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【発明の名称】 オンライン寿命診断システム
【発明者】 【氏名】藤山 一成

【氏名】高木 圭介

【氏名】齊藤 和宏

【氏名】山本 浩喜

【氏名】犬飼 隆夫

【氏名】吉岡 洋明

【氏名】石井 潤治

【氏名】近藤 卓久

【氏名】閻 梁

【要約】 【課題】機器の寿命を運転中に的確に予測し、部品をできるだけ長期間使用し、かつ適切な保守管理を行うために、オンライン監視を援用して寿命解析させながら診断を行う。定検情報を反映して矛盾無く高精度な寿命予測が行える。

【解決手段】機器の運転中に、損傷要因となる事象と、運転パラメータとをそれぞれ計測して数値データ化し、現在の運転中における事象の変化傾向を求める。予め機器の想定される運転条件に対応して解析した複数種類の運転パターンと比較して合致するパターンを選定する。選定したパターンに沿うオンライン計測値を、定検時の実データを基にして解析した定検時計測値によって補正する。現時点の損傷評価を行い、定検時または実験時に得られた実データに基づく損傷傾向の解析パターンと現時点の損傷評価による計測値パターンとを比較して両パターンの偏差を求める。偏差に基づいてパターンを補正し、損傷評価結果に基づいて機器の余寿命を判断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 寿命診断の対象となる機器の運転中に、その機器の構成部材の損傷要因となる事象と、その事象が生じている前記機器の運転パラメータとをそれぞれ計測して数値データ化するとともに、これらの数値データに基づいて現在の運転中における前記事象の変化傾向を求め、この求めた変化傾向を、予め前記機器の想定される運転条件に対応して解析した複数種類の運転パターンと比較して合致するパターンを選定し、この選定したパターンに沿う前記オンライン計測値を、定検時の実データを基にして解析した定検時計測値によって補正することにより、現時点の損傷評価を行い、さらに定検時または実験時に得られた実データに基づく損傷傾向の解析パターンと前記現時点の損傷評価による計測値パターンとを比較して両パターンの偏差を求め、この偏差に基づいて現時点のパターンを補正し、この補正を加えた損傷評価結果に基づいて前記機器の余寿命を判断することを特徴とするオンライン寿命診断システム。
【請求項2】 機器またはその部材に対して付設され、運転中における前記機器または部材の状態を測定する運転中計測手段と、前記機器の運転制御装置に付設され、前記機器の運転制御に必要な要素を計測する運転パラメータ計測手段と、これらの各計測手段において得られる計測信号の送受信を行う通信手段と、この通信手段を介して前記各計測信号を受信し、その計測信号の運転時間または起動回数に対する変化傾向を算出する運転中計測値変化傾向解析手段と、予め対象機器の想定運転条件に対して有限要素法等を用いて部材各部の温度・応力を計算しておき、テーブル化しておいた解析データベースと、この解析データベースに格納された解析値と前記計測値との比較または補正を行う計測値−解析値マッチング手段と、比較または補正した解析値を用いて部材の寿命評価を行う解析的寿命予測手段と、対象機器の定検時の検査データを記憶し、運転時間または起動停止回数との関係を求めておく定検データ傾向解析手段と、これによる定検データ傾向解析結果とオンライン計測に基づく損傷評価結果の比較および補正を行う定検情報−オンライン計測マッチング手段と、この手段で定検情報による補正を加えた損傷評価結果を基に余寿命評価を行う余寿命判定手段と、その余寿命判定結果から保守管理の時期と方法を判定する保守管理設定手段と、以上の評価判定結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とするオンライン寿命診断システム。
【請求項3】 前記運転中計測手段は機器または部材のメタル温度運転中計測手段で、光学的センサにより対象部位のメタル温度もしくは表面温度を計測するものであり、前記運転中計測値変化傾向解析手段はメタル温度運転中変化傾向解析手段であり、メタル温度計測値と運転時間または起動停止回数との関係を算出して寿命評価に用いることを特徴とする請求項2記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項4】 前記計測値−解析値マッチング手段は、メタル温度の運転中変化特性において起動−定格−停止間の代表時点での温度と、起動時の昇温速度と、停止時の降温速度について比較するものであることを特徴とする請求項2または3記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項5】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、機器または部材の切断調査あるいはレプリカ調査によって得られたミクロ組織における析出物寸法から推定した部材各部のメタル温度推定値であり、このメタル温度推定値を用いて前記計測値−解析値マッチング手段で得られた部材各部の温度変化履歴を補正し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から4までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項6】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は部材の最大き裂長さ、き裂長さ総和またはき裂長さ密度の計測情報であり、これらのき裂計測値の起動回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたき裂量の起動回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向に基づいて寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から5までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項7】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は部材のミクロ組織観察から得られた析出物寸法に基づくクリープ歪量であり、このクリープ歪量の運転時間に対する変化傾向と前記解析的寿命予測手段で得られたクリープ歪量の運転時間に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向に基づいて寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から5までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項8】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、部材の酸化深さの計測情報であり、この酸化深さの運転時間に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた酸化深さ量の運転時間に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から5までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項9】 前記余寿命判定手段において回数依存型寿命として疲労をとり、時間依存型寿命としてクリープまたは酸化の短い方をとり、回数依存型寿命は、予め実験により部材の圧縮保持高温低サイクル疲労試験または圧縮保持熱疲労試験結果に基づいて設定しておき、時間依存型寿命は、予め実験により部材のクリープ試験および酸化試験結果に基づいて設定しておき、さらに引張保持低サイクル疲労試験または引張保持熱疲労試験結果に基づき、回数依存型寿命と時間依存型寿命との中間領域を設定し、これらの下限を用いて使用可能限界値を決定する許容起動停止回数/許容運転時間線図を用いることを特徴とする請求項2から8までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項10】 余寿命判定手段では、熱機械疲労試験および温度一定下の低サイクル疲労試験における試験波形の同期νと、保持なしの破損繰返し数Nに対する保持波形の破損繰返し数Nの比(N/Nf0:寿命低下率)との関係を、【数1】

