トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 インジェクタデポジットの評価方法及び評価装置
【発明者】 【氏名】武山 雅樹

【氏名】杉本 知士郎

【氏名】吉永 融

【氏名】斎藤 公孝

【氏名】小川 義英

【氏名】山添 博志

【要約】 【課題】インジェクタデポジットを横並び評価し且つ、その評価を短期間に行う。

【解決手段】インジェクタデポジットの評価手順として、先ずインジェクタ1から常温で放置した容器4内に、酸素雰囲気加圧装置5で酸化されたガソリンを噴射する。その後、NOx供給用配管11を介してNOxガスを容器4内に供給すると共に、パネルヒータ9をオンしてインジェクタ先端温度を上昇させる。このとき、酸化ガソリンとNOxガスとが反応して重合し、インジェクタデポジットが生成される。その後、容器4内の換気とインジェクタ1の常温冷却とを行い、インジェクタデポジットの物理的変形を再現する。インジェクタ1の常温冷却後、インジェクタ1によるガソリン噴射を再開する。すなわち、上記一連の行程を1サイクルとし、このサイクルを繰り返し実行する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ガソリン燃料を噴射するインジェクタについてその噴孔部に形成されるインジェクタデポジットを評価するための評価方法であり、インジェクタの噴孔部から密閉容器内にガソリンを噴射する行程と、ガソリンを酸化する行程と、前記密閉容器内に排ガス成分を導入する行程と、インジェクタの噴孔部を加熱する行程と、からなることを特徴とするインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項2】インジェクタによる噴射ガソリンとして、予め酸化したガソリンを使用する請求項1に記載のインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項3】排ガス成分としてNOxガス又はSOxガスを用い、同ガスを密閉容器内に導入する請求項1又は2に記載のインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項4】排ガス成分としてエンジン燃焼後の排出ガスを用い、同ガスを密閉容器内に導入する請求項1又は2に記載のインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項5】インジェクタ噴孔部の加熱の後、密閉容器内を換気し、インジェクタ噴孔部を常温冷却する請求項1〜4の何れかに記載のインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項6】請求項5に記載の評価方法において、ガソリン噴射、排ガス成分導入、加熱、換気及び冷却の一連の行程を1サイクルとし、そのサイクルを繰り返し実施するインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項7】ガソリン燃料をエンジン気筒内に直接噴射するためのインジェクタを評価対象とするインジェクタデポジットの評価方法であり、密閉容器内を排ガス成分雰囲気で高圧且つ高温の状態とし、その密閉容器内にインジェクタによるガソリン噴射を繰り返し行う請求項1〜4の何れかに記載のインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項8】インジェクタデポジットの生成にかかる環境要因、ガソリン燃料の成分要因、インジェクタ噴孔部の形状要因のうち、少なくとも一つの要因を変更し評価を行う請求項1〜7の何れかに記載のインジェクタデポジットの評価方法。
