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【発明の名称】 エンジンの診断装置
【発明者】 【氏名】中川 慎二

【氏名】大須賀 稔

【氏名】石井 俊夫

【氏名】高久 豊

【氏名】加藤木 工三

【要約】 【課題】製造コストが安価であると共に、ハイドロカーボンHC吸着材のHC脱離時に排気を悪化させることなく、HC吸着材の吸着性能を正確に診断することができるエンジンの診断装置を提供する。

【解決手段】排気管に配設されたHC吸着材と、排ガスの広域の空燃比を検出する上流空燃比センサ12と、排ガスのリッチ若しくはリーンを検出する下流空燃比センサ13と、制御装置16と、を備えたエンジンの診断装置であって、制御装置は、HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段31と、HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段30と、HC吸着材のHC吸着量を推定する手段28とを備え、HC吸着量を推定する手段は、HC吸着材の温度がHC脱離温度A以上になって上流空燃比センサの出力値がリーンに補正制御されてから所定値B以下となる期間、上流空燃比センサの出力値と理論空燃比Cとの差に基づいて、推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 排気管と、該排気管に配設されたハイドロカーボン(HC)吸着材と、該HC吸着材の上流に配設され、排ガスの広域の空燃比を検出する上流空燃比センサと、前記HC吸着材の下流に配設され、排ガスの理論空燃比に対してリッチ若しくはリーンを検出する下流空燃比センサと、制御装置と、を備えたエンジンの診断装置において、前記制御装置は、前記HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段と、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段と、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段とを備え、前記HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段は、前記上流空燃比センサの出力値をリーンに補正制御し、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記HC吸着材の温度が所定値A以上になって前記上流空燃比センサの出力値がリーンに補正制御されてから所定値B以下となる期間、前記上流空燃比センサの出力値と所定値Cとの差に基づいて、前記HC吸着材の吸着性能を推定することを特徴とするエンジンの診断装置。
【請求項2】 前記HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段は、前記下流空燃比センサの出力値が一定となるように、前記上流空燃比センサの出力値をリーンに補正制御することを特徴とする請求項1記載のエンジンの診断装置。
【請求項3】 前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記上流空燃比センサの出力値と前記所定値Cとの差に、エンジンの流入空気量を乗じた値を所定期間積分した値から前記HC吸着材の吸着性能を推定することを特徴とする請求項1又は2記載のエンジンの診断装置。
【請求項4】 排気管と、該排気管に配設されたハイドロカーボン(HC)吸着材と、該HC吸着材の下流に配設され、排ガスの広域の空燃比を検出する下流空燃比センサ又は排ガスの理論空燃比に対してリッチ若しくはリーンを検出する下流空燃比センサと、制御装置と、を備えたエンジンの診断装置において、前記制御装置は、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段と、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段とを備え、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段は、エンジン燃焼室に供給される燃料量若しくは空気量の空燃比制御の補正量をリーンに補正制御し、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記HC吸着材の温度が所定値A以上になって前記空燃比制御の補正量がリーンに補正制御されてから所定値E以下となる期間、前記空燃比制御の補正量と所定値Gとの差に基づいて、前記HC吸着材の吸着性能を推定することを特徴とするエンジンの診断装置。
【請求項5】 前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段は、前記下流空燃比センサの出力値が一定となるように、前記空燃比制御の補正量をリーンに補正制御することを特徴とする請求項4記載のエンジンの診断装置。
【請求項6】 前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段は、前記HC吸着材の温度を計測若しくは推定する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジンの診断装置。
