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【発明の名称】 燃料噴射装置
【発明者】 【氏名】葛山 裕史

【氏名】豊山 文博

【要約】 【課題】単一の電磁ソレノイドを用いて所望の噴射量プロフィールを的確に得られる燃料噴射装置を提供する。

【解決手段】電磁ソレノイド13の消磁状態では、増圧手段19の加圧室231は、加圧通路33、切り換え弁14内の絞り通路141及び放圧通路31を介して放圧部32に連通しており、圧力制御手段44の制御圧室361と放圧部32との連通が噴射用バルブ16によって遮断されている。電磁ソレノイド13の励磁状態では、加圧室231は、加圧通路33、環状通路151及び加圧通路34を介して作動流体供給部26に連通しており、制御圧室361は放圧部32に連通している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】燃料を噴射させる噴射位置と燃料を噴射させない非噴射位置とに切り換え配置される噴射弁と、前記噴射弁に作動流体の圧力を作用させるための制御圧室を有し、前記噴射弁に対する前記制御圧室内の作動流体の圧力を制御して前記噴射弁を切り換え制御する噴射用圧力制御手段と、燃料を加圧するための加圧室及び燃料導入用の増圧室を有し、前記作動流体の圧力を前記加圧室に導入して前記増圧室内の燃料の圧力を増圧する増圧手段と、単一の電磁ソレノイドと、前記電磁ソレノイドの励消磁作用によって、前記噴射用圧力制御手段の制御圧室を放圧部に連通した燃料噴射可能な放圧状態と、放圧部に連通しない燃料噴射不能な非放圧状態とに切り換えられる噴射用切り換え手段と、前記電磁ソレノイドの励消磁作用によって、前記増圧手段の加圧室を作動流体供給部に連通して前記増圧手段を燃料増圧状態とする加圧状態と、前記増圧手段の加圧室を放圧部に連通して前記増圧手段を燃料非増圧状態とする非加圧状態とに切り換えられる増圧用切り換え手段と、前記電磁ソレノイドの励消磁の切り換えに伴う前記増圧手段の燃料増圧状態から燃料非増圧状態への移行を遅らせて前記増圧室内の燃料の圧力低下を遅らせる降圧遅延手段とを備えた燃料噴射装置。
【請求項2】前記噴射用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの消磁状態では非放圧状態にあり、前記噴射用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの励磁状態では放圧状態にあり、前記増圧用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの消磁状態では非加圧状態にあり、前記増圧用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの励磁状態では加圧状態にある請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】前記増圧手段は、前記増圧室の容積を増減可能に変位する増圧用変位体と、前記増圧室の容積を減少させるように前記増圧用変位体に作動流体を作用させる前記加圧室と、前記増圧室の容積を増大させる方向に前記増圧用変位体を付勢する容積復帰用付勢手段とを備え、前記増圧用切り換え手段は、前記増圧手段の加圧室を放圧部に連通したときの前記放圧部と前記加圧室とを繋ぐ通路の通過断面積を絞る絞り手段を備えている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】前記噴射用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの励消磁の切り換えによって、前記圧力制御手段の制御圧室に通じる作動流体の制御通路を放圧部に連通する放圧位置と放圧部に連通しない非放圧位置とに切り換えられる噴射用バルブと、前記非放圧位置へ前記噴射用バルブを付勢する噴射用ばねとを備え、前記増圧用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの前記励消磁の切り換えによって、前記増圧手段の加圧室に通じる作動流体の加圧通路を作動流体供給部に連通する加圧位置と放圧部に連通する非加圧位置とに切り換えられる増圧用バルブと、前記加圧位置へ前記増圧用バルブを付勢する増圧用ばねとを備え、前記絞り手段は、前記増圧用バルブに設けられた絞り通路である請求項3に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】前記容積復帰用付勢手段は、前記増圧用変位体に作動流体の圧力を作用させる容積復帰用作用室であり、前記噴射用切り換え手段は、前記放圧状態のときに前記放圧部と前記容積復帰用作用室とを連通し、前記非放圧状態のときに前記作動流体供給部と前記容積復帰用作用室とを連通する請求項3に記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燃料の高圧噴射を容易に行なうために装置内で増圧を行わせる燃料噴射装置は、例えば特開平10−103185号公報、特開平10−110658号公報に開示されている。
