| 【発明の名称】 |
アルミ合金製内燃機関用ピストン |
| 【発明者】 |
【氏名】宮坂 一
【氏名】松川 治明
【氏名】高田 亮太郎
【氏名】丸井 勇治
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| 【要約】 |
【課題】軽量化や摺動抵抗の減少を図ることができ、かつ耐久性に優れたアルミ合金製内燃機関用ピストンを提供する。
【解決手段】アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、スカート部20,25を対向する一対で構成し、スカート部20,25の対向する一端20a,25a同士及び他端20b,25b同士を壁部30,32で連結することで、壁部30,32とスカート部20,25とで略矩形を形成させ、且つ壁部30,32の中央にピンボス部35,37を膨出形成し、スカート部20,25の外側表面21,26にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜50,50を備え、陽極酸化皮膜50,50の微細な孔に潤滑剤を含浸させた部材である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンロッド側から見たときに、スカート部を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結することで、これら壁部と前記スカート部とで略矩形を形成させ、且つ前記壁部の中央にピンボス部を膨出形成したアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、前記スカート部の外側表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を備え、陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑剤を含浸させたことを特徴とするアルミ合金製内燃機関用ピストン。 【請求項2】 前記ピンボス部の下端をスカート部の下端より延したことを特徴とする請求項1記載のアルミ合金製内燃機関用ピストン。 【請求項3】 前記壁部がスカート部に交わる部位において、この部位の内壁を円弧状に形成したことを特徴とする請求項1記載のアルミ合金製内燃機関用ピストン。 【請求項4】 前記スカート部の肉厚を壁部の肉厚より薄くしたことを特徴とする請求項1記載のアルミ合金製内燃機関用ピストン。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はアルミ合金で鋳造した内燃機関用のピストンに関する。 【0002】 【従来の技術】自動車の燃費やエンジン出力を向上させるために、軽量化や摺動抵抗を減少させた内燃機関用のピストンが知られている。このピストンの代表的な例として、特開平6−346787号公報「内燃機関のピストン」が提案されている。この技術を、次図で詳しく説明する。 【0003】図12は従来の内燃機関用ピストンの側面図である。ピストン100は、スカート部102,102(奥側のスカート部102は図示せず)をピンボス部104,104の両側に備え、スカート部102の長さL、ピストン100の外径Dおよびスカート部104の投影面積(斜線で示した領域)Sの関係を、0.4>S/(D・L)となるように設定したものである。このピストン100によれば、スカート部102を全周にわたって形成しなくてもよいので、スカート部102を小さくしてピストン100の軽量化を図り、かつピストン100の摺動面積を小さくしてピストン100の摺動抵抗の減少を図ることが可能になる。 【0004】一方、スカート部102の投影面積Sを小さくするとスカート部102の面圧が高くなり、万一油膜切れが生じた場合にスカート部102にスカッフィング(scuffing:摺動面が溶着を起こすこと)等の不具合が発生することが考えられる。従って、油膜切れが生じた場合でも、スカート部102にスカッフィング等の不具合が発生することを防ぐために、スカート部102の表面に固体潤滑剤(例えば、二硫化モリブデン)をコーティングする。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、固定潤滑剤は樹脂ベースの潤滑剤であり耐摩耗性を十分に確保することが難しく、ピストンの耐久性を十分に高めることができない。従って、軽量化や摺動抵抗の減少を図ることができ、かつ耐久性に優れたピストンが望まれていた。 【0006】そこで、本発明の目的は、軽量化や摺動抵抗の減少を図ることができ、かつ耐久性に優れたアルミ合金製内燃機関用ピストンを提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の請求項1は、コンロッド側から見たときに、スカート部を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結することで、これら壁部と前記スカート部とで略矩形を形成させ、且つ前記壁部の中央にピンボス部を膨出形成したアルミ合金製内燃機関用ピストンであって、前記スカート部の外側表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を備え、陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑剤を含浸させたことを特徴とする。 【0008】一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結して壁部及びスカート部で略矩形を形成することで、スカート部の幅をピンボス部の幅より小さくしてスカート部を幅狭まとする。従って、スカート部を軽量にしてアルミ合金製内燃機関用ピストンの軽量化を図る。また、スカート部及び壁部で略矩形を形成することにより、スカート部を壁部で補強し、スカート部の剛性を高める。 【0009】さらに、スカート部の外側表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を備え、陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑剤を含浸させた。りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細な孔の孔径を大きくする作用があり、ふっ化物には陽極酸化皮膜を平坦にする作用がある。従って、平坦な陽極酸化皮膜の微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させ、潤滑剤を孔内に確実に固着させる。このため、陽極酸化皮膜で耐摩耗性を高めるとともに潤滑剤で摺動抵抗を減らすことができる。 【0010】請求項2において、ピンボス部の下端をスカート部の下端より延したことを特徴とする。ピンボス部の下端をスカート部の下端より延すことにより、スカート部の形状をより小さく軽量にして、アルミ合金製内燃機関用ピストンの軽量化を十分に図る。 【0011】請求項3において、壁部がスカート部に交わる部位において、この部位の内壁を円弧状に形成したことを特徴とする。壁部がスカート部に交わる部位の閉壁を円弧状に形成することで、スカート部の端部に応力が集中することを防ぎ、スカート部の剛性をより高める。 【0012】請求項4において、スカート部の肉厚を壁部の肉厚より薄くしたことを特徴とする。スカート部の肉厚を壁部の肉厚より薄く設定することにより、スカート部をより軽量にして、アルミ合金製内燃機関用ピストンの軽量化を十分に図る。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図1は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の斜視図である。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、Si(シリコン)系アルミニウム合金で形成した部材であって、ピストン頭部12にピストンリング溝13,14及びオイルリング溝15を形成し、オイルリング溝15の下側に一対のスカート部20,25を形成し、一対のスカート部20,25の間に一対のピンボス部35,37(ピンボス部37は図2参照)を形成した部材である。以下、アルミ合金製内燃機関用ピストン10についてさらに詳しく説明する。 【0014】図2は図1の2矢視図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストンをコンロッド側から見た状態を示す。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、コンロッド(図示しない)側から見たときに、一対のスカート部20,25を対向する一対で構成し、これら一対のスカート部20,25の対向する端部(一端)20a,25a同士を壁部30で連結し、スカート部20,25の対向する端部(他端)20b,25b同士を壁部32で連結することで、これら壁部30,32とスカート部20,25とで略矩形を形成させ、且つ壁部30,32の中央にピンボス部35,37を膨出形成したものであって、スカート部20,25の外側表面21,26(網目で示す領域)にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜(特殊な陽極酸化皮膜)50,50を備え、特殊な陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤(図4に示す)を含浸させた部材である。 【0015】加えて、アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、壁部30,32がスカート部20,25に交わる部位(すなわち、スカート部20,25の一端20a,25a及び他端20b,25b)において、これらの部位の内壁40〜43を円弧状に形成し、スカート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より薄く設定した。 【0016】スカート部20,25の対向する一端20a,25aを壁部30で連結し、他端20b,25bを壁部32で連結することで、壁部30,32及びスカート部20,25で略矩形を形成する。このため、スカート部20,25の幅Wをピンボス部35,37の幅W1より小さくすることができる。従って、スカート部20,25を幅狭まとすることで、アルミ合金製内燃機関用ピストン10の軽量化を図ることができる。また、スカート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より薄く設定したので、アルミ合金製内燃機関用ピストン10をより軽量にすることができる。 【0017】一方、スカート部20,25及び壁部30,32で略矩形を形成することにより、スカート部20,25を壁部30,32で補強することができる。従って、スカート部20,25の剛性を高めることができる。また、壁部30,32がスカート部20,25に交わるスカート部の一端20a,25a及び他端20b,25bの内壁40〜43を円弧状に形成したので、スカート部の一端20a,25a及び他端20b,25bに応力が集中することを防ぐことができる。従って、スカート部20,25の剛性をより高めることができる。 【0018】一対のスカート部20,25は、幅W及び長さL(図1に示す)の網目で示した外側表面21,26に特殊な陽極酸化皮膜50,50を備え、特殊な陽極酸化皮膜50,50の微細な孔に潤滑剤を含浸させたものである。なお、特殊な陽極酸化皮膜及び潤滑剤については図4でさらに詳しく説明する。 【0019】図3は図1の3矢視図であり、スカート部20,25の下端22,27(下端27は図1に示す)をピンボス部35,37の下端36,38より延した状態を示す。スカート部20,25の下端22,27をピンボス部35,37の下端36,38より延すことにより、アルミ合金製内燃機関用ピストン10がシリンダ内を移動している際に、スカート部20,25をシリンダに接触させることでピストン10の姿勢を正規の状態に容易に保つことができる。 