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【発明の名称】 往復ピストン機関
【発明者】 【氏名】アルネ・クヴィストガード・ペーターセン

【要約】 【課題】冷却剤の熱吸収能力の優れた、往復ピストン機関を提供することを目的とする。

【解決手段】往復ピストン機関であって、シリンダ1の内部に配置されていて円周側を取り囲むピストンリングを備えたピストン2を備え、ピストンは、フランジ4を備えたピストンロッド3に受容されるとともに、ピストンロッド3に設けられている冷却剤で供給可能な上昇管15と連通しかつ周囲を取り囲むピストン外套8の領域に設けられた軸平行な冷却穴12を有しており、冷却穴は半径方向の処分通路17を介してピストンロッド3に設けられた還流管18と連通しているものにおいて、軸に平行な各冷却穴12には、還流管18に通じる少なくとも1つの処分通路17が配設されており、処分通路17の少なくとも冷却穴側の端部領域はピストン軸に対して半径方向外側へ向かって上昇するように傾斜していることによって、冷却作用の向上が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 往復ピストン機関、特に2サイクル大型ディーゼルエンジンであって、シリンダ(1)の内部に配置されかつ円周側を取り囲むピストンリングを有するピストン(2)を備え、該ピストンは、有利にはフランジ(4)を備えたピストンロッド(3)に受容されるとともに、前記ピストンロッド(3)に設けられかつ冷却剤で供給可能とされた上昇管(15)と連通する冷却穴であって、周囲を取り囲むピストン外套(8)の領域に設けられかつ軸平行な冷却穴(12)を有しており、該冷却穴は半径方向の処分通路(17)を介して前記ピストンロッド(3)に設けられた還流管(18)と連通して成る往復ピストン機関において、軸平行な前記冷却穴(12)には、前記還流管(18)に通じる少なくとも1つの処分通路(17)が配設され、前記処分通路(17)の少なくとも前記冷却穴側の端部領域はピストン軸に対して半径方向外側へ向かって上昇するように傾斜していることを特徴とする往復ピストン機関。
【請求項2】 前記冷却穴(12)の下側端部に冷却剤備蓄(19)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の往復ピストン機関。
【請求項3】 前記冷却穴(12)のそれぞれがその下側端部で、周囲を取り囲む環状通路(16)によって相互に接続されており、前記環状通路から前記処分通路(17)が分岐しており、前記処分通路(17)の前記環状通路の方を向いた端部は前記環状通路(16)の底面よりも高く配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の往復ピストン機関。
【請求項4】 前記処分通路(17)の前記環状通路側の端部と前記環状通路(16)の底面との間隔がピストン直径の1/15から1/10の範囲内にあり、有利にはピストン直径の1/12であることを特徴とする請求項3に記載の往復ピストン機関。
【請求項5】 前記処分通路(17)の前記環状通路側の端部と前記環状通路(16)の底面との間隔がピストン直径の1/15から1/10であり、有利にはピストン(2)の直径の1/12であることを特徴とする請求項3記載の往復ピストン機関。
【請求項6】 前記処分通路(17)のそれぞれの少なくとも上側の端部領域の軸線と、それぞれの前記冷却穴(12)の軸線とが一つの平面上に位置していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の往復ピストン機関。
【請求項7】 前記処分通路(17)の少なくとも上側の端部領域の軸線が、前記ピストンリングパッケージ(9)の上側領域の高さでそれぞれの前記冷却穴(12)の対向する壁領域を通過することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の往復ピストン機関。
【請求項8】 前記処分通路(17)の少なくとも上側の端部領域がノズル穴として構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の往復ピストン機関。
【請求項9】 前記処分通路(17)がその長さ全体にわたって半径方向外側に向かって上昇するように傾斜していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の往復ピストン機関。
【請求項10】 前記処分通路(17)が、前記ピストンロッド(3)の前記フランジ(4)を貫通するまっすぐな穴として構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の往復ピストン機関。