【請求項7】 前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記下流空燃比センサの出力値がリッチ状態で所定期間継続した場合には、前記HC吸着材の吸着性能の推定を開始することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエンジンの診断装置。
【請求項8】 前記HC吸着材の下流には、少なくとも三元触媒又は窒素酸化物(NOx)触媒を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンジンの診断装置。
【請求項9】 前記制御装置は、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段の出力信号に基づいて前記HC吸着材の劣化を判定する手段と、該HC吸着材の劣化を判定する手段の出力信号に基づいて前記HC吸着材の劣化を報知する手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のエンジンの診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの診断装置に係り、特に、排気部にハイドロカーボン吸着材を備えたエンジンの該ハイドロカーボン吸着材の診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】通常の内燃エンジンにおいては、該エンジンの排気管に、該エンジンの燃焼室から排出される排ガスに含有される炭化水素たるハイドロカーボン(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化させ、窒素酸化物(NOx)を還元させる機能を有する三元触媒を設置するのが一般的である。該三元触媒は、排ガスが所定温度以上においては、HC、CO、NOxの浄化機能を発揮するが、該排気ガスが所定温度以下であると、排ガスを十分に浄化することができないという特性を有している。
【0003】また、一般に、前記排気管に配設されている三元触媒の温度は、エンジンの始動時には外気温に等しく、排ガス温度も低温であるので、該三元触媒が排ガスにより加熱されて、活性化する所定温度以上になるまでの期間は、図18に示されているように、前記三元触媒による排ガスの浄化性能は著しく低い。この問題を解決するべく図19に示されるような、低温時はHCを吸着し、所定温度Td以上になったときはHCを脱離するHC吸着材を前記排気管に配設して、HC吸着材の下流に設けた三元触媒若しくはHC吸着材と同じ担体に設けた三元触媒で前記脱離したHCを浄化する排気浄化システムが提案されている。
【0004】ここで、該排気浄化システムにおいては、HC吸着材の吸着性能が何らかの原因で劣化した場合には低温時であってもHCが排出されてしまうため、大幅な排気悪化の原因となることに鑑みて、該HC吸着材の吸着性能の劣化を適宜検出することが要求され、特開平08−121232号公報所載の技術が提案されている。
【0005】該特開平08−121232号公報所載の技術は、HC吸着材の性能劣化を検出する手段として、HC吸着材の上下流の排気管に空燃比をリニアに検出する空燃比センサ(A/Fセンサ)を各々配置し、HC脱離時における前記HC吸着材の前記上・下流空燃比センサの各出力を検出し、該検出差から該HC吸着材の性能劣化を検出するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記特開平08−121232号公報所載の技術は、リニア空燃比センサを二つ必要とするので、製造コストが高価格になるとの問題を有していると云える。
【0007】また、前記技術の検出手法は、上流空燃比を理論空燃比に制御し、その時に、下流空燃比が脱離HC分だけリッチ側にシフトすることを利用したものであり、HCはその後浄化されずに排気管から外部に排出されることになる。これは三元触媒の特性による。即ち、三元触媒内では還元剤であるHC、COと酸化剤であるNOxとの間の酸化還元反応により、三成分が効率よく浄化されるものである。従って、三元触媒内の還元剤と酸化剤の量が化学量論的にバランスがとれている状態の理論空燃比であることが、排気最適化の意味合いから望ましいものである。
【0008】図20は、空燃比に対する三元触媒の三成分の浄化性能を表したものである。一般的に、エンジンに供給される空気量あるいは燃料量を制御することで、理論空燃比を実現することができる。HC脱離期間中にエンジンに投入される空気と燃料の比を理論空燃比に制御すると、HC吸着材から脱離するHCの分だけ三元触媒内では還元剤過剰、即ちリッチな状態になり、HC、COの排気悪化の原因となる。
【0009】また、前記特開平08−121232号公報所載の技術は、HC吸着材の上・下流各々に、前記リニア空燃比センサ(A/Fセンサ:その出力特性を図21に示す。)ではなく、理論空燃比に対してリッチかリーンかを検出する空燃比センサ(O2センサ:その出力特性を図22に示す。)を備え、前記上流空燃比センサの出力に応じて補正するフィードバック補正量と前記下流空燃比センサに応じて該フィードバック補正量を修正する修正量を演算する手段とを有し、HC脱離時には、該修正量からHC吸着量に基づいて演算する手段を有することが提案されているが、この手段では、補正量から間接的にHC吸着量を推定するため、精度上の問題があると云える。