【0020】図4は図3の4−4線断面図であり、スカート部20の外側表面21に形成した特殊な陽極酸化皮膜50を示す。なお、潤滑剤54として熱硬化性樹脂を使用した例を説明する。特殊な陽極酸化皮膜50は、膜厚t3が略一定で外側表面21を平坦に形成し、外側表面21に微細な孔52・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)を備えたものである。孔52・・・は孔径d1が比較的大きい孔である。このため、孔52・・・に十分な量の潤滑剤(熱硬化性樹脂)54を含浸することができ、含浸した熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着することができる。 【0021】このため、熱硬化性樹脂54を陽極酸化皮膜50の微細な孔52・・・に固着させることで、陽極酸化皮膜50で耐摩耗性を高めるとともに、潤滑剤で摺動抵抗を減らすことができる。加えて、特殊な陽極酸化皮膜50は、外側表面21を平坦にすることで、摺動抵抗をさらに減らすことができる。 【0022】以下、図5で普通の陽極酸化皮膜の形成方法を比較例として説明する。図5(a)〜(c)は内燃機関用ピストンのスカート部に普通の陽極酸化皮膜を形成した比較例を示す。(a)は、硫酸電解液で生成した普通の陽極酸化皮膜を示す。母材としてのアルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部100にSi粒111・・・が分布し、そのうちの表面近傍のSi粒112・・・が陽極酸化皮膜113に悪影響を及ぼして、陽極酸化皮膜113が全体的に凹凸となっている。 【0023】(b)は、(a)の拡大図であり、たまたま表面に出ていたSi粒115の部分には陽極酸化皮膜を形成できずに大きな窪みD1となり、また、表面にごく近いSi粒116の部分には陽極酸化皮膜117が形成できたけれども、膜厚は周囲の陽極酸化皮膜113と比べると小さく、窪みD2ができている。すなわち、Siを含むアルミニウム合金製ピストン100を硫酸電解液で陽極酸化処理をしても、平坦な陽極酸化皮膜113が得られないことが分かった。また、硫酸電解液では、微細な孔118・・・の孔径をd2とすると、d2は一般的に15nm程度と小さいことが分かった。 【0024】(c)は、液状の熱硬化性樹脂を微細な孔118・・・に含浸させ、含浸した液状の熱硬化性樹脂を加熱して硬化樹脂119・・・に変えた状態を示す。樹脂は摩擦抵抗が小さいので、陽極酸化皮膜113,117に硬化樹脂119・・・を含浸させることで、Si系アルミニウム合金製ピストンがシリンダ内を高速で往復移動するときの摺動抵抗は比較的小さくなる。 【0025】しかし、(b)に示したように、陽極酸化皮膜113に窪みD1,D2が発生して陽極酸化皮膜113を平坦に生成することが困難であり、また、陽極酸化皮膜113に発生した微細な孔118・・・の孔径d2が小さいので陽極酸化皮膜113に樹脂119を十分に含有することができない。このため、陽極酸化皮膜113に樹脂119を含浸させても摩擦抵抗を所望の値まで小さくすることはできない。 【0026】以下、図4の断面拡大図に示した特殊な陽極酸化皮膜を形成する方法を説明する。図6は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。 ST10;アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニウム合金製ピストン)のスカート部の外側表面を脱脂する。 ST11;りん酸塩としてのりん酸3ナトリウム及びふっ化物としてのふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して、スカート部の外側表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成する。この陽極酸化皮膜の表面に微細な孔が生成する。 【0027】ST12;ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂を準備し、この液状の熱硬化性樹脂を陽極酸化皮膜の微細な孔に含浸させる。 ST13;微細な孔に含浸した液状の熱硬化性樹脂を加熱することにより硬化させる。これで、本発明に係るアルミニウム合金製ピストンの陽極酸化処理が完了する。以下、Si系アルミニウム合金の陽極酸化処理方法のST10〜ST13を図7〜図8で詳しく説明する。 【0028】図7(a),(b)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第1説明図である。(a)は、ST10(脱脂)後の状態を示す図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部20の外側表面21aを脱脂した状態を示す。スカート部20の外側表面21aの近傍にはアルミニウムにSi粒55,56,57が分散している。 【0029】(b)は、ST11(特殊な陽極酸化皮膜処理)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及びふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸化皮膜50を生成した状態を示す。りん酸3ナトリウムの腐食作用でスカート部20の外側表面21a((a)に示す)が溶解して、Si粒55,56,57が露出する。露出したSi粒55,56,57がふっ化カリウムの作用で溶解して小さくなる。 【0030】このため、スカート部20の外側表面21aにSi粒55,56,57が存在するにも拘らず、陽極酸化皮膜50が良好に成長する。この結果、陽極酸化皮膜50の外側表面21が揃うので、面粗度は小さくなり、膜厚t3はほぼ一定となる。また、電解液にはりん酸3ナトリウムを含むため、りん酸3ナトリウムの孔径を大きくする作用で、微細な孔52・・・の孔径d1は略100nmと十分に大きくなる。 【0031】図8(a),(b)は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第2説明図である。