| 【発明の名称】 |
多気筒内燃機関の失火検出装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】天野 英敏
|
| 【要約】 |
【課題】内燃機関の複数の気筒で生じる失火を正確かつ容易に検出する。
【解決手段】複数の気筒での失火による回転変動を検出し、検出された回転変動の回数が所定の基準値以上となることによって失火を検出する多気筒内燃機関の失火検出装置であって、失火に起因する回転変動と失火以外の要因による回転変動との差が大きい高S/N比運転状態を検出する運転状態検出手段(ステップS1)と、複数の気筒ごとに失火に起因する回転変動回数を積算する失火積算手段(ステップS4,S5)と、高S/N比運転状態で積算された複数の気筒についての回転変動回数が予め定めた基準値以上となることにより失火が生じていることを判定する失火判定手段(ステップS7)とを備えている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数備えられている気筒での燃焼が完全にはおこなわれない失火による回転変動を検出し、検出された回転変動の回数に基づいて失火を判定する多気筒内燃機関の失火検出装置において、失火に起因する回転変動と失火以外の要因による回転変動との差が大きい高S/N比運転状態を検出する運転状態検出手段と、複数の気筒ごとに失火に起因する回転変動を検出しかつ失火回数を積算する失火積算手段と、前記高S/N比運転状態において前記失火積算手段で積算された複数の気筒についての失火に起因する回転変動回数に基づいて失火が生じていることを判定する失火判定手段とを備えていることを特徴とする多気筒内燃機関の失火検出装置。 【請求項2】 前記運転状態検出手段が、前記内燃機関の回転数が予め定めた基準回転数以下であることおよび前記内燃機関がアイドリング状態であることならびに前記内燃機関の負荷が予め定めた基準負荷以上であることのいずれかに基づいて高S/N比運転状態を検出する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関の失火検出装置。 【請求項3】 前記失火積算手段が、前記内燃機関の所定の回転角度ごとの経過時間の差が基準値を超えることに基づいて失火に起因する回転変動を検出する手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の多気筒内燃機関の失火検出装置。 【請求項4】 前記基準値が、前記内燃機関の回転数と負荷との少なくともいずれかに応じて異なる値に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の多気筒内燃機関の失火検出装置。 【請求項5】 前記内燃機関が運転されている状態において前記失火積算手段で積算された複数の気筒についての失火に起因する回転変動回数に基づいて失火が生じていることを判定する全域失火判定手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関の失火検出装置。 【請求項6】 所定の経過時間もしくは前記内燃機関の所定の回転回数に対する前記失火判定手段が失火を判定する基準値の割合が、所定の経過時間もしくは前記内燃機関の所定の回転回数に対する前記全域失火判定手段で失火を判定する基準値の割合より小さいことを特徴とする請求項5に記載の多気筒内燃機関の失火検出装置。 【請求項7】 内燃機関の所定の回転変動を検出し、その回転変動の検出回数に基づいて失火を判定する多気筒内燃機関の失火検出装置において、前記内燃機関がアイドリング状態にあるときの所定の基準時間内もしくは前記内燃機関が所定回数回転する間の前記回転変動回数を積算し、かつその積算数が第1基準値を超えた場合に失火を判定する第1失火判定手段と、前記内燃機関が所定の基準回転数以下の回転数でかつ所定の負荷以上の高負荷状態で運転されているときの所定の基準時間内もしくは前記内燃機関が所定回数回転する間の前記回転変動回数を積算し、かつその積算数が第2基準値を超えた場合に失火を判定する第2失火判定手段とを備え、前記第1失火判定手段で使用する前記所定の基準時間もしくは前記内燃機関の所定回転回数に対する前記第1基準値の割合が、前記第2失火判定手段で使用する前記基準時間もしくは前記内燃機関の所定回転回数に対する第2基準値の割合より小さく設定されていることを特徴とする多気筒内燃機関の失火検出装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、複数の気筒(シリンダー)の内部で燃料が繰り返し燃焼することにより動力を発生する内燃機関の失火を検出する装置に関し、特に複数の気筒での失火に伴う回転変動を検出して失火の判定をおこなう失火検出装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関では、気筒の内部に燃料と空気との混合気を封入し、これを圧縮した状態で爆発的に燃料させて動力を出力させている。