【請求項9】ガソリン燃料を噴射するインジェクタについてその噴孔部に形成されるインジェクタデポジットを評価するための評価装置であり、ガソリン燃料を酸化させる酸化装置と、インジェクタが固定され、そのインジェクタの先端からガソリンが噴射される密閉容器と、該密閉容器内に排ガス成分を導入する排ガス成分導入装置と、インジェクタの噴孔部を加熱する加熱装置と、を備えることを特徴とするインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項10】前記酸化装置は、インジェクタによる噴射ガソリンを、噴射前に予め酸化するものである請求項9に記載のインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項11】前記排ガス成分導入装置は、排ガス成分としてのNOxガス又はSOxガスを密閉容器内に導入する請求項9又は10に記載のインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項12】前記排ガス成分導入装置は、排ガス成分としてのエンジン燃焼後の排出ガスを密閉容器内に導入する請求項9又は10に記載のインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項13】前記加熱装置によるインジェクタ噴孔部の加熱の後、密閉容器内を換気すると共に、加熱装置による加熱を停止してインジェクタ噴孔部を常温冷却する請求項9〜12の何れかに記載のインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項14】ガソリン燃料をエンジン気筒内に直接噴射するためのインジェクタを評価対象とするインジェクタデポジットの評価装置であり、排ガス成分導入装置及び加熱装置の作動により密閉容器内を排ガス成分雰囲気で高圧且つ高温の状態とし、その密閉容器内にインジェクタによるガソリン噴射を繰り返し行う請求項9〜12の何れかに記載のインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項15】前記密閉容器に複数のインジェクタを並設した請求項9〜14の何れかに記載のインジェクタデポジットの評価装置。
【請求項16】請求項15に記載の評価装置において、密閉容器内には、隣り合うインジェクタの間を仕切るための仕切り板を設けたインジェクタデポジットの評価装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガソリン燃料を噴射するインジェクタについてその噴孔部に形成されるインジェクタデポジットを評価するための評価方法及び評価装置に係り、より具体的には、所定の環境下でインジェクタデポジットを生成し、更にインジェクタ個々の流量特性の違いを再現するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、インジェクタデポジットの評価手法は、エンジン単体或いは実車での評価が主流であり、デポジットができるまでに時間がかかるため、評価には1〜数ヶ月の時間を要していた。更に上記従来の評価手法では、実車やエンジンを運転し続けることが必要であり、費用もかかる。
【0003】また従来より、インジェクタデポジットの生成メカニズムとして、粗悪ガソリンのガムとブローバイガスやEGR装置で還流される排ガス中のすすがインジェクタに堆積することがデポジット生成の主たる原因と考えられており、実際に単体評価する場合もインジェクタ噴孔部をブローバイガスに晒したり、EGRガスに晒したりすることが主流であった。
【0004】近年、エミッション規制が厳しくなっていることから、インジェクタに対するデポジット評価の信頼性が高まりつつある。そこで、インジェクタ開発面よりインジェクタを同条件で横並び評価し、短期間に比較できるツールの要望が高まっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本来、インジェクタを横並び評価するには、インジェクタ以外のデポジット生成要因が同環境とならなければいけないが、実機で比較を行った場合には、燃焼状態や冷却状態の差から同環境になるとは言えない。
