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【発明の名称】 制振構造壁
【発明者】 【氏名】鵜飼 邦夫

【氏名】阿波野 昌幸

【氏名】鍋沢 斤吾

【要約】 【課題】壁の実質的な厚みを厚くすることなく、建築構造物への揺れに対して振動エネルギーを有効に吸収し、建築構造物に作用する揺れを速やかに減衰させることができる制振構造壁を提供すること。

【解決手段】柱部材1と梁部材2により囲まれる部分に形成される制振構造壁であって、相対向する一対の梁部材2の一方に、少なくとも1つのブレース材11の一端11aが剛的にジョイントされ、その他端11bは他方の梁部材2に向かって伸長し、他方の梁部材2から相対的に受ける振動エネルギーを吸収可能に、制振ダンパー17を備える制振手段12を介して他方の梁部材2に接続され、柱部材1と梁部材2により囲まれた部分にはコンクリート壁部18がブレース材11を挟み込み、実質的な壁機能とブレース材11に作用する圧縮力に対する補強機能として配設されていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 柱部材と梁部材により囲まれる部分に形成される制振構造壁であって、相対向する一対の梁部材の一方に一端が剛的に固定され、他端が他方の前記梁部材に向かって伸長する少なくとも1つのブレース材と、このブレース材の他端と他方の前記梁部材とを接続する際に介在され、他方の前記梁部材から相対的に受ける振動エネルギーを吸収する制振手段と、前記柱部材と前記梁部材により囲まれた部分において前記ブレース材を挟み込み、実質的な壁機能と前記ブレース材の座屈を防止する補強機能として配設されるコンクリート壁部とから構成されることを特徴とする制振構造壁。
【請求項2】 前記制振手段が、他方の前記梁部材に取り付けられた舌片板と、前記舌片板と間隔をあけて重なり合うように前記ブレース材の他端に取り付けられた締結板と、前記舌片板と前記締結板との間の前記間隔部に配置され且つ前記舌片板と前記締結板に固着された制振ダンパーとから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制振構造壁。
【請求項3】 一方の前記梁部材に2つの前記ブレース材の各一端部が剛的に固定され、これらの各ブレース材がほぼV字形又は逆V字形に配置されると共にそれぞれの他端部が前記締結板に固定され、この締結板が他方の前記梁部材に設けられた前記舌片板に前記制振ダンパーを介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の制振構造壁。
【請求項4】 前記コンクリート壁部が鉄筋コンクリートで形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制振構造壁。
【請求項5】 前記制振ダンパーが粘弾性部材から構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制振構造壁。
【請求項6】 前記ブレース材が、構造用鋼材、ステンレス、鉄筋、非鉄金属材、プラスチック、又はセラミックスのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制振構造壁。
【請求項7】 前記ブレース材が構造用鋼材、ステンレス、又は鉄筋のいずれかで構成され、前記ブレース材の前記梁部材への剛的固定手段が、溶接、ボルト又は鉄筋定着でなされていることを特徴とする請求項6に記載の制振構造壁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は制振構造壁に関し、更に詳細には建築構造物における柱部材と梁部材により囲まれる部分に形成される壁を制振構造で形成する技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建築構造物における壁、即ち柱部分と梁部分により囲まれる部分に形成される壁は、本来的には遮蔽及び遮音としての基本的な機能を得るために設けられるものであった。しかし、近年、建築構造物における壁には、前述した本来的壁機能に加えて更に、地震などによる建築構造物の揺れを壁に仕組まれた制振機構によって減衰させる機能を持たせるような工夫がなされるようになっている。