【0010】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、製造コストが安価であると共に、HC吸着材のHC脱離時に排気を悪化させることなく、HC吸着材の吸着性能を正確に診断することができるエンジンの診断装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成すべく、本発明に係るエンジンの診断装置は、基本的には、排気管と、該排気管に配設されたハイドロカーボン(HC)吸着材と、該HC吸着材の上流に配設され、排ガスの広域の空燃比を検出する上流空燃比センサと、前記HC吸着材の下流に配設され、排ガスの理論空燃比に対してリッチ若しくはリーンを検出する下流空燃比センサと、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段と、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段と、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段とを備え、前記HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段は、前記上流空燃比センサの出力値をリーンに補正制御し、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記HC吸着材の温度が前記HCの脱離温度たる所定値A以上になって前記上流空燃比センサの出力値がリーンに補正制御されてから所定値B以下となる期間、前記上流空燃比センサの出力値と理論空燃比たる所定値Cとの差に基づいて、前記HC吸着材の吸着性能を推定する。そして、前記HC吸着材の上流の空燃比を補正する手段は、前記下流空燃比センサの出力値が一定となるように、前記上流空燃比センサの出力値をリーンに補正制御することを特徴としている。
【0012】前記の如く構成された本発明のエンジンの診断装置は、前記制御装置は、前記下流空燃比センサの出力値が理論空燃比で一定となるように、前記上流空燃比センサの出力値をリーンに補正制御し、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記HC吸着材の温度が前記HC脱離する脱離温度たる所定値Aに達した場合には、前記上流空燃比の出力と理論空燃比たる所定値Cとの差に基づいて、前記HC吸着材の吸着性能を算出するので、前記HC吸着材の下流の空燃比を理論空燃比に制御して排気を悪化させることなく、前記HC吸着材の吸着性能を診断することができる。
【0013】また、本発明に係るエンジンの診断装置の具体的態様は、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記上流空燃比センサの出力値と前記所定値Cとの差に、エンジンの流入空気量を乗じた値を所定期間積分した値から前記HC吸着材の吸着性能を推定することを特徴としている。
【0014】更に、本発明に係るエンジンの診断装置は、排気管と、該排気管に配設されたハイドロカーボン(HC)吸着材と、該HC吸着材の下流に配設され、排ガスの広域の空燃比を検出する下流空燃比センサ又は排ガスの理論空燃比に対してリッチ若しくはリーンを検出する下流空燃比センサと、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段と、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段とを備え、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段は、エンジン燃焼室に供給される燃料量若しくは空気量の空燃比制御の補正量をリーンに補正制御し、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記HC吸着材の温度が前記HCの脱離温度たる所定値A以上になって前記空燃比制御の補正量がリーンに補正制御されてから所定値E以下となる期間、前記空燃比制御の補正量とストイキ相当の燃料噴射量たる所定値Gとの差に基づいて、前記HC吸着材の吸着性能を推定する。そして、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段は、前記下流空燃比センサの出力値が一定となるように、前記空燃比制御の補正量をリーンに補正制御することを特徴としている。
【0015】更に、本発明に係るエンジンの診断装置の他の具体的態様は、前記HC吸着材の下流の空燃比を補正する手段が、前記HC吸着材の温度を計測若しくは推定する手段を備えていること、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段は、前記下流空燃比センサの出力値がリッチ状態で所定期間T継続した場合には、前記HC吸着材の吸着性能の推定を開始すること、前記HC吸着材の下流には、少なくとも三元触媒又は窒素酸化物(NOx)触媒を備えたこと、又は前記制御装置は、前記HC吸着材のHC吸着量を推定する手段の出力信号に基づいて前記HC吸着材の劣化を判定する手段と、該HC吸着材の劣化を判定する手段の出力信号に基づいて前記HC吸着材の劣化を報知する手段とを備えていることを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明に係るエンジンの排気装置の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態のエンジンの排気装置を備えたエンジン制御システムの全体構成を示したものである。エンジン100は、多気筒9…で構成され、その各気筒9に各々吸気管6と排気管10とが接続されている。
