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【発明の名称】 NOx吸着材再生装置及び再生方法
【発明者】 【氏名】中村 雅紀

【氏名】金坂 浩行

【要約】 【課題】硫黄被毒を受けたNOx吸着材のNOx吸収性能の低下を抑制し、長期に亘りNOxを効率良く吸収(トラップ)することが可能となるNOx吸着材再生装置、再生方法及び排気ガス浄化装置を提供すること。

【解決手段】NOx吸着手段20と、ガス流制御手段と、を備え、ガス流制御手段が、排気ガスの流通方向を、NOx吸着手段における担体の一端側から他端側への順方向、又は他端側から一端側への逆方向に切り換え可能なNOx吸着材再生装置である。排気ガスの流通方向の切り換えを行った際に、排気ガスをストイキ〜リッチにし、NOx吸着手段を600℃以上に加熱して、NOx吸着材を再生する。NOx吸着材再生装置をリーンバーン内燃機関の排気ガス流路10に設置して成る排気ガス浄化装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を担体に担持したNOx吸着手段と、このNOx吸着手段への排気ガスの流通方向を制御するガス流制御手段と、を備え、上記ガス流制御手段が、上記排気ガスの流通方向を、上記NOx吸着手段における担体の一端側から他端側への順方向、又は他端側から一端側への逆方向に切り換え可能であることを特徴とするNOx吸着材再生装置。
【請求項2】 上記ガス流制御手段が、上記NOx吸着手段を通過する本流路と、上記NOx吸着手段を迂回して上記担体の一端側から他端側に連通するバイパス流路と、この本流路及びバイパス流路を開閉する弁を備えることを特徴とする請求項1記載のNOx吸着材再生装置。
【請求項3】 上記ガス流制御手段が、上記NOx吸着手段を反転可能な回動手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のNOx吸着再生装置。
【請求項4】 上記排気ガスの流通方向の切り換えを、上記NOx吸着手段のNOx吸着材が硫黄被毒を受けて窒素酸化物吸収性能が低下したときに行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のNOx吸着材再生装置。
【請求項5】 上記排気ガスの流通方向の切り換えを行った際に、排気ガスをストイキ〜リッチにし、上記NOx吸着手段を600℃以上に加熱することを特徴とする請求項4記載のNOx吸着材再生装置。
【請求項6】 上記NOx吸着材が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類及び遷移金属から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のNOx吸着材再生装置。
【請求項7】 窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を担体に担持したNOx吸着手段に対し、排気ガスを、その流通方向を上記NOx吸着手段における担体の一端側から他端側への順方向、又は他端側から一端側への逆方向に切り換えながら供給することを特徴とするNOx吸着材再生方法。
【請求項8】 上記排気ガスの流通方向の切り換えを、この排気ガスの流れ方向を変化させることにより行うことを特徴とする請求項7記載のNOx吸着材再生方法。
【請求項9】 上記排気ガスの流通方向の切り換えを、上記NOx吸着手段を反転させることにより行うことを特徴とする請求項7又は8記載のNOx吸着材再生方法。
【請求項10】 上記排気ガスの流通方向の切り換えを、上記NOx吸着手段のNOx吸着材が硫黄被毒を受けて窒素酸化物吸収性能が低下したときに行うことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つの項に記載のNOx吸着材再生方法。
【請求項11】 上記排気ガスの流通方向の切り換えを行った際に、排気ガスをストイキ〜リッチにし、上記NOx吸着手段を600℃に加熱することを特徴とする請求項10記載のNOx吸着材再生方法。