【0003】特開平10−103185号公報の従来装置では、増圧用の電磁ソレノイドの励磁状態では作動流体が増圧用ピストンを押し、増圧室内の燃料が増圧用ピストンの押圧作用によって増圧される。燃料噴射用の電磁ソレノイドの消磁状態では、ニードル弁を押さえ付けるピストンが圧力室に流入した燃料の圧力を受けており、ニードル弁は燃料を噴射しない位置に押さえ付け配置されている。燃料噴射用の電磁ソレノイドの励磁状態では、前記圧力室から燃料が流出し、ニードル弁は燃料を噴射する位置に配置される。
【0004】このような一対の電磁ソレノイドを使用する燃料噴射装置は、コスト高となる上に装置が大きくなるという欠点を持つ。特開平10−110658号公報の従来装置では、作動流体入口が作動流体キャビティに対して開く第1位置と、作動流体入口が作動流体キャビティに対して閉じる第2位置との間を動く第1バルブ部材が、単一の電磁ソレノイドの作用のもとに前記2位置の間で切り換え配置されるようになっている。又、ニードル制御チャンバーが高圧流体源に対して開かれるオフ位置と、ニードル制御チャンバーが低圧流体流路に対して開かれるオン位置との間を動く第2バルブ部材が、前記電磁ソレノイドの作用のもとに前記2位置の間で切り換え配置されるようになっている。この従来装置では、前記単一の電磁ソレノイドへの電流を高い引き込み電流と中程度の保持電流とに切り換え制御して噴射量プロフィールを変えることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】単一の電磁ソレノイドを用いる特開平10−110658号公報の従来装置では、特開平10−103185号公報の従来装置における問題は生じない。しかし、第2バルブ部材は電磁ソレノイドの直接の作用のもとに動くが、第1バルブ部材は第2バルブ部材の動きに伴う圧力バランスの変動に応じて動く。第2バルブ部材の動作に応じて第1バルブ部材を動作させる構成は複雑であって作動の確実性に欠け、所望の噴射量プロフィールを得ることは難しい。
【0006】本発明は、単一の電磁ソレノイドを用いて所望の噴射量プロフィールを的確に得られる燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】そのために請求項1の発明では、燃料を噴射させる噴射位置と燃料を噴射させない非噴射位置とに切り換え配置される噴射弁と、前記噴射弁に作動流体の圧力を作用させるための制御圧室を有し、前記噴射弁に対する前記制御圧室内の作動流体の圧力を制御して前記噴射弁を切り換え制御する噴射用圧力制御手段と、燃料を加圧するための加圧室及び燃料導入用の増圧室を有し、前記作動流体の圧力を前記加圧室に導入して前記増圧室内の燃料の圧力を増圧する増圧手段と、単一の電磁ソレノイドと、前記電磁ソレノイドの励消磁作用によって、前記噴射用圧力制御手段の制御圧室を放圧部に連通した燃料噴射可能な放圧状態と、放圧部に連通しない燃料噴射不能な非放圧状態とに切り換えられる噴射用切り換え手段と、前記電磁ソレノイドの励消磁作用によって、前記増圧手段の加圧室を作動流体供給部に連通して前記増圧手段を燃料増圧状態とする加圧状態と、前記増圧手段の加圧室を放圧部に連通して前記増圧手段を燃料非増圧状態とする非加圧状態とに切り換えられる増圧用切り換え手段と、前記電磁ソレノイドの励消磁の切り換えに伴う前記増圧手段の燃料増圧状態から燃料非増圧状態への移行を遅らせて前記増圧室内の燃料の圧力低下を遅らせる降圧遅延手段とを備えた燃料噴射装置を構成した。
【0008】増圧用切り換え手段を加圧状態にすると増圧手段が増圧状態となり、増圧室内の燃料が増圧される。噴射用切り換え手段を放圧状態にすると噴射用圧力制御手段が燃料噴射可能な制御状態となり、噴射弁が噴射位置に配置される。従って、増圧された燃料が噴射される。噴射用切り換え手段を放圧状態から非放圧状態へ切り換えた場合、増圧手段が燃料増圧状態から燃料非増圧状態へ移行しようとするが、降圧遅延手段が燃料増圧状態から燃料非増圧状態への移行を遅らせる。この移行の遅延は、燃料を高圧に保圧することになる。このような燃料の高圧の保圧は、単一の電磁ソレノイドの励消磁によって所望の噴射量プロフィールを的確に得ることを可能にする。
【0009】請求項2の発明では、請求項1において、前記噴射用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの消磁状態では非放圧状態にあり、前記噴射用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの励磁状態では放圧状態にあり、前記増圧用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの消磁状態では非加圧状態にあり、前記増圧用切り換え手段は、前記電磁ソレノイドの励磁状態では加圧状態にあるようにした。
【0010】電磁ソレノイドが消磁状態にある場合には、増圧用切り換え手段は加圧状態にあり、増圧手段が増圧状態となっている。電磁ソレノイドを励磁状態から消磁状態へ、さらに消磁状態から励磁状態へ素早く切り換えると、降圧遅延手段の降圧遅延作用によって増圧手段が燃料増圧状態に実質的に保持されることになる。
【0011】請求項3の発明では、請求項1及び請求項2のいずれか1項において、前記増圧室の容積を増減可能に変位する増圧用変位体と、前記増圧室の容積を減少させるように前記増圧用変位体に作動流体を作用させる前記加圧室と、前記増圧室の容積を増大させる方向に前記増圧用変位体を付勢する容積復帰用付勢手段とを備えた前記増圧手段を構成し、前記増圧手段の加圧室を放圧部に連通したときの前記放圧部と前記加圧室とを繋ぐ通路の通過断面積を絞る絞り手段を備えた前記増圧用切り換え手段を構成した。
