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【発明の名称】 エンジン
【発明者】 【氏名】片山 吾一

【氏名】野中 正志

【氏名】岡崎 正喜

【要約】 【課題】

【解決手段】エンジン(9)は、空気が吸気系(31,66,67,71)を経て燃焼室(11a)に供給されているとともに、インジェクター(76)に供給する燃料はベーパーセパレータータンク(79)に溜められ、燃焼室からクランク室(19)内に漏れたブローバイガスはブローバイ経路(19,86,91,97,99,101,102,103,104)を経て前記吸気系に流入している。そして、ベーパーセパレータータンクの上部空間とブローバイ経路とがエアーベント配管(131)で連通されており、ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、前記エアーベント配管を介して前記ブローバイ経路に流入している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 空気が吸気系を経て燃焼室に供給されているとともに、インジェクターに供給する燃料はベーパーセパレータータンクに溜められ、燃焼室からクランク室内に漏れたブローバイガスはブローバイ経路を経て前記吸気系に流入しているエンジンにおいて、前記ベーパーセパレータータンクの上部空間と前記ブローバイ経路とがエアーベント配管で連通されており、前記ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、前記エアーベント配管を介して前記ブローバイ経路に流入していることを特徴とするエンジン。
【請求項2】 前記エアーベント配管が、ベーパーセパレータータンクの上部空間と、前記ブローバイ経路の一部を構成するカム室とを連通していることを特徴とする請求項1記載のエンジン。
【請求項3】 前記カム室は第1カム室および第2カム室で構成されているとともに、この第1カム室と第2カム室とは互いに連通しており、前記エアーベント配管は第1カム室に接続され、第2カム室は吸気系に接続されていることを特徴とする請求項2記載のエンジン。
【請求項4】 前記エアーベント配管はベーパーセパレータータンク側の端部が2股に分岐して、第1分岐路および第2分岐路が形成され、第1分岐路がベーパーセパレータータンクの上部空間の第1端部に、第2分岐路がベーパーセパレータータンクの上部空間の第1端部とは反対側の第2端部に接続されており、かつ、第1分岐路は第1端部から一旦第2端部側に向かってから略U字状に折れ曲がり、第2分岐路は第2端部から一旦第1端部側に向かってから略U字状に折れ曲がっていることを特徴とする請求項1、2または3記載のエンジン。
【請求項5】 インジェクターに供給する燃料がベーパーセパレータータンクに溜められているエンジンにおいて、前記ベーパーセパレータータンクの上部空間には、エアーベント配管が接続されているとともに、このエアーベント配管には、圧力チェック弁が設けられており、前記ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、圧力チェック弁の設定圧よりも高くなった際に、前記エアーベント配管を介してベーパーセパレータータンク外に流出していることを特徴とするエンジン。
【請求項6】 燃料が高圧ポンプによりベーパーセパレータータンクから吐出流路を通ってインジェクターに供給されるとともに、余分の燃料が戻り流路を通ってベーパーセパレータータンクに戻っているエンジンにおいて、前記戻り流路はクーラーで冷却されているとともに、このクーラーが断熱部材を介してエンジン本体に取り付けられていることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インジェクターに供給する燃料がベーパーセパレータータンクに溜められているエンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のベーパーセパレータータンクのエアーベント配管は、吸気系のサイレンサーに接続したり、外気に開放されたりしている。また、燃料は高圧ポンプによりベーパーセパレータータンクから吐出流路を通ってインジェクターに供給されるとともに、余分の燃料が戻り流路を通ってベーパーセパレータータンクに戻っている。この戻り流路はインテクマニホールドなどにボルト締めされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、エンジンを稼働(特に、高速回転)した後に停止させ、この停止の略直後に、再始動することがある。この様な場合には、エンジン停止時に、それまでのエンジンの稼働により、エンジン周囲、特にベーパーセパレータータンクなどの温度が上昇し、ベーパーセパレータータンクの燃料は蒸発しやすい状態となっている。