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【発明の名称】 ガスタービン高温部品の補修再生処理方法
【発明者】 【氏名】斎藤 大蔵

【氏名】蒲原 尚登

【氏名】吉岡 洋明

【氏名】石井 潤治

【氏名】近藤 卓久

【要約】 【課題】高温下での使用により析出物の析出形態や相の変化を生じたり、クリープや疲労によりき裂が生じたガスタービンの高温部品のき裂を補修するとともに、析出相を固溶・再析出させ材質をも回復させることができるガスタービン高温部品の補修再生処理方法を提供する。

【解決手段】結晶方向を制御された析出強化型の合金からなり高温下での使用によって析出相が変化し、あるいはき裂を生じたがスタービン高温部品にたいして高圧下での熱処理を施すことによって析出相を固溶・再析出させて材質を回復させるとともにき裂を拡散接合によって補修する。具体的には、き裂を生じた部品の上部と下部を部品の熱膨張率より低い熱膨張率の治具で挟んで熱処理中に部品に圧縮応力を発生させ、固相拡散接合または液相拡散接合によってき裂を補修する。あるいは、き裂を生じた部品の上部に荷重をかけて部品に圧縮応力を発生させ、固相拡散接合または液相拡散接合によってき裂を補修する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 結晶方向を制御された析出強化型の合金からなり高温下での使用によって析出相が変化し、あるいはき裂を生じたガスタービン高温部品にたいして高圧下での熱処理を施すことによって析出相を固溶・再析出させて材質を回復させるとともにき裂を拡散接合によって補修することを特徴とするガスタービン高温部品の補修再生処理方法。
【請求項2】 き裂を生じた部品の上部と下部を部品の熱膨張率より低い熱膨張率の治具で挟んで熱処理中に部品に圧縮応力を発生させ、固相拡散接合または液相拡散接合によってき裂を補修することを特徴とする請求項1記載のガスタービン高温部品の補修再生処理方法。
【請求項3】 き裂を生じた部品の上部に荷重をかけて部品に圧縮応力を発生させ、固相拡散接合または液相拡散接合によってき裂を補修することを特徴とする請求項1記載のガスタービン高温部品の補修再生処理方法。
【請求項4】 液相拡散接合は、Ni-Si-B 系のろう材を用いて行うことを特徴とする請求項2または3記載のガスタービン高温部品の補修再生処理方法。
【請求項5】 ガスタービン高温部品は、Ni基の合金であり、γ’相[Ni3(Al,Ti)]が主強化析出相であることを特徴とする請求項1記載のガスタービン高温部品の補修再生処理方法。
【請求項6】 ガスタービン高温部品は、動翼または静翼または燃焼器ライナまたはトランジションピースであることを特徴とする請求項1記載のガスタービン高温部品の補修再生処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガスタービン高温部品の補修再生処理方法に係り、特に運転中に高温に曝されることにより、熱劣化、クリープ損傷、疲労損傷あるいは酸化・腐食、エロージョン、飛来異物損傷等を受けたガスタービン高温部品の補修再生処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスタービン発電プラントでは、ガスタービンと同軸に設けられた圧縮機の駆動によって圧縮された圧縮空気を燃焼器に案内して燃焼させ、これにより発生する高温の燃焼ガスをトランジションピースおよび静翼を経て動翼に衝突させこの動翼を回転駆動させてガスタービンの仕事をさせ、同軸の発電機にて発電するようになっている。
【0003】このようなガスタービンの高温部品である燃焼器ライナ、トランジションピース、静翼および動翼には耐熱超合金が用いられている。特に高温強度が要求される動翼にはNi基超合金が使用されている。このNi基超合金は析出強化型合金であり、一般にγ’相と呼ばれるNi3 (Al,Ti)の金属間化合物をNiマトリックスに析出させることによって高温強度を出している。しかし、ガスタービンの運転とともに種々の損傷がみられる。
【0004】すなわち動翼等のガスタービン部品は高温の燃焼雰囲気に曝されるため、腐食・酸化および材質劣化が生じるとともに、遠心応力でクリープ損傷が蓄積する。また、ガスタービンの起動と停止のくり返しによって熱履歴に遠心応力が重畳した熱疲労が生じ、さらに損傷が蓄積してき裂が発生する。