【請求項12】 請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のNOx吸着蔵材再生装置をリーンバーン内燃機関の排気ガス流路に設置して成る排気ガス浄化装置であって、上記NOx吸着手段における担体に、排気ガス浄化能を有する触媒成分を更に担持して成ることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、NOx吸着材再生装置及び再生方法に係り、更に詳細には、ガソリンや潤滑オイル中に含まれる硫黄(S)分によって被毒されたNOx吸着材の再生方法に関し、特に、自動車(ガソリン、ディーゼル)やボイラーなどの内燃機関等から排出される排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NOx)を浄化するために設置されるNOx吸着材などで好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】近年、石油資源の枯渇問題、地球温暖化問題から、低燃費自動車の要求が高まっており、ガソリン自動車に対しては希薄燃焼自動車の開発が注目されている。かかる希薄燃焼自動車においては、希薄燃焼走行時、排気ガス雰囲気が理論空燃状態(ストイキ)に比べ酸素過剰雰囲気(リーン状態)となるが、リーン状態で通常の三元触媒を適用させた場合、過剰な酸素の影響からNOx浄化作用が不十分となるという問題があった。
【0003】このため酸素が過剰となってもNOxを浄化できる触媒が開発されており、例えば、特開平5−168860号公報には、Ptとランタンを多孔質担体に担持した触媒であって、排気ガスが酸素過剰のときに(リーン域)にNOxを吸収させ、吸収させたNOxをストイキ時に放出させ浄化する触媒が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、燃料及び潤滑油内には硫黄が含まれており、この硫黄が酸化物として排気ガス中に排出されるため、NOx吸収材が硫黄による被毒(これを「硫黄被毒」という。)を受け、NOx吸収性能の低下が起こる。この硫黄被毒を防止する方法として、特開平6−58138号公報では、NOx吸収触媒の前段に硫黄トラップ触媒を配置し、リーン域でこの硫黄トラップ触媒に硫黄酸化物を吸収させ、後段のNOx吸収触媒に硫黄酸化物を流入させない方法が開示されている。また、特開平7−217474号公報では、ある程度の硫黄被毒は仕方がないものとし、一定期間毎にNOx吸収触媒を高温(空燃比A/Fをリッチ状態)にして吸着した硫黄を脱離させ、NOx吸収触媒の性能回復を図る方法が開示されている。
【0005】しかしながら、特開平6−58138号公報に開示されている方法では、硫黄トラップ触媒が吸収した硫黄酸化物により飽和してしまい、それ以上の硫黄酸化物はNOx吸収触媒に流入(吸着)して、硫黄被毒が起きてしまうという課題があった。また、特開平7−217474号公報に開示されている方法では、硫黄の脱離操作の際にNOx吸蔵触媒の熱劣化が起こるような高温(700℃以上)でなければ、NOx吸蔵触媒の前側から脱離させた硫黄が、NOx吸蔵触媒の後側に吸着してしまい、NOx吸蔵触媒全体としての硫黄吸着量は殆ど変わらず、被毒は緩和されないという課題があった。
【0006】本発明者らは、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、硫黄被毒を受けたNOx吸着材のNOx吸収性能の低下を抑制し、長期に亘りNOxを効率良く吸収(トラップ)することが可能となるNOx吸着材再生装置、再生方法及び排気ガス浄化装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、内燃機関等の排気流路に設置したNOx吸着手段を流通する排気ガスの流れ方向を、適切に切り換えることにより、上記課題が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明のNOx吸着材再生装置は、窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を担体に担持したNOx吸着手段と、このNOx吸着手段への排気ガスの流通方向を制御するガス流制御手段と、を備え、上記ガス流制御手段が、上記排気ガスの流通方向を、上記NOx吸着手段における担体の一端側から他端側への順方向、又は他端側から一端側への逆方向に切り換え可能であることを特徴とする。
