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【発明の名称】 筒内噴射エンジンの制御装置
【発明者】 【氏名】斉藤 陽一

【氏名】望月 健次

【要約】 【課題】パージされたエバポを効率的に利用することで、一層の燃費向上を図ることが可能な筒内噴射エンジンを提供すること【解決手段】吸気通路と燃料タンク18とを連通したパージ通路19に設けられ、開度に応じて吸気通路内への蒸発燃料ガスの流入量を変化させる制御バルブ21と、運転状態に応じて成層燃焼または均一混合燃焼のいずれかの燃焼形態を選択するとともに、選択された燃焼形態に応じて、制御バルブの開度を制御する制御装置12とを有する。ここで、制御装置12は、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が所定値よりも高いと判断した場合、成層燃焼を行うべき運転状態であったとしても、均一混合燃焼を選択する

【解決手段】吸気通路と燃料タンク18とを連通したパージ通路19に設けられ、開度に応じて吸気通路内への蒸発燃料ガスの流入量を変化させる制御バルブ21と、運転状態に応じて成層燃焼または均一混合燃焼のいずれかの燃焼形態を選択するとともに、選択された燃焼形態に応じて、制御バルブの開度を制御する制御装置12とを有する。ここで、制御装置12は、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が所定値よりも高いと判断した場合、成層燃焼を行うべき運転状態であったとしても、均一混合燃焼を選択する
【特許請求の範囲】
【請求項1】筒内噴射エンジンの制御装置において、吸気通路と燃料タンクとを連通したパージ通路に設けられ、開度に応じて前記吸気通路内への蒸発燃料ガスの流入量を変化させる制御バルブと、運転状態に応じて成層燃焼または均一混合燃焼のいずれかの燃焼形態を選択するとともに、選択された燃焼形態に応じて、前記制御バルブの開度を調整する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が所定値よりも高いと判断した場合、成層燃焼を行うべき運転状態であったとしても、均一混合燃焼を選択することを特徴とする筒内噴射エンジンの制御装置。
【請求項2】前記制御手段は、同一の運転状態において、成層燃焼を選択した場合よりも均一混合燃焼を選択した場合の方が、前記制御バルブの開度を大きく設定することを特徴とする請求項1に記載された筒内噴射エンジンの制御装置。
【請求項3】前記吸気通路へ還流させる排気量を調整する排気再循環バルブをさらに有し、前記制御手段は、前記パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が所定値よりも高いと判断した場合、均一混合燃焼を行うとともに、前記排気再循環バルブを全閉することを特徴とする請求項1または2に記載された筒内噴射エンジンの制御装置。
【請求項4】前記パージ通路内の炭化水素の濃度を検出するセンサをさらに有し、前記制御手段は、前記センサにより検出された炭化水素の濃度が所定値よりも高い場合に、前記パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が高いと判断することを特徴とする請求項1または2に記載された筒内噴射エンジンの制御装置。
【請求項5】前記燃料タンク内の圧力を検出するセンサをさらに有し、前記制御手段は、前記センサにより検出された圧力が所定値よりも高い場合に、前記パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が高いと判断することを特徴とする請求項1または2に記載された筒内噴射エンジンの制御装置。
【請求項6】燃料温度を検出するセンサをさらに有し、前記制御手段は、前記センサにより検出された燃料温度が所定値よりも高い場合に、前記パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が高いと判断することを特徴とする請求項1または2に記載された筒内噴射エンジンの制御装置。
【請求項7】排気通路に設けられ、排気空燃比を検出するセンサをさらに有し、前記制御手段は、前記センサにより検出された排気空燃比と目標空燃比との偏差に基づいて、前記パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度を判断することを特徴とする請求項1または2に記載された筒内噴射エンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筒内噴射エンジンの制御装置に係り、特に、エバポパージ制御に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、燃焼室に設けられたインジェクタによって燃料を燃焼室内に直接噴射するエンジン、すなわち筒内噴射エンジンが知られている。一般に、このタイプのエンジンでは、エンジンの運転状態、例えば、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じて、成層燃焼または均一混合燃焼のいずれかの燃焼形態が選択的に実行される。