【0005】一般に動翼は設計寿命に達すると廃却することになっている。中でも表面に耐酸化・耐腐食コーティングを有している初段動翼の廃却となる時間は、1100℃級ガスタービンのベースロード仕様の例で48000 時間であり、リコーティングを施して使用する場合は、コーティング層の耐久性にもよるが、24000 時間でリコーティングし、その後48000 時間使用して廃却となっている。ここではリコーティング時に施す熱処理による母材の寿命回復は見込まれていない。
【0006】近年、ガスタービンの高温化に伴い、より高温強度の高い方向制御合金、すなわち一方向凝固翼や単結晶翼が用いられるようになっている。これらの動翼の場合でも設計寿命に達すると廃却になり、設計寿命内でき裂が発生した場合は、き裂を補修する技術が開発されていないため廃却されている。
【0007】動翼以外の高温部品である静翼、燃焼器ライナおよびトランジションピースに生じるき裂あるいは摩耗は、溶接補修を施し継続して使用している。これらの補修の際、必要に応じて溶接時の熱影響及び残留応力を除去するための熱処理を真空中またはArガス中で実施している。
【0008】しかし、静翼、燃焼器ライナおよびトランジションピースも、ガスタービンの高温化とともに動翼と類似した高強度のNi基の結晶方向制御合金を用いるようになり、補修および再生処理が困難になっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一方向凝固翼は遠心応力方向に結晶を成長させ、き裂が生じやすい結晶粒界は遠心応力方向と平行に形成されている。また、単結晶翼はき裂が生じやすい結晶粒界を持たない。従って、多結晶翼と比較すると結晶方向制御翼は高温強度が高い。しかしながら、強度的にはすぐれているものの、長時間運転後に生じる遠心応力方向と垂直なき裂を溶接補修する場合、溶接補修部に結晶粒界が形成される。この結晶粒界は結合強度が低く、再度運転に供することができない。このように、き裂補修しても結晶粒界が形成されることが結晶方向制御翼のき裂補修における問題点となっている。
【0010】本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、高温下での使用により析出物の析出形態や相の変化を生じたり、クリープや疲労によりき裂が生じたガスタービンの高温部品のき裂を補修するとともに、析出相を固溶・再析出させ材質をも回復させることができるガスタービン高温部品の補修再生処理方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、結晶方向を制御された析出強化型の合金からなり高温下での使用によって析出相が変化し、あるいはき裂を生じたガスタービン高温部品にたいして高圧下での熱処理を施すことによって析出相を固溶・再析出させて材質を回復させるとともにき裂を拡散接合によって補修することを特徴とする。
【0012】請求項2の発明は、き裂を生じた部品の上部と下部を部品の熱膨張率より低い熱膨張率の治具で挟んで熱処理中に部品に圧縮応力を発生させ、固相拡散接合または液相拡散接合によってき裂を補修することを特徴とする。
【0013】請求項3の発明は、き裂を生じた部品の上部に荷重をかけて部品に圧縮応力を発生させ、固相拡散接合または液相拡散接合によってき裂を補修することを特徴とする。
【0014】請求項4の発明は、液相拡散接合は、Ni−Si−B 系のろう材を用いて行うことを特徴とする。
【0015】請求項5の発明は、ガスタービン高温部品は、Ni基の合金であり、γ’相[Ni3 (Al,Ti)]が主強化析出相であることを特徴とする。
【0016】請求項6の発明は、ガスタービン高温部品は、動翼または静翼または燃焼器ライナまたはトランジションピースであることを特徴とするガスタービン高温部品、特に動翼において、析出強化型の合金で結晶方向制御にて製造された翼、すなわち一方向凝固翼または単結晶翼は、高温下での使用により析出物の析出・成長および凝集粗大化が進み、その形状が変化するとともに、新たな析出相の析出あるいはその析出に伴い強化析出相の消失等が生じる。その結果、本来の材料特性、特にクリープ寿命あるいは延・靱性の低下が生じるとともに、遠心応力あるいは熱応力等によるクリープ、起動・停止の熱・歪み履歴による熱疲労、あるいは高・低サイクル疲労による損傷を受け、き裂をも発生する。このような劣化と損傷を受けた部材を補修、再生するためには、結晶粒界を生じさせることなくき裂を補修し、γ’相の固溶温度以上で熱処理して材質を回復させる必要がある。
