| 【発明の名称】 |
内燃機関の可変動弁装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】竹村 信一
【氏名】杉山 孝伸
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| 【要約】 |
【課題】アイドル域でのバルブオーバーラップをマイナス化して残留ガスを低減しつつ、排気弁の作動角を十分に大きく設定して最大出力の向上を図る。
【解決手段】吸気弁12の作動角を最小作動角から最大作動角の範囲で変化させる吸気作動角変更機構1と、排気弁の作動角の位相を最遅角位相から最進角位相の範囲で変化させる排気位相変更機構2と、機関運転状態に基づいて両機構1,2を駆動制御する制御部5と、を有する。アイドル時には、吸気弁12が最小作動角,排気弁が最進角位相となるように制御し、このとき、吸気弁12の開弁時期が上死点後となり、排気弁の閉弁時期が上死点後となるように設定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 吸気弁の作動角を最小作動角から最大作動角の範囲で変化させる吸気作動角変更機構と、排気弁の作動角の位相を最遅角位相から最進角位相の範囲で変化させる排気位相変更機構と、機関運転状態に基づいて上記吸気作動角変更機構及び排気位相変更機構を駆動制御する制御部と、を有し、機関がアイドル域にあるときには、吸気弁が最小作動角で排気弁が最進角位相となるように制御され、上記最小作動角のときには吸気弁の開弁時期が上死点後となり、上記最進角位相のときには排気弁の閉弁時期が上死点後となるように設定されることを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。 【請求項2】 上記アイドル域から低負荷域への負荷増加時には、主として排気弁を遅角制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変同弁装置。 【請求項3】 上記吸気弁が最小作動角で排気弁が最遅角位相に制御された第1の制御状態にあるとき、所定のバルブオーバーラップ量が得られるように、排気弁の閉弁時期が吸気弁の開弁時期よりも遅角側に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の可変動弁装置。 【請求項4】 上記第1の制御状態から吸気弁の作動角を増加制御する場合、バルブオーバーラップ量が略一定となるように、排気弁の作動角の位相を進角制御することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の可変動弁装置。 【請求項5】 アイドル域又は低負荷域では、吸気弁の作動角を最小作動角又はその近傍に制御し、高負荷域では、回転数の増加に応じて主に吸気弁の作動角を増加制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。 【請求項6】 上記吸気弁の作動角は、アイドル時には排気弁の作動角よりも小さくなり、高回転高負荷時には排気弁の作動角よりも大きくなるように制御されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。 【請求項7】 高回転高負荷時には中回転高負荷時に比して排気弁の作動角の位相が進角側に設定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。 【請求項8】 上記吸気作動角変更機構は、吸気弁の作動角を最小作動角から最大作動角の範囲で任意の作動角に保持できることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。 【請求項9】 上記排気位相変更機構は、排気弁の作動角の位相を最遅角位相から最進角位相の範囲で任意の位相に保持できることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、機関運転状態に応じて吸気弁や排気弁の作動角や作動角の位相を変えることができる内燃機関の可変動弁装置に関する。 