【0003】このような筒内噴射エンジンにおけるエバポパージ制御について、例えば特開平4-194354号公報には、エンジン出力の向上を図るために、エンジン負荷が大きい場合のみ蒸発燃料ガス(エバポ)を吸気通路内に供給する技術が開示されている。また、特開平11-36922号公報には、空燃比の外乱要因であるエバポの影響を抑えるために、排気ガスセンサによって排気空燃比を測定し、この空燃比に応じて、エバポパージ量を制御する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの従来技術において、エバポパージ制御や燃焼形態の設定はエバポの濃度状態を考慮することなく行われる。そのため、成層燃焼中にエバポパージが行われた場合、パージ制御バルブを目標開度に設定したとしても、所望のパージ量(吸気通路内へのエバポ流入量)を確保することが困難となる状況が生じることがある。多量の吸入空気が必要となる成層燃焼時においては、均一混合燃焼時と比べてスロットル開度が大きく設定される。したがって、成層燃焼時には吸気通路内の負圧(吸気負圧)が浅くなりやすい(パージ環境が同一であるならば吸気負圧が大きいほどパージ量は増大する)。また、成層燃焼中にパージされたエバポはあまり燃焼に寄与しない。エバポが混入した混合気の空燃比は火炎伝播可能な空燃比よりも薄いからである。したがって、成層燃焼時にエバポパージを行ったとしても、パージによる燃費向上はあまり望めない。
【0005】本発明はかかる事情に鑑みなされたもので、その目的は、パージされたエバポを効率的に利用することで、一層の燃費向上を図ることが可能な筒内噴射エンジンの制御装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するために、本発明は、筒内噴射エンジンの制御装置において、吸気通路と燃料タンクとを連通したパージ通路に設けられ、開度に応じて吸気通路内への蒸発燃料ガスの流入量を変化させる制御バルブと、運転状態に応じて成層燃焼または均一混合燃焼のいずれかの燃焼形態を選択するとともに、選択された燃焼形態に応じて、制御バルブの開度を調整する制御手段とを有する。ここで、制御手段は、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が所定値よりも高いと判断した場合、成層燃焼を行うべき運転状態であったとしても、均一混合燃焼を選択する。
【0007】上記の構成において、制御手段は、同一の運転状態において、成層燃焼を選択した場合よりも均一混合燃焼を選択した場合の方が、制御バルブの開度を大きく設定することが好ましい。
【0008】また、吸気通路へ還流させる排気量を調整する排気再循環バルブを設けてもよい。その際、制御手段は、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が所定値よりも高いと判断した場合、均一混合燃焼を行うとともに、排気再循環バルブを全閉するようにすることが好ましい。
【0009】また、パージ通路内の炭化水素の濃度を検出するセンサを設けてもよい。その際、制御手段は、センサにより検出された炭化水素の濃度が所定値よりも高い場合に、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が高いと判断するようにすることが望ましい。
【0010】また、燃料タンク内の圧力を検出するセンサを設けてもよい。その際、制御手段は、センサにより検出された圧力が所定値よりも高い場合に、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が高いと判断するようにすることが望ましい。
【0011】また、燃料温度を検出するセンサを設けてもよい。その際、制御手段は、センサにより検出された燃料温度が所定値よりも高い場合に、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度が高いと判断するようにすることが好ましい。