【0012】増圧用切り換え手段を加圧状態にすると、増圧用変位体が加圧室内の作動流体の圧力によって増圧室の容積を減らす方向に付勢され、増圧室内の燃料が増圧される。噴射用切り換え手段を放圧状態にすると噴射用圧力制御手段が燃料噴射可能な制御状態となり、噴射弁が噴射位置に配置される。従って、増圧された燃料が噴射される。噴射用切り換え手段を放圧状態から非放圧状態へ、さらに非放圧状態から放圧状態へ素早く切り換えると、絞り手段の絞り作用によって増圧手段が燃料増圧状態に実質的に保持されることになる。
【0013】請求項4の発明では、請求項3において、前記電磁ソレノイドの励消磁の切り換えによって、前記圧力制御手段の制御圧室に通じる作動流体の制御通路を放圧部に連通する放圧位置と放圧部に連通しない非放圧位置とに切り換えられる噴射用バルブと、前記非放圧位置へ前記噴射用バルブを付勢する噴射用ばねとを備えた前記噴射用切り換え手段を構成し、前記電磁ソレノイドの前記励消磁の切り換えによって、前記増圧手段の加圧室に通じる作動流体の加圧通路を作動流体供給部に連通する加圧位置と放圧部に連通する非加圧位置とに切り換えられる増圧用バルブと、前記加圧位置へ前記増圧用バルブを付勢する増圧用ばねとを備えた前記増圧用切り換え手段を構成し、前記増圧用バルブに設けられた絞り通路を前記絞り手段とした。
【0014】電磁ソレノイドの励消磁の切り換えによって増圧用バルブが非加圧位置から加圧位置へ移行すると、増圧手段の加圧室が作動流体供給部に連通し、燃料の増圧が行われる。電磁ソレノイドの前記励消磁の切り換えによって噴射用バルブが非放圧位置から放圧位置へ移行すると、圧力制御手段の制御圧室が放圧部に連通し、増圧された燃料の噴射が行われる。噴射用バルブを放圧位置から非放圧位置へ、さらに非放圧位置から放圧位置へ素早く切り換えると、絞り通路の絞り作用によって増圧手段が燃料増圧状態に実質的に保持される。
【0015】請求項5の発明では、請求項3において、前記増圧用変位体に作動流体の圧力を作用させる容積復帰用作用室を前記容積復帰用付勢手段とし、前記噴射用切り換え手段は、前記放圧状態のときに前記放圧部と前記容積復帰用作用室とを連通し、前記非放圧状態のときに前記作動流体供給部と前記容積復帰用作用室とを連通するようにした。
【0016】電磁ソレノイドの励消磁の切り換えによって噴射用バルブが放圧位置から非放圧位置へ移行すると、容積復帰用作用室が作動流体供給部に連通し、増圧用変位体が増圧室の容積を増大し、かつ加圧室の容積を減少する方向へ移動しようとする。噴射用バルブを放圧位置から非放圧位置へ、さらに非放圧位置から放圧位置へ素早く切り換えると、絞り手段の絞り作用によって増圧手段が燃料増圧状態に実質的に保持される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、ディーゼルエンジンに用いる燃料噴射装置に本発明を具体化した第1の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0018】図1に示すように、上部ハウジング11には弁案内体12及び電磁ソレノイド13が収容されている。弁案内体12内には切り換え弁14がスライド可能に収容されている。切り換え弁14は、スプール弁型の増圧用バルブ15と、噴射用バルブ16と、電磁ソレノイド13の励磁によって吸引力を受ける被吸引体17とからなる。被吸引体17と電磁ソレノイド13の固定鉄芯131との間には復帰ばね18が介在されている。復帰ばね18は、切り換え弁14を電磁ソレノイド13から離間する方向へ付勢する。電磁ソレノイド13の消磁状態では切り換え弁14は図1に示す非噴射位置にあり、電磁ソレノイド13の励磁状態では切り換え弁14は図2に示す噴射位置に配置される。
【0019】上部ハウジング11には増圧ピストン20がスライド可能に収容されている。増圧ピストン20には被ガイドロッド201及び増圧プランジャ202が一体形成されている。上部ハウジング11に結合された下部ハウジング21には増圧室形成体22が上部ハウジング11の下端に接合するように収容されている。増圧室形成体22には増圧室221が形成されており、増圧室221には増圧ピストン20の増圧プランジャ202がスライド可能に嵌入されている。
【0020】増圧ピストン20を収容する収容室23は、増圧ピストン20によって加圧室231と容積復帰用作用室232とに区画されている。被ガイドロッド201をスライド可能に収容するガイド孔24は、供給通路25を経由して作動流体供給部26に連通している。ガイド孔24と加圧室231とはバイパス通路27を介して接続している。バイパス通路27は、ガイド孔24の側面に接続している。容積復帰用作用室232は、第1の制御通路29を経由して噴射用バルブ16を収容する弁収容室28に連通している。
【0021】加圧室231は、加圧通路33を経由して増圧用バルブ15を収容する収容孔30に連通している。増圧用バルブ15の収容孔30内における周面には環状通路151が形成されている。環状通路151は加圧通路33に連通している。収容孔30は加圧通路34を介して作動流体供給部26に接続している。加圧通路34は、切り換え弁14が非噴射位置にあるときには環状通路151に連通しないが、切り換え弁14が噴射位置にあるときには環状通路151に連通する。