(a)は、ST12(樹脂含浸処理)後の状態を示す図であり、ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂53を準備し、この液状の熱硬化性樹脂53を陽極酸化皮膜50の孔52・・・に含浸した状態を示す。孔52・・・の孔径d1が100nmと大きいので、多量の熱硬化性樹脂53を孔52・・・内に含浸させることができる。なお、熱硬化性樹脂53は溶媒希釈しなくても液状をなす樹脂である。 【0032】(b)は、ST13(樹脂硬化処理)後の状態を示す図であり、オーブンのコイル58から矢印の如く熱を伝えることにより液状の熱硬化性樹脂53を加熱する。液状の熱硬化性樹脂53が硬化して熱硬化性樹脂54となる。これで、図4に示す特殊な陽極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂53を含浸させた状態になる。 【0033】本発明によれば、りん酸3ナトリウムには微細な孔52・・・の孔径を大きくする作用がある。このため、陽極酸化皮膜50の微細な孔52・・・を大きな孔径d1にすることができる。従って、陽極酸化皮膜50に多量の熱硬化性樹脂54を含浸することができ、且つ含浸した熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着することができる。この結果、摺動抵抗を減らすことができ、かつ耐久性を高めることができる。一方、ふっ化カリウムにはSiを溶解する作用と増膜作用とがある。このため、陽極酸化皮膜50の外側表面21を平坦にすることができるので、摺動抵抗をより減らすことができる。 【0034】さらに、熱硬化性樹脂54に含有したふっ素樹脂は、耐摩耗性や耐熱性に優れており、熱硬化性樹脂54を耐摩耗性や耐熱性に優れた樹脂にすることができる。従って、熱硬化性樹脂54を、例えば100℃〜300℃以上の高温において使用することができるので、ピストンのような高温状態で使用する部材に好適である。 【0035】 【実施例】本発明に係る実施例及び比較例を表1、表2及び図9に基づいて説明する。 共通条件:供試材 AC8C(JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物) 成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳物である。 【0036】 【表1】
【0037】 【表2】
【0038】実施例:アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部の外側表面を脱脂した後、0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、スカート部の外側表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成した。特殊な陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d1(図8(a)参照)が100nmと大きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3μmと平坦である。なお、Rmaxは、JIS B 0601で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上「表面最大粗さRmax」を表記した。 【0039】次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmHgの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレート(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレートを硬化した。この結果、面圧30kgf/cm2で摩擦係数μを0.006と小さくすることができた。なお、摩擦係数μについては図9のグラフで詳しく説明する。なお、パーフロロオクチルエチルメタクレートの化学式は以下の通りである。 【0040】 【化1】
【0041】比較例:アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部の外側表面を脱脂した後、15%硫酸の電解液で、電解液温度を0℃、電圧を15Vとして20分間電気分解して、アルミニウム合金製ピストンの表面に普通の陽極酸化皮膜を生成した。普通の陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d2(図5(b)参照)が15nmと小さく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは12〜13μmと凸凹である。 【0042】次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmHgの減圧状態でパーフロロオクチルエチルメタクレート液中に5分間浸漬した後、大気開放して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチルエチルメタクレートを硬化した。この結果、面圧30kgf/cm2で摩擦係数μは0.07であった。この摩擦係数μは実施例の0.006と比較して大きい。なお、摩擦係数μについては図9のグラフで詳しく説明する。 【0043】図9は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施の形態)の特殊な陽極酸化皮膜の摩擦係数を示すグラフであり、縦軸は摩擦係数μを示し、横軸は面圧kgf/cm2を示す。実線は実施例のグラフを示し、破線は比較例のグラフを示す。実施例おいて、摩擦係数μは、面圧10kgf/cm2のとき0.013、面圧20kgf/cm2のとき0.008、面圧30kgf/cm2のとき0.006、面圧40kgf/cm2のとき0.008、面圧50kgf/cm2のとき0.006である。実施例によれば、面圧が10〜50kgf/cm2の範囲で摩擦係数μを0.013以下に小さくすることができる。