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【発明の名称】 燃料噴射弁
【発明者】 【氏名】森 一祥

【要約】 【課題】弁ケーシングに取付けたアシストエア用のセパレータの回転を弾性リングによって規制することにより、耐久性、信頼性を向上させる。

【解決手段】弁ケーシング1の小径筒部1Bにはセパレータ18を嵌合して取付け、これらの相対回転を弾性リング26によって規制する。そして、弁体9が電磁コイル13により開弁するときには、オリフィスプレート8のオリフィス孔から分岐通路20A,20Bを通じて燃料を噴射し、この燃料にエア通路21からアシストエアを合流させる。また、弾性リング26は、セパレータ18が回転して位置ずれするのを防止し、オリフィスプレート8のオリフィス孔と分岐通路20A,20Bとが対面した状態を保持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸方向に燃料通路が設けられた筒状の弁ケーシングと、該弁ケーシングの先端部内周側に設けられ、噴射口を囲んで内周側に弁座が設けられた弁座部材と、前記噴射口を閉塞するように前記弁ケーシングの先端部内周側に設けられ、前記噴射口から流出した燃料を微粒化するオリフィス孔が穿設されたオリフィスプレートと、前記弁ケーシングの燃料通路内に挿通して設けられ、基端側が吸着部となり先端側が弁部となった弁体と、前記弁ケーシングの基端側に設けられ、通電することによって該弁体の吸着部を吸引し該弁体を開弁する電磁アクチュエータとからなる燃料噴射弁において、前記弁ケーシングの先端部外周側に嵌合して取付けられ、アシストエアの供給を受けつつ前記オリフィスプレートから噴射された微粒化燃料を複数の方向に分岐するセパレータを設け、該セパレータには前記弁ケーシングに対して該セパレータが回転するのを規制する回転規制部材を設けたことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】 前記回転規制部材は、前記セパレータの外周側に締代をもって装着され該セパレータを径方向外側から前記弁ケーシングの先端部に押付ける弾性リングにより構成してなる請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】 前記弁ケーシングの先端部外周側には、前記セパレータが前記弾性リングの押付力によって圧接される縦溝を設けてなる請求項2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】 前記セパレータの基端側には、前記弁ケーシングの先端部が嵌合される環状凹溝を挟んで外周側に前記回転規制部材が取付けられる外側筒部と前記弁ケーシングの先端部内周側に挿入される内側筒部とを設け、前記内側筒部は、前記オリフィスプレートよりも下流側で前記弁ケーシングの先端部内周側に形成される空間に配置する構成としてなる請求項1,2または3に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】 前記弁ケーシングの先端部内周側には、前記オリフィスプレートの下流側に形成される空間を狭める環状のスペーサ部材を設けてなる請求項1,2または3に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車用エンジン等に燃料を噴射するのに好適に用いられる燃料噴射弁に関し、特にアシストエアを用いて燃料の微粒化を図る構成としたアシストエア式の燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、例えば自動車用エンジン等に用いられる燃料噴射弁は、軸方向に燃料通路が設けられた筒状の弁ケーシングと、該弁ケーシングの先端部内周側に設けられ、噴射口を囲んで内周側に弁座が設けられた弁座部材と、前記噴射口を閉塞するように前記弁ケーシングの先端部内周側に設けられ、前記噴射口から流出した燃料を微粒化するオリフィス孔が穿設されたオリフィスプレートと、前記弁ケーシングの燃料通路内に挿通して設けられ、基端側が吸着部となり先端側が弁部となった弁体と、前記弁ケーシングの基端側に設けられ、通電することによって該弁体の吸着部を吸引し該弁体を開弁する電磁アクチュエータとから構成されている。
