トップ :: E 固定構造物 :: E05 錠;鍵;窓または戸の付属品;金庫




【発明の名称】 錠 前
【発明者】 【氏名】斎藤 一郎

【要約】 【課題】極めて簡単な作業によってラッチの傾斜方向を変更して左右勝手の変更を行うことができる錠前を開発する。

【解決手段】ラッチ3は強力な補助バネ20によって連結部材17に取り付けられ、あたかもラッチ3と連結部材17は一体の如くではあるが、ドライバーでこじることによって過度の力に抗し切れずに補助バネ20が縮み、ラッチ3は連結部材17に対して軸方向に移動する。その結果、ラッチ3は、通常の突出位置からさらに外側に突出し、ラッチ3と正面板6のガイド部(開口11)との係合が解ける。そのためラッチ3は、回転方向の規制が無くなり、回転可能となるので、正面板6を取り外すことなくラッチ3の向きを変えて左右勝手の変更を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 開口部が設けられた錠本体とラッチを有し、錠本体の開口部からラッチの先端が突出・退入する錠前であって、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する錠前において、ラッチは、錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出し可能であり、ラッチは外側に引出されることによって前記ガイド部との係合が解けて回転可能となり、左右勝手の変更が可能となることを特徴とする錠前。
【請求項2】 開口部が設けられた錠本体と、突出用弾性体によって突出側に付勢されたラッチを有し、錠本体の開口部からラッチの先端が突出・退入する錠前であって、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する錠前において、ラッチ又はラッチと共に移動する部材と他の部材との間には、前記突出用弾性体よりも弾性係数の高い補助弾性体が介在され、ラッチは前記補助弾性体を変形させて錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出し可能であり、ラッチは外側に引出されることによって前記ガイド部との係合が解けて回転可能となり、左右勝手の変更が可能となることを特徴とする錠前。
【請求項3】 ラッチの通常時における突出位置において、ラッチを突出させる方向の力と対抗する部位に、補助弾性体が配されていることを特徴とする請求項2に記載の錠前。
【請求項4】 開口部が設けられた錠本体とラッチを有し、錠本体の開口部からラッチの先端が突出・退入する錠前であって、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する錠前において、ラッチは、錠本体から通常の退入位置よりもさらに内側に押し込み可能であり、ラッチは内側に押し込まれることによって前記ガイド部との係合が解けて回転可能となり、左右勝手の変更が可能となることを特徴とする錠前。
【請求項5】 ラッチの通常時における退入位置において、ラッチ又はラッチと共に移動する部材と当接する部位に、補助弾性体が配されていることを特徴とする請求項4に記載の錠前。
【請求項6】 ラッチには手動工具が係合可能な係合部が設けられ、当該係合部は、ラッチが通常の突出位置にある時に錠本体から露出していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の錠前。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、錠本体からラッチが突出・退入する錠前に関し、詳しくは左右勝手の変更を容易に行うことができる錠前に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家屋等の建築物の扉にはラッチ錠が広く使用されている。ラッチ錠100は、例えば図11の様な構成であり、錠本体101を有し、錠本体101に設けられた開口部102からラッチ103が突出・退入するように構成されている。すなわちラッチ錠100の錠本体101は、本体ケース105と正面板107によって構成される。そして本体ケース105にはフランジ部106が設けられ、当該フランジ部106と正面板107には、両者を連通する開口部102が設けられている。本体ケース105のフランジ部106と正面板107に設けられた開口の内、正面板107に設けられた開口の形状は、ラッチ103の先端の基端部の正面縦断面形状と略等しい。これに対して本体ケース105のフランジ部106に設けられた開口は、ラッチ103の正面投影形状よりも大きい。従って従来技術の錠前においては、正面板107を取り付けた状態においては、ラッチ103は正面板107の開口によって回転方向の運動が規制され、真っ直ぐに移動する。これに対して正面板107を取り外した状態においては、ラッチ103は自由に回転する。
