射ノズルは、燃焼室の噴霧分配を制御したい場合や、デーゼル機関に搭載されピストン内に形成された燃焼室に対向する複数の噴孔を有する燃料噴射ノズルで、その燃焼室形状による制約から噴孔ごとに異なる噴霧到達距離を設定したい要求がある場合である。
【0052】噴霧到達距離を伸ばしたい場合、従来技術では、燃料噴霧の微粒化性能を犠牲にして、噴孔径を大きくしていたが、本実施形態では、燃料噴霧の微粒化性能を犠牲にすることなく解決することができる。特に、噴霧到達距離が交互に大小大小等の順序の組合せにすることにより、燃焼室内の空気を有効に利用する噴霧分配が可能である。上述のように噴霧到達距離或いは噴霧分配の制御による噴霧の微粒化促進等を利用した燃焼室内の空気の有効利用は、エンジンの燃焼室の最適設計に係ることであり、図9〜図11の配置に限定しない。
【0053】なお、図10に示す本発明の実施形態の変形例である噴孔の配置図では、A群を第2の実施形態の噴孔141とし、その他の噴孔541を従来の直噴孔形状と組合せた燃料噴射ノズルで、また、図11に示す本発明の実施形態の変形例である噴孔の配置図では、A群を第2の実施形態の噴孔141とし、その他の噴孔を第1の実施形態の噴孔41と組合せた燃料噴射ノズルであり、本発明の実施形態の図9と同様な効果を得ることができる。
【0054】次に、本発明の実施形態による燃料噴射ノズルの製造方法について、第3の実施形態を例示として、以下図2および図9を参照して説明する。
【0055】図9の噴孔の配置図にて、A群を第2の実施形態の噴孔141とし、その他の噴孔を第1の実施形態の噴孔41と組合せた燃料噴射ノズルを示す。まず、本発明の第1の実施形態の噴孔41を有する燃料噴射ノズルの製造方法を説明すると、噴孔41は、図2による座標軸ZZ、LLおよびその交点である原点Oを座標系として、 噴孔入口411の径dIと噴孔出口413の径dOおよび内壁を形成する噴孔通路412からなる噴孔41が、本発明の実施形態を包括する数式1(r=a×LX+b)および条件(条件1を満足するx、a、b)を満足する流れ方向に収束する曲線により噴孔形状を形成する加工方法として、製造精度が不安定で制御が難しいコーディング技術に頼ることなく、以下の制御により放電加工或いはレーザー除去加工で達成できる。放電加工では、電極に印加する電圧、電圧の周波数、電極送り速度の調整により噴孔内壁を有する噴孔41を形設する。また、レーザ除去加工では、レーザの集光位置を制御することにより噴孔内壁を有する噴孔41を形設するレーザ除去加工により前記噴孔内壁を形設する。
【0056】次に、本発明の第1の実施形態の噴孔41を有する燃料噴射ノズルの製造方法についても説明すると、まず上述の加工手段により、上述の図2の座標系を基に、数式1(r=a×LX+b)および条件(条件1を満足するx、a、b)を満足する流れ方向に収束する曲線を有する噴孔形状の噴孔41を加工する。さらに、ノズルボディ11の内部に研磨用砥粒を含有する流体(加工媒体)を加圧して流す。すると、この加工媒体のもつ流体エネルギーにより、曲り抵抗の高い噴孔入口部においてエッジ部が砥粒により湾曲状に研磨される。この研磨速度すなわち面取りの拡大速度は、流体の速度が高いほどまた曲率半径が小さいほど増加する。なお、面取り量により加工面がRまたはC面取りになってもこれを制限しない。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成11年12月24日(1999.12.24)
【代理人】 【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
【公開番号】 特開2001−182641(P2001−182641A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−366257