【0017】前記各気筒9には、点火プラグ8が取り付けられ、前記吸気管6には、燃料噴射弁7が取り付けられていると共に、その上流には、エアクリーナ1及びエアフロセンサ2が取り付けられている一方、スロットル弁3が配置されていると共に、該スロットル弁3をバイパスするISC用バイパス通路4が設けられており、該バイパス通路4にはISCバルブ5が配置されている。
【0018】また、前記排気管10には、ハイドロカーボン(HC)吸着材11が適宜位置に配置され、該HC吸着材11の下流には、三元触媒18が配置されている。更に、前記スロットル弁3の配置部位にはスロットル開度センサ17、前記気筒9の側面には水温センサ14、クランク軸部9bにはクランク角センサ15、前記HC吸着材11の上流には上流空燃比センサであるA/Fセンサ12、及び、前記HC吸着材11と前記三元触媒18との間には下流空燃比センサであるO2センサ13が各々配置されている。前記エンジン100には、制御装置(コントロールユニット)16が配置され、該コントロールユニット16は、前記各センサの信号を入力すると共に、演算処理して前記各操作機器に制御信号を出力している。
【0019】エンジン100の外部からの空気は、エアクリーナ1を通過し、吸気管6を経て燃焼室9a内に流入される。この流入空気量は、主に、前記スロットル弁3により調節されるが、アイドル時は前記バイパス通路4に設けられた前記ISCバルブ5によって調節され、該調整によってエンジン回転数が制御される。また、エアフロセンサ2では流入空気量が検出され、クランク角センサ15ではクランク軸9bの回転角1度毎に信号が出力され、水温センサ14ではエンジン100の冷却水温度が検出される。
【0020】エアフロセンサ2、スロットル弁3部に取り付けられたスロットル開度センサ17、クランク角センサ15、水温センサ14の各信号は、コントロールユニット16に送られ、これらセンサ出力からエンジン100の運転状態を得て、燃料の基本噴射量、点火時期の主要な操作量が最適に演算される。コントロールユニット16内で演算された燃料噴射量は、開弁パルス信号に変換され、燃料噴射弁7に送られる。
【0021】また、コントロールユニット16では、点火時期が演算され、該点火時期で点火されるようにコントロールユニット16からの駆動信号が点火プラグ8に出力される。燃料噴射弁7から噴射された燃料は、吸気管6からの空気と混合されて、各気筒9の燃焼室9a内に流入して混合気を形成し、該混合気は、点火プラグ8で発生する火花により点火・爆発し、その際発生するエネルギーがエンジン100の回転駆動力としての動力源となる。
【0022】前記燃焼室9a内での爆発後の排気ガスは、排気管10を経てHC吸着材11に送り込まれる。該HC吸着材11は、エンジン100の冷機時には、HCを吸着し、所定温度以上になると、HC を脱離する。前記HC吸着材11から排出された排気ガスは、三元触媒18で、HC、CO、NOxの各排気成分が浄化され、エンジン100の外部に排出される。
【0023】前記A/Fセンサ12は、HC吸着材11の上流に取り付けられており、排気ガス中に含まれる酸素濃度に対して線形の出力特性を持ち、排気ガス中の酸素濃度と空燃比の関係は、前述のようにほぼ線形になっており、該A/Fセンサ12によりHC吸着材11の上流の空燃比を求めることが可能である。また、HC吸着材11の下流には、O2センサ13が取り付けられており、前述のように二つの信号を出力する特性を持ち、HC吸着材11の下流の空燃比を検出可能にしている。
【0024】コントロールユニット16は、A/Fセンサ12の信号からHC吸着材11の上流の空燃比を算出し、エンジン燃焼室9a内の混合気の空燃比が目標空燃比となるよう前記基本噴射量を逐次補正するフィードバック(F/B)制御を行うが、後述するように、HC脱離時にはHC吸着材11の下流のO2センサ13の出力が理論空燃比で一定となるように、HC吸着材11の上流の空燃比を制御する。また、HC吸着性能を示す前記HC吸着量の推定値に基づいてHC吸着材11が劣化していると判断された場合は、HC吸着材11の劣化報知手段の一つである劣化報知ランプ19を点灯させる。
【0025】図2は、前記コントロールユニット16の内部を示したものである。該コントロールユニット(ECU)16内には、A/Fセンサ12、O2センサ13、スロットル開度センサ17、エアフロセンサ2、クランク角センサ15、水温センサ14の各センサの出力値が入力され、入力回路23にて雑音除去等の信号処理を行った後、入出力ポート24に送られる。該入出力ポート24の値はRAM22に保管され、CPU20内で演算処理される。演算処理の内容を記述した制御プログラムはROM21に予め書き込まれている。
【0026】前記制御プログラムに従って演算された各アクチュエータ作動量を表す値は、RAM22に保管された後、前記入出力ポート24に送られる。そして、点火プラグ8の作動信号は、点火出力回路25内の一次側コイルの通電時にはONとなり、非通電時はOFFとなるON・OFF信号がセットされる。点火時期はONからOFFになる時である。前記入出力ポート24にセットされた点火プラグ8用の信号は、点火出力回路25で燃焼に必要な十分なエネルギーに増幅され、点火プラグ8に供給される。また、燃料噴射弁7の駆動信号は開弁時ON、閉弁時OFFとなるON・OFF信号がセットされ、燃料噴射弁駆動回路26で燃料噴射弁7を開くのに十分なエネルギーに増幅され、燃料噴射弁7に送られる。次に、ROM21に書き込まれている本実施形態の制御内容について説明する。
