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【発明の名称】 電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造
【発明者】 【氏名】高橋 邦彰

【氏名】上原 徹也

【要約】 【課題】複数の燃料噴孔を有する電磁式燃料噴射弁の位置決め精度を高めつゝ,該弁のエンジンへの取付け性を良好にする。

【解決手段】燃料噴射弁Iの先端部が挿入されるエンジン1の燃料導入孔41と,この燃料導入孔41外で燃料噴射弁Iの外周面に形成されるフランジ43と,このフランジ43に隣接するようにエンジン1外面に形成される位置決め凸部45とを備え,フランジ43及び位置決め凸部45に,互いに当接して燃料噴射弁Iの回転を阻止する当接面44,46を設けた燃料噴射弁の取付け位置決め構造において,位置決め凸部45に,該凸部45側の当接面46の上縁に達するように下る誘導斜面47を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン(1)に設けられて,電磁式燃料噴射弁(I)の,複数の燃料噴孔(141 ,142 )を有する先端部が挿入される燃料導入孔(41)と,この燃料導入孔(41)外で燃料噴射弁(I)の外周面に形成されるフランジ(43)と,このフランジ(43)に隣接するようにエンジン(1)外面に形成される位置決め凸部(45)とを備え,前記フランジ(43)及び位置決め凸部(45)に,互いに当接して燃料噴射弁(I)の回転を阻止する当接面(44,46)を設けた,電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造において,前記位置決め凸部(45)に,該凸部(45)側の当接面(46)の上縁に達するように下る誘導斜面(47)を形成したことを特徴とする,電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造。
【請求項2】 請求項1記載の電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造において,位置決め凸部(45)の高さ(h)を前記フランジ(43)の厚さ(t)より大きく設定すると共に,フランジ(43)側及び位置決め凸部(45)側の当接面(44,46)の高さを略等しくしたことを特徴とする,電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,エンジンに設けられて,電磁式燃料噴射弁の,複数の燃料噴孔を有する先端部が挿入される燃料導入孔と,この燃料導入孔外で燃料噴射弁の外周面に形成されるフランジと,このフランジに隣接するようにエンジン外面に形成される位置決め凸部とを備え,前記フランジ及び位置決め凸部に,互いに当接して燃料噴射弁の回転を阻止する当接面を設けた,電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造に関する。
【0002】
【従来の技術】かゝる電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造は,例えば特開平6−221252号公報に開示されているように,既に知られている。かゝる構造によりエンジンに取付けられた燃料噴射弁は,所定位置で回転を阻止されるので,複数の燃料噴孔の位置が確定して,それぞれ所定の方向へ燃料を噴射することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで,かゝる電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造において,燃料噴射弁の位置決めを正確に行うためには,前記フランジ側及び位置決め凸部側の相対向する当接面間の間隙を極力小さくする必要があるが,そのようにすると,燃料噴射弁のエンジンへの取付け時,フランジ及び位置決め凸部が相互に干渉し易くなって,取付け性が低下するという弊害を招く。
【0004】本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,燃料噴射弁の位置決め精度を高めるべく,前記フランジ及び位置決め凸部の両当接面間隙を小さくしても,取付け性を良好にすることができるようにした,前記電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は,電磁式燃料噴射弁の,複数の燃料噴孔を有する先端部が挿入される燃料導入孔と,この燃料導入孔外で燃料噴射弁の外周面に形成されるフランジと,このフランジに隣接するようにエンジン外面に形成される位置決め凸部とを備え,前記フランジ及び位置決め凸部に,互いに当接して燃料噴射弁の回転を阻止する当接面を設けた,電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造において,前記位置決め凸部に,該凸部側の当接面の上縁に達するように下る誘導斜面を形成したことを第1の特徴とする。