【0003】またラッチ103の後端側にはロッド110が設けられており、ロッド110の中間部は本体ケース105と一体となったガイド板111を貫通している。そして前記ガイド板111とラッチ103の先端部との間のロッド110には突出用のバネ113が設けられている。ラッチ103の先端部はこのバネ113によって付勢され、通通常時は、錠本体101の開口部102から突出している。
【0004】またロッド110の後端部に固着された座板115にはハブ120の突出部が係合している。そのためハブ120を回動することによって、座板115が奥側(図面において右方向)へ移動し、ラッチ103は強制的に錠本体101内に退入される。ラッチ103の進退に際しては、錠本体101の正面板107の開口がガイド部として機能し、ラッチ103の回転(進退方向を軸とする回転運動)が阻止され、ラッチ103は真っ直ぐに移動する。
【0005】ところで、近年、建築現場での作業を軽減させることを目的として、予め工場で扉に錠前を取り付け、両者が組み立てられた状態で工場から出荷される場合が多い。ここで扉には右勝手と左勝手の違いがあり、これらに適合する錠前は、ラッチの傾斜方向が異なる。そのため従来技術の錠前では、建築現場おいて錠前の正面板だけを取り外し、ラッチ103を回転して傾斜方向を変更し、左右の勝手を変更し、再度正面板を取り付けていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来技術の錠前は、正面板を取り外すことによってラッチを回転させることができる。そのため旧来の様に錠前自体を取り外すことなく、勝手違いの扉に対処することができる。しかしながら、今日、熟練した大工の数が大幅に不足しており、この種の現場作業をさらに軽減したいという要求がある。そこで本発明は、上記した市場の要請に応えるため、極めて簡単な作業によってラッチの傾斜方向を変更することが可能な錠前の開発を課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、開口部が設けられた錠本体とラッチを有し、錠本体の開口部からラッチの先端が突出・退入する錠前であって、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する錠前において、ラッチは、錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出し可能であり、ラッチは外側に引出されることによって前記ガイド部との係合が解けて回転可能となり、左右勝手の変更が可能となることを特徴とする錠前である。ここで「真っ直ぐに突出・退入する」とは、勝手違い方向に回転せずに移動することを意味する。錠前の中には、ラッチが反転しつつ錠本体の中に退入するものもあるが、この形式の錠前も「真っ直ぐに突出・退入する」構成に含まれる。
【0008】本発明の錠前は、従来技術と同様に、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する。本発明の錠前で特徴的な構成は、ラッチが、錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出し可能となっている点である。本発明の錠前では、ラッチを外側に引出すことによってラッチとガイド部との係合が解ける。その結果、ラッチは回転可能となり、左右勝手の変更をすることができる。