に基づいて定め、後の許容起動回数を判定することを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項11】 前記運転中計測手段は、機器または部材の表面に施工されている遮熱コーティング温度運転中計測手段で、光学的センサによって対象部位の遮熱コーティング表面温度を計測するものであり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は、遮熱コーティング温度運転中変化傾向解析手段で、遮熱コーティング温度計測値と運転時間または起動停止回数との関係を解析して遮熱コーティングの剥離を検知するものであることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項12】 前記余寿命判定手段において遮熱コーティングの剥離までの期間を監視し、遮熱コーティング剥離後の温度、応力および歪を温度補正計算に基づいて求め、回数依存型寿命として疲労をとり、時間依存型寿命としてクリープまたは酸化の短い方をとり、寿命を予知することを特徴とする請求項11記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項13】 前記運転中計測手段は原動機の高温翼先端部に対置するケーシング側に光学的間隙計測手段を配設し翼先端の位置変化を計測する間隙運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は間隙温度運転中変化傾向解析手段であり、間隙の変化から翼先端部の酸化減肉またはクリープ変形量と運転時間または起動停止回数との関係を解析して異常の兆候を検知することを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項14】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において、定検情報は翼チップ部の酸化減肉量の計測情報であり、この酸化減肉量の運転時間に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた酸化減肉量の運転時間に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し寿命評価に用いることを特徴とする請求項13記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項15】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、翼の伸びの計測情報であり、この伸びの運転時間に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたクリープ変形量の運転時間に対する変化傾向の偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項13記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項16】 前記運転中計測手段は、機器または部材のき裂発生部に対置して光学的間隙計測手段を配設し、き裂寸法の変化を計測するき裂進展運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は、き裂進展運転中変化傾向解析手段であり、き裂長さの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたき裂進展量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項17】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、部材の酸化深さの計測に基づくメタル温度推定値であり、このメタル温度推定値を用いて前記計測値−解析値マッチング手段で得られた部材各部の温度変化履歴を補正し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項14記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項18】 前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、部材のき裂長さの計測情報であり、このき裂長さの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたき裂進展量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定することを特徴とする請求項14記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項19】 前記運転中計測手段は、機器の部材表面と同一面に露出し、かつ前記部材と絶縁を保つよう配設された酸化モニタ材料と、この酸化モニタ材料の電気抵抗変化を計測することにより酸化減肉量を計測する酸化減肉量運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は、酸化減肉量運転中変化傾向解析手段であり、酸化減肉量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた酸化減肉量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項20】 前記運転中計測手段は、機器の翼に対置して翼たおれ量を計測するように配設された光学式変位計を有する翼変形運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は翼変形運転中変化傾向解析手段であり、翼たおれ量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた翼たおれ量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定することを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項21】 前記運転中計測手段は、機器または部材にスプリングを介して押し付けられた変位検出ロッドまたは歪ゲージを有する変形運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は変形運転中変化傾向解析手段であり、部材の変形量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた部材の変形量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件を補正して寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項22】 前記運転中計測手段は、機器または部材の位置と姿勢を検知するように複数箇所に配設された変位検出手段を有する変位運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は変位運転中変化傾向解析手段であり、部品の位置と姿勢の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向から、取付部等の摩耗減肉量を推定し、前記解析的寿命予測手段で得られた摩耗減肉量計算値の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を補正し寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【請求項23】 前記運転中計測手段は、原動機のロータのたわみを検知するように複数箇所に配設された変位検出手段を有するロータたわみ運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段はロータたわみ運転中変化傾向解析手段であり、ロータ中央部のたわみの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた応力ロータたわみ推定値の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電プラント等に適用される機器または部材、例えばガスタービン等の原動機部品の異常監視または寿命診断を行うシステムに係り、特に運転中に寿命を予知することができ、運転および保守管理等の判断ならびに寿命予測を高精度で行えるオンライン寿命診断システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エネルギーの有効利用と地球環境保護の観点から、発電プラント等の効率を高めるため、ガスタービン等の原動機の高温化や大型化が急速に進められており、部材の使用条件はますます過酷さを増している。部材に加わる損傷要因としては、高温、振動、エロージョン、腐食、酸化、摩耗、クリープ、熱疲労、劣化、異物付着・衝突などがあるが、これらは運転中に計測することが困難であるため、定検時に点検し、寿命診断する方法が提案されている(例えば特開平8−160035)。しかし、機械構造物がますます複雑化し、しかも各種劣化・損傷因子が相互作用することから、運転中に損傷の変化傾向を捉えて予測し、異常を未然に防止する方法の確立が求められるようになってきた。
【0003】従来のオンライン寿命診断システムは、運転記録に応じて予め設定された計算式に基づいて寿命消費量を積算し、部品の管理方法を表示するものや(特開昭54−158506)、変形や間隙などのモニタリングにより監視し設計計算値と比較して異常値が生じた場合には警報を発するなどの機能を有している(例えば、特開平9−310605)。しかし、オンライン計測可能な部位や計測対象は限定されるため、解析的な寿命予測法を援用し、さらに定検時情報を反映して高精度化する方法の確立が求められているが、従来そのような方法およびシステムは提案されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、機械構造物がますます複雑化し、しかも各種劣化・損傷因子が相互作用することから、運転中に損傷の変化傾向を捉えて予測し、異常を未然に防止する方法の確立が求められるようになってきた。
【0005】また、オンライン計測可能な部位や計測対象は限定されるため、解析的な寿命予測法を援用し、さらに定検時情報を反映して高精度化する方法の確立が求められている。
【0006】本発明はこのような事情に鑑みてなれさもので、機器の寿命を運転中に的確に予測し、部品をできるだけ長期間使用し、かつ適切な保守管理を行うために、オンライン監視を援用して寿命解析させながら診断を行うことができ、かつ定検情報も反映して矛盾無く高精度な寿命予測が行えるオンライン寿命診断システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、請求項1の発明では、寿命診断の対象となる機器の運転中に、その機器の構成部材の損傷要因となる事象と、その事象が生じている前記機器の運転パラメータとをそれぞれ計測して数値データ化するとともに、これらの数値データに基づいて現在の運転中における前記事象の変化傾向を求め、この求めた変化傾向を、予め前記機器の想定される運転条件に対応して解析した複数種類の運転パターンと比較して合致するパターンを選定し、この選定したパターンに沿う前記オンライン計測値を、定検時の実データを基にして解析した定検時計測値によって補正することにより、現時点の損傷評価を行い、さらに定検時または実験時に得られた実データに基づく損傷傾向の解析パターンと前記現時点の損傷評価による計測値パターンとを比較して両パターンの偏差を求め、この偏差に基づいて現時点のパターンを補正し、この補正を加えた損傷評価結果に基づいて前記機器の余寿命を判断することを特徴とするオンライン寿命診断システムを提供する。