【0009】また、本発明のNOx吸着材再生装置の好適形態は、上記ガス流制御手段が、上記NOx吸着手段を通過する本流路と、上記NOx吸着手段を迂回して上記担体の一端側から他端側に連通するバイパス流路と、この本流路及びバイパス流路を開閉する弁を備えることを特徴とする。
【0010】更に、本発明のNOx吸着材再生装置の他の好適形態は、上記ガス流制御手段が、上記NOx吸着手段を反転可能な回動手段を備えることを特徴とする。
【0011】更にまた、本発明のNOx吸着材再生方装置の更に他の好適形態は、上記排気ガスの流通方向の切り換えを、上記NOx吸着手段のNOx吸着材が硫黄被毒を受けて窒素酸化物吸収性能が低下したときに行うことを特徴とする。
【0012】また、本発明のNOx吸着材再生装置の他の好適形態は、上記排気ガスの流通方向の切り換えを行った際に、排気ガスをストイキ〜リッチにし、上記NOx吸着手段を600℃以上に加熱することを特徴とする。
【0013】更に、本発明のNOx吸着材再生装置の更に他の好適形態は、上記NOx吸着材が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類及び遷移金属から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする。
【0014】更にまた、本発明のNOx吸着材再生方法は、窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を担体に担持したNOx吸着手段に対し、排気ガスを、その流通方向を上記NOx吸着手段における担体の一端側から他端側への順方向、又は他端側から一端側への逆方向に切り換えながら供給することを特徴とする。
【0015】また、本発明のNOx吸着材再生方法の好適形態は、上記排気ガスの流通方向の切り換えを、上記NOx吸着手段のNOx吸着材が硫黄被毒を受けて窒素酸化物吸収性能が低下したときに行うことを特徴とする。
【0016】更に、本発明の排気ガス浄化装置は、上記NOx吸着材再生装置をリーンバーン内燃機関の排気ガス流路に設置して成る排気ガス浄化装置であって、上記NOx吸着手段における担体に、排気ガス浄化能を有する触媒成分を更に担持して成ることを特徴とする。
【0017】
【作用】本発明のNOx吸着材再生装置においては、NOx吸着手段を流通する排気ガスを、逆方向から流通するように切り換え可能とした。よって、NOx吸着手段に担持するNOx吸着材の硫黄被毒が比較的少ない部分を随時利用することにより、長期に亘ってNOx吸着手段を使用できるNOx吸着材再生装置となる。また、本発明のNOx吸着材再生方法の好適形態においては、排気ガスの流通方向を切り換えた際に、排気ガスをストイキ〜リッチにし、NOx吸着手段を600℃以上に加熱することとした。よって、NOx吸着材上の硫黄被毒に係る硫黄分を有効に脱離・除去でき、NOx吸着材をより確実に再生することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明のNOx吸着材再生装置及び再生方法について詳細に説明する。上述の如く、本発明のNOx吸着材再生装置は、窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を担体に担持したNOx吸着手段と、このNOx吸着手段への排気ガスの流通方向を制御するガス流制御手段と、を備える。