【0012】さらに、排気通路に設けられ、空燃比を検出するセンサを設けてもよい。その際、制御手段は、センサにより検出された排気空燃比と目標空燃比との偏差に基づいて、パージ通路内の蒸発燃料ガスの濃度を判断することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、筒内噴射エンジンの制御系の全体構成図である。筒内噴射エンジン1は、気筒内に燃料を直接噴射し、火花点火により混合気の燃焼を行う。このエンジン1の各吸気ポートには吸気バルブ2が設けられているとともに、これらの吸気ポートはインテークマニホールド3に連通している。エンジン1の各排気ポートには、排気バルブ4が設けられているとともに、これらの排気ポートはエギゾーストマニホールド5に連通している。また、エンジン1のシリンダヘッドにおいて燃焼室の中央には、混合気を着火する点火プラグ6が設けられている。燃焼室における吸気バルブ2の近傍には、燃焼室内に燃料(ガソリン)を直接噴射するインジェクタ7が設けられている。一般に、筒内噴射エンジン1は、燃焼特性上の要求から燃料噴霧を微細化する必要がある。そこで、燃料タンク18内の蓄えられた燃料は、規定の圧力に高圧化され、図示していない燃料配管を介して、インジェクタ7に供給される。
【0014】吸気通路に設けられたエアクリーナ8は、インテークマニホールド3に連通したエアチャンバ9に接続されている。エアクリーナ8とエアチャンバ9との間には、吸入空気量を調整する電動スロットルバルブ10が介装されている。このスロットルバルブ10は、電動モータ11によって動作し、アクセルペダル30と機械的にリンクした構造とはなっていない。スロットルバルブ10の開度(以下、「スロットル開度」という)は、マイクロコンピュータを中心として構成される制御装置12(以下、「ECU」という)からの出力信号によって設定される。スロットルバルブ10の下流に位置したエアチャンバ9内の負圧(吸気負圧)は、スロットル開度に応じて変化する。
【0015】一方、エギゾーストマニホールド5は、排気通路を介して三元触媒コンバータ13と連通しているとともに、その下流にはNOx吸蔵触媒コンバータ14が設けられている。ここで、NOx吸蔵触媒コンバータ14は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類等のNOx吸蔵物質と、白金等の貴金属とをアルミナ等の担体上に担持させた触媒を有している。NOxおよびO2のストレージ機能により、排気ガスの酸素濃度が高い状態では、HC,COを酸化還元するとともに、NOxを吸蔵する。一方、排気ガス中の酸素濃度が低下すると、吸蔵されているNOxを放出して、酸化還元されずに余剰となったHC,COでNOxを還元浄化する。これらのコンバータ13,14を介して浄化された排気ガスがマフラー15を経て排出される。
【0016】また、エギゾーストマニホールド5とエアチャンバ9との間には、排気還流通路16が設けられている。この排気還流通路16には、吸気通路へ還流させる排気量を調整する排気再循環バルブ17(以下、「EGRバルブ」という)が介装されている。EGRバルブ17は、内蔵されたステッパーモータによって駆動し、ECU12からの出力信号によってその開度が設定される。EGRバルブ17の開度(以下、「EGR開度」という)を調整して、燃焼に寄与しない不活性ガスを吸気通路内を流れる吸気中に適切に混入する。それにより、燃焼温度を低下させ、排気中に含まれるNOxの排出量を減少させることができる。
【0017】燃料タンク18の上部は、燃料タンク18内で発生した蒸発燃料ガス(エバポ)を放出するためのパージ通路19を介して、エアチャンバ9と連通している。このパージ通路19には、キャニスタ20とパージ制御バルブ21とが設けられている。キャニスタ20は、エバポを吸着する活性炭等で構成された吸着部を有するとともに、その下部には大気を導入する新気導入口が設けられている。なお、本形態で採用するパージ制御バルブ21は、ECU12により制御されるデューティソレノイドバルブであるが、リニアソレノイドバルブやステップモータ式等、適宜のものを採用し得る。
【0018】ECU12には、センサ22〜29を含む各種センサからのセンサ信号が入力されている。燃料タンク内圧センサ22は、燃料タンク18内の上部に設けられており、このタンク18内の圧力Pfを検出する。燃料温度センサ23は、燃料タンク18内に設けられており、燃料の温度Tfを検出する。なお、燃料温度センサ23を、インジェクタ7に燃料を供給する燃料配管(図示せず)に設けてもよい。HCセンサ24は、パージ通路19に設けられ、パージ通路19内の炭化水素(HC)の濃度を検出する。これにより、パージ通路19内のエバポ濃度Deが特定される。なお、HCセンサ24を、パージ通路19ではなく、キャニスタ20内に設けてもよい。スロットル開度センサ25およびアクセル開度センサ29は、スロットル開度θt、アクセル開度θa(アクセルペダル30の踏み込み量に相当)をそれぞれ検出するセンサである。エンジン回転数センサ26は、エンジン回転数Neを算出するためのセンサであり、例えば、クランクシャフトが所定角度回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサを用いることができる。エンジン水温センサ27は、エンジン冷却水の水温Teを検出するセンサであり、エンジン1の冷却水通路に臨まされている。