しかしながら、燃料の供給系統や点火系統などの各種の機器に異常があるなどの場合には、混合気が点火されずに燃焼が生じなかったり、あるいは一旦火炎が発生したものの火炎が混合気の全体に伝播しないなどのいわゆる失火が生じることがある。混合気が燃焼せずに気筒から排出されると、排気系統に設けられている排気浄化触媒がダメージを受けるなどの不都合が生じるので、失火が生じた場合にはこれを直ちに検出して対策を採る必要がある。 【0003】従来、内燃機関での失火を検出するための装置の一例が、特開平2−55859号公報によって提案されている。これは、内燃機関がアイドリング運転されている状態で、燃料噴射量の補正量を検出し、その補正量の絶対値が正負に反転する頻度を検出し、その頻度に基づいて失火を判定するように構成されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記の公報に記載された装置は、内燃機関の特定のクランク角度ごとに生じる回転変動に基づいて失火を検出するいわゆる回転変動法での不都合を解消するために、回転変動に応じた燃料の補正を利用して失火を検出するように構成したものである。しかしながら、内燃機関の回転数と燃料の供給量との間に相関関係があるものの、回転速度の変化と燃料の供給量の変更との相互の応答性は必ずしも高くない。そのため、燃料量の補正が失火を正確に反映しないので、上記の公報に記載された装置では、失火の検出精度が実用に耐え得るほどには高くならない不都合があった。 【0005】また、多気筒内燃機関では、複数の気筒で失火が生じることがあるが、その場合、いずれか一つの気筒での失火に伴う回転変動と他の気筒での失火に伴う回転変動とが相互に干渉することがある。そのために複数気筒での失火を正確に検出するには、複雑かつ困難な処理を余儀なくされるのが実情であった。 【0006】この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、容易かつ正確に内燃機関の複数の気筒での失火を検出することのできる装置を提供することを目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するために、この発明は、失火に起因する回転変動と他の要因での回転変動とを峻別しやすい高S/N比運転状態における回転変動回数を検出し、その検出を複数の気筒についておこなうとともにその回転変動回数に基づいて失火を判定するように構成したことを特徴とするものである。より具体的には、請求項1の発明は、複数備えられている気筒での燃焼が完全にはおこなわれない失火による回転変動を検出し、検出された回転変動の回数に基づいて失火を判定する多気筒内燃機関の失火検出装置において、失火に起因する回転変動と失火以外の要因による回転変動との差が大きい高S/N比運転状態を検出する運転状態検出手段と、複数の気筒ごとに失火に起因する回転変動を検出しかつ失火回数を積算する失火積算手段と、前記高S/N比運転状態において前記失火積算手段で積算された複数の気筒についての失火に起因する回転変動回数に基づいて失火が生じていることを判定する失火判定手段とを備えていることを特徴とする失火検出装置である。 【0008】したがって請求項1の発明では、複数の気筒ごとに内燃機関の回転変動が検出され、かつその回数が積算される。その回転変動の検出は、内燃機関の運転状態が、高S/N比運転状態すなわち失火に起因する回転変動を他の要因での回転変動とから区別しやすい運転状態でおこなわれる。そのため、複数の気筒で失火が生じている場合であっても、その失火に起因する回転変動を正確に検出してその回数を積算することができ、失火の検出精度が向上する。 【0009】また、請求項2の発明は、請求項1の発明における前記運転状態検出手段が、前記内燃機関の回転数が予め定めた基準回転数以下であることおよび前記内燃機関がアイドリング状態であることならびに前記内燃機関の負荷が予め定めた基準負荷以上であることのいずれかに基づいて高S/N比運転状態を検出する手段を含むことを特徴とする失火検出装置である。 【0010】したがって請求項2の発明では、いずれかの気筒で失火が生じた場合、その失火に伴って生じる回転変動の時間幅が長くなるので、回転変動に基づく失火の検出精度が高くなる。 【0011】さらに、請求項3の発明は、請求項1もしくは2の発明における前記失火積算手段が、前記内燃機関の所定の回転角度ごとの経過時間の差が基準値を超えることに基づいて失火に起因する回転変動を検出する手段を含むことを特徴とする失火検出装置である。 【0012】したがって請求項3の発明では、いずれかの気筒で失火が生じることにより所定回転角度ごとの経過時間の差が長くなり、その経過時間が基準時間を超えることにより失火による回転変動として回転数を積算するので、失火の検出精度が向上する。 