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【発明の名称】 気化器の感温制御装置
【発明者】 【氏名】岡 和弘

【氏名】佐藤 滋

【要約】 【課題】蓄熱性に優れると共に、構造が簡単で製作も容易であり、しかも、従来製品の外形を変えなくてよい気化器の感温制御装置を提供することを目的とする。

【解決手段】気化器に併設されたケース1内にPTCヒーター5と、PTCヒーター5により作動するサーモワックス4と、サーモワックス4により気化器へ通じる流路を開閉する弁体が収容された感温制御装置において、ケース1内で、かつPTCヒーター5とサーモワックス4に近接する場所に蓄熱用密閉空間28を形成し、この蓄熱用密閉空間28にPTCヒーター5の温度変化内に溶融点を有する蓄熱物質としてワックス29を収容したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 気化器に併設されたケース内に発熱体と、該発熱体により作動するサーモワックスと、該サーモワックスにより気化器へ通じる流路を開閉する弁体が収容された感温制御装置において、前記ケース内で、かつ前記発熱体と前記サーモワックスに近接する場所に蓄熱用密閉空間を形成し、この蓄熱用密閉空間に前記発熱体の温度変化内に溶融点を有する蓄熱物質を収容したことを特徴とする気化器の感温制御装置。
【請求項2】 前記蓄熱物質が70°C前後で溶融するワックスである請求項1記載の気化器の感温制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二輪車、四輪車の気化器の燃料制御弁、電子制御ガソリン噴射の空気制御弁等として適用できる感温制御装置で、特に、PTCヒータ等の発熱体とサーモワックスの組合せからなり、保温機能を有している感温制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、燃料噴射装置付きエンジンの始動手段として、通常、運転時の空気量を制御するスロットルバルブに、これとは別に、バイパス路を設けると共に、このバイパス路にエアレギュレータを設け、このエアレギュレータの作動により付加空気をエンジンに供給する技術は、感温制御装置として公知である。
【0003】感温制御装置は、ケース内に収容されたPTCヒーター等の発熱体によりサーモワックスが加熱されることにより、バルブが作動してバイパス通路を開閉するものである。この感温制御装置の使用例として、例えば、オートバイスターター用のユニットがある。このオートバイスターター用のユニットでは、エンジンをかける時スイッチを入れることにより、ヒーターが作動する。、作動原理としては、外気の温度によりバルブの位置がサーモワックスにより決まっている。
【0004】スイッチを入れた時点ではサーモワックスは外気によりリフトしているため、外気温に適合したバルブ位置のため、キャブへある程度始動しやすい量混合空気(燃料と空気の混ぜたもの)が供給されている。その後、PTCヒーターが発熱することにより、サーモワックスが外気に関係なくバルブを作動させて混合気の量を減少させ、最終的には、完全にバイパス回路を閉じる。
【0005】逆に、エンジンを停止させる時、スイッチを切ると、PTCヒーターもOFFになる為、ヒーターは発熱をやめ、外気冷却されて、最終的には、外気温でのサーモワックスのリフト位置に戻る。
【0006】ところで、内燃機関の暖気運転時には、内燃機関に対する吸入空気量を制御して自動的に内燃機関の回転数を漸次減少させていく必要がある。また、外気温度に応じて空気流路が閉じられるまでの閉弁所要時間を変化させる必要があり、例えば、外気温度が低いほど閉弁所要時間を長くする必要がある。
【0007】さらに、内燃機関の停止時においては、外気温度に応じて、空気流路が開かれるまでの開弁所要時間を変化させる必要があり、例えば、外気温度が低いほど開弁所要時間を短くする必要がある。
【0008】前述のことから、オートバイスターター等の使用時には、車両側の機能として、ある程度の感温制御装置におけるサーモワックス温度上昇を緩やかにする要求と、逆に、エンジン停止時にPTCヒーター等、発熱体のOFF後のサーモワックス温度の下降においても、緩るやかな作動要求がある。
【0009】しかるに、感温制御装置におけるPTCヒーターの温度上昇が早いので、チョークの解除、ファーストアイドルカム解除が早くなってしまったり、逆に、再始動時に温度下降が早いためオーバーリッチになって再始動不良を起こしやすくなるという問題がある。