【0019】さらに、空燃比センサ28は、排気通路を流れる排気ガスから実空燃比A/F(排気空燃比)を検出するためのセンサであり、例えばリニアO2センサを用いることができる。本来、空燃比センサ28の出力信号から算出される排気空燃比A/Fは、エバポパージおよびEGRがない場合(ブローバイガスは無視)、目標空燃比と同じ値になる。ところが、エバポパージ、排気ガスの流入または経年変化等の外乱要因によって、実空燃比は目標空燃比と一致しなくなる。そこで、空燃比フィードバック制御を行うことで、実空燃比と目標空燃比とのずれ分を補正している。
【0020】ECU12は、各種センサから検出された現在の運転状態に基づき、ROMに記憶された制御プログラムに従い、燃料噴射量、点火時期等を演算して、インジェクタ7と点火プラグ6とに対して制御信号を出力する。また、ECU12は、スロットル開度を調整して必要な吸入空気量を確保するために、電動モータ11に対して指示値を出力するとともに、適切な排気還流量を確保するために、EGRバルブ17に対して指示値を出力する。さらに、ECU12は、デューティ比を規定する指示値DUTYをパージ制御バルブ21に出力することにより、パージ制御バルブ21の開度を制御する。
【0021】図2は、燃焼形態判定ルーチンを示したフローチャートである。ECU12は、このフローチャートに示した一連の手順を所定の間隔(例えば10ms)で繰り返し実行する。原則として、燃焼形態は、現在の運転状態から図4に示した燃焼形態判定マップを参照することによって決定される。まず、ステップ1において、今回のサイクルにおけるセンサ情報、すなわち、エンジン回転数Ne、アクセル開度θa、エンジン水温Teおよびエバポ濃度Deが読み込まれる。
【0022】つぎに、エンジン水温Teが判定しきい値Tethよりも高いか否かが判断される(ステップ2)。このステップ2において否定判定された場合、すなわち、エンジンが冷態状態ないし暖機途上である場合は、図4の判定マップを参照することなく、燃焼形態指示フラグFMODEが「3」にセットされる(ステップ8)。燃焼形態指示フラグFMODEの指示内容は以下のとおりである。
FMODE 指 示 内 容 「1」 成層燃焼指示 「2」 第1の均一混合燃焼指示(均一混合燃焼+EGRあり)
「3」 第2の均一混合燃焼指示(均一混合燃焼+EGRなし)
【0023】ここで、成層燃焼は、圧縮行程においてインジェクタ7による燃料噴射を開始するとともに点火直前に終了し、燃料噴霧の後端部を点火プラグ6で着火して混合気を燃焼させる燃焼方式である。成層燃焼は、燃料周辺の空気しか利用せず、充填空気量に対して極めて少ない燃料量で安定した燃焼を得ることができるため(A/F=25〜40程度)、エンジン低負荷低回転運転時に適している。一方、均一混合燃焼は、燃料を成層燃焼よりも早い時期(例えば排気行程終期または吸気行程)に燃料を噴射し、気筒内に噴射燃料が十分に拡散し、噴射燃料と空気とが均一に混合した後に着火する燃焼方式である。均一混合燃焼は、空気利用率が高くエンジンの出力向上を図ることができるため(A/F=12〜23程度)、高負荷高回転運転時に適している。
【0024】ステップ8で指示フラグFMODEが「3」にセットされると、リターンへ進み、今回のサイクルにおける本ルーチンの実行を終了する。指示フラグFMODEが「3」に設定されている間は、本ルーチンとは別に設けられた燃焼実行ルーチンによって、EGRバルブ17を全閉した状態(EGRなし)で均一混合燃焼が継続される。これにより、エンジンの暖機途上においては暖機が促進される。
【0025】一方、ステップ2において肯定判定された場合、図4の判定マップの参照結果が成層燃焼領域であるか否かが判断される(ステップ3)。すなわち、エンジン回転数Neと、エンジンの要求出力に相当するアクセル開度θaとから特定される運転状態が、図4に示したどの燃焼領域に含まれるかが判断される。図4からわかるように、低負荷低回転状態は成層燃焼領域に含まれ、それ以外の運転状態は均一混合燃焼領域に含まれる。
【0026】ステップ3において否定判定された場合(成層燃焼領域でない場合)は、図4の判定マップの参照結果が、第1の均一混合燃焼領域であるか否かが判断される(ステップ6)。ステップ6において肯定判定された場合(第1の均一混合燃焼領域に該当する場合)は、指示フラグFMODEが「2」にセットされ(ステップ7)、否定判定された場合(第2の均一混合燃焼領域に該当する場合)は「3」にセットされる(ステップ8)。これにより、指示フラグFMODEの内容(「2」,「3」)に応じて、第1または第2の均一混合燃焼が実行される。すなわち、第1の均一混合燃焼が指示された場合、スロットル開度およびEGR開度は、開度マップ等を参照して運転状態に応じて設定される。一方、第2の均一混合燃焼が指示された場合、上述したように、スロットル開度は運転状態に応じて設定されるが、EGR開度は0、すなわち全閉に設定される。
