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【発明の名称】 タービン動翼の連結構造
【発明者】 【氏名】浅井 邦夫

【氏名】桜井 茂雄

【氏名】後藤 道宏

【氏名】野村 健一郎

【要約】 【課題】タービンの動翼のルースタイワイヤ連結方式の強度信頼性を向上する。

【解決手段】タービン動翼1のルースタイワイヤ連結構造のタイワイヤ3外面とスリーブ4内面に、タイワイヤ3やスリーブ4よりもビッカース硬さの小さな金属皮膜10,11を施し、スリーブ4とタイワイヤ3の局部接触による面圧を低下させ、かつ接触部の摩擦係数を増加させて相対すべり量を減少させることで、フレッティング疲労強度を高めた。逆にビッカース硬さの大きな金属皮膜10,11をコーティングすることで、耐摩耗性を高め、かつ接触部の摩擦係数を低下させて相対すべりを大きくしてフレッティング疲労強度を高めた。その外にタイワイヤ3外面、もしくはスリーブ4内面に表面硬化処理を施して、耐摩耗性を高め、かつ接触部の摩擦係数を低下させて相対すべりを大きくすることでフレッティング疲労強度を高めた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】タービン動翼の翼孔に通したタイワイヤの両端部をスリーブに挿入して成るタービン動翼の連結構造において、前記タイワイヤの端部の外面又は前記スリーブの内面の少なくともどちらか一方に、前記タイワイヤや前記スリーブよりも耐フレッティング疲労強度が高い皮膜をコーティングしたことを特徴とするタービン動翼の連結構造。
【請求項2】請求項1において、被膜の材料は銅,鉛,亜鉛,錫,カドミウム,アルミニウム、銀のいずれかであることを特徴とするタービン動翼の連結構造。
【請求項3】タービン動翼の翼孔に通したタイワイヤの両端部をスリーブに挿入して成るタービン動翼の連結構造において、前記タイワイヤの端部の外面又は前記スリーブの内面の少なくともどちらか一方に、TiNをコーティングしてあることを特徴とするタービン動翼の連結構造。
【請求項4】請求項3において、TiNに代えてクロム,ニッケル,タングステン化合物,リン酸塩のいずれかをコーティングしてあることを特徴とするタービン動翼の連結構造。
【請求項5】タービン動翼の翼孔に通したタイワイヤの両端部をスリーブに挿入して成るタービン動翼の連結構造において、前記タイワイヤの端部の外面又は前記スリーブの内面の少なくともどちらか一方に、表面硬化処理を施してあることを特徴とするタービン動翼の連結構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタービンの動翼の連結構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】蒸気タービンの動翼は、蒸気の不均一流れによる励振力を受けており、翼の固有振動数が回転数の整数倍と一致するか、もしくはそれに近くなると、動翼に発生する振動応力が大きくなり、動翼の強度信頼性が低下する。
【0003】そのため、動翼設計においては、動翼の固有振動数が、定格回転数の整数倍と十分離調するように設計されている。しかし、近年の火力発電所および原子力発電所の蒸気タービンでは、低圧段の動翼を長大化してプラントの効率向上や出力増大が図られている。その動翼が長大化するほど、固有振動数が低下して共振を回避すべき振動モードが多数存在するため、十分な離調を確保することが重要である。
【0004】優れた振動特性が得られる構造の1つとして、タービンの動翼に翼穴を貫通して設け、その翼穴にタイワイヤを通すことにより複数の動翼を連結する事が知られている。そして、そのタイワイヤの両端をスリーブに入れて連結するというルースタイワイヤ連結方式の構造が特開平2−169802号公報に掲載されている。
【0005】ルースタイワイヤ連結方式による動翼の連結状況が図2,図3に示されている。動翼1に貫通して設けた翼孔2にタイワイヤ3を通し、タイワイヤ3と翼孔2の接触部の摩擦力により、振動に対するダンピング効果をもたせている。