【0027】図3は、前記ECU16における本実施形態のエンジンの診断装置の制御ブロック図である。基本燃料噴射量演算手段27では、エアフロセンサ2及びクランク角センサ15の各出力値から、例えば下記の式(1)で示されるような1気筒あたりの基本燃料噴射量をフィードフロー(F/F)に演算する。
【0028】
【数1】
TI=K×(QA/(N×CYL)) (1)
【0029】ここに、TI:基本燃料噴射量、K:燃料噴射量調整係数、QA:空気量N:回転数、CYL:気筒数であり、燃料噴射量調整係数Kは、理論空燃比を実現する基本燃料噴射量TIとなるように燃料噴射弁7の特性等を考慮して与えられる。加えて、種々の運転条件、環境変化、経時変化に対応するべくHC吸着材11の上流に取り付けたA/Fセンサ12の信号に基づいて、HC吸着材上流空燃比補正手段31では、HC吸着材11の上流空燃比の補正を行う。更に、HC吸着材下流空燃比補正手段30では、HC脱離時には、HC吸着材11の下流に取り付けたO2センサ13の信号に基づいて、HC吸着材11の下流の空燃比補正を行う。HC吸着材11の上流の空燃比制御、及びHC吸着材11の下流の空燃比制御の詳細内容を下記に示す。まず、HC吸着材上流空燃比補正手段31によるHC吸着材上流空燃比補正係数ALPHAの演算内容について、図4と図5を用いて説明する。
【0030】図4に示すように、本演算制御は、HC吸着材11の上流に設けられたA/Fセンサ12の出力RABF、及び後述するHC吸着材下流空燃比制御補正係数REARHOSに基づいて、HC吸着材11の上流空燃比が目標空燃比(TABF+REARHOS)となるように、オンラインでF/B制御するものである。ここに、TABFは目標基本空燃比である。
【0031】図5は、前記HC吸着材上流空燃比補正係数ALPHAの具体的な演算フローチャートである。まず、ステップ121においては、F/B制御の許可条件が成立しているか否かの判定を行う。この許可条件は、例えば、水温が一定値以上になっているか、加速時でないか、センサは活性化しているか等が考えられる。そして、前記F/B制御の許可条件が成立していない場合には、ステップ126に進み、HC吸着材上流空燃比補正係数ALPHAを1として補正を行わずに終了する。
【0032】ステップ121でF/B制御許可条件が成立していると判定された場合、即ちYESのときには、ステップ122〜125で、A/Fセンサ12の出力から演算値DLTABFに基づいてPI制御し、前記補正係数ALPHAを演算する。まず、ステップ122では、HC吸着材上流空燃比RABFと目標空燃比(TABF+REARHOS)との差DLTABFを演算し、ステップ123で該差DLTABFに比例ゲインKPを乗じた比例補正項LAMPを演算する。次に、ステップ124で前記差DLTABFに積分ゲインKIを乗じた値と前回Jobにて演算された積分補正項LAMIzとの和を積分補正項LAMIとする。
【0033】ステップ125では、比例分LAMPと積分分LAMIに中心値である1を足した値をF/B制御補正項たる前記HC吸着材上流空燃比補正係数ALPHAとし、一連の動作を終了する。次に、HC吸着材下流空燃比補正手段30によるHC吸着材下流空燃比補正係数REARHOSの演算内容について、図6乃至図8を用いて説明する。
【0034】図6に示すように、HC吸着材下流空燃比補正手段30は、HC吸着材温度推定手段30aが、エアフロセンサ2、クランク角センサ15等の種々の運転パラメータからHC吸着材11の温度TADSBERを推定し、該HC吸着材温度TADSBERがHC脱離温度以上になったときには、HC脱離判定手段30bでHC脱離中フラグFDESORPを1とする。その後、該HC離脱判定手段30bが、HC吸着材下流空燃比補正係数REARHOSの値に基づいて、HCの脱離が終了したことを検知したときには、前記フラグFDESORPを0とする。なお、該フラグFDESORPの演算内容の詳細については後述する。
【0035】下流空燃比センサ13の出力値からエンジン燃焼室9aに供給される燃料量演算手段たるPI制御手段30cでは、前記フラグFDESORPが1のとき、HC吸着材11の下流のO2センサの出力VO2Rに基づいて、後述の演算法で前記HC吸着材下流空燃比補正係数REARHOSを演算する。
【0036】図7は、前記HC脱離中フラグFDESORPの演算のフローチャートである。ステップ141では、HC脱離済か否かを判定する。具体的にはエンジン始動後フラグFDESORPが1から0に一度もなっていないか否かを判定し、一度もなっていない場合、即ちYESのときにはステップ142に進む。一方、NOのときにはフラグFDESORPを0として一連の動作を終了する。
【0037】ステップ142では、HC吸着材11の温度が脱離温度に達しているかを判定する。具体的には、HC吸着材温度TADSBERが、HC脱離開始温度TDESORP以上になっているか否かを判定する。なお、前記HC吸着材温度TADSBERは、種々の運転パラメータから物理モデルに基づいて推定される値である。モデルの詳細についてはいくつか提案されているものがあるのでここでは説明を省略する。また、HC吸着材11の下流に温度センサを取り付けて、実測するのもよく、HC脱離開始温度TDESORPは、HC吸着材11の仕様から決まる値で予め決定しておく。そして、ステップ142でHC吸着材温度TADSBERが、HC脱離開始温度TDESORP以上になっている場合、即ちYESのときにはステップ143に進む。一方、NOのときにはフラグFDESORPを0として一連の動作を終了する。