【0013】そして、請求項4の発明は、請求項3の発明における前記基準値が、前記内燃機関の回転数と負荷との少なくともいずれかに応じて異なる値に設定されていることを特徴とする失火検出装置である。 【0014】したがって請求項4の発明では、失火に起因する所定回転角度ごとの経過時間の差が内燃機関の回転数や負荷に応じて変化することに合わせて、失火の判断となる基準値が変更されるので、失火の検出を正確におこなうことができる。 【0015】またさらに、請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記内燃機関が運転されている状態において前記失火積算手段で積算された複数の気筒についての失火に起因する回転変動回数に基づいて失火が生じていることを判定する全域失火判定手段を更に備えていることを特徴とする失火検出装置である。 【0016】したがって請求項5の発明では、高S/N比運転状態とそれ以外の運転状態とのいずれにおいても、回転変動に基づく失火の判定をおこなうことになる。すなわち、運転状態に関わらず、常時、失火の検出をおこなうことになるので、失火の検出精度が向上する。 【0017】そしてまた、請求項6の発明は、請求項5の発明において、所定の経過時間もしくは前記内燃機関の所定の回転回数に対する前記失火判定手段が失火を判定する基準値の割合が、所定の経過時間もしくは前記内燃機関の所定の回転回数に対する前記全域失火判定手段で失火を判定する基準値の割合より小さいことを特徴とする失火検出装置である。 【0018】したがって請求項6の発明では、高S/N比運転状態での失火の検出感度が鋭敏になり、しかも高S/N比運転状態では失火に起因する回転変動を他の要因での回転変動とから峻別し易いので、失火の検出精度を向上させることができる。 【0019】そして、請求項7の発明は、内燃機関の所定の回転変動を検出し、その回転変動の検出回数に基づいて失火を判定する多気筒内燃機関の失火検出装置において、前記内燃機関がアイドリング状態にあるときの所定の基準時間内もしくは前記内燃機関が所定回数回転する間の前記回転変動回数を積算し、かつその積算数が第1基準値を超えた場合に失火を判定する第1失火判定手段と、前記内燃機関が所定の基準回転数以下の回転数でかつ所定の負荷以上の高負荷状態で運転されているときの所定の基準時間内もしくは前記内燃機関が所定回数回転する間の前記回転変動回数を積算し、かつその積算数が第2基準値を超えた場合に失火を判定する第2失火判定手段とを備え、前記第1失火判定手段で使用する前記所定の基準時間もしくは前記内燃機関の所定回転回数に対する前記第1基準値の割合が、前記第2失火判定手段で使用する前記基準時間もしくは前記内燃機関の所定回転回数に対する第2基準値の割合より小さく設定されていることを特徴とする失火検出装置である。 【0020】したがって請求項7の発明では、いずれも高S/N比運転状態であるアイドリング状態と、低回転数かつ高負荷の運転状態のいずれにおいても回転変動の所定時間内での回数に基づいて失火を検出するので、失火の検出精度が向上し、さらに、アイドリング状態での検出感度が鋭敏になるので、その点でも失火の検出精度が向上する。 【0021】 【発明の実施の形態】つぎにこの発明を図面に示す具体例に基づいて説明する。この発明の失火検出装置が対象とする内燃機関1は、複数の気筒を備え、かつそれらの気筒に燃料および空気を供給し、その混合気を燃焼させる動力機械であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンがその例である。この内燃機関1には、図1に示すように、スロットルバルブ(図示せず)の開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサ2、吸入空気量を検出して信号を出力するエアーフローメータ3、出力軸(図示せず)の回転数すなわちエンジン回転数を検出して信号を出力するエンジン回転数センサ4、出力軸の回転角度すなわちクランク角度を検出して信号を出力するクランク角センサ5、冷却水の温度を検出して信号を出力する水温センサ6などの各種のセンサが取り付けられている。 【0022】これらの各センサ2,3,4,5,6は、電子制御装置(ECU)7に電気的に接続され、検出値に応じた信号を電子制御装置7に入力するように構成されている。また、電子制御装置7は、マイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータならびにプログラムに従って演算をおこない、内燃機関1の運転状態の判断や失火の判断ならびにそれらの判断結果に基づく制御信号の出力をおこなうように構成されている。 【0023】上記の装置により実行される失火検出の制御について、次に説明する。図2および図3ならびに図4はその失火検出のための制御を説明するフローチャートであって、複数設けられている気筒での各点火ごとに実行される。