【0006】本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、インジェクタデポジットを横並び評価し且つ、その評価を短期間に行うことができるインジェクタデポジットの評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】ガソリン燃料を噴射するインジェクタでは、その噴孔部にインジェクタデポジットが生成され堆積するが、本発明者らはデポジット生成のメカニズムを以下の通り解析した。インジェクタデポジットの生成メカニズムを図6を参照して説明する。つまり、図6(a)のように、インジェクタから噴射されたガソリンは、インジェクタ噴孔部に付着し次第に酸化される。或いは、車両が長時間放置されるなどして燃料タンク内でガソリンが酸化した場合には、その酸化したガソリンがインジェクタから噴射されてインジェクタ噴孔部に付着する。その後、図6(b)のように、酸化したガソリンに排ガス成分であるNOxやSOx等の成分が付着し、更に加熱されると重合する。そして、図6(c)の通り、インジェクタによるガソリン噴射では洗い流せないデポジットが生成される。
【0008】請求項1に記載のインジェクタデポジットの評価方法では、上記解析したデポジット生成のメカニズムに基づいてデポジット評価を行うこととし、該評価方法は、・インジェクタの噴孔部から密閉容器内にガソリンを噴射する行程と、・ガソリンを酸化する行程と、・前記密閉容器内に排ガス成分を導入する行程と、・インジェクタの噴孔部を加熱する行程と、からなる。これにより、上記メカニズム(図6)に則したデポジット生成が再現できる。この場合、インジェクタ以外のデポジット生成要因を同環境に合わせることで、インジェクタの横並び評価が可能となる。また、ガソリンの酸化、排ガス成分の導入といった行程を行い、濃縮された酸化ガソリンや排ガス成分を主原料としてインジェクタデポジットが生成されるので、エンジンや実車を使った従来の評価手法に比べ、デポジット生成までの所要時間が短縮できる。それ故、短期間にデポジット評価を行い、ひいてはコスト節減を図ることができる。
【0009】請求項2に記載の発明では、インジェクタによる噴射ガソリンとして、予め酸化したガソリンを使用するので、インジェクタデポジットを効率的に生成することができる。
【0010】また、デポジット生成のより一層の効率化を図る上で、請求項3に記載したように、排ガス成分としてNOxガス又はSOxガスを用い、同ガスを密閉容器内に導入するのが望ましい。また、請求項4に記載したように、排ガス成分としてエンジン燃焼後の排出ガスを用い、同ガスを密閉容器内に導入してもよい。
【0011】請求項5に記載の発明では、インジェクタ噴孔部の加熱の後、密閉容器内を換気し、インジェクタ噴孔部を常温冷却するので、インジェクタデポジットの物理的変形が再現できる。つまり、ガソリン噴射後の密閉容器内を、エンジンの運転停止後における、いわゆるデッドソーク状態(高温状態)とし、その後のエンジン冷却期間でのデポジット生成を再現する。この場合、エンジン又は実車での評価手法とほぼ同等の過程でデポジット評価を行うことができる。
【0012】また、請求項6に記載したように、ガソリン噴射、排ガス成分導入、加熱、換気及び冷却の一連の行程を1サイクルとし、そのサイクルを繰り返し実施することで、実機搭載時における連続運転を想定しつつ、その運転分に相当するデポジット評価試験を実施することができる。
【0013】ところで、ガソリン燃料をエンジン気筒内に直接噴射する、いわゆる直噴式エンジンに採用されるインジェクタは、高圧状態のエンジン気筒内に対し高圧に維持されたガソリンを噴射する。この場合、デポジット生成の環境条件がポート噴射式エンジンとは異なる。つまり、ポート噴射式エンジンの場合、エンジンの運転停止後のデッドソーク状態で大部分のインジェクタデポジットが生成されるのに対し、直噴式エンジンの場合には、インジェクタ噴孔部が高温且つ高圧の状態で維持されるため、デッドソーク時よりもエンジン運転時の方がデポジット生成量が多い。
【0014】それ故、インジェクタデポジットの評価に際し、請求項7に記載したように、密閉容器内を排ガス成分雰囲気で高圧且つ高温の状態とし、その密閉容器内にインジェクタによるガソリン噴射を繰り返し行う。この場合、直噴式エンジンの筒内環境を密閉容器で再現しつつ、インジェクタデポジットが生成され、適正な評価を行うことができる。