【0038】ステップ143では、HC脱離が終了しているか否かを判定する。具体的には、前記下流空燃比補正係数REARHOSの値を用いる。これは、後述するように、HCの脱離中には、HC吸着材11の下流の空燃比を理論空燃比とするために、HC吸着材11の上流空燃比をリーンにするので、下流空燃比補正係数REARHOSの値がリーン側にシフトする。ここで、HC脱離終了すると、HC吸着材11の上流と下流とでの空燃比はほぼ同じとなるので、下流空燃比補正係数REARHOSの値も小さくなる。よって、ステップ143では下流空燃比補正係数REARHOSの値が十分に小さく、その状態が一定時間継続しているか否かで判定する。
【0039】そして、ステップ143で下流空燃比補正係数REARHOSの値が十分に小さく、その状態が一定時間継続している場合、即ちYESのときにはHC脱離終了と判断してフラグFDESORPを0として一連の動作を終了する。一方、NOのときには脱離中と判断してフラグFDESORPを1として一連の動作を終了する。なお、HC脱離開始温度FDESORPの初期値は0とする。
【0040】図8は、前記HC吸着材下流空燃比補正係数(補正項)REARHOSの演算のフローチャートである。HC吸着材11の下流空燃比制御補正係数REARHOSは、HC吸着材11の下流のO2センサ13の出力値が所定範囲に収まるよう、HC吸着材11の上流目標空燃比TABFに補正をかけるものである。
【0041】まず、ステップ151では、HCが脱離中か否かの判定を行う。具体的には前記フラグFDESORPが1であるか否かで判定し、前記フラグFDESORPが1の場合、即ちYESのときにはステップ152に進み、一方、NOのときにはステップ157に進んで、下流空燃比制御補正係数REARHOSを0にし、補正を行わずに終了する。
【0042】ステップ152では、HC吸着材11の下流空燃比がHC脱離によってリッチになっているか否かを判定する。具体的には、O2センサ13の出力VO2Rが、HC吸着材下流空燃比制御許可値(リッチ側)VO2RMAX以上であるか否かを判定し、HC吸着材下流空燃比制御許可値VO2RMAX以上である場合、即ちYESのときには、HC吸着材11の下流空燃比がリッチであると判断して、ステップ153に進み、HC吸着材11の上流空燃比をリーンとするために、前回のJOBで演算された下流空燃比制御補正係数REARHOSzに前記補正係数REARHOSの変化率DLLを加算して、下流空燃比制御補正係数REARHOSとする。
【0043】一方、ステップ152でHC吸着材下流空燃比制御許可値VO2RMAX以上でないときには、ステップ154に進み、O2センサ13の出力VO2Rが、HC吸着材下流空燃比制御許可値(リーン側)VO2RMIN以下であるか否かを判定し、HC吸着材下流空燃比制御許可値VO2RMIN以下である場合、即ちYESのときには、HC吸着材11の下流空燃比がリーンであると判断して、ステップ155に進み、HC吸着材11の上流空燃比をリッチとするために、前回のJOBで演算された下流空燃比制御補正係数REARHOSzから前記補正係数REARHOSの変化率DLLを減算して下流空燃比制御補正係数REARHOSとし、一連の動作を終了する。これは、リーン側へ過剰補正した場合に、理論空燃比側に戻すために行う処理である。
【0044】一方、ステップ154でHC吸着材下流空燃比制御許可値VO2RMIN以下でないときには、ステップ156に進み、HC吸着材11の下流空燃比が所定範囲内、即ち理論空燃比近傍にあると判断し、下流空燃比制御補正係数REARHOSと前回のJOBで演算された下流空燃比制御補正係数REARHOSzとが等しいとして更新を行わずに、一連の動作を終了する。なお、下流空燃比補正係数REARHOSの初期値は0とする。
【0045】次に、HC吸着材11に吸着されているHC量の推定、及びHC吸着材11の劣化判定について、図9及び図10を用いて説明する。HC吸着材11に吸着されているHC量の推定については、前述したように、HCの脱離中に起こるHC吸着材11の上流空燃比のリーンシフト分が、HC吸着量と相関があることから、図9のフローチャートに示されるように、HC吸着量の演算を行って推定する。
【0046】まず、ステップ161では、HC脱離中か否かを判定し、フラグFDESORPが1の場合、即ちYESのときにはステップ162に進み、上流空燃比RABF及び目標基本空燃比TABFに基づく理論空燃比からのリーンシフト分に、空気流量QAを乗じた値を加重積算し、HC累積吸着量指数たるHC吸着容量IADSHCを算出して動作を終了する。
【0047】一方、ステップ161でフラグFDESORPが1でないときには、ステップ163に進み、劣化判定が終了しているか否かを判定する。具体的には、劣化判定終了フラグFCDIAGが1であるか否かを判定する。なお、エンジン始動時には、劣化判定終了フラグFCDIAGの初期値は0とし、セット条件は後述する。
【0048】そして、ステップ163で劣化判定終了フラグFCDIAGが1の場合、即ちYESのときにはステップ164に進み、HC吸着容量IADSHC、及び前回のJOBで演算されたHC吸着容量を共に0にし、動作を終了する。一方、劣化判定終了フラグFCDIAGが1でないときには、ステップ165に進んで劣化判定が未実施であるとして、HC吸着容量と前回のJOBで演算されたHC吸着容量とが等しいとして前回値を維持し、一連の動作を終了する。
【0049】また、図10は、HC吸着材11の劣化判定のフローチャートである。ステップ171では、HCの脱離が終了したか否かを判定する。具体的には、HC脱離中フラグFDESORPが0であって、前回のJOBで演算されたHC脱離中フラグFDESORPzが1であるか否かを判定し、この条件が成立している場合、即ちYESのときにはHCの脱離終了と判断してステップ172に進む。一方、この条件が成立していないときには終了する。