【0002】 【従来の技術】周知のように、機関低回転低負荷時における燃費の改善や安定した運転性並びに高回転高負荷時における吸気の充填効率の向上による十分な出力を確保する等のために、吸気弁や排気弁の作動角や作動角の位相(バルブタイミング)を変えることができる可変動弁装置が従来から種々提案されている。 【0003】例えば特開平5−332112号公報に開示されている可変動弁装置では、図12に示すように、吸気弁の作動角を低回転用(a)と高回転用(b)のいずれかに切り換える吸気作動角変更機構と、排気弁の作動角の位相を低回転用(c)と高回転用(d)のいずれかに切り換える排気位相変更機構と、が設けられている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この公報の可変動弁装置では、両変更機構の切り換え段数がともに2つと少ないために、バルブリフト特性の設定の自由度が小さい。このため、例えば機関がアイドル域,低負荷域,又は低回転高負荷域にあるときには、同じ低回転用の設定(a)及び(c)が用いられることとなる。 【0005】また、このような低回転用の設定時(a),(c)には、残留ガス低減による燃焼安定性の向上及びノック回避を図るために、バルブオーバーラップ量を十分に小さくするかあるいは実質的にゼロ(マイナスオーバーラップ)とする必要がある。しかしながら、上記公報の装置では、低回転用(a)の吸気弁の開弁時期が上死点近傍(より具体的には上死点よりも進角側)に設定されているため、例えばマイナスオーバーラップとするためには、低回転用(c)の排気弁の閉弁時期を上死点よりも進角させる必要がある。一方、排気弁の開弁時期は、アイドル時のピストン膨張仕事を有効利用する等の制約により、あまり進角させることはできない。従って、仮に排気弁の閉弁時期を上死点よりも進角させると、排気弁の作動角が小さくなって、高回転域での十分な出力の向上を図れない、という不具合を生じるおそれがある。そこで、出力向上のために排気弁の作動角を大きく設定すると、アイドル時に所望のバルブリフト特性が得られず、燃焼安定性の低下や燃費の低下を招聘する虞がある。 【0006】本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、アイドル域ではバルブオーバーラップ量を十分に小さくあるいはマイナスオーバーラップとして残留ガス量(内部EGR量)を低減し、燃焼安定性等の向上を図りつつ、排気弁の作動角を十分に大きく確保して最大出力の向上を図ることができる新規な内燃機関の可変動弁装置を提供することを一つの目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る内燃機関の可変動弁装置は、吸気弁の作動角を最小作動角から最大作動角の範囲で変化させる吸気作動角変更機構と、排気弁の作動角の位相を最遅角位相から最進角位相の範囲で変化させる排気位相変更機構と、機関運転状態に基づいて上記吸気作動角変更機構及び排気位相変更機構を駆動制御する制御部と、を有し、機関がアイドル域にあるときには、吸気弁が最小作動角で排気弁が最進角位相となるように制御され、上記最小作動角のときには吸気弁の開弁時期が上死点後となり、上記最進角位相のときには排気弁の閉弁時期が上死点後となるように設定されることを特徴としている。 【0008】また、請求項2に係る発明は、上記アイドル域から低負荷域への負荷増加時には、主として排気弁を遅角制御することを特徴としている。 【0009】請求項3に係る発明は、上記吸気弁が最小作動角で排気弁が最遅角位相に制御された第1の制御状態にあるとき、所定のバルブオーバーラップ量が得られるように、排気弁の閉弁時期が吸気弁の開弁時期よりも遅角側に設定されることを特徴としている。 【0010】請求項4に係る発明は、上記第1の制御状態から吸気弁の作動角を増加制御する場合、バルブオーバーラップ量が略一定となるように、排気弁の作動角の位相を進角制御することを特徴としている。 【0011】請求項5に係る発明は、アイドル域又は低負荷域では、吸気弁の作動角を最小作動角又はその近傍に制御し、高負荷域では、回転数の増加に応じて主に吸気弁の作動角を増加制御することを特徴としている。 【0012】請求項6に係る発明は、上記吸気弁の作動角は、アイドル時には排気弁の作動角よりも小さくなり、高回転高負荷時には排気弁の作動角よりも大きくなるように制御されることを特徴としている。 