従って、摺動抵抗を十分に減少させることができる。 【0044】一方、比較例において、摩擦係数μは、面圧10kgf/cm2のとき0.06、面圧20kgf/cm2のとき0.069、面圧30kgf/cm2のとき0.069、面圧40kgf/cm2のとき0.062、面圧50kgf/cm2のとき0.054である。比較例によれば、面圧が10〜50kgf/cm2の範囲で摩擦係数μは0.054以上になり、実施例の摩擦係数μ0.013より大きくなる。従って、摺動抵抗を十分に減少させることはできない。 【0045】次に、第2実施の形態および第3実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。図10は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実施の形態)の側面図である。アルミ合金製内燃機関用ピストン60は、ピンボス部35の下端36及びピンボス部37の下端38を一対のスカート部62(奥側のスカート部は図示しない)の下端63よりδ寸法延したものである。このため、一対のスカート部62を、第1実施の形態のスカート部20,25より小さくすることができる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストン60をよりアルミ合金製内燃機関用ピストン10より軽量にすることができる。 【0046】図11は本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第3実施の形態)の側面図である。アルミ合金製内燃機関用ピストン70は、スカート部72を略逆台形、すなわち下端73からピストン頭部74に向けてスカート幅をW3からW4に徐々に大きく形成したものである。スカート部72を略逆台形に形成することにより、スカート部72の剛性を高めることができる。 【0047】なお、前記実施の形態では、りん酸塩としてりん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他にりん酸ナトリウムなどを使用してもよい。また、ふっ化物としてふっ化カリウムを使用した例を示したが、その他にふっ化ナトリウムなどを使用してもよく、アルカリ金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。 【0048】さらに、液状の熱硬化性樹脂としてパーフロロオクチルエチルメタクレート液を使用した例を説明したが、ふっ素を含んだその他の熱硬化性樹脂を使用してもよい。なお、潤滑剤として熱硬化性樹脂を使用した例を説明したが、光硬化性樹脂などのその他の樹脂を使用しても同様の効果を得ることができる。また、光硬化性樹脂は、例えば紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂が該当する。 【0049】 【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1は、一対のスカート部の対向する端部同士を壁部で連結して壁部及びスカート部で略矩形を形成することにより、スカート部の幅をピンボス部の幅より小さくしてスカート部を幅狭まとすることができる。従って、スカート部を軽量にすることができるので、アルミ合金製内燃機関用ピストンの軽量化を図ることができる。また、スカート部及び壁部で略矩形を形成することにより、スカート部を壁部で補強することができる。従って、スカート部の剛性を高めることができる。 【0050】さらに、スカート部の外側表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液で陽極酸化皮膜を備え、陽極酸化皮膜の微細な孔に潤滑剤を含浸させた。りん酸塩には陽極酸化皮膜の孔を大きくする作用がある。このため、陽極酸化皮膜の微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させることができ、かつ多量の潤滑剤を微細な孔に確実に固着することができる。従って、陽極酸化皮膜で耐摩耗性を高めるとともに潤滑剤で潤滑性を高めることができるので、摺動抵抗を確実に減少させて耐久性を高めることができる。加えて、ふっ化物には陽極酸化皮膜を平坦にする作用がある。従って、スカート部の外側表面を平坦にすることができるので、摺動抵抗をより減少させることができる。 【0051】請求項2は、ピンボス部の下端をスカート部の下端より延した。このため、スカート部をより小さく軽量にすることができる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストンの軽量化を十分に図ることができる。 【0052】請求項3は、壁部がスカート部に交わる部位において、この部位の内壁を円弧状に形成した。このため、スカート部の端部に応力が集中することを防ぐことができる。従って、スカート部の剛性をより高めることができる。 【0053】請求項4は、スカート部の肉厚を壁部の肉厚より薄くした。このため、スカート部をより軽量にすることができる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストンの軽量化を十分に図ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年2月14日(2000.2.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067356 【弁理士】 【氏名又は名称】下田 容一郎
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| 【公開番号】 |
特開2001−227408(P2001−227408A) |
| 【公開日】 |
平成13年8月24日(2001.8.24) |
| 【出願番号】 |
特願2000−35906(P2000−35906) |
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