【0022】弁案内体12には弁孔121が形成されており、上部ハウジング11には弁孔111が弁孔121に対向して形成されている。弁孔121は第1の制御通路29に接続しており、弁孔111は放圧通路31を経由して放圧部32に連通している。弁孔121,111は噴射用バルブ16によって開閉される。噴射用バルブ16は、切り換え弁14が非噴射位置にあるときには弁孔121を開くと共に、弁孔111を閉じ、切り換え弁14が噴射位置にあるときには弁孔121を閉じると共に、弁孔111を開く。
【0023】切り換え弁14内には絞り通路141が形成されている。絞り通路141は、環状通路151と放圧通路31とを繋いでいる。下部ハウジング21には増圧室形成体35、圧力制御手段収容体36,37及び弁収容体38が嵌入収容されている。増圧室221は、増圧室形成体35内の増圧室351に連通している。増圧室221,351は燃料供給通路41を経由して燃料供給部42に連通している。燃料供給部42から供給される燃料の供給圧は数気圧程度である。増圧室351より上流の燃料供給通路41上には逆止弁43が介在されている。
【0024】圧力制御手段収容体36,37に収容されている圧力制御手段44は、押し付けピストン45と、押し付けピストン45に止着された押し付けロッド46と、押し付けピストン45及び押し付けロッド46を弁収容体38側に付勢する押し付けばね47と、圧力制御手段収容体36に形成された制御圧室361とからなる。押し付けピストン45は制御圧室361内にスライド可能に嵌入されており、押し付けピストン45は制御圧室361内の圧力を受ける。制御圧室361は第2の制御通路48を経由して弁収容室28に連通している。制御圧室361の最大容積は、容積復帰用作用室232の最大容積よりもかなり小さくしてある。
【0025】弁収容体38には噴射弁49が収容されている。噴射弁49は、弁収容体38に形成された噴射口381を開閉する。噴射弁49は、大径部491と小径部492と段差部493とからなる。大径部491の端面には押し付けロッド46が押し付けばね47のばね力によって押接されている。段差部493は燃料充填室382に露出しており、段差部493には燃料充填室382内の圧力が常時作用している。段差部493に作用する圧力は、押し付けばね47のばね力に対抗する方向へ噴射弁49を付勢する。燃料充填室382は燃料供給通路41、増圧室351及び燃料供給通路41を経由して燃料供給部42に接続している。
【0026】電磁ソレノイド13はコントローラ10の励消磁制御を受ける。コントローラ10は、図示しない検出手段によって得られるエンジン作動状態、負荷等の情報に基づいて電磁ソレノイド13の励消磁を制御する。
【0027】電磁ソレノイド13が消磁状態にある場合、切り換え弁14は、図1に示すように復帰ばね18のばね力によって非噴射位置に配置される。切り換え弁14が非噴射位置に配置された状態では、噴射用バルブ16が弁孔111を閉じ、かつ弁孔121を開いた非噴射位置にあり、さらに増圧用バルブ15が加圧通路34と環状通路151との連通を遮断する非増圧位置にある。増圧用バルブ15が非増圧位置に配置された状態は、加圧通路33を経由した加圧室231と作動流体供給部26との連通を遮断する状態である。噴射用バルブ16が非噴射位置に配置された状態は、供給通路25、弁孔121、弁収容室28及び第1の制御通路29を経由して容積復帰用作用室232と作動流体供給部26とを連通すると共に、供給通路25、弁孔121、弁収容室28及び第2の制御通路48を経由して制御圧室361と作動流体供給部26とを連通する状態である。加圧通路33を経由した加圧室231と作動流体供給部26との連通を遮断した状態では、加圧室231が加圧通路33、環状通路151、絞り通路141及び放圧通路31を経由して放圧部32に連通している。放圧部32の圧力は大気圧程度である。作動流体供給部26からの供給圧は供給通路25を介して被ガイドロッド201の上端面に常に作用している。
【0028】電磁ソレノイド13が消磁状態にある図1の状態では、作動流体供給部26からの供給圧は、容積復帰用作用室232及び制御圧室361に波及しており、容積復帰用作用室232内及び制御圧室361内は高圧である。しかし、放圧部32に連通する加圧室231内は低圧である。図1において、被ガイドロッド201の上端面に作用する全圧力と加圧室231において増圧ピストン20に作用する全圧力との和と、容積復帰用作用室232において増圧ピストン20に作用する全圧力との対抗は、増圧ピストン20を上動する方向に作用する。押し付けピストン45に作用する制御圧室361内の高圧は、噴射口381を閉じる非噴射位置に噴射弁49を配置する。