【0003】この種の従来技術による燃料噴射弁としては、例えばオリフィスプレートに複数のオリフィス孔を傾斜孔として設け、エンジンの吸気ポートの配置等に対応して各オリフィス孔から燃料を複数の方向に噴射する構成としたものがある。また、オリフィス孔から噴射される燃料にアシストエアを合流させることにより、噴射燃料の微粒化を促進する構成としたアシストエア式の燃料噴射弁も知られている(例えば、特開平4−350361号、特開平9−14079号公報等)。
【0004】この場合、アシストエア式の燃料噴射弁には、弁ケーシングの先端部にアシストエア用のセパレータが取付けられている。また、セパレータには、燃料の噴射方向に対応して複数の分岐通路が設けられ、燃料噴射弁の組立時には、これらの分岐通路がオリフィスプレートの各オリフィス孔と対面するようにセパレータが弁ケーシングに対して予め位置決めされるものである。
【0005】そして、弁体の開弁時には、各オリフィス孔から燃料が微粒化された状態で複数の方向に噴射されると、これらの噴射燃料はセパレータの各分岐通路から外部に噴出する。このとき、分岐通路内には、エンジンの吸入空気の一部がアシストエアとして供給され、このアシストエアは、噴射燃料と合流して燃料の微粒化を促進しつつ、この燃料と共にエンジンの吸気ポート等に向けて噴出する構成となっている。
【0006】また、燃料噴射弁の組立時には、弁ケーシングに対して先端側からオリフィスプレートを覆うようにセパレータを取付ける。そして、セパレータの取付時には、その分岐通路とオリフィスプレート側のオリフィス孔とを位置合わせしつつ、セパレータを弁ケーシングの先端部外周側に圧入等の手段によって嵌め込み、セパレータを弁ケーシングに固定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来技術では、アシストエア用のセパレータを圧入等の手段によって弁ケーシングの先端部に固定し、その分岐通路とオリフィスプレートのオリフィス孔とを予め位置合わせしておくことにより、弁体の開弁時には、これらのオリフィス孔と分岐通路とを通じて燃料を噴射する構成となっている。
【0008】しかし、セパレータは、例えば振動等によって僅かに緩んだり、燃料噴射弁の点検、交換時に外力等を受けたりすることがあるため、弁ケーシングとセパレータとは相対回転する場合がある。このため、セパレータの分岐通路とオリフィスプレートのオリフィス孔との間に回転方向の位置ずれが生じると、オリフィス孔から噴射される燃料が分岐通路の周壁部等に接触し易くなり、燃料の噴射量、噴射方向等が不安定になる虞れがある。
【0009】特に、セパレータが樹脂材料等により形成されている場合には、燃料による樹脂の膨潤等が生じることによってセパレータの取付状態が不良となり易いため、耐久性、信頼性が低下するという問題がある。
【0010】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、弁ケーシングの先端部にセパレータを安定して取付けることができ、燃料の噴射状態を長期間に亘って良好に保持できると共に、耐久性、信頼性を向上できるようにした燃料噴射弁を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために本発明は、軸方向に燃料通路が設けられた筒状の弁ケーシングと、該弁ケーシングの先端部内周側に設けられ、噴射口を囲んで内周側に弁座が設けられた弁座部材と、前記噴射口を閉塞するように前記弁ケーシングの先端部内周側に設けられ、前記噴射口から流出した燃料を微粒化するオリフィス孔が穿設されたオリフィスプレートと、前記弁ケーシングの燃料通路内に挿通して設けられ、基端側が吸着部となり先端側が弁部となった弁体と、前記弁ケーシングの基端側に設けられ、通電することによって該弁体の吸着部を吸引し該弁体を開弁する電磁アクチュエータとからなる燃料噴射弁に適用される。
【0012】そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記弁ケーシングの先端部外周側に嵌合して取付けられ、アシストエアの供給を受けつつ前記オリフィスプレートから噴射された微粒化燃料を複数の方向に分岐するセパレータを設け、該セパレータには前記弁ケーシングに対して該セパレータが回転するのを規制する回転規制部材を設けたことにある。
