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【発明の名称】 蓋体開閉支持機構
【発明者】 【氏名】一丸 貴秀

【要約】 【課題】2軸回動式の蓋体開閉支持機構において、蓋体開閉動作時の摩擦抵抗を低減化して、グリース等の潤滑剤を用いる必要なくスムーズな開閉操作を行うことができ、グリースを廃止することを可能とすることを目的とする。

【解決手段】第2スライド軸32とガイド孔12内面との摩擦係数をμ、回動軸11と第1スライド軸31とを結ぶ線Dと、回動軸11と第2スライド軸32とを結ぶ線Cとのなす角をαとした場合、α≧2μtan-1なる式を満足するように、回動軸11、第1スライド軸31及び第2スライド軸32を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 容器等の被開閉体外側面に設けられた回動軸と、該回動軸に軸支され、上記被開閉体の外側面に沿って回動する回動部材と、この回動部材の回動運動の軌跡に沿って、上記容器本体の側面に穿設された円弧状のガイド孔と、該ガイド孔から分岐して穿設された分岐孔と、上記被開閉体の開口部を開閉する蓋体に設けられ、上記被開閉体の内側から上記ガイド孔を通して、上記回動部材に軸支された第1スライド軸と、上記蓋体に設けられ、上記被開閉体の内側から上記ガイド孔に挿入された第2スライド軸とを具備し、上記蓋体で上記被開閉体の開口部を閉じた閉状態では、上記第1スライド軸が上記ガイド孔の一端限に位置すると共に、上記第2スライド軸が上記分岐孔の先端部に位置し、この閉状態から上記蓋体を開方向に回動させることにより、まず該蓋体が上記第1スライド軸を中心に所定角度回動して、上記第2スライド軸が上記分岐孔先端部から上記ガイド孔へと移動し、次いで上記第1スライド軸及び上記第2スライド軸が上記ガイド孔を他端側へと移動すると共に、これらと共に上記回動部材が上記回動軸を中心に回動し、蓋体がこの回動軸を中心に回動して上記被開閉体の開口部が開放し、また、この開状態にある蓋体を閉方向へと回動させることにより、まず上記第1スライド軸及び上記第2スライド軸が上記ガイド孔を一端側へと移動すると共に、これらと共に上記回動部材が上記回動軸を中心に回動して、蓋体がこの回動軸を中心に所定角度回動し、上記第1スライド軸が上記ガイド孔の一端限に達した後、上記第2スライド軸がガイド孔から上記分岐孔へと進入して該分岐孔の先端側へと移動し、蓋体が上記第1スライド軸を中心に回動して、上記被開閉体の開口部を閉塞するように構成された蓋体開閉支持機構において、上記第2スライド軸と上記ガイド孔内面との摩擦係数をμ、上記回動軸と上記第1スライド軸とを結ぶ線と、上記回動軸と上記第2スライド軸とを結ぶ線とのなす角をαとした場合、α≧2μtan-1なる式を満足するように、上記回動軸、第1スライド軸及び第2スライド軸を設けたことを特徴とする蓋体開閉支持機構。
【請求項2】 上記第2スライド軸を上記ガイド孔の外方へと付勢する付勢手段を具備し、その付勢力により上記蓋体の閉状態及び開状態を保持すると共に、開閉時には蓋体の所定角度以上の回動動作を付勢するように構成した請求項1記載の蓋体開閉支持機構。
【請求項3】 上記ガイド孔の内面がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂で形成されていると共に、上記第2スライド軸が金属で形成されており、上記α値が44度以上である請求項1又は2記載の蓋体開閉支持機構。
【請求項4】 上記被開閉体が、小物入れ、カップホルダーなどの車載内装用の容器である請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋体開閉支持機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、小物入れ、カップホルダーなどの車載内装用容器の開口部を開閉する蓋体を開閉する機構として好適に用いられる蓋体開閉支持機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から自動車のセンターコンソール等にカップホルダーや小物入れ等の容器を設定することが行なわれており、このような容器に、その開口部を開閉する蓋体を設けることも行われている。
【0003】このような容器に設けられる蓋体としては、その一端縁部が容器本体の一端縁部に回動可能に取り付けられたフラップ式に開閉するものが一般的であり、このため、蓋体の開閉に伴う蓋体先端の回動軌道に対応する分だけ、容器本体上方にスペースを確保する必要があり、また、蓋体が容器本体に対して全開状態の際に蓋体が位置するためのスペースを容器本体の一端側に確保する必要がある。このため、蓋体を有する従来の容器は、スペースが限られた自動車内では設置場所を確保することが容易でなかった。