【0013】請求項7に係る発明は、高回転高負荷時には中回転高負荷時に比して排気弁の作動角の位相が進角側に設定されることを特徴としている。 【0014】請求項8に係る発明は、上記吸気作動角変更機構は、吸気弁の作動角を最小作動角から最大作動角の範囲で任意の作動角に保持できることを特徴としている。 【0015】請求項9に係る発明は、上記排気位相変更機構は、排気弁の作動角の位相を最遅角位相から最進角位相の範囲で任意の位相に保持できることを特徴としている。 【0016】 【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、例えば機関がアイドル域にあるときには、吸気弁を最小作動角、排気弁を最進角位相へ制御して、吸気弁の開弁時期を上死点後としつつ、排気弁の閉弁時期を上死点後とすることにより、バルブオーバーラップ量を十分に小さく又はマイナス化して、残留ガス量(内部EGR量)を十分に抑制し、燃焼安定性の向上を図ることができる。 【0017】そして、上記のように排気弁の閉弁時期を上死点後としているために、排気弁の作動角を十分に大きく設定することができ、高回転高負荷域等での最大出力の向上を図ることができる。つまり、アイドル域等での燃費性や燃焼安定性の向上と、高回転高負荷域等での(最大)出力の向上と、を高いレベルで両立することができる。 【0018】請求項2に係る発明によれば、アイドル域から低負荷域への負荷増加時には、主に排気弁を遅角制御することにより、吸気弁の作動角の増加に伴うフリクションの増加を抑制することができる。 【0019】請求項3に係る発明によれば、吸気弁の作動角を最小作動角としてフリクションの増加を抑制しつつ、所定のバルブオーバーラップ量を与えることができ、内部EGRによるポンプ損失の低減が可能で、燃費が向上する。 【0020】請求項4に係る発明によれば、バルブオーバーラップ量を略一定に保持して不要なポンプ損失を回避しつつ、吸気弁の作動角を増加させる条件、つまり要求吸入空気量を増加させる条件では、内部EGR量を低減してトルクを増加させることができる。 【0021】請求項5に係る発明によれば、アイドル域又は低負荷域では、作動角が十分に小さい状態に保持されるため、フリクションの低減化や、ガス流動強化による燃焼改善が図られ、更に燃費が向上する。また、高負荷域では、回転数の増加に応じて吸気弁の作動角を増加制御することにより、主に出力の向上を図ることができる。 【0022】請求項6に係る発明によれば、アイドル域では吸気弁の作動角を排気弁の作動角よりも小さくすることにより、主に燃費の向上を図ることができる。また、高回転高負荷域では吸気弁の作動角を排気弁の作動角よりも大きくすることにより、主に最大出力の向上を図ることができる。 【0023】請求項7に係る発明によれば、高回転高負荷時の排気弁の開弁時期が相対的に早くなり、最大出力の更なる向上を図ることができる。 【0024】請求項8に係る発明によれば、吸気弁の作動角を任意の角度に設定することができるため、バルブリフト特性の設定の自由度が増大し、機関運転状態に応じてより適切に吸気弁の作動角を増加又は減少することができる。 【0025】請求項9に係る発明によれば、排気弁の作動角の位相を任意の位相に設定することができるため、バルブリフト特性の自由度が増大し、機関運転状態に応じてより適切に排気弁の位相を進角又は遅角することができる。 【0026】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る可変動弁装置を、各気筒に一対の吸気弁及び一対の排気弁が設けられたガソリン内燃機関に適用した一実施形態について、図1〜11に基づいて詳細に説明する。 【0027】図1に示すように、この可変動弁装置は、吸気弁12の作動角を最小作動角から最大作動角の範囲で変化させる吸気作動角変更機構1と、図外の排気弁の作動角の位相を最遅角位相から最進角位相の範囲で変化させる排気位相変更機構2と、吸気位置検出センサ58及び排気位置検出センサ59等の機関運転状態を検出する各種センサからの信号に基づいて、上記変更機構1,2へ制御信号を出力して、これらの変更機構1,2を駆動制御する制御部(コントローラ)3と、を有している。 