【0013】このように構成することにより、セパレータは、オリフィスプレートのオリフィス孔から噴射される燃料をアシストエアと合流させて微粒化し、この微粒化燃料をアシストエアと共に複数の方向に噴出することができる。また、回転規制部材は、弁ケーシングに対してセパレータが回転するのを規制でき、セパレータから噴出する燃料の噴出方向等を一定に保持することができる。
【0014】また、請求項2の発明によると、回転規制部材は、前記セパレータの外周側に締代をもって装着され該セパレータを径方向外側から前記弁ケーシングの先端部に押付ける弾性リングにより構成している。
【0015】これにより、弾性リングは、その押付力を用いてセパレータを弁ケーシングの先端部外周側に廻止め状態で取付けることができ、セパレータの回転を規制することができる。
【0016】さらに、請求項3の発明によると、弁ケーシングの先端部外周側には、前記セパレータが弾性リングの押付力によって圧接される縦溝を設けている。
【0017】これにより、弁ケーシングの先端部とセパレータとの間には、弾性リングの押付力と縦溝の凹凸形状とを用いて大きな摩擦抵抗力を発生でき、これらの相対回転を規制することができる。
【0018】また、請求項4の発明によると、セパレータの基端側には、前記弁ケーシングの先端部が嵌合される環状凹溝を挟んで外周側に前記回転規制部材が取付けられる外側筒部と前記弁ケーシングの先端部内周側に挿入される内側筒部とを設け、前記内側筒部は、前記オリフィスプレートよりも下流側で前記弁ケーシングの先端部内周側に形成される空間に配置する構成としている。
【0019】これにより、セパレータの外側筒部と内側筒部との間に形成された環状凹溝内に弁ケーシングの先端部を嵌合させることができ、この状態でセパレータを回転規制部材によって廻止め状態に保持することができる。また、セパレータの内側筒部を弁ケーシングの先端部内周側に挿入でき、内側筒部は、オリフィスプレートの下流側でセパレータとの間に形成される余分な空間を狭めることができる。
【0020】さらに、請求項5の発明によると、弁ケーシングの先端部内周側には、前記オリフィスプレートの下流側に形成される空間を狭める環状のスペーサ部材を設けている。
【0021】これにより、スペーサ部材は、弁ケーシングの先端部内周に位置してオリフィスプレートの下流側に形成される余分な空間を狭めることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明による実施の形態を、自動車用エンジン等に用いられるアシストエア式の燃料噴射弁を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】まず、図1ないし図5は本発明による燃料噴射弁の第1の実施の形態を示している。
【0024】1は燃料噴射弁の本体をなす筒状をした弁ケーシングで、該弁ケーシング1は、例えば電磁ステンレス鋼等の磁性材料により段付き筒状に形成されている。そして、弁ケーシング1は、基端側に後述の樹脂カバー16が取付けられた大径筒部1Aと、該大径筒部1Aの先端側に一体形成された小径筒部1Bとからなり、その内部には後述の弁体9を挿通する燃料通路2が軸方向に設けられている。
【0025】また、小径筒部1Bの外周側には、図5に示す如く、軸方向に延びる多数の縦溝が全周に亘って設けられた縦溝1Cと、該縦溝1Cの先端側に位置して径方向内向きに窪んだ環状の係合溝部1Dとが設けられている。
【0026】3は弁ケーシング1の基端側に固着された筒状の連結部材で、該連結部材3は、図1に示す如く非磁性材料等により形成されている。
【0027】4は例えば電磁ステンレス鋼等の磁性材料により形成された筒状の燃料流入パイプで、該燃料流入パイプ4は、連結部材3を介して弁ケーシング1の基端側に固定され、その先端側は燃料通路2に連通している。そして、燃料流入パイプ4の先端面は、軸方向の僅かな隙間を挟んで後述する弁体9の吸着部11と対面している。また、燃料流入パイプ4の基端側内周には燃料フィルタ5が設けられている。
【0028】ここで、燃料流入パイプ4と弁ケーシング1とは、これらの外周側に取付けられた磁性金属片等からなる連結コア6を介して磁気的に連結されている。そして、後述の電磁コイル13に通電したときには、弁ケーシング1、燃料流入パイプ4、連結コア6、弁体9の吸着部11との間に閉磁路が形成される。
【0029】7は弁ケーシング1の小径筒部1B内に嵌着された略筒状の弁座部材で、該弁座部材7の先端側には、図1、図2に示す如く、後述のオリフィスプレート8に面して開口する噴射口7Aが形成されている。また、弁座部材7の内周側には、噴射口7Aを囲んで略円錐状の弁座7Bが設けられている。