【0010】この要求に対応する従来技術として、例えば、■、特開昭53−38818では、サーモワックス(感温体)の周囲に設けたジャケットを循環するエンジン冷却水で、当該サーモワックスを保温すると共に、このエンジン冷却水温度を検知して、ニードル弁のニードルの変位量を定め、これによりバイパス路の通路面積を変化させてスロットルバルブを通過する空気量に対し、バイパス路を通過して合流する付加空気量を制御する方法が開示されている。
【0011】また、■、特開昭54−3621では、サーモワックスと、これを加熱する発熱体の保温手段として、これらの外側を保温ケースで覆うと共に、保温ケースの内側に保温空間を設ける工夫をしている。
【0012】さらに、■、特開昭57−148046では、発熱体に対設されるサーモワックスの感温部に、当該サーモワックスとの当接部にリング状突出部がある黄銅製のヒートマスを介設することで、前記感温部がヒートマスに隔離して囲繞されるように設けている。それにより、運転後のエンジン停止後のサーモワックスの冷却特性も、急冷されることなく、エンジン冷却特性に沿って徐冷されるため、テーパバルブが通路の絞りを急激に行わず、従って、温間再始動においては、その状態のエンジン要求空熱比に対応するブリードエア量を制御できることになり、オーバーリッチになることが防止され、再始動不良が避けられるというものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前記■、■の従来技術は、構造が複雑で製作コストがかり、また、感温制御装置の全体構成を変更することになり、実現性に劣る問題がある。
【0014】また、■の従来技術は、PTCヒーターとサーモワックスの接触面積や金属での蓄熱効果を目的としたもので、構造が比較的簡単で、この点では現実的であるが、温度の上昇特性については、ヒーター容量の変更等で対応可能であるが、外気の影響でチョークがとけず、オーバーリッチになる可能性がある。また、ヒートマスとして金属では少量の効果しか得られず、そのためケース内の容量(容積)が大きくなるという欠点がある。
【0015】本発明は、前記従来■、■、■等の先行技術の欠点を改良したもので、蓄熱性に優れると共に、構造が簡単で製作も容易であり、しかも、従来製品の外形を変えなくてよい気化器の感温制御装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明は次のよう構成している。第1の発明は、気化器に併設されたケース内に発熱体と、該発熱体により作動するサーモワックスと、該サーモワックスにより気化器へ通じる流路を開閉する弁体が収容された感温制御装置において、前記ケース内で、かつ前記発熱体と前記サーモワックスに近接する場所に蓄熱用密閉空間を形成し、この蓄熱用密閉空間に前記発熱体の温度変化内に溶融点を有する蓄熱物質を収容したことを特徴とする。第2の発明は、第1の発明において、前記蓄熱物質が70°C前後で溶融するワックスであることを特徴とする。
【0017】本発明によると、ワックス等の蓄熱物質に蓄熱された潜熱の効果で、発熱体が発熱をやめた後、サーモワックスの上昇と下降での作動を緩やかにでき、特に、空冷エンジン等の始動性を円滑に行わせるための空気制御弁、又は、燃料制御弁の機能向上を達成でき、排ガス等の低減につながるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る感温制御装置の使用例の概要図、図2は、図1の感温制御装置の縦断面図、図3は、ワックスと黄銅のそれぞれの比熱をグラフで示す図である。
【0019】図1に示すように、感温制御装置Aは、例えば、燃料噴射装置付きエンジンの始動手段として、運転時の空気量を制御するスロットルバルブ42が設けられたメイン通路43と別に設けられたバイパス路44に配設されており、この感温制御装置Aの作動により付加空気をエンジンに供給するように設けられている。
【0020】図2において、感温制御装置Aは、気化器に併設されたプラスチック製ケース1内にPTCヒーター(発熱体)5と、このPTCヒーター5により作動するサーモワックス(ワックス式熱応動伸縮装置)4等を収容して構成されている。