【0006】複数の動翼1を連結したタイワイヤ3の端部は、中空状のスリーブ4に入れられて連結している。運転中の振動や動翼のねじれ戻り力により、タイワイヤ3に周方向にずれや動きが生じることがあるため、それらの動きに対してスリーブ4が離脱しないように、図4のように、スリーブ4のほぼ中央部に貫通孔を設けて、その孔にリベット5を通し、リベット5の頭をかしめることにより固定している。スリーブ4内面、およびタイワイヤ3外面は機械加工仕上げのまま使用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図5,図6に示すように、タービンの運転中にスリーブ4に作用する遠心力6と翼のねじり戻り力9により、スリーブ4とタイワイヤ3には図5の7、および図6の8で示した箇所に50MPa以上の高い面圧が発生し、それに加えて動翼の振動によりフレッティングき裂を発生させうるに十分な振動応力が作用することにより、スリーブ4内面もしくはタイワイヤ3外面にフレッティング疲労き裂が発生するおそれがあることが分かった。
【0008】前記フレッティング疲労き裂が進展すると、脱落したスリーブ片が翼やケーシングに衝突して損傷を与えることや、タイワイヤ3とスリーブ4の連結状態が損なわれて振動モードが変化して共振状態に近づき強度信頼性が低下することが考えられる。
【0009】従って、本発明は、タイワイヤとスリーブの連結部において発生する高い面圧下で、両者が相対すべりを起こす場合に発生するおそれのあるフレッティング疲労に対して強度信頼性を高めた施策を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するため、高い面圧下で相対すべりが生じるタイワイヤとスリーブの接触箇所について、フレッティング疲労に対する強度信頼性を高めるための鋭意検討を進めた結果、フレッティング疲労強度を増大させるためには、接触部の摩擦係数を増大して相対すべりを低下させる方法と、表面の硬度を高くして耐摩耗性を増加させ、かつ摩擦係数を低下させて相対すべりを大きくしてフレッティング疲労き裂を摩滅させる施策が有効であるとの結論に達し、タイワイヤ外面、もしくはスリーブ内面の少なくともどちらか一方を耐フレッティング特性の優れた状態にしてフレッティング疲労に対する強度信頼性を高めることを見出した。
【0011】フレッティング疲労に対する強度信頼性を高める第1手段の特徴は、タイワイヤの端部の外面又はスリーブの内面の少なくともどちらか一方に、前記タイワイヤや前記スリーブよりも耐フレッティング疲労強度が高い皮膜をコーティングしたことである。
【0012】その被膜の材料は銅,鉛,亜鉛,錫,カドミウム,アルミニウム,銀のいずれかが採用出来る。
【0013】同じく第2手段の特徴は、タイワイヤの端部の外面又はスリーブの内面の少なくともどちらか一方に、TiN(チタンナイトライド)をコーティングしてあることである。
【0014】また、TiNに代えてクロム,ニッケル,タングステン化合物,リン酸塩のいずれかをコーティングしてもよい。
【0015】同じく第3手段の特徴は、タイワイヤの端部の外面又はスリーブの内面の少なくともどちらか一方に、表面硬化処理を施してあることである。
【0016】
【発明の実施の形態】図1のように、蒸気タービンのタービンの動翼1には翼孔2が貫通して設けられる。図1の場合も、図2〜図4を用いて説明した従来例と同様に、動翼1の翼孔2にタイワイヤ3を通し、タイワイヤ3と翼孔2の接触部の摩擦力により、振動に対するダンピング効果をもたせている。
【0017】複数の動翼1を連結したタイワイヤ3の端部は、図1のように、中空状のスリーブ4に差し込まれてタイワイヤ3を連結している。運転中の振動や翼のねじれ戻り力により、タイワイヤ3に周方向にずれや動きが生じることがあるため、それらの動きに対してスリーブ4が離脱しないように、本発明の実施例でも、図1のようにスリーブ4のほぼ中央部に貫通孔を設けて、その孔にリベット5を通し、リベット5頭をかしめることにより固定している。
【0018】本発明の第1実施例では、図1のように、互いに対面し合うタイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面に、タイワイヤ3の材料よりもビッカース硬さの小さな銅の金属皮膜10,11をめっき処理、もしくは溶射によりコーティングした。タイワイヤ3の外面に施す金属皮膜10は、図1のように、スリーブ4の端部よりも外側へ突き出るように広く施されている。
【0019】このような金属皮膜10,11をタイワイヤ3外面とスリーブ4内面とに生成することにより、タイワイヤ3外面とスリーブ4内面との2面間の摩擦係数を増大させて両者の相対すべりを抑制させ、フレッティング疲労強度を高めることができる。