【0028】先ず、図1〜3を参照して、吸気作動角変更機構1の構成について説明する。シリンダヘッド11の上部には、軸受14を介して中空状の駆動軸13が回転自在に支持されている。この駆動軸13は、図外の一端に設けられたプーリ(又はスプロケット)及びチェーン(又はタイミングベルト)を介して機関のクランクシャフトから回転動力が伝達され、このクランクシャフトと同期して回転する。この駆動軸13の外周には、各気筒毎に一対の揺動カム17,17が相対回転可能に外嵌されており、各揺動カム17が各吸気弁12の上端部に配設されたバルブリフター16の平坦な上面16aに摺接して、この吸気弁12を開作動させるようになっている。 【0029】そして、吸気作動角変更機構1は、上記の駆動軸13と各揺動カム17との間の動力伝達経路に設けられ、両者13,17を連携するリンクの姿勢を変化させて、主に吸気弁12の作動角を連続的に変化させるようになっている。 【0030】すなわち、この吸気作動角変更機構1は、駆動軸13の外周に偏心して設けられ、この駆動軸13と一体的に回転する駆動カム15と、この駆動カム15の外周に相対回転可能に外嵌するリング状リンク24と、駆動軸13と略平行に気筒列方向へ延びる制御軸32と、この制御軸32の外周に偏心して設けられ、この制御軸32と一体的に回転する制御カム33と、この制御カム33の外周に相対回転可能に外嵌するとともに、リング状リンク24の先端と相対回転可能に連結するロッカアーム23と、このロッカアーム23の他端と揺動カム17の先端とに相対回転可能に連結するロッド状リンク25と、を有している。 【0031】各構成を詳述すると、軸受14は、図1にも示すように、シリンダヘッド11との間で駆動軸13を回転自在に支持するメインブラケット14aと、メインブラケット14aとの間で制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方からシリンダヘッド11へ共締め固定されている。 【0032】駆動カム15は、ほぼリング状をなすカム本体15aと、このカム本体15aの軸方向一側に一体的に付帯形成された筒状部15bとからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xが駆動軸13の軸心Yから径方向へ所定量だけオフセットしている。また、この駆動カム15は、バルブリフター16,16に干渉しないように、これらのバルブリフター16,16よりも軸方向外側に外れた位置で、駆動軸挿通孔15cを介して駆動軸13へ圧入固定されている。なお、両カム本体15a,15aの外周面15d,15dは同一のカムプロフィールに形成されている。 【0033】揺動カム17には、図2に示すように横U字形状をなすジャーナル部17aが軸方向一側に付帯形成されている。この揺動カム17の円環状をなす基端部20には、駆動軸13が回転自在に挿通する支持孔20aが貫通形成されており、この基端部20から一体的に張り出したカムノーズ部21には、ピン孔21aが貫通形成されている。また、揺動カム17の下面にはカム面22が形成され、このカム面22には、基端部20側の基円面22aと、この基円面22aからカムノーズ部21側へ円弧状に延びるランプ面22bと、このランプ面22bの先端側に延びるリフト面22cとが設けられている。これらの基円面22aとランプ面22b及びリフト面22cとが、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面16aに所定位置に当接するようになっている。 【0034】ロッカアーム23は、図3に示すように、平面からみてほぼクランク状に折曲形成され、中央に有する筒状基部23cが制御カム33に回転自在に支持されている。また、各基部23cの各外端部に突設された一端部23aには、図2および図3にも示すように、リング状リンク24と相対回転自在に連結するピン26が挿通されるピン孔23dが貫通形成されている一方、各基部23cの各内端部に夫々突設された他端部23bには、各ロッド状リンク25の一端部25aと相対回転自在に連結するピン27が挿通されるピン孔23eが形成されている。 