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【発明の名称】 高圧燃料ポンプ
【発明者】 【氏名】平工 賢二

【氏名】野上 忠彦

【氏名】高尾 邦彦

【氏名】山田 裕之

【氏名】徳尾 健一郎

【要約】 【課題】単筒プランジャ式高圧燃料ポンプは高回転での容積効率低下が著しく、大流量化が困難である。

【解決手段】吐出弁6のリフトXと共に変化する開口面積A2が吐出弁の上流側(加圧室側)の通路面積A1に対して同等以下になるように弁の最大リフト量Xmax を規定する。これにより必要以上に弁がリフトして閉じ遅れにより逆流が発生するのを抑制することができる。その結果、低回転域から高回転域まで高い容積効率が得られるようになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】燃料の吸入通路と吐出通路に連通する加圧室を有し、該加圧室内を往復動するプランジャによって燃料の吸入・吐出を行う燃料ポンプにおいて、前記ポンプは前記吐出通路内に燃料の該加圧室内への逆流を防止する吐出弁を備え、前記吐出弁は弁のリフトと共に変化する開口面積が該吐出弁の上流側である該加圧室側の通路面積に対して同等以下になるように該吐出弁の最大リフト量を規制したことを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用エンジン、なかでも筒内噴射エンジンの燃料噴射弁に燃料を高圧で供給する高圧燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の高圧燃料ポンプでは、例えば、特開平7−332186 号公報に記載されているように、吐出弁の最大リフト量をストッパにより規制して、吐出弁体が案内部材から脱落するのを防止する構成が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術の高圧燃料ポンプでは、弁体が脱落しない範囲で吐出弁の最大リフト量を規制しているものの、リフト量と吐出弁の開口面積の関係については何ら考慮されていない。このため吐出弁体が必要以上にリフトして、弁の閉じ遅れが大きくなる結果、吐出通路側から加圧室内への燃料の逆流が多くなって吐出流量が低下する可能性があった。すなわち、燃料の通路面積は最も狭い部分で規定されるので、吐出弁体のリフトにより開口するいわゆる開口面積が吐出弁の上流側の通路面積より大きくなっても無効であり、必要以上のリフトは閉じ遅れとなって吐出流量を低下させる。従来例ではこの点について何ら記載していない。上記問題は燃料流量が多くなり吐出弁のリフトが増える高回転域ほど顕著に現れ、特に単筒式プランジャポンプの場合、吸入・吐出が間欠的に行われるためポンプの平均流量に比べて非常に大きな流量が瞬間的に吐出弁を流れ、よりこの問題が顕在化する短所があった。
【0004】本発明の目的は、上記のような従来技術における問題点を解消し、簡単な構造により高圧燃料ポンプを構成して吐出弁部での逆流を抑え、低回転域から高回転域まで広い範囲で高い容積効率が得られる高圧燃料ポンプを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の第1の発明に記載の高圧燃料ポンプは、燃料の吸入通路と吐出通路に連通する加圧室を有し、該加圧室内を往復動するプランジャによって燃料の吸入・吐出を行う燃料ポンプにおいて、前記ポンプは前記吐出通路内に燃料の該加圧室内への逆流を防止する吐出弁を備え、前記吐出弁は弁のリフトと共に変化する開口面積が該吐出弁の上流側(該加圧室側)の通路面積に対して同等以下になるように該吐出弁の最大リフト量を規制したことを特徴とする。
【0006】また、第2の発明に記載の高圧燃料ポンプは、第1の発明に記載の高圧燃料ポンプにおいて、前記ポンプは一対の加圧室とプランジャを備えた単筒式プランジャポンプであることを特徴とする。
【0007】また、第3の発明に記載のエンジンの燃料供給装置は、第1の発明ないし第2の発明に記載の高圧燃料ポンプの前記吸入通路に燃料タンクに至る配管を接続する一方、前記吐出通路に燃料噴射弁に至る配管を接続し、前記高圧燃料ポンプをエンジンの回転力もしくは電動機で駆動するように構成したことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明による実施例について、以下図面を参照して説明する。