【0003】地震などにより建築構造物が振動エネルギーを受けた時、速やかにその揺れを吸収して減衰させるような機能を備える部材を「制振構造部材」と称している。このような制振構造壁の従来例としては、例えば、柱部材と梁部材とからなるラーメンフレームにより囲まれる開口部に鋼材などからなるブレース材を設置し、梁部材から受ける振動エネルギーをこのブレース材が備える機械的性質により吸収するように構成されたものが知られている。
【0004】具体的に説明すると、建築構造物に横揺れが起こると、上部の梁部材が下部の梁部材に相対して横移動し、これに伴ってブレース材が引張される。振動エネルギーは、ブレース材をその使用材料の機械的性質である降伏点を越えた塑性域まで引張することにより吸収され、減衰される。ところが、ブレース材として鋼材や鉄筋を用いる従来の技術では、振動エネルギー吸収作用を高める機械的性質を備えるように比較的に細いブレース材を用いていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述したように振動エネルギー吸収作用を高めるのに有効な比較的に細いブレース材を用いると、このブレース材に圧縮応力が作用した場合にブレース材が座屈を起こす恐れがあった。そのため、従来ではブレース材を鋼管とコンクリートとで巻付け補強して、ブレース材が圧縮力を受けた時の座屈に対する強度を高める工夫がなされていた。
【0006】ところが、ブレース材に対して鋼管とコンクリートとによる巻付け補強を行って座屈に対する強度を高めると、この巻付け補強部がかなりの厚さ(従来の一般的なものでは約250mm)となり、その上、このブレース材を挟むように、本来的な壁機能を与えるコンクリート版又は鉄筋コンクリート版や下地材等の断熱及び遮音ボードなどからなる壁本体を設置すると、実質的な壁厚が非常に厚くなり(約500mm以上となることもある)、その結果建築構造物内の有効空間が少なくなる、という重大な問題があった。
【0007】本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、壁の実質的な厚みを厚くすることなく、建築構造物への揺れに対して振動エネルギーを有効に吸収し、建築構造物に作用する揺れを速やかに減衰させることができる制振構造壁を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は制振構造壁であり、前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。すなわち、本発明は、柱部材と梁部材により囲まれる部分に形成される制振構造壁であって、相対向する一対の梁部材の一方に一端が剛的に固定され、他端が他方の梁部材に向かって伸長する少なくとも1つのブレース材と、このブレース材の他端と他方の梁部材とを接続する際に介在され、他方の梁部材から相対的に受ける振動エネルギーを吸収する制振手段と、柱部材と梁部材により囲まれた部分においてブレース材を挟み込み、実質的な壁機能とブレース材の座屈を防止する補強機能として配設されるコンクリート壁部とから構成されることを特徴とする。
【0009】<本発明における具体的構成>本発明の制振構造壁は、前述した必須の構成要素からなるが、その構成要素が具体的に以下のような場合であっても成立する。その具体的構成要素とは、前記制振手段が、他方の梁部材に取り付けられた舌片板と、この舌片板と間隔をあけて重なり合うようにブレース材の他端に取り付けられた締結板と、舌片板と締結板との間の間隔部に配置され且つ舌片板と締結板に固着された制振ダンパーとから構成されていることを特徴とする。
【0010】また、本発明の制振構造壁では、具体的には、一方の梁部材に2つのブレース材の各一端部が剛的に固定され、これらの各ブレース材がほぼV字形か逆V字形に配置されると共にそれぞれの他端部が締結板に固定され、この締結板が他方の梁部材に設けられた舌片板に制振ダンパーを介して接続するような構造とすることが好ましい。
【0011】更に、本発明の制振構造壁では、コンクリート壁部を鉄筋コンクリートで形成することが好ましく、また制振ダンパーは粘弾性部材から構成することが好ましい。制振機能を備える制振ダンパーとしては種々のものがあるが、この発明が本来的に、制振機能を備えながらも厚さが厚くなり過ぎない壁を提供することにあるので、粘弾性部材を用いることが適している。
