| 【発明の名称】 |
内燃機関用シリンダライナ及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】マンフレッド フィッシャー
【氏名】ルドルフ ムンドル
【氏名】ペーター ギョーデル
【氏名】ヴォルフガング ライヒル
【氏名】ヴェルナー トゥルューベンバッハ
【氏名】マルクス ミューラー
【氏名】ラインハルド ロゼルト
|
| 【要約】 |
【課題】軽金属製エンジン用の優れたトライボロジ特性を備えたシリンダライナを提供すること、およびそのシリンダライナを簡単に経済的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】一つの支持体2の上に溶射法、例えばアーク溶射法により耐磨耗層3を溶射し、この耐磨耗層3の上にカバー/結合層5を溶射する方法を備える。耐磨耗層3は過共晶アルミニウム/ケイ素合金を含み、カバー/結合層5は亜共晶アルミニウム/ケイ素合金を含む。この両方の層の間に例えば鉄製の融着阻止層4を設けることができる。融着阻止層4はその際両方のアルミニウム/ケイ素合金よりも高い融点を有し、シリンダライナをシリンダボアに鋳込む際の耐磨耗層3の溶着を防止する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体(2)の上に1層の耐磨耗層(3)を溶射し、次に前記耐磨耗層(3)の上に1層のカバー/結合層(5)を溶射した、内燃機関用のシリンダライナ(1)を製造する方法において、前記耐磨耗層(3)は一種の過共晶のアルミニウム/ケイ素合金を有し、また前記カバー/結合層(5)は一種の共晶または亜共晶のアルミニウム/ケイ素合金を有することを特徴とする内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項2】 前記溶射法はアーク溶射法を含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項3】 前記アーク溶射法において、一種のケイ素合金を充填した1個の密閉被覆付きの充填ワイヤを使用することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項4】 前記耐磨耗層(3)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約12.5重量%ないし約50重量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項5】 前記耐磨耗層(3)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約15重量%ないし約40重量%であることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項6】 前記耐磨耗層(3)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約20重量%ないし約30重量%であることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項7】 前記耐磨耗層(3)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約25重量%であることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項8】 前記カバー/結合層(5)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約2重量%ないし約12重量%であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項9】 前記カバー/結合層(5)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約3重量%ないし約9重量%であることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項10】 前記カバー/結合層(5)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約4重量%ないし約6重量%であることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項11】 前記カバー/結合層(5)の前記アルミニウム/ケイ素合金のケイ素含有量は約5重量%であることを特徴とする請求項10に記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項12】 前記耐磨耗層(3)と前記カバー/結合層(5)との間に、前記耐磨耗層(3)および前記カバー/結合層(5)よりも高い融点を備えた1種の材料からなる一層の融着阻止層(4)を設けたことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項13】 前記融着阻止層(4)の材料は鉄を含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項14】 前記支持体(2)はアルミニウムまたは1種のアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項15】 前記支持体(2)は最初はシリンダライナ(1)の中に残してあり鋳込み後に初めて回して取り出すことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の内燃機関用シリンダライナの製造方法。 【請求項16】 シリンダボアの中に鋳込むための内燃機関用シリンダライナにおいて、本ライナが1種の過共晶のアルミニウム/ケイ素合金製の1層の耐磨耗層(3)とその上に配置した1種の共晶または亜共晶のアルミニウム/ケイ素合金製の1層のカバー/結合層(5)とを有することを特徴とする内燃機関用シリンダライナ。 