| 【発明の名称】 |
電磁シールドスラブ |
| 【発明者】 |
【氏名】山木 克則
【氏名】桜本 文敏
|
| 【要約】 |
【課題】施工が簡単で且つ継ぎ目等からの電波や共振による電波の漏洩を防ぐことができる電磁シールドスラブを提供する。
【解決手段】相互結合した金属板2からなる金属スラブ面1上に、主成分が酸化第二鉄(Fe2O3)である酸化鉄粉体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリート又はモルタル12を所要厚さdで打設する。または金属スラブ1面上に、主成分が酸化第二鉄である酸化鉄粉体とカーボン粉体とを混合した混合粉体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリート又はモルタル12を所要厚さdで打設する。好ましくは、金属板2に下層階吊り天井9の金属製吊りボルト6差込み用の開口4を設け、開口4直上のコンクリート又はモルタル12の下端に吊りボルト6の上端の埋め込み部を設けるか、又は吊りボルト6のインサート部材7を埋め込む。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】相互結合した金属板からなる金属スラブ面上に主成分が酸化第二鉄(Fe2O3)である酸化鉄粉体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリート又はモルタルを所要厚さで打設してなる電磁シールドスラブ。 【請求項2】請求項1の電磁シールドスラブにおいて、前記酸化鉄粉体を製鉄所で排出されるダストとしてなる電磁シールドスラブ。 【請求項3】相互結合した金属板からなる金属スラブ面上に主成分が酸化第二鉄(Fe2O3)である酸化鉄粉体とカーボン粉体とを混合した混合粉体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリート又はモルタルを所要厚さで打設してなる電磁シールドスラブ。 【請求項4】請求項3の電磁シールドスラブにおいて、前記混合粉体を製鉄所で排出されるダストとしてなる電磁シールドスラブ。 【請求項5】請求項1から4の何れかの電磁シールドスラブにおいて、前記金属板に下層階の天井吊りボルト差込み用の開口を設け、前記開口直上のコンクリート又はモルタル下端に前記吊りボルトの上端の埋め込み部を設けてなる電磁シールドスラブ。 【請求項6】請求項5の電磁シールドスラブにおいて、前記開口直上のコンクリート又はモルタル下端に前記吊りボルトのインサート部材を埋め込んでなる電磁シールドスラブ。 【請求項7】請求項1から6の何れかの電磁シールドスラブにおいて、前記コンクリート又はモルタルの打設厚さを、前記コンクリート又はモルタルの厚さと誘電率と透過係数との関係式へ前記コンクリート又はモルタルの誘電率と所要透過係数とを代入することにより定めてなる電磁シールドスラブ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術の分野】本発明は電磁シールドスラブに関し、とくに鉄筋コンクリート構造物の天井又は床として用いる電磁シールドスラブに関する。 【0002】 【従来の技術】情報化の進展に伴い、オフィスビル等において電波通信の利用が進み、また無線LANシステム(Local Area Network System)や屋内PHS(Personal Handy Phone System)等の普及に応じて、コンピュータや精密機器の障害防止、機密保持・盗聴防止等のセキュリティ、混信の防止、電波の効率的利用などの面から、建物内部と外部との間または建物内部の区画相互間の電磁シールド(以下、電磁遮蔽ということがある。)に対する要求が高まっている。 【0003】従来の建物の電磁シールドでは、建物の構造部材とは別に例えば金属板、金属箔、金網等の電気抵抗の低い導電性部材(例えば103Ω・m以下)を床、天井、側方周囲壁等に敷設して建物又は建物内の空間を電磁シールドしている。建物内に電磁シールド空間を構築する場合は、その空間の上下及び側面のすべてを導電性部材で被覆する。 