【0009】また同様の課題を解決するための請求項2に記載の発明は、開口部が設けられた錠本体と、突出用弾性体によって突出側に付勢されたラッチを有し、錠本体の開口部からラッチの先端が突出・退入する錠前であって、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する錠前において、ラッチ又はラッチと共に移動する部材と他の部材との間には、前記突出用弾性体よりも弾性係数の高い補助弾性体が介在され、ラッチは前記補助弾性体を変形させて錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出し可能であり、ラッチは外側に引出されることによって前記ガイド部との係合が解けて回転可能となり、左右勝手の変更が可能となることを特徴とする錠前である。
【0010】本発明の錠前についても、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する。また本発明においては、突出用弾性体を有し、ラッチは当該突出用弾性体によって突出側に付勢されている。またその一方、本発明の錠前では、ラッチ又はラッチと共に移動する部材と他の部材との間に、補助弾性体が介在されている。このように本発明の錠前は、突出用弾性体によって付勢されていると共に、ラッチ等と他部材との間に補助弾性体が介在されているが、補助弾性体は突出用弾性体に比べてバネ定数が高いので、通通常時は補助弾性体は自然状態またはそれに近い状態となっている。そのためラッチの突出位置は、補助弾性体に依存して決まり、通常時の突出位置は安定している。そしてラッチを無理に引くと、補助弾性体が変形し、錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出され、ラッチとガイド部との係合が解ける。その結果、ラッチは回転可能となり、左右勝手の変更をすることができる。
【0011】また上記した発明をより具体化した発明は、ラッチの通常時における突出位置において、ラッチを突出させる方向の力と対抗する部位に、補助弾性体が配されていることを特徴とする請求項2に記載の錠前である。
【0012】本発明の錠前では、ラッチの通常時における突出位置において、ラッチを突出させる方向の力に対抗する部位に補助弾性体が配されている。そのため通常時のラッチの突出位置は、補助弾性体に依存して決まり、通常時の突出位置は安定している。これに対して、ラッチを無理に引くと、ラッチの突出方向の力と対抗する部位に設けられた補助弾性体が変形する。その結果、ラッチは通常の突出位置よりもさらに外側に引出されてラッチとガイド部との係合が解け、ラッチは回転可能となり、左右勝手の変更をすることができる。
【0013】また上記した課題を解決するための請求項4に記載の発明は、開口部が設けられた錠本体とラッチを有し、錠本体の開口部からラッチの先端が突出・退入する錠前であって、錠本体の一部にラッチの一部と係合してラッチの先端を真っ直ぐに移動させるガイド部を有し、ラッチは前記ガイド部と係合して錠本体に設けられた開口部から真っ直ぐに突出・退入する錠前において、ラッチは、錠本体から通常の退入位置よりもさらに内側に押し込み可能であり、ラッチは内側に押し込まれることによって前記ガイド部との係合が解けて回転可能となり、左右勝手の変更が可能となることを特徴とする錠前である。
【0014】前述した請求項1乃至3に記載した錠前は、いずれもラッチを錠本体から引き出してラッチとガイド部との係合を解くもので合ったのに対し、本発明は、逆にラッチを押し込むことにより、ガイド部との係合を解いて左右勝手の変更を行うものである。なお本発明においても、ラッチ又はラッチと共に移動する部材と錠本体との間には、突出用の弾性体よりも弾性係数の高い補助弾性体が介在されることが望ましい。またラッチには手動工具が係合可能な係合部が設けられていることが望ましい。
【0015】また請求項5に記載の錠前は、ラッチの通常時における退入位置において、ラッチ又はラッチと共に移動する部材と当接する部位に、補助弾性体が配されていることを特徴とする請求項4に記載の錠前である。。
【0016】また上記した発明をさらに改良した請求項6に記載の発明は、ラッチには手動工具が係合可能な係合部が設けられ、当該係合部は、ラッチが通常の突出位置にある時に錠本体から露出していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の錠前である。