【0019】ここで、上記NOx吸着手段の構成成分であるNOx吸着材としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属及びこれらを任意に組み合わせたものを含有する材料などが例示できる。また、これらNOx吸着材を担持する担体としては、耐熱性材料からなるモノリス担体(ハニカム構造など)などの一体構造型担体が好ましく、例えばコーディライトなどのセラミックス製のものや、フェライト系ステンレスなどの金属製のものを使用できる。更に、NOx吸着材を粒状やペレット状の担体に担持し、これらを容器に充填してNOx吸着手段を形成してもよい。なお、一体構造型担体を使用するときは、複数個の担体とタンデム配置してもよいが、この場合はタンデム配置した担体群を1つの担体として取り扱うことを要する。
【0020】一方、上記ガス流制御手段は、上記NOx吸着手段への排気ガスの流通方向を制御するものである。即ち、排気ガスの流通方向を、上記NOx吸着手段における担体の一端側から他端側への順方向、又は他端側から一端側への逆方向に切り換えることができるものである。
【0021】また、本発明では、上記排気ガスの流通方向を適切に切り換えながら排気ガスを供給することにより、上記NOx吸着材を再生する。このとき、流通方向の切り換えは、後述するようにセンサーからの信号や一定時間を基準として行うことができる。
【0022】上記ガス流制御手段として、以下に示す2つの代表例を挙げることができる。1つの例としては、上記NOx吸着手段を通過する本流路と、上記NOx吸着手段を迂回して上記担体の一端側から他端側に連通するバイパス流路と、この本流路及びバイパス流路を開閉する弁を備えるガス流制御手段とすることができる。具体的には、図1に示すように、エンジン1に接続された本流路の一例である排気流路10に、担体に担持されたNOx吸着手段20(NOx吸着材)を迂回するように2つのバイパス流路11、12を接続し、排気流路10とバイパス流路11、12との接続部位に弁30〜32を設けて成るガス流制御手段を例示することができる。このガス流制御手段は、NOx吸着手段20へ順方向に排気ガスを流通させたいときは、図1(a)に示すように弁30〜32でバイパス流路11、12を遮断し、排気流路10のみに排気ガスを流通させることができ、また逆方向に排気ガスを流通させたいときは、図1(b)に示すように弁30〜32で排気流路10の一部を遮断して、排気ガスの流れ方向をバイパス流路11、12を通じて変化させることができる。また、本例では設置していないが、バイパス流路11の下流側の排気ガス流路10との接続部に更に弁を設けることもできる。更に、これら弁の開閉はコントローラー34により行うことができる。
【0023】一方、上記ガス流制御手段の他の例としては、上記NOx吸着手段を反転可能な回動手段を備えるガス流制御手段を例示できる。具体的には、図3に示すように、回動手段として回動軸21を設置して、NOx吸着手段20の前後を反転させることができる。このとき、反転は自動又は手動で行うことができる。なお、上述した2つのガス流制御手段を組み合わせて成るガス流制御手段とすることもできる。また、上記排気流路10は直線状である場合に限られず、NOx吸着手段20(担体)は排気流路の形状に対応させて設置できることは言うまでもない。更に、上記「担体の一端側から他端側に連通するバイパス流路」の「一端側」及び「他端側」とは、厳密には、一端構造型担体より前方及び後方の排気流路部分を意味する。
【0024】また、これらガス流制御手段による上記排気ガスの流通方向の切り換えは、上記NOx吸着手段のNOx吸着材が硫黄被毒を受けて窒素酸化物吸収性能が低下したときに行うことが好ましい。
【0025】例えば、大気中に放出されるNOx濃度がNOx排出許容量より高くなったとき(センサー出力N>NOx排出許容濃度Nlim)に、排気ガスの流通方向を切換えることが有効である。ここで、「N」はNOxセンサー(図1では33)の示すNOx濃度である。他の方法としては、エンジン運転条件から算出した単位時間当たりのNOx排出量を積算して、NOx吸着材に吸着されているNOx量を推定し、この推定NOx量が所定量を超えたら排気ガスの流通方向を切り換えるようにしてもよい。
【0026】ここで、上記NOx吸着材が燃料中に含まれる硫黄成分により硫黄被毒(以下「S被毒」と略す)を受ける場合には、NOx吸着材の一端(前側)から他端(後側)に向かって順に硫黄(S)が吸着し易い。また、これはNOxの吸収についても同様であり、NOx吸着材の前側ほどNOxやSが多く吸収され、後側ほどこれらの吸収量が少ないことが多い。