先ず、失火に起因する回転変動と他の要因での回転変動とを峻別し易い高S/N比運転状態か否かの判断がおこなわれる。具体的には、アイドリング状態か否かが判断される(ステップS1)。これは、例えばスロットル開度がアイドル開度であり、かつエンジン回転数が1000rpm以下であることにより判断することができる。 【0024】内燃機関1の運転状態がアイドリング状態であることによりステップS1で肯定的に判断された場合には、失火検出のための前提条件が成立しているか否か(失火検出前提条件の成立)が判断される(ステップS2)。その前提条件は、一例として、エンジン水温が−10℃以上でかつエンジン回転数Ne が400rpmと6000rpmとの範囲にあり、さらに1回転あたりの吸入空気量Ga が0.2g以上である。この前提条件が成立していない場合には、内燃機関1が正常に運転されていないことになるので、失火の検出はおこなわれず、図に示すルーチンが終了される。 【0025】これに対して失火検出の前提条件が成立していることによりステップS2で肯定的に判断された場合には、全域カウンタCT とアイドル専用カウンタCI とがインクリメントされる(ステップS3)。この全域カウンタCT は、内燃機関1が運転している間、常時、経過時間あるいは回転回数を検出するためのものであり、図に示すルーチンが実行される都度、“1”ずつ“200”までカウントアップし、かつリセット後に再度、カウントするカウンタである。したがってこの全域カウンタCT は、図に示すルーチンの実行サイクルを単位時間として時間を繰り返し検出していることになる。これに対してアイドル専用カウンタCI は、内燃機関1がアイドリング状態となることによりカウントを開始し、図に示すルーチンが実行される都度、“1”ずつ“170”までカウントアップし、かつリセット後に再度、カウントするカウンタである。したがってこのアイドル専用カウンタCI は、アイドリング状態になった後の経過時間を、図に示すルーチンの実行サイクルを単位時間として繰り返し検出する。 【0026】内燃機関1が運転されている間は、前記のエンジン回転数センサ4からの検出信号に基づいて回転変動ΔNe が検出されており、点火ごとにその回転変動ΔNe が基準値α以上が否かが判断される(ステップS4)。いずれかの気筒で失火が生じると、それに起因して内燃機関1の回転数が低下する。その回転数の低下は、例えば前回所定のクランク角度位置を検出した時点から今回そのクランク角度位置を検出した時点までの経過時間が長くなることを利用して検出することができる。したがって具体的には、クランク角度が30度(30°CA)ごとの経過時間の差が基準値α以上か否かが判断される。なお、所定のクランク角ごとの経過時間は、エンジン回転数Ne や負荷によって異なるから、上記の基準値αは、エンジン回転数Ne および負荷(1回転あたりの吸入空気量)とをパラメータとしたマップとして予め定め、その時点の内燃機関1の運転状態に応じた基準値αが採用される。 【0027】ステップS4で肯定的に判断されれば、混合気に点火されることが予定されている気筒での失火に起因して回転変動が生じ、例えば30°CAごとの経過時間が長くなっていることになるので、各気筒ごとに設けられている気筒別失火カウンタCTmf,CImfがインクリメントされる(ステップS5)。すなわち全域気筒別失火カウンタCTmfとアイドル専用気筒別失火カウンタCImfとが失火回数を“1”ずつ積算する。 【0028】ここで全域気筒別失火カウンタCTmfは、前記全域カウンタCT がゼロリセットされた後、時間をカウントしている間の失火に起因する回転変動の回数を積算するカウンタであり、したがって全域カウンタCT がゼロリセットされる都度、すなわち内燃機関1が200回、回転する都度、全域気筒別失火カウンタCTmfがゼロリセットされ、新たにカウントを開始する。言い換えれば、全域気筒別失火カウンタCTmfは、全域カウンタCT が検出する所定の経過時間の間に検出された失火に伴う回転変動の回数を積算するようになっている。 【0029】また、アイドル専用気筒別失火カウンタCImfは、前記アイドル専用カウンタCI がゼロリセットされた後、時間をカウントしている間の失火に起因する回転変動の回数を積算するカウンタであり、したがってアイドル専用カウンタCI がゼロリセットされる都度、すなわち内燃機関1が170回、回転する都度、アイドル専用気筒別失火カウンタCImfがゼロリセットされ、新たにカウントを開始する。言い換えれば、アイドル専用気筒別失火カウンタCImfは、アイドル専用カウンタCI が検出する所定の経過時間の間に検出された失火に伴う回転変動の回数を積算するようになっている。 【0030】ついで、アイドル専用カウンタCI が予め定めた時間を検出したか否か、すなわちそのカウント値が“170”になったか否かが判断される(ステップS6)。