【0017】き裂の補修方法として、開口した面を固相状態で接合させる固相拡散接合がある。通常のこの接合では、接合面同士を接触させ、熱処理により原子を拡散させ接合させる。開口したき裂を接合させるためにはまず、高温下でき裂を閉塞できる方向に圧縮応力を生じさせ、物理的に接触させる。これにより開口面間で原子が拡散し、接合が可能となる。
【0018】また、液相拡散接合もき裂の補修方法として有効である。この方法では接合面間すなわちき裂にインサート金属を注入し、熱処理で一時的に溶融液化した後、原子の拡散を利用し等温凝固させて接合する。ここで用いるインサート金属としては、翼材の主成分と同じNiに融点降下元素であるB およびSiを添加したろう材を用いる。このようなNi-Si-B 系のろう材として、Ni,Cr,Co,Fe,Cu,Ta,Al,W ,Re,La,Mo,Mn,P ,B ,Siおよび不可避的に混入する不純物からなるろう材がある。これは、熱処理により融点降下元素が母材すなわち翼材に拡散することによって接合部の液相の融点が上昇し、凝固するものである。このように液相拡散接合によるき裂の補修では、き裂にろう材を充填するため、圧縮応力を発生させる意図的なき裂の閉塞は必要ない。
【0019】固相拡散接合および液相拡散接合によるき裂補修において、熱処理は母材中に元素を拡散させるために実施する。一方、母材すなわち高温下で使用された翼材は主強化相のγ’相が析出・成長および凝集粗大化し、その形状が変化するとともに、新たな析出相の析出あるいはその析出に伴う強化析出相の消失等が生じている。その結果、本来の材料特性、特にクリープ寿命あるいは延・靱性の低下が生じる。また、遠心応力あるいは熱応力等によるクリープ、起動・停止の熱・歪み履歴による熱疲労、あるいは高・低サイクル疲労による損傷を受けている。このような劣化損傷を受けた部品の材質を回復させるためには、γ’相の固溶温度以上で熱処理する必要がある。
【0020】本発明の補修再生処理方法では、き裂補修のための熱処理と材質劣化を回復させるための熱処理を同時に行う。熱処理には、中に加熱装置を配備した圧力容器と、不活性ガスタンクと、この不活性ガスタンク中の不活性ガスを圧縮し圧力容器中に送り込む圧縮装置と、使用した不活性ガスを回収する排気・回収装置および加熱装置内に配備した部品を保持する容器からなる熱処理装置を用いる。圧力容器中に部品をセットした後、一旦容器内を排気した後、不活性ガスを封入し、加圧しながら昇温し、所定の温度および圧力でき裂の接合とγ’相の母材への完全固溶を図るとともに、不可避的に生じたき裂部の内部欠陥を消失させる。
【0021】なお、高圧下での熱処理後の部品の状態は、新品を鋳造し凝固した状態に等しいので、その後、その合金の通常の熱処理(例えば、溶体化処理と時効処理)を施すことが望ましい。しかし、高圧下における熱処理を施す装置がガス冷却装置を装備し、毎分40℃以上の速さで冷却可能な場合には、γ’相を固溶させる熱処理を施した後、その合金本来の溶体化処理温度で一時保持した後、急冷することによって溶体化処理を兼ねることもできる。
【0022】高圧下で施す熱処理の温度は、前記した理由によりき裂が原子の拡散により容易に接合され、かつ析出物が固溶する温度以上である。しかし、過度に温度を上げることは、温度が高くなるにつれて部材の強度が低下し、自重により変形を生じるので、このような変形を生じない温度以下にする必要がある。また、熱処理時に施す加圧は、熱処理時に局所に偏析した元素の拡散を加速し、かつ不可避的に生じたき裂部の内部欠陥をその処理温度で回復させるのに十分な圧力であり、かつ熱処理時に部品の機能上問題を生じるような変形を生じさせない圧力以下であることが必要である。
【0023】本高温高圧下の熱処理において、処理前の部品のき裂面は酸化しているため、水素および、または塩素雰囲気中で熱処理し、酸化層を還元する前処理を行う。また、翼表面はアルミナ粒子等によりブラストして、部品と反応する可能性のある汚れは除去した後、熱処理を行う必要がある。さらに、コーティングが施されている部品の場合、コーティング元素が基材に拡散することにより合金本来の特性を損ない、あるいは寿命の低下を来す場合は、コーティング層を除去して行うことが望ましい。