【0020】一般に接触部の相対すべり、フレッティング過程中に起こる局所的な塑性変形は発熱を伴い、局所部の温度上昇は疲労き裂の発生に対して悪影響を及ぼす。タイワイヤ3外面とスリーブ4内面の各接触面にコーティングした銅の薄膜は熱伝導率が高いため、接触部の発熱を発散させる効果があり、疲労強度を増大させるのに有益である。
【0021】また、タイワイヤ3とスリーブ4の片あたりにより局所的に高い面圧が両者の接触面に発生し、その箇所でフレッティング疲労き裂が発生しやすいが、翼材より降伏応力の小さい銅の金属皮膜10,11が塑性変形することにより、両者の接触面での片あたりが緩和されて、面圧のピーク値を低下させる効果がある。
【0022】なお、前述した銅以外の金属皮膜の材料として、鉛,亜鉛,錫,カドミウム,アルミニウム,銀などを使用しても同様の効果が期待できる。タイワイヤ3とスリーブ4の材料よりも電気化学的に卑な材料を金属皮膜10,11の材料として選択した場合には、これらの金属皮膜をタイワイヤ3とスリーブ4にコーティングすると、湿り蒸気の腐食環境下において、これら皮膜がタイワイヤ3とスリーブ4の母材に対して選択的に溶解することにより、タイワイヤ3とスリーブ4の材料を腐食から守る効果がある。
【0023】なお、本実施例では、タイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面の両方にコーティングする場合について述べたが、タイワイヤ3の外面のみ金属被膜10、もしくはスリーブ4の内面のみ金属被膜11を生成するコーティングを実施しても、同様の効果が期待できるのは言うまでもない。
【0024】またタイワイヤ3の外面にコーティングを施すにあたって、スリーブ4と接触する領域のみにコーティングを施した場合について述べたが、さらにコーティング領域を拡大して、タイワイヤ3と翼孔2との接触領域にもコーティングを施すと、翼孔2の内面とタイワイヤ3の外面との接触部でのフレッティング疲労強度が増大する効果が期待できる。
【0025】その場合には、図7に示すようにタイワイヤ3の外側全面にわたって金属被膜10によるコーティングを施してもよいし、コーティングの材料のコストを低減させるため、動翼1、およびスリーブ4との接触部だけを選択的にコーティングしてもよい。
【0026】金属被膜10,11のコーティング厚さとしては、10μmから150μmの間にあるのが望ましい。一般に膜厚が増加するほどフレッティングに対する疲労強度が増加するが、膜厚が厚すぎると生成コストが高くなり、また皮膜が剥離しやすいという問題がある。コーティングを施した後に、機械加工を行いタイワイヤ3とスリーブ4の交差を所定の値にするのが望ましい。
【0027】本実施例では、動翼1の1個所にタイワイヤ3を通す構造について述べたが、半径方向の複数箇所にタイワイヤ3を通した構造であっても同様の効果が期待できる。また、スリーブ4の中央にリベット5を通して固定する構造について述べたが、リベット5を使用しない場合、もしくはリベット5の代わりにボルト等の他の締結方法を用いた構造であっても同様の効果が期待できる。
【0028】次に本発明の第2実施例について説明する。タイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面に、タイワイヤ3の材料よりもビッカース硬さの大きなTiN(チタンナイトライド)の皮膜10,11をコーティングさせたものである。その被膜10,11の施工範囲は図1に見られる第1実施例と同様である。
【0029】このような皮膜10,11を形成することにより、タイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面との2面間の凝着が極めて軽微であり、かつ金属酸化物のアブレシブ摩耗粉が発生しても耐摩耗性に優れるため、表面傷がつきにくい。
【0030】またTiNの皮膜10,11は、タイワイヤ3とスリーブ4間の摩擦係数を低下させるため、動翼1からの振動力を受けた場合の相対すべり量が大きくなることにより、たとえフレッティング疲労き裂が発生したとしても、き裂が深く進展する前にそれらを摩滅させることにより、疲労寿命を増加させることができる。
【0031】TiN以外の皮膜としてクロム,ニッケル,タングステン化合物,リン酸塩の皮膜を生成しても、接触面の硬度を高め、摩擦係数を増大する皮膜で同様の効果が期待できる。