【0006】この第1の特徴によれば,燃料噴射弁をエンジンに取付けるべく,燃料噴射弁の先端部をエンジンの燃料導入孔に挿入するとき,フランジの側の当接面と位置決め凸部の当接面との位置が多少ずれていても,フランジ側の当接面は,燃料噴射弁の燃料導入孔への挿入に伴い,位置決め凸部の誘導斜面に誘導されて,位置決め凸部側の当接面と正確に並ぶようになり,位置決め凸部側の当接面との対向位置へと移行することができる。したがって,燃料噴射弁の位置決め精度を高めるべく,フランジ側及び位置決め側の両当接面間隙を小さくしても,燃料噴射弁のエンジンへの取付けを容易に行うことができので,燃料噴射弁の位置決め精度と取付け性の両方を満足させることができる。特に位置決め精度の向上により,燃料噴射弁の複数の燃料噴孔から所望箇所に噴射できて,燃焼室での混合気A/Fの安定化と燃費の低減に寄与し得る。
【0007】また本発明は,上記特徴において,位置決め凸部の高さを前記フランジの厚さより大きく設定すると共に,フランジ側及び位置決め凸部側の当接面の高さを略等しくしたことを第2の特徴とする。
【0008】この第2の特徴によれば,位置決め凸部側の当接面及び誘導斜面の高さを充分に得て,誘導斜面の,フランジ側当接面に対する良好な誘導機能と,当接面の高い位置決め強度とを確保することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0010】図1は本発明の電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造が適用されるエンジンの横断平面図,図2は図1の2−2線断面図,図3は図2の3−3線拡大縦断面図,図4は図3の4矢視図,図5は図3の5−5線断面図である。
【0011】先ず,図1及び図2において,多気筒エンジン1のシリンダヘッド2には,燃焼室3と,それに連なる吸気ポート4i及び排気ポート4eとが形成される。吸気ポート4iは,燃焼室3に開口する出口側を一対の分岐ポート4i1 ,4i2に分岐させ,また排気ポート4eは,燃焼室3に開口する入口側を一対の分岐ポート4e1 ,4e2 に分岐させている。これら分岐ポート4i1 ,4i2 及び分岐ポート4e1 ,4e2 は各一対の吸気弁6i1 ,6i2 及び排気弁6e1 ,6e2 により開閉される。
【0012】吸気ポート4i及び排気ポート4eにそれぞれ連なる吸気マニホールド5i及び排気マニホールド5eはシリンダヘッド2の両側面に接合される。吸気マニホールド5iには,各気筒に対応して一本の電磁式燃料噴射弁Iが本発明の取付構造により取付けられる。この燃料噴射弁Iは,図4に示すように,一対の分岐ポート4i1 ,4i2 に指向する一対の燃料噴孔141 ,142 が設けられていて,両分岐ポート4i1 ,4i2 に向けて燃料を噴射するようになっている。
【0013】図3に示すように,前記燃料噴射弁Iの弁ハウジング10は,円筒状の弁ハウジング本体11(磁性体)と,この弁ハウジング本体11の前端部内周面に嵌合して溶接される有底円筒状の弁座部材12とから構成され,弁座部材12は,その前端面に開口する燃料出口13と,その後縁に連なる円錐状の弁座12aとを有する。弁座部材12の前端面には,上記燃料出口13と連通する一対の前記燃料噴孔141 ,142 を有する鋼板製のインジェクタプレート15が全周溶接される。
【0014】弁ハウジング本体11には可動コア16が収容され,その前端に一体に突設される弁杆18に上記弁座12aに着座し得る球状の弁体19を溶接される。
【0015】弁ハウジング本体11の後端面には摺動案内筒20が全周溶接され,この摺動案内筒20の内周面によって可動コア16が摺動自在に支承される。摺動案内筒20は非磁性金属,例えばステンレス鋼製である。
【0016】また摺動案内筒20の後端部内周面には,固定コア17が嵌合して全周溶接され,この固定コア17の前端面に対して,可動コア16は,その後端面を対向させている。
【0017】弁ハウジング本体11の後端部外周面には,段付き円筒状のコイルハウジング21(磁性体)の小径部21aが嵌合して溶接される。このコイルハウジング21には,弁ハウジング10の後端部,摺動案内筒20及び可動コア16を囲繞するコイル組立体22が収納される。コイル組立体22は,ボビン23と,これに巻装されるコイル24とからなっている。コイルハウジング21,コイル組立体22及び固定コア17は合成樹脂製の被覆体25内に埋封され,この被覆体25の前端には,前記弁ハウジング本体11の外周から半径方向に立ち上がる段部26と,この段部26の外周縁から後方に向かって大径となるテーパ状のストッパ段部27が形成される。またこの被覆体25の中間部には,前記コイル24に連なる接続端子28を備えたカプラ29が一体に連設される。