【0030】8は円形状の金属板等により形成されたオリフィスプレートで、該オリフィスプレート8は、図2、図3に示す如く、例えば溶接等の手段を用いて弁ケーシング1の小径筒部1B内に固着され、弁座部材7の噴射口7Aを先端側から閉塞している。また、オリフィスプレート8の中央側には、例えばオリフィス孔8A,8Aとオリフィス孔8B,8Bとが左,右に2個ずつ穿設されている。
【0031】そして、弁体9の開弁時には、弁座部材7の噴射口7Aから燃料が流出すると、この燃料はオリフィスプレート8の各オリフィス孔8Aから図2中の矢示A方向に向けて微粒化した状態で噴射されると共に、各オリフィス孔8Bから矢示B方向に向けて噴射される構成となっている。
【0032】また、オリフィスプレート8は、図5に示す如く、例えば燃料噴射弁の組立時にオリフィス孔8A,8Bを保護するために小径筒部1B内の奥所側(基端側)に配置され、後述のセパレータ18を弁ケーシング1に取付ける前には、小径筒部1Bの先端側に凹窪状の空間Sが開口して形成されている。
【0033】9は弁ケーシング1の燃料通路2内に挿通して設けられた弁体で、該弁体9は、図1に示す如く、金属板等を折曲げることにより略筒状に形成された弁軸10と、磁性材料等により形成され、該弁軸10の基端側に固着された筒状の吸着部11と、弁軸10の先端側に固着され、弁座部材7の弁座7Bに離着座する球状の弁部12とから構成されている。また、弁部12の外周側には複数箇所に面取りが施されている。
【0034】そして、弁体9は、吸着部11が後述の電磁コイル13等により磁気的に吸引されると、後述の弁ばね14に抗して軸方向に変位し、弁部12が弁座部材7の弁座7Bから離座することによって開弁するものである。
【0035】13は弁ケーシング1の基端側で樹脂カバー16内に固着して設けられた電磁アクチュエータとしての電磁コイルで、該電磁コイル13は、後述のコネクタ17を用いて外部から通電されることにより弁体9の吸着部11を磁気的に吸引し、弁体9を開弁させるものである。
【0036】14は燃料流入パイプ4内に配置された圧縮ばねからなる弁ばねで、該弁ばね14は、燃料流入パイプ4の上流側に固着された筒体15と弁体9の基端側との間に設けられ、該弁体9を閉弁方向に付勢している。
【0037】16は弁ケーシング1の大径筒部1Aと燃料流入パイプ4と連結コア6とを覆うように取付けられた樹脂カバーで、該樹脂カバー16には電磁コイル13用のコネクタ17が設けられている。
【0038】18は弁ケーシング1の小径筒部1Bに嵌合して取付けられたアシストエア用のセパレータで、該セパレータ18は、図2、図3に示す如く、例えば樹脂材料等を用いて一体に形成され、後述の胴部19、外側筒部23、内側筒部24を含んで構成されている。
【0039】19はセパレータ18の本体部分を構成する胴部で、該胴部19内には、図2中の矢示A,B方向に沿って斜めに形成された例えば2個の分岐通路20A,20Bと、該分岐通路20A,20Bの途中に開口して形成され、例えばエンジンの吸入空気の負圧と大気圧との差圧を利用したアシストエアが供給されるエア通路21A,21Bとが設けられている。
【0040】ここで、セパレータ18は、セパレータ18と弁ケーシング1とが相対回転する方向(図3中の矢示C方向)に対して、分岐通路20A,20Bとオリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bとを予め位置合わせした状態で弁ケーシング1の小径筒部1Bに取付けられている。即ち、分岐通路20Aは、オリフィスプレート8の各オリフィス孔8Aと対面して配置され、分岐通路20Bも各オリフィス孔8Bと対面して配置されている。
【0041】また、胴部19の先端側には、燃料の噴射方向に対応して先端側に拡開するように開口した有底の先端開口部22が設けられ、該先端開口部22内の底部側には、分岐通路20A,20Bの先端側がそれぞれ開口している。
【0042】そして、セパレータ18は、オリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bから分岐通路20A,20B内に噴射される燃料に対して、エア通路21A,21B内に供給されるアシストエアを合流させることにより燃料の微粒化を促進しつつ、これらの混合気をエンジンの各気筒に設けられた例えば2個の吸気ポート(図示せず)等に向けて、矢示A,B方向に分岐して噴出するものである。