【0004】また最近のオフィスビル等では、建物スラブの構造部材である合成デッキ、フラットデッキ等の鋼板製デッキプレートを利用して、建物スラブ自体に電磁シールド機能を持たせる電磁シールド工法も行われている。デッキプレートを導電性部材として利用することにより、床や天井に別途導電性部材を敷設する必要がなくなり、コスト削減や作業の容易化、工期の短縮等を図ることができる。図6に示すように、デッキプレート2a上にはコンクリート5を打設するが、デッキプレートと壁面の導電性部材とを電気的に接続することにより、建物内の電磁シールド空間を構築することができる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のデッキプレートを利用した電磁シールド方法では、図6に示すように、複数のデッキプレート2aをつなぎ合わせて金属スラブ面1を形成するため、デッキプレート2aの継ぎ目(以下、目地ということがある。)3からの電波漏れ対策が必要となる。デッキプレート2aとスラブの梁部材との間の接続部、デッキプレート2aに設けた下層階の天井吊りボルト6取付け用の開口4(図7参照)等からの電波漏れ対策も必要である。従来は、粘着性のある導電性テープでデッキプレートの目地や開口等を塞いでいるが、テープの施工はかなり煩雑であり作業時間を要するので全体の工期が長くなる問題点がある。また、導電性テープでも周波数の高い電波の漏れを完全に防ぐことは難しい。 【0006】更に、図6に示すように、デッキプレートに金属製吊りボルト6を取付けた場合、吊りボルト6に共振した電波の漏れがシールド性能の劣化の原因となる問題点もある。これは、デッキプレート2aと電気的に結合した吊りボルト6がいわばダイポールアンテナの役割を果たすためと考えられる。図中の符号9は、下層階の電磁シールド用の導電性吊り天井材を示す。 【0007】従来、このような吊りボルト6に共振した電波の漏洩を防止する方法として、図7に示すように、吊りボルト6に絶縁性部材8を取付けて共振を避ける方法等が実施されている。しかし、吊りボルト6毎に絶縁性部材8を取付ける方法は、コストが嵩むだけでなく、煩雑な作業を必要とするのでやはり建設工期が長くなる問題点がある。デッキプレート2aの継ぎ目等からの電波や吊りボルトに共振した電波の漏洩を簡単に防ぐことができる技術の開発が望まれている。 【0008】そこで本発明の目的は、施工が簡単で且つ継ぎ目等からの電波や共振による電波の漏洩を防ぐことができる電磁シールドスラブを提供するにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者は、電磁波遮蔽性能を有するコンクリート又はモルタル(以下、両者を纏めて単にコンクリートということがある。)に注目した。デッキプレート2a上へ打設するコンクリート自体に電磁波遮蔽性能を持たせれば、デッキプレートの目地等を導電性テープで塞がなくても、コンクリート自体の電磁波遮蔽性能により目地等からの電波漏洩の防止が期待できる。 【0010】更に本発明者は、コンクリートに電磁波遮蔽性能を与える物質の研究開発の結果、絶縁性の酸化鉄粉体、とくに酸化第二鉄(Fe2O3)を主成分とする酸化鉄粉体の混練により、コンクリートに電磁波遮蔽性能を付与できることを見出した。また実験の結果、酸化第二鉄を主成分とする酸化鉄粉体を混練したコンクリートをデッキプレート上に打設すれば、デッキプレートに取付けた吊りボルトに共振した電波の漏洩が防止できるとの知見を得、この知見に基づき本発明の完成に至ったものである。 【0011】図1の実施例を参照するに、本発明の電磁シールドスラブ10は、相互結合した金属板2からなる金属スラブ面1上に主成分が酸化第二鉄である酸化鉄粉体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリート又はモルタル12を所要厚さdで打設してなるものである。 【0012】また、本発明の電磁シールドスラブ10を、相互結合した金属板2からなる金属スラブ面1上に、主成分が酸化第二鉄である酸化鉄粉体とカーボン粉体とを混合した混合粉体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリート又はモルタル12を所要厚さで打設したものとすることができる。