【0027】一方、ステップ3において肯定判定された場合、すなわち、図4の判定マップの参照結果が成層燃焼領域である場合は、エバポ濃度Deが判定しきい値Dethよりも高いか否かが判断される(ステップ4)。このステップ4において否定判定された場合、すなわち、エバポ濃度Deが低い場合は、燃焼形態指示フラグFMODEが「1」にセットされる(ステップ5)。したがって、判定マップの参照結果どおり、成層燃焼が実行される。一方、エバポ濃度Deが高い場合は、ステップ4からステップ8へ進み、燃焼形態指示フラグFMODEが「3」にセットされる。これにより、センサ情報Ne,θaから特定された運転状態が成層燃焼領域に該当する場合においても、第2の均一混合燃焼が強制的に実行される。
【0028】図3は、エバポパージ制御ルーチンを示したフローチャートである。このルーチンも所定の間隔(例えば10ms)で繰り返し実行される。まず、ステップ11において、今回のサイクルにおけるセンサ情報、すなわち、エンジン回転数Neとスロットル開度θtとが読み込まれる。
【0029】つぎに、燃焼形態指示フラグFMODEが「1」であるか否か、すなわち、成層燃焼が指示されているか否かが判断される(ステップ12)。成層燃焼が指示されている場合は、ステップ13に進み、パージ制御バルブ21の開度を設定する指示値DUTY(デューティ比)として低流量デューティ比minが設定される。基本的に、パージ制御バルブ21の開度は、スロットル開度がかなり大きい運転状態を除き、吸入空気量Qとパージ流量Pとの割合(パージ率P/Q)が一定となるように設定される。ステップ13では、このパージ率が0%、すなわち低流量デューティ比minの値を0(全閉)としてもよいし(パージ禁止)、低流量のパージ(例えばパージ率が1%程度)を行うように設定してもよい。低流量のパージを行う場合、低流量デューティ比minは、例えば、図5に示した低流量パージ用開度マップから算出することができる。すなわち、この開度マップを参照し、スロットル開度θtとエンジン回転数Neとに基づいて、補間演算付で低流量デューティ比min(7%〜100%)が算出される。なお、図5に示した開度マップは、後述する図6および図7に示した開度マップと同様に、ECU12のROM中に格納されている。ステップ13において算出された指示値DUTYは、パージ制御バルブ21に対して出力される(ステップ17)。
【0030】一方、ステップ12において否定判定された場合(均一混合燃焼時)、燃焼形態指示フラグFMODEが「2」または「3」のどちらであるかが判断される(ステップ14)。燃焼形態指示フラグFMODEが「2」の場合、すなわち、第1の均一混合燃焼が指示されている場合は、中流量のパージが実行される。この場合、指示値DUTYとなる中流量デューティ比midは、図6に示した中流量パージ用開度マップから算出される。すなわち、この開度マップを参照し、スロットル開度θtとエンジン回転数Neとに基づいて、補間演算付で中流量デューティ比mid(15%〜100%)が算出される。ステップ15において算出された指示値DUTYは、パージ制御バルブ21に対して出力される(ステップ17)。図5および図6に示した開度マップを比較すればわかるように、同一の運転状態(同一スロットル開度θt)においては、低流量パージ時よりも中流量パージ時の方が大きなデューティ比に設定される(その結果、パージ流量は大きくなる)。
【0031】これに対して、ステップ14において否定判定された場合、すなわち、指示フラグFMODEにより第2の均一混合燃焼が指示されている場合は、大流量のパージが実行される。この場合、指示値DUTYとなる大流量デューティ比maxは、図7に示した大流量パージ用開度マップから算出される。すなわち、この開度マップを参照し、スロットル開度θtとエンジン回転数Neとに基づいて、補間演算付でデューティ比mid(20%〜100%)が算出される。ステップ16において算出された指示値DUTYは、パージ制御バルブ21に対して出力される(ステップ17)。図5〜図7に示した開度マップを比較すればわかるように、同一の運転状態(同一スロットル開度θt)においては、大流量パージ時において設定されるデューティ比は、他のパージ時よりも大きくなる(その結果、パージ流量は最も大きくなる)。
【0032】このように本形態においては、成層燃焼を行うべき運転状態であってもパージ濃度が高い場合、均一混合燃焼が強制的に実行される。均一混合燃焼に移行することにより、エバポをパージするのに十分な吸気負圧が確保されるため、パージ通路19の内圧との間に大きな差圧が生じる。その結果、キャニスタ20に吸着されたエバポをエンジン1の燃焼室内へ効果的に吸入させることができる。