【請求項17】 前記耐磨耗層(3)と前記カバー/結合層(5)との間に、前記耐磨耗層(3)および前記カバー/結合層(5)よりも高い融点を備えた1種の材料からなる1層の融着阻止層(4)を配置したことを特徴とする請求項16に記載の内燃機関用シリンダライナ。 【請求項18】 前記融着阻止層(4)は鉄を含むことを特徴とする請求項17に記載の内燃機関用シリンダライナ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、軽金属製内燃機関用のシリンダライナを溶射により製造する方法、並びに本方法により製造したシリンダライナに関する。 【0002】 【従来の技術】鋳鉄合金またはアルミニウム合金製のエンジンブロックを備えた内燃機関において、エンジンブロックのシリンダボアにシリンダライナを挿入することはたびたび行われている。このライナは円筒形の短管で、その内面によりエンジンの中で燃焼室の燃焼空間を限定し、その際その内面は同時にピストンリングの摺動面となる。その大きな磨耗負荷に耐えるように、シリンダライナの材質には耐磨耗性の鋳鉄合金または鋼合金あるいは焼結材料が使用される。ライナの摺動面は更に費用の掛かる切削加工が必要で、場合によっては摺動面に耐磨耗性の皮膜を設ける。 【0003】ドイツ特許第196 05 946 C1号には、耐磨耗性の優れた、最適の薄い肉厚のシリンダライナを簡単に経済的に製造し、それを自立性の部品としてエンジンブロックに挿入することのできる、シリンダライナの製造方法が開示してある。成形体(支持体)となる芯金の外面に溶射により第一の耐磨耗層を形成し、その上にカバー層を設け、最後に形成されたシリンダライナを芯金から引き抜く。 【0004】自動車製造においては往復動内燃機関のねずみ鋳鉄製クランクケースが、自動車総重量を軽減して燃料消費率を改善するために、益々軽金属製クランクケースに置き換えられている。軽金属製のクランクケースの製造には、経済的、技術的理由から低合金アルミニウム、例えばAlSi9Cu3のダイカストが使用される。この種の合金は、エンジン製造に定評があるが著しく費用の掛かる過共晶アルミニウム/ケイ素合金の大気圧鋳物、例えばAlSi17に比べて、アルミニウムピストンおよびピストンリングとの接触の際の摩擦特性および磨耗特性が思わしくなく、そのため摩擦の相手側の材質としては不適当である。従って軽金属エンジンの場合にも、ねずみ鋳鉄または過共晶アルミニウム/ケイ素合金製のトライポロジ的に適したライナの鋳込みを無くすることはできない。 【0005】ドイツ公開特許公報第197 33 205 A1号には、一種の過共晶アルミニウム/ケイ素合金および/または一種のアルミニウム/ケイ素複合材を備えた鉄、アルミニウムまたはマグネシウム系の往復動機関のシリンダの摺動面の皮膜とこの皮膜の製造方法とが開示されている。この皮膜は直接エンジンブロックのシリンダボアの内面に施工され、それには、回転するユニットの上に設けた、シリンダボアの中心軸を中心に回転可能な内部バーナをシリンダボアの中に挿入して軸方向に動かすか、あるいは回転するクランクケースのシリンダボアの中に内部バーナを挿入してシリンダボアの中心軸に沿って軸方向に動かして、シリンダ壁に溶射により皮膜を形成する。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】シリンダボアの内壁に直接皮膜を形成するには、皮膜を均一に形成することができるように、内部バーナを備えた複雑なユニット自体がボアの中で回転しなければならない。一方、内部バーナが回転しない第2の方法では、シリンダボアを備えたエンジンブロック全体が内部バーナを中心に回転する必要がある。この両方の方法は構成し実施するのに手間と費用が掛かりすぎる。従って、軽金属製エンジンのシリンダボアに挿入ないし鋳込むことができるシリンダライナを製造する簡単な方法が要望されている。 【0007】従って本発明の目的は、軽金属製エンジン用の優れたトライボロジ特性を備えたシリンダライナを簡単に経済的に製造する方法を提供することにある。更に本発明の目的は、本発明の方法により製造可能で軽金属製エンジンのシリンダボアの中に挿入可能なシリンダライナを提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の内燃機関用シリンダライナの製造方法は、支持体の上に1層の耐磨耗層を溶射し、次に前記耐磨耗層の上に1層のカバー/結合層を溶射した、内燃機関用のシリンダライナを製造する方法において、前記耐磨耗層は一種の過共晶のアルミニウム/ケイ素合金を有し、また前記カバー/結合層は一種の共晶または亜共晶のアルミニウム/ケイ素合金を有することを特徴とする。 【0009】また、本発明の内燃機関用シリンダライナは、シリンダボアの中に鋳込むための内燃機関用シリンダライナにおいて、本ライナが1種の過共晶のアルミニウム/ケイ素合金製の1層の耐磨耗層とその上に配置した1種の共晶または亜共晶のアルミニウム/ケイ素合金製の1層のカバー/結合層とを有することを特徴とする。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明の方法においては、アルミニウム製の一つの支持体に、1種の過共晶のアルミニウム/ケイ素合金の1層を溶射法により皮膜として形成する。過共晶のアルミニウム/ケイ素合金とは本明細書においては、(アルミニウムの中の)ケイ素の含有量が、共晶混合比率の合金の(アルミニウムの中の)ケイ素の含有量よりも多い合金のことである。二元システムにおいて共晶とは、二つの物質の一つが全く特定の比率を有する混合物 − 共晶混合物 − のことで、この二つの物質は固相では混合しないが液相では完全に混合する。