カーボン粉体とは、酸化鉄粉体に比し比重が小さい無定形炭素であり、例えば比重が1.3〜1.5程度のものである。 【0013】一般にモルタルとは砂等の細骨材とセメントと水とを練混ぜたものであるが(建築用語辞典編集委員会「建築用語辞典(第二版)」(1995-4-10)技報堂、「セメントモルタル」の項)、本発明で用いるモルタルでは、主成分が酸化第二鉄である酸化鉄粉体又は該酸化鉄粉体とカーボン粉体との混合粉体を細骨材して用いることができる。例えば、セメントに対して50〜300重量%の酸化鉄粉体及び/又は混合粉体と、30〜70重量%の水とを混練することにより、本発明で用いるモルタルとすることができる。但し必要に応じて、セメントに対し柔軟性向上に足る量の砂等の細骨材を混練してもよい。 【0014】好ましくは、モルタルに粗骨材を混練することにより、遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたコンクリートを打設する。この場合は、例えばセメントに対して50〜500重量%の酸化鉄粉体及び/又は混合粉体と、30〜500重量%の細骨材及び粗骨材と、30〜70重量%の水とを混練したコンクリートとすることができる。 【0015】更に好ましくは、図1(B)に示すように、金属板2に下層階の天井吊りボルト6差込み用の開口4を設け、開口4直上のコンクリート又はモルタル12の下端に吊りボルト6の上端の埋め込み部を設けるか、又は吊りボルト6のインサート部材7を埋め込む。 【0016】主成分が酸化第二鉄である酸化鉄粉体及び/又は該酸化鉄粉体とカーボン粉体との混合粉体として、例えば製鉄所で排出されるダスト(以下、製鉄所ダストということがある。)を用いることができる。製鉄所ダストとは、製鉄所の各作業施設から発生する煤塵、粉塵を乾式又は湿式集塵機にて捕集した環境集塵ダストである。但し本発明で用いる酸化鉄粉体及び/又は混合粉体は製鉄所ダストに限定されず、鉄鉱石を粉砕したもの、その他の適当な酸化鉄粉体及び/又は混合粉体を利用することができる。 【0017】 【発明の実施の形態】絶縁性の酸化第二鉄を主成分とする酸化鉄粉体を混練したモルタル(以下、電磁遮蔽モルタルという。)の電磁波遮蔽性能を確認するため、40重量%の酸化第二鉄(Fe2O3)を含む製鉄所ダストAと、30重量%の酸化第二鉄を含む製鉄所ダストBとをそれぞれ混練したモルタルを調製して電磁波遮蔽性能を確認する実験を行なった。実験に用いた製鉄所ダストA及びBの組成は以下の通りであった。 【0018】 【表1】
【0019】本実験では、製鉄所ダストA、Bと普通ポルトランドセメントと水とを重量比1:1:0.5の割合で、普通モルタルと同様の方法により混練して電磁遮蔽モルタルとし、そのモルタルで厚さd=30mmのパネル材を製造し、打設から50日経過した後のパネル材を用いて遮蔽性能を確認した。比較のため、砂と普通ポルトランドセメントと水とを重量比1:1:0.5の割合で混練した普通モルタル(以下、比較モルタルという。)によりパネル材を製造して遮蔽性能を確認した。但し、本発明は普通ポルトランドセメントの利用に限定されない。なお打設後50日経過したパネル材を用いた理由は、打設後1ヶ月程度の間はモルタルの透過係数Tが急激に増大し遮蔽性能が安定しないからである。 【0020】遮蔽性能の測定装置として、図4に示すように、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)24と電波発信器25及び受信器(ホーンアンテナ)26とを用いた。発信器25及び受信器26を隔壁22で仕切られたシールドルーム20a、20bにそれぞれ隔壁22の所定位置と対向させて配置し、その隔壁22の所定位置に設けた孔に電磁遮蔽モルタル又は比較モルタルのパネル材を嵌め込み、パネル材と隔壁22との間を電波が漏れないように密着させて固定した。シールドルーム20a、20bの内面と隔壁22の両面とを電波吸収部材で被覆することにより、外部からの進入電波やシールドルーム内面での反射電波が受信器26で受信されるのを防止した。 【0021】電波周波数として800MHz〜4.2GHz帯域を使用し、送信器25からパネル材の面に対して垂直となるように電波を送出し、パネル材を透過した電波を受信器26で受信し、アナライザー24で透過電波の振幅を測定した。