【0004】そこで、このような問題点を解決するために、図1〜3に示す蓋体開閉支持機構が提案されている(特開平8−156698号公報)。この蓋体開閉支持機構は、図1,2に示されているように、容器本体1の外側面に突設した回動軸11に回動部材2を軸支し、この回動部材2の回動軌跡に沿って円弧状に形成されたガイド孔12と、このガイド孔12から外方に分岐する分岐孔13とを上記容器本体1の側面に穿設し、蓋体3の両側部(図では一方のみ表示)に設けた第1スライド軸31を、容器本体1の内側から上記ガイド孔12を挿通して上記回動部材2に軸着し、更に上記蓋体3の両側部(図では一方のみ表示)に上記第1スライド軸31と並設された第2スライド軸32を、上記容器本体1の内側から上記ガイド孔12を挿通して上記回動部材2に設けられた切り込み溝21に挿入したものである。なお、蓋体3は、上記ガイド孔12と上記回動軸11との間に存して設けられた突起14と上記第2スライド軸32との間に取り付けられたトーションバネsにより付勢された状態となっている。
【0005】この蓋体開閉支持機構による蓋体3の開閉動作は、図3に示した通りである。上記蓋体3で上記容器本体1の開口部が閉じられた閉状態では、図3(A)に示されているように、上記第1スライド軸31が上記ガイド孔12の一端限(図中、左上限)に位置すると共に、上記第2スライド軸32が上記分岐孔13の先端部に位置し、この状態で上記トーションバネs(図3では図示せず、以下同様)により蓋体3が閉方向に付勢され、閉状態が保持されている。
【0006】この閉状態から上記蓋体3を上記トーションバネsの付勢力に抗して開方向(図3中上方右側)に回動させることにより、図3(B)に示されているように、まず該蓋体3が上記第1スライド軸31を中心に所定角度回動して、上記第2スライド軸32が上記分岐孔13の先端部から上記ガイド孔12へと移動し、次いで、図3(C)に示されているように、上記第1スライド軸31及び上記第2スライド軸32が上記ガイド孔12を他端側(図中、右下側)へと移動すると共に、これらと共に上記回動部材2が上記回動軸11を中心に回動し、蓋体3がこの回動軸11を中心に開方向へと回動し、図3(D)に示されているように、上記第2スライド軸32がガイド孔12の他端限に当接してスライド限(蓋体の回動限)となり、上記容器本体の開口部が開放する。この場合、図3(B)から図3(D)までの動作時には、上記トーションバネsの付勢力が、蓋体3を開方向へと回動させる方向に作用し、この付勢力により自動的に蓋体が回動すると共に、図3(D)の全開状態が保持される。
【0007】また、蓋体3を図3(D)の開状態から閉じる場合には、この開状態にある蓋体3を閉方向(図中、左上側)へと上記トーションバネsの付勢力に抗して回動させることにより、図3(C)に示されているように、まず上記第1スライド軸31及び上記第2スライド軸32が上記ガイド孔12を一端側へと移動すると共に、これらと共に上記回動部材2が上記回動軸11を中心に回動して、蓋体3がこの回動軸11を中心に所定角度回動し、図3(B)に示されているように、上記第1スライド軸31が上記ガイド孔12の一端限に達すると、図3(A)に示されているように、上記第2スライド軸32がガイド孔12から上記分岐孔13へと進入して該分岐孔13の先端側へと移動し、蓋体3が上記第1スライド軸31を中心に回動して、容器本体1の開口部を閉塞する。この場合、図3(B)から図3(A)までの動作時は、上記トーションバネsの付勢力が、蓋体3を閉方向へと回動させる方向に作用し、この付勢力により自動的に蓋体が回動すると共に、この付勢力により図3(A)の閉状態が保持される。
【0008】このように、この蓋体開閉支持機構は、蓋体3を回動させる回動軸として、上記第1スライド軸31と上記回動軸11との2軸を用いたことにより、蓋体3の開閉に必要なスペースを小さくし、自動車の車内で容器の設置場所を容易に確保することができるように工夫したものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この蓋体開閉支持機構は、蓋体3の開閉操作時に、上記第2スライド軸32とガイド孔12との間に大きな摩擦が生じることとなる。即ち、蓋体3を開く際には、図4に示したように、蓋体3に加えられる開方向の力F1の反作用が、第1スライド軸31を中心にして第2スライド軸32を図中A1方向へと回動させるように作用し、第2スライド軸32はガイド孔12の下側内周面に押し付けられながらガイド孔12内を摺動し、一方、蓋体3を閉じる際には、蓋体3に加えられる閉方向の力F2の反作用が、第1スライド軸31を中心にして第2スライド軸32を図中B1方向へと回動させるように作用し、第2スライド軸32はガイド孔12の上側内周面に押し付けられながらガイド孔12内を摺動することとなる。このため、蓋体3の開閉操作時には、蓋体3には大きな操作負荷が加えられることとなり、蓋体3を手で回動させる際に、ゴリゴリ感やゴツゴツ感が生じたり、上記トーションバネsの付勢による回動時にスムーズな動作が得られない場合がある。