【0032】なお、タイワイヤ3の外面のみ、もしくはスリーブ4の内面のみにコーティングを実施しても、同様の効果が期待できるのは言うまでもない。またタイワイヤ3外面にコーティングを施すにあたって、翼孔2の内面との接触領域にもTiN材のコーティングを施すと、その接触部でのフレッティング疲労強度が増大する効果が期待できる。
【0033】半径方向の複数箇所にタイワイヤ3を通した構造であっても、またリベット5を使用しない場合、もしくはリベット5の代わりにボルト等の他の締結方法を用いた構造であっても同様の効果が期待できる。
【0034】本発明の第3実施例では、タイワイヤ3の外面、もしくはスリーブ4の内面の少なくともどちらか一方に、表面硬化処理を施したものである。このような表面硬化処理を施すことにより、耐摩耗性を高め、かつタイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面との接触部の摩擦係数を低下させて相対すべりを大きくすることによりフレッティング疲労に対する強度を高めることができる。その表面硬化処理を施す範囲は第1実施例で図1のように金属被膜10,11が施される範囲と同じとする。
【0035】その表面硬化処理としては、浸炭,窒化,高周波焼入れ,火炎焼入れなどが挙げられる。これらの表面硬化処理を施すことにより、第2実施例で述べたように、耐摩耗性を増加して、フレッティング疲労に対する寿命を増加させる効果が期待できる。
【0036】以上説明したように、第1の実施例では、タイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面に、タイワイヤ3の材料よりもビッカース硬さの小さな金属皮膜(亜鉛,銅,アルミニウム,鉛,錫,カドミウム,銀など)をめっき処理もしくは溶射によりコーティングすることにより、2面間の摩擦係数を増大させて両者の相対すべりを抑制して、フレッティング疲労強度を高めることができる。
【0037】また第1実施例で、銅や銀のように熱伝導率の高い材料をコーティングの材料として選択した場合には、タイワイヤ3の外面とスリーブ4の内面との接触部の相対すべり、フレッティング過程中に起こる発熱を発散させる効果があり、疲労強度増大に効果がある。
【0038】また第1実施例で、タイワイヤ3とスリーブ4との片あたりによる局所的に高い面圧を降伏応力の小さい金属皮膜10,11が塑性変形することにより平均化させてピーク面圧を低下させる効果があり、フレッティング疲労寿命を増加させる効果が期待できる。
【0039】また、第1実施例では、タイワイヤ3やスリーブ4の材料よりも電気化学的に卑である材料で金属被膜10,11を作るようにコーティングすることにより、腐食に対して防さびの効果があり、腐食環境下で長期間の使用においての信頼性が高まる。
【0040】タイワイヤ3の外面、もしくはスリーブ4の内面の少なくともどちらか一方に、第2実施例では、タイワイヤ3の材料よりもビッカース硬さの大きな皮膜(TiN,クロムやニッケルなど)をコーティングすることで、また第3実施例では、表面硬化処理(浸炭,窒化,高周波焼入れ,火炎焼入れなど)を施すことにより、接触部の耐摩耗性を高め、かつ接触部の摩擦係数を低下させて相対すべりを大きくすることによりフレッティング疲労に対する強度を高める効果がある。
【0041】このようにして、いずれの実施例でもタービンの動翼の連結手段としてルースタイワイヤ連結方式の構造を採用した際の、その構造のフレッティングによる損傷を軽減出来る。
【0042】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、タービンの動翼の連結手段としてルースタイワイヤ連結方式の構造を採用した際の、その構造のフレッティングによる損傷を軽減出来るので、タービンの信頼性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年6月9日(2000.6.9)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2001−355406(P2001−355406A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−179366(P2000−179366)