【0027】上記NOx吸着材にSが吸着する原因は、以下のように考えることができる。燃料の中などに含まれるS(排気ガス中ではSO2)が、酸素過剰条件(リーン条件)で、通常設置される触媒(三元触媒など)に含まれる貴金属(Pt、Pd、Rhなど)の触媒作用を受けて酸化され、NOx吸着材(アルカリ、アルカリ土類金属又は希土類等)に硫酸塩となって吸収されることがある。この反応は非常に安定であるため、NOx吸着材中でSが接触したところから順に硫酸塩が生成し、NOx吸着材に強く吸着し易い。
【0028】従って、かかるS被毒では、NOx吸着材の前後において、吸着するS量に濃度勾配が発生し、吸着材の前側(上流側)ほどSの吸着量が多くなることがある。 即ち、Sが吸着してしまった部分では、NOx吸着材の活性点に不純物であるSが強く吸着してNOx吸着材活性が低下又は消失してしまうため、Sの吸着量が多いNOx吸着材の前側ほどNOxを吸収できなくなっている。一方、NOx吸着材の前側がかなりのS被毒を受けていても、上記NOx吸着材の後側は、殆どSが吸着しておらず、NOx吸着材の前側よりも活性が高い状態にある。但し、NOx吸着材全体としてはS被毒を受けているので、排気ガス中のNOxを充分に吸収するのが困難な状態にある。
【0029】そこで、本発明では、上記排気ガスの流通方向の切り換えを、上記NOx吸着手段のNOx吸着材が硫黄被毒を受けて窒素酸化物吸収性能が低下したときに行い得るようにした。この結果、上記NOx吸着材の使用期間を大幅に延長し得るため、長期に亘りNOx吸収性能が維持されることとなる。即ち、Sが吸着してNOx吸収性能を発揮できなくなったNOx吸着手段の一端が、NOx吸収性能につき比較的影響の小さい後側となり、Sが殆ど吸着しておらずNOx吸収性能を十分に発揮し得る他端が、NOx吸収性能につき影響の大きい前側となるように、NOx吸着材上の排気ガスの流通方向を反転することにより、NOx吸収性能を再生できる。代表的には、NOx吸着材のSに対する耐久性が1.8〜2倍に増大し得る。なお、上記流通方向の切り換えは、好適なNOx吸収能を維持することができる限り繰り返し可能であり、硫黄被毒の度合いや硫黄の脱離操作の有無により差があるが、NOx吸着材1個当たり、600℃未満の加熱処理では1回程度の切り換えとなるのに対し、600℃以上の高温処理であれば更に5回程度切り換えを行うことができる。また、NOx吸着材に吸着するSの濃度勾配は、例えば、自動車のエンジンに設置される排気ガス浄化装置などでは、5000km程度の走行で顕著に発現する。
【0030】また、本発明では、排気ガスの流通方向の切り換えを行った際に、排気ガスをストイキ〜リッチにし、上記NOx吸着手段を600℃以上に加熱することが好ましく、この結果、NOx吸着材に吸着しているSを脱離させ、NOx吸着材を再生させることができる。このときの加熱手段としては、電熱器などを例示できる。
【0031】更に、上述したように、排気ガスの流通方向を切り換えた後は、NOx吸着材上では排気ガスの流通方向に対して下流側(後側)にSが多く吸着しているため、この位置からSが脱離するとNOx吸着材に再度吸着されることなく、NOx吸着手段から除外されるので、NOx吸着手段全体としてもS吸着量が減少され易い。なお、このとき排気流路に硫黄トラップ触媒などを配置すれば、S成分の外部への放出を防止することができる。
【0032】なお、上記S脱離操作の他にも、NOx吸着材に吸着しているSの脱離操作としては、排気ガスを受けるNOx吸着材の前後を反転せず、空燃比をリッチ〜ストイキにし、600℃程度の高温にする方法があるが、この方法ではNOx吸着材(触媒)の前側から脱離したSが上記S吸着量の濃度勾配により吸着材の後側に再吸着してしまうので、吸着したSを望み通りに除去することができない。また、空燃比A/Fを更にリッチ化する方法や流通する排気ガスを700℃以上まで高温にする方法などもあるが、A/Fを更にリッチ化する方法では燃費向上効果が得られなくなることがあり、また、排気ガスを700℃以上の高温とする方法ではNOx吸着材がシンタリングにより活性劣化し易くなるなど熱耐久性の面から好ましくない。これに対して、本発明では、上述のようにNOx吸着材のS被毒を解除し、NOx吸収性能をより確実に再生・持続することができる。また、Sの脱離操作の際には上述したSの再吸着も起こりにくいことから、排気ガスの温度が少なくとも600℃であればSの脱離を達成できる。