そして、再始動を行うと、高圧ポンプがベーパーセパレータータンクの燃料をインジェクターに供給し、余った燃料はベーパーセパレータータンクに戻ってくる。したがって、ベーパーセパレータータンクに戻ってくる燃料は、高圧ポンプで加圧後、ベーパーセパレータータンクへの戻りで減圧され、この減圧で蒸発が促進されている。その結果、エンジンの再始動直後に、一時的に(たとえば、約1分間)ベーパーセパレータータンク内に多量のベーパーが発生する。この多量のベーパーがエアーベント配管を通って、サイレンサーなどの吸気系に直接供給されると、燃料濃度が高くなり、空燃比(A/F)が所望の値よりも濃くなる。そのため、燃料が燃えにくく、エンジンストールが発生し、エンジンがかかり難くなることがある。また、ベーパーセパレータータンク内のベーパーを外気に放出すると、環境悪化になる。
【0004】さらに、エンジンが船外機などに搭載されている場合には、船外機がチルトアップされた際などに、ベーパーセパレータータンクが傾くことがあり、ベーパーセパレータータンク内の燃料がエアーベント配管を通って流出したり、燃料でエアーベント配管の開口が塞がれ、ベーパーがエアーベント配管に流れなくなったりすることがある。また、戻り流路がインテクマニホールドなどにボルト締めされていると、インテクマニホールドからの熱が戻り流路の燃料に伝達され、ベーパーセパレータータンクに戻る燃料の温度が上昇し、燃料の蒸発がさらに激しくなる。
【0005】本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、エンジン停止直後の再始動を円滑に行うことができるエンジンを提供することを目的とする。また、ベーパーセパレータータンクが傾いても、ベーパーがエアーベント配管に円滑に流れることができるエンジンを提供することを二次的目的とする。さらに、戻り流路での燃料の温度上昇を極力防止することができるエンジンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本出願の請求項1記載のエンジン(9)は、空気が吸気系(31,66,67,71)を経て燃焼室(11a)に供給されているとともに、インジェクター(76)に供給する燃料はベーパーセパレータータンク(79)に溜められ、燃焼室からクランク室(19)内に漏れたブローバイガスはブローバイ経路(19,86,91,97,99,101,102,103,104)を経て前記吸気系に流入している。そして、前記課題を解決するために、ベーパーセパレータータンクの上部空間とブローバイ経路とがエアーベント配管(131)で連通されており、ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、前記エアーベント配管を介して前記ブローバイ経路に流入している。
【0007】本出願の請求項2記載のエンジンは、請求項1記載のエンジンにおいて、エアーベント配管が、ベーパーセパレータータンクの上部空間と、前記ブローバイ経路の一部を構成するカム室(97,99)とを連通している。
【0008】本出願の請求項3記載のエンジンは、請求項2記載のエンジンにおいて、前記カム室は第1カム室および第2カム室で構成されているとともに、この第1カム室と第2カム室とは互いに連通しており、前記エアーベント配管は第1カム室に接続され、第2カム室は吸気系に接続されている。
【0009】本出願の請求項4記載のエンジンは、請求項1、2または3記載のエンジンにおいて、エアーベント配管はベーパーセパレータータンク側の端部が2股に分岐して、第1分岐路(132)および第2分岐路(133)が形成され、第1分岐路がベーパーセパレータータンクの上部空間の第1端部に、第2分岐路がベーパーセパレータータンクの上部空間の第1端部とは反対側の第2端部に接続されており、かつ、第1分岐路は第1端部から一旦第2端部側に向かってから略U字状に折れ曲がり、第2分岐路は第2端部から一旦第1端部側に向かってから略U字状に折れ曲がっている。
【0010】本出願の請求項5記載のエンジンは、インジェクターに供給する燃料がベーパーセパレータータンクに溜められている。そして、前記ベーパーセパレータータンクの上部空間にはエアーベント配管が接続されているとともに、このエアーベント配管には圧力チェック弁(134)が設けられており、前記ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、圧力チェック弁の設定圧よりも高くなった際に、前記エアーベント配管を介してベーパーセパレータータンク外に流出している。