【0033】さらに、成層燃焼時においては燃焼にあまり寄与することなく排出されるエバポを、エバポ濃度が高い場合は均一混合燃焼に強制的に移行することにより、完全燃焼させることができる。したがって、パージされたエバポ分だけ燃料噴射量の低減を図ることができる。その結果、エバポを効率的に利用できるので、筒内噴射エンジンの燃費を一層向上させることが可能となる。
【0034】なお、上述した実施例では、成層燃焼領域においてエバポ濃度Deが所定値よりも高い場合(ステップ4)、EGRなし(EGRバルブ17全閉)の均一混合燃焼(指示フラグFMODEが「3」)を指示するようにしている(ステップ8)。このようにした理由は、EGRバルブ17を全閉に設定すれば、排気還流をカットした分だけ吸気負圧(エアチャンバ9内の負圧)が大きくなる、すなわち、吸気負圧が深くなるため、エバポを一層効率的にパージできるからである。これに対して、ステップ4において肯定判定された場合、EGRありの均一混合燃焼(指示フラグFMODEが「2」)を指示するようにしてもよい。この場合、EGRバルブ17の開制御を行うため、その開度分だけ吸気負圧は浅くなる(エバポパージの効率も相対的に低下する)が、均一混合燃焼によって必要な吸気負圧を確保することは可能である。
【0035】また、上述した実施例では、HCセンサ24を用いてエバポ濃度を直接検出している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記の手法を用いてエバポ濃度を推定してもよい。
【0036】1.燃料タンク内圧による推定エバポ濃度は燃料タンク18内の圧力の上昇にともない増大する傾向があるので、燃料タンク18内の圧力からエバポ濃度を推定することが可能である。具体的には、燃料タンク内圧センサ22により検出された圧力Pfが所定値よりも高い場合に、エバポ濃度が高いと判定する。
【0037】2.燃料温度による推定エバポ濃度は燃料温度が上昇するほど増大する傾向があるので、燃料温度からエバポ濃度を推定することが可能である。具体的には、燃料温度センサ23により検出された燃料温度Tfが所定値よりも高い場合に、エバポ濃度が高いと判定する。
【0038】3.排気空燃比による推定パージされるエバポ濃度が高いほど、排気空燃比と目標空燃比との偏差が大きくなる傾向がある。したがって、これらの空燃比の偏差に基づいてエバポ濃度を推定することも可能である。この点を具体的に説明すると、まず、空燃比フィードバック制御において、インジェクタ7の燃料噴射量に相当する燃料噴射パルス幅Tiは、下式により特定される。
【数1】Tp=K×Q/NeTi=Tp×Φ×LAMBDA+Ts【0039】すなわち、基本燃料噴射パルス幅Tpは、エンジン回転数Neと吸入空気量Qとに基づき算出される。なお、Kはインジェクタ特性補正定数である。また、燃料噴射パルス幅Tiは、空燃比の制御変数である当量比Φ、基本燃料噴射パルス幅Tp等に基づき算出される。ここで、LAMBDAは空燃比フィードバック補正係数であり、この補正係数を適切に設定することによって、排気空燃比が目標空燃比に収束するように制御される。また、Tsはバッテリー電圧によって定まる無効噴射パルス幅である。なお、同数式の詳細については、特開平11-36968号公報に記載されているので、必要ならば参照されたい。
【0040】ある空燃比を維持しようとした場合、パージされるエバポ濃度が高いほど、インジェクタ7の燃料噴射量を減量補正する必要があるため、空燃比フィードバック補正係数LAMBDは本来の設定値よりも小さくなっていく。したがって、EGR量等の外乱要因に大きな変化がなく、かつ、パージ制御バルブ21が開いていることを前提とすれば、フィードバック補正係数LAMBDAの値はエバポ濃度と相関を有する。このような相関関係に鑑み、排気空燃比と目標空燃比との偏差に応じて設定されるフィードバック補正係数LAMBDAからパージ濃度をある程度推定することが可能である。
【0041】
【発明の効果】このように、本発明によれば、成層燃焼を行うべき運転状態であったとしても、エバポ濃度が高い状況においては、均一混合燃焼を実行する。これにより、エバポを効果的にパージできる程深い吸気負圧を確保することができる。それとともに、均一混合燃焼ではパージされたエバポを完全に燃焼させることができるため、パージされたエバポ分だけ燃料噴射量の低減を図ることができる。その結果、エバポを効率的に利用できるので、筒内噴射エンジンの燃費を一層向上させることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
【公開番号】 特開2001−182630(P2001−182630A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−364116