【0009】図1(a),(b)及び図2により、本発明による一実施例の構成・動作を説明する。ポンプ本体1には、燃料吸入通路10,吐出通路11,加圧室12が形成されている。加圧室12には、加圧部材であるプランジャ2が摺動可能に保持されている。吸入通路10及び吐出通路11には、吸入弁5,吐出弁6が設けられており、それぞればね5a,6aにて一方向に保持され、燃料の流通方向を制限する逆止弁となっている。また、ソレノイド200がポンプ本体1に保持されており、ソレノイド200には、係合部材201,ばね202が配されている。係合部材201は、ソレノイド200がOFF時は、ばね202によって、吸入弁5を開弁する方向に付勢力がかけられている。ばね202の付勢力は、吸入弁ばね5aの付勢力より大きくなっているため、ソレノイド200OFF時は、図1のように、吸入弁5は開弁状態となっている。
【0010】燃料は、タンク50から低圧ポンプ51にてポンプ本体1の燃料導入口に、プレッシャレギュレータ52にて一定の圧力の調圧されて、導かれている。その後、ポンプ本体1にて加圧され、燃料吐出口からコモンレール53に圧送される。コモンレール53には、インジェクタ54,リリーフ弁55,圧力センサ56が装着されている。インジェクタ54は、エンジンの気筒数にあわせて装着されており、エンジンコントロールユニット(ECU)の信号にて噴射する。また、リリーフ弁55は、コモンレール53内の圧力が所定値を超えた際開弁し、配管系の破損を防止する。
【0011】以上構成により、動作を以下説明する。
【0012】プランジャ2の下端に設けられたリフタ3は、ばね4にてカム100に圧接されている。プランジャ2は、エンジンカムシャフト等により回転されるカム 100により、往復運動して加圧室12内の容積を変化させる。
【0013】プランジャ2の圧縮工程中に吸入弁5が閉弁すると、加圧室12内の圧力が上昇し、これにより吐出弁6が自動的に開弁し、燃料をコモンレール53に圧送する。
【0014】吸入弁5は、加圧室12の圧力が燃料導入口より低くなると自動的に開弁するが、閉弁に関しては、ソレノイド200の動作により決定される。
【0015】ソレノイド200がON(通電)状態を保持した際は、ばね202の付勢力以上の電磁力を発生させ、係合部材201をソレノイド202側に引き寄せるため、係合部材201と吸入弁5は分離される。この状態であれば、吸入弁5はプランジャ2の往復運動に同期して開閉する自動弁となる。従って、圧縮工程中は、吸入弁5は閉塞し、加圧室12の容積減少分の燃料は、吐出弁6を押し開きコモンレール53へ圧送される。よって、ソレノイド200の応答性に関係せずに、ポンプの最大吐出を行うことができる。
【0016】これに対し、ソレノイド200がOFF(無通電)を保持した際は、ばね 202の付勢力により、係合部材201は吸入弁5に係合し、吸入弁5を開弁状態に保持する。従って、圧縮工程時においても、加圧室12の圧力は燃料導入口部とほぼ同等の低圧状態を保つため、吐出弁6を開弁することができず、加圧室12の容積減少分の燃料は、吸入弁5を通り燃料導入口側へ戻される。よって、ポンプ吐出量を0とすることができる。
【0017】また、圧縮工程の途中で、ソレノイド200をON状態とすれば、このときから、コモンレール53へ燃料圧送される。また、一度圧送が始まれば、加圧室12内の圧力は上昇するため、その後、ソレノイド200をOFF状態にしても、吸入弁5は閉塞状態を維持し、吸入工程の始まりと同期して自動開弁する。よって、ソレノイド200のONタイミングにより、吐出量を調節することができる。また、ソレノイド200は圧縮工程の始まり前までに、OFF位置まで戻れば良いため、特別ON→OFFの応答性を良くする必要がない。これにより、ばね202の付勢力を小さくすることができ、結果的にソレノイド200のOFF→ONの応答性をよくすることができる。
【0018】以上により、圧縮工程におけるソレノイド200のON時間又はONタイミングをコントロールすることにより、コモンレール53への吐出量を可変制御することができる。また、圧力センサ56の信号に基づき、ECUにて適切な吐出タイミングを演算しソレノイド200をコントロールすることにより、コモンレール53圧力を略一定値に保つことができる。また、ソレノイド200を大型化することなく、OFF→ON応答性を向上することができる。
【0019】以上説明した単筒式プランジャポンプは構造が簡単で低コストという長所があるが、吸入・吐出が間欠的に行われるため脈動が大きくなる短所がある。またポンプの平均流量の3倍以上もの流量が吐出弁6には瞬間的に通過するため、高回転では通過流量の増加と共に吐出弁6のリフト量も大きくなり、プランジャ2が吐出行程から吸入行程に入って加圧室12の圧力が下がり始めてもすぐには吐出弁6が閉じず、吐出通路11側から加圧室内への燃料の逆流が顕著に現れる問題があった。結果、吐出流量が減少し、高回転ほど容積効率が低下する短所があった。