【0035】リング状リンク24は、比較的大径な円環状の基部24aと、この基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、駆動カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、ピン26が回転自在に挿通するピン孔24dが貫通形成されている。 【0036】さらに、ロッド状リンク25は、図2にも示すように所定長さのほぼく字状に折曲形成され、両端部25a,25bには、図3に示すようにピン挿通孔25c,25dが形成されており、この各ピン挿通孔25c,25dにロッカアーム23に他端部23bに有するピン孔23eと揺動カム17のカムノーズ部21に有するピン孔21aにそれぞれ挿通した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通している。このロッド状リンク25は、揺動カム17の最大揺動範囲をロッカアーム23の揺動範囲内に規制するようになっている。 【0037】なお、各ピン26,27,28の一端部には、リング状リンク24やロッド状リンク25の軸方向の移動を規制するスナップリング29,30,31が設けられている。 【0038】これらのロッカアーム23,リング状リンク24及びロッド状リンク25により、駆動軸13から揺動カム17へ回転動力を伝達する伝達機構18が構成されている。また、上記の制御軸32及び制御カム33と、制御軸32を所定の制御範囲内で回転駆動するとともに任意の角度に保持するアクチュエータ34と、によって制御機構19が構成されている。 【0039】制御軸32は、駆動軸13と平行に設けられて、前述のように軸受14のメインブラケット14aの上端部の軸受溝とサブブラケット14bとの間に回転自在に支持されている。一方、各制御カム33は、夫々円筒状を呈し、図2に示すように軸心P1の位置が制御軸32の軸心P2からα分だけ偏心している。 【0040】アクチュエータ34は、駆動シャフト34aの先端部に設けられた第1平歯車35と制御軸32の後端部に設けられた第2平歯車36との噛み合いを介して、制御軸32に回転力を伝達するようになっている。このアクチュエータ34は、制御部3からの制御信号によって機関運転状態に応じて駆動制御される。なお、本アクチュエータ34は、油圧・電制どちらでもよいが、ここではより制御性の良い電制アクチュエータとした。 【0041】このような構成により、クランクシャフトと同期して駆動軸13が回転すると、駆動カム15を介してリング状リンク24が実質的に並進作動するとともに、ロッカアーム23が制御カム33の軸心P1周りに揺動し、ロッド状リンク25を介して揺動カム17が揺動して、吸気弁12が開閉駆動される。 【0042】また、機関運転状態に応じてアクチュエータ34を駆動制御し、制御軸32の位相を変化させることにより、ロッド状リンク25の揺動中心となる制御カム33の軸心P1の位置が変化する。これにより、伝達機構18の姿勢が変化し、吸気弁12の作動角の位相が略一定のままで、作動角(及びバルブリフト量)が連続的に変化する。 【0043】このような機械的構成を有する吸気作動角変更機構1は、駆動カム15とリング状リンク24との摺接部分や制御カム33とロッカアーム23との摺接部分等の各部材の連結部分が面接触となっているため、潤滑が行い易く、耐久性,信頼性に優れているとともに、切換時の抵抗も低く抑制される。また、駆動軸13と同軸上に揺動カム17が配置されているため、例えば揺動カムを駆動軸とは異なる別の支軸で支持するような構成に比して、制御精度に優れているとともに、装置自体がコンパクトなものとなり、車両搭載性が良い。また、吸気弁12の作動角を、後述する最小作動角I1から最大作動角I5の範囲で任意の作動角に保持することができるため、制御の自由度も高い。 【0044】次に、排気位相変更機構2の構成について図1を参照して説明する。排気位相変更機構2は、図外の排気弁を駆動する排気側カムシャフト5と、図外のタイミングチェーンを介して機関のクランクシャフトから回転力が伝達されるタイミングスプロケット40と、の間の回転動力伝達経路に設けられ、両者5,40の位相を相対的に変化させることによって、排気弁の作動角の(中心角)位相(バルブタイミング)を変化させるようになっている。 