【0050】ステップ172では、HC吸着材11の劣化判定を行う。具体的には、HC吸着容量IADSHCが、新品時のHC吸着容量に対して予め0〜1.0内で決定される劣化判定のしきい値RAGEと、予め経験的に決定されるHC吸着材11の新品時のHC吸着容量IADSHCMAXとを乗じた値以下であるか否かを判定し、この条件が成立した場合、即ちYESのときにはHC吸着材11の劣化と判断して、ステップ173に進み、運転席等に取り付けられている劣化報知ランプ19を点灯させて、ステップ174に進んで劣化判定終了フラグFCDIAGを1にし、終了する。一方、ステップ172で条件が成立しないときには、HC吸着材11が劣化に至っていないと判断し、ステップ174に進んで終了する。
【0051】図11は、本発明の第二の実施形態のエンジンの診断装置を備えたエンジン制御システムの全体構成を示したものである。前記第一の実施形態においては、HC吸着材11の下流に三元触媒18が配備されたエンジンの制御システムであるが、本実施形態の触媒32は、HC吸着材と三元触媒とが同じ担体に担持されているものである。
【0052】即ち、図11に示す本実施形態のエンジン制御システムは、図1の前記第一の実施形態のエンジン制御システムと基本的な構成は同じであるが、排気管10に設置される一つの触媒28がHC吸着材と三元触媒とを同じ担体に担持した点のみにおいて、前記第一実施形態の排気管10にHC吸着材11と三元触媒18とを備えたものと相違しているが、本実施形態の構成においても、前述の第一実施形態のECU16に適応可能である。以上のように、本発明の前記実施形態は、上記の構成によって次の機能を奏するものである。
【0053】前記第一の実施形態のエンジンの診断装置は、排気管10に、HC吸着材11及び三元触媒18が取り付けられ、前記HC吸着材11の上流には広域の空燃比を検出するA/Fセンサ12を有し、前記HC吸着材11の下流には理論空燃比に対してリッチかリーンかを検出するO2センサ13を有するエンジン100の前記HC吸着材11の診断装置であって、O2センサ13の出力信号に基づいて前記HC吸着材11の下流の空燃比を補正するHC吸着材下流空燃比補正手段30と、該HC吸着材下流空燃比補正手段30及びA/Fセンサ12の出力信号に基づいて前記HC吸着材11の上流の空燃比を補正するHC吸着材上流空燃比補正手段31とを備え、図12に示すように、前記HC吸着材11の推定温度が、前記HC脱離する脱離温度A以上になる場合には、前記O2センサ13の出力が理論空燃比相当値となるように、エンジン100に供給される燃料量を制御し、前記HC吸着材11の上流の空燃比である前記A/Fセンサ12の出力をリーンにするので、前記O2センサ13の出力を理論空燃比相当値に保持し、排気悪化を防止することができる。なお、前記HCの脱離期間は、前記A/Fセンサ12の出力が、所定値B以下になるまでと認識することができる。
【0054】そして、前記エンジンの診断装置は、前記O2センサ13及び前記A/Fセンサ12の出力信号から前記HC吸着材11のHC吸着量を推定するHC吸着量推定手段28と、該HC吸着量推定手段28の出力信号から前記HC吸着材11の劣化を判定するHC吸着材劣化判定手段29と、該HC吸着材劣化判定手段29の出力信号に基づいて前記HC吸着材11の劣化を運転者に知らせる劣化報知ランプ19とを備え、前記HC吸着量推定手段28が、前記A/Fセンサ12の出力と理論空燃比Cとの差に基づいて、前記HC吸着材11の吸着性能を求めている。前記HC吸着材11の上流の空燃比をリーン側にシフトさせる量は、その時に前記HC吸着材11から脱離するHCを酸化させるのに必要な酸素量に比例しており、該リーンシフト量から前記HC吸着材11のHC吸着量を推定することができるからである。従って、本実施形態のエンジンの診断装置は、三元触媒18の入口空燃比を理論空燃比に制御して排気を悪化させることなく、前記HC吸着材11の吸着性能を診断し、該HC吸着材11の劣化が判定されたときには、運転者に知らせることができ、法規による規制にも対応させることができる。
【0055】また、前記エンジンの診断装置100の診断実施領域及び実施条件については、図13に示すように、前記HC吸着材11の温度条件のほか、前記HC吸着材11の上流に取り付けられたA/Fセンサ12の出力を理論空燃比にすることによる前記HC吸着材11の下流に取り付けられたO2センサ13の出力が、リッチ側状態で所定時間T続くことを条件に加えてHCの脱離開始を明確にし、前記HC吸着材11からのHC脱離の検出精度を高めることができる。
【0056】更に、前記第二の実施形態のエンジンの診断装置100は、排気管10に設置される一つの触媒32がHC吸着材と三元触媒とを同じ担体に担持した点で前記第一実施形態の排気管10にHC吸着材11と三元触媒18とを備えたものと相違し、この場合には、触媒32の入口の空燃比ではなく、該触媒32の出口の空燃比を制御することになるが、前記第一実施形態のECU16に適応可能であり、同様の効果を得ることができる。以上、本発明の二つの実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱することなく、設計において種々の変更ができるものである。