また隔壁22の孔からパネル材を取り外し、孔の空隙を介して受信した電波の振幅を測定し、パネル材の透過電波の振幅との比(透過係数T)からパネル材の遮蔽性能(電磁波減衰量)を求めた。実験結果を図3にグラフとして示す。なお遮蔽性能と透過係数Tとの関係は下記(1)式で表すことができる。 【0022】 【数1】 遮蔽性能=-20・log(透過係数T)………………………………(1)【0023】図3のグラフから、比較モルタルも若干の遮蔽性能(1/10程度の減衰)を有するものの、製鉄所ダストA又はBを混練した電磁遮蔽モルタルは比較モルタルに比し遮蔽性能が大きく、且つ周波数が高くなるに応じて遮蔽性能が大きくなることが分かる。また、製鉄所ダストAを混練した電磁遮蔽モルタルの遮蔽性能は、製鉄所ダストBを混練した場合よりも大きいことが分かる。この遮蔽性能の相違は酸化第二鉄量の混練量の差が主要な原因であると考えられる。すなわち図3のグラフは、モルタル中に混練する酸化第二鉄の量の調節により、特定周波数に対するモルタルの遮蔽性能を調整できることを示す。 【0024】本発明者は、更なる実験の結果、モルタル中への酸化第二鉄の混練量とパネル材の厚さdとの調節により、特定周波数に対して所望の遮蔽性能を与えるモルタルパネル材が製造できることを確認した。また、酸化第二鉄を混練した電磁遮蔽コンクリートの遮蔽性能についても、酸化第二鉄の混練量とパネル材の厚さdとの調節により調整できることを確認できた。但し、本発明で用いる電磁遮蔽コンクリート又はモルタル(以下、両者を纏めて電磁遮蔽コンクリートという。)は、酸化第二鉄のみを混練したものに限らず、酸化第二鉄を主成分とする酸化鉄粉体を混練したものであれば足りる。 【0025】図2のグラフは、金属板を相互結合した金属スラブ面1による電磁波遮蔽性能と、該金属スラブ面1上に酸化鉄粉体混練の電磁遮蔽コンクリート12を打設した場合の電磁波遮蔽性能とを比較した実験結果を示す。この実験では、図1に示すように、デッキプレートである金属板2を5枚結合し且つ4つの開口4にそれぞれ金属製吊りボルト6を差込んで固定したものを実験用金属スラブ面1aとした。但し、金属板2はデッキプレートに限定されない。また本実験では、表2の組成の電磁遮蔽コンクリート12を調製して実験用金属スラブ面1a上に厚さdで打設して実験用電磁シールドスラブ10aを形成した。電磁遮蔽コンクリート12打設前の実験用スラブ面1aと打設後の実験用スラブ10aとをそれぞれ図4の隔壁22の孔へ嵌め込み、遮蔽性能を計測した。 【0026】 【表2】
【0027】図2のグラフから、金属スラブ面1のみでは10〜30dB程度の遮蔽性能であるのに対し、電磁遮蔽コンクリート12を打設した電磁シールドスラブ10では200MHz〜4GHzの広帯域に亘り70dB以上の大きな遮蔽性能が得られることが分かる。金属スラブ面1のみの場合に遮蔽性能が低い理由は、金属板2の継ぎ目3(図1参照)や吊りボルト差込み用の開口等からの電波漏洩や、吊りボルト6に共振した電波の漏洩が発生するからである。図2のグラフは、本発明の電磁シールドスラブ10により、金属板2の継ぎ目等からの電波漏洩がほぼ完全に防止でき、しかも吊りボルトに共振した電波の漏洩も防げることを示す。 【0028】本発明の電磁シールドスラブ10が広帯域に亘り大きな電磁波遮蔽性能を示す理由は、以下のように考えられる。すなわち、絶縁性の酸化第二鉄を混練した電磁遮蔽コンクリート12は普通コンクリートに比し誘電率が大きく、誘電率が大きなコンクリートへ入射する電磁波のエネルギーは誘電損失により熱として失われる。従って、コンクリート12の誘電損失による電磁波減衰効果により金属スラブ面1の隙間からの電波漏れを防ぐことができる。また、図3に示すように電磁遮蔽コンクリート12のみでは低周波数における遮蔽性能が比較的小さいのに対し、金属スラブ面1の反射効果と電磁遮蔽コンクリート12の誘電損失とにより広帯域に亘り高い遮蔽性能が得られる。 【0029】また、本発明の電磁シールドスラブ10が吊りボルト6からの共振電波の漏洩を有効に防ぐことができる理由は、酸化第二鉄を混練した電磁遮蔽コンクリート12の導電率が小さいことにもあると考えられる。