【0012】更にまた、本発明の制振構造壁では、ブレース材を、構造用鋼材、ステンレス、鉄筋、非鉄金属材、プラスチック、又はセラミックス等で構成することができ、またブレース材を構造用鋼材、ステンレス、又は鉄筋等で構成した場合には、ブレース材の梁部材への剛的固定手段を、溶接、ボルト又は鉄筋定着で行うことが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の制振構造壁を図に示される実施形態について更に詳細に説明する。図1及び図2には本発明の一実施形態に係る制振構造壁10が示されている。この実施形態の制振構造壁10は、鉄骨で形成された左右の柱部材1と上下の梁部材2とで囲まれた部分に設置される例についてのものである。
【0014】この制振構造壁10は、相対向する一対の梁部材2間にほぼ逆V字形に配置された2つのブレース材11を備えている。各ブレース材11は鋼板で形成され、その下端11aは、下部の梁部材2に溶接又は高力ボルト等を用いて堅固にジョイントされている。
【0015】これらの各ブレース材11の上端は、上部の梁部材2の近傍下方においてほぼ集合して相互に連結され、制振手段12を介して上部の梁部材2に接続されている。すなわち、図3に示されるように各ブレース材11の各上端11bは、その両側に配置された締結板13、14に挟み込まれ、この締結板13、14の下端部に高力ボルト15によって堅固に締め付け固定されている。他方、この締結板13、14の直上における上部の梁部材2には、鋼板からなる舌片板16が垂下するように溶接等でジョイントされている。
【0016】この舌片板16は、2枚の締結板13、14間に差し込まれるような位置に設けられ、各締結板13、14とこの舌片板16との間には制振ダンパー17が配置されている。この制振ダンパー17は、例えば天然ゴム、又はアクリル、シリコン、ウレタンのような樹脂である粘弾性体で形成され、各締結板13、14と舌片板16との間に配置された粘弾性材はそれぞれこれら締結板13、14と舌片板16に固着されている。
【0017】この実施形態の制振構造壁10において制振手段12とは、2つのブレース材11の集合した各上端11bに連結された締結板13、14と、上部の梁部材2から垂下した舌片板16と、この舌片板16と各締結板13、14との間隔部に配置された制振ダンパー17とにより構成されるものをいう。
【0018】それぞれ間隔をあけて配置された左右の柱部材1と上下の梁部材2とにより区画形成され且つ前述したようにブレース材11が制振手段12を介して配置された空間部即ち開口部には、更にブレース材11及び制振手段12を埋設するように鉄筋コンクリート壁部18がコンクリートを現場打ちすることにより形成される。その時、図1に示されるようにブレース材11に複数の穴19をあけておけば、鉄筋コンクリート壁部18とブレース材11との相互の定着はより良好になる。
【0019】この鉄筋コンクリート壁部18は、建築構造物に揺れが生じた際に周辺の柱梁フレームが多少変位できるように、図1に示されるようにその周縁部18aが各柱部材1及び各梁部材2と所定の隙間20をあけるように形成される。しかし、最終的には、鉄筋コンクリート壁部18を取り囲むように形成されたこの隙間20には、所定の応力が作用した時に容易に破壊し且つ壁としての基本的な機能(遮音性や耐火性等)を備えるような材料、例えば発泡コンクリートやその他公知の壁材等が充填されて完全に遮蔽される。
【0020】次ぎに、この実施形態に係る制振構造壁10の動作について説明する。例えば、地震などにより建築構造物が横揺れを起こしたとすると、図1で見て上部の梁部材2は下部の梁部材2に対して相対的に左右に揺れ、一方のブレース材11には引張力が作用し、他方のブレース材11には圧縮力が作用し、この引張力と圧縮力は横揺れの間、交互に各ブレース材に作用する。
【0021】しかし、これらのブレース材11は、その周囲が鉄筋コンクリート壁部18で包囲されて実質的に補強されているため、ブレース材11に多少の圧縮力が生じてもブレース材に座屈は生じない。その結果、ブレース材11それ自体には座屈強度の高いものを使用しないでも、振動エネルギーによるブレース材11に作用する力に対抗することができる。
【0022】同時に、ブレース材11の上端11b、言い換えればブレース材11と鉄筋コンクリート壁部18とが一体となって構成されている剛性体と上部の梁部材2とは、粘弾性材からなる制振ダンパー17を介在して接続されているため、上部の梁部材2から受ける振動エネルギーはこの制振ダンパー17の弾性変形と塑性変形によって速やかに吸収され、これにより建築構造物に作用する揺れが減衰される。