このステップS6で肯定的に判断された場合には、失火検出のための単位時間が経過したことになるので、複数のアイドル専用気筒別失火カウンタCImfの合算した積算値ΣCImfが失火判定基準値Mfi以上か否かが判断される(ステップS7)。具体的には、4気筒の内燃機関1であれば、2つの気筒についてのアイドル専用気筒別失火カウンタCImfの積算値が合算され、その値について判断される。また、この失火判定基準値Mfiは、この具体例では、“72”である。 【0031】このステップS7で肯定的に判断された場合には、内燃機関1が170回、回転する間に、72回の回転変動が検出されたことになるので、この場合には複数気筒で失火が生じていることを示す複数気筒失火仮フラグFmfがONとされる(ステップS8)。これに対してステップS7で否定的に判断された場合には、複数気筒失火仮フラグFmfがOFFとされる(ステップS9)。すなわちアイドル運転状態での所定時間あるいは所定の点火回数の内に検出された回転変動の回数が判定基準値に達することにより、複数の気筒で失火が発生していることが判定される。 【0032】なお、回転変動が検出されないことにより上記のステップS4で否定的に判断された場合には、各気筒別失火カウンタCTmf,CImfのインクリメントをおこなわずに、直ちにステップS6に進む。 【0033】上記のようにしてアイドリング状態での失火の判定が実行された後、アイドル専用カウンタCI およびアイドル専用気筒別失火カウンタCImfのそれぞれがゼロリセットされ、新たにカウントが開始される(ステップS10)。ついで、全域カウンタCT が予め定めた時間を検出したか否か、すなわちそのカウント値が“200”になったか否かが判断される(ステップS11)。このステップS11で肯定的に判断された場合には、失火検出のための単位時間が経過したことになるので、複数の全域気筒別失火カウンタCTmfの合算した積算値ΣCTmfが失火判定基準値Mft以上か否かが判断される(ステップS12)。具体的には、4気筒の内燃機関1であれば、2つの気筒についての全域気筒別失火カウンタCTmfの積算値が合算され、その値について判断される。また、この失火判定基準値Mftは、この具体例では、“103”である。 【0034】したがって内燃機関1の運転全域についての失火の判定は、複数気筒での失火による回転変動の回数が、200回転について103回検出されることによりおこなわれ、その割合は、(103/200=0.515)であるのに対して、アイドリング状態での失火の判定は、複数気筒での失火による回転変動の回数が、170回転について72回検出されることによりおこなわれ、その割合は、(72/170=0.424)であり、アイドリング状態での失火の判定基準が厳しくなっている。言い換えれば、失火の判定が生じやすくなっている。 【0035】このステップS12で肯定的に判断された場合には、内燃機関1が200回転する間に、103回の回転変動が検出されたことになる。すなわち失火の程度がかなり顕著であるから、触媒ダメージ失火異常検出フラグFcdmfがONとされる(ステップS13)。これに対してステップS12で否定的に判断された場合には、前記の複数気筒失火仮フラグFmfがONか否かが判断される(ステップS14)。このステップS14で肯定的に判断された場合には、アイドリング状態で複数気筒での失火が検出されていることになるので、ステップS13に進んで触媒ダメージ失火異常検出フラグFcdmfがONとされる。これとは反対にステップS14で否定的に判断された場合には、内燃機関1の運転の全域およびアイドリング状態のいずれでも複数気筒での失火が判定されていないので、触媒ダメージ失火異常検出フラグFcdmfがOFFとされる(ステップS15)。 【0036】上記のようにして200回転ごとの失火の判定が実行された後、全域カウンタCT および全域気筒別失火カウンタCTmfのそれぞれがゼロリセットされ、新たにカウントが開始される(ステップS16)。そして、このルーチンを一旦終了する。なお、全域カウンタCT の積算値が“200”に達していないことによりステップS11で否定的に判断された場合には、直ちにこのルーチンを一旦終了する。 【0037】さらに、アイドル専用カウンタCI の積算値が“170”に達していないことによりステップS6で否定的に判断された場合には、上記のステップS11に進んで、内燃機関1の運転の全域についての失火の発生の判定が実行される。 【0038】内燃機関1がアイドリング運転状態にないことになり、上記のステップS1で否定的に判断された場合には、他の高S/N比運転状態における失火の判定が実行される。すなわちアイドル運転中ではないので、図2に示すようにアイドル専用の各カウンタCI ,CImfのそれぞれがゼロリセットされる(ステップS17)。ついで図4に示すように、高S/N比運転状態か否かが判断される。すなわちエンジン回転数Ne が所定の低回転域(例えば650rpm以上かつ3000rpm未満)に入っているか否か(ステップS18)、および負荷Ga が高負荷判定値Go 以上か否か(ステップS19)が判断される。