従来から導電性コンクリートを用いた電磁シールドスラブが提案されているが(例えば特開平5-222785号公報)、図5(B)に示すように、導電性コンクリート13を用いたスラブでは、導電性コンクリート13と金属板2及び金属製吊りボルト6が電気的に一体となり、例えばスラブ上方から入射する電波による電流がコンクリート13表面から吊りボルト6へ流れ、吊りボルト6からの共振電波の再放出が起こり得る。 【0030】これに対し本発明の電磁シールドスラブ10では、図5(A)に示すように、電磁遮蔽コンクリート12の絶縁性により、コンクリート12から吊りボルト6へ流れる電流は発生せず、吊りボルト6からの共振電波の放射が避けられる。同図は、スラブ上方から入射した電波がコンクリート12に吸収され、吊りボルト6へ流れる電流が生じないことを示す。スラブ下方から吊りボルト6及び金属板へ入射した電波も、コンクリート12で吸収されるので上方へは出ない。吊りボルト6は、図1(B)に示すように、金属板2に設けた開口4から直上のコンクリート12の下端に埋め込みむことによりスラブ10に取付ける。同図の符号7は、石工技術により形成したボルト埋め込み部又はコンクリート12の下端に埋め込んだインサート部材を示し、符号9は下層階の吊り天井材を示す。なお同図では、吊りボルト6のスラブ10への取付け構造の明確化のため、スラブ10に対し吊りボルト6を大きく表している。 【0031】しかも、本発明の電磁シールドスラブは、酸化第二鉄を主成分とする酸化鉄粉体をコンクリート又はモルタルに混練した上で、そのコンクリート又はモルタルを金属スラブ面上に打設する簡単な作業で構築することができるので、従来の導電性テープの施工等に比し施工が極めて簡単である。 【0032】こうして本発明の目的である「施工が簡単で且つ継ぎ目等からの電波や共振による電波の漏洩を防ぐことができる電磁シールドスラブ」の提供が達成できる。 【0033】以上、酸化第二鉄を主成分とする酸化鉄粉体をコンクリートに混練する場合について説明したが、酸化鉄粉体にカーボン粉体を混合した混合粉体を混練して電磁遮蔽コンクリート12としてもよい。酸化鉄粉体のみの混練では電磁遮蔽コンクリート12の比重が大きくなるのに対し、所要のカーボン粒子を混合することにより電磁遮蔽コンクリート12の比重が調整可能であり、通常のコンクリートと同等またはそれ以下の比重とすることも可能である。 【0034】また酸化鉄粉体及び/又は混合粉体として、製鉄所ダストを用いることができる。製鉄所ダストは、製鉄プラントの副産物として大量に排出されるので、安価である。従って製鉄ダストを利用して本発明の電磁シールドスラブを構築することにより、建物の電磁シールドコストの低減が図れる。 【0035】 【実施例】図1の実施例において、電磁シールドスラブ10に要求される遮蔽対象周波数の電波に対する透過係数(所望透過係数)T0がコンクリート打設前に設計されている場合は、電磁遮蔽コンクリート12中への酸化鉄粉体及び/又はカーボン粉体の混入量の調節と共に、コンクリート12の打設厚さd0の設計が必要である。本発明者は、打設厚さd0の設計値を定めるため、電磁遮蔽コンクリート12の複素誘電率ε=εr−jεi(以下、単に誘電率εということがある。)が利用できることを見出した。誘電率εにより、コンクリート12の遮蔽性能を定めることができる。 【0036】一般的に、一様の誘電率εを有する厚さdの層(一層モデル)の透過係数Tは下記(2)式で表すことができる(電気情報通信学会技術研究報告、A・P95-47(1995-09)「ミリ波帯における建材の反射特性と屈折率の測定」)。ここで、δ=(2πd/λ)(ε−sin2θ)1/2、k0=2π/λである。またλは遮蔽対象電波の波長、θは遮蔽対象電波の入射角を示す。R'には、遮蔽対象電波の偏波により、下記(3)式のR'sまたは下記(4)式のR'pを代入する。 【0037】例えば図4に示す厚さdのパネル材について考えると、電磁遮蔽コンクリート12の誘電率εは、パネル材の厚さdと遮蔽対象電波の波長λと入射角θ(図3では垂直)とに基づき、透過係数Tの実測値と(2)式との分散が最小となるように推定できる(以下、説明簡単化のため、(2)式への透過係数Tと厚さdとの代入ということがある。)。 【0038】 【数2】