【0043】23は胴部19の基端側に突設された外側筒部で、該外側筒部23は、内側筒部24と径方向の隙間をもって同心円状に配置されている。また、外側筒部23の内周側には径方向内向きに突出する環状の係合突部23Aが設けられている。
【0044】そして、外側筒部23は、弁ケーシング1の小径筒部1Bの外周側に圧入等の手段によって嵌合されている。この場合、外側筒部23の係合突部23Aは、小径筒部1Bの係合溝部1D内に係合し、この係合部位は弾性リング26の押付力(締付力)によって抜止め状態に保持されている。
【0045】また、外側筒部23は、その内側部位23Bが弾性リング26の押付力により小径筒部1Bの縦溝1Cに強く圧接されて食込むように凹窪状に弾性変形している。これにより、外側筒部23と小径筒部1Bとの間には回転方向に対して大きな摩擦抵抗力が発生し、これらは相対回転を規制されている。
【0046】24は外側筒部23の内周側に位置して胴部19に突設された内側筒部で、該内側筒部24は、外側筒部23よりも短尺な筒状体として形成され、外側筒部23との間に弁ケーシング1の小径筒部1Bが嵌合された環状凹溝25を形成している。また、内側筒部24は小径筒部1Bの先端部内周側に挿入され、オリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bとセパレータ18の分岐通路20A,20Bとを取囲む位置で小径筒部1B内の空間Sに配置されている。
【0047】これにより、内側筒部24は、オリフィスプレート8の下流側で空間Sの容積を狭めて減少させ、オリフィス孔8A,8Bから噴射される燃料が空間S内に溜るのを抑制するものである。
【0048】26は外側筒部23の外周側に締代をもって装着された回転規制部材としての弾性リングで、該弾性リング26は、図2、図4に示す如く、例えばばね性を有する金属材料により略C字状に形成され、周方向の1箇所に切込み26Aが設けられると共に、この切込み26Aは、弾性リング26の押付力が切込み26Aの位置で低下するのを防止するためクランク状に屈曲して延びている。
【0049】そして、弾性リング26は、セパレータ18の外側筒部23を径方向外側から弁ケーシング1の小径筒部1B(縦溝1C)に強く押付け、これらの間に大きな摩擦抵抗力を発生している。これにより、弾性リング26は、セパレータ18を抜止めおよび廻止め状態で弁ケーシング1の小径筒部1Bに取付けている。
【0050】本実施の形態によるアシストエア式の燃料噴射弁は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0051】まず、外部からコネクタ17を介して電磁コイル13に通電すると、電磁コイル13が弁ケーシング1、燃料流入パイプ4および連結コア6を介して弁体9の吸着部11を磁気的に吸引し、弁体9は弁ばね14に抗して開弁する。これにより、燃料流入パイプ4の基端側から弁ケーシング1の燃料通路2内に供給される燃料は、オリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bからセパレータ18の分岐通路20A,20Bを通じて図2中の矢示A,B方向に噴射される。
【0052】このとき、セパレータ18のエア通路21A,21Bには、エンジンの吸入空気の一部がアシストエアとして供給され、このアシストエアは、分岐通路20A,20B内を通過する燃料と合流して燃料の微粒化を促進しつつ、この燃料と共に分岐通路20A,20Bからエンジンの吸気ポート等に向けて噴出する。
【0053】一方、燃料噴射弁の組立時には、弁ケーシング1の小径筒部1Bに対して先端側からオリフィスプレート8を覆うようにセパレータ18を取付ける。そして、セパレータ18の取付時には、その分岐通路20A,20Bとオリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bとを回転方向に対して位置合わせしつつ、外側筒部23を小径筒部1Bの外周側に押込むと共に、内側筒部24を小径筒部1Bの空間S内に挿入する。そして、弾性リング26を外側筒部23の外周側に装着し、これによってセパレータ18を弁ケーシング1に固定する。