【請求項11】 すべての前記処分通路(17)の内のりの断面の合計が、前記上昇管(15)ないし前記還流管(18)の内のりの横断面積に相当することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項記載の往復ピストン機関。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、往復ピストン機関、特に2サイクル大型ディーゼルエンジンであって、シリンダの内部に配置されていて円周側を取り囲むピストンリングを備えたピストンを備えており、このピストンは、有利にはフランジを備えたピストンロッドに受容されるとともに、ピストンロッドに設けられている冷却剤を供給可能な上昇管と連通する、周囲を取り囲むピストン外套の領域に設けられかつ軸平行な冷却穴を有しており、この冷却穴は半径方向の処分通路を介して、ピストンロッドに設けられた還流管と連通している往復ピストン機関に関する。
【0002】
【従来の技術】このような種類の構成は例えばデンマーク国特許第161405号特許公報において知られている。この公知の構成では、還流管に通じる処分通路がピストン軸に対してほぼ垂直に延びている。この場合、ピストン軸に対して平行な方向の慣性力は、ピストン軸に対して垂直に延びる処分通路に含まれる冷却剤を加速させるのに利用することができない。したがって、上死点の手前でピストンが減速するときに生じるような上方に向いた慣性力の作用のもとで、処分通路にある冷却剤を冷却穴に導入することも不可能である。このことは、公知の構成において円周上での不均一な冷却につながりかねない。この場合、それぞれの冷却穴に処分通路が割り当てられていないからである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって以上を前提とする本発明の課題は、冒頭に述べた種類の構成を簡単かつ低コストな手段で改善して、冷却剤の熱吸収能力の優れた活用が達成されるようにすることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題は本発明によれば、軸平行な各冷却穴には、還流管に通じる少なくとも1つの処分通路が配設されており、処分通路の少なくとも冷却穴側の端部領域はピストン軸に対して半径方向外側へ向かって上昇するように傾斜していることによって解決される。
【0005】この方策によって上述した課題はきわめて簡単かつ低コストな方法で解決される。処分通路の少なくとも冷却穴側の端部領域が傾斜しているので、例えば上死点の手前でピストンが減速する際に起こるような上方向への慣性力が生じると、処分通路に含まれる冷却剤、および還流管の内部で押し上げられた冷却剤が冷却穴に噴射され、このことは冷却穴における強力な乱流とこれに伴う優れた熱伝達につながる。このとき冷却穴に噴射される冷却剤は、開口領域に軸方向で対向するそれぞれの冷却穴の壁領域に当たるとともに、該穴の壁部を伝ってピストン頭頂部の領域にある上側の穴端部にまで上昇し、この上側の穴端部に冷却剤が流れるので穴の壁部と同様に冷却される。それによって噴射された冷却剤は特に高温のピストンの領域に到達するので、格別に優れた冷却効果を得ることができる。それぞれの冷却穴に処分管が配設されているので、有利なことに、ピストン円周上で均等な冷却が得られ、それによってピストン内部の熱応力への対処がなされる。
【0006】主請求項の方策の有利な実施形態と目的に適った発展形は、従属請求項に記載されている。例えば冷却穴は有利にはその下側の領域で、周囲を取り囲む環状通路によって接続されていてよく、この環状通路から還流管に通じる処分通路が分岐しており、このとき処分通路の環状通路側の端部は環状通路の底面よりも高く配置される。このことは、有利なことに、下側のピストン領域にある冷却剤備蓄を生じさせ、この冷却剤備蓄からは冷却剤が流出することができない。この冷却剤備蓄は下側の冷却されたピストン領域にあるので、冷却剤も冷却される。上方向への慣性力が生じると、環状通路によって形成された冷却剤備蓄に含まれている冷却剤が冷却穴に跳ね上げられ、その際に同じく、ピストン頭頂部に配設された上側の冷却穴端部の領域にまで到達する。このとき、環状通路によって形成された冷却剤備蓄から跳ね上げられた冷却剤を、処分通路を介して噴出された冷却剤が横切るので強力な渦流と乱流が発生し、このことは熱伝達に対してプラスに作用する。
【0007】有利には、それぞれの処分通路の少なくとも冷却穴側の端部領域の軸線と、それぞれの冷却穴の軸線とは一つの平面上に配置されていてよい。この方策は、冷却穴に噴射された油がうまく冷却穴の上側の端部領域まで上昇できることを保証する。