【0018】固定コア17は,可動コア16の通孔30を介して弁ハウジング10内と連通する中空部31を有しており,その中空部31に,可動コア16を閉弁方向,即ち弁座12aへの着座方向に付勢するコイル状の弁ばね32と,この弁ばね32の後端を支承するパイプ状のリテーナ33とが収容される。
【0019】固定コア17の後端には,パイプ状のリテーナ33を介して固定コア17の中空部31に連通する燃料入口34aを持つ入口筒34が一体に連設され,その燃料入口34aに燃料フィルタ35が装着される。
【0020】前記被覆体25の段部26から前方に露出した弁ハウジング本体11の外周には,上記段部26に当接する合成樹脂製のシール位置決め環37が嵌合される。また前記弁座部材12の前端部に合成樹脂製のキャップ39が弾力的に嵌着され,このキャップ39とシール位置決め環37との間においてOリング38が弁座部材12の外周に装着される。また燃料噴射弁Iの入口筒34の外周にもOリング40が装着される。
【0021】キャップ39は,前記燃料噴孔141 ,142 からの燃料噴射を妨げないように開口部39aを前面に有する。
【0022】一方,吸気マニホールド5iには,中間部にテーパ状のストッパ段部42を有する燃料導入孔41が設けられており,これに燃料噴射弁Iがキャップ39を先頭にして挿入される。その際,燃料噴射弁IのOリング38が燃料導入孔41の内周面に密接して燃料導入孔41をシールし,燃料噴射弁Iのストッパ段部27が,燃料導入孔41のストッパ段部42に当接することにより,燃料噴射弁Iの燃料導入孔41への挿入限界を規定する。
【0023】さて,上記燃料噴射弁Iの一対の燃料噴孔141 ,142 を前記一対の分岐ポート4i1 ,4i2 に正確に指向させて,この燃料噴射弁Iを位置決めするための位置決め構造について,図3及び図5により説明する。
【0024】燃料噴射弁Iの被覆体25に,その外周面から突出して吸気マニホールド5iの外面に対向するフランジ43が一体に形成され,このフランジ43の一側には,被覆体25の外周面の一部を挟んで一平面上に並ぶ一対の当接面44,44が形成される。
【0025】一方,吸気マニホールド5iの外面に,燃料導入孔41の開口縁一側に隣接する位置決め凸部45が一体成形され,この位置決め凸部45には,前記フランジ43の両当接面44,44に当接可能な一対の当接面46,46と,これら当接面46の上縁に達するように下る誘導斜面47,47と,両当接面46,46間にあって燃料導入孔41の内面に連続する円弧面48とが形成される。
【0026】而して,上記フランジ43の当接面44,44及び位置決め凸部45の当接面46,46は,燃料噴射弁Iの先端部が燃料導入孔41に挿入されたとき,これら当接面の当接により該燃料噴射弁Iを,一対の燃料噴孔141 ,142 が前記一対の分岐ポート4i1 ,4i2 に正確に指向する所定位置に保持するように,配置される。誘導斜面47の角度は略45°が適当である。
【0027】また,位置決め凸部45の高さhは,フランジ43の厚さtより充分大きく,望ましく厚さtの略2倍に設定されると共に,相対向する当接面44,46の高さは略等しく設定される。
【0028】再び図2及び図3において,上記のように燃料導入孔41に先端部を挿入された燃料噴射弁Iの入口筒34の外周には,燃料分配管51の供給口52が前記Oリング40を介して嵌合される。その際,燃料分配管51と被覆体25の後端面との間に,被覆体25のストッパ段部27を燃料導入孔41のストッパ段部42との当接状態に押圧する弾性部材55が介裝される。燃料分配管51は,一側に取付ボス56を備えており,これがインシュレータカラー57を挟んで吸気マニホールド5外面に突設される支持ボス58にボルト59により固着される。こうして,燃料噴射弁Iは吸気マニホールド5iに取付けられる。
【0029】次に,この実施例の作用について説明する。
【0030】燃料噴射弁Iをエンジン1に取付けるべく,燃料噴射弁Iの先端部をエンジン1の燃料導入孔41に挿入するとき,フランジ43の当接面44,44が位置決め凸部45の当接面46,46に対して多少位置ずれしていても,フランジ43の当接面44,44は,燃料噴射弁Iの燃料導入孔41への挿入に伴い,先ず位置決め凸部45の誘導斜面47に当たり,この誘導斜面47により位置決め凸部45の当接面46,46と正確に並ぶ位置まで誘導され,そして位置決め凸部45の当接面46との当接位置へと移行する。したがって,燃料噴射弁Iの位置決め精度を高めるべく,フランジ43側及び位置決め側の両当接面44,46間の間隙を小さく設定しても,燃料噴射弁Iの吸気マニホールド5iへの取付けを容易に行うことができる。