二元システムの状態図において、最低の可能な融点を共晶点と称する。この共晶点において溶融物ないし溶液、溶融物または溶液を形成する固体としての成分、および気相がそれぞれ単独に互いに平衡状態にある。共晶点における二元システムの混合比率が共晶混合比である。アルミニウム/ケイ素合金において共晶混合物のケイ素の含有量は約12重量%である。ライナのカバー/結合層を次に亜共晶または共晶のアルミニウム/ケイ素合金から、同様に溶射法により皮膜として形成する。このカバー/結合層は、シリンダライナの鋳込みの際にその組成によりシリンダボアの内面に対して優れた結合性を示す。亜共晶合金は共晶合金よりもケイ素の含有量が少ない。 【0011】アルミニウム/ケイ素合金から両方の層を皮膜として形成するにはアーク溶射法を使用するのが好ましい。 【0012】アーク溶射法には密閉した被覆を備えた充填ワイヤを使用するのがよい。充填ワイヤには1種のケイ素合金、好ましくはケイ素粒子を、方向を定めた振動により充填する。次に延伸およびロール圧延工程によりワイヤを最終直径に減少して、粒子を粉砕し均質に分散する。この方法により溶射された層も均質になる。また延伸および圧延工程によりワイヤの表面が固化される。この表面の固化はワイヤの一様な良好な送給可能性に効果がある。溶射層の多成分の合金組成は充填ワイヤの合金組成により制御可能である。 【0013】耐磨耗層用の多成分のアルミニウム/ケイ素合金は、ケイ素の含有量として約12.5重量%ないし約50重量%の範囲が好ましい。更に好ましいのはケイ素の含有量が約15重量%ないし約40重量%の範囲、特に好ましいのは約20重量%ないし約30重量%の範囲で、最も好ましいのは耐磨耗層のケイ素の含有量が約25重量%である。 【0014】続いて形成されたカバー/結合層は約2重量%ないし約12重量%の範囲のケイ素含有量を有するのが有利である。更に好ましいのはケイ素の含有量が約3重量%ないし約9重量%の範囲、特に好ましいのは約4重量%ないし約6重量%の範囲で、最も好ましいのはカバー/結合層のケイ素の含有量が約5重量%である。僅かなケイ素含有量がシリンダボアの内壁への結合性を向上させる。 【0015】アルミニウム/ケイ素合金の両方の層、すなわち耐磨耗層とカバー/結合層との間に、両方のアルミニウム/ケイ素合金の層よりも高い融点を有する融着阻止層を1層設けるのが有利である。シリンダライナをシリンダボアに鋳込む場合に、融着阻止層がないと、過共晶アルミニウム/ケイ素合金製の耐磨耗層が融着ないし完全に溶融するおそれがある。融着阻止層は両方のアルミニウム/ケイ素合金の間の断熱層ないし熱的保護層として作用し、耐磨耗層の過共晶アルミニウム/ケイ素合金が融着ないし溶融するのを防止する。 【0016】鉄は両方のアルミニウム/ケイ素合金よりもはるかに高い融点を有するので、融着阻止層用の材料に鉄を使用するのが特に好ましい。 【0017】好ましくは前記支持体はアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成する。 【0018】支持体は鋳込んだ後で切削加工するのが好ましく、そうすればどうしても実施しなければならないシリンダライナの切削加工の際に過共晶層を比較的僅かに切削するだけでよいので、経費を節減できる。 【0019】過共晶アルミニウム/ケイ素合金製の耐磨耗層と、共晶または亜共晶アルミニウム/ケイ素合金製のカバー/結合層とを有するシリンダライナが好ましい。 【0020】シリンダライナは、耐磨耗層とカバー/結合層との間に、両方のアルミニウム/ケイ素合金の層よりも高い融点を有する一つの融着阻止層を備え、シリンダライナをシリンダボアに鋳込む際の耐磨耗層の融着を防止するようにするのが好ましい。 【0021】融着阻止層は鉄を含むのが有利である。鉄は耐磨耗層およびカバー/結合層を形成するアルミニウムと珪素との合金よりもはるかに高い融点を有する。 【0022】こうして本発明により軽金属製エンジン用のシリンダライナを得ることができ、これは本発明の方法により簡単に経済的に製作可能である。また本発明によれば更に最適の耐磨耗性とトライボロジ特性を備えたシリンダライナを製作することができる。 【0023】 【実施例】本発明の実施例を図1に示す。シリンダライナ1は上下に重なった4層により形成される。アルミニウム製支持体2の外周面に過共晶アルミニウム/ケイ素合金製の耐磨耗層3が溶射法により設けられる。この実施例の溶射法はアーク溶射法である。耐磨耗層3は好ましくはアルミニウム/ケイ素合金の中に約25重量%のケイ素を含有する。一般にこの合金の含有量は、重量%でアルミニウム60〜85%、ケイ素15〜40%、マグネシウム最大3%、マンガン最大5%、ホウ素最大2%である。その際アルミニウムは約75%が好ましい。この層3の上に鉄製の融着阻止層4を設けて、シリンダライナをシリンダボアに鋳込む際の耐磨耗層3の溶着を防止する。その上に設けたカバー/結合層5は亜共晶アルミニウム/ケイ素合金を含み、そのケイ素含有量は約5重量%で、その他は主としてアルミニウムである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】501157748 【氏名又は名称】フェデラル−モーグル フリードベルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
|
| 【出願日】 |
平成13年4月18日(2001.4.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100086368 【弁理士】 【氏名又は名称】萩原 誠
|
| 【公開番号】 |
特開2001−355509(P2001−355509A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2001−119147(P2001−119147) |
|