【0008】主請求項の方策の目的に適ったさらに別の実施形態の要諦は、処分通路の少なくとも冷却穴側の端部領域の軸が、ピストンリングパッケージの上側領域の高さでそれぞれの冷却穴の対向する壁領域を通過することにある。このピストンリングパッケージの上側領域は強い熱負荷を受けるので、噴射される冷却剤によってこの熱負荷を下げることができる。それと同時に、冷却剤がここを起点としていっそう確実に冷却穴の上側の端部領域まで到達できることが保証される。
【0009】有利には、処分通路の少なくとも冷却穴側の端部領域がノズル穴として構成されていてよい。このことは所望のジェット効果を生むとともに、冷却剤の格別に優れた渦流と強力な乱流を生み、このことは熱伝達に対して有利に作用する。
【0010】主請求項の方策のさらに別の有利な実施形態と目的に適った発展例は残りの従属請求項に記載されているとともに、図面を参照した以下の実施形態の説明から詳細に読み取ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の主要な利用分野は例えば2サイクル大型ディーゼルエンジンのような大型のクロスヘッド型エンジンであり、そのピストンはピストンロッドを介してクロスヘッドと連結されている。図1はこのような種類のエンジンの、シリンダ1の内部に配置されたピストン2を示している。ピストン2はピストンロッド3を介して詳しくは図示しないクロスヘッドと連結されている。大型のクロスヘッド型エンジンの基本構造はそれ自体公知であり、したがって本件との関連ではこれ以上説明する必要をみない。
【0012】ピストンロッド3はその上側の領域に、フランジ4によって区切られたピン5を備えており、このピンはピストン2の中央の切欠き6に係合している。この切欠きは上方に向かってはピストン底面7で区切られるとともに、円周側では周囲を取り囲むピストン外套8によって区切られており、このピストン外套はその下側の縁部の半径方向内側の領域でピストンロッド3のフランジ4の上に着座している。ピストン外套8は、ピストンリングパッケージ9を構成する円周側を取り囲むピストンリングを備えるとともに、フランジ4の半径方向外側では付加されたピストンカバー10によって延長されており、このピストンカバーは半径方向内側の鍔11でピストンロッド3のフランジ4に当接している。
【0013】ピストン外套8は、ピストンロッド3のフランジ4の上に着座している領域の外側に、上側のピストン領域まで達する軸に平行な冷却穴12を備えている。冷却穴12のドーム状になった上側の端部は、縁側のピストン頭頂部13のすぐ下側に位置している。図2からもっともよくわかるように、冷却穴12は円周上で均等に配分されるとともに互いにすぐ隣接して配置されているので、ピストン2は実質的にその円周全体で冷却を受けることができる。
【0014】軸平行な冷却穴12の上側の端部は、周囲を取り囲むピストン外套8の隣接する領域を横断するそれぞれ1つの供給管14によって、中央の切欠き6と接続されている。この切欠きは、ピストンロッド3に設けられた中央の上昇管15を介して冷却剤で供給可能である。冷却剤はそれ自体公知のやり方で、クロスヘッドを貫通する穴システムを介して上昇管15に供給される。このときピストン2の中央の切欠き6は分配室として機能し、流れの矢印で示唆されているように、この分配室を起点として冷却剤が供給通路14を介して冷却穴12に供給される。
【0015】冷却穴12はここでは下側の領域で、周囲を取り囲む環状通路16によって相互に接続されており、この環状通路は一部がピストン外套8、一部がピストンカバー10にそれぞれ穿設されるとともに、この環状通路の半径方向内側の仕切はピストン外套8の下側ではピストンロッド3のフランジ4の円周面によって形成されている。
【0016】環状通路16から、ピストンロッド3のフランジ4を横断する処分通路17が分岐しており、この処分通路は、ピストンロッド3に設けられていて中央の上昇穴15を環状に取り囲む還流管18へと通じている。処分通路17はここではフランジ4を横断する穴として構成されており、この穴は、半径方向外側に向かって上昇して延在するようにピストン軸に対して傾斜している。それによって図1に符号aで示唆されているように、処分通路17を形成する穴と、フランジ4の上にあるピストン外套8の着座面との間に比較的大きな平均距離が得られる。
【0017】それぞれの冷却穴12に処分通路17が配設されている。このとき、それぞれの冷却穴12の軸線と、各処分通路17を形成する穴の軸線は、図2からわかるようにそれぞれ一つの平面上にある。ピストンロッド3のフランジ4を横断する穴として構成された処分通路17は、図1から明らかなように環状通路16から分岐している。このとき処分通路17を構成する穴の環状通路側の端部は、鍔11で形成される環状通路16の底面よりも高さhの間隔だけ上に位置している。この間隔はピストン直径の1/15から1/10であるのが目的に適っており、有利にはピストン直径の1/12である。それに応じて処分通路17は、図1に水準線19で示唆されている環状室16の液体水位を可能にするオーバーフロー通路を構成する。