【0017】本発明の錠前では、ラッチに手動工具が係合可能な係合部が設けられており、当該係合部は、ラッチが通常の突出位置にある時に錠本体から露出している。そのため使用者は、ラッチに設けられた係合部にドライバー等の工具を係合させ、ラッチを引き出すことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下さらに本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態の錠前の通常使用時の正面図であり、ラッチが突出した状態を表している。図2は、図1の錠前の通常使用時の正面図であり、ラッチが退入した状態を表している。図3は、図1の錠前の勝手変更を行う際の正面図であり、ラッチを通常の突出位置からさらに引き出した状態を表している。図4は、図1の錠前の要部の分解斜視図である。図5は、図1の錠前のラッチを引き出す際の状態を示す斜視図である。図6は、図1の錠前の勝手を変更する際の動作を示す錠前の要部の斜視図である。図7は、本発明の他の実施形態の錠前の正面図である。図8は、本発明のさらに他の実施形態の錠前の斜視図である。図9は、本発明のさらに他の実施形態の錠前の斜視図である。図10は、図8,図9に示す錠前の動作を説明する説明図である。
【0019】図1において、1は、本発明の実施形態の錠前を示す。本実施形態の錠前1は、ラッチ錠であり、錠本体2に設けられた開口部8からラッチ3が突出・退入するものである。錠前1の錠本体2は、従来技術のそれと同様に本体ケース5と正面板6によって構成されている。そして本体ケース5の前面側には長方形をしたフランジ部7が設けられている。またフランジ部7の中央には、開口10が設けられている。開口10の形状は円である。
【0020】正面板6は、本体ケース5のフランジ部7と同一の大きさを有する板である。そして正面板6についても開口11が設けられている。正面板6に設けられた開口11の位置は、前記した本体ケース5のフランジ部7に設けられた開口10と同じである。ただし、正面板6に設けられた開口11の形状は、円ではなく、図4の様に長方形に近い形である。また開口11の形状は、ラッチ3の先端部22の根元部分の断面形状に等しい。すなわち開口11の垂直側の二辺は、垂直方向に延びる平行線であり、上下の辺は円弧状をしている。開口11の形状は、左右対称である。本実施形態の錠前1では、正面板6に設けられた開口11がガイド部として機能する。錠本体2の開口部8には、ラッチ3の摺動性を向上させるために樹脂部材が配されている(図示せず)。
【0021】本体ケース5の本体部分(フランジ部7を除く部分)は、厚さの薄い正方形の箱体である。本体ケース5の内部には、切り起こし部12が設けられ、当該切り起こし部12に樹脂製のガイド板13が装着されている。切り起こし部12及びガイド板13は、本体ケース5のほぼ中央にある。ガイド板13は、本体ケース5の大面積の壁面に対して垂直に立設されており、二股形状をしている。また錠本体2の正面板6に対して反対側の位置には、円柱状のストッパ部材14が設けられている。
【0022】そして上記した錠本体2の本体ケース5の内部に、ラッチ3、ハブ16、連結部材17、突出用バネ18、補助バネ20、レバー作動バネ21及びロック部材23が設けられている。順次説明すると、ラッチ3は金属で作られたものであり、先端側と後端側の形状が大きく異なり、ラッチ3の先端部22は、図4の様に平面視が5角形である。そして先端部分のさらに先端側は、一面が斜め方向に削られて、傾斜面25が形成されている。一方、傾斜面25に対抗する面は、垂直面26となっている。そして当該垂直面26の基礎端近傍の部位に縦方向に延びる係合溝(係合部)27が設けられている。ラッチ3の先端部22の基端部の縦断面形状(突出・退入方向に対して垂直面で切った断面形状)は、略長方形である。
【0023】ラッチ3の後端側、すなわち5角形をした部位の裏面側には、ロッド28が形成されている。ロッド28は、先端側から3段階に順次細く作られている。すなわちロッド28には、大径部30、中径部31及び小径部32が設けられている。またロッド28の最も後端の部位には、Cリング35が設けられている。
【0024】ハブ16は、公知の錠前のそれと同一であり、角孔37が設けられた円柱部を有し、当該円柱部から対抗方向に突出部38,39が設けられている。また一方の突出部38には二股部分41が設けられている。