【0008】請求項2の発明では、図1に示すように、機器またはその部材に対して付設され、運転中における前記機器または部材の状態を測定する運転中計測手段1と、前記機器の運転制御装置に付設され、前記機器の運転制御に必要な要素を計測する運転パラメータ計測手段2と、これらの各計測手段1,2において得られる計測信号の送受信を行う通信手段3と、この通信手段3を介して前記各計測信号を受信し、その計測信号の運転時間または起動回数に対する変化傾向を算出する運転中計測値変化傾向解析手段4と、予め対象機器の想定運転条件に対して有限要素法等を用いて部材各部の温度・応力を計算しておき、テーブル化しておいた解析データベース5と、この解析データベース5に格納された解析値と前記計測値との比較または補正を行う計測値−解析値マッチング手段6と、比較または補正した解析値を用いて部材の寿命評価を行う解析的寿命予測手段7と、対象機器の定検時の検査データを記憶し、運転時間または起動停止回数との関係を求めておく定検データ傾向解析手段8と、これによる定検データ傾向解析結果とオンライン計測に基づく損傷評価結果の比較および補正を行う定検情報−オンライン計測マッチング手段9と、この手段で定検情報による補正を加えた損傷評価結果を基に余寿命評価を行う余寿命判定手段10と、その余寿命判定結果から保守管理の時期と方法を判定する保守管理設定手段11と、以上の評価判定結果を表示する表示手段12とを備えたことを特徴とするオンライン寿命診断システムを提供する。
【0009】本発明において、各手段として、下記の機能を有するものが適用できる。
【0010】運転中計測手段は、構造部材の温度を非接触的に計測する光学的温度計測手段、構造部材のき裂を非接触的に計測する光学的き裂計測手段、構造部材の変形を接触あるいは非接触的に計測する機械式あるいは光学式変位計測手段、または、構造部材の酸化減肉量を計測する酸化減肉モニタ手段のいずれか、またはこれらの組合せにより構成され、部材の使用状態および損傷量を数値データに変換する。
【0011】運転パラメータ計測手段は、原動機等の運転制御に必要な、流体温度、回転数、負荷、運転時間または起動停止回数などの計測手段、例えば温度計、回転計、圧力計、流量計または負荷計測装置などである。
【0012】これらの運転中計測手段および運転パラメータ計測手段の計測信号は、通信手段により無線または有線でシステム本体に伝送される。
【0013】運転中計測値変化傾向解析手段には、運転中計測手段および運転パラメータ計測手段から受信した計測信号の、運転時間または起動停止回数に対する変化傾向を、数値的に最適近似計算するプログラムが組込まれる。
【0014】一方、解析データベースは、予め対象機器の想定運転条件に対して有限要素法等を用いて部材各部の使用状態量である温度・応力・歪を計算しておき、運転パターンとこれらの使用状態量を対応づけてテーブル化しておく。
【0015】計測値−解析値マッチング手段は、運転中計測値本科傾向解析手段によって得られた使用状態量と運転時間または起動停止回数との関係を、解析データベースと比較して解析値と合致するものを選び出すか、両者の偏差を計算してその変化傾向に基づいて補正方法を判定する。
【0016】解析的寿命予測手段は、補正された使用条件に基づいて、回数依存型の疲労寿命と時間依存型のクリープまたは酸化、摩耗による寿命とを求める。
【0017】ここで、定検データ傾向解析手段では、対象機器の定検時の劣化・損傷(ミクロ組織、変形、酸化、摩耗、き裂、コーティング剥離等)計測値と、運転時間あるいは起動停止回数との関係を求めておく。
【0018】定検情報−オンライン計測マッチング手段は、定検データ傾向解析結果と解析的寿命予測手段との損傷変化傾向を比較し、両者の偏差を計算してその変化傾向に基づいて補正方法を判定する。
【0019】余寿命判定手段は、以上のようにして求めた回数依存型寿命消費量と時間依存型寿命消費量とを材料と使用条件に応じた許容起動停止回数−許容運転時間線図に適用して限界値に達するまでの期間を予測する。
【0020】保守管理設定手段は、余寿命判定結果に基づき、次回点検時期、運用制限、補修可否、交換と継続使用の判定を行う。
【0021】表示手段は、これらの結果を画像に表示し、運転制御装置等に信号を伝送する。
【0022】請求項3の発明では、前記運転中計測手段は機器または部材のメタル温度運転中計測手段で、光学的センサにより対象部位のメタル温度もしくは表面温度を計測するものであり、前記運転中計測値変化傾向解析手段はメタル温度運転中変化傾向解析手段であり、メタル温度計測値と運転時間または起動停止回数との関係を算出して寿命評価に用いることを特徴とする請求項2記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0023】請求項4の発明では、前記計測値−解析値マッチング手段は、メタル温度の運転中変化特性において起動−定格−停止間の代表時点での温度と、起動時の昇温速度と、停止時の降温速度について比較するものであることを特徴とする請求項2または3記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0024】請求項5の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、機器または部材の切断調査あるいはレプリカ調査によって得られたミクロ組織における析出物寸法から推定した部材各部のメタル温度推定値であり、このメタル温度推定値を用いて前記計測値−解析値マッチング手段で得られた部材各部の温度変化履歴を補正し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から4までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0025】請求項6の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は部材の最大き裂長さ、き裂長さ総和またはき裂長さ密度の計測情報であり、これらのき裂計測値の起動回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたき裂量の起動回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向に基づいて寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から5までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0026】請求項7の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は部材のミクロ組織観察から得られた析出物寸法に基づくクリープ歪量であり、このクリープ歪量の運転時間に対する変化傾向と前記解析的寿命予測手段で得られたクリープ歪量の運転時間に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向に基づいて寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から5までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0027】請求項8の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、部材の酸化深さの計測情報であり、この酸化深さの運転時間に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた酸化深さ量の運転時間に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項2から5までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0028】請求項9の発明では、前記余寿命判定手段において回数依存型寿命として疲労をとり、時間依存型寿命としてクリープまたは酸化の短い方をとり、回数依存型寿命は、予め実験により部材の圧縮保持高温低サイクル疲労試験または圧縮保持熱疲労試験結果に基づいて設定しておき、時間依存型寿命は、予め実験により部材のクリープ試験および酸化試験結果に基づいて設定しておき、さらに引張保持低サイクル疲労試験または引張保持熱疲労試験結果に基づき、回数依存型寿命と時間依存型寿命との中間領域を設定し、これらの下限を用いて使用可能限界値を決定する許容起動停止回数/許容運転時間線図を用いることを特徴とする請求項2から8までのいずれかに記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0029】請求項10の発明では、余寿命判定手段では、熱機械疲労試験および温度一定下の低サイクル疲労試験における試験波形の同期νと、保持なしの破損繰返し数Nf0に対する保持波形の破損繰返し数Nの比(N/Nf0:寿命低下率)との関係を、【数2】