【0023】このように、本実施形態の制振構造壁10は、例えば粘弾性材のような材料からなる制振ダンパーを用い、且つブレース材を本来的な壁機能を与える鉄筋コンクリート壁部により補強したことにより、ブレース材それ自体としては例えば薄い鋼板、細い鉄筋などのようなそれほど大きな強度のものを使用する必要がなく、その結果、ラーメンフレームなどで囲まれた空間部に設けられる壁の厚さを厚くすることなく、壁に制振機能を持たせることができる。
【0024】前述した実施形態に係る制振構造壁10は、2本のブレース材11のそれぞれ下端11aを下部の梁部材2に剛的に固定し、その上端11bを集合させて制振手段12を介して上部の梁部材2に接続した例について説明したが、本発明はこの実施形態におけるブレース材配置構成に限定されるものではない。
【0025】ブレース材配置構成については、例えば、図4に概略的に示されるように、ブレース材11を逆V字形に配置した構成であってもよい。具体的には、2本のブレース材11のそれぞれ上端11bを上部の梁部材2に剛的に固定し、その下端11aを集合させて制振手段12を介して下部の梁部材2に接続してもよい。
【0026】また、図5に概略的に示されるように、1本のブレース材11を下部の梁部材2からほぼ垂直に立て、その下端11aを下部の梁部材2の剛的にジョイントし、上端11aを制振手段12を介して上部の梁部材2に接続してもよい。
【0027】更に、図6に概略的に示されるように、2本のブレース材11をV字形に配置して、それぞれ上端を上部の梁部材2に剛的にジョイントし、それらのブレース材11の下端11aをラーメンフレームのほぼ中央部で連結集合させ、他方下部の梁部材2にも2本のブレース材11の下端11aを剛的にジョイントして逆V字形に配置し、それらの上端11aもラーメンフレームのほぼ中央部に連結集合させ、それぞれの連結集合部を制振手段12を介して接続するようにして構成することもできる。
【0028】前述した実施形態の制振構造壁10では、鉄筋コンクリート壁部18が現場でコンクリートを打設して形成されるものとして説明したが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、予め工場などで製造されたプレキャストコンクリート版を設置してもよい。勿論、補強材として鉄筋以外のものを使用することができるし、まったく使用せず、コンクリートだけでもよい。
【0029】なお、図6に示されるようなブレース材配置構成を備える制振構造壁でプレキャストコンクリート版を使用する場合には、ラーメンフレームのほぼ中央部に位置する2つの連結集合部を接続している制振手段12を境に、上半分及び下半分に分割された2つのプレキャストコンクリート版を用いることが好ましい。
【0030】また、ブレース材としては、前述したように比較的に厚さの薄い鋼板を用いたが、これ以外にも使用可能なあらゆる種類の構造用鋼材、ステンレス、鉄筋、非鉄金属材、プラスチック、又はセラミックス材などを用いることができることは言うまでもない。更に、ブレース材の下部梁部材への固定手段も、溶接や高力ボルトの使用以外にも、鉄筋定着など公知のあらゆる手段を使用できる。
【0031】更に、前述した実施形態に係る制振構造壁は、鋼材で構成された柱部分と梁部分とからなるラーメンフレームに取り付けた場合についての説明であったが、本発明はこのような鋼材で構成された柱部分と梁部分とで構成される場合に限定されるものではなく、鉄筋コンクリートや鋼管コンクリート等を含む種々の材料で構成される柱部材や梁部材からなるラーメンフレームにおいて適用されることは言うまでもない。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の制振構造壁によれば、壁の実質的な厚みを厚くすることなく、建築構造物への揺れに対して壁が振動エネルギーを有効に吸収し、建築構造物に作用する揺れを速やかに減衰させることができる。
【出願人】 【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
【識別番号】599056437
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
【出願日】 平成12年6月14日(2000.6.14)
【代理人】 【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
【公開番号】 特開2001−355348(P2001−355348A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−178218(P2000−178218)