【0021】さらに説明すると、プラスチック製ケース1は、略L字形筒体の断面形状であり、上部開口からサーモワックス4がケース1内に収容されている。サーモワックス4における金属製のボデイ上部4aはボデイ下部4bよりも大径に設けられていて、ボデイ上部4aの外周溝23にОリング14が嵌合され、このОリング14をケース1の内壁24に密接させることにより、その下部を密閉している。
【0022】プラスチック製ケース1の下部開口端25をラバーカバー9で密栓してあり、このラバーカバー9を水密的に挿通してリード線10が導入されていて、各リード線10の先端にそれぞれ第1と第2の端子7、8がそれぞれ第1と第2の接続導体26、26を介して、PTCホルダー6で保持されたPTCヒーター5の上下の両面電極に導かれている。
【0023】サーモワックス4のボデイ下部4bは、ボデイ上部4aに比して径小に設けられており、ボデイ下部4bの周囲とプラスチック製ケース1内壁面との間には第1空間28aが形成されている。また、ボデイ下部4bとラバーカバー9の間には第2空間28bが形成されている。第1と第2の空間28a,28bは、図示の構造を理解し易くするため便宜的に分けて説明するもので、この第1と第2の空間28a,28bは連通しており、かつ、後述の蓄熱物質の収容空間として同価値であり、両空間を合わせて蓄熱用密閉空間28とする。つまり、蓄熱用密閉空間28の上部側はОリング14で密封されており、下部側はラバーカバー9がケース1の下部開口端25を密栓することで閉塞されている。
【0024】この蓄熱用密閉空間28には、蓄熱物質として、例えば、70°C前後で溶融するワックス29が収容されている。結果、サーモワックス4のボデイの大部分と発熱体のそれぞれの周囲(近辺)は、蓄熱物質のワックス29で覆われることになり、サーモワックス4の保温効果が向上する。ワックス29は、70°C以下では固体状であるから蓄熱用密閉空間28から漏出しないのは勿論であるが、70°C以上で液体に変化したときも蓄熱用密閉空間28であるが故に漏出の恐れがない。なお、ワックス29は温度上昇により体積が膨張するので、その膨張分を見込んで、予め蓄熱用密閉空間28内に少しの空間を残して収納するのがよい。
【0025】サーモワックス4の押圧杆体30の先端は、可動保持部材3の凹部に嵌合されている。可動保持部材3の下端係合縁32と、その外周に位置していてケース1の上部開口の内周ねじ部31に螺合されたケースカラー2の内周上端との間にメインスプリング11が弾装されていて、当該可動保持部材3を下向きに付勢している。
【0026】ケースカラー2の上端部は、支持体33の下部に形成された凹部34にОリング15を介して密に嵌合係止されている。さらに、支持体33の下面に固定ねじ22で固着された固定フック21により、前記ケースカラー2と支持体33とが結合されている。
【0027】支持体33の内部には、バイパス路44における空気通路18と、燃料通路19と、混合気通路20とが図示の配置で開孔されていて、燃料通路19をニードル17で開閉し、空気通路18と混合気通路20が接続する位置に設けられた弁孔40を、空気用バルブ16が昇降することで開閉する。
【0028】空気用バルブ16は中間部に仕切壁35がある筒体形状で、下部筒体空間36内に可動保持部材3の上部が昇降自在に嵌合しており、下部筒体空間36の下端の係合縁37と可動保持部材3の係合鍔38が係合している。また、可動保持部材3の上端凹部39と仕切壁35下面側のEリング13との間に、リリーフスプリング12を弾装することで可動保持部材3と空気用バルブ16を連動させている。
【0029】ニードル17は、空気用バルブ16の仕切壁35の中心部に設けたガイド孔41を昇降自在に挿通しており、ニードル17の外周に設けられた切削溝にEリング13が係止してあって、このEリング13がリリーフスプリング12で押上げられることにより、ニードル17は空気用バルブ16と一緒に上昇し、かつ、Eリング13が仕切壁35の下面に係止することで、その上昇が規制される。また、ニードル17は、空気用バルブ16とは独自に、燃料通路19の圧力でリリーフスプリング12に抗して下降できる。
【0030】前記の構成では、エンジンスターターを作動させることで、通電回路が通電されることにより、PTCヒーター5が発熱し、そのPTCヒーター5の熱は、サーモワックス4に伝わるので、そのサーモワックス4が伸長する。すなわち、押圧杆体30がサーモワックス4のボデイから押出され、その押圧杆体30により、メインスプリング11の弾発力に抗して可動保持部材3が押上げられ、さらに、リリーフスプリング12を介して、これに保持されているニードル17と空気用バルブ16が一緒に上昇し、閉弁方向に移動されていくので、空気通路18と、燃料通路19の流路断面積が漸次減少し、混合気通路20を流れる空気と燃料の混合比が調節されるとともに、その流量も調節される。