【0025】連結部材17は、樹脂を素材とする射出成形によって作られたものであり、概ね「L」型をしている。すなわち連結部材17は、図1〜図3に示すように略三角のブロック状の中央部材40を有し、当該中央部材40から直角方向に長短二本の腕部43,44が延びている。そして短側腕部43の端部には、長側腕部44の軸方向と平行に延びる貫通孔45が設けられている。また貫通孔45の前方側は、内径が大きく作られている。他方の長側腕部44は、ロッド状であり、後端部に径の大きいストッパ部46が設けられている。
【0026】突出用バネ18は、弾性係数が低く、且つ全長が長いバネである。突出用バネ18は、常時、500gから1000g程度、より望ましくは700g程度の力を発揮する様に設定されている。一方、補助バネ20は、弾性係数が相当に高いコイルバネであり、全長は短い。補助バネ20は、突出用バネ18よりも5〜10倍程度の力を発揮する様に設定されている。補助バネ20は、具体的には2kg〜3kg以上の力を発揮する様に設定されている。
【0027】レバー作動バネ21は、弾性係数が高く、且つ全長が長いバネである。50は、レバー作動バネ21を収容する移動体である。ロック部材23は、公知のそれと同一であり、回転部材47と摺動子48によって構成されるものである。
【0028】次に、本実施形態の錠前1における各部材同士の関係について説明する。本実施形態の錠前1においては、ラッチ3は、錠本体2の開口部8の近傍に配されている。一方ハブ16は、開口部8に対して略対角の位置にあり、回転可能である。そして連結部材17は、前記したラッチ3とハブ16の間の位置にあり、両者を連結している。すなわち連結部材17の短側腕部43の貫通孔45にはラッチ3のロッド28が挿通されている。ラッチ3のロッド28は、中間の中径部31が、貫通孔45の前方の拡径部分内に挿入されている。そして補助バネ20がラッチ3のロッド28の小径部32を軸として取り付けられている。
【0029】ラッチ3と、連結部材17との関係だけに注目すると、ラッチ3は、連結部材17に対して回転可能である。またラッチ3は、連結部材17に対してロッド28の長手方向にも移動することができる。ただし、ラッチ3のCリング35と、連結部材17の間に強力な補助バネ20が設けられており、ラッチ3は連結部材17とあたかも一体の如く動作する。すなわち本実施形態の錠前1では、補助バネ20がラッチ3後端のCリング35と、連結部材17の背面との間に設けられている。そのためラッチ3の先端部は、補助バネ20によって連結部材17に引きつける方向に付勢されている。そしてラッチ3のロッド28のいずれかの部位が連結部材17のいずれかの部位と当接し、ラッチ3のロッド28は連結部材17の短側腕部43の貫通孔45内で安定している。すなわちラッチ3は、前記した様に連結部材17に対してロッド28の長手方向にも移動可能ではあるが、ラッチ3に対してこれを突出させる方向に力を加えたとき、当該力と対抗する部位(連結部材17の短側腕部43の背面)に、強力な補助バネ20が設けられているので、ラッチ3はあたかも連結部材17と一体であるかのように動作する。
【0030】一方、連結部材17の長側腕部44は、ガイド板13を貫通し、さらにハブ16の二股部分41と係合している。またガイド板13と連結部材17の中央部材40との間には、連結部材17の長側腕部44を軸として突出用バネ18が取り付けられている。
【0031】ハブ16の近傍には移動体50に収納されたレバー作動バネ21があり、ハブ16の一方の突出部39が移動体50を介してレバー作動バネ21と接している。ハブ16はこのレバー作動バネ21によって反時計方向に付勢されている。またハブ16の突出部39は、レバー作動バネ21によって、ストッパ部材14に押しつけられているので、ハブ16は、定常状態においては、図1の様に直立姿勢となる。
【0032】次に、本実施形態の錠前1の作用について説明するが、最初に錠前1の通常の使用時の動作について説明する。
