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【発明の名称】 高層建築物
【発明者】 【氏名】平島 新一

【要約】 【課題】横風に起因する高層建築物の揺れを防止する。

【解決手段】高層の建物本体41の角部が、当該建物本体41の高さ方向に亙って隅切りされており、この隅切面44に、可動フラップ45が連結ロッド47により当該隅切面44に対して接離自在にかつ前記連結ロッド47を出没させることで前記可動フラップ45と隅切面44との間の離間距離を制御可能に設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高層の建物本体の角部が、当該建物本体の高さ方向に亙って隅切りされており、この隅切面に、可動フラップが連結ロッドにより当該隅切面に対して接離自在にかつ前記連結ロッドを出没させることで前記可動フラップと隅切面との間の離間距離を制御可能に設けられていることを特徴とする高層建築物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高層建築物に係り、特に、横風に起因する建築物の揺れを防止することができるものに関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、高層建物には、地震や風等の外力による振動を防止するための装置や機構が設けられているものがある。このような振動防止装置や機構を設計する場合、地震と風による振動を考慮して設計するが、高さが100〜200m程度の高層建物の場合、地震による振動が支配的であるのに対し、300m以上の高層建物の場合、地震よりむしろ風による振動が支配的になる場合が多くなる。
【0003】この風による振動は、図10に示すように、建物1に横から強風Wが当たると、建物1の角部で気流の剥離が生じ、建物1の風下側において大きな渦流Sが規則的に発生するために生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、上記の場合、建物1に、矢印で示すような変動揚力Fが発生し、これによって建物1が横揺れし、特に建物1が共振した場合、横揺れが極大となり、場合によっては建物1の破壊につながりかねないという問題があった。この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、横風に起因する建築物の揺れを防止することができる高層建築物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の高層建築物は、高層の建物本体の角部が、当該建物本体の高さ方向に亙って隅切りされており、この隅切面に、可動フラップが連結ロッドにより当該隅切面に対して接離自在にかつ前記連結ロッドを出没させることで前記可動フラップと隅切面との間の離間距離を制御可能に設けられているものである。
【0006】請求項1の高層建築物にあっては、建物本体に当たる横風は可動フラップによってその流れが制御され、その一部の風が可動フラップと隅切面との間を通ってスムーズに流れるので、従来のような建物本体の角部での気流の剥離に起因する渦流が発生することがなく、これによって、渦流による建物本体の振動を防止する。また、上記横風のうち可動フラップの外側を流れる風によって、建物本体の風下側において、若干の渦流が発生する可能性があるが、この場合、該渦流を上記可動フラップと隅切面との間を流れる風によって吹き飛ばすことによって渦流に起因する建物本体の振動を防止する。さらに、可動フラップを隅切面に対して接離移動させることによって、可動フラップと隅切面との間を流す風量を適切に調整して上記渦流の発生を効果的に抑える。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の高層建築物の実施例を説明するに先立ち、説明の都合上、本発明に関連する参考例を図1〜図8を参照して説明する。図1ないし図4は第1参考例を示す。これらの図に示す高層建築物10は500m程度の高さを有する高層の建物本体11と、この建物本体11の角部にそれぞれ形成された4条の突出部12とを主体として構成されている。
【0008】上記建物本体11は平面視略正方形状をなすもので、高さ方向に積層された50m程度の高さを有する多数のユニット13…によって構成されている。各ユニット13は、多数(例えば12枚)の床スラブが設けられた多数階構造となっており、隣接するユニット13,13の間には大床スラブ15が配設されている。この大床スラブ15は建物本体11の横断面と同形の平面視略正方形状をなすもので、その4つの角部には長方形状の突出片15aが一体形成されている。
【0009】上記突出部12は建物本体11の角部に、当該建物本体11の互いに隣接する側壁11a,11aから突出し、かつ上下に延在して形成されたものであり、上記各ユニット13の角部に上下に延在して設けられた突出片13a…と、これら突出片13aの上下の端面に当接して設けられた上記突出片15a…とから構成されている。