【0045】すなわち、排気位相変更機構2は、排気側カムシャフト5の一端部にボルト41によって軸方向から固定されたスリーブ42と、タイミングスプロケット40に一体的に形成される筒状本体40aと、両者42,40aにヘリカルスプライを介して噛合する筒状歯車43と、両者42,40aの位相を変化させるように、この筒状歯車43を排気側カムシャフト5の前後方向へ駆動する油圧アクチュエータとしての油圧回路44と、により大略構成されている。 【0046】タイミングスプロケット40は、筒状本体40aの後端部にタイミングチェーンが巻装されるスプロケット部40bがボルト45により固定されていると共に、筒状本体40aの前端開口がフロントカバー40cによって閉塞されている。また、筒状本体40aの内周面には、はす歯形のインナ歯46が形成されている。 【0047】スリーブ42は、後端側に排気側カムシャフト5の先端部が嵌合する嵌合溝が形成されていると共に、前端部の保持溝内にはフロントカバー40cを介してタイミングスプロケット40を前方に付勢するコイルスプリング47が装着されている。また、スリーブ42の外周面には、はす歯形のアウタ歯48が形成されている。 【0048】筒状歯車43は、バックラッシを抑制するために、軸直角方向から2分割されて前後の歯車構成部がピンとスプリングによって互いに接近する方向に付勢されていると共に、内外周面には各インナ歯46とアウタ歯48に噛合するはす歯形の内外歯が形成されており、前後に形成された第1、第2油圧室49,50へ相対的に供給される油圧によって、各歯間を摺接しながら前後軸方向へ移動するようになっている。 【0049】油圧回路44は、図外のオイルパンと連通するオイルポンプ52の下流側に接続されたメインギャラリ53と、このメインギャラリ53の下流側で分岐して第1、第2油圧室49,50に接続された第1、第2油圧通路54,55と、分岐位置に設けられたソレノイド型の流路切り換え弁56と、この流路切り換え弁56に接続されたドレン通路57とから構成されている。 【0050】流路切り換え弁56は、吸気作動角変更機構1のアクチュエータ34を駆動制御する同じ制御部3からの出力信号によって、ON−OFF駆動(デューティー制御)され、後述する3位置に切換制御される。そして、制御部3の出力信号のデューティー比を機関運転状態に応じて変化させることにより、排気弁の位相を所定の制御範囲内で連続的に変化させるとともに任意の位相に保持するようになっている。 【0051】より具体的には、流路切り換え弁56のスプールが図1で最も右側に移動した状態では、第1油圧室49に油圧が供給されるとともに第2油圧室50がドレンされる。この結果、筒状歯車43がフロントカバー40cに突き当たった最大前方移動位置に移動し、排気弁の作動角の位相が最進角位相となる。 【0052】一方、流路切り換え弁56のスプールが図1で最も左側に移動した状態では、第1油圧室49がドレンされて第2油圧室50に油圧が供給される。この結果、筒状歯車43が最大後方移動位置へ移動し、排気弁の位相が最遅角位相となる。 【0053】更に、排気弁の位相が目標位相にあるような場合には、流路切り換え弁56のスプールが図1に示す中立位置に保持される。この場合、両油圧室49,50の油圧が保持され、その位置で排気側カムシャフト5の位相が保持される。 【0054】このような排気位相変更機構2は、コンパクトで機関への搭載性に優れ、部品点数も低く抑制される。また、上記の吸気作動角変更機構1と併用した場合にも、互いに干渉せずに配置することができる。更に、排気弁の位相を後述する最進角位相E1から最遅角位相E3の範囲で任意の位相に保持することができ、制御の自由度が非常に高い。 【0055】上記の制御部3には、制御軸32の現在の回転位置を検出する吸気位置検出センサ58や、排気側カムシャフト5の回転位置を検出する排気位置検出センサ59の他、機関回転数を検出するクランク角センサ、吸気流量(負荷)を検出するエアフロメータ,機関油温センサ等の機関運転状態を検出する各種センサが接続されている。そして、制御部3は、上記のセンサ出力に基づいてアクチュエータ34及び流路切り換え弁56に制御信号を出力し、吸気弁12の作動角及び排気弁の作動角の位相を機関運転状態に応じて制御している。 