【0039】従って、先ず図3のように電磁遮蔽コンクリート12のパネル材の遮蔽対象電波に対する透過係数Tを測定し、次にコンクリートパネル材の厚さd(図3では30mm)と測定した透過係数Tとを(2)式へ代入することによりコンクリート12の誘電率εを求める。所望透過係数T0と求めた誘電率εとを(2)式へ代入することにより、遮蔽対象電波に対し所望の遮蔽性能を与える電磁シールドスラブ1の厚さ、すなわちコンクリート12の打設厚さd0を定めることができる。必要に応じて、コンクリート12の打設前に金属スラブ面1と壁面の導電性部材とを電気的に接続する。 【0040】例えば図3の製鉄所ダストA混練モルタルを用い、3GHz帯に対して所要レベルTの透過係数を与える建物10の壁又はスラブを打設する場合は、先ず図3から定まる3GHzにおける遮蔽性能(=35dB)を求め、求めた遮蔽性能とパネル厚さd(=30mm)とを(2)式へ代入することにより当該モルタルの3GHz帯に対する誘電率ε(=28−j16)を求め、その誘電率εと所要性能とを(2)式へ代入することにより打設厚さd0を算出する。 【0041】また本発明者は、電磁遮蔽コンクリートの誘電率εと遮蔽性能との比較検討から、大きな遮蔽性能を得るためには誘電率εの虚数部εiを大きくすることが効果的であることを見出した。よって、電磁遮蔽コンクリートに対する酸化鉄粉体及び/又はカーボン粉体の種類又は混入量を、誘電率εの虚数部εiが大きくなるように選択することが好ましい。 【0042】更に、例えば既存のスラブの遮蔽性能が不足する場合には、そのスラブ上に内装材として、本発明の電磁遮蔽コンクリート12を所要の厚さで塗布することにより、スラブの遮蔽機能を高めることも可能である。 【0043】 【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の電磁シールドスラブは、金属スラブ面上に主成分が酸化第二鉄(Fe2O3)である酸化鉄粉体を混練した電磁遮蔽コンクリート又はモルタルを所要厚さで打設するので、次の顕著な効果を奏する。 【0044】(イ)デッキプレートの継ぎ目、梁との接続部、吊りボルト差込み用の開口等からの電波漏れをほぼ完全に除くことができる。 (ロ)また、従来シールド性能の劣化の原因となっていた吊りボルトに共振した電波の漏洩をも防ぐことができる。 (ハ)電磁遮蔽コンクリートを打設する作業のみで足り、継ぎ目処理などの作業を必要としないので、電磁シールド施工の工期短縮を図ることができる。 (ニ)デッキプレートと電磁遮蔽コンクリートとの両者による電磁シールドにより、広帯域に亘り高い電磁シールド効果が得られる。 (ホ)酸化鉄粉体にカーボン粉体を混合することにより、通常のコンクリートと同程度の比重とし得るので、電磁シールドに際し建物構造に与える負荷の増大を抑えることができる。 (ヘ)電磁遮蔽コンクリートの誘電率に基づき、所要遮蔽性能が得られるスラブの厚さを設計することができる。 (ト)酸化鉄粉体として製鉄所ダストを利用することができるので、電磁シールドコストの低減を図ると共に、製鉄所ダストのリサイクルに寄与できる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001373 【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年4月4日(2000.4.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100110711 【弁理士】 【氏名又は名称】市東 篤 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−288833(P2001−288833A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月19日(2001.10.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−102717(P2000−102717) |
|