【0024】本発明のタービン高温部品の補修再生処理は、析出強化型のNi基の合金であり、γ’相[Ni3 (Al,Ti)]を主強化析出相としている部材を対象としている。この中でも特に、結晶方向制御合金すなわち一方向凝固合金または単結晶合金である。本発明の方法はき裂が発生している上記合金部材に対し有効な処理方法である。また、本発明の補修再生処理方法によってメンテナンスされる機器はガスタービンの高温部品であり、特に前記した材料によって製造された部品であるガスタービン動翼、静翼あるいは燃焼器ライナ、トランジションピースである。
【0025】次に、本発明の方法によってガスタービン高温部品を補修再生処理する手順を順を追って説明する。
【0026】まず、き裂を補修するにあたり、再生処理する部品に用いられている合金の最適接合温度を求める。これには、種々の温度で接合した材料から接合部を中心に試験片を採取し、高温引張試験を行い、接合温度を設定する。また、材質の回復の面から、回復処理する部品に用いられている合金のγ’相固溶温度を示差熱分析によりおおまかに求め、次いで、その温度前後の温度に保持し急冷した試料の組織観察により、正確にその製品の鋳造方案による製品部材の局部溶解開始温度を求める。こうして、示差熱分析によるγ’相固溶温度および組織観察による局部溶解開始温度から回復処理の温度条件を設定する。また、高温にて引張試験を行い、その耐力から加圧圧力を設定する。
【0027】一方、管理寿命に達した部品あるいはそれ以前の部品は、目視検査、寸法検査等の非破壊検査を行い、検査結果に基づき使用可能な部品を選定する。この検査にて部品表面およびその直下にき裂がある場合は、水素および、または塩素雰囲気中で熱処理し、酸化層の還元処理を行い、必要な場合にはろう材を充填する。なお、き裂以外の腐食・酸化あるいはエロージョン、異物衝突等による損傷も切削や肉盛りして補修する。また、外表面にコーティングが施されている部品ではコーティングを除去することが望ましい。
【0028】次に高圧下で熱処理を施すが、き裂が著しく開口している部品を、固相拡散接合によって補修再生処理する場合には、熱処理時にき裂部に圧縮応力を生じさせ物理的に接触させるために、部品の上部にき裂を閉塞できる荷重をかけるか、部品の熱膨張率より小さい熱膨張率の部材で挟み込む。その後、処理炉に部品を装填するが、高温下で熱処理するため、部品が自重により変形しないように配置する。また、部品の装填は炉の均熱帯に配置することが望ましい。
【0029】処理炉に部品を装填した時点では雰囲気が大気であるので、Ar雰囲気で処理するためにまず、圧力容器の真空引きを行う。続いて、Arガスを注入する。この真空引きとArガス注入のArガス置換操作は2〜3回行うことが望ましい。続いて、圧縮機にて高圧のArガスを注入するとともに所定の温度まで昇温する。
【0030】温度が所定値に達した後、最終的に圧縮機により所定の圧力値に調整する。その後所定の時間のあいだ、温度および圧力を保持し、冷却する。冷却後は部品に用いられている材料の通常の熱処理を施す。この回復処理を施した後、目視検査、寸法検査等の非破壊検査を行う。コーティングを施す場合は通常の熱処理の前と後に行い、その後に非破壊検査を行う。以上のような、本発明の補修再生処理方法により、ガスタービン高温部品を補修し再生することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】(実施例1)以下、本発明に係るガスタービン高温部品である動翼の補修再生処理方法及び再生処理した動翼の実施例について述べる。
【0032】図1に補修再生処理のフローチャートを示す。この再生処理工程は回復前検査、コーティング除去、き裂面の洗浄、補修再生熱処理、容体化熱処理および、回復後検査からなる。順を追って以下に各工程の概要を述べる。まず、回復前検査(ステップS1)にて実機での使用により生じたき裂、酸化、減肉および変形等の損傷を検査し、続いてステップS2にて表面に施工されている劣化した耐酸化・耐腐食コーティングを除去する。
【0033】ステップS3のき裂面の洗浄ではき裂表面に生成した酸化層を除去する。ステップS4の補修再生熱処理では開口したき裂の閉塞と劣化した材料を回復させる目的で高圧下で熱処理を施し、この材料を強化している析出相の固溶・再析出を図り、材質を回復させると同時にき裂をも補修する。