【0056】より具体的には、制御部3が機関回転数、負荷、油温、機関始動後に経過時間などの情報から吸気弁12の目標リフト特性、つまり制御軸32の目標回転位置を決定して、アクチュエータ34を駆動制御することにより、制御軸32を介して制御カム33が所定回転角度位置まで回動,保持される。なお、好ましくは、吸気位置検出センサ58により制御軸32の実際の回転位置をモニタし、制御軸32が目標位相となるようにフィードバック制御が行われる。 【0057】また、前述と同じく各センサからの情報信号から排気弁の目標位相を決定して、流路切り換え弁56を駆動制御することにより、筒状歯車43が軸方向に駆動され、この筒状歯車43の軸方向位置に応じてタイミングスプロケット40と排気側カムシャフト5との相対回転位相が可変制御される。この場合も、好ましくは排気位置検出センサ59により排気側カムシャフト5の実際の相対回転位置をモニタし、排気側カムシャフト5が目標位相となるようにフィードバック制御が行われる。 【0058】図4は、機関がアイドル域にあるとき(アイドル時)の吸気弁及び排気弁のバルブリフト特性を示している。このようなアイドル時には、吸気弁の作動角が最小作動角I1となるように制御される。そして、この最小作動角I1の状態では、吸気弁の開弁時期が上死点よりもある程度(例えば約20°以上)後側(遅角側)に設定される。一方、排気弁の位相は最進角位相E1に制御される。そして、この最進角位相E1のときには、排気弁の閉弁時期が下死点よりも所定角度(例えば約20°程度)だけ後側(遅角側)で、かつ吸気弁の開弁時期よりも進角側に設定される(マイナスオーバーラップ)。 【0059】このように、アイドル時には、吸気弁の作動角及びバルブリフト量が最小となるため、フリクションが低減されるとともに、ガス流動向上による燃焼の安定化を図ることができる。また、吸気弁の開弁時期を上死点後としてバルブオーバーラップをマイナス化しているため、残留ガス量(内部EGR量)が低減されるとともに、ピストン上面が吸入負圧にさらされる期間を短縮してポンプ損失の低減化を図ることができる。更に吸気弁の閉弁時期を下死点前としているため、下死点近傍での有効圧縮比が向上し、燃焼性が改善される。 【0060】一方、アイドル時の排気弁の開弁時期は、ピストン膨張仕事を有効利用する等の制約のために、過度に進角させることはできない。また、排気弁の閉弁時期は、上記従来例のような一般的なプラスオーバーラップの設定の場合、図4の波形E0に示すように、残留ガス量(内部EGR量)を抑制するために略上死点とするのが良い。一方、本実施形態のようにマイナスオーバーラップの設定の場合には、内部EGRによる残留ガスはないものの、燃焼室内に閉じ込められる残留ガス量が問題となる。しかしながら、図11に示すように、排気上死点付近(上死点から上死点後約20°の範囲)では、ピストンの変位量が小さい等の理由で、排気弁の閉弁時期を変化させても燃焼室内に閉じ込められた残留ガス量があまり変化しない。従って、排気弁の閉弁時期を下死点後の約20°の範囲で遅角側に設定しても、閉弁時期を上死点に設定した場合と同等の残留ガス量に抑制される。 【0061】このようにアイドル域では、バルブオーバーラップをマイナス化しつつ、排気弁の閉弁時期を下死点よりも所定角度Δθだけ後側に設定できるため、その分、排気弁の大作動角化が可能となる。このため、後述する高回転高負荷時等での出力向上を図ることができる。 【0062】図5は、例えば上記のアイドル域から低負荷域へ負荷が緩く増加する負荷増加時のバルブリフト特性を示している。このような負荷増加時には、仮にバルブオーバーラップがマイナス化されたままでいるとポンプ損失が増加する可能性があり、かつ、燃焼安定限界も拡大するため、吸気弁の作動角を最小作動角I1に保持したままで、排気弁の位相を遅角制御する(E1→E2)。そして、オーバーラップのプラス化によりポンプ損失を低減し、燃費の向上を図る。ここで、バルブオーバーラップ量を増加するために、上記のように排気弁を遅角化する代わりに吸気弁の作動角を拡大することも考えられるが、この場合、動弁フリクションの増加や吸気系に残留ガスが逆流して減速時のエンストの可能性が考えられるために不利である。 