ここで負荷Ga は1回転あたりの吸入空気量(g/rev )であり、また高負荷判定値Go はエンジン回転数Ne に応じて変化する値であり、一例を示せば図5のとおりである。したがってこの具体例における高S/N比運転状態とは、図5にハッチングを施して示す低回転数かつ高負荷の運転領域にある状態である。 【0039】上記のステップS18およびステップS19のいずれかで否定的に判断された場合には、内燃機関1の運転状態が高S/N比運転状態にないことになるので、この場合は、上記のステップS10に進む。これに対してこれらのステップS18,19で共に肯定的に判断された場合には、内燃機関1の運転状態が高S/N比運転状態にあることになるので、高S/N比状態専用カウンタCSNがインクリメントされる(ステップS20)。この高S/N比状態専用カウンタCSNは、内燃機関1が上記の低回転数かつ高負荷の運転領域にある間、常時、経過時間を検出するためのものであり、図に示すルーチンが実行される都度、“1”ずつ“200”までカウントアップし、かつリセット後に再度、カウントするカウンタである。したがってこの高S/N比状態専用カウンタCSNは、図に示すルーチンの実行サイクルを単位時間として時間を繰り返し検出していることになる。 【0040】内燃機関1が運転されている間は、前記のエンジン回転数センサ4からの検出信号に基づいて回転変動ΔNe が検出されており、点火ごとにその回転変動ΔNe が基準値α以上が否かが判断される(ステップS21)。これは、前述したステップS4での判断と同様である。失火に起因する回転変動すなわち回転数の低下が生じていてステップS21で肯定的に判断された場合には、その回転変動のパターンが複数気筒での失火パターンとなっているか否か、すなわち複数気筒失火用パターンの判定が成立しているか否かが判断される(ステップS22)。そしてこのステップS22で肯定的に判断された場合には、高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfがインクリメントされる(ステップS23)。すなわち高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfが失火回数を“1”ずつ積算する。 【0041】ついで、高S/N比状態専用カウンタCSNが予め定めた時間を検出したか否か、すなわちそのカウント値が“200”になったか否かが判断される(ステップS24)。このステップS24で否定的に判断された場合には、上記のステップS10に進み、また反対に肯定的に判断された場合には、失火検出のための単位時間が経過したことになるので、複数の高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfの合算した積算値ΣCSNmf が失火判定基準値Mfsn 以上か否かが判断される(ステップS25)。具体的には、4気筒の内燃機関1であれば、2つの気筒についての高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfの積算値が合算され、その値について判断される。また、この失火判定基準値Mfsn は、この具体例では、“85”である。 【0042】このステップS25で肯定的に判断された場合には、内燃機関1が200回転する間に、85回の回転変動が検出されたことになるので、この場合には複数気筒で失火が生じていることを示す複数気筒失火仮フラグFmfがONとされる(ステップS26)。これに対してステップS25で否定的に判断された場合には、複数気筒失火仮フラグFmfがOFFとされる(ステップS27)。すなわちアイドル運転状態での所定時間あるいは所定の点火回数の内に検出された回転変動の回数が判定基準値に達することにより、複数の気筒で失火が発生していることが判定される。 【0043】なお、回転変動が検出されないことにより上記のステップS21で否定的に判断された場合および1気筒のみの失火のためにステップS22で否定的に判断された場合には、高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfのインクリメントをおこなわずに、直ちにステップS24に進む。 【0044】上記のようにして高S/N比運転状態での失火の判定が実行された後、高S/N比状態カウンタCSNおよび高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfのそれぞれがゼロリセットされ、新たにカウントが開始される(ステップS28)。そして上述したステップS10に進む。 【0045】したがって内燃機関1の高S/N比運転状態についての失火の判定は、複数気筒での失火による回転変動の回数が、200回転について85回検出されることによりおこなわれ、その割合は、(85/200=0.425)であるのに対して、アイドリング状態での失火の判定は、複数気筒での失火による回転変動の回数が、170回転について72回検出されることによりおこなわれ、その割合は、(72/170=0.424)であり、アイドリング状態での失火の判定基準が厳しくなっている。