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【発明の名称】 ドリルロッド
【発明者】 【氏名】遠藤 哲哉
【氏名】宇都 巨貴
【課題】ねじ部の摩耗を防止することにより、長期に亘って使用することができるドリルロッドを提供する。

【解決手段】接続ねじの表面に、以下のように規定される硬化層を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】接続ねじの表面に、以下のように規定される硬化層を設けたことを特徴とするドリルロッド。
1)前記硬化層は厚さが0.2〜2.5mmである。
2)前記硬化層は、表面焼入れによるものであり、母材との硬度差がHRC硬度5以上である。
3)前記硬化層は、ねじ先端からねじ加工長さに対し部分的な長さ範囲で設けられている。
【請求項2】前記ドリルロッドは打撃掘削機用のものであることを特徴とする請求項1記載のドリルロッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ドリルロッドに関し、さらに詳細には、ねじ部の摩耗防止処理を施したドリルロッドに関する。
【0002】
【従来の技術】ドリルロッドは、ねじの着脱を繰り返すことによってねじ山の摩耗が進行し、摩耗限界に達した時点で製品寿命として取り扱われている。しかしながら、この時点で、ねじ部を除くドリルロッドの管体部分において、その外径部分の摩耗は軽微であり、内径部分ではほとんど摩耗していない。それにもかかわらず、ねじ部の摩耗限界に達したドリルロッドは、スクラップ処理されているのが実状であり、資源の有効利用の観点からは望ましくない。
【0003】ドリルロッドの素材には、JISで規定するSCMもしくはSNCM系の合金鋼を使用することもあるが、特にロータリパーカッションドリル用ドリルロッドにはねじ部の摩耗防止対策として、引張強度1000〜1200N/mm2 (HRC硬度30〜41)に強度調整された高じん性・高張力の合金鋼を素材として使用することが多い。しかし、その際、ドリルロッドのねじ摩耗防止の対策はなされておらず、したがって、素材の硬さに応じた速度で摩耗が進行する。
【0004】ねじ山のかじり防止のため、ねじ表面にりん酸塩皮膜などを施すこともあるが、摩耗防止効果はない。また、ねじ接続時に、銅、亜鉛、モリブデンなどの微粒子が添加されたグリスを塗布することもあるが、ドリルロッドの性能向上にはならず、使用上の配慮の範囲を超えていない。
【0005】ロータリパーカッションドリル用ドリルロッドの素管は通常の構造用鋼管に比べて高価であり、サイズにもよるが製品コストに占める材料費の割合が50〜70%と高い。しかも、ねじの摩耗限界に到達するまでの時間が短ければ、素材としては新品に近い状態でも、スクラップ処理しなければならず、環境負荷に対する配慮がなされているとは言い難い。
【0006】他方、ねじの摩耗限界の判断は使用者の主観によるものであり、接続強度限界を超える摩耗状態であっても投資額回収の意識が過大に強ければ、限界を超えてまで使用する傾向にある。このため、ねじのすっぽ抜けや緩みによる事故が発生する危険性が高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。この発明の目的は、ねじ部の摩耗を防止することにより、長期に亘って使用することができるドリルロッドを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。すなわち、この発明は、接続ねじの表面に、以下のように規定される硬化層を設けたことを特徴とするドリルロッドにある。1)前記硬化層は厚さが0.2〜2.5mmである。2)前記硬化層は、表面焼入れによるものであり、母材との硬度差がHRC硬度5以上である。3)前記硬化層は、ねじ先端からねじ加工長さに対し部分的な長さ範囲で設けられている。
【0009】前記ドリルロッドは、ロータリパーカッションドリルなどの打撃掘削機用のものである。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、ロータリパーカッションドリル用のドリルロッドを示す軸線方向断面図である。ドリルロッド1は管状のものであり、JISで規定するSCM若しくはSNCM系の合金鋼、又は合金元素の添加量を増減し、引張強度1000〜1200N/mm2 に強度調整された合金鋼を素材として作られている。