【0029】図1の状態から電磁ソレノイド13が励磁されると、切り換え弁14は、図2に示すように復帰ばね18のばね力に抗して噴射位置に配置される。切り換え弁14が噴射位置に配置された状態では、噴射用バルブ16が弁孔111を開き、かつ弁孔121を閉じた噴射位置にあり、さらに増圧用バルブ15が加圧通路34と環状通路151とを連通する増圧位置にある。増圧用バルブ15が増圧位置に配置された状態は、加圧通路33,34を経由して加圧室231と作動流体供給部26とを連通する状態である。噴射用バルブ16が噴射位置に配置された状態は、放圧通路31、弁孔111、弁収容室28及び第1の制御通路29を経由して容積復帰用作用室232と放圧部32とを連通すると共に、放圧通路31、弁孔111、弁収容室28及び第2の制御通路48を経由して制御圧室361と放圧部32とを連通する状態である。加圧通路33,34を経由して加圧室231と作動流体供給部26とを連通した状態では、作動流体供給部26からの供給圧が加圧室231に波及する状態である。
【0030】電磁ソレノイド13を消磁状態から励磁状態へ切り換えると、増圧用バルブ15は図1の非増圧位置から図2の増圧位置へ移動し、作動流体供給部26と加圧室231とが連通する。又、噴射用バルブ16は図1の非噴射位置から図2の噴射位置へ移動し、放圧部32と増圧室221,351とが連通すると共に、放圧部32と制御圧室361とが連通する。噴射用バルブ16、被吸引体17及び復帰ばね18は、制御圧室361を放圧部32に連通した燃料噴射可能な放圧状態と、制御圧室361を放圧部32に連通しない燃料噴射不能な非放圧状態とに切り換えられる噴射用切り換え手段40を構成する。
【0031】電磁ソレノイド13が励磁状態にある図2の状態では、作動流体供給部26からの供給圧は、加圧室231に波及しており、加圧室231内は高圧である。しかし、放圧部32に連通する容積復帰用作用室232内及び制御圧室361内は低圧である。図2において、被ガイドロッド201の上端面に作用する全圧力と加圧室231において増圧ピストン20に作用する全圧力との和と、容積復帰用作用室232において増圧ピストン20に作用する全圧力との対抗は、増圧ピストン20を下動する方向に作用する。増圧ピストン20に対するこの作用は、増圧室221,351内の燃料を増圧する。増圧ピストン20、増圧プランジャ202、増圧室221,351及び容積復帰用作用室232は、燃料の圧力を増圧する増圧手段19を構成する。増圧ピストン20及び増圧プランジャ202は、増圧室221,351の容積を増減可能に変位する増圧用変位体となる。燃料の増圧を行なっている増圧手段19の増圧状態では逆止弁43は燃料供給通路41を閉じる閉位置にある。増圧用バルブ15、被吸引体17及び復帰ばね18は、加圧室231を作動流体供給部26に連通して増圧手段19を燃料増圧状態とする加圧状態と、加圧室231を放圧部32に連通して増圧手段19を燃料非増圧状態とする非加圧状態とに切り換えられる増圧用切り換え手段を構成する。
【0032】増圧された燃料の高圧力は、噴射弁49を収容する燃料充填室382に波及し、燃料の高圧力は段差部493に作用する。この作用力は、制御圧室361内で押し付けピストン45に作用する全圧力と押し付けばね47のばね力との和を上回り、噴射弁49は噴射口381を開いた噴射位置に配置される。従って、電磁ソレノイド13の励磁によって増圧ピストン20が下動している間は燃料の噴射が行われる。増圧ピストン20が下動している途中にバイパス通路27が加圧室231に連通し、供給通路25から供給される作動流体の供給圧が加圧室231に加わる。従って、バイパス通路27が加圧室231に連通した以後の増圧ピストン20の下動が加速され、燃料が一層増圧される。
【0033】増圧ピストン20が下動している途中、即ち燃料の噴射が行われている途中に電磁ソレノイド13を励磁状態から消磁状態へ切り換えた場合、加圧通路33、環状通路151及び絞り通路141を経由して放圧部32に連通する加圧室231内の圧力は降圧してゆく。しかし、絞り通路141が加圧室231内の圧力の降圧を遅らせる。従って、燃料の噴射が行われている途中に電磁ソレノイド13を励磁状態から消磁状態へ、さらに消磁状態から励磁状態へ素早く切り換えた場合、加圧室231内が高圧に保圧された状態で燃料の高圧噴射が断続的に行われる。
【0034】第1の実施の形態では以下の効果が得られる。
(1-1)電磁ソレノイド13を励磁状態から消磁状態へ切り換えて噴射用切り換え手段40を放圧状態から非放圧状態へ切り換えた場合、増圧手段19が燃料増圧状態から燃料非増圧状態へ移行しようとする。しかし、絞り通路141が加圧室231内の降圧を遅らせる。即ち、絞り通路141は、増圧手段19の燃料増圧状態から燃料非増圧状態への移行を遅らせて燃料の圧力低下を遅らせる降圧遅延手段となる。この移行の遅延は、燃料を高圧に保圧することになる。燃料が高圧に保圧されている間に電磁ソレノイド13を消磁状態から励磁状態へ切り換えれば、断続的な燃料の高圧噴射が行える。分割噴射は、エンジン始動性の向上、白煙の発生防止に有効であり、パイロット噴射は、燃焼音を抑制する上で有効である。絞り通路141の絞り作用による燃料の高圧の保圧は、単一の電磁ソレノイド13の励磁から消磁へ、さらに消磁から励磁への素早い切り換えによって所望の噴射量プロフィールを的確に得ることを可能にする。
【0035】(1-2)制御圧室361の容積は容積復帰用作用室232に比べてかなり小さくしてある。噴射用バルブ16を噴射位置から非噴射位置に切り換えたときには制御圧室361内の圧力の昇圧は速く、噴射弁49は噴射位置から非噴射位置へ迅速に移行する。しかし、噴射用バルブ16を噴射位置から非噴射位置に切り換えたときの容積復帰用作用室232内の圧力の昇圧は遅い。加圧室231内の圧力に対抗する容積復帰用作用室232内の圧力の昇圧が速いと、増圧室221,351内の燃料の圧力の降圧が速まり、望ましい断続的な燃料の高圧噴射が行えない。容積復帰用作用室232内の遅い昇圧は、燃料の高圧の保圧に寄与し、容積復帰用作用室232は燃料の圧力低下を遅らせる降圧遅延手段となる。