【0011】本出願の請求項6記載のエンジンは、燃料が高圧ポンプ(116)によりベーパーセパレータータンクから吐出流路(77,80)を通ってインジェクターに供給されるとともに、余分の燃料が戻り流路(122)を通ってベーパーセパレータータンクに戻っている。そして、前記戻り流路はクーラー(126)で冷却されているとともに、このクーラーが断熱部材(129)を介してエンジン本体に取り付けられている。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明におけるエンジンを搭載した船外機の実施の第1の形態を図1ないし図6を用いて説明する。図1は本発明におけるエンジンを搭載した船外機の一部切欠き側面図である。図2は図1の上部の切欠き拡大図である。図3は図2の要部拡大図である。図4は船外機上部の平断面図である。図5は本発明の実施の第1の形態の吸気系、燃料系およびブローバイ経路の概略図である。図6はベーパーセパレータータンク内のベーパーの圧力のタイムチャートである。なお、この明細書においては、クランクシャフトに対してシリンダ配置側を、「後側」とし、右舷側を「右側」としている。
【0013】まず初めに、船外機の全体構造を説明する。船外機は、上側から順番にアッパーカウリング1、ロワーカウリング2、アッパーケーシング3およびロワーケーシング4からなるハウジングで覆われている。そして、船外機を小型船舶に装着するための取り付けブラケット6は、小型船舶のトランサム7などに取り付けられて固定されている。この取り付けブラケット6の後部に、ピボット軸などを介して船外機本体が回動自在に取り付けられている。
【0014】アッパーカウリング1およびロワーカウリング2からなるカウリング1,2の内部には、燃料噴射式のL型4気筒の4サイクルエンジン9が配置されている。このエンジン9のクランクシャフト10はその軸が略垂直すなわち上下方向に設けられており、このクランクシャフト10の後方には、シリンダ11が上下方向に4個設けられている。また、クランクシャフト10には、4個のピストン13が各々コンロッド14を介して連結されており、このピストン13が各シリンダ11の内部に摺動可能に配置されている。また、エンジン9のケース17は、前述の4個のシリンダ11を形成するシリンダブロック20と、シリンダブロック20のクランクシャフト10側を覆ってクランク室19を形成するクランクケース21と、シリンダブロック20の燃焼室11a側を覆っているシリンダヘッド22とからなっている。このエンジンケース17は、ガイドエキゾースト23の上面に固定されている。
【0015】そして、クランクシャフト10の下端は、エンジンケース17から突出して延在しており、アッパーケーシング3内に配置されているドライブシャフト26に連結されている。そして、ドライブシャフト26の回転は、図示しない傘歯車などを介して、ロワーケーシング4の後端部に回転自在に設けられているプロペラ28に伝達されている。ドライブシャフト26の途中には、冷却水ポンプ29が設けられ、船外機の外の水を冷却水として吸い込んでいる。
【0016】また、シリンダヘッド22には、先端部が燃焼室11aに開口してシリンダ11に空気を供給する吸気通路31と、同様に、先端部が燃焼室11aに開口してシリンダ11の燃焼ガスを排気する排気通路32とがシリンダ11毎に形成されている。この吸気通路31のポートを吸気弁35が、また、排気通路32のポートを排気弁36が開閉している。そして、この吸気弁35を吸気弁用カムシャフト38が、また、排気弁36を排気弁用カムシャフト39が駆動している。この吸気弁用カムシャフト38および排気弁用カムシャフト39は上下方向に延在している。
【0017】そして、クランクシャフト10の上端は、エンジンケース17から突出しており、このクランクシャフト10の上端部にプーリ41が圧入して固定されている。このプーリ41の上側には、フライホイル42がナット43で取り付けられている。また、吸気弁用カムシャフト38および排気弁用カムシャフト39にもプーリ46が設けられている。そして、無端伝動部材であるタイミングベルト48が、クランクシャフト10のプーリ41と、カムシャフト38,39のプーリ46とに掛け渡されており、クランクシャフト10とカムシャフト38,39とは連動している。
【0018】そして、シリンダヘッド22の各吸気通路31の端部には、アルミなどの金属製のインテクマニホールド66が接続されている。このインテクマニホールド66の前端にはスロットルボディ71が接続されている。また、カウリング1,2内の前部にはサイレンサー67が配置され、サイレンサー67の後部から枝管68が4本突出しており、この枝管68が各々スロットルボディ71の前端に接続されている。さらに、スロットルボディ71の弁軸は、略上下方向に延在しているとともに、各弁軸は連結されて連動している。