【0057】例えば、前記実施形態においては、燃料量により空燃比を制御する構成としたが、空気量を制御することでも可能である。また、脱離したHCを酸化させるのに必要な酸素量は、空燃比だけでなく、その時のエンジンに供給される空気量とも相関があるので、前記リーンシフト量と空気量とを乗じた値における脱離期間中の積分値からHC脱離量を求め、HC脱離量算出の精度向上を図ることができる。更に、前記HC吸着材温度推定手段30aは、エアフロセンサ2、クランク角センサ15等の種々の運転パラメータからHC吸着材11の温度TADSBERを推定しているが、前記HC吸着材11の温度を計測するセンサを有する場合には、HC吸着材温度計測手段として機能するものである。
【0058】また、前記第一の実施形態では、前記HC吸着材11の下流に三元触媒18を設けているが、該三元触媒18に替えてNOx触媒を設けてもよく、この場合にも前記第一実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、前記第一の実施形態は、前記HC吸着材11の上流にA/Fセンサ12、下流にO2センサ13をそれぞれ有しているが、前記HC吸着材11の下流にのみ、A/Fセンサ若しくはO2センサのいずれかの空燃比センサを有してもよく、この場合にも、以下に説明するように、前記HC吸着材11の吸着性能を算出することができる。
【0059】図14は、第三の実施形態のエンジンの診断装置100を備えたエンジン制御システムの全体構成を示したものであり、本実施形態のエンジン制御システムは、図1の前記第一の実施形態のエンジン制御システムと基本的な構成は同じであるが、HC吸着材11の下流にのみ空燃比センサを有する点において、前記第一の実施形態と相違し、該空燃比センサの出力に基づいて空燃比を制御するものである。
【0060】図15は、前記エンジンの診断装置の制御ブロック図であり、該エンジンの診断装置は、空燃比制御の操作量に基づいてHC脱離時のHC脱離量の推定を行っており、前記HC吸着材11の下流に設けられた空燃比センサ(A/Fセンサ13A若しくはO2センサ13B)の出力信号に基づいて前記HC吸着材11の下流の空燃比を補正するHC吸着材下流空燃比補正手段30と、前記空燃比センサ13A(13B)の出力信号から前記HC吸着材11のHC吸着量を推定するHC吸着量推定手段28と、該HC吸着量推定手段28の出力信号から前記HC吸着材11の劣化を判定するHC吸着材劣化判定手段29と、該HC吸着材劣化判定手段29の出力信号に基づいて前記HC吸着材11の劣化を運転者に知らせる劣化報知ランプ19とを備えている。
【0061】図16は、前記空燃比センサが、広域の空燃比を検出するA/Fセンサ13Aである場合のエンジンの診断装置の診断実施領域及び実施条件を示しており、前記HC吸着材11の計測温度若しくは推定温度が、前記HC脱離する脱離温度A以上になるときには、HCの脱離により空燃比補正項REARHOSがリーンとなるように、エンジン100に供給される空気量あるいは燃料量を制御するので、前記空燃比センサ13Aの出力を理論空燃比相当値に保持し、排気悪化を防止することができる。
【0062】そして、前記HC吸着量推定手段28は、前記空燃比補正項REARHOSと各運転領域のストイキ相当の燃料噴射量Gとの差DLTRHOSを求め、該差DLTRHOSに空気量を乗じた値に対して吸着量演算時間(T0からT1)で積分し、前記HC吸着材11のHC吸着性能を求め、その結果に基づいて前記HC吸着材劣化判定手段29で前記HC吸着材11の吸着性能を診断し、劣化が判定されたときには前記劣化報知ランプ19で運転者に知らせることができる。
【0063】図17は、前記空燃比センサが、理論空燃比に対してリッチかリーンかを検出するO2センサ13Bである場合のエンジンの診断装置の診断実施領域及び実施条件を示しており、この場合にも、前記空燃比センサ13Bの出力が理論空燃比相当値となるように、空気量あるいは燃料量を制御し、HCの脱離により空燃比補正項REARHOSをリーンにするので、前記空燃比センサ13Bの出力を理論空燃比相当値に保持し、排気悪化を防止することができる。そして、前記HC吸着量推定手段28は、HC非脱離時の空燃比補正項REARHOSの中心値ALPSTとHC脱離時の空燃比補正項REARHOSの中心値ALPLNとの差DLTALPを求め、該差DLTALPに空気量を乗じた値に対して吸着量演算時間(T0からT1)で積分し、前記HC吸着材11のHC吸着性能を求め、その結果に基づいて前記HC吸着材劣化判定手段29で前記HC吸着材11の吸着性能を診断し、劣化が判定されたときには前記劣化報知ランプ19で運転者に知らせることができる。なお、前記中心値ALPST又は中心値ALPLNは、空燃比補正項REARHOSの平均値、空燃比補正項REARHOSの最大値と最小値との和に1/2を乗じた値等を用いてもよい。
【0064】
【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明に係るエンジンの診断装置は、排気悪化させることなく、HC吸着材に吸着されたHC量を推定し、HC吸着材の吸着性能の診断を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年2月28日(2000.2.28)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
【公開番号】 特開2001−241319(P2001−241319A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−51939(P2000−51939)