【0063】上記の設定状態I1,E2から更に負荷が増加するような場合には、図6に示すように、負荷の増加に応じて排気弁を最遅角位相まで遅角化する(E2→E3)。これにより、バルブオーバーラップ量が更に増加し、さらなるポンプ損失の低減化を図ることができる。 【0064】このように吸気弁が最小作動角I1、排気弁が最遅角位相E3の状態(第1の制御状態)から更に負荷が増加するような場合には、図7に示すように、負荷の増加に応じて吸気弁の作動角(及びバルブリフト量)を増加制御する(I1→I2)。この場合、過大なバルブオーバーラップによる減速時のエンストを回避するとともに、マイナスオーバーラップによるポンプ損失の増加を回避するため、バルブオーバーラップ量を略一定に維持するように、吸気弁の作動角の拡大に合わせて排気弁の位相を進角制御する(E3→E4)。 【0065】図8〜10は、機関が高負荷域にある場合のバルブリフト特性を示している。このような高負荷域では、回転数の増加に応じて主に吸気弁の作動角を増加制御する(I2→I3→I4→I5)。 【0066】より具体的には、低回転高負荷時には、図8に示すように、残留ガスによるノック回避のため、バルブオーバーラップが小さく、かつ、オーバーラップの中心位相が略上死点近傍となるように、吸気弁の作動角を上記低負荷域での設定I2よりも増加制御するとともに(I3)、排気弁の位相を最遅角位置E3よりも進角側に制御する(E4)。 【0067】また、中回転高負荷時には、図9に示すように、上記低回転高負荷時に比してバルブオーバーラップ量を拡大して掃気効果を有効に活用し、充填効率の更なる向上を図るために、吸気弁の作動角を排気弁の作動角と同程度まで増加させるとともに(I4)、排気弁を最遅角位相E3またはその近傍まで遅角させる。 【0068】更に、高回転高負荷時には、図10に示すように、吸気弁の作動角を最大作動角I5に設定し、バルブリフトの増加及び吸気弁の閉弁時期の遅角化により充填効率の向上を図る。また、排気弁の位相は中回転時よりも進角側、より具体的には最進角位相E1又はその近傍まで進角させて、排気押し出し損失を抑制し、最大出力の向上を図る。 【0069】なお、排気弁の作動角は、最大出力時(高回転高負荷時)の吸気弁の最大作動角I5よりも小さく設定されている。この理由は、排気弁の作動角を仮に最大作動角I5よりも大きくすると、排気弁の開弁時期が早くなる等の理由によりアイドル域等での燃費の低下を招く虞があるためである。また、排気弁の作動角は、アイドル時や低負荷時及び低回転高負荷時の吸気弁の作動角I1,I2,I3よりも大きくなるように設定されている。この理由は、排気弁の作動角を仮にアイドル時の吸気弁の作動角よりも小とすると、排気弁の開弁時期が下死点後となってポンプ損失が増加し、燃費,出力性能の低下を招く虞があるためである。つまり、吸気弁の作動角は、アイドル域では排気弁の作動角よりも小さくなり、高回転高負荷域では排気弁の作動角よりも大きくなるように可変制御される。 【0070】以上のように本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳述してきたが、本発明は上記の内容に限定されるものではなく、種々の変形,変更を含むものである。例えば吸気作動角変更機構1や排気位相変更機構2のハード的な構造は上記の実施形態に限定されるものではなく、アイドル時における吸気弁の開弁時期を上死点後、排気弁の閉弁時期を上死点後に設定可能なものであれば、他の構造であっても良い。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月9日(2000.6.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100062199 【弁理士】 【氏名又は名称】志賀 富士弥 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−355464(P2001−355464A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−173127(P2000−173127) |
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