【0010】このため、この開閉支持機構では、上記第2スライド軸32又はガイド孔12内周面に潤滑用のグリースを塗布して両者間の摩擦抵抗を低減化する必要があり、これが容器本体1に対する蓋体3の組付作業を煩雑化すると共に、コストの増大を招くことにもなっている。また、このグリースにより周囲を汚す虞もある。
【0011】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、上記2軸回動式の蓋体開閉支持機構において、蓋体開閉動作時の摩擦抵抗を低減化して、グリース等の潤滑剤を用いる必要なくスムーズな開閉操作を行うことができ、グリースを廃止することを可能とすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者は、上記目的を達成するため、上記2軸回動式の蓋体開閉支持機構による蓋体開閉動作時の力学的考察を行ったところ、上記回動軸11、第1スライド軸31及び第2スライド軸32の配置関係を適正化することにより、蓋体開閉動作時の上記第2スライド軸32とガイド孔12との摩擦抵抗を効果的に低減化することができ、その設定によってはグリース等の潤滑剤を用いることなくスムーズな開閉動作を達成し得ることを見出した。
【0013】即ち、図4において、蓋体3を閉方向に回動させる荷重F2を入力すると、第1スライド軸31には図中A2方向に荷重がかかり、第2スライド軸32には図中B1の荷重がかかることとなる。このとき、第2スライド軸32とガイド孔12との摩擦係数μは、摩擦角の公式から、μ=tanθ(この場合、θは、回動軸11と第2スライド軸32とを結ぶ直線Cと上記荷重方向B1とのなす角度)で表され、上記θは、θ=μtan-1で表される。このとき、回動軸11と第1スライド軸31とを結ぶ直線Dと、回動軸11と第2スライド軸32とを結ぶ直線Cとのなす角度αを上記θの2倍以上、即ちα≧2μtan-1を満足するように上記回動軸11、第1スライド軸31及び第2スライド軸32の配置を設定することにより、ゴリゴリ感やゴツゴツ感を生じることなくスムーズに蓋体3が回動し、トーションバネ等の付勢手段により蓋体3を回動させる場合にも非常にスムーズに動作し、グリースの使用を廃止することも可能となることを見出した。
【0014】例えば、上記第2スライド軸31が金属からなり、上記スライド孔12(容器本体1)がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂からなる場合、上記摩擦係数μは約0.4であり、2μtan-1=43.6となる。従って、この場合、上記角度αが43.6度以上、現実的には44度以上となるように上記回動軸11、第1スライド軸31及び第2スライド軸32の配置を設定することにより、極めてスムーズな蓋体3の回動操作がグリースを使用することなく得られるものである。なお、この場合、より好ましい角度αの値は、50度である。
【0015】従って、本発明は、容器等の被開閉体外側面に設けられた回動軸と、該回動軸に軸支され、上記被開閉体の外側面に沿って回動する回動部材と、この回動部材の回動運動の軌跡に沿って、上記容器本体の側面に穿設された円弧状のガイド孔と、該ガイド孔から分岐して穿設された分岐孔と、上記被開閉体の開口部を開閉する蓋体に設けられ、上記被開閉体の内側から上記ガイド孔を通して、上記回動部材に軸支された第1スライド軸と、上記蓋体に設けられ、上記被開閉体の内側から上記ガイド孔に挿入された第2スライド軸とを具備し、上記蓋体で上記被開閉体の開口部を閉じた閉状態では、上記第1スライド軸が上記ガイド孔の一端限に位置すると共に、上記第2スライド軸が上記分岐孔の先端部に位置し、この閉状態から上記蓋体を開方向に回動させることにより、まず該蓋体が上記第1スライド軸を中心に所定角度回動して、上記第2スライド軸が上記分岐孔先端部から上記ガイド孔へと移動し、次いで上記第1スライド軸及び上記第2スライド軸が上記ガイド孔を他端側へと移動すると共に、これらと共に上記回動部材が上記回動軸を中心に回動し、蓋体がこの回動軸を中心に回動して上記被開閉体の開口部が