に基づいて定め、後の許容起動回数を判定することを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0030】請求項11の発明では、前記運転中計測手段は、機器または部材の表面に施工されている遮熱コーティング温度運転中計測手段で、光学的センサによって対象部位の遮熱コーティング表面温度を計測するものであり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は、遮熱コーティング温度運転中変化傾向解析手段で、遮熱コーティング温度計測値と運転時間または起動停止回数との関係を解析して遮熱コーティングの剥離を検知するものであることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0031】請求項12の発明では、前記余寿命判定手段において遮熱コーティングの剥離までの期間を監視し、遮熱コーティング剥離後の温度、応力および歪を温度補正計算に基づいて求め、回数依存型寿命として疲労をとり、時間依存型寿命としてクリープまたは酸化の短い方をとり、寿命を予知することを特徴とする請求項11記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0032】請求項13の発明では、前記運転中計測手段は原動機の高温翼先端部に対置するケーシング側に光学的間隙計測手段を配設し翼先端の位置変化を計測する間隙運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は間隙温度運転中変化傾向解析手段であり、間隙の変化から翼先端部の酸化減肉またはクリープ変形量と運転時間または起動停止回数との関係を解析して異常の兆候を検知することを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0033】請求項14の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において、定検情報は翼チップ部の酸化減肉量の計測情報であり、この酸化減肉量の運転時間に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた酸化減肉量の運転時間に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し寿命評価に用いることを特徴とする請求項13記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0034】請求項15の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、翼の伸びの計測情報であり、この伸びの運転時間に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたクリープ変形量の運転時間に対する変化傾向の偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項13記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0035】請求項16の発明では、前記運転中計測手段は、機器または部材のき裂発生部に対置して光学的間隙計測手段を配設し、き裂寸法の変化を計測するき裂進展運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は、き裂進展運転中変化傾向解析手段であり、き裂長さの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたき裂進展量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0036】請求項17の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、部材の酸化深さの計測に基づくメタル温度推定値であり、このメタル温度推定値を用いて前記計測値−解析値マッチング手段で得られた部材各部の温度変化履歴を補正し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項14記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0037】請求項18の発明では、前記定検情報−オンライン計測マッチング手段において使用する定検情報は、部材のき裂長さの計測情報であり、このき裂長さの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られたき裂進展量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定することを特徴とする請求項14記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0038】請求項19の発明では、前記運転中計測手段は、機器の部材表面と同一面に露出し、かつ前記部材と絶縁を保つよう配設された酸化モニタ材料と、この酸化モニタ材料の電気抵抗変化を計測することにより酸化減肉量を計測する酸化減肉量運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は、酸化減肉量運転中変化傾向解析手段であり、酸化減肉量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた酸化減肉量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0039】請求項20の発明では、前記運転中計測手段は、機器の翼に対置して翼たおれ量を計測するように配設された光学式変位計を有する翼変形運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は翼変形運転中変化傾向解析手段であり、翼たおれ量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた翼たおれ量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定することを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0040】請求項21の発明では、前記運転中計測手段は、機器または部材にスプリングを介して押し付けられた変位検出ロッドまたは歪ゲージを有する変形運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は変形運転中変化傾向解析手段であり、部材の変形量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた部材の変形量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件を補正して寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0041】請求項22の発明では、前記運転中計測手段は、機器または部材の位置と姿勢を検知するように複数箇所に配設された変位検出手段を有する変位運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段は変位運転中変化傾向解析手段であり、部品の位置と姿勢の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向から、取付部等の摩耗減肉量を推定し、前記解析的寿命予測手段で得られた摩耗減肉量計算値の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を補正し寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0042】請求項23の発明では、前記運転中計測手段は、原動機のロータのたわみを検知するように複数箇所に配設された変位検出手段を有するロータたわみ運転中計測手段であり、前記運転中計測値変化傾向解析手段はロータたわみ運転中変化傾向解析手段であり、ロータ中央部のたわみの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、前記解析的寿命予測手段で得られた応力ロータたわみ推定値の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、その偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し、寿命評価に用いることを特徴とする請求項1記載のオンライン寿命診断システムを提供する。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るオンライン寿命診断システムの実施形態について図面を参照して説明する。
【0044】
第1実施形態(図2〜図16)(請求項1〜10対応)本実施形態は、ガスタービン動翼のオンライン寿命診断システムについてのものであり、図2は同システムを示すブロック構成図である。
【0045】この図2に示すように、本実施形態のシステムは、ガスタービン動翼に対して付設される運転中計測手段1として、ガスタービン動翼のメタル温度をオンラインで計測するメタル温度運転中計測手段15を備える。このメタル温度運転計測手段15の具体的な構成については、図4および図5を用いて後に詳説する。
【0046】また、運転制御装置に付設される運転パラメータ計測手段2を備え、ガスタービンの回転数等を計測するようになっている。この運転パラメータ計測手段2の具体的な構成については、図6および図7を用いて後に詳説する。
【0047】これらの計測手段2,15において得られる計測信号は、通信手段3を介してオンライン寿命監視システム本体Aに送信される。オンライン寿命監視システム本体Aには運転中計測値変化傾向解析手段4としとてのメタル温度運転中変化傾向解析手段16と、計測値−解析値マッチング手段6と、解析的寿命予測手段7と、定検情報−オンライン計測マッチング手段9と、余寿命判定手段10と、保守管理設定手段11とが備えてある。