【0010】上記突出部12には、各ユニット13毎に通風路16が形成されている。この通風路16は、互いに隣接する建物本体11の側壁11a,11a側に向けて貫通するもので、上記ユニット13の角部を隅切りしてなる隅切面16aと、上下に隣接する大床スラブ15,15の突出片15a,15aの上下面と、上記突出片13aの内壁面とによって形成されている。すなわち、通風路16は、突出部12に突出している大床スラブ15の突出片15aにより区画された状態で上下に所定間隔で形成されている。また、各通風路16は平面視において、建物本体11の側壁11aに対して45°傾斜して形成されている。なお、図示している参考例では、通風路16を建物本体11の下部のユニット13、すなわち横風によっては振動に殆ど影響を与えない部分には形成していないが、当該部分に通風路16を形成してもよく、また、横風によって建物本体11の振動に影響する部分にのみ形成してもよい。
【0011】また、上記構成の各突出部12内には建物本体11の鉛直荷重を支持する大支柱(図示略)が上下に貫通して設けられており、当該大支柱には、送電線、給排水管、情報通信手段等のいわゆるインフラストラクチュアや、エレベータ17等が設けられている。このエレベータ17としては、例えば、図2および図3に示すように、建物本体11を24階ごとに5分割し、上記突出片13aに、ノンストップで96階および72階まで一気に上昇する急行のエレベータ17a,17bを設けるとともに、建物本体11の一方の隅切面に、48階および24階まで上昇する急行のエレベータ17c,17dを設け、さらに、このエレベータ17c,17dに内側および建物本体11の他方の隅切面に、頂上まで24階ずつ上昇するローカルのエレベータ17eを設けることができる。このようにすれば、500m級の高層建築物においても短時間かつ効率のよい輸送を行うことができ、また建物本体11の居住空間を最大限に確保することができる。
【0012】上記構成の高層建築物10においては、図4に示すように、横風を受けた場合、当該横風は建物本体11の角部に設けられた突出部12によってその流れが制御され、その一部の風W1が通風路16を通ってスムーズに流れる。したがって、従来のような建物本体の角部での気流の剥離に起因する渦流が発生することがないので、この渦流による振動を防止することができる。また、上記横風のうち突出部12の外側を流れる風W2によって、建物本体11の風下側において、若干の渦流Sが発生する可能性があるが、この場合、該渦流Sが上記風W1によって吹き飛ばされるので、この渦流に起因する建物本体11の振動を防止することができる。
【0013】次に、上記参考例の高層建築物10の効果をより明確にするために、コンピュータシュミレーション解析による実験を行った。なお、比較例として、角部に隅切りを付与した高層建築物20についても同様のコンピュータシュミレーション解析による実験を行った。
【0014】図5および図6は高層建築物10,20に左側から横風を当てた際の、時間の経過に伴う風力を示したグラフである。これらのグラフから明らかなように、比較例の高層建築物20の場合、風力が大きく、しかもその変化が大きいのに対し、参考例の高層建築物10の場合、風力が極端に小さく、またその変化も殆どないことが解る。なお、図5および図6において■の線は風方向の風力を示し、■の太線は風方向と直交する方向の風力を示す。このように、コンピュータシュミレーションによる解析によって、参考例の高層建築物10では、比較例の高層建築物20、すなわち通常の高層建築物に比べ、劇的な空気力学的効果を得られるのが判明した。
【0015】図7および図8は第2参考例の高層建築物を示す。これらの図に示す高層建築物30は、500m程度の高さを有する高層の建物本体31の4つの角部に、当該建物本体31の互いに隣接する側壁間31a,31aを貫通する通風路32を、上下に所定間隔で形成したものである。
【0016】上記建物本体31は平面視正方形状をなすもので、その4つの角部には、建物本体31の側壁31aから所定量突出した突出部31bが建物本体31の高さ方向に延在して形成されている。また、この建物本体31は、上記第1参考例と同様に、高さ方向に積層された50m程度の高さを有する多数のユニット33…によって構成されている。各ユニット33は多数の床スラブが設けられた多数階構造となっており、隣接するユニット33,33の間には、建物本体31の横断面と同形状をなす大床スラブ35が配設されていて、第1参考例の場合と同様に、上記の通風路32は、突出部31bに突出している大床スラブ35の突出部により区画された状態で上下に所定間隔で形成されている。上記通風路32は、各ユニット33毎にその4つの角部に、上記突出部31b,31bに隣接する側壁31a,31a間を貫通して形成されており、平面視において、建物本体31の側壁31aに対して45°傾斜されている。