言い換えれば、失火の判定が生じやすくなっている。 【0046】上記のフローチャートに従った失火検出制御の典型的な事例のタイムチャートを図6に示してある。4気筒の内燃機関1において第1(#1)と(#4)第4との2気筒で失火が生じており、かつアイドリングと走行とが図6に示すように所定時間ずつ交互に生じている例である。全域カウンタCT は、内燃機関1の運転状態に関わらず、“200”までカウントした後、ゼロリセットされて再度カウントをおこなうサイクルを繰り返している。したがってこの全域カウンタCTのカウント開始あるいはカウント終了のタイミングと、アイドリングの開始もしくは終了とのタイミングとは必ずしも一致しない。 【0047】したがってエンジン回転数Ne が高い場合では複数気筒での失火を検出しにくいので、全域カウンタCT がカウントをおこなっている途中であってかつアイドリングが開始された時点に、全域気筒別失火カウンタCTmfが回転変動すなわち失火の回数をカウントし始める。そのため、たとえ失火が生じていても、そのカウント値が、全域カウンタCT のゼロリセットに伴ってゼロリセットされてしまったり、あるいはアイドリング状態が終了して走行状態になることにより失火を検出できなくなってカウントが停止し、そのままゼロリセットされたりすることが頻発する。すなわちこの全域カウンタCT および全域気筒別失火カウンタCTmfでは失火を正確には検出することが困難である。 【0048】これに対してアイドル専用カウンタCI は、アイドリング状態となることによりカウントを開始し、“170”までカウントする都度、リセットされる。これと併せてアイドル専用気筒別失火カウンタCImfが失火に起因する回転変動の回数をカウントし、そのカウントを、アイドル専用カウンタCI のカウント値が“170”になるまで継続する。したがって失火の生じている第1番目と第4番目との気筒別失火カウンタCImfのカウント値が、アイドリング中に失火判定値Mfiを超える事態が繰り返し生じる。そのため、アイドル専用気筒別失火カウンタCImfのカウント値が最初に失火判定基準値Mfiを超えたt1 時点に複数気筒失火仮フラグFmfがONとなる。これが前述したステップS8での制御である。 【0049】その後に、全域カウンタCT が“200”までカウントアップし、その時点の全域気筒別失火カウンタCTmfのカウント値が失火判定基準値Mftに満たないことが判定されるが、既に複数気筒失火仮フラグFmfがONとなっているので、全域カウンタCT が“200”までカウントアップしたt2 時点に触媒ダメージ失火異常検出フラグFcdmfがONとされる。これが、上記のステップS13での制御である。その後のアイドリング状態でアイドル専用気筒別失火カウンタCImfのカウント値が繰り返し失火判定基準値Mfiを超えるので、一旦ONとなった触媒ダメージ失火異常検出フラグFcdmfが不用意にOFFとされることはない。 【0050】一方、空調装置(エアコン)がONであるなどのことにより、エンジン回転数Ne が高く、そのためにアイドル判断が成立しない場合には、以下のように失火検出の制御がおこなわれる。図7はその失火検出を説明するためのフローチャートであり、エンジン回転数Ne および負荷(1回転あたりの吸入空気量)Ga が図7に示すように変化したとすると、エンジン回転数Ne および負荷Ga が図4を参照して説明した判定基準を満たすt10時点に高S/N比状態専用カウンタCSNがカウントを開始する。これが図4に示すステップS20の制御である。また、これと同時に高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfが失火に起因する回転変動の回数を積算し始める。これが、図4に示すステップS23の制御である。なお、その過程で負荷Ga が一時的に高負荷判定値Go より小さくなるなどのことによって高S/N比運転状態が成立しなくなると、その間では、各カウンタCSN,CSNmfのカウントが中断する。これは、図4に示すステップS19で否定的に判断されてステップS28までの各ステップがスキップされるためである。 【0051】高S/N比運転状態で複数気筒での失火に起因する回転変動が検出され、その検出回数すなわち高S/N比状態専用複数気筒失火カウンタCSNmfのカウント値が失火判定基準値Mfsn を超え(t11時点)、その後のt12時点に高S/N比状態専用カウンタCSNが“200”をカウントアップする。したがってその時点では、複数気筒の失火判定が成立しているので、ここで複数気筒失火仮フラグFmfがONとされる。 