【0031】また,位置決め凸部45の高さhを前記フランジ43の厚さtより充分に大きく設定すると共に,相対向する当接面44,46の高さを略等しく設定したので,位置決め凸部45の誘導斜面47を充分広く確保して,該誘導斜面47の,フランジ43側当接面44に対する誘導機能を充分に発揮させることができ,また相対向する当接面44,46に高い位置決め強度を与えることができる。
【0032】また,位置決め凸部45には,燃料導入孔41の内周面に連続する円弧面48を形成したので,その円弧面48も燃料導入孔41の内周面と共に燃料噴射弁Iの外周面を支持することになり,その支持強度を高めることができる。
【0033】エンジン1の運転中,コイル24を消磁した状態では,弁ばね32の付勢力で可動コア16及び弁体19が前方に押圧され,弁体19を弁座12aに着座させている。したがって,燃料フィルタ35及び入口筒34を通して弁ハウジング1内に供給された高圧燃料は,弁ハウジング1内に保持される。
【0034】エンジン1の吸気行程時,コイル24を通電により励磁すると,それにより生ずる磁束が固定コア17,可動コア16,弁ハウジング10及びコイルハウジング21を順次走り,磁力により可動コア16が弁体19を伴って固定コア17に吸引され,弁座12aが開放されるので,弁ハウジング10内の高圧燃料が燃料出口13を出て,一対の燃料噴孔141 ,142 から二方向へ噴射される。
【0035】このとき,燃料噴射弁Iは,前述のように,当接面44,46の当接により所定位置に保持されていて,一対の燃料噴孔141 ,142 を一対の分岐ポート4i1 ,4i2 の下流端へ正確に指向させているので,両燃料噴孔141 ,142からの噴射燃料は,図1に示すように,対応する分岐ポート4i1 ,4i2 の下流端に正確に向かい,吸入空気と共にエンジン1の燃焼室3に吸入される。したがって,上記噴射燃料のポート間壁への付着を極力回避して,燃料室内での混合気A/Fを安定させると共に,燃費の低減に寄与することができる。
【0036】本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,フランジ43及び位置決め凸部45の当接面44,46は,それぞれ一つであってもよい。また上記実施例のように一対設ける場合には,各一対の当接面44,44;46,46は,それぞれ互いに角度をなすように配置することもできる。しかし,上記実施例のように,各一対の当接面44,44;46,46をそれぞれ同一平面上に配置する方が成形上,有利である。
【0037】
【発明の効果】以上のように本発明の第1の特徴によれば,電磁式燃料噴射弁の,複数の燃料噴孔を有する先端部が挿入される燃料導入孔と,この燃料導入孔外で燃料噴射弁の外周面に形成されるフランジと,このフランジに隣接するようにエンジン外面に形成される位置決め凸部とを備え,前記フランジ及び位置決め凸部に,互いに当接して燃料噴射弁の回転を阻止する当接面を設けた,電磁式燃料噴射弁の取付け位置決め構造において,前記位置決め凸部に,該凸部側の当接面の上縁に達するように下る誘導斜面を形成したので,燃料噴射弁の位置決め精度を高めるべく,フランジ側及び位置決め側の両当接面間隙を小さくしても,誘導斜面の誘導作用によりフランジ側及び位置決め側の両当接面の当接配置を容易に行うことができ,位置決め精度と取付け性の両方を満足させることができ,特に位置決め精度の向上により,燃料噴射弁の複数の燃料噴孔から所望箇所に噴射できて,燃焼室での混合気A/Fの安定化と燃費の低減を図ることができる。
【0038】また本発明の第2の特徴によれば,位置決め凸部の高さを前記フランジの厚さより大きく設定すると共に,フランジ側及び位置決め凸部側の当接面の高さを略等しくしたので,位置決め凸部側の当接面及び誘導斜面の高さを充分に得て,誘導斜面の,フランジ側当接面に対する良好な誘導機能と,当接面の高い位置決め強度とを確保することができる。
【出願人】 【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
【出願日】 平成11年10月19日(1999.10.19)
【代理人】 【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開2001−115929(P2001−115929A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−296723