【0019】シリンダヘッド22の吸気通路31と、インテクマニホールド66との接続部分付近には、電子制御されているインジェクター76が各インテクマニホールド66毎に設けられている。このインジェクター76は、インテクマニホールド66の後側に配置され、燃料レール77に接続されている。この燃料レール77は、ベーパーセパレータータンク79に吐出パイプ80で接続され、ガソリンなどの燃料が供給されている。このベーパーセパレータータンク79は、インテクマニホールド66およびスロットルボディ71とシリンダブロック20との間に形成されている部品配置空間81に配置され、インテクマニホールド66にボルトなどで取り付けられている。なお、インジェクター76に燃料を供給する燃料系の構造の詳細は後述する。
【0020】また、シリンダヘッド22の排気通路32の先端部は、シリンダブロック20に形成されている排気通路83に接続されている。このシリンダブロック20の排気通路83は上下方向に延在しており、下端はガイドエキゾースト23の排気通路に接続されている。そして、燃焼室11a内の燃焼ガスはシリンダヘッド22の排気通路32、シリンダブロック20の排気通路83、ガイドエキゾースト23の排気通路やケーシング3,4などを通って、プロペラ28のボスなどから排出されている。
【0021】さらに、ガイドエキゾースト23の下側にはオイルパン86が取り付けられており、このオイルパン86には、潤滑オイルが溜められている。オイルパン86の潤滑オイルは、図5に図示するように、ストレーナー87を介してオイルポンプ88で吸い上げられ、クランクシャフト10の軸受け部、ピストン13の裏面やカムシャフト38,39の軸受け部などに供給されている。そして、軸受け部などを潤滑した潤滑オイルは落下して、クランク室19の底壁のオイル戻り孔89および潤滑オイル戻り通路91を通ってオイルパン86に戻っている。
【0022】シリンダヘッド22の吸気弁用カムシャフト38側は、左側カムカバー96で覆われ、第1カム室である左カム室97が形成されている。一方、シリンダヘッド22の排気弁用カムシャフト39側は、右側カムカバー98で覆われ、第2カム室である右カム室99が形成されている。左側カムカバー96と右側カムカバー98とは一体に形成されているとともに、左右のカム室97,99は互いにカム室連通路101で連通している。また、左カム室97とクランク室19とは、シリンダヘッド22およびシリンダブロック20に形成されているブローバイ連絡通路102(所謂バランス通路)で連通している。さらに、右カム室99の後部には、気液(すなわちブローバイガスや潤滑オイルなど)を分離するブリーザー室103が形成されている。このブリーザー室103にはブリーザーパイプ104の一端が接続され、ブリーザーパイプ104の他端はサイレンサー67に接続されている。そして、左側カムカバー96には燃料供給ポンプ106が取り付けられている。この燃料供給ポンプ106は、吸気弁用カムシャフト38の回転により駆動されている。
【0023】ついで、インジェクター76に燃料を供給する燃料系の構造を説明する。燃料タンク111は、船外機が装着されている小型船舶などに設けられている。この燃料タンク111から燃料ホース112がカウリング1,2内に導かれ、燃料フィルター109を介して燃料供給ポンプ106に接続されている。そして、燃料供給ポンプ106の吐出口には、燃料パイプ107が接続され、燃料供給ポンプ106から吐出された燃料をベーパーセパレータータンク79に供給している。このベーパーセパレータータンク79には、液位調整用フロート113が設けられ、この液位調整用フロート113が、弁114を開閉して燃料パイプ107からの流量を調整し、燃料の液位を設定液位に維持している。
【0024】また、ベーパーセパレータータンク79には、高圧ポンプ116が設けられ、この高圧ポンプ116の吐出口は、前述の吐出パイプ80を介して燃料レール77の下端に接続されている。この吐出パイプ80および燃料レール77が吐出流路を構成している。また、燃料レール77の上部には、プレッシャーレギュレーター121が設けられ、このプレッシャーレギュレーター121は燃料レール77の燃料の圧力が設定圧よりも高くなると、燃料レール77内の燃料を戻り流路としての戻りパイプ122に排出している。この戻りパイプ122は、一端がプレッシャーレギュレーター121の排出口に、他端がベーパーセパレータータンク79に接続されているとともに、戻りパイプ122の途中にはクーラー126が設けられている。このクーラー126は、戻りパイプ122と、冷却水パイプ127とを具備しており、この冷却水パイプ127には、冷却水ポンプ29が吸い込んだ冷却水が供給されている。そして、冷却水パイプ127の冷却水で戻りパイプ122の燃料を冷却している。クーラー126には取付フランジ128が設けられ、この取付フランジ128が断熱材129を介してインテクマニホールド66にボルト締めされている。この様に、冷却水パイプ127が戻りパイプ122よりもインテクマニホールド66側に配置されているとともに、断熱材129を介して取り付けられているので、インテクマニホールド66の熱が戻りパイプ122の燃料に伝達されることを、冷却水パイプ127の冷却水や断熱材129で極力阻止することができる。特に、エンジン9が停止している際には、冷却水ポンプ29も停止し、クーラー126の冷却水パイプ127に冷却水が流れなくなるので、インテクマニホールド66からの熱を断熱材129で遮断することが重要となる。