【0015】請求項8に記載の発明では、インジェクタデポジットの生成にかかる環境要因、ガソリン燃料の成分要因、インジェクタ噴孔部の形状要因のうち、少なくとも一つの要因を変更し評価を行う。この場合、本発明ではインジェクタデポジット生成の各種要因が個々に且つ任意に変更可能であるため、実機評価と同等の環境を作り出せるのは勿論のこと、実機環境以上のデポジット生成環境(より一層デポジットが生成され易い環境)を作り、その環境下でのデポジット評価を行うことが可能となる。
【0016】一方、インジェクタデポジットの評価装置として、請求項9に記載の発明では、・ガソリン燃料を酸化させる酸化装置と、・インジェクタが固定され、そのインジェクタの先端からガソリンが噴射される密閉容器と、・該密閉容器内に排ガス成分を導入する排ガス成分導入装置と、・インジェクタの噴孔部を加熱する加熱装置と、を備える。これにより、上記メカニズム(図6)に則したデポジット生成が再現できる。この場合、上述した酸化装置、密閉容器、排ガス成分導入装置及び加熱装置により、インジェクタ以外のデポジット生成要因を同環境に合わせることで、インジェクタの横並び評価が可能となる。また、ガソリンの酸化、排ガス成分の導入により、濃縮された酸化ガソリンや排ガス成分を主原料としてインジェクタデポジットが生成されるので、エンジンや実車を使った従来の評価手法に比べ、デポジット生成までの所要時間が短縮できる。それ故、短期間にデポジット評価を行い、ひいてはコスト節減を図ることができる。
【0017】請求項10に記載の発明では、前記酸化装置は、インジェクタによる噴射ガソリンを、噴射前に予め酸化するので、インジェクタデポジットを効率的に生成することができる。
【0018】また、デポジット生成のより一層の効率化を図る上で、請求項11に記載したように、前記排ガス成分導入装置は、排ガス成分としてのNOxガス又はSOxガスを密閉容器内に導入するのが望ましい。また、請求項12に記載したように、排ガス成分としてのエンジン燃焼後の排出ガスを密閉容器内に導入してもよい。
【0019】請求項13に記載の発明では、前記加熱装置によるインジェクタ噴孔部の加熱の後、密閉容器内を換気すると共に、加熱装置による加熱を停止してインジェクタ噴孔部を常温冷却するので、デポジットの物理的変形が再現できる。この場合、エンジン又は実車での評価手法とほぼ同等の過程でデポジット評価を行うことができる。
【0020】更に、直噴式エンジンに採用されるインジェクタの場合、請求項14に記載したように、排ガス成分導入装置及び加熱装置の作動により密閉容器内を排ガス成分雰囲気で高圧且つ高温の状態とし、その密閉容器内にインジェクタによるガソリン噴射を繰り返し行う。この場合、直噴式エンジンの筒内環境を密閉容器で再現しつつインジェクタデポジットを生成させることで、適正な評価を行うことができる。
【0021】請求項15に記載の発明では、前記密閉容器に複数のインジェクタを並設したので、複数のインジェクタについて同時にインジェクタデポジットの評価を行うことができる。またこの場合、請求項16に記載したように、密閉容器内には、隣り合うインジェクタの間を仕切るための仕切り板を設けることで、インジェクタの噴孔部に他のインジェクタによる噴射ガソリンが付着する、或いは他のインジェクタの噴射ガソリンにより噴孔部が洗浄されるといったことがなくなる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体化した実施の形態を図面に従って説明する。
(第1の実施の形態)本実施の形態では、自動車用エンジンの吸気ポートにガソリン燃料を噴射供給する電磁駆動式のインジェクタを評価対象とし、そのインジェクタの噴孔部に生成されるインジェクタデポジットを評価するための装置及び方法を詳細に説明する。
【0023】図1は、デポジット評価装置の概要を示す構成図である。図1において、インジェクタ1は固定用ステー2に固定されており、インジェクタ先端部は固定用ステー2に設けられた孔部3に挿入されている。固定用ステー2は、有底箱形の容器4を密閉状態で蓋するようにして該容器4上に配設されている。本実施の形態では、固定用ステー2と容器4とにより密閉容器が構成される。