【0054】かくして、本実施の形態によれば、外側筒部23の外周側にセパレータ18の回転を規制する弾性リング26を設ける構成としたので、弾性リング26は、セパレータ18を弁ケーシング1の小径筒部1Bに廻止め状態で確実に固定でき、例えば外側筒部23の膨潤や緩み等によりセパレータ18が小径筒部1Bに対して回転するのを規制することができる。
【0055】従って、弾性リング26は、オリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bとセパレータ18の分岐通路20A,20Bとが精度よく対面した状態を長期間に亘って保持でき、弁体9の開弁時には、オリフィス孔8A,8Bから分岐通路20A,20Bを通じて燃料を円滑に噴射できると共に、このときの噴射量および噴射方向を安定化でき、耐久性、信頼性を向上させることができる。
【0056】また、小径筒部1Bに設けた環状の係合溝部1Dと外側筒部23に設けた環状の係合突部23Aとを係合させ、この係合状態を弾性リング26の押付力によって保持するようにしたので、セパレータ18を小径筒部1Bに対し安定して抜止め状態に保つことができる。
【0057】この場合、弾性リング26を用いることにより、その押付力(締付力)を用いてセパレータ18の外側筒部23を径方向外側から弁ケーシング1の小径筒部1Bに強く押付けることができ、外側筒部23と小径筒部1Bとの間に回転方向および軸方向に対して大きな摩擦抵抗力を発生できると共に、これによってセパレータ18の位置ずれを確実に防止することができる。
【0058】しかも、小径筒部1Bの外周側に全周に亘って縦溝1Cを設けたので、弾性リング26の押付力により外側筒部23の内側部位23Bを縦溝1Cに対して食込むように強く圧接でき、外側筒部23と小径筒部1Bとの間には、特に回転方向に対してより大きな摩擦抵抗力を発生することができる。
【0059】また、セパレータ18には小径筒部1B内に挿入される内側筒部24を設けたので、外側筒部23と内側筒部24との間に形成された環状凹溝25内に弁ケーシング1の小径筒部1Bを安定して嵌合できると共に、内側筒部24は、オリフィスプレート8とセパレータ18の胴部19との間に形成される空間Sの余分な容積を減少させることができ、オリフィスプレート8のオリフィス孔8A,8Bから噴射される燃料が空間S内に溜るのを抑制することができる。これにより、空間S内に溜った燃料が分岐通路20A,20B内に浸入するのを防止でき、燃料の噴射量および微粒化状態を精度よく保つことができる。
【0060】次に、図6は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施の形態の特徴は、回転規制部材を、弁ケーシング側に設けた爪部と、セパレータ側に設けた係合孔とから構成したことにある。
【0061】31は第1の実施の形態とほぼ同様に構成された弁ケーシングで、該弁ケーシング31は、大径筒部32、小径筒部33、燃料通路34等を有している。
【0062】35,35,…は後述の係合孔42と共に回転規制部材を構成する複数の爪部(2個のみ図示)で、該各爪部35は、小径筒部33の外周側に径方向外向きに突設され、周方向に間隔をもって配置されている。そして、各爪部35は、後述するセパレータ36の各係合孔42内にそれぞれ係合され、セパレータ36を弁ケーシング31に対して抜止めおよび廻止め状態で取付けている。
【0063】36は弁ケーシング31の小径筒部33に取付けられたセパレータで、該セパレータ36は、第1の実施の形態のセパレータ18とほぼ同様に、胴部37、分岐通路38A,38B、エア通路39A,39B、外側筒部40、内側筒部41を含んで構成されている。
【0064】42,42,…は各爪部35に対応してセパレータ36の外側筒部40に設けられた回転規制部材としての複数の係合孔で、該各係合孔42内には爪部35が係合されている。
【0065】かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、弁ケーシング1側の爪部35をセパレータ36側の係合孔42内に係合させるだけで、これらをワンタッチで効率よく組付けることができ、また組付け用の部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【0066】次に、図7は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施の形態の特徴は、弁ケーシングの先端部内周側に環状のスペーサ部材を設ける構成としたことにある。