【0025】さらに、ベーパーセパレータータンク79の上部空間は、エアーベント配管131で左カム室97に接続されている。このエアーベント配管131は、ベーパーセパレータータンク79側の端部が本体131aから2股に分岐して、第1分岐路132および第2分岐路133が形成され、第1分岐路132がベーパーセパレータータンク79の上部空間の前部に、第2分岐路133がベーパーセパレータータンク79の上部空間の後部に接続されている。すなわち、第1分岐路132はベーパーセパレータータンク79の上部空間の前部から一旦後側に向かってから略U字状に折れ曲がり、エアーベント配管131の本体131aに合流している。一方、第2分岐路133はベーパーセパレータータンク79の上部空間の後部から一旦前側に向かってから略U字状に折れ曲がり、エアーベント配管131の本体131aに合流している。さらに、エアーベント配管131の本体131aには、圧力チェック弁134が設けられており、ベーパーセパレータータンク79のベーパー圧が、圧力チェック弁134の設定圧よりも高くなった際に、ベーパーをベーパーセパレータータンク79から左カム室97に流している。そして、圧力チェック弁134は、左カム室97からベーパーセパレータータンク79への流れを阻止するとともに、ベーパー圧が圧力チェック弁134の設定圧以下の際にも、流れを阻止している。なお、この圧力チェック弁134の設定圧は、燃料供給ポンプ106の吐出圧よりも低く設定されている。
【0026】この実施の形態においては、燃料系は、燃料タンク111、燃料フィルター109、燃料パイプ112、燃料供給ポンプ106、燃料パイプ107、ベーパーセパレータータンク79、吐出パイプ80、燃料レール77、インジェクター76、プレッシャーレギュレーター121、戻りパイプ122およびクーラー126などで構成されている。また、吸気系はサイレンサー67、スロットルボディ71、インテクマニホールド66およびシリンダヘッド22の吸気通路31などで構成されている。そして、ブローバイ経路は、クランク室19、潤滑オイル戻り通路91、オイルパン86、ブローバイ連絡通路102、カム室97,99、カム室連通路101、ブリーザー室103およびブリーザーパイプ104などで構成されている。
【0027】この様に構成されている船外機において、クランクシャフト10が回転すると、サイレンサー67内にカウリング1,2内の空気が吸い込まれ、この吸い込まれた空気がサイレンサー67の枝管68、スロットルボディ71、インテクマニホールド66およびシリンダヘッド22の吸気通路31を通り、インジェクター76から燃料を供給されて燃料混合気体となって、シリンダ11の燃焼室11a内に流入している。そして、スロットルボディ71を通る際に、スロットルボディ71の弁で空気の流量が調整されている。また、カウリング1,2内の空気がサイレンサー67に吸い込まれるのに伴って、カウリング1,2内に外気が流入し、エンジン9やベーパーセパレータータンク79などを空冷している。さらに、燃焼室11a内に流入した燃料混合気体は、図示しない点火プラグで点火されて燃焼しており、この際に生じる排気ガスはシリンダヘッド22の排気通路32、シリンダブロック20の排気通路83やケーシング3,4などを通って、プロペラ28のボスなどから排出されている。
【0028】また、クランクシャフト10の回転に伴って、オイルポンプ88が稼働し、オイルパン86の潤滑オイルを汲み上げてクランクシャフト10の軸受け部などを潤滑し、潤滑後の潤滑オイルはオイル戻り孔89および潤滑オイル戻り通路91などを通って再びオイルパン86に戻っている。
【0029】さらに、クランクシャフト10の回転に伴って、冷却水ポンプ29が稼働し、船外機の外の水を吸い上げて、エンジン9などを冷却するとともに、冷却水が冷却水パイプ127を流れて、クーラー126の戻りパイプ122の燃料を冷却している。