【0024】ここで、インジェクタ1の構成を図2を用いて簡単に説明する。インジェクタ先端部に設けられたバルブボディ21には、軸方向に延びる摺動孔22が形成され、その摺動孔22内にニードル弁23が摺動可能に収容されている。バルブボディ21の図の下端面には噴孔プレート24が配設されている。噴孔プレート24には複数の噴射孔24aが形成されており、この噴射孔24aから略円錐状の燃料噴霧が噴出される。また、噴孔プレート24には、インジェクタ先端温度を計測するための熱電対25が設けられている。
【0025】ケーシング26内に収容された電磁アクチュエータ27は、大別してコア(アーマチュア)28、ステータ29及びコイル30から構成されている。コア28は、ニードル弁23に一体移動可能に連結され、リターンスプリング31によって常にニードル弁23の閉弁側(図2の下側)に付勢されている。筒状の磁性体からなるステータ29は、コア28と同軸上に配設され、ケーシング26の端部によりカシメ固定されている。ステータ29内には円管状の筒体32が配設されている。筒体32の上流部には燃料流入口33が形成され、同流入口33にはフィルタ34が配設されている。
【0026】そして、信号入力端子35の入力信号に基づき、コイル30が通電されると、リターンスプリング31の付勢力に抗してニードル弁23が開弁位置に移動し、燃料流入口33、フィルタ34、筒体32、コア28、摺動孔22を経由して導かれた燃料が噴孔プレート24の噴射孔24aから噴射される。
【0027】図1の説明に戻る。インジェクタ1へのガソリン供給系としては、酸素雰囲気加圧装置5と燃料フィードポンプ6とが設けられている。酸素雰囲気加圧装置5は、内部に貯留したガソリン燃料を酸化させるための装置であり、酸素ボンベ7からの酸素供給を受けてガソリンを酸化させる。このとき、加圧状態でガソリンを酸化させることで、ガソリン中のオレフィンやアロマティックといった成分の酸化が促進される。
【0028】また、燃料フィードポンプ6は、酸素雰囲気加圧装置5から供給される100%酸素雰囲気の酸化ガソリンをエアで加圧し、その酸化ガソリンをインジェクタ1に供給する。このとき、インジェクタ駆動回路8からの制御信号を受けてインジェクタ1がオンすると、酸化ガソリンがインジェクタ1の先端部(図2の噴孔プレート24)から容器4内に噴射される。
【0029】容器4は、底部全体がパネルヒータ9の上に設置されており、ヒータ制御回路10によりパネルヒータ9がオンされることで、容器4内のガスが加熱される。より具体的には、ヒータ制御回路10は、インジェクタ先端部に設けられた熱電対25(図2参照)によりインジェクタ先端温度を計測し、その計測温度に応じてパネルヒータ9をオン又はオフする。
【0030】容器4には、NOx供給用配管11を介してNOxボンベ12が接続されており、容器4内にはNOxボンベ12より所定濃度のNOxガスが供給される。NOx供給用配管11には、容器4とNOxボンベ12との間を連通又は遮断するための開閉弁13が設けられている。また、容器4には、エア配管14より容器内換気用のパージエアが供給されるようになっており、このエア配管14には開閉弁15が設けられている。
【0031】容器4内に溜まったガソリンは、ガソリン回収用配管16を介して排出ガソリン処理装置17に回収される。排出ガソリン処理装置17について図示は省略するが、同処理装置17は、排出ガソリンからNOxを分離させ清浄化を行う周知のサイクロン式セパレータと、該セパレータで排出ガソリンから分離されたNOxガスをアルカリ溶液で中和させるNOx中和装置とからなる。ガソリン回収用配管16には、容器4と排出ガソリン処理装置17との間を連通又は遮断するための開閉弁18が設けられている。
【0032】NOx供給用配管11、エア配管14及びガソリン回収用配管16に各々設けられた開閉弁13,15,18は、バルブ制御回路19により開閉制御される。但し、開閉弁13,15,18を手動操作により開放又は閉鎖するようにしてもよい。また、同バルブ制御回路19は、開閉弁13,15,18の開放又は閉鎖の時期に合わせて、ヒータ制御回路10に対してヒータオン又はオフの信号を出力する。