【0034】次に容体化熱処理(ステップS5)と時効熱処理(ステップS6)を施すが、これはステップS4の補修再生熱処理にて再析出した析出相の形状、大きさおよび析出密度を調整するために実施する。最後にステップS7にてこれまでの工程での損傷の有無、き裂が補修されているか、部品の形状が設計的に満足するか等の確認のための目視検査、寸法検査等を行う。なお、再生品にコーティングを施す場合は容体化熱処理前または後、時効熱処理の前または後に行う。
【0035】ここでは本発明の効果を調べるため、まず、ガスタービンの動翼に用いられているNi基超合金の結晶方向制御した一方向凝固Rene80(米国INCO社商品名)材の試験材を用いて補修再生処理の実験を行った。図2にこの試験材の化学組成を示す。
【0036】まず、本試験材の最適接合温度を求めるために種々の温度で接合した材料から接合部を中心に試験片を採取し、高温引張試験を行った。なお、接合は固相およびろう材を用いた液相拡散接合により実施した。図3にその結果を示す。固相拡散接合では接合温度が高くなるに従い、引張強さが高くなる傾向が認められ、最も低い温度でもほぼ母材と同等の強度を示した。液相拡散接合では各温度で引張強さに差は認められず、ほぼ母材と同等の強度を示した。これらの試験結果より接合は1100℃〜1300℃の間のいずれの温度でもよいことがわかった。
【0037】次に、接合と再生処理を組み合わせた実験は、本試験材のγ’相固溶温度を示差熱分析により求めた。その結果、γ’相固溶温度は1160℃〜1175℃であった。なお、試験材を加熱し、加熱後に断面の組織観察を行ったところ、γ’相の局部溶解は1200℃以上でみられた。
【0038】一方、補修再生処理を施すにあたり、TIG 溶接材、固相拡散接合材および液相拡散接合材を作成した。その後、あらかじめクリープ損傷を与えるため、900 ℃で29.4MPa の条件でクリープ中断材14本を作成し、図4に示す条件にて高圧下で熱処理を施し、組織観察およびクリープ試験を行った。各試験材の組織観察結果を図5に模式的に示し、クリープ試験結果を図6に示す。
【0039】図5に示されているように、クリープ中断材である試験材1の組織は、本合金のクリープ損傷を受けた組織特有のラフト化したγ’相2が認められた。試験材3では試験材1と同様にラフト化したγ’相2が認められる他、溶接組織3が認められた。試験材5では微細なγ’相4と矩形状のγ’相5が整列して析出しており、新材の組織と同等であったが、溶接組織が認められた。試験材7では接合面に粒界は認められなかったが、γ’相はランダムに析出し、その形状は金平糖状6であった。試験材9では接合面に粒界は認められず、新材と同等の組織を呈していた。試験材11では接合面に粒界は認められなかったが、γ’相はランダムに析出し、その形状は金平糖状であった。試験材13は接合面に粒界は認められず、新材と同等の組織を呈していた。
【0040】図6に示すクリープ試験結果では、試験材9および試験材13の組織に対応する試験材10および試験材14において、ほぼ新材のクリープ破断時間と同等であり、粒界が認められない組織の完全回復でクリープ強度も回復していることが示されている。
【0041】(実施例2)ここでは実プラントで翼有効部にき裂が発生し、設計寿命前に廃却となったNi基超合金の結晶方向制御した一方向凝固Rene80合金のガスタービンの第1段動翼を固相接合により補修再生処理した事例について述べる。再生処理は図1に示した工程に従い実施し、まず、外表面のコーティングをアルミナブラストにより除去した。その後、翼有効部に発生したき裂面の酸化層を除去するために、水素および塩素雰囲気中で熱処理し、酸化層の還元処理を行った。
【0042】次に補修再生処理を施したが、この熱処理時に、き裂部に圧縮応力を生じさせ、物理的に接触させるために図7に示すように翼16を翼材より熱膨張率が小さい治具17で挟み込み、処理装置18に装填した。補修再生処理温度は実施例1にて示した試験材10にて実施した温度と同じである。その後は本合金の通常の熱処理条件にて処理した。
【0043】図8に補修再生処理後の組織を新翼および廃却翼と比較し模式的に示すが、廃却翼には凝集粗大化したγ’相7が形成され、かつ、き裂8が認められるのに対し、補修再生処理翼はほぼ新翼の組織に回復し、き裂も消失していた。なお、処理中にき裂部に空孔が生じたと思われるが、高圧で処理しているため、この部分は圧着していた。