開放し、また、この開状態にある蓋体を閉方向へと回動させることにより、まず上記第1スライド軸及び上記第2スライド軸が上記ガイド孔を一端側へと移動すると共に、これらと共に上記回動部材が上記回動軸を中心に回動して、蓋体がこの回動軸を中心に所定角度回動し、上記第1スライド軸が上記ガイド孔の一端限に達した後、上記第2スライド軸がガイド孔から上記分岐孔へと進入して該分岐孔の先端側へと移動し、蓋体が上記第1スライド軸を中心に回動して、上記被開閉体の開口部を閉塞するように構成された蓋体開閉支持機構において、上記第2スライド軸と上記ガイド孔内面との摩擦係数をμ、上記回動軸と上記第1スライド軸とを結ぶ線と、上記回動軸と上記第2スライド軸とを結ぶ線とのなす角をαとした場合、α≧2μtan-1なる式を満足するように、上記回動軸、第1スライド軸及び第2スライド軸を設けたことを特徴とする蓋体開閉支持機構を提供するものである。
【0016】なお、本発明は、グリースの使用を廃止することが可能なものであるが、グリース等の潤滑剤を用いた使用形態を本発明から除外するものではなく、グリース等の潤滑剤を用いる場合にも、上記回動軸11、第1スライド軸31及び第2スライド軸32の配置設計を適正化することができるものである。
【0017】即ち、例えば、上述した金属製の第2スライド軸32とABS樹脂製のスライド孔12(容器本体1)の組み合わせにおいて、潤滑剤としてグリースを用いて上記摩擦係数μを約0.1とした場合には、2μtan-1=11.4となり、上記角度αを11.4度以上、現実的には12度以上とすることにより、蓋体3のスムーズな回動動作が得られ、この場合には第1スライド軸31と第2スライド軸32との2軸間距離をより狭く設定することができ、設計の自由度が広がることがわかる。本発明では、この設計の自由度を明確に把握することができるものである。
【0018】また、上記第2スライド軸32とスライド孔12(容器本体1)の材質は、上記金属とABS樹脂の組み合わせに限定されるものではなく、金属同士、合成樹脂同士、又は異なる合成樹脂の組み合わせであってもよい。
【0019】更に、ここまで車載用のカップホルダーや小物入れなどの容器の蓋体の開閉支持機構として説明したが、本発明開閉支持機構はこれに限定されず、種々の被開閉体の開口部を開閉する蓋体に用いることができる。
【0020】更にまた、蓋体3を付勢するトーションバネs(付勢手段)は省略してもよく、容器本体1(被開閉体)、回動体2、蓋体3、などの形状や構成も上記図1〜4に制限されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜変更することができる。
【0021】
【実施例】次に、本発明の実施例を示し、本発明の効果をより具体的に示す。上述の図4に示した蓋体開閉支持機構を構成し、第1スライド軸31と第2スライド軸32の相対的形成位置を種々変更して、上記角度αの異なる種々の設定により、グリースを用いることなく蓋体3の開閉動作を評価する実験を行った。結果を図5に示す。
【0022】なお、上記第1スライド軸31と第2スライド軸32には金属製の軸棒を用い、容器本体1(スライド孔12を含む)及び蓋体3はABS樹脂で形成した。従って、摩擦係数μは約0.4であり、2μtan-1は43.6である。
【0023】図5に示されているように、角度αが44度以上となる設定領域では、操作荷重が少なく、またゴリゴリ感もなく回動動作もスムーズであり、グリースを使用する必要のないことが確認された。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の蓋体開閉支持機構によれば、設置スペースの省スペース化を図ることができる2軸回動式の蓋体開閉支持機構において、軸の配置形態を容易に適正化し得、スムーズな開閉動作を確実に達成することができ、グリース等の潤滑剤の使用を廃止することが可能である。従って、グリース等の塗布工程を廃止してコストの削減を図ることができると共に、グリースによる周囲の汚損発生も確実に防止することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
【出願日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【代理人】 【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司 (外1名)
【公開番号】 特開2001−336335(P2001−336335A)
【公開日】 平成13年12月7日(2001.12.7)
【出願番号】 特願2000−159434(P2000−159434)