【0033】次に、インジェクタデポジットの評価手順を図3のタイムチャートを参照しながら説明する。図3のタイムチャートは、インジェクタ1の駆動、NOx供給用配管11の開閉、ガソリン回収用配管16の開閉、エア配管14の開閉、パネルヒータ9のオン/オフ、インジェクタ先端温度についてそれぞれの動作並びに推移を示す。また、図3では、t1〜t2の期間がガソリン噴射行程を示し、t2〜t3の期間がインジェクタ先端部の加熱行程を示し、t3〜t4の期間が換気・冷却行程を示す。以下、詳細に説明する。
【0034】先ず図のt1以前には、酸素雰囲気加圧装置5で酸化されたガソリンを燃料フィードポンプ6に給送し、インジェクタ1によるガソリン噴射開始の準備を整える。
【0035】t1〜t2の期間では、酸化されたガソリンを燃料フィードポンプ6でエア加圧し、そのガソリンをインジェクタ1に供給する。そして、インジェクタ1のコイル通電に伴い、常温で放置した容器4内に酸化ガソリンを噴射させる。このとき、NOx供給用配管11、ガソリン回収用配管16及びエア配管14は何れも閉鎖の状態にあり、パネルヒータ9はオフしている。そして、次行程の準備を行った後、t2に至る。
【0036】t1〜t2期間の行程では、車両走行時におけるエンジン運転期間が再現され、インジェクタ1のガソリン噴射により、インジェクタ噴孔部へのガソリン供給と、インジェクタデポジットの洗浄とが同時に行われる。
【0037】t2以降、開閉弁13,18を開放してNOx供給用配管11及びガソリン回収用配管16を連通すると共に、パネルヒータ9をオンする。これにより、NOx供給用配管11を介してNOxガスが容器4内に供給される。また、容器4の底部に残留するガソリンがガソリン回収用配管16を介して排除される。容器4内の温度はパネルヒータ9の加熱動作により上昇し、それに伴いインジェクタ先端温度が上昇する。その後、インジェクタ先端温度が所定の目標温度に達すると、インジェクタ先端温度が目標温度で保持されるよう、熱電対25の計測結果に基づきパネルヒータ9への通電をオン/オフする。
【0038】t2〜t3の期間では、車両走行後のデッドソーク状態(高温状態)が再現され、酸化ガソリンとNOxガスとが反応して重合する。これにより、インジェクタデポジットが硬化する。なお、t2〜t3でのインジェクタ先端部の目標温度は、インジェクタ1が装着されるエンジンと同環境の温度であるのが望ましく、デッドソーク時のエンジン冷却水の温度に合わせた温度とする。
【0039】その後、t3〜t4の期間では、開閉弁13,18を閉鎖してNOx供給用配管11及びガソリン回収用配管16を遮断すると共に、開閉弁15を開放してエア配管14を連通する。これにより、容器4内の換気と、インジェクタ噴孔部の常温冷却とが行われる。このt3〜t4の期間では、インジェクタデポジットの物理的変形が再現される。
【0040】インジェクタ1の常温冷却後(t4以後)、インジェクタ1によるガソリン噴射を再開する。すなわち、t1〜t4での一連の行程を1サイクルとし、このサイクルを繰り返し実行する。
【0041】図4は、本評価装置で生成したインジェクタデポジットと、市場流通しているエンジンのインジェクタデポジットとについて、赤外吸光分析法により成分分析した結果を示す。なお、図中、実線は本装置の試験結果を示し、点線は比較対象としての市場品の試験結果を示す。
【0042】図4によれば、両者の試験結果に関し、インジェクタデポジットの主成分である、OH、C−H、C−O、ニトロ基(−NO2 )、硝酸塩(−NO3 )のピークがほぼ一致し、各サンプルの成分が一致することが分かる。つまり、本評価装置により、実機でのインジェクタデポジットが再現できることが確認できる。
【0043】以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。ガソリンの酸化、NOxガス(排ガス成分)の導入といった行程を行い、濃縮された酸化ガソリンやNOxガスを主原料としてインジェクタデポジットが生成されるので、エンジンや実車を使った従来の評価手法に比べ、デポジット生成までの所要時間が短縮できる。それ故、短期間にデポジット評価を行い、ひいてはコスト節減を図ることができる。特にこの場合、インジェクタ1による噴射ガソリンとして、予め酸化したガソリンを使用し且つ、排ガス成分としてNOxガスを用いるので、インジェクタデポジットを効率的に生成することができる。