【0048】運転中計測値変化傾向解析手段4は、メタル温度計測手段15から出力されるガスタービン動翼のメタル温度の計測信号と、運転パラメータ計測手段2から出力されるタービン回転数等の計測信号を受信し、この受信した計測信号に基づいて、ガスタービンの運転時間または起動回数に対する動翼のメタル温度の変化傾向を算出するようになっている。
【0049】計測値−解析値マッチング手段6には、外部記憶装置等の解析データベース5に格納されているデータ信号と、メタル温度運転中変化傾向解析手段16からの出力信号が取込まれる。解析データベース5では、予め対象機器の想定運転条件に対して有限要素法等を用いて計算されたガスタービン動翼の温度・応力等の解析値がテーブル化して格納されており、その解析データベースシステム5の解析値とメタル温度運転中変化傾向解析手段16からの計測値とが計測値−解析値マッチング手段6で比較され、後述のマッチングが行われる。解析的寿命予測手段7では、ガスタービンの定検時の検査データを記憶し運転時間あるいは起動停止回数との関係を求めておく定検データ傾向解析手段8と、計測値−解析値マッチング手段7からの解析値を用いてガスタービン動翼の寿命評価が行われる。定検情報−オンライン計測マッチング手段9では、定検データ傾向解析結果とオンライン計測に基づく損傷評価結果の比較と補正とが行われ、余寿命判定手段10では、定検情報による補正を加えた損傷評価結果を基に余寿命評価が行われる。さらに、保守管理設定手段11では、余寿命判定結果から保守管理の時期と方法とが判定される。以上の評価判定結果が表示手段12に表示される。
【0050】図3および図4は、それぞれ本実施形態において対象とするガスタービン第1段動翼13の異なる損傷状態を示す模式図である。
【0051】図3に示した動翼13は、その翼部に耐酸化メタルコーティングを施したものであり、運転中の高温ガスによって酸化部分13aが生じた状態を示している。また、熱応力の高い部分では歪の繰返しにより疲労損傷がミクロき裂の発生と成長により蓄積し、目視レベル(数mm)のマクロき裂発生に至る。また、肉厚内部では、定常運転時に引張応力が加わるためクリープ歪が蓄積し、ボイド発生・成長・合体過程を経てマクロき裂発生に至る。熱疲労は時間依存型寿命消費形態であり、酸化とクリープは時間依存型寿命消費形態であり、動翼13の寿命評価にはこれらの因子を考慮する必要がある。図3には、このようにな要因によって発生したき裂13bも示してある。
【0052】図4は、後述する他の実施形態である遮熱コーティング(TBC)を施した動翼13について、TBC剥離13cや、それに起因してき裂13dが発生した場合の損傷形態を示している。遮熱コーティングが健全である場合には基材損傷は軽微であるが、TBCが剥離すると局所的な高温部(ホットスポット)が生じ、酸化や熱疲労などの損傷が加速する。
【0053】図5は、メタル温度運転中計測手段15のガスタービンへの取付け状況を示す全体構成図であり、図6は図5の要部を拡大して示す図である。このメタル温度運転中計測手段15は、例えば赤外線を利用して温度感知を行う放射温度計としてのパイロメータ19を適用したものであり、ケーシング20に取付けられている。このパイロメータ19は、赤外線検出用のセンサ部24を細長な保護筒25に収納した構成とされ、第1段静翼21の一部に形成した孔を通して設置されている。測定対象位置は第1段動翼22の前縁であり、保護筒25の先端側には、静翼21からガス通路部20aに面する部分に位置して耐熱性の保護レンズ26が設置されている。第1段動翼22の前縁の温度は、保護レンズ26を通してセンサ部24での赤外線検出により行われる。そして、計測信号は、ケーシング20の外側に取出され、発信装置18と受信装置17とにより、メタル温度運転中変化傾向解析手段16に伝達される。
【0054】なお、パイロメータ19は、1箇所ないしは複数箇所に設置される。複数箇所に設置する場合には、図6に仮想線で示すように、設定角度を個々に変え、測定ポイント23をずらすことにより、翼高さ方向の温度分布を計測することができる。
【0055】図7は、メタル温度運転中変化傾向解析手段16の機能説明図である。
【0056】このメタル温度運転中変化傾向解析手段16では、メタル温度運転中計測手段15からのメタル温度計測値信号を受信するとともに、運転パラメータ計測手段2からの回転モニタ信号を受信する。この際、両信号の受信を同期させることにより、複数の動翼21の中から、パイロメータ19が所定番号の一つの動翼についての信号値のみを同期計測できるようになっている。また、計測開始の時間トリガー(起動時トリガー)の信号発生の後、時間とメタル温度計測値とを取り込むことにより、図7にパターン16aとして例示したように、メタル温度と時間の関係をデータテーブル化するものである。これにより、動翼21のメタル温度は起動後、次第に立上り、その後、温度一定の定格運転に入る。そして、所定時間経過後の停止の際に、メタル温度が徐々に低下するというパターン16aが得られる。このようなパターンを、各動翼毎に同期計測することにより、全ての動翼21について得ることができる。
【0057】次に、図8によって計測値−解析値マッチング手段6の機能を説明する。
【0058】本実施形態では、動翼21のメタル温度運転中変化傾向データ(パターン16a)について、下記の値を指標として温度変化パターンのマッチングを行う。即ち、計測値−解析値マッチング手段6では比較要素として、例えば起動時FSNL(無負荷定格回転数)温度、起動から定格(FSNL以後の昇温過程)までの昇温速度、定格時、停止時FSNL温度、消火時回転数および消火時温度が設定されている。そして、これらの要素について、メタル温度運転中変更解析手段16で得られたパターン16aと、解析データベースシステム5に格納されている複数種類の登録運転パターン(パターン1〜4)との比較が行われ、このパターン1〜4の中から合致するものが選定される(図8の例では、パターン1がパターン16aに合致する)。これにより、現時点のタービン運転がどのようなパターンの運転になっているかが分る。ちなみに、図8に示した解析データベース25の登録運転パータン中、パターン1は標準運転、パターン2は消火時温度が緩かに下降する運転、パターン3は起動時定格までの昇温速度が緩かな運転、パターン4は定格温度が低い場合を示している。
【0059】次に、上述の方法によって計測値−解析値マッチング手段6で選定されたパターンを、定検データ傾向解析手段8および解析的寿命予測手段7によって温度補正および寿命評価する機能について説明する。
【0060】定検データ傾向解析手段8は、ガスタービン定検時に調査した動翼13の熱疲労、クープ歪、酸化等の計測値と、運転時間または起動停止回数との関係を解析するものである。
【0061】図9は、このような動翼13の定検時における非破壊および破壊調査項目を示している。ここで、熱疲労については、非破壊的に最大き裂長さとき裂長さ密度(計測面積当たり総き裂長さ)とを計測する(a)。クリープ歪については、顕著な場合には非破壊的に翼寸法計測により検出できる場合もあるが(b)、より正確には破壊調査を行い、ミクロ組織観察により評価する(c)。なお、この(c)においては、γ′粒(NiAl)の組織について未使用材と長期使用材とを示しており、長期使用材で図示(右側)のように形くずれしている。酸化については、減肉量は寸法計測から求め(d)、組織的な酸化の深さ方向への進行は、切断調査によって求める(e)。
【0062】図10は、一例として、定検時ミクロ組織観察によって、動翼13が使用された温度を推定するとともに、この温度推定結果を反映した解析的寿命予測手段7によって寿命評価を行う場合の機能を示している。
【0063】すなわち図10に示すように、ミクロ組織観察(γ′粒径dの計測)を行い(f),以前の粒径dを用いた体積変化(d−d)についての下記の析出物径からの温度推定式を用いて、動翼13の温度Tを推定することができる(g)。
【0064】
【数3】

【0065】この温度推定値Tを基に、図10の(h)に示した温度−時間線図および温度−歪線図の定格時の値を、破線の如く補正する。このようにして補正した温度、応力、歪範囲から、時間依存型寿命として、酸化とクリープの寿命がそれぞれ材料の寿命評価カーブ(i),(j)を用いて短い方の値として算出され(k)、回数依存型寿命として熱疲労が材料の寿命評価カーブ(l)を用いて算出される(m)。
【0066】次に、定検情報−オンライン計測マッチング手段9の機能について図11を用いて説明する。この定検情報−オンライン計測マッチング手段9の機能は、定検データ傾向解析手段8の解析結果と解析的寿命予測手段7に損傷変化傾向とを比較し、両者の偏差を計算して、その変化傾向に基づいて補正方法を判定するものである。
【0067】図11は、定検時のき裂計測量を基にした定検情報−オンライン計測マッチング処理手順を示している(最大き裂長さでも同様である)。ここでは微小き裂を対象としたき裂長さ密度を例にとって示す。
【0068】定検時に計測されたき裂長さ密度のデータを起動停止回数に対してプロットし、最適近似カーブを作成する(n)。一方、実験的に得られた歪範囲ごとのき裂長さ密度と荷重負荷回数との関係から、実機部材の解析による歪範囲に対応するカーブを選び出す(o)。両者を比較することにより(p)、偏差δが得られるが、この偏差δと起動回数との関係により次の4つのパターンを考える(q)。
【0069】(1)偏差δが起動回数と共に増加、(2)偏差δが起動回数と共に減少、(3)偏差δが許容値内で安定、(4)偏差δが許容値外で安定ここで(1)のパターンでは、損傷評価の条件が実際と異なっていると考え、偏差が変化しないように歪範囲を変更する。(2)のパターンでは、損傷評価の条件が実際と異なっているが、安全側であるので監視を継続し、偏差が過大となる場合に歪範囲を補正する。(3)のパターンは、特に問題がないため変更せず、モニタを続ける。(4)のパターンでは、初期値等の違いによると考え、評価カーブを平行移動する。このように監視しつつ変更を加えること(傾向解析マッチング処理r)により、実際により近い条件を設定することができる。