【0044】また、図9に補修再生処理後のき裂補修部から採取した試験片のクリープ破断時間を示す。廃却翼の試験片はき裂から離れた位置にて採取している。廃却翼は極度のクリープ強度の低下が生じていたのに対し、再生処理翼は組織と同様にクリープ強度の完全回復が図られていた。
【0045】(実施例3)ここでは実プラントで翼有効部にき裂が発生し、設計寿命前に廃却となったNi基超合金の結晶方向制御した一方向凝固Rene80合金のガスタービンの第1段動翼を液相接合により補修再生処理した事例について述べる。再生処理は図1に示した工程に従い実施し、まず、外表面のコーティングをアルミナブラストにより除去した。その後、翼有効部に発生したき裂面の酸化層を除去するために、水素および塩素雰囲気中で熱処理し、酸化層の還元処理を行い、Ni-Si-B 系のろう材を充填した。補修再生処理温度は実施例1にて示した試験材13にて実施した温度と同じである。その後は本合金の通常の熱処理条件にて処理した。
【0046】図10に補修再生処理後の組織を新翼および廃却翼と比較し模式的に示すが、廃却翼のγ’相が凝集粗大化しておりかつき裂が認められているのに対し、補修再生処理翼はほぼ新翼の組織に回復し、き裂も消失していた。
【0047】また、図11に補修再生処理後のき裂補修部から採取した試験片のクリープ破断時間を示す。廃却翼の試験片はき裂から離れた位置にて採取している。廃却翼は極度のクリープ強度の低下が生じていたのに対し、再生処理翼は組織と同様にクリープ強度の完全回復が図られていた。
【0048】(実施例4)ここでは実プラントで翼有効部にき裂が発生し、設計寿命前に廃却となった図12に示すNi基超合金の結晶方向制御した単結晶CMSX-4合金(米国キャノン・マスケゴン社商品名)のガスタービンの第1段動翼を液相接合により補修再生処理した事例について述べる。まず、翼有効部に発生したき裂面の酸化層を除去するために、水素および塩素雰囲気中で熱処理し、酸化層の還元処理を行い、Ni-Si-B系のろう材を充填した。補修再生処理温度は実施例1にて示した試験材13にて実施した温度と同じである。その後は本合金の通常の熱処理条件にて実施した。
【0049】図13に補修再生処理後の組織を新翼および廃却翼と比較し模式的に示すが、廃却翼のγ’相が凝集粗大化しておりかつき裂が認められているのに対し、補修、再生処理翼はほぼ新翼の組織に回復し、き裂も消失していた。
【0050】また、図14に補修再生処理後のき裂補修部から採取した試験片のクリープ破断時間を示す。なお、廃却翼の試験片はき裂から離れた位置にて採取している。廃却翼は極度のクリープ強度の低下が生じていたのに対し、再生処理翼は組織と同様にクリープ強度の完全回復が図られていた。
【0051】一方、再生処理後のコーティング層と母材の境界近傍の組織を観察すると、図15に示すように回復熱処理およびその後実施した通常の熱処理により、コーティング層10の構成元素と母材9の構成元素が相互拡散し、翼の強度に寄与しない拡散層の幅が大きくなり、かつ劣化相11の粗大化もみられた。したがってコーティング翼を再生する場合は補修再生熱処理前にコーティングを除去することが望ましい。
【0052】その他の実施例として、図16に組成を示すガスタービンの動翼材であるNi基合金のIN738LC 材(米国INCO社商品名)、U500材(米国INCO社商品名)、MarM247 材(米国キャノン・マスケゴン社商品名)、CMSX-2材(米国キャノン・マスケゴン社商品名)およびこれらの材料からなる動翼でも本補修再生処理方法でクリープ寿命および組織の完全回復が図られた。さらに、Ni基合金を用いた燃焼器ライナ、トランジションピースおよび静翼に対しても本補修再生処理法にてき裂の補修と同時に材料劣化をも回復させることができる。
【0053】
【発明の効果】以上の通り、本発明のガスタービン高温部品の補修再生処理方法によれば、き裂や材質劣化が生じたガスタービン高温部品に補修と高圧下での熱処理を施すことによって、それらの部品を再使用に供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成11年8月12日(1999.8.12)
【代理人】 【識別番号】100087332
【弁理士】
【氏名又は名称】猪股 祥晃 (外1名)
【公開番号】 特開2001−55928(P2001−55928A)
【公開日】 平成13年2月27日(2001.2.27)
【出願番号】 特願平11−228673