【0020】そこで、本発明の一実施例である吐出弁6は、図3に示すように、弁のリフトXと共に変化する開口面積A2が吐出弁の上流側(加圧室側)の通路面積A1に対して同等以下になるように弁の最大リフト量Xmax を規定したものである。このように最大リフト量を規制することにより、必要以上に弁がリフトして閉じ遅れにより逆流が発生するのを最大限抑制することができる。
【0021】以下、図4〜図6を用い、この効果を詳細に説明する。
【0022】図4は本発明の吐出弁の流路面積を示す図であり、開口面積A2は吐出弁リフト量Xに概ね比例して増えていくのに対し、吐出弁の上流側(加圧室側)の通路面積A1および吐出弁体外周−壁面間通路面積A3はリフト量に拘わらず一定である。燃料の通路面積は最も狭い部分で規定されるので、実効流路面積は太線のようになる。従ってXmax 以上のリフトは必要以上のリフトとなって、後述する吐出流量低下の要因となるため、本発明の高圧燃料ポンプはこの位置で最大リフト量を規制している。なお、A1およびA3は、通常、燃料の最大流量に対して十分な通路面積を確保するよう設定される。
【0023】図5は本発明の高圧燃料ポンプの動作を示す図であり、上から順にプランジャ2の変位、加圧室12の圧力、吸入弁5・吐出弁6の変位、吐出流量の時刻歴波形を示す。実線は吐出弁の最大リフト量をXmax の位置に小さく規制した場合(本発明)、点線は規制位置が大きい場合である。いずれも吐出行程から吸入行程に移ってもすぐには吐出弁が閉じず、このため吐出通路側から加圧室内への燃料の逆流が起こる。この逆流分だけポンプ外部への吐出流量が低下するが、吐出弁の最大リフト量を小さく規制して、必要以上に弁体がリフトするのを抑制することにより弁の移動距離が少なくなるので、弁の閉じ遅れを小さくして逆流を低減することができる。
【0024】図6は本発明の高圧燃料ポンプの平均吐出流量特性であり、この図に示すように吐出弁の最大リフト量を小さく規制することにより高回転時の効率低下を抑制し、低回転から高回転まで高い容積効率を確保することができる。
【0025】なお、上述した実施例中の吐出弁6は弁体をボール弁としていたが、図7に示す本発明の吐出弁の他の実施例の如く、ポペット弁としても全く同様に構成が可能である。
【0026】以上説明したように、本発明によれば、高圧燃料ポンプ101が低回転域から高回転域まで広い範囲に渡って高い容積効率を得ることができるので、高速走行中のエンジン全開状態においても高い圧力で十分な燃料を供給することが可能となり、このエンジンを搭載した車両の運動性能が向上する。また、回転数と吐出流量の関係が線形に近いものであるので、ポンプの可変吐出量制御が簡単になり、インジェクタ54が必要とする分の燃料のみを正確に計量してポンプから供給することが可能になるので、過剰な燃料を吐出することがなくなりエネルギー損失が減って燃費が向上する。同様の理由でコモンレール53内の燃料圧力を所望の値に正確に調圧することが可能なので、インジェクタとこれに繋がるエンジン71が要求する噴射量・粒径の燃料噴霧を精密に制御することができ、最適な燃焼状態を得て車両の運動性能と燃費を向上できる効果がある。
【0027】また、これらの効果を吐出弁の最大リフト量規制という簡単な構成のみによって実現しているので、何らコストは上昇せず、単筒プランジャ式ポンプの低コスト・小形の特長そのままに、エンジンや車両のコストも低減できる。
【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、簡単な構成により吐出弁の閉じ遅れを抑制し、逆流を低減することができる。その結果、高回転域まで高い容積効率を得ることができるようになる。また、効率が高いので小形軽量化も図れる高圧燃料ポンプを実現することができ、小形化によって車両への搭載性が向上する。その上、エンジンや車両の性能や燃費の向上も図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成11年10月20日(1999.10.20)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2001−115927(P2001−115927A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−297646