【0070】また、図12は、別の定検情報−オンライン計測マッチングの例として、定検時のミクロ組織観察に基づいたクリープ歪マッチング手順を示している。
【0071】ここでは、γ′析出物の粒径dと粒子間距離λとを計測することにより(s)、パラメータをλ/dとしてクリープ歪を推定することができる(t)。このようにして計測したクリープ歪と運転時間との関係を基に最適傾向カーブを設定し(u)、解析的寿命予測手段7で求めたクリープ歪変化カーブ(v)と比較(傾向解析マッチング)して偏差δを求める(w)。この偏差δに対し、前記の図11の場合と同様の(1)〜(4)の処理を行い(x)、これにより、補正方法を判定するものである。
【0072】また、図13は、さらに別の定検情報−オンライン計測マッチングの例として、定検時の酸化深さ計測によるマッチング手順を示している。
【0073】ここでは、減肉寸法計測または断面ミクロ組織観察によって得られた酸化深さを運転時間に対してプロットし、酸化深さと時間の関係を求める(y1)。一方、各種条件で実験的に得られた繰返し酸化特性を用いて、解析的寿命予測手段7で求めた温度、保持時間条件に対応する酸化深さ変化カーブを選択する(y2)。この2種類の酸化深さ変化カーブを比較し、偏差δを求め(y3)、上記と同様に(1)〜(4)の処理を行い、補正方法を判定するものである。
【0074】次に、図14を用いて余寿命判定手段10の機能について説明する。この余寿命判定手段10は、以上のようにして求めた回数依存型寿命消費量と時間依存型寿命消費量とを、材料の使用条件とに応じた許容起動停止回数−許容運転時間線図に適用して限界値に達するまでの時期を予測するものである。
【0075】図14は、余寿命判定手段10において適用する許容起動回数と許容運転時間との関係を表す判定図の作成法を示している。許容起動回数は、熱疲労寿命に支配され、かつ定格時圧縮保持となるため、図14にその波形を示した圧縮保持疲労試験により定める。また、許容運転時間を表す時間依存型寿命は、クリープと酸化に支配されているため、これらの短い方を採用する。時間依存と回数依存とが重畳する場合には、引張保持のクリープ疲労試験データによって定める。これらの下限包絡線を許容線図とする。
【0076】図15は、余寿命判定手段10の機能を示している。回数依存型寿命については、き裂長さ密度を指標とする損傷線図上で現在位置を求める。また、時間依存型寿命については、クリープ歪と酸化深さとの双方を評価し、短い寿命の方を採用する。両者の回数および時間を許容運転時間・許容起動回数線上に適用して余寿命を時間と回数との組合わせとして判定する。今後の運用パターン(回数と時間の比率)が与えられている時には、それに従う。この結果により、保守管理設定手段11において点検、補修または交換時期の設定を余寿命と次回定検および次々回定検までの期間と照らし合せて判定する。例えば、(1)余寿命が次回定検までの期間以下の時は、運転制限を行い、次回定検の際に補修または部品交換を行う。また、(2)余寿命が次々回定検までの期間以下の時は、次回定検の際に点検を行う。さらに、(3)余寿命が次々界定検までの期間以上の時は、次回定検の際の点検が省略可能であると判定できる。
【0077】なお、図16に、TMF試験(熱機械疲労試験)およびLCF試験(温度一定下の低サイクル疲労試験)における試験波形の周期vと保持なしの破損繰返し数Nf0に対する保持波形の破損繰返し数Nの比(N/Nf0:寿命低下率)の関係を示す。若干のバラツキがあるものの、TMF試験およびLCF試験ともに保持時間の経過に伴う寿命低下率は保持時間の経過に伴い一定値を示すという点ではほぼ同じ傾向にあり、vとN/Nf0には次式が成立する。
【0078】
【数4】

【0079】この(2)式によると、保持時間の経過に伴い熱疲労寿命は一定値を示し、図16においては約3時間の圧縮保持時間で熱疲労寿命は一定値を示す。
【0080】本実施形態では、上記(2)式に基づいて許容起動回数を判定することができる。
【0081】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0082】
第2実施形態(図17)(請求項11〜12対応)本実施形態は、遮熱コーティング(TBC)を施したガスタービン動翼等に適用されるものであり、TBCが剥離した場合の翼表面温度の上昇に着目して寿命診断を行うものである。
【0083】図17は本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。この図17に示すように、本実施形態のシステムの全体構成は第1実施形態と略同様であるが、運転中計測手段1は具体的にはTBC温度運転中計測手段27であり、光学的センサを部品に対置して対象部位のTBC表面温度を計測する。また、運転中計測値変化傾向解析手段4はTBC温度運転中変化傾向解析手段28であり、TBC温度計測値と運転時間または起動停止回数との関係を解析してTBC剥離を検知する。なお、温度計測手段の構成は、図5および図6と同様である。
【0084】図18は本実施形態の機能を示す図である。TBC温度運転中計測手段27では、表面温度を時間に対してモニタし、TBCの剥離に伴う局所温度上昇を感知する(a1)。この剥離によって温度・応力・歪条件が変るため、解析的寿命予測手段8に使用する熱疲労、酸化、クリープの評価カーブも変使用条件に応じて変更される。
【0085】回数依存型寿命(a2)については、剥離後のき裂長さ密度を指標にした疲労寿命評価を行う。時間依存型寿命(a3)についても同様に、クリープ歪と酸化深さの評価を行い、運転時間の短い方をとる。これらの評価を基に、許容起動回数−許容運転時間線図(a4)を用いて余寿命を判定する。この余寿命値を基に、点検・補修・交換時期の設定を保守管理設定手段11によって行うが、TBC剥離寿命を運転制限とリコーティング時期判定に用いる(a5)。
【0086】具体的な点検・補修・交換時期設定としては、(1)TBC剥離寿命が次回定検までの期間以下であるときは、運転制限を行い、次回定検時にリコーティングを行う。(2)余寿命が次回定検までの期間以下であるときは、運転制限を行い、次回定検時に補修・交換を行う。(3)余寿命が次々回定検での期間以下であるときは、次回点検を行う。(4)余寿命が次々回定検までの期間以上であるときは、次回点検省略可能と判断する。
【0087】以上のように本実施形態においては、TBC剥離をオンライン監視し、さらにTBC剥離後の余寿命を定検情報を加味して解析的に予測するようにしたので、リアルタイムに的確な診断および保守管理判定が行える。
【0088】第3実施形態態(図19〜図21)(請求項13〜15対応)本実施形態は、動翼チップ部の酸化減肉やクリープ変形に適用するものである。
【0089】図19は本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。運転中計測手段1は具体的には翼先端の位置変化を計測する間隙運転中計測手段29であり、運転中計測値変化傾向解析手段4は間隙運転中変化傾向解析手段30である。間隙温度運転中変化傾向解析手段30は、間隙の変化から翼先端部の酸化減肉またはクリープ変形量と運転時間または起動停止回数との関係を解析して、異常の兆候を検知する。
【0090】図20は、間隙運転中計測手段29のガスタービンへの取付け状況を示す図である。距離を非接触で計測するレーザー距離計測センサ31が光学経路保護筒32によってケーシング20に取付けられ、計測信号がケーシング20の外側に取出されるようになっている。間隙運転中計測手段29の先端部はシュラウドセグメント34に取付けられ、耐高温の保護レンズ33が取付けられている。レーザー光は回転同期され、動翼チップ部35の一定箇所との距離をモニタする。
【0091】図21は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。動翼チップの位置から推定されたチップ酸化減肉量は運転時間との関係で変化傾向が記録される(b1)。一方、材料の各種温度Tでの酸化減肉試験データ(実験データベース)(b2)から、解析的寿命予測手段7で適用した動翼チップ部35の温度に対する酸化減肉カーブ(例えばT)を選択し、オンライン計測値との偏差δを求める(b3)。この偏差δの時間変化傾向から、前述と同様の(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(b4)。即ち、(1)δが増加傾向にあるときは、解析カーブの温度補正を行う。(2)δが漸減傾向にあるときは、監視を継続する。(3)δが許容値内安定傾向にあるときは、解析カーブの変更をしない。(4)δが許容値外で安定傾向にあるときは、解析カーブを平行移動する。
【0092】以上の手順は、酸化減肉量をクリープによる翼伸び量と読み替えて同様に実施することができる。
【0093】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0094】第4実施形態(図22〜図28)(請求項16〜18対応)本実施形態は、静翼を対象とし、き裂発生部に光学的間隙計測手段を配設し、き裂寸法の変化を計測し、き裂長さの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、き裂進展量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定して寿命評価に用いるものである。
【0095】図22は、ガスタービンの第1段静翼21に生じる損傷を示す図である。高温ガスにより酸化減肉21aや材料劣化21bが生じ、熱応力の繰返しによりき裂21cが生じる。静翼の場合、き裂を許容するため、マクロ的なき裂進展期間も寿命に含まれる。なお、第2,3段静翼ではクリープによるたおれ変形が問題となる。