【0036】(1-3)電磁ソレノイド13の励消磁による切り換え弁14の少ない変位量を考慮すると、環状通路151と加圧通路34との間における最大の通過断面積はあまり大きくできない。そのため、増圧用バルブ15の非増圧位置から増圧位置への移行時には絞りの影響があり、加圧通路34,33のみを経由した作動流体の供給では作動流体の流量不足による増圧不足のおそれがある。しかし、被ガイドロッド201の上端面には作動流体が常に作用しているため、前記した作動流体の流量不足による増圧不足のおそれは解消する。
【0037】(1-4)増圧用バルブ15及び噴射用バルブ16を一体化した構成は、単一の電磁ソレノイド13で駆動する上で簡便である。
(1-5)切り換え弁14内に絞り通路141を設けた構成は、放圧部32に繋がる放圧通路31を単一とし、放圧部32と燃料噴射装置との間の配管構成が簡素になる。
【0038】(1-6)増圧ピストン20が上動するときに燃料が増圧室221,351に補給されるが、増圧ピストン20の上動は容積復帰用作用室232の昇圧によって行われる。増圧ピストン20を上動させるためのばねのない構成は、部品点数の削減によるコスト減に寄与する。
【0039】次に、図3の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。この実施の形態では、加圧室231は加圧通路33、絞り通路112及び放圧通路31Aを介して放圧部32に連通している。絞り通路112は第1の実施の形態における絞り通路141と同じ機能を果たす。又、ガイド孔24はバイパス通路27Aを介して加圧通路33に連通している。バイパス通路27Aは第1の実施の形態におけるバイパス通路27と同じ機能を果たす。
【0040】次に、図4及び図5の第3の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。上部ハウジング11内には噴射用切り換え手段40A、増圧用切り換え手段39A及び増圧手段19Aが収容されている。噴射用切り換え手段40Aは、電磁ソレノイド13の励磁によって吸引力を受ける噴射用被吸引体51と、噴射用被吸引体51に固定された噴射用バルブ53と、噴射用バルブ53に結合された被ガイドロッド52と、噴射用被吸引体51を電磁ソレノイド13から離間する方向へ付勢する噴射用ばね54とからなる。噴射用バルブ53は弁収容室61に収容されており、被ガイドロッド52は、弁孔形成体50のガイド孔501内にスライド可能に嵌入されている。噴射用ばね54は、電磁ソレノイド13の固定鉄芯131と噴射用被吸引体51との間に介在されており、噴射用バルブ53は、弁孔形成体50に形成された弁孔502及び弁孔形成体59に形成された弁孔591を開閉する。弁孔502は放圧通路63を介して放圧部32に連通している。弁孔591は、噴射用被吸引体51の収容室592及び供給通路67を介して作動流体供給部26に連通している。噴射用ばね54のばね力は、噴射用被吸引体51及び被ガイドロッド52を介して弁孔502を閉じる方向へ噴射用バルブ53に対して作用する。
【0041】増圧用切り換え手段39Aは、電磁ソレノイド13の励磁によって吸引力を受ける増圧用被吸引体55と、増圧用被吸引体55に止着された増圧用バルブ57と、増圧用バルブ57に結合された被ガイドロッド56と、増圧用バルブ57を電磁ソレノイド13から離間する方向へ付勢する増圧用ばね58とからなる。増圧用バルブ57は弁収容室62に収容されており、被ガイドロッド56は、弁孔113にスライド可能に嵌入されている。増圧用ばね58は、電磁ソレノイド13の固定鉄芯131と増圧用被吸引体55との間に介在されており、増圧用バルブ57は、弁孔113及び弁孔形成体60に形成された弁孔601を開閉する。増圧用ばね58は、弁孔113を閉じる方向に増圧用バルブ57を付勢する。弁孔113は供給通路68を介して作動流体供給部26に連通している。
【0042】増圧用バルブ57には絞り通路571が形成されている。弁孔601は絞り通路571に連通しており、絞り通路571は、増圧用被吸引体55の収容室602及び放圧通路64を介して放圧部32に連通している。
【0043】増圧手段19Aは、増圧ピストン65と、増圧プランジャ651と、増圧ピストン65によって区画された加圧室71と、増圧ピストン65を加圧室71側に付勢する復帰ばね66と、増圧室221,351とからなる。加圧室71は加圧通路69を介して弁収容室62に連通しており、弁収容室61は制御通路70を介して制御圧室361に連通している。
【0044】電磁ソレノイド13の消磁状態を示す図4では、噴射用バルブ53は、弁孔502を閉じていると共に、弁孔591を開く非噴射位置にあり、増圧用バルブ57は、弁孔113を閉じると共に、弁孔601を開く非増圧位置にある。従って、電磁ソレノイド13が消磁状態にあるときには、加圧室71は、加圧通路69、弁収容室62、弁孔601、絞り通路571、収容室602及び放圧通路64を経由して放圧部32に連通する。又、制御圧室361は、制御通路70、弁収容室61、弁孔591、収容室592及び供給通路67を経由して作動流体供給部26に連通する。このような連通状態は、噴射口381を閉じる非噴射位置に噴射弁49を配置する。