【0033】以上に説明した、上記NOx吸着手段(担体)へ流通させる排気ガスの切り換え制御の代表例、即ち、排気ガスの迂回手段(図1)又はNOx吸着材の回動手段(図3)の作動は、包括的に行うことが好ましく、代表的には図2に示すフローチャートに従って実行することができる。なお、以下のフローチャート中で行うS脱離操作は、排気ガス温度600℃〜650℃、空燃比13.5〜14.6、時間5分の条件で行うことを想定している。
【0034】以下、図2(A)に示すフローチャートをステップ順に説明する。このフローチャートはNOx吸着材の回動手段(図3)に係るものである。まず、ステップ1(以下、[S1]と略す)では、N>Nlimであるかどうかが判定される。この判定により、Noであるときは、まだNOx吸着材のNOx吸収量が吸収許容限界量に達していないので、そのまま排気ガスの流通が継続される[S2]。一方、Yesであるときは、大気中に放出されるNOx濃度が高くなってしまうので、N>Nlimになったと同時にNOx吸着手段の回動手段が作動される[S3]。
【0035】[S3]の後に、N>Nlimであるかが再度判定される。この判定により、Noであるときは、まだNOx吸収量が吸収許容限界量に達していないので、そのまま排気ガスの流通が継続される[S4]。一方、Yesであるとき[S5]は、大気中に放出されるNOx濃度が高くなってしまうので、N>Nlimになったと同時に、NOx吸着材中のSを脱離させるためS脱離操作が行われる[S6]。
【0036】次に、図2(B)は、図1に示す排気ガスの迂回手段を作動する際に、弁30〜32を開放(本流路のみを流通)するとき(図(a))、又は遮断(バイパス流路を使用)するとき(図(b))、を判断するフローチャートである。なお、フローチャート中の「F」は、迂回手段の作動回数を示す。
【0037】以下、図2(B)に示すフローチャートをステップ順に説明する。まず、[S10]では、作動回数パラメーターであるFに1が加えられる。次いで、Fの値が偶数か奇数かが判定される[S11]。この判定の結果、F=偶数であるときは、図1(a)の状態、即ち、排気流路10にある弁が開放され、排気ガスがNOx吸着手段を順方向から流通される[S12]。一方、F=奇数であるときは、図1(b)の状態、即ち、上記弁により排気ガス流路10の一部は遮断され、排気ガスがバイパス流路を流通するように切り換えられ、NOx吸着材に逆方向から流通される[S13]。なお、図2(B)のフローチャート中に、図2(A)に示すS1及びS2を取り入れて、硫黄の被毒量を迂回操作の基準とすることもできる。
【0038】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】なお、以下の実施例及び比較例では、担体にNOx吸着材を担持したNOx吸着手段に、更に排気ガス浄化成分を担持して成る排気ガス浄化装置を使用した。即ち、Baを20wt%、Pdを5wt%及びRhを1wt%Alに担持し、これをハニカム担体にコートしたものを使用した。また、使用前に以下に示す熱耐久を行なった。
【0040】[耐久方法]排気量4400ccのエンジンの排気系に上記排気ガス浄化装置を装着し、NOx吸着材入口温度を650℃とし、50時間運転した。この時、ガソリン中のS濃度を3ppm以下にした。
【0041】(実施例1)ガソリン中のS濃度を300ppmとし、排気量2000ccのエンジンの排気系に上記排気ガス浄化装置を装着して、10−15モードをN>Nlimになるまで繰返し走行した。N>Nlimになった時点で、上記NOx吸着手段を取外し、前後を反転して取り付け、再び10−15モードをN>Nlimになるまで繰返し走行した。なお、このときNOx吸着手段の取外し、前後を反転しての取り付けは人の手によって行なった。