【0044】因みに、例えば、実車走行を想定したインジェクタデポジット評価において、従来の評価手法と比べて本実施の形態の評価手法では所要時間を約1/20程度にまで短縮できる。
【0045】インジェクタ以外のデポジット生成要因を同環境に合わせることで、インジェクタの横並び評価が可能となる。この場合、実車やエンジンの評価試験では困難であったインジェクタデポジットにかかる因子の影響度をそれぞれ分離測定することができる。つまり、上記評価手法によれば、インジェクタデポジット生成の各種要因が個々に且つ任意に変更可能であり、インジェクタデポジット生成にかかる環境要因、ガソリン燃料の成分要因、インジェクタ噴孔部の形状要因のうち、少なくとも一つの要因を変更し評価を行うことで、実機評価と同等の環境を作り出せるのは勿論のこと、実機環境以上のデポジット生成環境(より一層デポジットが生成され易い環境)を作り、その環境下でのデポジット評価を行うことが可能となる。
【0046】ここでより具体的には、インジェクタデポジット生成にかかる環境要因としては、燃料フィード圧(噴射速度)、インジェクタ噴孔部のNOx濃度、インジェクタ先端温度等を含み、ガソリン燃料の成分要因としては、ガソリン組成、ガソリン添加剤、ガソリン温度等を含み、インジェクタ噴孔部の形状要因としては、噴孔部の形状、噴孔部の表面状態(粗さ、表面処理)等を含む。そして、これら各要因のうち、少なくとも一要因を変更することで、その要因に対するインジェクタデポジットの影響度を測り知ることができる。
【0047】なお例えば、通常の実車状態(エンジン環境)よりもNOx濃度を濃くすること、或いは通常の実車状態よりもガソリンの酸化度合を増やすことで、インジェクタデポジットの量が増加する。また、市販ガソリン(レギュラーガソリン)の代わりに、オレフィン、アロマティックを多量に含む燃料を用いることで、インジェクタデポジットの量が増加する。このように、各種要因を変更することにより、インジェクタデポジット成分を再現したまま、デポジット評価のより一層の時間短縮が可能となる。
【0048】本評価装置では、インジェクタ個々の流量特性の違いが適正に再現できる。かかる場合、インジェクタ開発段階での横並び評価が可能となる。また、エンジンへのインジェクタ組み付け以前にインジェクタの横並び評価が可能となるため、評価試験の作業性を大いに向上させることができる。
【0049】(第2の実施の形態)第2の実施の形態では、筒内直噴式エンジンに採用されるインジェクタについて、その噴孔部に形成されるインジェクタデポジットの評価手法を説明する。以下、第1の実施の形態との相異点を中心に説明する。
【0050】図5は、本実施の形態におけるインジェクタデポジットの評価装置を示す構成図である。図5において、密閉容器41には、複数個(図では3個)のインジェクタ42が固定され、そのインジェクタ先端部が密閉容器41内に突出している。隣り合うインジェクタ42の間には、仕切り板43が設けられている。この仕切り板43は、インジェクタ噴孔部に他のインジェクタによる噴射ガソリンが付着する、或いは他のインジェクタの噴射ガソリンにより噴孔部が洗浄されるといった不都合を解消する役割を持つ。
【0051】密閉容器41には、NOx供給用配管44を介してNOxボンベ45が接続されており、密閉容器41内にはNOxボンベ45より所定濃度のNOxガスが供給される。なお、NOx供給用配管44には、密閉容器41とNOxボンベ45との間を連通又は遮断するための開閉弁が設けられるが、ここではその図示を省略している。この場合、密閉容器41でエンジン気筒を再現するべく、NOxガスの供給により密閉容器41内が例えば0.8MPa程度に加圧される。
【0052】また、加圧状態の密閉容器41内にガソリン噴射を行うべく、インジェクタ42には燃料タンク46から例えば12MPa程度の高圧ガソリンが供給される。この燃料タンク46に貯留されるガソリンは、第1の実施の形態と同様、酸素雰囲気で酸化されたガソリンである。密閉容器41の底部には、密閉容器41内を加熱するためのパネルヒータ47が設けられ、このパネルヒータ47は図示しないヒータ制御回路にてオン/オフ制御される(図1と同様)。密閉容器41内の残留ガソリンの回収も前記図1と同様の装置で行われる。