【0033】本実施形態の錠前1は、公知のそれと同様に扉の内部に配され、ハブ16の角孔37には、図示しないレバーハンドル等の角芯が挿通される。そしてハブ16は、通常時はレバー作動バネ21に押されて図1の様な垂直姿勢にある。またガイド板13と連結部材17の中央部材40との間には、突出用バネ18が設けられて、連結部材17を突出側に付勢しているので、連結部材17は通常時、正面板側に寄った部位に位置する。そしてラッチ3は、前記した様にあたかも連結部材17と一体であるかのように動作するから、突出用バネ18に押されて通常時、錠本体2の開口部8から突出している。
【0034】そして扉を閉じる際のように、ラッチ3の先端が他の部材と当接すると、ラッチ3は突出用バネ18に抗して錠本体2の中に没入する。ここでラッチ3の形状は、前記した様に正面板6の開口11と一致し、ラッチ3は、正面板6の開口(ガイド部)11と係合する。そのためラッチ3の進退に際しては、錠本体2の正面板6の開口11がガイド部として機能し、ラッチの回転(進退方向を軸とする回転運動)を阻止し、ラッチ3を真っ直ぐに運動させる。すなわちラッチ3は、勝手違い方向に回転することなく運動する。
【0035】また開扉するために、レバーハンドル等が回されると、レバー作動バネ21に抗してハブ16が回転し、突出部38が連結部材17の長側腕部44の遊端部に固着されたストッパー部46を奥側(図面において右方向)へ付勢し、連結部材17と一体の如く動作するラッチ3は、錠本体2内に退入する。また図示しないサムターン等を介してロック部材23の回転部材47を回動させると、摺動子48が図面下方向に移動し、連結部材17の後退を阻止して本施錠状態となる。
【0036】次に本実施形態の錠前1の特徴的な作用たる、左右勝手を変更する際の作用について説明する。本実施形態の錠前1では、前記した様にラッチ3は、図6(a)の様にその先端が錠本体2の開口部8から突出した状態にある。このとき、ラッチ3の先端部の係合溝(係合部)27は、外部に露出している。本実施形態の錠前1を左右勝手変更する際には、図5の様に、ラッチ3の先端部の係合溝(係合部)27にマイナスドライバーの様な手動工具を係合し、ラッチ3をこじる。
【0037】ここで、本実施形態の錠前1では、ラッチ3は強力な補助バネ20によって連結部材17に取り付けられ、あたかもラッチ3と連結部材17は一体の如くではあるが、ドライバーでこじることによって過度の力に抗し切れずに補助バネ20が縮み、ラッチ3は連結部材17に対して軸方向に移動する。その結果、ラッチ3は、図3及び図6(b)の様に、通常の突出位置からさらに外側に突出し、ラッチ3と正面板6のガイド部(開口11)との係合が解ける。そのためラッチ3は、回転方向の規制が無くなり、回転可能となる。そして続いてドライバーを係合溝(係合部)27に係合させたままで、大きく回転させるか、あるいはペンチ等でラッチ3を掴んで回転させる。ラッチ3が180°回転すると、ラッチ3先端の基端部が再度、正面板6の開口11と一致し、ラッチ3は補助バネ20に引かれて正規の位置に戻る。こうして、ラッチ3の反転作業が完了する。従って本実施形態の錠前1では、正面板6を外すことなく、ラッチ3の向きを変えることができ、左右勝手を変更することができる。
【0038】以上説明した実施形態では、ラッチ3と、ハブ16との間に連結部材17を介在させたが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、従来技術の様に、ラッチを直接的にハブと係合させる構成であってもよい。ラッチをハブと直接的に係合させる構成を採用する場合には、図7の様に補助バネ20は、ラッチの座部51とハブ16との間に設けることとなる。要するに、本発明の本質は、ラッチに無理に力を加えて、ラッチを引き出して回動可能とするものであるから、ラッチ3に対して、これを強制的に引き出す方向に力を加えたとき、当該力を負担する部位に補助弾性体を設ければよい。