【0067】51は弾性リング26等を用いて弁ケーシング1の小径筒部1Bに取付けられたセパレータで、該セパレータ51は、第1の実施の形態とほぼ同様に、胴部52、分岐通路53A,53B、エア通路54A,54B、外側筒部55を有している。しかし、セパレータ51は、第1の実施の形態の内側筒部24を省略した構成となっている。
【0068】56は弁ケーシング1の小径筒部1B内に設けられた環状のスペーサ部材で、該スペーサ部材56は、オリフィスプレート8の下流側でセパレータ51との間に配置され、セパレータ51の各分岐通路53等を取囲む位置で小径筒部1B内の空間Sを狭めている。
【0069】かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、セパレータ51とスペーサ部材56とを別体に形成したので、空間Sが複雑な形状をもつ場合でも、その形状に対応してスペーサ部材56を精度よく形成できると共に、セパレータ51の形状を簡略化することができる。
【0070】なお、前記各実施の形態では、弁体9に対して球状の弁部12を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、例えば円錐状の弁部が設けられたニードル弁体を用いる構成としてもよい。
【0071】
【発明の効果】以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、セパレータには、セパレータが弁ケーシングに対して回転するのを規制する回転規制部材を設ける構成としたので、回転規制部材は、セパレータを弁ケーシングの先端部外周側に廻止め状態で確実に固定でき、例えば振動による緩みや経時劣化等によるセパレータの回転を規制することができる。従って、オリフィスプレートのオリフィス孔に対してセパレータを所定の位置に保持でき、弁体の開弁時には、オリフィス孔からセパレータ内を通じて燃料を円滑に噴射できると共に、このときの噴射量および噴射方向を安定化でき、耐久性、信頼性を向上させることができる。
【0072】また、請求項2の発明によれば、回転規制部材は、セパレータを径方向外側から弁ケーシングの先端部に押付ける弾性リングにより構成したので、弾性リングは、その押付力を用いてセパレータを径方向外側から弁ケーシングの先端部に強く押付けることができ、これらの間に大きな摩擦抵抗力を発生できると共に、これによってセパレータの位置ずれを確実に防止することができる。
【0073】さらに、請求項3の発明によれば、弁ケーシングの先端部外周側には、セパレータが弾性リングの押付力によって圧接される縦溝を設ける構成としたので、弾性リングの押付力によってセパレータを弁ケーシングの縦溝に強く圧接でき、弁ケーシングとセパレータとの間には、特に両者が相対回転する方向に対してより大きな摩擦抵抗力を発生することができる。
【0074】また、請求項4の発明によれば、セパレータの基端側には、環状凹溝を挟んで外側筒部と内側筒部とを設ける構成としたので、弁ケーシングの先端部を外側筒部と内側筒部との間に形成される環状凹溝内に安定して嵌合できると共に、内側筒部は、オリフィスプレートの下流側に形成される空間の余分な容積を狭めて減少させることができ、オリフィス孔から噴射される燃料がこの空間内に溜るのを抑制することができる。これにより、前記空間内に溜った燃料がセパレータ内に浸入するのを防止でき、燃料の噴射量および微粒化状態を精度よく保持することができる。
【0075】さらに、請求項5の発明によれば、弁ケーシングの先端部内周側には、オリフィスプレートの下流側に形成される空間を狭める環状のスペーサ部材を設ける構成としたので、この空間の余分な容積をスペーサ部材によって減少させることができ、オリフィス孔から噴射される燃料がこの空間内に溜るのを抑制することができる。また、前記空間が複雑な形状をもつ場合でも、その形状に対応してスペーサ部材を精度よく形成でき、セパレータの形状を簡略化することができる。
【出願人】 【識別番号】000167406
【氏名又は名称】株式会社ユニシアジェックス
【出願日】 平成11年10月18日(1999.10.18)
【代理人】 【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
【公開番号】 特開2001−115928(P2001−115928A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−294932