【0018】上昇管15を介してピストン2の中央の切欠き6に供給された冷却剤は供給管路14を介して冷却通路12に達し、処分通路17を介して、エンジンに配設された冷却システムの還流分岐管と接続還流管18へと送り返される。処分通路17の環状通路側の入口は環状通路16の底面よりも間隔hだけ高く位置決めされているので、環状通路16の内部には、処分通路17を介して流出することのできない冷却剤が留められる。それに伴って、水準線19で示唆されている冷却剤備蓄が生成される。
【0019】ピストンが上死点に達する手前で減速したときに起こるように、ピストン2とピストンロッド3に含まれている冷却剤に対して上方向への慣性力が作用すると、冷却剤備蓄19を形成している冷却剤が跳ね上げられて、環状通路16から分岐しているつまり環状通路16に対して開いている冷却穴12の中へ入る。このとき、この冷却剤は冷却穴12のドーム状になった上側の端部領域にも触れて流動し、それによってピストン頭頂部13が追加的な冷却を受ける。それと同時に上方を向いた慣性力の結果として、処分通路17に含まれている冷却剤と、還流管18の内部で下から押し上げられて処分管17に配分された冷却剤とが、通常の処分方向とは反対方向にピストン2に供給される。
【0020】このとき処分通路17を構成する穴の直径は、いわゆるジェット効果が生じる程度に小さい。したがってピストンに運び戻された冷却剤はノズル状に噴射され、このことは優れた渦流と強力な乱流を生成し、それに伴って優れた熱伝達を保証する。処分通路17の入口は環状通路16の上側領域にあり、処分通路17を構成する穴は半径方向外側に向かって上昇しているので、冷却穴12への冷却剤の噴射が行われ、冷却穴の内部では冷却剤がさらに上昇する。図2から明らかなように、それぞれの冷却穴12に処分通路17が配設されているのでそれぞれの冷却穴12が相応に供給され、このことはピストン円周全体にわたる均等な冷却作用を保証する。
【0021】処分通路17を構成する穴の、ピストン軸に対する傾斜は、それぞれの処分通路17からそれぞれの冷却穴12に噴射される冷却剤がリングパッケージ9の上側領域で、処分通路17の環状通路側の端部に対向するそれぞれの冷却穴12の壁領域に当たるように設定され、このことは熱による高い負荷を受ける前記領域の優れた冷却を保証する。それぞれの冷却穴12の軸線と、それぞれの処分通路17を構成する穴の軸線とは一つの平面上に位置しているので、噴射される冷却剤は各冷却穴12の壁を伝って容易に上昇することもできる。この上昇する冷却剤も冷却穴12の上側の端部領域を通って流動するので、同じく熱によって非常に強い負荷を受けるピストン頭頂部13が追加的な冷却を受けることになる。噴射された冷却剤はそれと同時に強力な渦流と乱流を引き起こし、このことが優れた熱伝達を保証する。
【0022】上昇管15の内のりの断面積は、還流管18の内のりの断面積にほぼ相当している。この横断面には、供給通路14ないし処分通路17のすべての断面積の合計もほぼ対応している。それぞれの冷却穴12に1つの処分通路17が配設されているので、図2からわかるように、処分通路17を構成する穴の比較的小さな直径と、これに伴う所望のジェット効果とが自ずと得られる。
【0023】以上には本発明の有利な実施形態を詳しく説明したが、これに限定しようとするものではない。むしろ当業者であれば、本発明の一般的思想を個別ケースの状況に適合させるために一連の可能性を利用することができる。例えば、それぞれの冷却穴12に2つ以上の処分管17を配設することも容易に可能である。同様に、簡単なケースでは冷却穴12の下側端部に設けられた環状通路を省略することもできる。冷却剤備蓄を生成させるために単に冷却穴16を十分に深く施工することができ、すなわちこの場合には冷却穴16の下側端部が処分通路の入口よりもほぼ間隔hだけ下側に位置決めされることになる。
【出願人】 【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・ビー・アンド・ダブリュ・ディーゼル・エーエス
【出願日】 平成12年12月21日(2000.12.21)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外7名)
【公開番号】 特開2001−227409(P2001−227409A)
【公開日】 平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願番号】 特願2000−389498(P2000−389498)