【0031】また、外気温度の高低によりPTCヒーター5の発生する熱と外部に放出される熱の平行に到る温度差が生じ、そのため通電を開始してから制御弁が閉じるまでの時間は、外気温度の高低により変化する。さらに、電流を遮断すると、PTCヒーター5に蓄えられていた熱が徐々に外部に放出されていくので、電流が遮断されてから一定時間経過後に、前記メインスプリング11の弾発力により、可動保持部材3で保持されている各部分が押し戻されて開弁されていくと共に、押圧杆体30がサーモワックス4のボデイ内に押し込まれていく。
【0032】この場合、ケース1内の蓄熱用密閉空間28に収容されている蓄熱物質であるワックス29がPTCヒーター5の通電時に発生した熱を十分に蓄熱しているので、その潜熱効果により、PTCヒーター5へ電流が遮断されてから一定時間経過後も、サーモワックス4は急激に冷却されず、エンジンの冷却特性に近似して徐冷されてオーバーリッチを防ぎ再開始動性を良好にすることができる。
【0033】つまり、前記サーモワックス4とPTCヒーター5の近辺に形成した蓄熱用密閉空間28にPTCヒーターON,OFF間で溶融する蓄熱物質であるワックス29を挿入することで、その潜熱の効果により、温度の上昇と下降でのサーモワックスの作動を緩やかにする。このことは、実験で確かめられたので、以下それを説明する。
【0034】図2に示すケース1内の蓄熱用密閉空間28に、気体状態の空気と、液体状態の流体パラフィンと、固体状態のシリコンガスケットを個別に収容してエンジンを始動し、所定時間運転後停止して、これを繰り返して実験を行い、それぞれを比較した。ワックスは、140°F程度で溶融するワックスを使用した。その結果は、下記の表1のようになった【0035】
【表1】

【0036】また、図3にはワックスと黄銅のそれぞれの比熱をグラフで示している。同図から分かるように、一般的にワックスの比熱は、2〜2.5J/g・°Cであり(比較例6−4黄銅0.377J/g・°C)、溶融潜熱は200J/g・°C、つまり、PTCヒーターのON、OFF間にワックスの溶融点を有すれば、100°C分の熱エネルギーを有したことになる。表1は、このことを示している。
【0037】前述のように、本発明の実施形態においては、サーモワックスとPTCヒーターに近接する場所にPTCヒーターの温度変化内に溶融点を有する(つまり、固体から液体に体変化する)蓄熱物質(例、ワックス)を設けたことで、空冷エンジンの始動性を円滑に行うための空気制御弁(バイスター)又は、燃料制御弁の機能向上(排ガス等)を達成できた。また、従来例に見られるような金属などのヒートマスに見られるような、スペース拡大のはね返りを抑えることができた。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、感温制御装置のケース内において、PTCヒーターなどの発熱体と、サーモワックスに近接する場所に蓄熱用密閉空間を形成し、この蓄熱用密閉空間に前記PTCヒーターの温度変化内に溶融点を有するワックス等の蓄熱物質を収容し、この蓄熱物質に蓄熱された潜熱の効果で、発熱体が発熱をやめた後、サーモワックスの上昇と下降での作動を緩やかにできるので、特に、空冷エンジン等の始動性を円滑に行わせるための空気制御弁、又は、燃料制御弁の機能向上を達成でき、排ガス等の低減につながるものであり、蓄熱性に優れると共に、構造が簡単で製作も容易である。しかも、本発明では、従来製品の外形を変えなくてよいという、実用上きわめて優れた効果がある。
【出願人】 【識別番号】391026287
【氏名又は名称】富士精工株式会社
【出願日】 平成11年12月24日(1999.12.24)
【代理人】 【識別番号】100107250
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信之
【公開番号】 特開2001−182619(P2001−182619A)
【公開日】 平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願番号】 特願平11−365850