【0017】上記構成の高層建築物30においては、図8に示すように、横風を受けた場合、当該横風の一部の風W1は突出部31bによってその流れが制御されて通風路32を通って、建物本体31の背面側(風下側)にスムーズに抜け出る。一方、建物本体31の側壁31a,31aに沿って流れる風W2は建物本体31の角部で気流の剥離を生じ、建物本体31の背面側において渦流Sを生じさせようとするが、この渦流Sは大きく成長する前に、上記風W1によって吹き飛ばされるので、この渦流Sに起因する建物本体31の振動を防止することができる。
【0018】以上で参考例を説明したが、以下に図9を参照して本発明の実施例の高層建築物を示す。本実施例の高層建築物40は、平面視略正方形状のものであり、その4つの角部は建物本体41の高さ方向に亙って隅切りされている。建物本体41は、上記第1および第2参考例と同様に、高さ方向に積層された50m程度の高さを有する多数のユニット43…によって構成されており、隣接するユニット43,43の間には、建物本体41の横断面と同形状をなす大床スラブが配設されている。
【0019】上記建物本体41の4つの角部に形成された隅切面44には、それぞれ可動フラップ45が当該隅切面44に対して接離自在に設けられている。この可動フラップ45は、隅切面44と平行に設けられて風の制御を行う制御面46aを有するフラップ本体46と、このフラップ本体46と隅切面44とを接離自在に連結する連結ロッド47…を主体として構成されており、これら連結ロッド47…を図示しない駆動機構によって隅切面44から出没させることによって、フラップ本体46を隅切面44に対して接離移動させるようになっている。また、上記可動フラップ45は、基本的に、ユニット43毎に設けられているが、建物本体41の下部のユニット43、すなわち横風によっては振動に殆ど影響を与えない部分には設けなくてもよく、また、横風によって建物本体41の振動に影響する部分にのみ設けてもよい。
【0020】上記構成の高層建築物40においては、図9に示すように、横風を受けた場合、当該横風は建物本体41の隅切面44に設けられた可動フラップ45のフラップ本体46によってその流れが制御され、その一部の風W1が隅切面44とフラップ本体46の制御面46aとの間を通ってスムーズに流れる。したがって、従来のような建物本体の角部での気流の剥離に起因する渦流が発生することがないので、この渦流による振動を防止することができる。また、上記横風のうちフラップ本体46の外側を流れる風W2によって、建物本体41の風下側において、若干の渦流Sが発生する可能性があるが、この場合、該渦流Sが上記風W1によって吹き飛ばされるので、この渦流に起因する建物本体11の振動を防止することができる。
【0021】また、可動フラップ45のフラップ本体46を隅切面44に対して接離移動させることによって、すなわち建物本体41が受ける横風の強さや方向に応じて、フラップ本体46の隅切面44からの離間距離や、隅切面44に密接させるべきフラップ本体46を決定することによって、上記制御面46aと隅切面44との間を流す風量を適切に調整して上記渦流の発生を効果的に抑えることができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の高層建築物によれば、高層の建物本体の角部を、当該建物本体の高さ方向に亙って隅切りしてなる隅切面に、可動フラップを当該隅切面に対して接離自在に設けたので、建物本体に当たる横風は可動フラップによってその流れが制御され、その一部の風が可動フラップと隅切面との間を通ってスムーズに流れる。したがって、従来のような建物本体の角部での気流の剥離に起因する渦流が発生することがないので、この渦流による振動を防止することができる。また、上記横風のうち可動フラップの外側を流れる風によって、建物本体の風下側において、若干の渦流が発生する可能性があるが、この場合、該渦流が上記可動フラップと隅切面との間を流れる風によって吹き飛ばされるので、この渦流に起因する建物本体の振動を防止することができる。また、可動フラップを隅切面に対して接離移動させることによって、可動フラップと隅切面との間を流す風量を適切に調整して上記渦流の発生を効果的に抑えることができる。特に、可動フラップを連結ロッドによって隅切面に対して接離自在とし、かつ連結ロッドを出没させることで可動フラップと隅切面との間の離間距離を制御するようにしたので、可動フラップを簡単な構成で確実に設置することができ、かつ、可動フラップの位置および姿勢を自由に制御して渦流の発生を最も効果的に抑制することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【出願日】 平成4年7月31日(1992.7.31)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外3名)
【公開番号】 特開2001−207683(P2001−207683A)
【公開日】 平成13年8月3日(2001.8.3)
【出願番号】 特願2000−395977(P2000−395977)