【0030】そして、クランクシャフト10の回転により、吸気弁用カムシャフト38が回転し、燃料供給ポンプ106が稼働する。この燃料供給ポンプ106の稼働により、小型船舶などに搭載されている燃料タンク111の燃料をベーパーセパレータータンク79に汲み上げている。また、高圧ポンプ116の稼働で、ベーパーセパレータータンク79の燃料は、吐出パイプ80や燃料レール77などを通ってインジェクター76に供給され、適宜インジェクター76からインテクマニホールド66や燃焼室11a内に向かって噴射されている。また、燃料レール77内の燃料圧が、プレッシャーレギュレーター121の設定圧以上になると、燃料レール77から戻りパイプ122を通ってベーパーセパレータータンク79に戻されている。この戻りパイプ122を流れる際に、燃料はクーラー126で冷却され、蒸発を極力防止されている。
【0031】ベーパーセパレータータンク79内では、燃料が蒸発してベーパーが発生するが、そのベーパー圧が圧力チェック弁134の設定圧よりも高くなると、エアーベント配管131を通って、左カム室97に流れている。ところで、ベーパーセパレータータンク79のベーパー圧は、図6に示すように、通常運転時は、圧力チェック弁134の設定圧よりも低くなっている。そして、エンジン9を稼働し、その後停止し、略直後に(すなわち、ベーパーセパレータータンク79の温度が上昇している状態で)再始動を行った際に、図6に図示するように、瞬間的に(たとえば約1分程度)ベーパーセパレータータンク79のベーパー圧が圧力チェック弁134の設定圧よりも高くなっている。したがって、この様な場合に、ベーパーセパレータータンク79のベーパーが左カム室97に流入している。このベーパー圧の上昇は、下記の様にして発生している。エンジン9の再始動とともに、高圧ポンプ116が稼働し、ベーパーセパレータータンク79の燃料を加圧してインジェクター76に向かって吐出され、余った燃料がプレッシャーレギュレーター121で減圧されてベーパーセパレータータンク79に戻されている。ベーパーセパレータータンク79の燃料は、それまでのエンジン9の稼働により温度が上昇しており、蒸発しやすい状態になっており、この燃料が加圧減圧されて激しく刺激が加えられて、瞬間的に蒸発する。その後、ベーパーセパレータータンク79はカウリング1,2内の空気で空冷されて温度が低下するとともに、燃料タンク111から燃料が流入し、ベーパーセパレータータンク79内の燃料の温度は低下する。
【0032】燃焼室11aの空気が、ピストン13とシリンダ11との隙間を通って漏れ、クランク室19内にブローバイガスとして流入することがある。このブローバイガスは、ブローバイ連絡通路102を通って、左カム室97に流入し、ベーパーセパレータータンク79からのベーパーと混ざり合い、カム室連通路101、右カム室99、ブリーザー室103およびブリーザーパイプ104を通って、サイレンサー67に流入している。そして、サイレンサー67に吸い込まれた空気に混合されて、前述の様に、燃焼室11aに流入している。
【0033】前述のように、実施の形態においては、エアーベント配管131が二股に分岐して、ベーパーセパレータータンク79の上部空間の前部および後部に接続されているので、ベーパーセパレータータンク79が傾いて、前部または後部の一方が燃料で塞がれても、ベーパーは前部または後部の他方により、エアーベント配管131に流入することができる。また、上記エアーベント配管131の分岐路132,133はU字状に形成されているので、万一、ベーパーセパレータータンク79の燃料が分岐路132,133内に流入しても、この分岐路132,133からエアーベント配管131の本体131aに流入することはU字部で防止されている。
【0034】次に、本発明におけるエンジンの実施の第2の形態について図7を用いて説明する。図7は実施の第2の形態の断面図である。なお、この第2の形態の説明において、前記第1の形態の構成要素に対応する構成要素には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0035】この実施の第2の形態においては、エアーベント配管131の先端部は、左カム室97ではなく、ブローバイ連絡通路102に接続されている。この様に構成すると、エアーベント配管131の長さを短くすることができるとともに、エアーベント配管131をインテクマニホールド66やスロットルボディ71で保護することができる。なお、他の構成は、実施の第1の形態と略同じである。
【0036】以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(1)実施の形態においては、エンジン9はL型4気筒4サイクルエンジンであるが、その気筒数などは適宜変更可能である。また、エンジンを船外機以外に搭載することも可能である。
【0037】(2)左右方向の配置の関係は、反転させることも可能である。
(3)実施の形態においては、インジェクター76は吸気通路31やインテクマニホールド66内に燃料を噴射しているが、インジェクター76をシリンダヘッド22に設けて、燃焼室11a内に直接噴射することも可能である。また、キャブレターでも可能である。