【0039】また上記した実施形態では、ラッチを錠本体から引き出してガイド部との係合関係を解消したが、逆に、ラッチを押し込んで、ガイド部との係合関係を解消することも可能である。図8,9,10は、ラッチを押し込んでガイド部との係合関係を解消するタイプの錠前52を例示するものである。ラッチ3を押し込んでガイド部との係合関係を解消するタイプの錠前52では、ラッチ3を錠本体の中で回転させることとなる。しかしながら、一般的にラッチ3の先端部の最長寸部分は、錠本体2の幅よりも長いので、内部における回転しろを取りにくい。そこでラッチ3を押し込む構造を採用する場合には、図8に示すように、本体ケース5の側面であって、開口部8の近傍に、開口55を設けることが望ましい。またこれに代わって、当該部分を幅方向にふくらませた構成を採用することもできる。またラッチ3を押し込む構成を採用する場合は、ドライバーを係合させる係合溝27は、図8および図9の様に、ラッチ3の先端部に設けることが望ましい。図8に示した例では、溝27は、ラッチ3先端部の先端側中央部に幅方向に設けられている。一方、図9に示した例では、溝27は、ラッチ3先端部の傾斜面27に幅方向に設けられている。このため、溝27にドライバー等を係合させてラッチ3を押し込む場合に、図8に示した例では、ドライバー先端が正面板6に当たって押し込めない様な場合も生じ得るが、図9に示した例では、このような不都合が生じることは無く、容易にラッチ3の反転を行うことが可能である。尚、図8、図9のいずれの場合においても、溝27の設置方向は、錠52の幅方向に設けているが、錠52の長さ方向等に設けることも可能である。
【0040】ラッチ3を押し込む構成を採用する場合は、補助バネ20は、ラッチ3が退入した時に、突出用バネ18と、同一の方向にラッチ3を押圧できる位置に設ける。例えば図10の様に、補助バネ20を突出用バネ18と、同軸であって、ガイド板13の近傍の位置に設ける。
【0041】錠前52では、ハンドルを回してラッチ3を退入した時に、ラッチ3の一部が図9(b)の様に補助バネ20と当接して止まる。一方、無理にラッチ3を押し込むと、補助バネ20が縮んでラッチ3がさらに奥に移動し、係合部との係合関係が解消する。
【0042】また上記した実施形態は、ラッチが反転することなくそのままの姿勢を維持して移動する構成を例示したが、ラッチが反転しつつ、真っ直ぐに移動する構成の錠前についても、本発明を適用することができる。また上記した実施形態では、弾性体はコイルバネを採用したが、他の形式のバネやゴム、或いは樹脂等を弾性体として使用することもできる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1乃至4に記載の発明は、ラッチを正規の位置から引き出すことによりラッチとガイド部との係合が解け、ラッチは回転可能となり、左右勝手の変更をすることができる。そのため本発明の錠前では、正面板を取り付けたままの状態で左右勝手の変更を行うことができる効果がある。
【0044】特に請求項2に記載の錠前では、突出用弾性体によって付勢されていると共に、ラッチ等と錠本体との間により強力な補助弾性体が介在されている。そのため通通常時は補助弾性体は自然状態またはそれに近い状態となって通常時の突出位置は安定している。しかしラッチを無理に引くと、補助弾性体が変形し、補助弾性体が変形して錠本体から通常の突出位置よりも外側に引出されラッチとガイド部との係合が解ける。従ってラッチは回転可能となり、左右勝手の変更をすることができる。
【0045】また請求項3に記載の錠前では、ラッチの通常時における突出位置において、ラッチを突出させる方向の力に対抗する部位に補助弾性体が配されている。そのためラッチを無理に引くと、ラッチの突出方向の力と対抗する部位に設けられた補助弾性体が変形し、ラッチは通常の突出位置よりも外側に引出されてラッチとガイド部との係合が解け、ラッチは回転可能となり、左右勝手の変更をすることができる。
【0046】また請求項4,5に記載の錠前では、ラッチを押し込むことにより、ガイド部との係合を解いて左右勝手の変更を行うことができる効果がある。
【0047】さらに請求項6に記載の錠前では、手動工具を係合させて、より簡単にラッチを引き出すことができる。
【出願人】 【識別番号】000147442
【氏名又は名称】株式会社西製作所
【出願日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【代理人】 【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
【公開番号】 特開2001−288938(P2001−288938A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−40778(P2000−40778)