【0042】(実施例2)NOx吸着手段の反転を行わず、図1に示すように排気ガスの流れ方向をバイパス流路を用いて切り換えた以外は、実施例1と同様の操作を繰返し走行した。
【0043】(実施例3)NOx吸着手段の反転を図3に示すNOx吸着手段反転装置(回動軸)21を用いて行なった以外は、実施例1と同様の操作を繰返し走行した。
【0044】(実施例4)ガソリン中のS濃度を300ppmとし、排気量2000ccのエンジンの排気系に上記排気ガス浄化装置を装着して、10−15モードを図2のフローチャートに従い、N>Nlimになるまで繰返し走行した。また、N>Nlimになった時点でNOx吸着手段を取外し、前後を反転して取り付け、温度600℃、空燃比14.6、時間5分、ガソリン中のS濃度を3ppm以下にしてのS脱離操作を行なった(1)。この後、ガソリン中のS濃度を300ppmとし、再び10−15モードをN>Nlimになるまで繰返し走行した(2)。この(1)の操作及び(2)の走行をS脱離操作を行なってもN<Nlimにならなくなるまで繰返した。なお、この時のNOx吸着手段の取外し、前後を反転しての取り付けは人の手によって行なった。
【0045】(実施例5)NOx吸着手段の反転を行わず、図1に示すように排気ガスの流れをバイパスを用いて切り換えた以外は、実施例4と同様の操作を繰返し走行した。
【0046】(実施例6)NOx吸着手段の反転を図3に示すNOx吸着手段反転装置21を用いて行なった以外は、実施例4と同様の操作を繰返し走行した。
【0047】(比較例1)ガソリン中のS濃度を300ppmとし、排気量2000ccのエンジンの排気系に上記排気ガス浄化装置を設置して、10−15モードをN>Nlimになるまで繰返し走行した。また、NOx吸着手段を反転しなかった。なお、これ以外は、実施例1と同様の操作を繰返し走行した。
【0048】(比較例2)NOx吸着手段を反転しなかった以外は、実施例4と同様の操作を繰返し走行した。
【0049】(比較例3)S脱離操作時の温度を550℃にした以外は、実施例4と同様の操作を繰返し走行した。
【0050】[評価]上記実施例及び比較例おいて、NOx転化率が65%以下になってしまうまで10−15モードを繰り返して走行できた回数を比較した。この結果を表1に示す。なお、N<NlimであるときのNOx転化率は、68〜70%であった。
【0051】
【表1】

【0052】実施例1及び比較例1から、NOx吸着手段を反転するときは、10−15モードを走行できる回数が約2倍に増えている。即ち、実施例1ではNOx吸着材のSに対する耐久性が2倍になったことを意味する。なお、実施例2及び3から、排気ガスの流通方向の切り換えを、迂回手段(図1)又は回動手段(図3)のどちらで行っても、同様に耐久性が向上することがわかる。また、実施例4及び比較例2から、NOx吸着手段を反転することにより、10−15モードを走行できる回数が約2倍に増えていることがわかる。これは、NOx吸着手段を反転することによって、NOx吸着材から脱離したSの再吸着が防止されたためであると考えられる。更に、実施例4及び比較例3から、NOx吸着手段を反転しても、Sの脱離温度が本発明の好適範囲でないときは、10−15モードを走行できる回数が約1/3になることがわかる。これは、600℃未満の温度では脱離されるSが少ないためと考えられる。
【0053】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば、内燃機関等の排気流路に設置したNOx吸着手段を流通する排気ガスの流れ方向を、適切に切り換えることとしたため、硫黄被毒を受けたNOx吸着材のNOx吸収性能の低下を抑制し、長期に亘りNOxを効率良く吸収(トラップ)することが可能となるNOx吸着材再生装置、再生方法及び排気ガス浄化装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
【公開番号】 特開2001−241318(P2001−241318A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−53506(P2000−53506)