【0096】図23は、本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。本実施形態は、第1段静翼など熱疲労き裂進展が特に問題となる部品に適用するものである。運転中計測手段1は具体的にはき裂進展運転中計測手段36であり、運転中計測値変化傾向解析手段4はき裂進展運転中変化傾向解析手段37である。
【0097】図24は、き裂進展運転中計測手段36のガスタービンへの取付け状況を示す図である。このき裂伸展運転中計測手段36には、き裂画像を識別するCCDまたは赤外線センサなどの光学センサ33が用いられる。光学センサ38は保護筒39によってケーシング20に取付けられ、計測信号はケーシング20の外側に取出される。先端には保護レンズ40が取付けられている。光学センサ38の焦点は、静翼21のき裂発生部位に結ばれるが、き裂が点検により確認されてから翼位置を交換するなどの方法で最大き裂をモニタできるようにする。
【0098】図25は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。計測された最大き裂長さは、起動回数との関係で変化傾向が記録される(c1)。一方、材料の各種歪範囲での疲労き裂発生進展試験データから、解析的寿命予測手段7で適用した静翼21の歪範囲に対応する最大き裂進展評価カーブを選択し(c2)、オンライン計測値との偏差δを求める(c3)。この偏差δの時間変化傾向から、前記第3実施形態と同様の(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(c4)。
【0099】図26は、定検情報−オンライン計測マッチング手段9の温度補正に関する機能を示す図である。ここでは、定検情報−オンライン計測マッチング手段9において、部材の酸化深さの計測に基づくメタル温度推定値を用いて部材各部の温度変化履歴を補正し、寿命評価に用いる。即ち、定検時には寸法計測または組織調査(d1)により酸化深さdoxが計測される(d2)。このdoxを用いて実験室的に求めた酸化深さと時間・温度の関係から、運転時間に対する温度が推定される(d3)。この推定される温度を、解析的寿命予測手段7で用いた温度−時間変化図および温度−歪変化図の補正に適用する(d4)。このようにして補正した温度、応力、歪範囲を用いて、酸化寿命評価(d5)、クリープ寿命評価(d6)、熱疲労き裂進展の寿命評価(d7)を再度実施する。
【0100】図27は、定検情報−オンライン計測マッチング手段9のき裂進展カーブ補正に関する機能を示す図である。ここでは、定検情報−オンライン計測マッチング手段9において、き裂長さの運転時間または起動手停止回数に対する変化傾向と、解析的寿命予測手段7で得られたき裂進展量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定する。即ち、定検時にはき裂長さが計測される。このうち、最大き裂長さの変化傾向を起動回数に対して最適カーブで近似する(e1)。一方、実験室的に求めた歪範囲と最大き裂進展カーブとの関係から、解析的寿命予測手段7で用いた歪範囲に対応するカーブを選択する(e2)。定検時傾向解析によるき裂進展カーブと解析で用いたき裂進展カーブを比較し(e3)、前述の図25の場合と同様に、δに基づいて(1)〜(4)の判定基準に照らし、き裂進展カーブの補正を行う(e4)。
【0101】図28は、余寿命判定手段10の機能を示す図である。回数依存型寿命(f1)は、最大き裂の進展回数であり、時間依存型寿命(f2)は、クリープ歪と酸化深さの双方であり、これらを評価して短い寿命の方を採用する。両者の回数・時間を許容運転時間・許容起動回数線上に適用し(f3)、余寿命を時間と回数の組合わせとして判定する。今後の運用パターン回数と時間の比率)が与えられている時はそれに従う。この結果により、保守管理設定手段11において、点検・補修・交換時期の設定を余寿命と次回定検および次々回定検までの期間と照らし合せて判定する(f4)。
【0102】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0103】
第5実施形態(図29〜図31)(請求項19対応)本実施形態は、運転中の酸化が特に問題となる部品に適用するものであり、部材表面と同一面に露出し、部材と絶縁を保つよう配設された酸化モニタ材料の電気抵抗変化を計測することにより、酸化減肉量を計測し、その酸化減肉量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、解析的寿命予測手段で得られた酸化減肉量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し寿命評価に用いる。
【0104】図29は本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。運転中計測手段1は具体的には酸化減肉量運転中計測手段41であり、運転中計測値変化傾向解析手段4は酸化減肉量運転中変化傾向解析手段42である。
【0105】図30は、酸化減肉量運転中計測手段41を第1段静翼に適用した例を示す図である。この酸化減肉量運転中計測手段41は酸化モニタ棒材43として、静翼基材と同等材のものを有し、これと第1段静翼21との間が絶縁保護筒44によって絶縁されている。また、静翼サイドウォール部45にはめ込まれている部分には、取付け治具44′が備え付けられている。運転中先端部が酸化されると、減肉(長さの減少)または酸化が進行するにつれて電気抵抗が変化することを利用し、電気的に酸化深さを測定するものである。
【0106】図31は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。計測された酸化減肉量は運転時間との関係で変化傾向が記録される(g1)。一方、材料の各温度での酸化減肉量試験データから、解析的寿命予測手段7で適用した静翼の温度に対応する酸化減肉量評価カーブを選択し(g2)、オンライン計測値との偏差δを求める(g3)。この偏差δの時間変化傾向から、前述と同様の(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(g4)。
【0107】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0108】
第6実施形態(図32〜図35)(請求項20対応)本実施形態は、ガスタービン第2,3段静翼など運転中のたおれ変形が特に問題となる部品に適用するものであり、翼に対置して翼たおれ量を計測するように配設された光学式変位計を用い、翼たおれ量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、翼たおれ量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定する。
【0109】図32は、本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。運転中計測手段1は具体的には翼変形運転中計測手段46であり、運転中計測値変化傾向解析手段4は翼変形運転中変化傾向解析手段47である。
【0110】図33は、翼変形運転中計測手段46を第2段静翼51に適用した例を示す図である。この翼変形運転中計測手段46は、レーザー変位センサ48と、光学経路保護筒49と、保護レンズ50とを有している。そして、静翼変形運転中計測手段46は翼の外側から計測を行う構成とされ、静翼51の入口側から静翼前縁部52に焦点を合せるようになっている。なお、中空翼内面を計測する場合には、前縁内表面53に焦点を合せるように設置すればよい。また、複数のセンサ設置により、精度向上が図れる。
【0111】図34は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。計測された翼倒れ量については、運転時間との関係で変化傾向が記録される(h1)。一方、材料の各温度でのクリープ変形試験データから、解析的寿命予測手段7で適用した静翼の温度・応力に対応する翼倒れ量評価カーブを選択し(h2)、オンライン計測値との偏差δを求める(h3)。この偏差δの時間変化傾向から、前述と同様に、(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(h4)。
【0112】図35は、余寿命判定手段10の機能を示す図である。回数依存型寿命(i1)は、最大き裂長さの進展回数である。時間依存型寿命(i2)は、翼倒れ量と酸化深さであり、これらの双方を評価し短い寿命の方を採用する。両者の回数・時間を許容運転時間・許容起動回数線上に適用し(i3)、余寿命を時間と回数の組合わせとして判定する。今後の運用パターン(回数と時間の比率)が与えられている時は、それに従う。この結果により、保守管理設定手段11において点検・補修・交換時期の設定を余寿命と次回定検および次々回定検までの期間と照らし合せて判定する(i4)。
【0113】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0114】
第7実施形態(図36〜図42)(請求項21対応)本実施形態は、シュラウドセグメントなど運転中の繰返し変形と酸化が問題となる部品に適用するものであり、部材の変形量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、部材の変形量の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件を補正して寿命評価に用いる。