【0053】次に、インジェクタデポジットの評価手順を説明する。インジェクタ42によるガソリン噴射に際し、NOxボンベ45からのNOxガス供給並びにパネルヒータ47のオン動作により密閉容器41内を高圧且つ高温の状態とし、その密閉容器41内にインジェクタ42により、図示しない酸素雰囲気加圧装置で酸化された酸化ガソリンを繰り返し噴射する。
【0054】このガソリン噴射により直噴式エンジンの運転が再現され、インジェクタ噴孔部にデポジットが生成される。こうした直噴式エンジンの場合、デポジット生成の環境条件がポート噴射式エンジンとは異なり、エンジン運転時にインジェクタ噴孔部が高温且つ高圧の状態で維持されるため、デポジット生成が速く、デッドソーク時よりもエンジン運転時の方がデポジット生成量が断然多い。それ故、換気・冷却といった行程(デッドソークを想定した行程)が必要なく、上記ガソリン噴射の行程だけで所望とするインジェクタデポジットが生成される。なお、インジェクタデポジット生成のための所要時間は3時間程度である。
【0055】以上第2の実施の形態によれば、直噴式エンジンの筒内環境を密閉容器41で再現しつつインジェクタデポジットを生成させることで、第1の実施の形態と同様にインジェクタデポジットを適正に評価することができる。また、直噴式エンジンでは、換気・冷却の行程が省略できるため、第1の実施の形態(ポート噴射式エンジン)と比べて大幅な時間短縮が実現できる。
【0056】密閉容器41に複数のインジェクタ42を並設したので、複数のインジェクタ42について同時にインジェクタデポジットの評価を行うことができる。更に、密閉容器41内には仕切り板43を設けたので、インジェクタ噴孔部に他のインジェクタによる噴射ガソリンが付着する、或いは他のインジェクタの噴射ガソリンにより噴孔部が洗浄されるといった不都合が解消される。
【0057】なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。上記実施の形態では、酸素雰囲気加圧装置でガソリンを予め酸化しておき、その酸化したガソリンをインジェクタから噴射したが、本発明はこれに限らず、インジェクタによるガソリン噴射後にガソリン酸化行程を設けてもよい。より具体的には、密閉容器内に酸素ボンベから酸素を供給できる構成を付加する。
【0058】上記第1の実施の形態では、ガソリン噴射後にNOxガス供給を行ったが、この順序を逆にしてもよい。つまり、密閉容器内をNOxガス雰囲気とし、その状態でガソリン噴射を行うこととしてもよい。
【0059】上記各実施の形態では、排ガス成分としてNOxガスを用い、このNOxガスを密閉容器内に供給したが、このNOxガスの代わりに、NOガス、NO2 ガス、SOxガス(SO2 )を用いてもよい。また、エンジン燃焼後の排出ガスそのものを供給してもよい。但し、エンジン排出ガスを用いる場合、NOxガスやSOxガスといった濃縮成分を用いる場合に比べて評価の所要時間が増える。
【0060】第1の実施の形態の評価装置において、第2の実施の形態の如く、複数のインジェクタを密閉容器に併設する構成としてもよい。但しこの場合、各インジェクタにおけるデポジット評価のサイクルを合致させ、各インジェクタ同時に、ガソリン噴射行程、排ガス成分導入行程、加熱行程、換気・冷却行程を行わせることとする。
【0061】上記各実施の形態では、パネルヒータを使ってインジェクタ先端部を昇温させたが、NOx供給用配管にヒータを付設し、この配管を通じて、密閉容器内に供給されるNOxガスを直接加熱する構成としてもよい。また、上記実施の形態では、NOx供給用配管11及びエア配管14に設けた開閉弁13,15を各々二方弁で構成したが、これを三方弁に変更してもよい。
【出願人】 【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成11年8月25日(1999.8.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−65432(P2001−65432A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−238720