【0045】電磁ソレノイド13の励磁状態を示す図5では、噴射用バルブ53は、弁孔591を閉じていると共に、弁孔502を開く噴射位置にあり、増圧用バルブ57は、弁孔601を閉じると共に、弁孔113を開く増圧位置にある。従って、電磁ソレノイド13が励磁状態にあるときには、加圧室71は、加圧通路69、弁収容室62、弁孔113及び供給通路68を経由して作動流体供給部26に連通する。又、制御圧室361は、制御通路70、弁収容室61、弁孔502及び放圧通路63を経由して放圧部32に連通する。このような連通状態は、噴射口381を開く噴射位置に噴射弁49を配置する。
【0046】電磁ソレノイド13を励磁状態から消磁状態へ切り換えると、増圧ピストン65は復帰ばね66のばね力によって上動しようとする。しかし、絞り通路571は、第1の実施の形態における絞り通路141、及び第2の実施の形態における絞り通路112と同じ機能を果たす。従って、加圧室71内の圧力の降圧が遅れ、加圧室71内の圧力が高圧に保圧される。このような保圧は、単一の電磁ソレノイド13の励磁から消磁へ、さらに消磁から励磁への素早い切り換えによって所望の噴射量プロフィールを的確に得ることを可能にする。
【0047】次に、図6及び図7の第4の実施の形態を説明する。第3の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。増圧用切り換え手段39Bは、電磁ソレノイド13の励磁によって吸引される増圧用被吸引体73と、増圧用被吸引体73に結合され、かつ弁案内体72にスライド可能に嵌入された増圧用バルブ74と、固定鉄芯131と増圧用被吸引体73との間に介在された増圧用ばね75とからなる。増圧用バルブ74は弁孔85を開閉し、増圧用ばね75は、弁孔85を閉じる方向へ増圧用バルブ74を付勢する。
【0048】噴射用切り換え手段40Bは、電磁ソレノイド13の励磁によって吸引される噴射用被吸引体76と、噴射用被吸引体76の先端に支持された噴射用バルブ77と、固定鉄芯131と噴射用被吸引体76との間に介在された噴射用ばね78とからなる。噴射用バルブ77は、制御通路形成体79に形成された制御通路791を開閉し、噴射用ばね78は、制御通路791を閉じる方向へ噴射用バルブ77を付勢する。制御通路791は制御通路86を経由して制御圧室361に連通している。
【0049】噴射用被吸引体76は、増圧用バルブ74に挿通されており、噴射用被吸引体76と増圧用バルブ74との間の空隙は絞り通路742となっている。増圧用バルブ74には絞り通路741が絞り通路742に連通するように形成されている。絞り通路741,742は、放圧室87及び放圧通路82を経由して放圧部32に連通している。噴射用被吸引体76及び噴射用バルブ77のストロークは、増圧用バルブ74のストロークよりも短くしてある。
【0050】増圧用バルブ74を収容する弁収容室84は、加圧通路69を介して加圧室71に連通している。弁収容室84と放圧部32とを接続する放圧通路83上にはボール形状の放圧用バルブ80が介在されている。放圧用バルブ80は、放圧用ばね81のばね力によって放圧通路83を開く方向に付勢されている。
【0051】増圧室351と制御圧室361とは絞り通路352を介して連通している。電磁ソレノイド13の消磁状態を示す図6では、噴射用バルブ77は、制御通路791を閉じる非噴射位置にあり、増圧用バルブ74は、弁孔85を閉じると共に、絞り通路741を弁収容室84に連通する非増圧位置にある。従って、電磁ソレノイド13が消磁状態にあるときには、加圧室71は、加圧通路69、弁収容室84、絞り通路741,742、放圧室87及び放圧通路82を経由して放圧部32に連通する。又、制御通路86,791、放圧室87及び放圧通路82を介した制御圧室361と放圧部32との連通は遮断されている。このような連通状態及び連通遮断状態では、制御圧室361内の圧力及び押し付けばね47のばね力が噴射口381を閉じる非噴射位置に噴射弁49を配置する。
【0052】電磁ソレノイド13の励磁状態を示す図7では、噴射用バルブ77は、制御通路791を開く噴射位置にあり、増圧用バルブ74は、弁孔85を開くと共に、絞り通路741と弁収容室84との連通を遮断する増圧位置にある。従って、電磁ソレノイド13が励磁状態にあるときには、加圧室71は、加圧通路69、弁収容室84、弁孔85及び供給通路68を経由して作動流体供給部26に連通する。従って、作動流体供給部26からの供給圧が加圧室71に波及し、燃料の増圧が行われる。作動流体供給部26からの供給圧が加圧室71に波及する状態では、放圧用バルブ80が放圧通路83を閉じる閉位置に配置される。増圧された燃料の圧力は燃料充填室382に波及する。又、制御圧室361は、制御通路86,791、放圧室87及び放圧通路82を経由して放圧部32に連通している。従って、燃料充填室382に波及する増圧された燃料の圧力は、制御圧室361内の圧力及び押し付けばね47のばね力に打ち勝って噴射口381を開く噴射位置に噴射弁49を配置する。