【0052】その後、エンジン回転数Ne および負荷Ga が低下してアイドリング状態となると、前述したアイドル専用カウンタCI およびアイドル専用気筒別失火カウンタCImfによるアイドリング状態での失火の検出がおこなわれる。このアイドリング状態での失火の検出は、前述したように正確かつ容易におこなわれるので、アイドル専用気筒別失火カウンタCImfのカウント値に基づいて失火の判定が成立するが、上記のようにt12時点に既に複数気筒失火仮フラグFmsがONとなっているので、その状態が維持される。 【0053】ここでこの発明と上記の具体例との関係を説明すると、請求項1の発明における運転状態検出手段には上述したステップS1の機能的手段およびステップS18,S19の機能的手段が相当し、また失火積算手段には上記のステップS4,S5の機能的手段およびステップS21,S22,S23の機能的手段が相当し、さらに失火判定手段には上記のステップS7の機能的手段およびステップS25の機能的手段が相当する。また請求項2の発明における運転状態検出手段にはステップS1の機能的手段が相当する。さらに請求項3および請求項4の発明における失火積算手段には上記のステップS4,S5の機能的手段が相当する。またさらに請求項5および請求項6の発明における全域失火判定手段にはステップS12の機能的手段が相当する。そして請求項7の発明における第1失火判定手段にはステップS7の機能的手段が相当し、第2失火判定手段にはステップS12の機能的手段が相当する。 【0054】なお、上記の具体例では、4気筒エンジンにおいて2気筒で失火が生じた場合を例にとって説明したが、この発明は、上記の具体例に限定されないのであって、要は、多気筒の内燃機関において複数の気筒で生じる失火の検出に適用することができる。 【0055】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、複数の気筒で失火が生じることに伴う回転変動を他の要因で生じる回転変動から峻別しやすいアイドリングなどの高S/N比運転状態が判断された場合に、そのS/N比運転状態での回転変動の発生回数を積算して複数気筒での失火を判定するように構成されているので、複数の気筒での失火を容易かつ正確に検出することが可能になり、複数気筒での失火の検出精度が向上する。 【0056】また請求項2の発明によれば、請求項1の発明で得られる効果に加え、いずれかの気筒で失火が生じた場合、その失火に伴って生じる回転変動の時間幅が長くなり、これを利用して失火あるいはそれに起因する回転変動を検出するので、複数の気筒での失火を、回転変動に基づいて高精度に検出することができる。 【0057】さらに、請求項3の発明によれば、請求項1もしくは2の発明による効果に加え、いずれかの気筒で失火が生じることにより所定回転角度ごとの経過時間の差が長くなり、その経過時間が基準時間を超えることにより失火による回転変動として回転数を積算するので、失火の検出精度が向上する。 【0058】そして、請求項4の発明によれば、請求項3の発明で得られる効果に加え、失火に起因する所定回転角度ごとの経過時間の差が内燃機関の回転数や負荷に応じて変化することに合わせて、失火の判断となる基準値が変更されるので、失火の検出を正確におこなうことができる。 【0059】またさらに、請求項5の発明によれば、請求項1の発明で得られる効果に加え、高S/N比運転状態とそれ以外の運転状態とのいずれにおいても、回転変動に基づく失火の判定をおこなうことになり、その結果、運転状態に関わらず、常時、失火の検出をおこなうことになるので、失火の検出精度が向上する。 【0060】そしてまた、請求項6の発明によれば、請求項5の発明により得られる効果に加え、高S/N比運転状態での失火の検出感度が鋭敏になり、しかも高S/N比運転状態では失火に起因する回転変動を他の要因での回転変動とから峻別し易いので、失火の検出精度を向上させることができる。 【0061】そして、請求項7の発明によれば、いずれも高S/N比運転状態であるアイドリング状態と、低回転数かつ高負荷の運転状態のいずれにおいても回転変動の回数に基づいて失火を検出するので、失火の検出精度が向上し、さらに、アイドリング状態での検出感度が鋭敏になるので、その点でも失火の検出精度が向上する。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年3月28日(2000.3.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083998 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 丈夫
|
| 【公開番号】 |
特開2001−271701(P2001−271701A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月5日(2001.10.5) |
| 【出願番号】 |
特願2000−89719(P2000−89719) |
|