【0115】図36は本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。運転中計測手段1は具体的には変形運転中計測手段54であり、運転中計測値変化傾向解析手段4は変形運転中変化傾向解析手段55である。
【0116】図37は、変形運転中計測手段54のガスタービンへの取付け状況を示す図である。3本の変形運転中計測手段54が、シュラウドセグメント34内面に対して設置されている。各変位運転中計測手段54に設けられた変位検出ロッド56が、それぞれガイド筒57内を摺動し、スプリング58によって一定の力で押し付けられている。変位検出ロッド56の上端には、変位検出コア59と変位検出コイル60とが付設され、変位信号をケーシング20外に取出すようになっている。変位を検出する方法としては、図38に示すように、容量型歪ゲージ61およびリード線62を、保護筒63とともに用いることもできる。
【0117】図39は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。たわみ量と運転時間の関係(j1)は、たわみ量を歪量に換算して(j2)、解析的寿命予測手段7で用いた歪−温度パターンと比較され(j3)、前記同様に補正が施される。補正された歪範囲により熱疲労寿命が計算され(j4)、補正された応力・温度によりクリープ寿命が計算され(j5)、温度より酸化量が計算される(j6)。
【0118】図40は、酸化減肉量運転中計測手段41をシュラウドセグメント34に適用した例を示す図である。酸化減肉量運転中計測手段41は、酸化モニタ棒材42を有し、この酸化モニタ棒材42は、セグメント基材と同等材を用いて構成してある。酸化モニタ棒材42とセグメントとの間は、絶縁保護筒43によって絶縁されている。また、先端部には取付け治具44が備え付けられている。運転中先端部が酸化されると、減肉(長さの減少)または酸化が進行し、それにつれて電気抵抗が変化することを利用し、電気的に酸化深さを測定するものである。
【0119】図41は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。計測された酸化減肉量は運転時間との関係で変化傾向が記録される(k1)。一方、材料の各温度での酸化減肉量実験データベースから、解析的寿命予測手段7で適用した静翼の温度に対応する酸化減肉量評価カーブを選択し(k2)、オンライン計測値との偏差δを求める(k3)。この偏差δの時間変化傾向から、前述と同様の(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(k4)。
【0120】図42は、余寿命判定手段10の機能を示す図である。回数依存型寿命(l1)は、最大き裂の進展回数であり、時間依存型寿命(l2)は、クリープ歪と酸化深さの双方を評価し短い寿命の方を採用する。両者の回数・時間を許容運転時間・許容起動回数線上に適用し(l3)、余寿命を時間と回数の組合わせとして判定する。今後の運用パターン(回数と時間の比率)が与えられている時は、それに従う。この結果により、保守管理設定手段11において、点検・補修・交換時期の設定を余寿命と、次回定検および次々回定検までの期間と照らし合せて判定する(l4)。
【0121】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0122】
第8実施形態(図43〜図47)(請求項22対応)本実施形態は、燃焼器など運転中に生じる変位が問題となる部品に適用するものであり、部品の位置と姿勢(傾き)の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向から、取付部等の摩耗減肉量を推定し、摩耗減肉量計算値の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向の偏差を比較し、偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を補正し、寿命評価に用いる。
【0123】図43は本発明の第8実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。運転中計測手段1は具体的には変位運転中計測手段64であり、運転中計測値変化傾向解析手段4は変位運転中変化傾向解析手段65である。
【0124】図44は、変位運転中計測手段64のガスタービン燃焼器への取付け状況を示す図である。燃焼器ライナ67およびトランジションピース68はサポート70を介して支持されており、これら燃焼器ライナ67とトランジションピース68に対し、複数の変位運転中計測手段64が設置されている。各変位運転中計測手段64の変位検出ロッド56は、スプリングによって一定の力で押し付けられ、変位信号はケーシング20外に取出されるようになっている。
【0125】図45(A),(B)は、燃焼器ライナ67に対する変位運転中計測手段64の取付け状況を示す図である。燃焼器ライナ67に対して変位運転中計測手段64が4箇所に設置されており、これにより左右上下方向の位置の偏りと傾きが計測できるようになっている。そして、各変位運転中計測手段64により、変位出力をトレンドカーブとして記憶することにより、同図(C)に示すように、変位のモニタリングができる。
【0126】図46は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。前記同様に、オンライン計測されたセンサ変位信号(m1)と運転時間との関係(m2)を、摩耗減量に換算し、解析的寿命予測手段7に用いられた解析データベース(m3)および材料摩耗減肉特性データベース(m4)との偏差δを求める(m5)。この偏差δの時間変化傾向から、前述と同様の(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(m6)。
【0127】図47は、余寿命判定手段10の機能を示す図である。回数依存型寿命(n1)は、き裂長さ密度または最大き裂の進展回数であり、時間依存型寿命(n2)は、クリープ歪と摩耗減量の双方を評価し短い寿命の方を採用する。両者の回数・時間を許容運転時間・許容起動回数線上に適用し(n3)余寿命を時間と回数の組合わせとして判定する。今後の運用パターン(回数と時間の比率)が与えられている時はそれに従う。この結果により保守管理設定手段11において点検・補修・交換時期の設定を余寿命と次回定検および次々回定検までの期間と照らし合せて判定する。
【0128】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0129】なお、以上の実施形態ではガスタービンを例として説明したが、他の原動機あるいは各種加熱機器等に広く適用できるものである。
【0130】
第9実施形態(図48〜図51)(請求項23対応)本実施形態は、ロータなど運転中に生じるたわみが問題となる部品に適用するものであり、ロータ中央部のたわみの運転時間または起動停止回数に対する変化傾向と、応力ロータたわみ推定値の運転時間または起動停止回数に対する変化傾向との偏差を比較し、この偏差の変化傾向から寿命評価条件の補正方法を判定し寿命評価に用いる。
【0131】図48は本実施形態によるオンライン寿命診断システムのブロック構成図である。運転中計測手段1は具体的には、ロータたわみ運転中計測手段71であり、運転中計測値変化傾向解析手段4はロータたわみ運転中変化傾向解析手段72である。ここでは、ロータたわみが締付けボルトのリラクセーションにより増加するものとして評価する。
【0132】図49は、ロータたわみ運転中計測手段71のガスタービンロータへの取付け状況を示す図である。タービンホイール75は、締付けボルト74によって結合されているが、圧縮機とタービンをつなぐタービンシャフト73に対し、3本のロータたわみ運転中計測手段71が設置されている。変位検出ロッド56は、スプリングによって一定の力で押し付けられ、変位信号はケーシング20外に取出す。
【0133】図50は、計測値−解析値マッチング手段6の機能を示す図である。オンライン計測されたたわみ量と運転時間の関係(o1)と、解析的寿命予測手段7に用いられた温度・応力に対するボルトリラクセーション特性(o2)を基に、たわみ量を計算し(o3)、両者の偏差δを求める(o4)。この偏差δの時間変化傾向から、前述と同様の(1)〜(4)項の判定項目に従って補正を行う(o5)。
【0134】図51は、余寿命判定手段10の機能を示す図である。回数依存型寿命(p1)は、き裂長さ密度または最大き裂の発生回数であり、時間依存型寿命(p2)は、たわみ量である。両者の回数・時間を許容運転時間・許容起動回数線上に適用し(p3)、余寿命を時間と回数の組合わせとして判定する。今後の運用パターン(回数と時間の比率)が与えられている時はそれに従う。この結果により、保守管理設定手段11において点検・補修・交換時期の設定を余寿命と次回定検および次々回定検までの期間と照らし合せて判定する(p4)。
【0135】以上のように本実施形態においては、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに診断および保守管理判定が行える。
【0136】
【発明の効果】本発明によれば、オンライン計測量と定検情報により寿命解析精度を向上させ、機器部材の経年使用による劣化・損傷情報も加味した上でリアルタイムに的確な診断および保守管理判定が行えるので、部品を長期間使用することができ、かつ計画的な運用・保守管理を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成11年7月19日(1999.7.19)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開2001−32724(P2001−32724A)
【公開日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【出願番号】 特願平11−205280