【0038】(4)実施の形態においては、エアーベント配管131は左カム室97やブローバイ連絡通路102に接続されているが、ブローバイ経路であれば、他の箇所でも可能である。たとえば、クランク室19、オイルパン86の上部空間や右カム室99でも可能である。ただし、ブリーザー室103よりも上流側が好ましい。
(5)実施の形態においては、ブリーザーパイプ104はサイレンサー67に接続されているが、吸気系であれば、他の箇所でも可能である。ただし、スロットルボディ71の上流側の集合部で吸気負圧のかからない箇所に戻すことが好ましい。
(6)請求の範囲に明記されていない限り、エアーベント配管131をブローバイ経路に接続しないことも可能である。
【0039】
【発明の効果】本出願の請求項1記載のエンジンによれば、ベーパーセパレータータンクの上部空間とブローバイ経路とがエアーベント配管で連通されており、ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、前記エアーベント配管を介して前記ブローバイ経路に流入している。したがって、ベーパーはブローバイ経路で一時的に滞留かつ薄められてから、吸気系に流入している。その結果、エンジン停止直後の再始動等においても、燃焼室に流入する燃料の濃度が急激に上昇することを防止することができる。そのため、エンジンのストールの発生などが減少する。しかも、ベーパーはブローバイ経路を経て吸気系に流入しているので環境の悪化を極力防止することができる。また、ベーパーを一時的に溜める部分として、ブローバイ経路を利用しているので、別途タンクなどを設けた場合と比して、コストを削減することができる。
【0040】本出願の請求項2記載のエンジンによれば、エアーベント配管が、ベーパーセパレータータンクの上部空間とカム室とを連通しているので、カム室以外の構成は従来と略同じ構造とすることができる。
【0041】本出願の請求項3記載のエンジンによれば、カム室が第1カム室および第2カム室で構成されているとともに、この第1カム室と第2カム室とは互いに連通しており、前記エアーベント配管は第1カム室に接続され、第2カム室は吸気系に接続されている。したがって、ベーパーは第1カム室および第2カム室を順次流れてから、吸気系に流入している。その結果、ベーパーの滞留時間が長くなるとともに、円滑に希釈されている。
【0042】本出願の請求項4記載のエンジンによれば、エアーベント配管はベーパーセパレータータンク側の端部が2股に分岐して、第1分岐路および第2分岐路が形成され、第1分岐路がベーパーセパレータータンクの上部空間の第1端部に、第2分岐路がベーパーセパレータータンクの上部空間の第1端部とは反対側の第2端部に接続されており、かつ、第1分岐路は第1端部から一旦第2端部側に向かってから略U字状に折れ曲がり、第2分岐路は第2端部から一旦第1端部側に向かってから略U字状に折れ曲がっている。したがって、ベーパーセパレータータンクが傾いても、第1分岐路または第2分岐路の少なくとも一方を、ベーパーが流れることができる。しかも、各分岐路はU字状に折れ曲がっており、燃料が分岐路を通って流出することを極力防止することができる。
【0043】本出願の請求項5記載のエンジンによれば、エアーベント配管に圧力チェック弁が設けられており、ベーパーセパレータータンクで発生したベーパーは、圧力チェック弁の設定圧よりも高くなった際に、エアーベント配管を介してベーパーセパレータータンク外に流出している。したがって、圧力チェック弁により、ベーパーセパレータータンクのベーパーの圧力が高くなった際には、ベーパーを流出させて、ベーパーの圧力を下げるとともに、必要以上にベーパーが流出することを極力防止している。
【0044】本出願の請求項6記載のエンジンによれば、戻り流路はクーラーで冷却されているとともに、このクーラーが断熱部材を介してエンジン本体に取り付けられている。したがって、エンジン本体の熱が戻り流路の燃料に伝達されることをクーラーおよび断熱材で極力防止することができる。その結果、ベーパーセパレータータンクでのベーパーの発生を極力防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000176213
【氏名又は名称】三信工業株式会社
【出願日】 平成11年8月26日(1999.8.26)
【代理人】 【識別番号】100103724
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 正夫
【公開番号】 特開2001−65412(P2001−65412A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−240340