【0011】ドリルロッド1は、先端(ピン部)に雄ねじ部2が後端(ボックス部)に雌ねじ部3が形成され、雌ねじ部3に他のドリルロッドの雄ねじ部2を螺着することにより、順次継ぎ足される。雄ねじ部2及び雌ねじ部3の軸線方向両側には、段差のついたインロー(印籠)部4,5が設けられ、ねじ接続時にこれらのインロー部4,5が嵌まり合うことで、ねじ緩みが生じた際に曲げ力に対する強度確保がなされている。
【0012】図2及び図3は、ドリルロッド1のピン部(a)及びボックス部(b)を拡大して示す断面図であり、使用初期には図2のように、ねじ部2,3のねじ山形状は正常に保たれている。ねじの着脱を繰り返すと、図3に示すように、ねじ山の摩耗が口元から進行する。この時点で、範囲Nで示す奥側部分はほぼ正常な状態である。
【0013】このようなねじの摩耗を防止するために、図4に示すように、ねじ部2,3の表面に硬化層6を設ける。なお、本図において硬化層6を分かり易くするためにハッチングは省略してある。硬化層6は、その厚さが0.3〜2.5mm程度であり、高周波焼入れ、炎焼入れ、浸炭焼入れなどの表面焼入れを施すことによって設けられる。この焼き入れの結果、硬化層6は母材との硬度差がHRC硬度5以上とされる。因みに、JISで規定されるHRC硬度は20〜68であり、したがって例えば母材硬さがHRC35のとき硬化層6の硬さはHRC40〜68未満とされる。
【0014】また、硬化層6はねじ部2,3の加工長さ全体に亘って設けるのではなく、ねじ先端から部分的な長さ範囲で設けられる。すなわち焼入れ範囲Qは、ねじ加工長さの60%程度である。このように、ねじ摩耗の進行態様(図3参照)に即した部分的な焼入れ処理を施すことにより、焼入れに伴う熱応力に非焼入れ部分が対抗し、ねじ部2,3全体の熱歪みの発生を抑えることができる。
【0015】
【実施例】表1に示す成分と表2に示す機械強度を有する合金鋼を素材としたドリルロッドのねじ部に、炎焼入れによって硬化層を設け摩耗試験を行った。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】摩耗試験に使用したドリルロッドは、φ70mm、硬化層硬さ:HRC47、硬化層厚さ:1mm である。摩耗試験は連続押し付け逆転試験により行い、押し付け荷重:5625N、回転トルク:2850N・m、回転数:50rpm の条件下とした。図5は摩耗試験結果を示し、時間とねじ山摩耗量との関係を示すグラフである。グラフから明らかなように、本発明品は従来品に比べ寿命が約2倍延びていることが分かる。
【0019】この発明は、上記実施の形態に限らず、二重管式ロータリパーカッションドリルにおいてクリーニングスイベルとインナロッドとを接続するエクステンションロッド、あるいはクリーニングスイベルとアウタロッドとを接続するマスタカップリングの各ねじ部にも適用することができる。
【0020】すなわち、この発明でいうドリルロッドとは、ねじ接続によりビットに給進力と回転力(さらには打撃力)を伝達する部材一般を含む概念であり、したがってドリルロッドには上記エクステンションロッドやマスタカップリングも当然包含される。これらエクステンションロッドやマスタカップリングにも、先端及び後端の両端にねじ部が設けられているが、硬化層は必要に応じて一方のねじ部にのみ設けるようにしても差し支えない。
【0021】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、接続ねじ部に硬化層を設けたので、ドリルロッドの寿命を延ばすことができ、より具体的には次のような効果が得られる。
(1)硬化層を設けることによる原価アップは、ドリルロッドの製造原価の約5%であるが、その一方で寿命は実験によれば約2倍に延長される。したがって、ドリルロッドのトータルコストが低減し、現場運営費が削減される。
(2)ねじの摩耗限界に到達するまでの時間が延び、管体の素材も十分消費することができる。すなわち、ドリルロッド素材の環境負荷が低減される。
(3)使用者にねじ部以外の管体部分の摩耗を認識させることができ、「このくらい使えば十分」という意識を与えることができる。すなわち、ねじの接続強度限界内での使用停止感覚が生じ、ねじのすっぽ抜けや緩みによる事故の発生率が低下する。
【出願人】 【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
【出願日】 平成12年2月1日(2000.2.1)
【代理人】 【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
【公開番号】 特開2001−214683(P2001−214683A)
【公開日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【出願番号】 特願2000−23733(P2000−23733)