【0053】電磁ソレノイド13を励磁状態から消磁状態へ切り換えると、増圧用バルブ74よりもストロークの短い噴射用バルブ77が先に非噴射位置に戻り、制御圧室361から放圧部32側への作動流体の流出が止まる。すると、増圧室221,351から絞り通路352を介して制御圧室361に波及する増圧された燃料の圧力が噴射弁49を非噴射位置に配置する。噴射用バルブ77よりもストロークの長い増圧用バルブ74は、噴射用バルブ77よりも遅れて非増圧位置に戻り、加圧室71が絞り通路741,742を経由して放圧部32に連通する。加圧室71が絞り通路741,742を経由して放圧部32に連通すると、加圧室71内及び弁収容室84内の圧力が低下してゆく。加圧室71内及び弁収容室84内の圧力が設定されたしきい値以下になると、放圧用バルブ80が放圧用ばね81のばね力によって放圧通路83を開く開位置に配置される。
【0054】第4の実施の形態では以下の効果が得られる。
(4-1)電磁ソレノイド13を励磁状態から消磁状態へ切り換えると、増圧ピストン65は復帰ばね66のばね力によって上動しようとする。しかし、絞り通路741,742は、第1の実施の形態における絞り通路141、及び第2の実施の形態における絞り通路112と同じ機能を果たす。従って、加圧室71内の圧力の降圧が遅れ、加圧室71内の圧力が高圧に保圧される。このような保圧は、単一の電磁ソレノイド13の励磁から消磁へ、さらに消磁から励磁への素早い切り換えによって所望の噴射量プロフィールを的確に得ることを可能にする。
【0055】(4-2)増圧用バルブ74のストロークを噴射用バルブ77のストロークよりも長くした構成は、電磁ソレノイド13の励磁から消磁への切り換えによる増圧用バルブ74の戻りを噴射用バルブ77の戻りよりも遅らせる。このような遅らせは、絞り通路741と弁収容室84との連通を遅らせることになり、加圧室71内の圧力の降圧遅延が一層効果的に行われる。
【0056】(4-3)加圧室71内の圧力が放圧用ばね81のばね力によって決まる前記設定しきい値以下になると、加圧室71内の作動流体が急激に流出する。従って、次の噴射までには増圧室221,351に燃料を補給するように最上動位置に戻っていなければならない増圧ピストン65は、放圧用バルブ80及び放圧用ばね81の存在によって最上動位置に確実に戻る。
【0057】(4-4)制御圧室361に導入される増圧された燃料は、噴射弁49の作動制御に用いられる。そのため、非噴射位置で噴射弁49を弁収容体38に押し付ける力が大きく、押し付けピストン45のサイズダウンが可能となる。押し付けピストン45のサイズダウンは、噴射弁49の位置切り換えの応答性の向上に寄与する。
【0058】(4-5)制御圧室361に導入された増圧された燃料の圧力は、噴射用バルブ77を噴射位置に配置することによって低下させられる。増圧された燃料の圧力は高圧であるため、噴射用バルブ77の非噴射位置と噴射位置との離間量は僅かで済む。従って、噴射用バルブ77のストロークは少なくて済み、噴射用バルブ77の位置切り換えの応答性が向上する。噴射用バルブ77の位置切り換えの応答性の向上は、噴射弁49の位置切り換えの応答性の向上に寄与する。
【0059】次に、図8の第5の実施の形態を説明する。第4の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。この実施の形態では、放圧室87が放圧通路88を介して燃料供給部42に連通している。燃料供給部42は数気圧程度で燃料を供給しており、燃料供給部42を放圧部として用いる上で支障はない。作動流体としては燃料が用いられる。従って、放圧部32側からエアが制御圧室361に入り込むようなことはなく、圧力制御手段44の応答性がエアの影響で低下するようなことはない。
【0060】次に、図9の第6の実施の形態を説明する。第4の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。この実施の形態では、制御圧室361が絞り通路352及び圧力供給通路89を介して弁収容室84に連通しており、作動流体が噴射弁49の作動制御に用いられる。
【0061】本発明では以下のような実施の形態も可能である。
(1)第1及び第2の実施の形態において、バイパス通路27,27Aを省略すること。
(2)第1及び第2の実施の形態において、供給通路25とガイド孔24とを連通させず、増圧室221の容積を減少する方向に増圧ピストン20に対してばね力を作用させること。
(3)第3〜第5の実施の形態において、放圧用バルブ80及び放圧用ばね81を省略すること。
【0062】
【発明の効果】以上詳述したように本発明では、単一の電磁ソレノイドの励消磁の切り換えに伴う増圧手段の燃料増圧状態から燃料非増圧状態への移行を遅らせて燃料の圧力低下を遅らせるようにしたので、単一の電磁ソレノイドを用いて所望の噴射量プロフィールを的確に得られるという優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成11年8月27日(1999.8.27)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【公開番号】 特開2001−65423(P2001−65423A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−241818